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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130568
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20240920BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20240920BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20240920BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
F04B39/12 J
F04C29/00 T
F04C29/00 S
H02K11/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040385
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲瀬▼ 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】浦辺 祥吾
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
5H611
【Fターム(参考)】
3H003AA01
3H003AB05
3H003AC03
3H003CD01
3H003CE02
3H003CF01
3H129AA01
3H129AA15
3H129AB03
3H129BB32
3H129CC09
3H129CC27
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB06
5H611TT01
5H611TT02
5H611UA04
5H611UB01
(57)【要約】
【課題】基板の歪みを抑制できる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】第1のホルダ70は、回路基板60に支持され、インバータ回路116を搭載している。第2のホルダ80は、回路基板60に支持され、電磁コイルL1を搭載している。第1のホルダ70に搭載されているインバータ回路116は、第2のホルダ80に搭載されている電子部品110よりも発熱量が大きい。第1のホルダ70に、カラー72が取り付けられている。第2のホルダ80に、カラー86が取り付けられている。ボルトが第1のホルダ70とインバータハウジング42とを締結していない状態で、カラー72はインバータハウジング42から離れて配置されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータの回転を制御する駆動回路を含む駆動回路アセンブリとを備える、電動圧縮機であって、
前記駆動回路アセンブリは、
回路基板と、
前記駆動回路を構成する複数の電子部品と、
前記回路基板に支持され、前記複数の電子部品のうちの少なくとも1つの電子部品を搭載する、第1および第2のホルダと、を備え、
前記第1のホルダは、前記第1のホルダに取り付けられた第1中空筒部材を有し、
前記第2のホルダは、前記第2のホルダに取り付けられた第2中空筒部材を有し、
前記第2のホルダに搭載されている電子部品よりも発熱量が大きい電子部品である発熱部品が、前記第1のホルダに搭載されており、
前記電動圧縮機はさらに、前記複数の電子部品を収容するとともに、前記発熱部品から熱伝導を受ける、ハウジング部と、
前記第1中空筒部材を貫通して、前記第1のホルダを前記ハウジング部に締結する第1ネジ部材と、
前記第2中空筒部材を貫通して、前記第2のホルダを前記ハウジング部に締結する第2ネジ部材と、を備え、
前記第2ネジ部材が前記第2のホルダと前記ハウジング部とを締結し、かつ、前記第1ネジ部材が前記第1のホルダと前記ハウジング部とを締結していない状態では、前記第1中空筒部材は前記ハウジング部から離れて配置される、電動圧縮機。
【請求項2】
前記第2ネジ部材は前記回路基板を貫通する、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記第1ネジ部材は前記回路基板を貫通しない、請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記回路基板は、前記第1中空筒部材に対向する位置が切り欠かれた切欠き部を有する、請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記ハウジング部は、前記第1中空筒部材と接触する第1接触面と、前記第2中空筒部材と接触する第2接触面とを有し、
前記第1接触面に、前記第1ネジ部材が締結される第1雌ねじ穴が形成されており、
前記第2接触面に、前記第2ネジ部材が締結される第2雌ねじ穴が形成されており、
前記第1接触面と前記第2接触面とは同一平面上に位置する、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記第1中空筒部材は、複数の第1中空筒部材を有し、
前記発熱部品は、前記複数の第1中空筒部材の間に配置されている、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記複数の第1中空筒部材は、3つ以上の第1中空筒部材を有する、請求項6に記載の電動圧縮機。
【請求項8】
前記第1のホルダは、前記第1のホルダに取り付けられた第3中空筒部材を有し、
前記第1ネジ部材が前記第1のホルダと前記ハウジング部とを締結していない状態で、前記第3中空筒部材は前記ハウジング部と接触する、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項9】
前記第1のホルダは、前記第3中空筒部材と前記発熱部品との間に、前記発熱部品よりも高い位置精度が求められる精密位置決め部を搭載する、請求項8に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は,電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-122439号公報(特許文献1)には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの発熱要素を含むパワー系ユニットがリードにより制御基板に固定され、制御基板はボルトを介して本体ハウジングの設置面に固定され、パワー系ユニットが設置面に押し付けられて設置面との間で熱交換され、パワー系ユニットで生じた熱が放熱される技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-122439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の技術では、制御基板を本体ハウジングの設置面にボルトで固定する際に、制御基板に作用する応力が大きくなり、制御基板の歪み量が増大することがある。この歪みによって、制御基板に実装されている電子部品に不具合が生じたり、冷熱試験による耐久性評価の精度が低下したりすることがある。
【0005】
本開示では、電子部品の発生する熱を確実に放熱でき、基板の歪みを抑制できる、電動圧縮機が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、以下の電動圧縮機が提案される。
【0007】
電動圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータの回転を制御する駆動回路を含む駆動回路アセンブリとを備えている。駆動回路アセンブリは、回路基板と、駆動回路を構成する複数の電子部品と、回路基板に支持され、複数の電子部品のうちの少なくとも1つの電子部品を搭載する、第1および第2のホルダと、を備えている。第1のホルダは、第1のホルダに取り付けられた第1中空筒部材を有している。第2のホルダは、第2のホルダに取り付けられた第2中空筒部材を有している。第2のホルダに搭載されている電子部品よりも発熱量が大きい電子部品である発熱部品が、第1のホルダに搭載されている。電動圧縮機はさらに、複数の電子部品を収容するとともに、発熱部品から熱伝導を受ける、ハウジング部と、第1中空筒部材を貫通して、第1のホルダをハウジング部に締結する第1ネジ部材と、第2中空筒部材を貫通して、第2のホルダをハウジング部に締結する第2ネジ部材と、を備えている。第2ネジ部材が第2のホルダとハウジング部とを締結し、かつ、第1ネジ部材が第1のホルダとハウジング部とを締結していない状態では、第1中空筒部材はハウジング部から離れて配置される。
【0008】
上記の電動圧縮機において、第2ネジ部材は回路基板を貫通していてもよい。
【0009】
上記の電動圧縮機において、第1ネジ部材は回路基板を貫通していなくてもよい。
【0010】
上記の電動圧縮機において、回路基板は、第1中空筒部材に対向する位置が切り欠かれた切欠き部を有してもよい。
【0011】
上記の電動圧縮機において、ハウジング部は、第1中空筒部材と接触する第1接触面と、第2中空筒部材と接触する第2接触面とを有し、第1接触面に、第1ネジ部材が締結される第1雌ねじ穴が形成されており、第2接触面に、第2ネジ部材が締結される第2雌ねじ穴が形成されており、第1接触面と第2接触面とは同一平面上に位置してもよい。
【0012】
上記の電動圧縮機において、第1中空筒部材は、複数の第1中空筒部材を有し、発熱部品は、複数の第1中空筒部材の間に配置されていてもよい。
【0013】
上記の電動圧縮機において、複数の第1中空筒部材は、3つ以上の第1中空筒部材を有してもよい。
【0014】
上記の電動圧縮機において、第1のホルダは、第1のホルダに取り付けられた第3中空筒部材を有し、第1ネジ部材が第1のホルダとハウジング部とを締結していない状態で、第3中空筒部材はハウジング部と接触してもよい。
【0015】
上記の電動圧縮機において、第1のホルダは、第3中空筒部材と発熱部品との間に、発熱部品よりも高い位置精度が求められる精密位置決め部を搭載してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示の電動圧縮機によると、電子部品の発生する熱を確実に放熱でき、基板の歪みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に従った電動圧縮機の全体構成を示す部分断面図である。
図2】電動モータを駆動する駆動回路の概略構成図である。
図3】インバータユニットの概略分解斜視図である。
図4】駆動回路アセンブリを下方から見た概略図である。
図5】インバータハウジングを平面視した概略図である。
図6】ネジ締結前のインバータユニットを示す断面模式図である。
図7】ネジ締結後のインバータユニットを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0019】
図1は、実施形態に従った電動圧縮機1の全体構成を示す部分断面図である。図1に示されるように、電動圧縮機1は、ハウジング10と、圧縮部20と、電動モータ30と、インバータユニット40とを備えている。
【0020】
ハウジング10は、略円筒形状であり、圧縮部20と電動モータ30とを内部に収容する。ハウジング10には、吸入口11aおよび吐出口11bが形成されている。吸入口11aおよび吐出口11bには、図示しない外部冷媒回路が接続されている。
【0021】
外部冷媒回路は、熱交換器および膨張弁などを含み、電動圧縮機1に対して冷媒を供給する。外部冷媒回路から、吸入口11aに冷媒が吸入される。電動圧縮機1は、外部冷媒回路から供給された冷媒を圧縮する。吐出口11bから、外部冷媒回路に冷媒が吐出される。電動圧縮機1と、外部冷媒回路とは、冷暖房を行なう空調装置を構成している。空調装置は、たとえば車両に搭載されており、車室内の空気の温度などを調節する。
【0022】
圧縮部20は、吸入口11aから吸入された冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒を吐出口11bから吐出させるように構成されている。圧縮部20は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、およびベーンタイプなどのうち、いずれのタイプであってもよい。
【0023】
電動モータ30は、圧縮部20を駆動するように構成されている。電動モータ30は、たとえば、回転軸31と、ロータ32と、ステータ33とを含んでいる。回転軸31は、円柱状であり、ハウジング10に対して回転可能に支持されている。ロータ32は、円筒形状であり、回転軸31に固定されている。ステータ33は、ハウジング10に固定されている。ロータ32とステータ33とは、回転軸31の径方向において、互いに対向している。ステータ33は、円筒形状のステータコア34と、コイル35とを含んでいる。コイル35は、ステータコア34のティースに導線を巻きつけることで形成されている。電動モータ30は、交流回転電機であり、たとえば、ロータ32に永久磁石を埋め込んだIPM(Interior Permanent Magnet)同期電動機であってもよい。
【0024】
インバータユニット40は、インバータカバー41を含んでいる。インバータカバー41は、ハウジング10に固定されている。インバータカバー41内には、中空空間が形成されている。この中空空間に、電動モータ30の駆動回路が収容されている。
【0025】
インバータユニット40によって制御された電力が電動モータ30に供給されることにより、制御された回転速度でロータ32および回転軸31が回転する。この回転によって、圧縮部20が駆動される。圧縮部20が駆動されることにより、外部冷媒回路から吸入口11aを介したハウジング10内への冷媒の吸入、ハウジング10内に吸入された冷媒の圧縮部20による圧縮、および圧縮された冷媒の吐出口11bを介した外部冷媒回路への吐出が行なわれる。
【0026】
図2は、電動モータ30を駆動する駆動回路100の概略構成図である。図2に示されるように、駆動回路100は、電磁コイルL1およびコンデンサ回路114と、インバータ回路116と、制御ECU(Electronic Control Unit)120とを含んでいる。
【0027】
電磁コイルL1は、直流電源Bのプラス電極と正極母線PLとの間に接続されている。コンデンサ回路114は、正極母線PLと負極母線NLとの間に接続されている。電磁コイルL1およびコンデンサ回路114は、ローパスフィルタ回路112を構成している。
【0028】
インバータ回路116は、U相アーム117と、V相アーム118と、W相アーム119とを含んでいる。U相アーム117、V相アーム118およびW相アーム119は、各々が正極母線PLと負極母線NLとの間に接続されている。
【0029】
U相アーム117、V相アーム118およびW相アーム119は、各々、互いに直列に接続されたスイッチング素子を有している。各スイッチング素子は、たとえば、IBGT、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などであり、パワー半導体の一例である。
【0030】
U相アーム117は、電動モータ30のステータ33のU相コイルの一端に接続されている。V相アーム118は、電動モータ30のステータ33のV相コイルの一端に接続されている。W相アーム119は、電動モータ30のステータ33のW相コイルの一端に接続されている。電動モータ30のステータ33のU相コイル、V相コイル、W相コイルの各他端は、中性点に接続されている。
【0031】
インバータ回路116には、直流電源Bからの直流電圧が、リレーRY1,RY2およびローパスフィルタ回路112を介して供給される。U相アーム117、V相アーム118およびW相アーム119に含まれているトランジスタがスイッチング制御されることにより、直流電圧が三相の交流電圧に変換される。変換された交流電圧が電動モータ30に供給されることにより、電動モータ30の回転駆動が制御される。
【0032】
制御ECU120は、CPU(Central Processing Unit)などを含んで構成されており、電動モータ30の駆動を制御するコンピュータプログラムを実行する。
【0033】
図3は、インバータユニット40の概略分解斜視図である。インバータユニット40は、図3に示される駆動回路アセンブリ101と、インバータハウジング42とを備えている。図4は、駆動回路アセンブリ101を下方から見た概略図である。図5は、インバータハウジング42を平面視した概略図である。
【0034】
インバータハウジング42は、ベース面43と、側壁部44とを有している。ベース面43は略平面形状を有している。側壁部44は、ベース面43の周縁部から、ベース面43に対して略垂直に突き出している。ベース面43と側壁部44とは、有底の容器形状を構成している。図1を参照して説明したインバータカバー41は、側壁部44に固定される。インバータカバー41とインバータハウジング42とによって囲まれた中空空間に、駆動回路アセンブリ101が収容される。インバータカバー41とインバータハウジング42とは、駆動回路100を収容する駆動回路収容室を形成している。
【0035】
図1に示されるハウジング10の一部分が、インバータハウジング42を構成してもよい。または、インバータハウジング42は、ハウジング10とは別の部材として構成されてもよく、たとえばボルトを用いてハウジング10に固定されてもよい。インバータハウジング42のベース面43は、電動モータ30を収容するモータ収容室と駆動回路100を収容する駆動回路収容室とを仕切る、仕切壁としての機能を有している。
【0036】
インバータハウジング42は、ベース面43の一部に、放熱面45と、密着面46とを有している。インバータハウジング42は、締結部47~54を有している。締結部47~54は、ベース面43から略垂直に突き出している。各々の締結部47~54は、中空筒状の形状を有しており、内周面が雌ねじ加工されている。各々の締結部47~54には、雌ねじ穴が形成されている。
【0037】
駆動回路アセンブリ101は、回路基板60と、第1のホルダ70と、第2のホルダ80と、図2に示される駆動回路100とを主に有している。
【0038】
回路基板60は、第1のホルダ70と、第2のホルダ80とを支持している。第1のホルダ70と第2のホルダ80とは、たとえば樹脂成型品である。第1のホルダ70と第2のホルダ80とは、各々、図2に示される駆動回路100を構成する複数の電子部品110のうちの、少なくとも1つの電子部品110を搭載している。回路基板60には配線パターンが形成されており、電子部品110は配線パターンを介して電気的に接続されている。回路基板60に、制御ECU120(図2)も実装されていてもよい。
【0039】
図4に示されるように、第1のホルダ70は、たとえば、インバータ回路116を搭載している。第2のホルダ80は、たとえば、電磁コイルL1と、コンデンサ回路114とを搭載している。第2のホルダ80は、ローパスフィルタ回路112(図2)を搭載している。第1のホルダ70に搭載されるインバータ回路116は、第2のホルダ80に搭載される電磁コイルL1およびコンデンサ回路114よりも、発熱量が大きい。インバータ回路116は、第2のホルダ80に搭載されている電子部品110よりも発熱量が大きい電子部品110である、「発熱部品」の一例に対応する。
【0040】
インバータ回路116を構成する6つのスイッチング素子を覆うように、放熱板79が設けられている。放熱板79は、インバータ回路116の全体を覆っている。インバータ回路116は、第1のホルダ70と放熱板79との間に挟まれている。図4に示される放熱板79の表面は、平坦な形状を有している。放熱板79の、図4に示される表面と反対側の裏面は、インバータ回路116を構成する各スイッチング素子の各々に接触している。放熱板79の裏面に、スイッチング素子が直接に面接触してもよい。放熱板79の裏面とスイッチング素子との間に高熱伝導性の材料からなる別の部材が介在して、放熱板79とスイッチング素子とが熱的に接触する構成としてもよい。
【0041】
第1のホルダ70に、カラー71~74が取り付けられている。第2のホルダ80に、カラー85~88が取り付けられている。カラー71~74,85~88は、中空の筒状の形状を有している。典型的には、カラー71~74,85~88は、円筒形状を有している。カラー71~74,85~88は、金属などの導電性材料で形成されてもよい。この場合、カラー71~74,85~88を介して回路基板60と第1のホルダ70および第2のホルダ80とを電気的に接続したり、回路基板60を接地させたりすることが可能になる。
【0042】
金属部品であるカラー71~74,85~88は、第1のホルダ70および第2のホルダ80を成型するときにインサート成形されることで、第1のホルダ70および第2のホルダ80と一体の構造物として成形される。
【0043】
図3に示されるように、回路基板60は、カラー71に対向する位置が切り欠かれた切欠き部61と、カラー72に対向する位置が切り欠かれた切欠き部62と、カラー73に対向する位置が切り欠かれた切欠き部63とを有している。
【0044】
図3に示されるボルト91は、カラー71を貫通して、インバータハウジング42の締結部47に締結される。ボルト92は、カラー72を貫通して、インバータハウジング42の締結部48(図5)に締結される。ボルト93は、カラー73を貫通して、インバータハウジング42の締結部49(図5)に締結される。ボルト94は、カラー74(図4)を貫通して、インバータハウジング42の締結部54(図5)に貫通される。
【0045】
ボルト95は、カラー85(図4)を貫通して、インバータハウジング42の締結部51(図5)に締結される。ボルト96は、カラー86(図4)を貫通して、インバータハウジング42の締結部52に締結される。ボルト97は、カラー87(図4)を貫通して、インバータハウジング42の締結部53に締結される。ボルト98は、カラー88(図4)を貫通して、インバータハウジング42の締結部50(図5)に締結される。
【0046】
各ボルト91~98が、インバータハウジング42の対応する締結部に締結されることにより、回路基板60と、回路基板60に支持されている第1のホルダ70および第2のホルダ80と、第1のホルダ70および第2のホルダ80に搭載されている電子部品110とが、インバータハウジング42に取り付けられる。この状態で、複数の電子部品110はインバータハウジング42に収容されている。放熱板79は、ベース面43に設けられた放熱面45に面接触している。インバータ回路116から、放熱板79を経由して、放熱面45に熱が伝達される。
【0047】
インバータハウジング42は、複数の電子部品110を収容するとともに、発熱部品であるインバータ回路116から熱伝導を受ける、「ハウジング部」の一例に対応する。
【0048】
ボルト94,95~98は、回路基板60を貫通して、インバータハウジング42に締結される。ボルト91~93は、カラー71~73の周囲において回路基板60が切り欠かれているので、回路基板60を貫通しない。
【0049】
第1のホルダ70に取り付けられたカラー71~73は、「第1中空筒部材」の一例に対応する。第2のホルダ80に取り付けられたカラー85~88は、「第2中空筒部材」の一例に対応する。第1のホルダに取り付けられたカラー74は、「第3中空筒部材」の一例に対応する。
【0050】
カラー71~73を貫通してインバータハウジング42に締結されるボルト91~93は、「第1ネジ部材」の一例に対応する。カラー85~88を貫通してインバータハウジング42に締結されるボルト95~98は、「第2ネジ部材」の一例に対応する。カラー74を貫通してインバータハウジング42に締結されるボルト94は、「第3ネジ部材」の一例に対応する。ネジ部材としては、ボルトに限らず、ビスなどでもよい。
【0051】
図4に示されるように、発熱部品であるインバータ回路116は、カラー71とカラー72との間に配置されており、カラー71とカラー73との間に配置されている。3つのカラー71,72,73は、インバータ回路116の周囲に配置されており、インバータ回路116を取り囲むように配置されている。
【0052】
第1のホルダ70は、さらに、端子部76を搭載している。端子部76は、図2に示される駆動回路100と電動モータ30とを電気的に接続している。具体的に、端子部76は、UVW三相の端子を有している。端子部76のU相の端子を介して、U相アーム117と電動モータ30のU相コイルとが、電気的に接続されている。端子部76のV相の端子を介して、V相アーム118と電動モータ30のV相コイルとが、電気的に接続されている。端子部76のW相の端子を介して、W相アーム119と電動モータ30のW相コイルとが、電気的に接続されている。
【0053】
端子部76の三相の端子は、インバータハウジング42のベース面43を貫通して、電動モータ30を収容するモータ収容室と駆動回路100を収容する駆動回路収容室に亘って配置されている。第1のホルダ70がインバータハウジング42に取り付けられた状態で、端子部76の一部分は、ベース面43に設けられた密着面46に密着する。端子部76は密着面46に対して気密に固定されており、これによりモータ収容室の気密性が確保されている。端子部76は、モータ収容室と駆動回路収容室との気密を保つ気密端子である。
【0054】
端子部76は、カラー74とインバータ回路116との間に配置されている。端子部76は、インバータ回路116よりも高い位置精度が求められる「精密位置決め部」の一例に対応する。
【0055】
図6は、ネジ締結前のインバータユニット40を示す断面模式図である。図6および後続の図7には、インバータハウジング42と、インバータハウジング42に載せ置かれた駆動回路アセンブリ101との、所定の折れ線に沿う断面が図示されている。当該折れ線は、カラー72を通りインバータ回路116を通り、折れ曲がって電磁コイルL1を通りカラー86を通るように延びている。
【0056】
図6に示されるバスバー121,122は、回路基板60に形成されている配線パターンと、第1のホルダ70とを電気的に接続している。第1のホルダ70は、バスバー121,122を介して、回路基板60に支持されている。リード123,124は、回路基板60に形成されている配線パターンと、インバータ回路116とを電気的に接続している。リード125,126は、回路基板60に形成されている配線パターンと、電磁コイルL1とを電気的に接続している。
【0057】
締結部48は、頂面48sを有している。頂面48sから締結部48の内部に穿たれた有底穴の内周面が雌ねじ加工されて、雌ねじ穴が形成されている。この雌ねじ穴にボルト92が締結される。締結部52は、頂面52sを有している。頂面52sから締結部52の内部に穿たれた有底穴の内周面が雌ねじ加工されて、雌ねじ穴が形成されている。この雌ねじ穴にボルト96が締結される。
【0058】
締結部48の頂面48sは、締結部48にボルト92が締結されることによりカラー72と接触する。締結部48の頂面48sは、「第1接触面」の一例に対応する。締結部48に形成されている雌ねじ穴は、「第1雌ねじ穴」の一例に対応する。締結部52の頂面52sは、カラー86と接触する。締結部52の頂面52sは、「第2接触面」の一例に対応する。締結部52に形成されている雌ねじ穴は、「第2雌ねじ穴」の一例に対応する。
【0059】
図6に示されるネジ締結前の状態で、ボルト92は締結部48に締結されておらず、ボルト96は締結部52に締結されていない。この状態で、カラー86は締結部52に接触している。カラー86は、締結部52の頂面52sに当接する端面を有している。一方、カラー72は、締結部48から離れて配置されている。カラー72と締結部48の頂面48sとの間に、隙間56が形成されている。
【0060】
締結部48の頂面48sと、締結部52の頂面52sとは、同一平面上に位置している。第1のホルダ70に取り付けられているカラー72と、第2のホルダ80に取り付けられているカラー86とは、ボルト92,96の締結方向(図6,7においては、図中の上下方向)において、互いにずれて配置されている。これにより、締結部48の頂面48sとカラー72との間に隙間56が形成され、締結部52の頂面52sとカラー86とは隙間なく接触する構成が実現されている。
【0061】
図7は、ネジ締結後のインバータユニット40を示す断面模式図である。ボルト96は回路基板60を貫通しカラー86を貫通して、締結部52に締結されている。図6に示されるネジ締結前においてもカラー86は締結部52の頂面52sに接触しているので、ボルト96が締結された後も、インバータハウジング42に対する第2のホルダ80および電磁コイルL1の位置は、実質的に不変である。
【0062】
ボルト92は、回路基板60を貫通しない。ボルト92は、回路基板60に形成されている切欠き部62を通ってカラー72を貫通して、締結部48に締結されている。図6に示されるネジ締結前においては、締結部48の頂面48sとカラー72との間に隙間56が形成されている。ボルト92を締結することにより、カラー72は締結部48に向かって移動して、図7に示されるように、カラー72は締結部48の頂面48sに接触する。
【0063】
このとき、第1のホルダ70は、少なくともその一部分が、インバータハウジング42に向かって変位する。第1のホルダ70の全体が変位してもよいが、図7に示されるように第1のホルダ70をたわませることで、第1のホルダ70の一部分のみを変位させることができる。第1のホルダ70の剛性を第2のホルダ80の剛性よりも小さくして、第1のホルダ70が容易にたわむ構造としてもよい。
【0064】
第1のホルダ70の変位によって、放熱板79は、インバータハウジング42の放熱面45に押し付けられる。これにより、インバータ回路116で発生した熱の、放熱板79および放熱面45を介した、インバータハウジング42への熱伝導が促進される。図1を参照して説明した通り、吸入口11aから冷媒がハウジング10内に吸入される。低温低圧の冷媒がインバータハウジング42の近くを流れ、冷媒によってインバータハウジング42が冷却される。このようにして、発熱量の大きいインバータ回路116の発生する熱を、確実に放熱できる構成とされている。
【0065】
ボルト96は、回路基板60と第2のホルダ80とを共締めしている。カラー86は、ボルト96を締結する前に、既に締結部52に接触している。一方、カラー72は、ボルト92を締結する前には締結部48から離れて配置され、ボルト92を締結することで締結部48に接触する。カラー72は、回路基板60から離れて配置されている。ボルト92を締結するときに、回路基板60へ伝わる応力が低減されている。これにより、回路基板60の歪みを抑制することができる。
【0066】
図3,7に示されるように、ボルト95~98が回路基板60を貫通してインバータハウジング42に締結されることにより、回路基板60と第2のホルダ80とをボルト95~98で確実に共締めすることができる。
【0067】
図3,7に示されるように、ボルト91~93が回路基板60を貫通しないことにより、ボルト91~93を締結するときに回路基板60へ伝わる応力を確実に低減することができる。
【0068】
図3に示されるように、回路基板60に切欠き部61~63が形成されていることにより、ボルト91~93が回路基板60を貫通しない構成を確実に実現することができる。
【0069】
図6,7に示されるように、締結部48の頂面48sと締結部52の頂面52sとが同一平面上にあることで、インバータハウジング42の切削加工が容易になり、生産性を向上することができる。
【0070】
図4に示されるように、カラー71とカラー73との間にインバータ回路116が配置されていることにより、ボルト91,93を締結してインバータ回路116を放熱面45へ向けて押圧して、インバータ回路116から放熱面45への放熱を促進することができる。
【0071】
図4に示されるように、3つのカラー71,72,73がインバータ回路116を取り囲むように配置されていることにより、ボルト91~93を締結してインバータ回路116を放熱面45へ向けて押圧して、インバータ回路116から放熱面45への放熱をさらに促進することができる。
【0072】
図3,4に示されるように、第1のホルダ70に取り付けられているカラー74の配置は、他のカラー71~73の配置とは異なる。回路基板60の、カラー74に対向する位置には、切欠き部が形成されていない。カラー74を貫通してインバータハウジング42の締結部54に締結されるボルト94は、回路基板60を貫通する。カラー74は、第2のホルダ80に取り付けられているカラー85~88と同様に、ボルト94が締結されていない状態で、インバータハウジング42(締結部54の頂面)に接触する。
【0073】
カラー74の近傍に、端子部76が配置されている。第1のホルダ70は、カラー74とインバータ回路116との間に、端子部76を搭載している。端子部76は、気密端子を有しており、インバータ回路116よりも高い位置精度が求められる。カラー74を締結部54の頂面に接触させて、カラー74をインバータハウジング42に対して位置決めすることにより、端子部76の位置精度を向上することができる。端子部76の気密端子が、モータ収容室の気密性を確実に保つことのできる構成を、実現することができる。
【0074】
実施形態の説明においては、カラー72とカラー86との位置をずらすことによって、カラー86を締結部52の頂面52sに接触させ、カラー72と締結部48の頂面48sとの間に隙間56を形成する例について説明した。この場合、カラー71~74,85~88を同じ部品で構成することができ、部品の共通化によるコスト低減を図ることができる。この構成に替えて、カラー72の長さをカラー86の長さよりも短くすることで、ボルト92が締結されていない状態でカラー72と締結部48との間に隙間56を形成する構成としてもよい。または、インバータハウジング42の締結部48の高さを締結部52の高さよりも小さくして、締結部の頂面の位置をずらすことで、カラー72と締結部48との間に隙間56を形成してもよい。
【0075】
実施形態の説明では、インバータ回路116とインバータハウジング42の放熱面45との間に放熱板79を介在させ、インバータ回路116が発生する熱が放熱板79を経由してインバータハウジング42に伝達される例について説明した。放熱板79は必ずしも設けられなくてもよい。インバータ回路116に含まれる複数のスイッチング素子の全てを放熱面45に面接触させて、インバータ回路116からインバータハウジング42に直接に熱伝導する構成としてもよい。
【0076】
また、本明細書では以下の発明を含んでいる。
【0077】
(付記1)
冷媒を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータの回転を制御する駆動回路を含む駆動回路アセンブリとを備える、電動圧縮機であって、
前記駆動回路アセンブリは、
回路基板と、
前記駆動回路を構成する複数の電子部品と、
前記回路基板に支持され、前記複数の電子部品のうちの少なくとも1つの電子部品を搭載する、第1および第2のホルダと、を備え、
前記第1のホルダは、前記第1のホルダに取り付けられた第1中空筒部材を有し、
前記第2のホルダは、前記第2のホルダに取り付けられた第2中空筒部材を有し、
前記第2のホルダに搭載されている電子部品よりも発熱量が大きい電子部品である発熱部品が、前記第1のホルダに搭載されており、
前記電動圧縮機はさらに、前記複数の電子部品を収容するとともに、前記発熱部品から熱伝導を受ける、ハウジング部と、
前記第1中空筒部材を貫通して、前記第1のホルダを前記ハウジング部に締結する第1ネジ部材と、
前記第2中空筒部材を貫通して、前記第2のホルダを前記ハウジング部に締結する第2ネジ部材と、を備え、
前記第2ネジ部材が前記第2のホルダと前記ハウジング部とを締結し、かつ、前記第1ネジ部材が前記第1のホルダと前記ハウジング部とを締結していない状態では、前記第1中空筒部材は前記ハウジング部から離れて配置される、電動圧縮機。
【0078】
(付記2)
前記第2ネジ部材は前記回路基板を貫通する、付記1に記載の電動圧縮機。
【0079】
(付記3)
前記第1ネジ部材は前記回路基板を貫通しない、付記2に記載の電動圧縮機。
【0080】
(付記4)
前記回路基板は、前記第1中空筒部材に対向する位置が切り欠かれた切欠き部を有する、付記3に記載の電動圧縮機。
【0081】
(付記5)
前記ハウジング部は、前記第1中空筒部材と接触する第1接触面と、前記第2中空筒部材と接触する第2接触面とを有し、
前記第1接触面に、前記第1ネジ部材が締結される第1雌ねじ穴が形成されており、
前記第2接触面に、前記第2ネジ部材が締結される第2雌ねじ穴が形成されており、
前記第1接触面と前記第2接触面とは同一平面上に位置する、付記1から付記4のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0082】
(付記6)
前記第1中空筒部材は、複数の第1中空筒部材を有し、
前記発熱部品は、前記複数の第1中空筒部材の間に配置されている、付記1から付記5のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0083】
(付記7)
前記複数の第1中空筒部材は、3つ以上の第1中空筒部材を有する、付記6に記載の電動圧縮機。
【0084】
(付記8)
前記第1のホルダは、前記第1のホルダに取り付けられた第3中空筒部材を有し、
前記第1ネジ部材が前記第1のホルダと前記ハウジング部とを締結していない状態で、前記第3中空筒部材は前記ハウジング部と接触する、付記1から付記7のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0085】
(付記9)
前記第1のホルダは、前記第3中空筒部材と前記発熱部品との間に、前記発熱部品よりも高い位置精度が求められる精密位置決め部を搭載する、付記8に記載の電動圧縮機。
【0086】
以上のように実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 電動圧縮機、10 ハウジング、11a 吸入口、20 圧縮部、30 電動モータ、40 インバータユニット、42 インバータハウジング、43 ベース面、44 側壁部、45 放熱面、46 密着面、47~54 締結部、48s,52s 頂面、56 隙間、60 回路基板、61~63 切欠き部、70 第1のホルダ、71~74,85~88 カラー、76 端子部、79 放熱板、80 第2のホルダ、91~98 ボルト、100 駆動回路、101 駆動回路アセンブリ、110 電子部品、116 インバータ回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7