(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130558
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】コントローラ及びロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240920BHJP
B25J 9/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
B25J9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040371
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寧 霄光
(72)【発明者】
【氏名】劉 智強
(72)【発明者】
【氏名】土橋 祐貴
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS07
3C707BS12
3C707BS15
3C707BS24
3C707DS01
3C707ES01
3C707FU01
3C707KS34
3C707KW03
3C707KX06
3C707LV17
3C707LW03
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】ロボットにより、被係合部を有する部材に係合部を有するワークを挿入する際の挿入完了判定の精度を向上させる。
【解決手段】コントローラ12は、係合部23を有するワーク21を保持し、係合部23に対応する被係合部24を有する部材22に対して挿入するロボット10のコントローラ12であって、ロボット10は、ワーク21に作用する力Fz(t)を測定可能な力覚センサ11を備え、コントローラ12は、ワーク21を部材22に挿入しながら、力覚センサ11によって測定される挿入方向の力Fz(t)が増加から減少に転じ所定の第1閾値Fth1よりも小さくなる第1変曲点P1を検出し、その後力Fz(t)が減少から増加に転じ所定の第2閾値Fth2より大きくなる第2変曲点P2を検出した場合に、ワーク21の部材22に対する挿入を完了したと判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合部を有するワークを保持し、前記係合部に対応する被係合部を有する部材に対して挿入するロボットを制御するコントローラであって、
前記ロボットは、前記ワークに作用する力を測定可能な力覚センサを備え、
前記コントローラは、前記ワークを前記部材に挿入していきながら、前記力覚センサによって測定される挿入方向の力が増加から減少に転じ所定の第1閾値よりも小さくなる第1変曲点を検出し、その後前記力が減少から増加に転じ所定の第2閾値より大きくなる第2変曲点を検出した場合に、前記ワークの前記部材に対する挿入を完了したと判定するコントローラ。
【請求項2】
前記部材は、前記ワークを挿入可能にし、かつ前記ワークを挿入完了時に底付きする凹部を有し、
前記ワークを前記部材に挿入する過程で、前記係合部と前記被係合部とが相互の干渉を経て係合する請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記係合部及び前記被係合部の少なくとも一方は、前記ワークを前記部材に挿入する過程において、前記係合部と前記被係合部の相互の干渉により一時的に変形又は変位し、前記係合部が前記被係合部を乗り越えることで、前記係合部が前記被係合部に対し前記ワークの挿入方向と反対方向に係合する請求項2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記ワークの前記部材に対する挿入完了の判定は、前記ワークの挿入深さが所定の第3閾値より大きい場合に行われる請求項1に記載のコントローラ。
【請求項5】
係合部を有するワークを、前記係合部に対応する被係合部を有する部材に対して挿入するロボット制御方法であって、
前記ワークを前記部材に挿入していくように、前記ワークを保持するロボットを制御するステップと、
前記ロボットに設けられた力覚センサによって、挿入方向の力を測定するステップと、
前記ワークを挿入していきながら前記力の変化をモニタし、前記力覚センサによって測定される挿入方向の力が増加から減少に転じ所定の第1閾値よりも小さくなる第1変曲点を検出し、その後前記力が減少から増加に転じ所定の第2閾値より大きくなる第2変曲点を検出した場合に、前記ワークの前記部材に対する挿入を完了したと判定するステップと、
を有するロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラ及びロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FA(Factory Automation)化が進む工場では、ワークの組み付け作業にロボットが利用されている。例えば、特許文献1には、自動車のドア部品を組み付けるためのロボットシステムが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工業製品においては、雄部材を雌部材に挿入し、雄部材側の係合部を雌部材側の被係合部に係合させる(引掛ける、あるいは、嵌合させる)ことで雄部材の抜け止めを図るようなロック機構を採用するものが多い。例えば、クリップ、係合爪、凹凸嵌合、スナップフィットなどと呼ばれる構造がこれに該当する。この種のロック機構をもつ部材の組み付けをロボットで自動化するのは容易ではない。係合部と被係合部が正しく係合したかどうかを機械的に判断するのが難しいことが、その理由の一つである。
【0005】
特許文献1では、ドア部材をクリップで固定する際に、ロボットの先端に設けた押圧パッドで押圧反力を測定し、押圧反力が有意に低下したことをもってクリップが穴に嵌ったと判定する方法が提案されている。押圧反力が有意に低下するのは、係合部又は被係合部を弾性変形させながら雄部材を押し込んでいくことで押圧反力が徐々に上昇していたものが、係合部が被係合部に嵌った瞬間に係合部と被係合部の当接が解放されるためである。
【0006】
しかしながら、例えばプラグをソケットに嵌合させる構造のコネクタ部品の場合、プラグの押圧反力が有意に低下したとしても、プラグがソケットに底付きするまで挿入されたかどうか判定することは難しい。また、押圧反力の低下のみを判定条件としたのでは、ノイズの影響で誤判定が発生する可能性がある。
【0007】
本発明は、ロボットにより、被係合部を有する部材に係合部を有するワークを挿入する際における挿入完了判定の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係るコントローラは、係合部を有するワークを保持し、前記係合部に対応する被係合部を有する部材に対して挿入するロボットを制御するコントローラであって、前記ロボットは前記ワークに作用する力を測定可能な力覚センサを備え、前記コントローラは、前記ワークを前記部材に挿入していきながら、前記力覚センサによって測定される挿入方向の力が増加から減少に転じ所定の第1閾値よりも小さくなる第1変曲点を検出し、その後前記力が減少から増加に転じ所定の第2閾値より大きくなる第2変曲点を検出した場合に、前記ワークの前記部材に対する挿入を完了したと判定する。
【0009】
このコントローラでは、コントローラが、ワークを部材に挿入していきながら、第1変曲点と第2変曲点を検出した場合に、ワークの部材に対する挿入を完了したと判定する。第1変曲点において、係合部と被係合部との係合完了を判定できる。また、第2変曲点において、部材に対するワークの底付きを判定できる。これにより、ロボットにより被係合部を有する部材に係合部を有するワークを挿入する際の挿入完了判定の精度を向上させることができる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係るコントローラにおいて、前記部材が、前記ワークを挿入可能にし、かつ前記ワークを挿入完了時に底付きする凹部を有し、前記ワークを前記部材に挿入する過程で、前記係合部と前記被係合部とが相互の干渉を経て係合する。
【0011】
このコントローラでは、凹部を有する部材にワークを挿入する。係合部と前記被係合部とが相互の干渉を経て係合したときに、第1変曲点を検出する。また、ワークが凹部に底付きしたときに第2変曲点を検出する。
【0012】
第3の態様は、第2の態様に係るコントローラにおいて、前記係合部及び前記被係合部の少なくとも一方は、前記ワークを前記部材に挿入する過程において、前記係合部と前記被係合部の相互の干渉により一時的に変形又は変位し、前記係合部が前記被係合部を乗り越えることで、前記係合部が前記被係合部に対し前記ワークの挿入方向と反対方向に係合する。
【0013】
このコントローラでは、ワークを前記部材に挿入する過程において、前記係合部と前記被係合部の相互の干渉により一時的に変形又は変位し、前記係合部が前記被係合部を乗り越えるときの荷重変動から第1の変曲点を検出する。
【0014】
第4の態様は、第1の態様に係るコントローラにおいて、前記ワークの前記部材に対する挿入完了の判定は、前記ワークの挿入深さが所定の第3閾値より大きい場合に行われる。
【0015】
このコントローラでは、ワークの部材に対する挿入完了の判定において、第1変曲点が検出されてから第2変曲点が検出されるまでにおけるワークの挿入深さを考慮するので、ロボットにより被係合部を有する部材に係合部を有するワークを挿入する際の挿入完了判定の精度を更に向上させることができる。
【0016】
第5の態様に係るロボットの制御方法は、係合部を有するワークを、前記係合部に対応する被係合部を有する部材に対して挿入するロボット制御方法であって、前記ワークを前記部材に挿入していくように、前記ワークを保持するロボットを制御するステップと、前記ロボットに設けられた力覚センサによって、挿入方向の力を測定するステップと、前記ワークを挿入していきながら前記力の変化をモニタし、前記力覚センサによって測定される挿入方向の力が増加から減少に転じ所定の第1閾値よりも小さくなる第1変曲点と、その後前記力が増加に転じ所定の第2閾値より大きくなる第2変曲点を検出した場合に、前記ワークの前記部材に対する挿入を完了したと判定するステップと、を有する。
【0017】
このロボットの制御方法では、ワークを部材に挿入していきながら、第1変曲点と第2変曲点を検出した場合に、ワークの部材に対する挿入を完了したと判定する。第1変曲点において、係合部と被係合部との係合完了を判定できる。また、第2変曲点において、部材に対するワークの底付きを判定できる。これにより、ロボットにより被係合部を有する部材に係合部を有するワークを挿入する際の挿入完了判定の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロボットにより、被係合部を有する部材に係合部を有するワークを挿入する際における挿入完了判定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ロボットシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】挿入作業の対象となる部品の一例を示す図である。
【
図3】制御サイクルと、力及びワークの位置との関係を示す図である。
【
図4】制御サイクルと押し付け力との関係において、変曲点1及び変曲点2の例を示す線図である。
【
図5】コントローラによる挿入完了判定処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示されるように、ロボットシステム1は、部品の挿入作業を行うための産業機械であり、ロボット10と、力覚センサ11と、コントローラ12を有する。ロボットシステム1は、係合部23を有するワーク21を、係合部23に対応する被係合部24を有する部材22に対して挿入する。
【0021】
ロボット10は、ロボットアーム101の先端にワークを保持するためのグリッパー102を有するものである。グリッパー102の基端部には、力覚センサ11が設けられている。本実施形態では、ロボットアーム101として6自由度の垂直多関節ロボットを例示するが、少なくともワーク21の挿入方向の並進動作が可能であれば、どのような構成のロボットを用いてもよい。例えば、水平多関節ロボット(スカラロボット)やパラレルリンクロボットなども好ましく利用可能である。グリッパー102は、ロボットハンドやエンドエフェクタとも呼ばれ、ワーク21を保持する機能をもつデバイスである。保持方法は、複数の爪でワーク21を挟持する方法、ワーク21をエアや電磁力などで吸着する方法(吸着パッド)など、どのようなものでもよい。
【0022】
力覚センサ11は、ワーク21に作用する力を測定するためにグリッパー102の基端部に取り付けられた、例えば6軸のセンサである。
図1に示されるように、グリッパー102の基端部の中心を原点とし、グリッパー102の先端方向(ワーク21の挿入方向に同じ)にz軸をとる、グリッパー座標系を考えたときに、力覚センサ11は、x軸方向の力Fx、y軸方向の力Fy、z軸方向の力Fz、x軸周りのモーメントMx、y軸周りのモーメントMy、z軸周りのモーメントMzの6つの物理量の測定が可能である。力覚センサ11から出力される測定値はコントローラ12に随時取り込まれる。なお、力覚センサ11は、z軸方向の力Fzのみを測定できる荷重センサであってもよい。
【0023】
コントローラ12は、ロボット10を制御するための制御用コンピュータであり、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)などで構成される。
図1に示すように、本実施形態のコントローラ12は、ロボットアーム101の制御を担うロボット制御部120、力覚センサ11の測定データを取得するセンサI/O部121、グリッパー102の制御を担うグリッパー制御部122を有する。コントローラ12とロボット10の間は、例えば、EtherCAT(登録商標)などの産業用ネットワークにより接続され、コントローラ12と力覚センサ11及びグリッパー102の間は、例えば、シリアルケーブルなどで接続され、コントローラ12からロボット10への制御信号の送信、ロボット10の力覚センサ11の出力やエンコーダ信号のコントローラ12への取り込みなどが可能である。ただし、装置間の接続形態はこれに限られず、無線により接続してもよいし、あるいは、コントローラ12とロボット10が一体となったコントローラ内蔵型のロボットを用いてもよい。
【0024】
コントローラ12は、ワーク21を部材22に挿入していきながら、力覚センサ11によって測定される挿入方向の力Fz(t)が増加から減少に転じ所定の第1閾値Fth1よりも小さくなる第1変曲点P1と、その後力Fz(t)が増加に転じ所定の第2閾値Fth2より大きくなる第2変曲点P2を検出した場合に、ワーク21の部材22に対する挿入を完了したと判定する。
【0025】
ワーク21の部材22に対する挿入完了の判定は、ワーク21の挿入深さH(s)が所定の第3閾値Hthより大きい場合に行われてもよい。
【0026】
このようなロボットシステム1を、
図2に示すような、ワーク21を部材22に挿入する工程に適用する例を考える。なお、
図2において、部材22は断面図で描かれている。ワーク21、部材22は、例えばケーブルのコネクタ部品などであり、雄側のワーク21を雌側の部材22に挿入する(押し込む)ことによりワーク21、部材22の組み付けが行われる。このとき、ワーク21に設けられた係合部23を、部材22に設けられた被係合部24に係合させることによって、ワーク21、部材22の固定(抜け止め)が図られる。ロボットシステム1により組み付けを行う際には、例えばいずれか一方の部材を治具などで固定し、グリッパー102で保持した他方の部材を挿入していく。以降の説明では、便宜的に、グリッパー102で保持する部材(移動する部材)を「ワーク21」と呼び、固定側の部材を「部材22」と呼ぶ。なお、雄側のワーク21と雌側の部材22のどちらを移動させてもよく、雄側と雌側を入れ替えてもよい。つまり、ワーク21を固定し、部材22を移動させてもよい。また、ワーク21と部材22の双方を相対的に移動させてもよい。
【0027】
[ロボット制御方法]
ロボット制御方法は、係合部23を有するワーク21を、係合部23に対応する被係合部24を有する部材22に対して挿入するロボット制御方法であって、ワーク21を部材22に挿入していくように、ワーク21を保持するロボットを制御するステップと、ロボットに設けられた力覚センサ11によって、挿入方向の力Fz(t)を測定するステップと、ワーク21を挿入していきながら力Fz(t)の変化をモニタし、力覚センサ11によって測定される挿入方向の力Fz(t)が増加から減少に転じ所定の第1閾値Fth1よりも小さくなる第1変曲点P1と、その後力Fz(t)が増加に転じ所定の第2閾値Fth2より大きくなる第2変曲点P2を検出した場合に、ワーク21の部材22に対する挿入を完了したと判定するステップと、を有する。
【0028】
ワーク21の部材22に対する挿入完了の判定は、第1変曲点P1が検出されてから第2変曲点P2が検出されるまでにおけるワーク21の挿入深さH(s)が所定の第3閾値Hthより大きい場合に行われてもよい。
【0029】
(挿入処理の例)
図3から
図5を参照して、本実施形態のロボットシステム1による部品挿入処理の流れを説明する。なお、
図3の線図の左端、
図4のフローに入る前に、部材22の固定、グリッパー102によるワーク21の保持、ロボット10によるワーク21の挿入開始位置への移動などは完了しているものとする。
【0030】
図3において、実線は力(押し付け力)Fzを示し、破線はワーク21の位置H(挿入の深さ)を示している。位置Hは縦軸下方が正であり、横軸に近いほど挿入の深さが大きいことを示している。横軸の制御サイクルは、コントローラ12によるワーク21の挿入動作のサイクルt(挿入完成判定開始時点(部品挿入処理開始時点)からの経過時間)を示している。
図3の左端は、ワーク21が挿入開始位置にあり、部材22から離れている状態を示している。コントローラ12は、ワーク21をこの挿入開始位置からz軸方向(図面の下向き)に並進移動させ、ワーク21を部材22の穴内に挿入していく(
図1)。
図3におけるa,cの部分は、ワーク21と部材22との接触等(相互の干渉)による一時的な摩擦力の上昇を示している。
図3におけるbの拡大図は、該実線に含まれる細かな波を示している。
【0031】
図3におけるAの部分は、ワーク21と部材22の端子同士の接触開始時に力Fzが増加し、端子26,28同士の接触の進行に伴い力Fzが低下することを示している。Aの部分を通過した後、係合部23が被係合部24に接触してこれを乗り越えるので、力Fzが大きく増加する。Bの部分では、係合部23が被係合部24を乗り越えて係合することで、力Fzが大きく減少し、その後、ワーク21が部材22の凹部30に底付きすることで、再びFzが増加する。
【0032】
このように、部材22は、ワーク21を挿入可能にし、かつワーク21を挿入完了時に底付きする凹部30を有している。ワーク21を部材22に挿入する過程で、係合部23と被係合部24とが相互の干渉を経て係合する。係合部23及び被係合部24の少なくとも一方(本実施形態では係合部23)は、ワーク21を部材22に挿入する過程において、係合部23と被係合部24の相互の干渉により一時的に変形又は変位し、係合部23が被係合部24を乗り越えることで、係合部23が被係合部24に対しワーク21の挿入方向と反対方向に係合する。これにより、部材22からのワーク21の意図しない離脱が抑制される。
【0033】
係合部23と被係合部24とが相互の干渉を経て係合したときに、第1変曲点P1を検出する。また、ワーク21が部材22の凹部30に底付きしたときに第2変曲点P2を検出する。
【0034】
図4は、
図3のBの部分を拡大して模式的に示したものである。ここで、Fzmax(t)は力Fzの最大値を示す。このFzmax(t)が、第1変曲点P1に相当する。Fzmin(s)は、第1変曲点P1を過ぎた後の力Fzの最小値を示す。このFzmin(s)が、第2変曲点P2に相当する。Fth1は押し付け力についての第1閾値を示している。第1閾値は、Fzmax(t)からの押し付け力Fz(t)の低下量の基準として与えられている。Fth2は、押し付け力についての第2閾値を示している。第2閾値は、Fzmin(s)からの押し付け力Fz(s)の増加量の基準として与えられている。
図3のHthは、深さについての第3閾値を示している。
【0035】
挿入完了判定は、
図5に示されるフローに沿って行われる。まず、左の破線で囲まれた部分で、第1変曲点P1を探す。ステップS1では、サイクルtにて押し付け力Fz(t)を計測する。ステップS2では、サイクル0~tまで、Fzの最大値Fzmax(t)を計算する。ステップS3では、Fzmax(t)-Fz(t)>Fth1であるかどうかが判定される。具体的には、Fzmax(t)からの押し付け力Fz(t)の低下量が第1閾値Fth1を超えたかどうかで、Fzmax(t)を第1変曲点P1とするかどうかが判定される。この判定がNOの場合、ステップS1に戻る。この判定がYESの場合、第1変曲点P1が係合部23と被係合部24との係合完了が判定される。
【0036】
ステップS3の判定がYESの場合、続いて右の破線で囲まれた部分で第2変曲点P2を探す。第2変曲点P2を探すために、まずステップS4では、サイクルsにて押し付け力Fz(s)を計測する。但し、s>tである。ステップS5では、サイクルt~sまで、Fzの最小値Fzmin(s)を計算する。ステップS6では、Fz(s)-Fzmin(s)>Fth2であるかどうかが判定される。具体的には、Fzmin(s)からの押し付け力Fz(s)の増加量が第2閾値Fth2を超えたかどうかで、Fzmin(s)を第2変曲点P2とするかどうかが判定される。この判定がNOの場合、ステップS4に戻る。この判定がYESの場合、ワーク21が部材22に底付きしたと判定する。
【0037】
最後に、ステップS7において、ワーク21の挿入深さH(s)が所定の第3閾値Hthより大きいかどうかが判定される。この判定がNOの場合、ステップS1に戻る。この判定がYESの場合、第1変曲点P1と第2変曲点P2が検出され、差込み深さが第3閾値Hthを超えたことから、挿入を完了したと判定する。なお、このステップS7を省略してもよい。つまり、差込み深さを考慮せず、第1変曲点P1と第2変曲点P2を検出した場合に、ワーク21の部材22に対する挿入を完了したと判定してもよい。
【0038】
なお、第1閾値Fth1は、例えば、係合部23が被係合部24に正常に嵌ったときに観測される力Fzの減少量の60%~80%程度の値に設定されるとよい。ワーク21及び部材22の種類や構造によって力Fzの減少量は異なるため、複数のサンプルを用いたテストを実施して力Fzの減少量や第1閾値Fth1を学習するとよい。
【0039】
本実施形態によれば、コントローラ12が、ワーク21を部材22に挿入していきながら、第1変曲点P1と第2変曲点P2を検出した場合に、ワーク21の部材22に対する挿入を完了したと判定することができる。第1変曲点P1において、係合部23と被係合部24との係合完了を判定し、また第2変曲点P2において、部材22に対するワーク21の底付きを判定できる。これにより、ロボット10により被係合部24を有する部材22に係合部23を有するワーク21を挿入する際の挿入完了判定の精度を向上させることができる。
【0040】
また、ワーク21の部材22に対する挿入完了の判定において、ワーク21の挿入深さH(s)を考慮することで、ロボットにより被係合部24を有する部材22に係合部23を有するワーク21を挿入する際の挿入完了判定の精度を更に向上させることができる。更に、ワーク21の過度な押し込みを防ぎ、部材22の破損を回避することができる。
【0041】
<その他>
上記実施形態は、本発明の構成例を例示的に説明するものに過ぎない。本発明は上記の具体的な形態には限定されることはなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。また、上記実施形態で示したフローチャートはあくまで一例であり、処理の順番や状態の場合分けなどは適宜変更してもよい。
【0042】
(付記)
以下、本開示の態様を付記する。
【0043】
(付記1)
係合部を有するワーク保持し、前記係合部に対応する被係合部を有する部材に対して挿入するロボットを制御するコントローラであって、
前記ロボットは、前記ワークに作用する力を測定可能な力覚センサを備え、
前記コントローラは、前記ワークを前記部材に挿入していきながら、前記力覚センサによって測定される挿入方向の力が増加から減少に転じ所定の第1閾値よりも小さくなる第1変曲点を検出し、その後前記力が減少から増加に転じ所定の第2閾値より大きくなる第2変曲点を検出した場合に、前記ワークの前記部材に対する挿入を完了したと判定するコントローラ。
【0044】
(付記2)
前記部材は、前記ワークを挿入可能にし、かつ前記ワークを挿入完了時に底付きする凹部を有し、
前記ワークを前記部材に挿入する過程で、前記係合部と前記被係合部とが相互の干渉を経て係合する付記1に記載のコントローラ。
【0045】
(付記3)
前記係合部及び前記被係合部の少なくとも一方は、前記ワークを前記部材に挿入する過程において、前記係合部と前記被係合部の相互の干渉により一時的に変形又は変位し、前記係合部が前記被係合部を乗り越えることで、前記係合部が前記被係合部に対し前記ワークの挿入方向と反対方向に係合する付記2に記載のコントローラ。
【0046】
(付記4)
前記ワークの前記部材に対する挿入完了の判定は、前記ワークの挿入深さが所定の第3閾値より大きい場合に行われる付記1~付記3の何れかに記載のコントローラ。
【符号の説明】
【0047】
1 ロボットシステム
10 ロボット
11 力覚センサ
12 コントローラ
21 ワーク
22 部材
23 係合部
24 被係合部
30 凹部
Fz 押し付け力(力)
Fth1 第1閾値
Fth2 第2閾値
Hth 第3閾値
P1 第1変曲点
P2 第2変曲点