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特開2024-130562経路地図作成装置および経路地図作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130562
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】経路地図作成装置および経路地図作成方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20240920BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240920BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040376
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室谷 和哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷島 範安
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴大
(72)【発明者】
【氏名】小谷 匡士
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇弘
【テーマコード(参考)】
2C032
5H301
【Fターム(参考)】
2C032HC08
5H301AA01
5H301BB10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD02
5H301DD05
5H301DD15
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】点検ロボットによる容易な自律走行と所定地点での正確な点検業務とを可能とする経路地図作成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】点検ロボットの教示走行情報を取得する教示走行情報取得部と、前記教示走行情報に示される走行経路が角度を有して接する結合箇所を抽出する結合箇所抽出部と、前記点検ロボットの走行性能と、前記点検ロボットが点検動作を実施する点検地点とに基づいて、前記結合箇所において接する走行経路間の行き来を可能とする新たな追加経路を生成する追加経路生成部とを備えた経路地図作成装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検ロボットの教示走行情報を取得する教示走行情報取得部と、
前記教示走行情報に示される走行経路が角度を有して接する結合箇所を抽出する結合箇所抽出部と、
前記点検ロボットの走行性能と、前記点検ロボットが点検動作を実施する点検地点とに基づいて、前記結合箇所において接する走行経路間の行き来を可能とする新たな追加経路を生成する追加経路生成部とを備えた
経路地図作成装置。
【請求項2】
前記追加経路生成部は、曲率半径が前記点検ロボットの最小旋回半径以上の曲線によって構成された新たな追加経路を生成する
請求項1に記載の経路地図作成装置。
【請求項3】
前記追加経路生成部は、前記点検地点から前記結合箇所までの間に、前記新たな追加経路の端部を生成する
請求項1に記載の経路地図作成装置。
【請求項4】
前記追加経路生成部は、前記点検ロボットを走行させる施設内の各部の路面状況に基づいて、前記新たな追加経路を生成する
請求項1に記載の経路地図作成装置。
【請求項5】
前記追加経路生成部は、前記施設内の各部に対して前記路面状況に応じた路面属性をタグ付けし、生成した前記新たな追加経路が前記路面属性のタグ付けが切り替わる部分を通過する場合には、前記新たな追加経路を修正する
請求項4に記載の経路地図作成装置。
【請求項6】
さらに、前記点検ロボットによる点検走行時の実走行情報を取得する実走行情報取得部と、
前記教示走行情報取得部で取得した教示走行情報と、前記実走行情報取得部で取得した実走行情報とを比較し、前記点検ロボットの走行に所定以上の負荷がかかる箇所を抽出する走行情報比較部とを備え、
前記追加経路生成部は、前記走行情報比較部において抽出された箇所における経路形状を修正する
請求項1に記載の経路地図作成装置。
【請求項7】
さらに、前記点検ロボットを遠隔操作によって教示走行させるための遠隔操作部を備えた
請求項1に記載の経路地図作成装置。
【請求項8】
教示走行情報取得部が、点検ロボットの教示走行情報を取得し、
結合箇所抽出部が、前記教示走行情報に示される走行経路が角度を有して接する結合箇所を抽出し、
追加経路生成部が、前記点検ロボットの走行性能と、前記点検ロボットが点検動作を実施する点検地点とに基づいて、前記結合箇所において接する走行経路間の行き来を可能とする新たな追加経路を生成する
経路地図作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路地図作成装置および経路地図作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノード・リンク形式の経路地図作成装置および経路地図作成方法に関する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、「移動体の走行可能な経路を表す移動経路地図の作成方法において、前記移動体の手動走行による走行軌跡上の複数の節点(ノード)と、隣接する節点同士を連結したパス経路とからなる初期経路を登録する第1のステップ(S1)と、…交差するパス経路を判別して交点を生成する交点生成処理(S5)と、から少なくとも一の処理を行なう」と記載され、さらに「2のパス経路が交差していると判定された場合には、前記定義したように交点を導出し、ここに新たに節点を生成する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-316760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の技術では、パス経路(リンク)が交差している箇所を新たな節点(ノード)とすることで、複数の移動経路の追加が可能である。しかしながら、パス経路が交差している箇所に、そのまま新しい節点(ノード)を生成しているため、生成される節点(ノード)は、多くの場合十字路となり、直進、もしくは直角な右左折によって通過する経路となる。これにより、作成された経路の実際の路面状況や、経路を走行させるロボットの性能によっては、直角な右左折が困難な場合もある。
【0005】
また、このようにして形成した移動経路を走行するロボットの中には、経路上に設定された所定の地点において所定の姿勢・動作で点検業務を遂行する点検ロボットがある。このため、点検ロボットを走行させるための経路地図の作成において、移動経路を追加する際には点検地点を考慮する必要がある。
【0006】
そこで本発明は、点検ロボットによる容易な自律走行と所定地点での正確な点検業務とを可能とする経路地図作成装置および経路地図作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、点検ロボットの教示走行情報を取得する教示走行情報取得部と、前記教示走行情報に示される走行経路が角度を有して接する結合箇所を抽出する結合箇所抽出部と、前記点検ロボットの走行性能と、前記点検ロボットが点検動作を実施する点検地点とに基づいて、前記結合箇所において接する走行経路間の行き来を可能とする新たな追加経路を生成する追加経路生成部とを備えた経路地図作成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、点検ロボットによる容易な自律走行と所定地点での点検業務を可能とする経路地図作成装置および経路地図作成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る経路地図作成装置のブロック図である。
図2】ノード・リンク形式の経路地図と点検ロボットの点検業務を説明するための図である。
図3】点検ロボットによる点検パターン上での点検動作を説明するための図である。
図4】第1実施形態に係る経路地図作成方法における教示走行情報と結合箇所の抽出を説明するための図である。
図5】第1実施形態に係る経路地図作成方法におけるノード・リンクの生成の第1事例(その1)を示す図である。
図6】第1実施形態に係る経路地図作成方法におけるノード・リンクの生成の第2事例を示す図である。
図7】第1実施形態に係る経路地図作成方法におけるノード・リンクの生成の第3事例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る経路地図作成方法におけるノード・リンクの生成の第4事例を示す図である。
図9】第1実施形態の変形例1を説明するための図である。
図10】第1実施形態に係る経路地図作成方法の変形例1を説明する図である。
図11】第1実施形態に係る経路地図作成方法の変形例2の第1事例を説明する図である。
図12】第1実施形態に係る経路地図作成方法の変形例2の第1事例において実施する修正処理を示す図である。
図13】第1実施形態に係る経路地図作成方法の変形例2の第2事例を説明する図である。
図14】第1実施形態に係る経路地図作成方法の変形例2の第2事例において実施する修正処理を示す図(その2)である。
図15】第2実施形態に係る経路地図作成装置のブロック図である。
図16】第3実施形態に係る経路地図作成装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した各実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下においては、同一構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る経路地図作成装置1のブロック図である。この図に示す経路地図作成装置1は、点検ロボット10が自律走行するためのノード・リンク形式の経路地図を作成するものである。図2は、ノード・ドリンク形式の経路地図100と点検ロボット10の点検業務を説明するための図である。ここでは、経路地図作成装置1の構成を説明するのに先立ち、経路地図100と点検ロボット10の構成を説明する。
【0012】
<経路地図100について>
図2に示す経路地図100は、施設内において、点検ロボット10を走行させるための経路を示す。ここで施設とは、点検ロボット10による点検対象が敷地内に配置された場所であることとする。この施設が、例えば図示したような発電所や変電所などの電力施設であれば、鉄塔31、ここでの図示を省略した架線などを含む変電設備や発電設備類、さらには計器32等が、点検ロボット10による点検対象となる。
【0013】
このような経路地図100は、施設内で走行可能な全ての経路の断片であるリンク102と、リンク102同士の結合点を表すノード101によって構成されている。全てのノード101およびリンク102には固有のID(identifier)が付与されている。また、全てのノード101は、固有のIDに関連付けされた基準座標系に対する座標値を備えており、全てのリンク102は、固有のIDに関連付けされたリンク形状に関する情報を備えている。このため、ノード・リンク形式の経路地図100は、点検ロボット10を走行させる走行経路をリンクIDの配列で表すことができる。
【0014】
また、この経路地図100は、点検ロボット10が点検業務を実施する点検地点103に関する情報を有する。各点検地点103は、点検対象の近傍に配置されたリンク102上に設定されている。図2に示した例において、点検地点103は、点検対象である鉄塔31や計器32に近接するリンク102上に設定される。これらの各点検地点103には、固有のIDが付与されている。このため、この経路地図100によれば、選択された点検地点103と、選択された点検地点103が配置されたリンク102を含む走行経路102aとで構成された複数の点検パターンの管理が容易である。なお、図2においては、ノード・リンク形式の経路地図100の説明のため、1つの点検パターンの走行経路102aのみを図示している。
【0015】
ここで、施設内に点在する各点検対象は、それぞれに必要とされる点検頻度が異なる。このため、経路地図100に対しては、複数の点検パターンを設定できることが必須となる。また、施設内に設定した走行経路102aは、例えば設備更新工事などのために一時的に封鎖されることがある。この場合、封鎖箇所を迂回するように、走行経路102aを設定し直す必要がある。したがって、経路地図100に対しては、走行経路102aの随時組換え可能であることが要求される。
【0016】
<点検ロボット10について>
図1および図2を参照し、点検ロボット10は、走行駆動部10a、点検動作部10b、操作部10d、および制御部10cを有する。このうち走行駆動部10aは、その駆動機構が限定されることはなく、車輪やクローラなどであってよい。また点検動作部10bは、一例としてカメラとその駆動部を有する撮像機構や各種のセンサが例示される。点検動作部10bが撮像機構である場合、カメラはいかなる種類のカメラであってもよく、遠隔操作で撮影方向(カメラの首振り)を制御可能なPTZ(Pan-Tilt-Zoom)カメラが例示される。操作部10dは、以降に説明する教示走行において走行駆動部10aによる走行、および点検動作部10bによる点検動作を操作するための部分である。
【0017】
また制御部10cは、設定された点検パターンに基づいて、走行駆動部10aおよび点検動作部10bの動作を制御するとともに、教示走行においては操作部10dからの操作指示に基づいて走行駆動部10aおよび点検動作部10bの動作を制御する。
【0018】
図3は、点検ロボット10による点検動作を説明するための図であって、点検動作部10b(図1参照)が撮像機構の場合を示している。この図に示すように、点検ロボット10は、設定された点検パターンの走行経路102aにより、走行経路102a上の点検地点103に達する。この点検地点103において、点検ロボット10は、点検動作部10bにより点検対象の撮影や測定を実施する。この際、点検ロボット10は、点検動作部10bを正確な姿勢および動作によって、点検対象(例えば計器32)に向けることにより、正確な点検の実施が可能となる。
【0019】
図示した例においては、点検対象としての鉄塔31や計器32の撮影を実施し、点検対象の外観の異常や数値の異常の有無を確認する。このように、点検ロボット10は、従来人手で行っている電力施設内での点検を自動化し省力化する。
【0020】
<経路地図作成装置1>
図1に戻り、以下に、上述した点検ロボット10を走行させるための経路地図作成装置1の構成を説明する。図1に示す経路地図作成装置1は、サーバー上または複数の施設の点検ロボット10を管理するための管制センター上に設けられた計算機によって構成されている。計算機は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアであって、ネットワークインターフェースを備える。ハードウェアは、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの広義のプロセッサデバイスを用いてもよい。このような経路地図作成装置1は、経路地図を作成するための経路地図作成プログラムを不揮発性の記憶部に保存する。
【0021】
次に、この経路地図作成装置1を構成する各機能部を説明する。この経路地図作成装置1は、教示走行情報取得部11、結合箇所抽出部12、および追加経路生成部13の各機能部を有する。これらの各機能部は、次のようである。
【0022】
[教示走行情報取得部11]
教示走行情報取得部11は、点検ロボット10から、点検を実施する施設内においての教示走行情報を取得する。教示走行情報取得部11が取得する教示走行情報の詳細は、以降の経路地図作成方法において詳細に説明する。
【0023】
[結合箇所抽出部12]
結合箇所抽出部12は、教示走行情報取得部11で取得した教示走行情報に基づいて、教示走行情報が有する走行経路が角度を有して接する部分を結合箇所として抽出する。抽出した結合箇所は、教示走行情報とともに追加経路生成部13に送信する。この結合箇所抽出部12による結合箇所の抽出の詳細は、以降の経路地図作成方法において詳細に説明する。
【0024】
[追加経路生成部13]
追加経路生成部13は、点検ロボット10の走行性能と、点検ロボット10が点検動作を実施する点検地点103とに基づく経路形状の計算により、結合箇所抽出部12で抽出した結合箇所において、角度を有して接する走行経路間の行き来を可能とする新たな追加経路を生成する。この追加経路生成部13による新たなノードとリンクの生成の詳細な手順は、次の経路地図作成方法において詳細に説明する。
【0025】
なお、追加経路生成部13において、走行経路に対して追加経路を生成して作成された経路地図は、例えば点検パターン作成部20に送付して保持され、新たな点検パターンの作成や点検パターンの組み換えに利用される。なお、点検パターン作成部20は、経路地図作成装置1と同一のハードウェア内に設けられていてもよし、別であってもよい。
【0026】
<経路地図作成方法>
次に、図1に示す経路地図作成装置1に保持された経路地図作成プログラムによって実施される経路地図作成方法の手順を、図1および他の図を参照しつつ説明する。
【0027】
[教示走行ステップ]
先ず、教示走行ステップにおいて、教示走行情報取得部11は、点検ロボット10による点検を実施する施設内においての異なる複数の教示走行情報を取得する。教示走行情報とは、点検ロボット10に設定したい点検パターンごとに、手動操作などで実際に点検ロボット10を走行させることで得た情報であって、点検ロボット10から送信された情報である。
【0028】
図4は、第1実施形態に係る経路地図作成方法における教示走行情報と結合箇所の抽出を説明するための図であって、2回の教示走行によって教示走行情報取得部11が得た各教示走行情報[D1],[D2]を示している。各教示走行情報[D1],[D2]は、点検パターンに基づいて、手動操作で走行した際の走行経路102a,102bの情報と、走行経路102a,102b上において点検を実施した点検地点103の情報とを含む。走行経路102a,102bは、複数のリンク102をノード101で結合した構成であって、実際に点検ロボット10を走行させた経路である。したがって、各教示走行情報[D1],[D2]が示す走行経路102a,102bは、点検ロボット10の走行が可能な経路である。
【0029】
これらの教示走行情報[D1],[D2]は、例えば教示走行に際して手動または自動で作成され、点検ロボット10に記憶され、例えば教示走行情報取得部11からの要求に従って、または自動的に教示走行情報取得部11に送信される。
【0030】
[結合箇所抽出ステップ]
次に、結合箇所抽出ステップにおいて、結合箇所抽出部12は、教示走行情報取得部11が取得した複数の教示走行情報[D1],[D2]に基づいて、走行経路102a,102bの結合箇所[p]を抽出する。結合箇所[p]とは、走行経路102a,102bが、角度を有して接している箇所であり、結合箇所[p]を介して走行経路102aと走行経路102bとの間を行き来する経路の形成が可能な箇所である。
【0031】
図4に示した例においては、2つの走行経路102a,102bが交差している2カ所の結合箇所[p1],[p2]と、2つの走行経路102a,102bが分岐する2カ所の結合箇所[p3],[p4]が抽出される。
【0032】
このうち、2つの走行経路102a,102bが交差している結合箇所[p1]については、結合箇所[p1]を介して2つの走行経路102a,102bの行き来を可能とする経路として、図中に双方向矢印で示した4つの想定経路[R]が示される。これは、結合箇所[p2]において同様である。また、2つの走行経路102a,102bが分岐している結合箇所[p3]については、結合箇所[p3]を介して2つの走行経路102a,102bの行き来を可能とする経路として、1つの想定経路[R]が示される。これは、結合箇所[p4]において同様である。
【0033】
以上の各結合箇所[p]において、各想定経路[R]を構成する2つの走行経路102a,102bの挟角が直角か、またはそれ以下の角度である場合、点検ロボット10による想定経路[R]の通過は困難な場合がある。
【0034】
そこで、以降においては、結合箇所[p]を頂点とした走行経路102a,102bの挟角(つまり想定経路[R]の挟角)が、所定角度以下(例えば100度以下)の想定経路[R]について、次のようにして走行経路102aと走行経路102bとの間を走行する新たな経路を生成する。なお、結合箇所[p]を頂点とした走行経路102a,102bの挟角が、所定角度を超える(例えば100度を超える)想定経路[R]については、結合箇所[p]に新たなノードを追加し、ノードが追加された部分のリンクを2つに分ければよい。
【0035】
[追加ノード生成ステップ]
追加ノード生成ステップにおいて、追加経路生成部13は、結合箇所抽出部12で抽出した結合箇所[p]から点検地点103までの間に、点検ロボット10の走行性能に基づいて、追加ノードを生成する。追加ノードの生成は、想定経路[R]上に対して実施する。生成した追加ノード101ad1,101ad2には、固有のIDと座標値が付与される。
【0036】
図5図8は、第1実施形態に係る経路地図作成方法におけるノード・リンクの生成の第1事例~第4事例を示す図であり、図4における結合箇所[p1]の4つの想定経路[R]のうちの1つを例示している。
【0037】
ここで、点検ロボット10の走行性能は、点検ロボット10が走行する路面状況に応じた点検ロボット10の最小旋回半径で表される。このため、追加経路生成部13には、最小旋回半径以上の所定距離[Lth]が予め設定されていることとする。そして、追加経路生成部13は、結合箇所[p]から所定距離[Lth]内に点検地点103があるか否かを判断し、ある場合には点検地点103に追加ノードを生成し、ない場合には所定距離[Lth]に追加ノードを生成する。なお、追加経路生成部13による追加ノード101ad1,101ad2の生成手順については、以降において図5図8に示した事例毎に詳細に説明する。
【0038】
[リンク生成ステップ]
次いで、リンク生成ステップにおいて、追加経路生成部13は、生成した追加ノード101ad1,101ad2と、設定した所定距離[Lth]とに基づいて、経路形状を計算して追加リンク102adを生成する。この際、追加経路生成部13は、曲率半径が点検ロボット10の最小旋回半径以上の曲線、によって構成された新たな追加経路として、追加リンク102adを生成する。追加リンク102adには、固有のIDとリンク形状を付与する。そして、ここで生成した追加リンクadと、その両端の追加ノード101ad1,101ad2とで、2つの走行経路102a,102bを行き来する新たな経路が生成される。追加経路生成部13による追加リンク102adの生成手順については、以下において図5図8に示した事例毎に詳細に説明する。
【0039】
-第1事例(図5)-
図5を用いて、ノード・リンクの生成の第1事例を説明する。図5に示す第1事例は、2つの走行経路102a,102b上の両方ともに、結合箇所[p1]から所定距離[Lth]までの範囲内に、点検地点103が存在していない場合の例である。この場合、追加経路生成部13は、走行経路102a,102b上における結合箇所[p1]から所定距離[Lth]の各地点に、各追加ノード101ad1,101ad2を生成する。
【0040】
次に、追加経路生成部13は、各追加ノード101ad1,101ad2を、それぞれの走行経路102a,102bに対する接点とする1つの円[C1]を生成する。この円[C1]は、半径が所定距離[Lth]の円となる。そして、この円[C1]における追加ノード101ad1,101ad2を両端部とする円弧のうちの短い方の円弧(例えば1/4円弧)からなる線分を、追加リンク102adとして生成する。
【0041】
-第2事例(図6)-
図6を用いて、ノード・リンクの生成の第2事例を説明する。図6に示す第2事例は、一方の走行経路102a上において、結合箇所[p1]から所定距離[Lth]までの範囲内に点検地点103が存在せず、他方の走行経路102b上において、結合箇所[p1]から所定距離[Lth]までの範囲内に点検地点103が存在している場合の例である。この場合、追加経路生成部13は、一方の走行経路102a上において、結合箇所[p1]から所定距離[Lth]の地点に、追加ノード101ad1を生成する。これに対し、追加経路生成部13は、他方の走行経路102b上において、結合箇所[p1]から所定距離[Lth]までの範囲内にある点検地点103に追加ノード101ad2を生成する。
【0042】
次に、追加経路生成部13は、点検地点103に生成した追加ノード101ad2を、走行経路102bに対する接点として、半径が所定距離[Lth]の円[C2]を生成する。次いで、追加経路生成部13は、円[C2]と走行経路102aとに接する、半径が所定距離[Lth]の円[C3]を生成する。円[C3]は、円[C2]を挟んで結合箇所[p1]の反対側に生成する。そして、走行経路102aに生成した追加ノード101ad1を、円[C3]と走行経路102aとの接点に移動させ、追加ノード101ad1に付与した座標値を変更する。
【0043】
その後、追加ノード101ad2と移動させた追加ノード101ad1との間の、円[C2]と円[C3]との円弧で構成される連続した線分を、追加リンク102adとして生成する。
【0044】
-第3事例(図7)-
図7を用いて、ノード・リンクの生成の第3事例を説明する。図7に示す第3事例は、2つの走行経路102a,102b上の両方ともに、結合箇所[p1]から所定距離[Lth]までの範囲内に、点検地点103が存在する場合の例である。この場合、追加経路生成部13は、各点検地点103に、追加ノード101ad1,101ad2を生成する。
【0045】
次に、追加経路生成部13は、各追加ノード101ad1,101ad2から結合箇所[p1]方向に延びる各走行経路102a,102b上を接点として、半径が所定距離[Lth]の円[C4]を生成する。そして、この円[C4]における走行経路102a,102bとの接点を両端部とする円弧のうちの長い方の円弧(例えば3/4円弧)と、各追加ノード101ad1,101ad2までの連続した線分を、追加リンク102adとして生成する。これにより、追加ノード101ad1,101ad2と追加リンクadとで、2つの走行経路102a,102bを行き来する新たな経路が生成される。
【0046】
-第4事例(図8)-
図8を用いて、ノード・リンクの生成の第4事例を説明する。図8に示す第4事例は、第3事例の変形例であって、点検ロボット10がバック走行可能なものである場合に適用される。この場合、各点検地点103に、追加ノード101ad1,101ad2を生成するまでは同様に実施する。
【0047】
次に、追加経路生成部13は、各追加ノード101ad1,101ad2を、それぞれの走行経路102a,102bに対する接点として、半径が所定距離[Lth]の2つの円[C5],[C6]を生成する。その後、追加経路生成部13は、結合箇所[p1]側において2つの円[C5],[C6]を内接する1つの大円[C7]を生成する。この大円[C7]は、半径が所定距離[Lth]より大きいものとなる。
【0048】
そして、半径が所定距離[Lth]の円[C5]において、追加ノード101ad1との接点と大円[C7]との接点を両端部とする円弧のうち、短い方の円弧(例えば1/4円弧)からなる線分を、追加リンク102ad-1として生成する。同様に、半径が所定距離[Lth]の円[C6]において、追加ノード101ad2との接点と大円[C7]との接点を両端部とする円弧のうち、短い方の円弧(例えば1/4円弧)からなる線分を、追加リンク102ad-2として生成する。さらに、2つの円[C5],[C6]との各接点を両端部とする、大円[C7]の円弧のうち、短い方の円弧からなる線分を、追加リンク102ad3として生成する。
【0049】
そして、以上のように追加した3つの追加リンク102ad-1~102ad3をつなげて1つの追加リンク102adとする。この追加リンク102adのうち、大円[C7]の円弧で構成される追加リンク102ad3には、点検ロボット10をバック走行させる経路であることの情報を付加する。
【0050】
<第1実施形態の効果>
以上説明した第1実施形態によれば、教示走行で得られた2つの走行経路102a,102bが角度を有して接している結合箇所[p]に、2つの走行経路102a,102bを行き来する新たな経路を追加することにより、走行経路102a,102bの随時組換えが可能な経路地図を得ることができる。
【0051】
しかも、この経路地図に追加された新たな経路は、点検地点103に影響のない位置に生成した2つの追加ノード101ad1,101ad2と、点検ロボット10の走行性能を考慮して生成した追加リンク102adとによって構成されている。
【0052】
この結果、第1実施形態の経路地図作成装置1および経路地図作成方法によれば、新たに生成した経路を用いることにより、点検パターンにおける走行経路102a,102bの変更が可能でありながらも、変更した走行経路においての点検ロボット10による容易な自律走行と所定地点での正確な点検業務の実施が可能なノード・リンク形式の経路地図を得ることができる。
【0053】
なお、以上の第1実施形態で説明した各事例における追加リンクの生成方法は、あくまで一例であり、点検ロボット10の走行性能を考慮した生成方法であれば上記の事例に限定されることはない。
【0054】
また、以上の第1実施形態は、教示走行情報が1つの場合であっても、その教示走行情報が有する1つの走行経路が中間部において角度を有して接している箇所を有する場合にも適用可能であり、同様の効果が期待できる。
【0055】
≪第1実施形態の変形例1≫
図9は、第1実施形態の変形例1を説明するための図であり、第1実施形態の説明に用いた図4に対応する図である。この図に示すように、施設内において、点検ロボット10が走行する路面状況は一様ではない。例えば、発電所や変電所などの電力施設であれば、鉄板を敷き詰めたダクトと呼ばれる整地201、および砕石が敷き詰められた不整地202などで敷地が構成されている。この場合、整地201と不整地202との路面高さが異なるため、両者が切り替わる地点は数cm以上の段差となる。
【0056】
このような場合、図1に示した経路地図作成装置1の追加経路生成部13は、路面状況を考慮して経路形状を計算した追加経路の生成を実施する。
【0057】
ここで図9に示すような施設内の各部の路面状況は、例えば外部サーバーから得た地図情報に基づいて、整地201および不整地202の何れかの路面属性にタグ付けされることとする。この場合、経路地図作成装置1(図1参照)は、経路地図の作成に際して、外部サーバーから敷地内の地図情報を取得し、取得した地図情報に基づいて、路面属性のタグ付けを実施する。そして、路面属性のタグ付け情報は、追加経路生成部13に保持させる。
【0058】
また、路面属性のタグ付けの別の例として、点検ロボット10を用いた教示走行を実施する際に、点検ロボット10の操作部10d(図1参照)の操作により、教示走行の走行経路上において路面属性のタグ付けを実施してもよい。この場合、教示走行情報[D1]、[D2]は、路面属性のタグ付け情報を含む。
【0059】
例えば、発電所や変電所などの電力施設であれば、整地201としてのダクトは、1mまたは2mの所定幅を有しており、その両脇は砕石を敷き詰めた不整地202である。このため、予め整地201であるダクトの幅を設定しておくことで、教示走行中に走行経路の路面属性をタグ付けすることにより、施設内のある程度の範囲について、各部の路面属性のタグ付けが可能である。具体的には、点検ロボット10の操作部10dに、タグ付け用の第1ボタンと第2ボタンを割り当て、ダクト(整地201)上を走行中は第1ボタンを、砕石(不整地202)上を走行中は第2ボタンを押下することでタグ付けを行うことができる。また別の具体例としては、点検ロボット10にLiDAR(Light Detection and Ranging)センサを搭載し、路面凹凸を計測することによって自動でタグ付けを実行できるように構成してもよい。
【0060】
<経路地図作成方法>
図10は、第1実施形態に係る経路地図作成方法の変形例1を説明する図であり、第1実施形態の説明に用いた図6に対応する図である。以下、先の図1および図10、さらには他の必要図を参照して経路地図作成方法の変形例1を説明する。
【0061】
[教示走行ステップおよび結合箇所抽出ステップ]
先ず、第1実施形態の経路地図作成方法と同様の手順で、教示走行ステップと、結合箇所抽出ステップとを実施する。なお、教示走行ステップにおいて取得する教示走行情報[D1],[D2]は、先に説明したように路面属性のタグ付け情報を含む場合もある。
【0062】
[追加ノード生成ステップ]
追加ノード生成ステップにおいて、追加経路生成部13は、結合箇所抽出部12で抽出した結合箇所[p]から点検地点103までの間に、点検ロボット10の走行性能と、路面属性のタグ付け情報とに基づいて、追加ノードad1,101ad2を生成する。
【0063】
この際、追加経路生成部13は、第1実施形態で実施した結合箇所[p1]から所定距離[Lth]の範囲内に点検地点103があるか否かの判断に加えて、結合箇所[p1]から所定距離[Lth]の範囲内に整地201と不整地202との切り替わり部があるか否かを判断する。そして、所定距離[Lth]の範囲内に整地201と不整地202との切り替わり部があって、その切り替わり部が点検地点103よりも結合箇所[p1]に近い場合には、切り替わり部の結合箇所[p1]側に、追加ノード101ad2を生成する。以上は、図10に示した例において、整地201と不整地202とが逆に配置されている場合も同様である。
【0064】
また、ここでは、生成される追加ノード101ad1,101ad2のうちの一方が、整地201と不整地202との切り替わり部に生成された場合を示したが、上記の判断により、両方とも切り替わり部に生成される場合、および両方とも切り替わり部に生成されない場合もあり得る。
【0065】
[追加リンク生成ステップ]
追加リンク生成ステップにおいて、追加経路生成部13は、第1実施形態において図5図8の第1事例~第4事例で説明した追加リンク102adの生成手順と同様に、追加ノード101ad1,101ad2の位置により、それぞれに対応する事例の手順で経路形状を計算して追加リンクを生成する。
【0066】
<変形例1の効果>
以上説明した第1実施形態の変形例1によれば、新たに生成する追加リンク102adは、路面状況の切り替わり部を含まない位置から開始される。このため、第1実施形態の効果に加えて、さらに路面状況の変化に対応して点検ロボット10の走行が可能な経路の生成が可能である。
【0067】
≪第1実施形態の変形例2≫
第1実施形態の変形例2は、図1に示した経路地図作成装置1の追加経路生成部13が、路面状況を考慮して経路形状を計算した追加経路の生成を実施する場合の他の例である。この場合、変形例1と同様に、追加経路生成部13は、路面属性のタグ付け情報を保持しているか、または教示走行情報[D1]、[D2]が路面属性のタグ付け情報を含む。
【0068】
<経路地図作成方法>
次に、この場合の経路地図作成方法を説明する。経路地図作成装置1は、第1実施形態および変形例1で説明した手順と同様の手順で、追加ノード101ad1,101ad2および追加リンク102adの生成を行う。これにより、2つの走行経路102a,102bを行き来する新たな経路を生成するまでを実施し、次のチェックステップに進む。
【0069】
次に、経路地図作成装置1の追加経路生成部13は、新たに生成した経路の追加リンク102adのチェックと修正を実施する。この場合、追加経路生成部13は、路面属性のタグ付け情報と、新たに生成した経路に関する情報とに基づいて、追加リンク102adの途中に、整地201と不整地202との切り替わり部が存在するか否か、および追加ノード101ad1,101ad2が整地201上にあるか不整地202上にあるかを判断する。
【0070】
図11は、第1実施形態に係る経路地図作成方法の変形例2を説明する図(その1)である。図11は、追加リンク102adの途中に、整地201と不整地202との切り替わり部分が存在し、追加ノード101ad1,101ad2が整地201上にある場合の事例を示している。この場合、追加リンク102ad上を走行する点検ロボット10は、段差を有する整地201から不整地202に対して斜めの角度から進入することになり、実際の走行が困難であることが予想される。そこで、追加経路生成部13は、次のように生成した経路を修正する。
【0071】
図12は、第1実施形態に係る経路地図作成方法の変形例2において実施する修正処理を示す図(その1)である。図12に示すように、追加経路生成部13は、生成した追加リンク102adを破棄する。そして、結合箇所[p]に、さらに新たな追加ノード101ad3を生成する。これにより、追加ノード101ad1とさらに新たな追加ノード101ad3を両端とする新たな追加リンク102ad1と、追加ノード101ad2とさらに新たな追加ノード101ad3を両端とする新たな追加リンク102ad2を生成し、これらによる新たな経路を生成する。
【0072】
図13は、第1実施形態に係る経路地図作成方法の変形例2を説明する図(その2)である。図13は、追加リンク102adの途中に、整地201と不整地202との切り替わり部分が存在し、追加ノード101ad1,101ad2が不整地202上に存在する場合の事例を示している。この場合、先の事例と同様に、追加リンク102ad上を走行する点検ロボット10は、段差を有する整地201から不整地202に対して斜めの角度から進入することになり、実際の走行が困難である。また、たとえ整地201において超信地旋回可能な性能を有する点検ロボット10であっても、摩擦係数が大きい不整地202においての超信地旋回は不可能な場合がある。追加経路生成部13は、次のように生成した経路を修正する。
【0073】
図14は、第1実施形態に係る経路地図作成方法の変形例2において実施する修正処理を示す図(その2)である。図14に示すように、追加経路生成部13は、生成した追加リンク102adを破棄する。そして、結合箇所[p]における想定経路[R]のあらたな経路の生成を中止する。
【0074】
またこの場合、図8を用いて説明した事例のように、点検ロボット10がバック走行可能な場合は、細かい切り返しを複数回用いた新たな経路の生成を実施してもよい。
【0075】
なお、以上の変形例2の場合、追加経路生成部13は、整地201と不整地202との切り替わり部を通過しないように、経路形状の計算に用いた所定距離[Lth]を調整し、第1実施形態の各事例で説明した手順で新たな追加経路を修正してもよい。その際、追加経路生成部13は、新たな追加経路が整地201上に生成されるか不整地202上に生成されるかによって、経路形状の計算に用いた所定距離[Lth]を適する値に変更する。
【0076】
以上の他、ここでの図示は省略したが、敷地内には、設備などの配置や地形により、点検ロボット10走行が不可能な走行不可領域が存在する場合がある。追加経路生成部13は、生成した追加リンク102adの途中に、走行不可領域が存在すると判断した場合には、生成した追加リンク102adを破棄する。そして、結合箇所[p]における想定経路[R]のあらたな経路の生成を中止する。なお、この場合、追加経路生成部13は、路面属性のタグ付け情報として、走行不可領域のタグ付け情報も保持していることとする。
【0077】
<変形例2の効果>
以上説明した第1実施形態の変形例2によれば、新たに生成した追加リンク102adの路面状況に応じて、追加リンク102adを含む新たな経路の修正を行うことにより、第1実施形態の効果に加えて、さらに路面状況の変化に対応して点検ロボット10の走行が可能な経路の生成が可能といった効果も得られる。
【0078】
≪第2実施形態≫
図15は、第2実施形態に係る経路地図作成装置2のブロック図である。図15に示す経路地図作成装置2は、図1を用いて説明した経路地図作成装置1に対して、実走行情報取得部14と走行情報比較部15とを追加した構成であり、これにより、追加経路生成部13’に機能が追加される。他の構成は変形例1,2を含み、第1実施形態の経路地図作成装置1と同様である。このため、以下においては、実走行情報取得部14、走行情報比較部15、および追加経路生成部13’の構成を説明する。
【0079】
[実走行情報取得部14]
実走行情報取得部14は、点検ロボット10が自律走行による定期的な点検走行を実施した場合の実走行情報を取得するモニタリング部である。実走行情報取得部14が取得する実走行情報は、例えば、点検ロボット10の自律走行においての加速度や振動、走行駆動部10aにおける駆動機構の電流やトルクなどでる。これらの実走行情報は、通常の点検ロボット10に搭載されている機器やセンサ(図示省略)によって取得できる全てのデータを用いることができる。なお、第1実施形態で説明した教示走行情報[D1],[D2]にも、これらの情報が含まれているものとする。
【0080】
[走行情報比較部15]
走行情報比較部15は、教示走行情報の特徴量と実走行情報の特徴量とを比較し、両者が乖離している箇所を、走行経路内から抽出する。教示走行情報の特徴量と実走行情報の特徴量とが乖離している箇所は、点検ロボット10の走行において負荷が大きいと推定される箇所である。走行情報比較部15は、走行経路内におけるこのような箇所を、経路の修正箇所として抽出する。
【0081】
走行情報比較部15による特徴量の比較方法が限定されることはないが、例えば教示走行情報における駆動機構のトルクの最大値と、実走行情報における駆動機構のトルクの最大値とを、走行経路の各地点において比較する方法が例示される。この場合、実走行時の駆動機構への負荷が、教示走行時の駆動機構への負荷より大きい箇所を特定することができる。
【0082】
また走行情報比較部15は、前述した各種の実走行情報の値を入力値とし、点検ロボット10の実走行において所定以上の負荷がかかっているか否かの合否判定を行う識別機として構成されたものであってもよい。この場合、事前に点検ロボット10をテスト用の走行経路で走行させて走行情報を取得し、取得した走行情報毎に合否判定を与えて学習させることで、識別機とすることができる。さらに、合格情報として教示走行情報を与えて追加学習することで、より実運用時の条件に即した識別機に更新することができる。
【0083】
以上のように、教示走行情報と実走行情報とを比較することで、敷地内の走行経路上において、点検ロボット10の走行に負荷がかかっている箇所を実運用時の条件に即して見つけることが可能である。
【0084】
また、走行情報比較部15は、抽出した修正箇所に関する情報を、経路修正パラメータと共に、追加経路生成部13’に送信する。ここで、経路修正パタメータとは、例えば点検ロボット10の実走行においての負荷の大きさである。
【0085】
[追加経路生成部13’]
追加経路生成部13’は、第1実施形態、さらには変形例1および変形例2で説明した手順を実行する機能の他にさらに、次のような手順を実行する機能を有する。
【0086】
追加経路生成部13’は、走行情報比較部15から、修正箇所に関する情報および修正パタメータが入力されると、これらに基づいて走行経路の修正処理を実行する。ここで、教示走行によって得られた走行経路102a,102b(図9参照)は、点検ロボット10による実走行可能な経路である。このため、ここでの修正処理は、実質的には追加経路生成部13’が経路形状の計算によって生成した経路の修正(または再修正)処理となる。
【0087】
修正の方法は様々考えられるが、簡易的な一例としては、経路形状の計算に用いた所定距離[Lth]を経路修正パラメータの大きさに応じて変更し、経路形状の計算を再実行すればよい。高負荷の原因は路面の微妙な凹凸などによるものであることが多い。このため、所定距離[Lth]を、経路修正パラメータの大きさに応じて大きい値に変更するだけで、負荷が大きく変わる場合がある。これによって負荷が低減すれば、修正した経路地図を恒久的に採用すればよいし、負荷が却って増大する場合は、負荷が低減されるまで、経路地図修正装置の動作を実行する。
【0088】
<第2実施形態の効果>
以上説明した第2実施形態によれば、経路地図作成装置2で生成した新たな追加経路を、点検ロボット10の実走行情報に基づいて修正することにより、確実に点検ロボット10が走行可能な経路地図を得ることが可能になる。このため、変形例1,2を含む第1実施形態の効果をさらに確実な効果とすることが可能である。また、点検ロボット10の走行に対する負荷が軽減されることにより、点検ロボット10の故障発生を抑えることも可能である。
【0089】
なお、本第2実施形態においては、経路地図作成装置2によって自動で経路形状の修正を実行する構成を説明したが、別の一例としては、ユーザが手作業で経路を修正してもよい。
【0090】
≪第3実施形態≫
図16は、第3実施形態に係る経路地図作成装置3のブロック図である。図16に示す経路地図作成装置3は、図1を用いて説明した経路地図作成装置1に対して、遠隔操作部16と教示走行情報保持部17とを追加した構成である。他の構成は変形例1,2を含み、第1実施形態の経路地図作成装置1と同様である。このため、以下においては、遠隔操作部16と教示走行情報保持部17の構成を説明する。
【0091】
[遠隔操作部16]
遠隔操作部16は、点検ロボット10の遠隔操作を可能とするものであり、点検ロボット10を遠隔操作によって教示走行させるために用いられる。このような遠隔操作部16は、例えば端末の画面上に表示した矢印ボタンや、あるいはゲームコントローラなどによって入力した点検ロボット10への操作指令を点検ロボット10に入力するインターフェースや、点検ロボット10の稼働状況(例えば点検動作部10bによって撮影されたリアルタイム映像)をユーザに向けて表示するインターフェースを備えており、ユーザの意図通りに点検ロボット10を遠隔操作することが可能とする。
【0092】
さらに遠隔操作部16は、教示走行情報取得部11と連携して動作し、例えば教示走行情報取得部11に対して情報取得指令を送信して、遠隔操作中の点検ロボット10から教示走行情報を取得させることを可能とする。遠隔操作により取得された教示走行情報は、第1実施形態および第2実施形態と同様に処理され、新たな経路地図を作成することに利用される。これにより、現地での手動走行による教示走行、および遠隔地からの遠隔操作による教示走行のどちらを利用しても経路地図の作成が可能となる。
【0093】
[教示走行情報保持部17]
教示走行情報保持部17は、点検ロボット10の運用開始前に事前に取得した教示走行情報を保持する。これにより、事前に取得した教示走行情報と、その後の遠隔操作による教示走行によって取得した教示走行情報とを合わせて経路地図を作成することが可能となる。
【0094】
またこの場合、追加経路生成部13は、過去に追加経路生成部13において作成した新たな経路を有する経路地図に対し、さらに現地での手動走行による教示走行、または遠隔操作からの遠隔操作による教示走行の教示走行情報を用いて、さらに、新たな経路を追加した経路地図を作成する構成としてもよい。
【0095】
<第3実施形態の効果>
以上説明した第3実施形態によれば、点検ロボット10の運用を開始したあとでも、遠隔操作による教示走行と経路地図の再作成が可能となる。ここで、点検ロボット10の運用を開始してから時間が経った後、施設に対して新たな設備が導入され、新たな設備を点検対象に追加したい場合には、新しい点検パターンを追加する必要がある。この場合、本第3実施形態によれば、遠隔操作部16からの遠隔操作によって点検ロボット10を教示走行させ、この教示走行によって得た教示走行情報を用いて新たな走行経路を追加した経路地図を作成することも可能になる。本第3実施形態によれば、現地に向かう手間なく、教示走行を用いた容易かつ確実な経路地図作成の恩恵を享受することができる。
【0096】
なお、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1,2,3…経路地図作成装置
10…点検ロボット
11…教示走行情報取得部
12…結合箇所抽出部
13,13’…追加経路生成部
14…実走行情報取得部
15…走行情報比較部
16…遠隔操作部
100…経路地図
101…ノード
101ad1~101ad3…追加ノード
102…リンク
102a,102b…走行経路
102a,102ad1~102ad3…追加リンク(追加経路)
103…点検地点
201…整地
202…不整地
[p],[p1]~[p4],…結合箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16