(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130549
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240920BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H01L23/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040349
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 博文
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】門川 裕
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097HA04
5J097JJ02
5J097JJ06
5J097JJ09
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】弾性波デバイスにおけるバンプの通過穴の近傍でのクラックの発生を抑止する。
【解決手段】弾性波デバイス1の辺部1a近傍の外周部1bにバンプ7の通過穴11を備えている。少なくともカバー層4においては、通過穴11は、その穴軸xに直交する向きの断面において、弾性波デバイス1の一辺部1aに平行をなす二つの第一直線状部11dと、他辺部1aに平行をなす二つの第二直線状部11eと、第一直線状部11dと第二直線状部11eとの間に形成される四つの隅部11fとを備えた輪郭を持つように形成されている。カバー層4における隅部11fに隣接した部分であって、第一直線状部11dに倣った仮想の直線と第二直線状部11eに倣った仮想の直線との交叉箇所y、又は、この交叉箇所yの近傍において、カバー層4に対し貫通穴又は凹部よりなる空所13を形成させている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面にIDT電極を含んだ機能素子を形成させたデバイスチップの前記一面上に樹脂製の支持層を介して樹脂製のカバー層を支持させてこれら三者間に形成された内部空間に前記機能素子を位置させるようにしてなる弾性波デバイスであって、
前記デバイスチップの前記一面に直交する向きから見た状態において正方形又は長方形の四角形状をなすと共に、
前記四角形の辺部近傍の外周部に前記機能素子に接続されたバンプパッドを穴底に位置させるようにして前記支持層及び前記カバー層を貫通するバンプの通過穴を備えており、
少なくとも前記カバー層においては、前記通過穴は、その穴軸に直交する向きの断面において、前記四角形の一辺部に平行をなす二つの第一直線状部と、前記四角形の前記一辺部に直交する他辺部に平行をなす二つの第二直線状部と、前記第一直線状部と前記第二直線状部との間に形成される四つの隅部とを備えた輪郭を持つように形成されていると共に、
前記カバー層における前記通過穴の前記隅部に隣接した部分であって、前記第一直線状部に倣った仮想の直線と前記第二直線状部に倣った仮想の直線との交叉箇所、又は、この交叉箇所の近傍において、前記カバー層に対し貫通穴又は前記カバー層の外面側からその内面側に向けて凹む凹部よりなる空所を形成させてなる、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記空所を、前記通過穴における前記弾性波デバイスの中央部側に位置される前記隅部と前記中央部との間に形成させるようにしてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記空所を、前記カバー層の厚さ方向に直交する向きの断面において、円形又は楕円形の輪郭を持つように形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記通過穴の前記穴軸と前記交叉箇所とを通る仮想の直線上に、隣り合う前記空所との間に間隔を開けて二以上の前記空所を形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
二以上の前記空所における各前記空所の前記カバー層の厚さ方向に直交する向きの断面積は、前記隅部と前記空所との間の距離が大きくなるに従って小さくなるようにしてなる、請求項4に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記通過穴の前記第一直線状部及び前記第二直線状部は、前記穴軸を中心とした仮想の四角形の辺に沿うように形成され、
前記隅部は、前記第一直線状部及び前記第二直線状部に45度の角度で交わる仮想の線分に沿うように形成されると共に、
前記隅部に近づくに連れて前記穴軸と穴縁との距離が大きくなるようにしてなる、請求項1乃至請求項5に記載の弾性波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適した弾性波デバイスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
WLP(Wafer Level Package)構造を有する弾性波(Surface Acoustic Wave/SAW)デバイスにおいて、バンプの通過穴を、その穴軸に直交する向きの断面において、四つの直線状部と隣り合う直線状部間に位置される隅部とを備えた形態としたものがある(特許文献1の
図8参照)。
【0003】
この種の弾性波デバイスは、デバイスチップにおける機能素子の形成領域上に樹脂製の支持層とルーフ層とによりキャビティを構成しており、通過穴はこれらを貫通するように設けられる。ここで、かかるルーフ層は、弾性波デバイスの製造過程における熱処理によって、伸縮する。このため、特許文献1の
図8に示されるように通過穴を形成させると前記隅部に応力が集中しこの隅部にクラックを生じさせる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の弾性波デバイスにおいて、前記通過穴を前記のような形態にした場合に、前記のようなクラックの発生を抑止できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、弾性波デバイスを、一面にIDT電極を含んだ機能素子を形成させたデバイスチップの前記一面上に樹脂製の支持層を介して樹脂製のカバー層を支持させてこれら三者間に形成された内部空間に前記機能素子を位置させるようにしてなる弾性波デバイスであって、
前記デバイスチップの前記一面に直交する向きから見た状態において正方形又は長方形の四角形状をなすと共に、
前記四角形の辺部近傍の外周部に前記機能素子に接続されたバンプパッドを穴底に位置させるようにして前記支持層及び前記カバー層を貫通するバンプの通過穴を備えており、
少なくとも前記カバー層においては、前記通過穴は、その穴軸に直交する向きの断面において、前記四角形の一辺部に平行をなす二つの第一直線状部と、前記四角形の前記一辺部に直交する他辺部に平行をなす二つの第二直線状部と、前記第一直線状部と前記第二直線状部との間に形成される四つの隅部とを備えた輪郭を持つように形成されていると共に、
前記カバー層における前記通過穴の前記隅部に隣接した部分であって、前記第一直線状部に倣った仮想の直線と前記第二直線状部に倣った仮想の直線との交叉箇所、又は、この交叉箇所の近傍において、前記カバー層に対し貫通穴又は前記カバー層の外面側からその内面側に向けて凹む凹部よりなる空所を形成させてなる、ものとした。
【0007】
前記空所を、前記通過穴における前記弾性波デバイスの中央部側に位置される前記隅部と前記中央部との間に形成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【0008】
また、前記空所を、前記カバー層の厚さ方向に直交する向きの断面において、円形又は楕円形の輪郭を持つように形成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記通過穴の前記穴軸と前記交叉箇所とを通る仮想の直線上に、隣り合う前記空所との間に間隔を開けて二以上の前記空所を形成させることが、この発明の態様の一つとされる。
この場合さらに、二以上の前記空所における各前記空所の前記カバー層の厚さ方向に直交する向きの断面積は、前記隅部と前記空所との間の距離が大きくなるに従って小さくなるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記通過穴の前記第一直線状部及び前記第二直線状部は、前記穴軸を中心とした仮想の四角形の辺に沿うように形成され、
前記隅部は、前記第一直線状部及び前記第二直線状部に45度の角度で交わる仮想の線分に沿うように形成されると共に、
前記隅部に近づくに連れて前記穴軸と穴縁との距離が大きくなるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0011】
この発明にあっては、前記通過穴の隅部に隣接して前記のように空所を形成させていることから、この空所において前記ルーフ層に生じる前記のような応力を逃して前記隅部におけるクラックの発生を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第一例)の平面構成図であり、バンプの記載を省略している。
【
図2】
図2は、
図1におけるA-A線位置での断面構成図であり、バンプを想像線で示している。
【
図3】
図3は、
図1における上側中央の通過穴周辺を拡大して示した平面構成図であり、バンプの記載を省略している。
【
図4】
図4は、
図3におけるB-B線位置での断面構成図であり、バンプを想像線で示している。
【
図5】
図5は、前記第一例のデバイスチップに形成される共振器の一例を示した構成図である。
【
図6】
図6は、前記第一例のデバイスチップに形成される回路の一例を示した構成図である。
【
図7】
図7は、通過穴の隅部近傍に形成される空所の構成を前記第一例と異ならせる弾性波デバイスの第二例の要部を示した平面構成図であり、バンプの記載を省略している。
【
図8】
図8は、通過穴の隅部近傍に形成される空所の構成を前記第一例と異ならせる弾性波デバイスの第三例の要部を示した平面構成図であり、バンプの記載を省略している。
【
図9】
図9は、
図8におけるC-C線位置での断面構成図であり、バンプを想像線で示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図10に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弾性波デバイス1は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適したものである。
【0014】
かかる弾性波デバイス1は、
デバイスチップ2と、
前記デバイスチップ2の一面2aに形成されたIDT電極6bなどの機能素子6と、
前記一面2aにおいて前記機能素子6を囲うように形成された支持層3(ウォール/Wall)と、
前記支持層3上に形成されて前記デバイスチップ2と前記支持層3と共働して前記機能素子6を気密封止するキャビティ5(内部空間、中空構造部)を形成するカバー層4(ルーフ/Roof)とを備えたものとなっている。
【0015】
典型的には、前記デバイスチップ2は、一辺を0.5ないし1mmとし、厚さを0.15ないし0.2mmとする四角形(図示の例では長方形)の板状をなすように構成される。
また、典型的には、支持層3は、前記デバイスチップ2の一面2aに直交する向きの厚さ(デバイスチップ2の一面2aを基準とした支持層3の高さ)を10~30μmとするように構成される。
また、典型的には、カバー層4は、厚さを15~35μmとするように構成される。
これらから構成される弾性波デバイス1は、典型的には、厚さを0.25ないし0.35mm程度とする。
【0016】
また、かかる弾性波デバイス1は、前記デバイスチップ2の前記一面2aに直交する向きから見た状態において正方形又は長方形の四角形状の輪郭を持つようなっている。
【0017】
弾性波デバイス1の断面構造を
図2に示す。図中符号6は機能素子、符号5はキャビティ、符号3は支持層、符号4はカバー層、符号7は機能素子6を配線9(
図6参照)とバンプパッド10とを介して外部に接続するためのバンプである。
【0018】
デバイスチップ2の一面2a上には複数の機能素子6が形成されている。デバイスチップ2の一面2aにおける各機能素子6の形成領域はそれぞれ、支持層3で囲繞されると共に、この支持層3上に形成されるカバー層4で蓋がされた形態となっており、これにより弾性波デバイス11は複数の前記キャビティ5を備えたものとなっている。
支持層3及びカバー層4は、絶縁性を備えた合成樹脂から構成される。
【0019】
デバイスチップ2は、弾性波を伝搬させる機能を持つ。デバイスチップ2には、典型的には、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムが用いられ、また、デバイスチップ2は、これらにサファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスなどを積層させて、構成される場合もある。
【0020】
図5に機能素子6の一例としての共振器6aを示す。共振器6aはIDT電極6bと、IDT電極6bを挟むようにして形成される反射器6eとを有する。IDT電極6bは、電極対からなり、各電極対は弾性波の伝搬方向fに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指6c同士をこれらの一端側においてバスバー6dで接続させてなる。反射器6eは、弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指6fの端部間をバスバー6gで接続させてなる。
かかる機能素子6は、典型的には、フォトリソグラフィ技術により形成された導電性金属膜によって構成される。
【0021】
図5に一つのデバイスチップ2上に備えられる回路の一例の概念を示す。符号6aaは入出力ポート間に直列に接続された共振器6a、符号6abは入出力ポート間に並列に接続された共振器6a、符号8はグランドを示す。機能素子6の数や配置は必要に応じて変更される。すなわち、
図4の回路によってラダー型フィルタが構成されるようになっている。
かかる回路を構成する配線9も、典型的には、フォトリソグラフィ技術により形成された導電性金属膜によって、前記デバイスチップ2の一面1a上に形成される。
【0022】
また、前記のように四角形状の輪郭を持つ弾性波デバイス1は、前記四角形の辺部1a近傍の外周部1bに前記機能素子6に接続されたバンプパッド10を穴底に位置させるようにして前記支持層3及び前記カバー層4を貫通するバンプ7の通過穴11を備えている。
弾性波デバイス1は、前記外周部1bによって囲繞された中央部1cに前記キャビティ5を備えると共に、前記外周部1bに前記通過穴11を備えるようになっている。
図1ないし
図4に示される第一例では、前記のように四角形状の輪郭を持つ弾性波デバイス1の四隅にそれぞれ通過穴11が形成されていると共に、
図1における上側の辺部1aの長さ方向中程の位置に通過穴11が形成されており、この例では弾性波デバイス1は5つの通過穴11を備えている。
【0023】
図示の例では、通過穴11における支持層3を貫通する第一部分11aは、円形の穴となっている。
一方、通過穴11におけるカバー層4を貫通する第二部分11bは、前記第一部分11aよりその穴軸x(
図3、
図4参照)に直交する向きの穴幅を、穴軸xを巡るいずれの位置においても前記第一部分11aの穴径よりも大きくするように構成されている。
これにより、通過穴11における前記第一部分11aと前記第二部分11bとの間には、カバー層4の外面4a(カバー層4における支持層3に接する側の内面4bと反対の面)側に向いた周回段差面11cが形成されるようになっている。
【0024】
また、前記通過穴11は、その穴軸xに直交する向きの断面において、前記弾性波デバイス1の輪郭としての前記四角形の一辺部1aに平行をなす二つの第一直線状部11dと、前記四角形の前記一辺部1aに直交する他辺部1aに平行をなす二つの第二直線状部11eと、前記第一直線状部11dと前記第二直線状部11eとの間に形成される四つの隅部11fとを備えた輪郭を持つように形成されている。
図示の例では、前記通過穴11の前記第一直線状部11d及び前記第二直線状部11eは、前記穴軸xを中心とした仮想の四角形S(
図3参照)の辺に沿うように形成され、
前記隅部11fは、前記第一直線状部11d及び前記第二直線状部11eに45度の角度で交わる仮想の線分L(
図3参照)に沿うように形成されて、
前記隅部11fに近づくに連れて前記穴軸xと穴縁との距離が大きくなるように構成されている。
図示の例では、通過穴11における前記第二部分11bが、前記四つの隅部11fを持ったいわば八角形の輪郭を持つように構成されている。この第二部分11bの輪郭は、前記穴軸xに沿ったいずれの位置においても同形となるように形成されている。すなわち、第二部分11bは、二箇所の第一直線状部11dによって形成される幅広の穴壁と、二箇所の第二直線状部11eによって形成される幅広の穴壁と、四箇所の隅部11fによって形成される幅狭の穴壁とを備えた形態となっている。
図示の例では、隅部11fによって形成される穴壁は、通過穴11の穴軸x側を湾曲内側とするように、やや湾曲した構成となっている。
また、前記第一直線状部11dと前記第二直線状部11eとは実質的に等しい幅w1(
図3参照)を持つ一方で、隅部11fの幅w2(
図3参照)は前記第一直線状部11d及び前記第二直線状部11eより小さくなっている。
図示の例では、四つの隅部11fは穴軸xを中心とする仮想の円(図示は省略する。)の円弧上に位置されるように形成されているが、第一直線状部11d及び第二直線状部11eはこの仮想の円の円弧の内側に位置されるように形成されており、これによって前記隅部11fに近づくに連れて前記穴軸xと穴縁との距離が大きくなっている。
対向位置にある第一直線状部11d間、及び、第二直線状部11e間の距離は、典型的には90μmないし110μmとされる。
【0025】
かかる通過穴11にクリーム半田を充填した状態から、リフロー処理することで、一端側を前記バンプ7パッド10に接続し、かつ、他端側を前記カバー層4の外面4aから外方に突き出させたバンプ7が形成される。
【0026】
前記リフロー処理によって溶融したクリーム半田は、樹脂製のカバー層4とは親和しないことから、通過穴11の第二部分11bにおける第一直線状部11d及び第二直線状部11eに接したタイミングで球状に凝集する。これによって、バンプ7と第二部分11bの前記隅部11fとの間に開放部12(
図4参照)を形成させた状態で、通過穴11内にバンプ7を形成させている。
これにより、この実施の形態にかかる弾性波デバイス1にあっては、バンプ7の形成後に通過穴11の前記第二部分11b内に残された前記クリーム半田に含まれるフラックスの残渣を、前記開放部12を利用して前記リフロー処理後の洗浄処理により取り除くことが可能とされる。
【0027】
また、この実施の形態にあっては、前記カバー層4における前記通過穴11の前記隅部11fに隣接した部分であって、前記第一直線状部11dに倣った仮想の直線(前記仮想の四角形Sの辺)と前記第二直線状部11eに倣った仮想の直線(前記仮想の四角形Sの辺)との交叉箇所y(前記仮想の四角形Sの角)、又は、この交叉箇所yの近傍において、前記カバー層4に対し貫通穴又は前記カバー層4の外面4a側からその内面側に向けて凹む凹部よりなる空所13を形成させている。
【0028】
図1ないし
図4に示される第一例では、空所13は、前記隅部11fとの間にわずかな隙間を空けて、前記カバー層4に形成されている。典型的には、かかる隙間は5ないし30μmの範囲とされる。また、第一例では、前記カバー層4にその外面4aと内面4bとの間に亘る貫通穴を形成することで、前記空所13を形成させている。この第一例では、空所13は、前記カバー層4の厚さ方向に直交する向きの断面において、円形の輪郭を持つように形成されている。
【0029】
図7に示される第二例では、空所13は、前記カバー層4の厚さ方向に直交する向きの断面において、楕円形の輪郭を持つように形成されている。
この第二例にあっては、前記通過穴11の前記穴軸xと前記交叉箇所yとを通る仮想の直線zに対し、前記楕円の長軸が直交するようにして、空所13を形成させている。
【0030】
図8及び
図9に示される第三例では、前記通過穴11の前記穴軸xと前記交叉箇所yとを通る仮想の直線z上に、隣り合う前記空所13との間に間隔を開けて二以上の前記空所13を形成させている。第三例では、三つの空所13を形成させている。三つの空所13はいずれも第二例と同じ楕円形の輪郭を持つように形成されている。
また、この第三例では、二以上の前記空所13における各前記空所13の前記カバー層4の厚さ方向に直交する向きの断面積は、前記隅部11fと前記空所13との間の距離が大きくなるに従って小さくなるようになっている。
具体的には、空所13の前記断面積は、通過穴11の第二部分11bの隅部11fとの間の距離を最も小さくする第一空所13aにおいてもっとも大きく、通過穴11の隅部11fとの間の距離を最も大きくする第三空所13cにおいてもっとも小さく、これらの間に位置される第二空所13bにおいては第一空所13よりは小さいが第三空所13よりは大きくなっている。
また、図示の例では、第一空所13aはカバー層4を貫通する貫通穴により構成されており、一方、第二空所13b及び第三空所13cはカバー層4の外面4a側からその内面側に向けて凹む凹部により構成されている。
また、図示の例では、第二空所13bはカバー層4の厚さ方向の中程の位置に至る深さを持つ一方で、第三空所13cはこれよりカバー層4の外面4aに近い位置に底を位置させる深さを持つように構成されている。
【0031】
以上に説明した空所13は、典型的には、フォトリソグラフィ技術により、適切に形成可能である。
【0032】
前記カバー層4は、前記リフロー処理などの弾性波デバイス1の製造過程における熱処理によって、伸縮する。このため、
図10に示されるように、前記のような空所13を形成させることなく通過穴11を形成させると、通過穴11の穴軸xと前記交叉箇所yとを通る仮想の直線z上において前記隅部11fに応力が集中しこの隅部11fにクラックを生じさせる場合がある。
この実施の形態にかかる弾性波デバイス1にあっては、通過穴11の隅部11fに隣接して前記のように空所13を形成させていることから、この空所13において前記のような応力を逃して前記のようなクラックの発生を抑止することができる。
【0033】
また、図示の例では、前記空所13は、前記通過穴11における前記弾性波デバイス1の中央部1c側に位置される前記隅部11fと前記中央部1cとの間に形成させている。
図示の例では、弾性波デバイス1の四隅に形成されている通過穴11においては、通過穴11の四つの隅部11fのうちの三つの隅部11fはいずれも辺部1aに近接しており、この三つの隅部11fの近傍には空所13は形成されていない。弾性波デバイス1の四隅に形成されている通過穴11においては、前記中央部1c側に位置される一つの隅部11fの近傍にのみ空所13を形成させている。
図1における上側の辺部1aの長さ方向中程の位置に形成されている通過穴11にあっては、通過穴11の四つの隅部11fのうち、弾性波デバイス1の辺部1a側に位置される二つの隅部11fとこの辺部1aとの間には空所13は形成させていない。
図1における上側の辺部1aの長さ方向中程の位置に形成されている通過穴11にあっては、空所13は、通過穴11の残りの二つの隅部11fと前記中央部1cとの間にある隅部11fに隣接した部分に形成されている。
このようにしている理由は、通過穴11と前記辺部1aとの距離は小さいことから、外周部1bでは前記のような応力は過大となり難く、弾性波デバイス1の辺部1a側に位置される隅部11fにはクラックが生じ難いからである。
【0034】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0035】
1 弾性波デバイス
1a 辺部
1b 外周部
1c 中央部
2 デバイスチップ
2a 一面
3 支持層
4 カバー層
4a 外面
4b 内面
5 キャビティ
6 機能素子
6a、6aa、6ab 共振器
6b IDT電極
6c 電極指
6d バスバー
6e 反射器
6f 電極指
6g バスバー
7 バンプ
8 グランド
9 配線
10 バンプパッド
11 通過穴
11a 第一部分
11b 第二部分
11c 周回段差面
11d 第一直線状部
11e 第二直線状部
11f 隅部
12 開放部
13、13a、13b、13c 空所
f 伝搬方向
x 穴軸
y 交叉箇所
z 直線
S 仮想の四角形
L 線分