(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130573
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】監視衛星、監視衛星群、監視衛星システム、監視衛星の監視方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B64G 1/10 20060101AFI20240920BHJP
B64G 1/24 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B64G1/10 300
B64G1/10 600
B64G1/24 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040392
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】本間 裕也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 景亮
(72)【発明者】
【氏名】森 広宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 英樹
(57)【要約】
【課題】飛行物体に対する脅威物体に迅速に対処すること。
【解決手段】複数の監視衛星200からなる監視衛星群20と、脅威物体Tの調査を行うSDA衛星10と、を含む監視衛星システム1であって、ミッションコマンドを送信又は受信した複数の監視衛星200のうち、SDA衛星10と通信できる位置にある監視衛星200は、ミッションコマンドをSDA衛星10に送信する監視衛星システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理部と、通信部と、飛行物体を監視して前記飛行物体に対する脅威物体を発見する監視部と、を備え、
前記管理部は、前記飛行物体を監視するよう、前記監視部に指示を送信する監視指示部と、前記監視部が前記脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報であるミッションコマンドを作成するミッションコマンド作成部と、を含み、
前記通信部は、前記脅威物体を調査するSDA衛星に前記ミッションコマンドを送信する、
監視衛星。
【請求項2】
前記管理部は、前記監視衛星の位置に関する判定を行う位置判定部を含み、
前記通信部は、前記SDA衛星と通信できる位置にあると前記位置判定部が判定した前記監視衛星から、前記SDA衛星に前記ミッションコマンドを送信する、
請求項1に記載の監視衛星。
【請求項3】
管理部と、通信部と、飛行物体を監視して前記飛行物体に対する脅威物体を発見する監視部と、を備え、
前記管理部は、前記飛行物体を監視するよう、前記監視部に指示を送信する監視指示部と、前記監視部が前記脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報であるミッションコマンドを作成するミッションコマンド作成部と、を含み、
前記通信部は、他の監視衛星に、前記ミッションコマンドを送信する、
監視衛星。
【請求項4】
管理部と、通信部と、飛行物体を監視して前記飛行物体に対する脅威物体を発見する監視部と、を備え、
前記管理部は、監視衛星の位置に関する判定を行う位置判定部と、前記飛行物体を監視するよう、前記監視部に指示を送信する監視指示部と、を含み、
前記監視指示部は、前記監視衛星が前記飛行物体を監視できる位置にあると前記位置判定部が判定したとき、前記飛行物体を監視するよう、前記監視部に指示を送信する、
監視衛星。
【請求項5】
前記監視衛星を飛行させる駆動部を備え、
前記管理部は、他の監視衛星と互いに間隔を空けて軌道を飛行するよう、前記駆動部に指示を送信する駆動指示部を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の監視衛星。
【請求項6】
大容量のデータストレージを備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の監視衛星。
【請求項7】
前記監視部が取得したデータに基づき、前記脅威物体が前記飛行物体に対して攻撃又は通信妨害を行っているか否かを判定するアルゴリズムを備える請求項1から4のいずれか1項に記載の監視衛星。
【請求項8】
互いに間隔を空けて地球を周回し飛行物体を監視する複数の監視衛星からなる監視衛星群であって、
前記監視衛星は、前記飛行物体を監視できる位置にあるとき、前記飛行物体の監視を行い、
前記監視衛星は、前記飛行物体の監視を行う間に前記飛行物体に対する脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報を他の前記監視衛星に送信する、
監視衛星群。
【請求項9】
前記監視衛星は、地球の低軌道を飛行する、
請求項8に記載の監視衛星群。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の監視衛星群と、前記脅威物体の調査を行うSDA衛星と、を含む監視衛星システムであって、
前記脅威物体に関する情報は、前記SDA衛星に前記脅威物体の調査を指示するミッションコマンドであり、
前記ミッションコマンドを送信又は受信した前記複数の監視衛星のうち、前記SDA衛星と通信できる位置にある前記監視衛星は、前記ミッションコマンドを前記SDA衛星に送信する、
監視衛星システム。
【請求項11】
互いに間隔を空けて地球を周回し飛行物体を監視する複数の監視衛星からなる、監視衛星群において、
前記監視衛星は、前記飛行物体を監視できる位置にあるとき、前記飛行物体の監視を行い、
前記監視衛星は、前記飛行物体の監視を行う間に前記飛行物体に対する脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報を他の前記監視衛星に送信する、
監視衛星の監視方法。
【請求項12】
互いに間隔を空けて地球を周回し飛行物体を監視する複数の監視衛星からなる監視衛星群と、前記飛行物体に対する脅威物体の調査を行うSDA衛星と、を含む監視衛星システムにおいて、
前記監視衛星は、前記飛行物体の監視を行う間に前記脅威物体を発見したとき、前記SDA衛星に前記脅威物体の調査を指示するミッションコマンドを作成し、
前記監視衛星が、前記SDA衛星と通信できる位置にあるときに、前記ミッションコマンドを前記SDA衛星に送信する、
監視衛星の監視方法。
【請求項13】
互いに間隔を空けて地球を周回し飛行物体を監視する複数の監視衛星からなる、監視衛星群において、
前記監視衛星が、前記飛行物体を監視できる位置にあるとき、前記飛行物体の監視を行うことと、
前記監視衛星が、前記飛行物体の監視を行う間に前記飛行物体に対する脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報を他の前記監視衛星に送信することと、を実行させるための
プログラム。
【請求項14】
互いに間隔を空けて地球を周回し飛行物体を監視する複数の監視衛星からなる監視衛星群と、前記飛行物体に対する脅威物体の調査を行うSDA衛星と、を含む監視衛星システムにおいて、
前記監視衛星が、前記飛行物体の監視を行う間に前記脅威物体を発見したとき、前記SDA衛星に前記脅威物体の調査を指示するミッションコマンドを作成することと、
前記監視衛星が、前記SDA衛星と通信できる位置にあるときに、前記ミッションコマンドを前記SDA衛星に送信することを実行させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視衛星、監視衛星群、監視衛星システム、監視衛星の監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星は、地球観測、測位システム、インターネット通信等に活用されている。例えば特許文献1には、地球上の複数の端末装置(例えば、ドローン、自動運転車)を、常時的に遠隔管理可能な衛星システム(衛星コンステレーション)が開示されている。
【0003】
地球からの高度が約36,000kmである静止軌道(Geostationary Earth Orbit,GEO)を飛行する静止衛星は、地球上の特定の場所を同じ方向から継続的に観測できるため、気象衛星や通信衛星として運用されている。また、地球からの高度が2,000km以下である低軌道(Low Earth Orbit,LEO)を周回する宇宙ステーション(高度約400km)も、微小重力下や宇宙環境下での科学研究のために運用されている(例えば、国際宇宙ステーション(International Space Station,ISS))。以下では、これらの静止衛星や宇宙ステーションを、まとめて「飛行物体」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報第2017/175696号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飛行物体の運用にとって脅威となる、脅威物体の存在が懸念されている。脅威物体は、例えば、飛行物体に対して攻撃や通信妨害を行う人工衛星(「脅威衛星」と呼ばれる)である。また、意図的な攻撃や通信妨害は行わないが、運用中の飛行物体へ接近して衝突するおそれのあるスペースデブリも、脅威物体に含まれる。スペースデブリは、例えば、運用を終えた人工衛星や、故障した人工衛星である。運用される飛行物体の数の急速な増加に伴い、脅威物体の数も増加すると予想されている。飛行物体の運用にとって脅威となる脅威物体には、迅速に対処する(例えば、脅威衛星の攻撃を回避する、スペースデブリを捕獲する)要請がきわめて高い。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、飛行物体に対する脅威物体に迅速に対処することを可能とする、監視衛星システム、監視衛星、監視衛星の監視方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、監視衛星は、管理部と、通信部と、飛行物体を監視して前記飛行物体に対する脅威物体を発見する監視部と、を備え、前記管理部は、前記飛行物体を監視するよう、前記監視部に指示を送信する監視指示部と、前記監視部が前記脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報であるミッションコマンドを作成するミッションコマンド作成部と、を含み、前記通信部は、前記脅威物体を調査するSDA衛星に前記ミッションコマンドを送信する。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、監視衛星群は、互いに間隔を空けて地球を周回し飛行物体を監視する複数の監視衛星からなる監視衛星群であって、前記監視衛星は、前記飛行物体を監視できる位置にあるとき、前記飛行物体の監視を行い、前記監視衛星は、前記飛行物体の監視を行う間に前記飛行物体に対する脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報を他の前記監視衛星に送信する。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、監視衛星システムは、本発明の第2の態様の監視衛星群と、前記脅威物体の調査を行うSDA衛星と、を含む監視衛星システムであって、前記脅威物体に関する情報は、前記SDA衛星に前記脅威物体の調査を指示するミッションコマンドであり、前記ミッションコマンドを送信又は受信した前記複数の監視衛星のうち、前記SDA衛星と通信できる位置にある前記監視衛星は、前記ミッションコマンドを前記SDA衛星に送信する。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、監視衛星の監視方法は、互いに間隔を空けて地球を周回し飛行物体を監視する複数の監視衛星からなる、監視衛星群において、前記監視衛星は、前記飛行物体を監視できる位置にあるとき、前記飛行物体の監視を行い、前記監視衛星は、前記飛行物体の監視を行う間に前記飛行物体に対する脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報を他の前記監視衛星に送信する。
【0011】
本発明の第5の態様によれば、プログラムは、互いに間隔を空けて地球を周回し飛行物体を監視する複数の監視衛星からなる、監視衛星群において、前記監視衛星が、前記飛行物体を監視できる位置にあるとき、前記飛行物体の監視を行うことと、前記監視衛星が、前記飛行物体の監視を行う間に前記飛行物体に対する脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報を他の前記監視衛星に送信することと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飛行物体に対する脅威物体に迅速に対処することを可能とする、監視衛星、監視衛星群、監視衛星システム、監視衛星の監視方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る監視衛星システムの構成を示した図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るSDA衛星の構成を示した図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る監視衛星の構成を示した図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る監視衛星の監視方法のフロー図である。
【
図5】関連する監視衛星システムの概略を示した図である。
【
図7】最小構成による監視衛星の監視方法の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
<第1実施形態>
以下、
図1~5を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0016】
<監視衛星システム>
図1は、本発明の第1実施形態に係る監視衛星システムの構成を示した図である。
図1に示すように、監視衛星システム1は、SDA衛星10と、監視衛星群20とを備える。SDA衛星10と監視衛星群20とは、それぞれ地球E周辺の軌道を飛行する。監視衛星システム1は、飛行物体Sに対する脅威物体Tを監視する。本実施形態では、飛行物体Sは静止衛星である。本実施形態では、脅威物体Tは、飛行物体Sに接近する脅威衛星である。
【0017】
[SDA衛星]
図2は、本発明の第1実施形態に係るSDA衛星の構成を示した図である。SDA衛星10は、管理部11と、通信部12と、駆動部13と、調査部14と、電源部15とを備える。SDAは、宇宙状況把握(Space Domain Awareness)の略称である。
【0018】
SDA衛星10は、脅威物体Tが検知された場合に、脅威物体Tが検知された旨の情報(以下、「検知情報」という)と、予測される脅威物体Tの位置情報(以下、「予測位置情報」という)と、脅威物体Tに対して実行する調査の指示に関する情報(以下、「調査指示情報」という)とを含む情報(以下、「ミッションコマンド」という)を受信し、脅威物体Tに接近するように移動し、脅威物体Tの調査を実行する。SDA衛星10は、予め地上の運用者が定めた期間の間、脅威物体Tの調査を行う。SDA衛星10は、ある脅威物体Tの調査を行っている間も、ミッションコマンドを受信することができる。SDA衛星10は、ある脅威物体Tの調査を終了した後に、受信したミッションコマンドに基づいて次に調査を行う脅威物体Tを決定し、次の調査を実行する。
【0019】
本実施形態では、SDA衛星10は、脅威物体Tが検知されていない平常時には、飛行物体(静止衛星)Sと同じく、地球Eの静止軌道(GEO)を飛行している。
【0020】
管理部11は、通信部12から受信したミッションコマンドに基づき、駆動部13、調査部14の動作を制御する。管理部11は、コンピュータである。管理部11は、例えば、オンボードコンピュータのプロセッサ及びメモリで構成されるが、この構成に限られず、公知のものを含む様々なコンピュータを用いることができる。管理部11は、駆動指示部111と、位置判定部112と、調査指示部113と、データ送信部114とを備える。
【0021】
駆動指示部111は、SDA衛星10がミッションコマンドを受信した後に、受信した予測位置情報に基づき、脅威物体Tに接近するように、マヌーバ(SDA衛星10の移動)を行うよう、駆動部13に指示を送信する。所定の調査を実行するためにじゅうぶん近くまでSDA衛星10が脅威物体Tに移動したと、後述する位置判定部112が判定したとき、駆動指示部111は、マヌーバを終了するよう、駆動部13に指示を送信する。
【0022】
位置判定部112は、所定の調査を実行するためにじゅうぶん近くまでSDA衛星10が脅威物体Tに移動したか否かの判定を行う。
【0023】
位置判定部112は、例えば、画像記録部(不図示)と、脅威物体検出部(不図示)とを備える。画像記録部は、後述する調査部14のセンサ部141が定期的に取得する、SDA衛星10近傍の画像データ(例えば、可視光画像データ、サーモグラフィデータ)を記録する。脅威物体検出部は、新たに取得された画像データを、前回取得された画像データと比較して、脅威物体Tが画像データで検出されたか否かを判定する。脅威物体Tが画像データで検出されたとき、位置判定部112は、所定の調査を実行するためにじゅうぶん近くまでSDA衛星10が脅威物体Tに移動したと判定する。
【0024】
調査指示部113は、所定の調査を実行するためにじゅうぶん近くまでSDA衛星10が脅威物体Tに移動したと位置判定部112が判定したとき、受信した調査指示情報に基づき、脅威物体Tの調査を実行するよう、調査部14に指示を送信する。
【0025】
データ送信部114は、調査部14が実行した調査の結果に関するデータ(以下、「調査データ」という)を、通信部12に送信する。データ送信部114は、SDA衛星10から調査データを送信するよう、通信部12に指示を送信する。
【0026】
通信部12は、監視衛星群20との間で通信を行う。通信部12は、監視衛星群20から、ミッションコマンドを受信する。通信部12は、監視衛星群20に、調査データを送信する。通信部12は、例えば、マイクロ波の送受信装置を備えるが、この構成に限られず、通信用赤外レーザ光の送受信装置等、公知のものを含む様々な通信手段を用いることができる。
【0027】
駆動部13は、受信した予測位置情報に基づき、脅威物体Tに接近するように、マヌーバを行う。駆動部13は、姿勢制御部131と、速度変化部132とを備える。
【0028】
姿勢制御部131は、SDA衛星10の姿勢を制御する。姿勢制御部131が行う姿勢の制御には、ジャイロアクチュエータ、ジャイロセンサ、ヒドラジンスラスタ、イオンスラスタ、レジストジェットスラスタ等、公知のものを含む様々な手段を用いることができる。
【0029】
速度変化部132は、SDA衛星10の速度を変化させる。速度変化部132が行う速度の変化には、ヒドラジンスラスタ、イオンスラスタ、レジストジェットスラスタ等、公知のものを含む様々な手段を用いることができる。
【0030】
図1に戻って、速度変化部132はSDA衛星10に、適切な方向へ、適切な大きさの推進力を与える。例えば、速度変化部132はSDA衛星10に、SDA衛星10がより高度の高い軌道に遷移して飛行して、脅威物体Tに接近した後に再び静止衛星に遷移するよう、推進力を与える。これにより、地球から見て、静止していたSDA衛星10は、静止軌道に沿って移動することが可能となる(
図1の(5))。その結果、SDA衛星10は、脅威物体Tに接近することができる。
【0031】
図2に戻って、調査部14は、所定の調査を実行するためにじゅうぶん近くまでSDA衛星10が脅威物体Tに移動した後に、受信した調査指示情報に基づき、脅威物体Tの調査を実行する。調査部14は、調査データを記録する。調査部14は、センサ部141と、記録部142とを備える。
【0032】
センサ部141は、脅威物体Tの調査データを取得する。センサ部141は、例えば、可視光画像データを取得する光学センサ(不図示)を備えるが、脅威物体Tと飛行物体Sとを識別できる分解能を有するものであれば、この構成に限られず、熱赤外センサ、マイクロ波センサ、SARセンサ等、公知のものを含む様々なセンサを用いることができる。
【0033】
記録部142は、センサ部141が取得した調査データを記録する。記録部142が記録した調査データは、データ送信部114によって通信部12に送信される。
【0034】
電源部15は、SDA衛星10の各部に電力を供給する。電源部15は、例えば、太陽電池を備えるが、この構成に限られず、公知のものを含む様々な電力供給手段を用いることができる。
【0035】
[監視衛星群]
図1に戻って、監視衛星群20は、複数の監視衛星200(N体の場合、200-1、200-2、・・・200-N)からなる。監視衛星群20を構成する複数の監視衛星200は、飛行物体SやSDA衛星10よりも低い高度の軌道を飛行する。複数の監視衛星200は、互いに間隔を空けて地球を周回する。監視衛星群20は、複数の監視衛星200-1、200-2、・・・200-Nを一体として運用する、衛星コンステレーションである。
図1では、わかりやすさのために、3体の監視衛星200-1、200-2、200-3のみを表示している。
【0036】
本実施形態では、監視衛星200-1、200-2、・・・200-Nは、地球Eの低軌道(LEO)を飛行する。
【0037】
監視衛星群20は、飛行物体Sを監視する(
図1の(1))。監視衛星群20のうち、ある監視衛星200(
図1では、監視衛星200-1)が、飛行物体Sに対する脅威物体Tを発見すると、当該監視衛星200(監視衛星200-1)は、脅威物体Tの座標を計算し、予測位置情報を作成する。当該監視衛星200(監視衛星200-1)は、予測位置情報を含むミッションコマンドを作成する(
図1の(2))。当該監視衛星200(監視衛星200-1)は、ミッションコマンドを、他の監視衛星200(
図1では、監視衛星200-2、200-3)に送信する。監視衛星群20のうち、SDA衛星10の近くに位置する監視衛星200(
図1では、監視衛星200-3)は、ミッションコマンドを、SDA衛星10に送信する(
図1の(4))。これにより、SDA衛星10は、静止軌道に沿って移動を開始し、脅威物体Tに接近することができる(
図1の(5))。
【0038】
図3は、本発明の第1実施形態に係る監視衛星の構成を示した図である。監視衛星200は、管理部210と、通信部220と、駆動部230と、監視部240と、電源部250とを備える。
【0039】
管理部210は、駆動部230、監視部240の動作を制御する。管理部210は、コンピュータである。管理部210は、例えば、オンボードコンピュータのプロセッサ及びメモリで構成される。管理部210は、駆動指示部2101と、位置判定部2102と、監視指示部2103と、ミッションコマンド作成部2104とを備える。
【0040】
駆動指示部2101は、その監視衛星200が、他の監視衛星200と互いに間隔を空けて軌道を飛行するよう、駆動部230に指示を送信する。これにより、複数の監視衛星200が、衛星コンステレーションを形成することができる。
【0041】
位置判定部2102は、その監視衛星200が所定の監視を実行するためにじゅうぶん近くまで飛行物体Sに接近しているか否かを判定する。位置判定部2102は、例えば、飛行情報記録部(不図示)を備える。位置判定部2102は、飛行情報記録部に記録された、その監視衛星200の飛行スケジュールを参照して、その監視衛星200が所定の監視を実行するためにじゅうぶん近くまで飛行物体Sに接近しているか否かを判定する。
【0042】
位置判定部2102は、その監視衛星200がSDA衛星にミッションコマンドを送信するためにじゅうぶん近くまでSDA衛星に接近しているか否かを判定する。位置判定部2102は、例えば、前記飛行情報記録部を備える。位置判定部2102は、飛行情報記録部に記録された、その監視衛星200の飛行スケジュールを参照して、その監視衛星200がSDA衛星にミッションコマンドを送信するためにじゅうぶん近くまでSDA衛星に接近しているか否かを判定する。
【0043】
監視指示部2103は、飛行物体Sを監視するよう、監視部240に指示を送信する。監視指示部2103は、その監視衛星200が所定の監視を実行するためにじゅうぶん近くまで飛行物体Sに接近していると位置判定部2102が判定しているとき、飛行物体Sを監視するよう、監視部240に指示を送信する。
【0044】
ミッションコマンド作成部2104は、ミッションコマンドを作成し、通信部220に送信する。飛行物体Sを監視する監視衛星200において、監視部240が脅威物体Tを発見した場合に、ミッションコマンド作成部2104は、脅威物体Tの座標を計算し、予測位置情報を作成する。脅威物体Tを発見した監視衛星200において、ミッションコマンド作成部2104は、検知情報と、予測位置情報と、調査指示情報とを含むミッションコマンドを作成する。ミッションコマンド作成部2104は、作成したミッションコマンドを、通信部220に送信する。
【0045】
通信部220は、その監視衛星200と、他の監視衛星200及びSDA衛星10との間の通信を行う。通信部220は、監視衛星通信部2201と、SDA衛星通信部2202と、地上通信部2203とを備える。監視衛星通信部2201と、SDA衛星通信部2202と、地上通信部2203とは、例えば、マイクロ波の送受信装置を備えるが、この構成に限られず、通信用赤外レーザ光の送受信装置等、公知のものを含む様々な通信手段を用いることができる。
【0046】
監視衛星通信部2201は、その監視衛星200と、他の監視衛星200との間の通信を行う。監視衛星通信部2201は、その監視衛星200において、ミッションコマンド作成部2104が作成したミッションコマンドを受信して、他の監視衛星200に送信する。監視衛星通信部2201は、他の監視衛星200からミッションコマンドを受信する。これにより、検知情報を含むミッションコマンドを、監視衛星群20を構成する全ての監視衛星200が共有することができる。
【0047】
ある監視衛星200から他の全ての監視衛星200への情報の送信は、例えば、まず、ある監視衛星200から、その監視衛星200に隣接して飛行する監視衛星200に、情報を送信する。次に、情報を受信した監視衛星200から、その監視衛星200に隣接して飛行する監視衛星200のうち、まだその情報を受信していないものに、情報を送信する。この工程を繰り返すことにより、監視衛星群20を構成する全ての監視衛星200が情報を共有することができる。
【0048】
監視衛星通信部2201は、その監視衛星200がSDA衛星10にミッションコマンドを送信した後に、ミッションコマンド送信完了通知を他の監視衛星200に送信する。監視衛星通信部2201は、他の監視衛星200からミッションコマンド送信完了通知を受信する。
【0049】
SDA衛星通信部2202は、その監視衛星200と、SDA衛星10との間の通信を行う。SDA衛星通信部2202は、SDA衛星10にミッションコマンドを送信する。SDA衛星通信部2202は、その監視衛星200がSDA衛星にミッションコマンドを送信するためにじゅうぶん近くまでSDA衛星に接近していると位置判定部2102が判定しているとき、SDA衛星10にミッションコマンドを送信する。
【0050】
地上通信部2203は、その監視衛星200と、地球Eの上に設けられた地上局(不図示)との間の通信を行う。地上通信部2203は、例えば、衛星コンステレーションを形成するための制御に関する情報を、地上局から監視衛星200に送信(アップリンク)する。地上通信部2203は、例えば、脅威物体Tの検知情報を、監視衛星200から地上局に送信(ダウンリンク)する。
【0051】
駆動部230は、その監視衛星200が他の監視衛星200と同期して軌道を飛行するよう、その監視衛星200を駆動する。駆動部230は、姿勢制御部2301と、速度変化部2302とを備える。
【0052】
姿勢制御部2301は、監視衛星200の姿勢を制御する。姿勢制御部2301が行う姿勢の制御には、ジャイロアクチュエータ、ジャイロセンサ、ヒドラジンスラスタ、イオンスラスタ、レジストジェットスラスタ等、公知のものを含む様々な手段を用いることができる。
【0053】
速度変化部2302は、監視衛星200の速度を変化させる。速度変化部2302が行う速度の変化には、ヒドラジンスラスタ、イオンスラスタ、レジストジェットスラスタ等、公知のものを含む様々な手段を用いることができる。
【0054】
監視部240は、その監視衛星200が所定の監視を実行するためにじゅうぶん近くまで飛行物体Sに接近しているとき、飛行物体Sの監視を実行する。監視部240は、監視データを記録する。監視部240は、センサ部2401と、脅威物体判定部2402とを備える。
【0055】
センサ部2401は、飛行物体Sの監視の結果に関するデータ(以下、「監視データ」という)を取得する。センサ部2401は、例えば、可視光画像データを取得する光学センサ(不図示)を備えるが、脅威物体Tと飛行物体Sとを識別できる分解能を有するものであれば、この構成に限られず、熱赤外センサ、マイクロ波センサ、SARセンサ等、公知のものを含む様々なセンサを用いることができる。
【0056】
脅威物体判定部2402は、センサ部2401が取得した監視データに基づき、脅威物体Tが飛行物体Sに接近したか否かの判定を行う。脅威物体判定部2402が、脅威物体Tが飛行物体Sに接近したと判定したとき、ミッションコマンド作成部2104は、ミッションコマンドを作成する。
【0057】
脅威物体判定部2402は、例えば、画像データ記録部(不図示)と、脅威物体検出部(不図示)とを備える。画像データ記録部は、センサ部2401が定期的に取得する、飛行物体Sの画像データ(例えば、可視光画像データ、サーモグラフィデータ)を記録する。脅威物体検出部は、新たに取得された画像データを、前回取得された画像データと比較して、脅威物体Tが画像データで検出されたか否かを判定する。脅威物体Tが画像データで検出されたとき、脅威物体判定部2402は、脅威物体Tが飛行物体Sに接近したと判定する。
【0058】
電源部250は、その監視衛星200の各部に電力を供給する。電源部250は、例えば、太陽電池を備えるが、この構成に限られず、公知のものを含む様々な電力供給手段を用いることができる。
【0059】
<監視衛星の監視方法>
以下、
図4を用いて、本発明の第1実施形態に係る監視衛星の監視方法を説明する。
【0060】
図4(a)は、本発明の第1実施形態に係る監視衛星の監視方法のうち、他の監視衛星へのミッションコマンド送信に至るまでのフロー図である。
【0061】
まず、監視衛星200(
図1参照)は、自身が所定の監視を実行するためにじゅうぶん近くまで飛行物体Sに接近しているか否かを判定する(S101)。
【0062】
監視衛星200がじゅうぶん近くまで飛行物体Sに接近していた場合(S101:YES)は、監視衛星200は、飛行物体Sの監視を実行する(S102)。他方、監視衛星200がじゅうぶん近くまで飛行物体Sに接近していない場合(S101:NO)は、ステップS101に戻り、飛行物体Sに接近したか否かの判定を繰り返す。
【0063】
監視衛星200が飛行物体Sの監視を実行して、脅威物体Tを発見したときは(S103:YES)、監視衛星200は、脅威物体Tの予測位置情報を作成する(S104)。他方、脅威物体Tを発見していない場合(S101:NO)は、ステップS101に戻り、飛行物体Sに接近したか否かの判定を繰り返す。
【0064】
ステップS104の後に、監視衛星200は、脅威物体Tの予測位置情報を含むミッションコマンドを作成する(S105)。その後に、監視衛星200は、作成したミッションコマンドを、他の監視衛星200に送信する(S106)。
【0065】
図4(b)は、本発明の第1実施形態に係る監視衛星の監視方法のうち、監視衛星間のミッションコマンド送受信から、SDA衛星10へのミッションコマンド送信に至るまでのフロー図である。
【0066】
監視衛星200の間でミッションコマンドが送受信された後、監視衛星200は、自身がSDA衛星10にミッションコマンドを送信するためにじゅうぶん近くまでSDA衛星10に接近しているか否かを判定する(S201)。
【0067】
監視衛星200がじゅうぶん近くまでSDA衛星10に接近していた場合(S201:YES)は、監視衛星200は、ミッションコマンドをSDA衛星10に送信する(S202)。その後に、監視衛星200は、ミッションコマンド送信完了通知を他の監視衛星200に送信する(S203)。
【0068】
他方、監視衛星200がじゅうぶん近くまでSDA衛星10に接近していない場合(S201:NO)は、監視衛星200は、ミッションコマンド送信完了通知を受信したか否かを判定する(S204)。受信していたとき(S204:YES)は、手続を終了する。受信していなかったとき(S204:NO)は、ステップS201に戻り、SDA衛星10に接近したか否かの判定を繰り返す。
【0069】
以上の監視方法により、飛行物体Sを監視できる位置にある監視衛星200が、飛行物体Sの監視を実行することができる。飛行物体Sを監視する監視衛星200は、脅威物体Tを発見したときは、予測位置情報を含むミッションコマンドを作成し、他の監視衛星200とミッションコマンドを共有することができる。ミッションコマンドを共有した監視衛星200は、SDA衛星10と通信できる位置にあるしたとき、SDA衛星10にミッションコマンドを送信することができる。これにより、SDA衛星10がミッションコマンドを受信し、脅威物体Tに接近し、脅威物体Tの調査を実行することができる。
【0070】
監視衛星システム1で行われる処理の過程は、コンピュータで読取り可能なプログラムの形式で、監視衛星システム1が備える記録媒体(不図示)に記憶されている。このプログラムをコンピュータが読み出して実行することで、監視衛星システム1での処理が行われる。例えば、個々の監視衛星200で行われる処理の過程のプログラムは、その監視衛星200が備える記録媒体に記憶されていてもよいし、その監視衛星200の外部にある他の記録媒体に記憶されていてもよい。
【0071】
図5に、関連する監視衛星システムの概略を示す。
図5に示す監視衛星システムでは、本実施形態と異なり、飛行物体(被攻撃衛星)の監視及び脅威物体(脅威衛星)の発見は、監視衛星ではなく、地上のアンテナを用いて行われる(
図5(1))。また、
図5に示す監視衛星システムでは、本実施形態と異なり、SDA衛星へのミッションコマンドの送信は、監視衛星ではなく、地上のアンテナからコマンドを受信した地上局が行う(
図5(2)、(3))。
【0072】
図5に示す監視衛星システムでは、飛行物体の監視(脅威物体の発見)には地上のアンテナを用いる。このため、飛行物体を監視できる(脅威物体を発見できる)範囲は、地上アンテナのカバーできる領域に限られる。飛行物体が静止衛星である場合には、飛行物体は常に、地上のアンテナから一定の方向に位置するため、飛行物体が地上のアンテナから観測可能な方向に位置するのであれば、飛行物体が地球を周回することによって地上のアンテナから観測不能な位置に移動してしまうことはないが、地球上の環境(天候等)に起因して、地上のアンテナが飛行物体を観測できなくなることはありうる。
【0073】
図5に示す監視衛星システムでは、脅威物体の調査を開始する場合、地上局からSDA衛星にミッションコマンドをアップリンクする必要がある。したがって、SDA衛星が脅威物体の調査を開始するためには、地上局とSDA衛星とが通信できるタイミングを待たなければならない。SDA衛星が静止衛星である場合には、SDA衛星は常に、地上局から一定の方向に位置するため、SDA衛星が地上局から通信可能な方向に位置するのであれば、SDA衛星が地球を周回することによって地上局から通信不能な位置に移動してしまうことはないが、地球上の環境(天候等)に起因して、地上局とSDA衛星とが通信できなくなることはありうる。
【0074】
本実施形態によれば、監視衛星は地球の低軌道(LEO)を飛行している。このため、地上のアンテナと比べて、地球上の環境の影響によって飛行物体の監視(脅威物体の発見)ができなくなるおそれを低減できる。その結果、本実施形態は、脅威物体を迅速に発見することができるという効果を奏する。
【0075】
本実施形態によれば、監視衛星は地球を周回している。このため、飛行物体(脅威物体)が地上のアンテナからは観測できない位置に存在する場合であっても、飛行物体の監視(脅威物体の発見)が可能となる。その結果、本実施形態は、脅威物体をより迅速に発見することができるという効果を奏する。
【0076】
本実施形態によれば、監視衛星は地球の低軌道(LEO)を飛行している。このため、地上局と比べて、地球上の環境の影響によってSDA衛星との通信ができなくなるおそれを低減できる。その結果、本実施形態は、SDA衛星へのコマンドをより迅速に送信することができるという効果を奏する。
【0077】
本実施形態によれば、監視衛星は地球を周回している。このため、SDA衛星が地上局から通信不能な位置に存在する場合であっても、SDA衛星との通信が可能となる。その結果、本実施形態は、SDA衛星へのコマンドをより迅速に送信することができるという効果を奏する。
【0078】
本実施形態によれば、以上に述べたように、脅威物体を迅速に発見することができるという効果、及び、SDA衛星へのコマンドをより迅速に送信することができるという効果を奏する。その結果、本実施形態は、脅威物体を発見してからSDA衛星による調査を開始するまでの所要時間を短くすることにより、脅威物体を調査する機会を増やすことができるという効果を奏する。
【0079】
本実施形態によれば、地上の施設(地上のアンテナ、地上局)を稼働させる機会を減らすことができる。その結果、本実施形態は、地上の施設のメンテナンス費用、利用料等のコストを低減できるという効果を奏する。
【0080】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と共通する構成要素は、説明を省略する。
【0081】
本実施形態に係る監視衛星200(監視衛星群20)は、飛行物体Sの監視データ又は脅威物体Tの調査データを記録するための、大容量のデータストレージを備える点に特徴を有する。大容量のデータストレージは、監視衛星群20を構成する各々の監視衛星200が備えていてもよく、監視衛星群20のうち、一部の監視衛星200が備えていてもよい。監視データ又は調査データの記録は、大容量のデータストレージを備える複数の監視衛星200に、分散して記録してもよい。監視衛星200(監視衛星群20)は、大容量のデータストレージとともに、監視データや調査データを処理する、演算機能(クラウドコンピューティング機能)を備えていてもよい。
【0082】
監視衛星200(監視衛星群20)が取得した飛行物体Sの監視データを地上局で利用する場合には、監視衛星200(監視衛星群20)から地上局に、監視データを送信(ダウンリンク)する必要がある。SDA衛星10が取得した脅威物体Tの調査データを地上局で利用する場合には、SDA衛星10から監視衛星200(監視衛星群20)に調査データを送信した後に、監視衛星200(監視衛星群20)から地上局に、SDA衛星10から受信した監視データを送信(ダウンリンク)する必要がある。
【0083】
監視衛星200(監視衛星群20)が備えるデータ記録媒体の容量が小さいと、一定量の監視データの取得又は一定量の調査データの受信が新たに行われるたび、監視データ又は調査データを上書き消去する工程や、監視データ又は調査データをダウンリンクする工程を行わねばならない。これに対し、本実施形態では、大容量のデータストレージを備えるため、監視データ又は調査データを上書き消去する工程や、監視データ又は調査データをダウンリンクする工程の回数を、減らすことができる。
【0084】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態と共通する構成要素は、説明を省略する。
【0085】
本実施形態に係る監視衛星200(監視衛星群20)は、取得した監視データに基づき、脅威物体Tが飛行物体Sに対して攻撃又は通信妨害を行っているか否かを判定するアルゴリズムを備える。アルゴリズムは、コンピュータで読取り可能なプログラムの形式で、監視衛星200が備える記録媒体(不図示)に記憶されている。
【0086】
脅威物体Tが攻撃又は通信妨害を行っているとアルゴリズムが判定すると、監視衛星200は、他の監視衛星200に、その判定結果を送信する。SDA衛星10と通信できる位置にある監視衛星200は、アルゴリズムの判定結果をミッションコマンドとともにSDA衛星10に送信する。
【0087】
本実施形態によれば、SDA衛星10が次の調査対象を決めるときの判断材料が増すため、より効果的な調査を行うことができる。
【0088】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態と共通する構成要素は、説明を省略する。
【0089】
本実施形態に係る監視衛星200(監視衛星群20)は、脅威物体Tを除去する除去部を備える。除去部は、例えば、脅威物体Tを捕獲することにより、又は、脅威物体Tに衝撃を与えることにより、脅威物体Tを軌道から除去するための、ロボットハンドを備える。除去部は、例えば、脅威物体Tにレーザ光を照射することにより、脅威物体Tを軌道から除去するための、レーザ装置を備える。
【0090】
本実施形態によれば、SDA衛星10が、脅威物体Tの監視に加えて、脅威物体Tを処理することができる。その結果、より迅速に、脅威物体Tの攻撃や通信妨害に対処することができる。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0092】
例えば、本発明の第1の実施の形態では、監視衛星200のセンサ部2401は、飛行物体Sの監視データを取得していたが、監視データに加えて、地球の画像を撮像してもよい。これにより、監視衛星群20を、飛行物体Sの監視に加えて、地球のリモートセンシングにも用いることができる。
【0093】
例えば、本発明の第1の実施の形態では、SDA衛星10は1体であったが、複数のSDA衛星10を備えていてもよい。これにより、最も脅威物体Tに近いSDA衛星10に調査を実行させることができる。その結果、脅威物体Tにより迅速に対処することができる。
【0094】
例えば、本発明の第1の実施の形態では、監視衛星200(監視衛星群20)は、地球の低軌道(LEO)を飛行していたが、飛行物体SやSDA衛星10よりも低い高度の、LEO以外の軌道を飛行していてもよい。例えば、監視衛星200(監視衛星群20)は、地球の中軌道(Medium Earth Orbit,MEO)を飛行してもよい。
【0095】
例えば、本発明の第1の実施の形態では、飛行物体SやSDA衛星10は、静止軌道を飛行していたが、監視衛星200(監視衛星群20)よりも高い高度の、静止軌道以外の軌道を飛行していてもよい。例えば、飛行物体Sは、準天頂軌道(Quasi-Zenith Orbit)を飛行していてもよい。例えば、飛行物体Sは、宇宙ステーション(高度約400km)であってもよい。これらの飛行物体Sは、静止衛星に比べて、飛行物体Sが地球を周回することによって、地上のアンテナから観測不能な位置に移動してしまう場合や、地上局から通信不能な位置に移動してしまう場合が生じる。これらの場合であっても、本発明によれば、飛行物体の監視(脅威物体の発見)やSDA衛星との通信が可能となる。したがって、本発明は、脅威物体をより迅速に発見することができるという効果や、SDA衛星へのコマンドをより迅速に送信することができるという効果を奏する。
【0096】
例えば、本発明の第1の実施の形態では、監視衛星200(監視衛星群20)やSDA衛星10は、地球の軌道を飛行していたが、月等他の天体の軌道を飛行してもよい。
【0097】
図6は監視衛星の最小構成を示す図である。
図7は最小構成による監視衛星の監視方法の処理フローを示す図である。
監視衛星200は、少なくとも、管理部210と、通信部220と、駆動部230と、前記飛行物体を監視して前記脅威物体を発見する監視部240と、を備える。これら各処理部の機能は監視衛星200のコンピュータに実装される。これら各処理部の機能は監視衛星200の回路により当該機能が実装されてもよいし、CPU等の処理部が上記プログラムを実行することにより監視衛星200に実装されてもよい。
互いに間隔を空けて地球を周回し飛行物体Sを監視する複数の監視衛星200からなる、監視衛星群20において、監視衛星200は、飛行物体Sを監視できる位置にあるとき、飛行物体Sの監視を行う(ステップS71)。
監視衛星200は、飛行物体Sの監視を行う間に飛行物体Sに対する脅威物体Tを発見したとき、脅威物体Tに関する情報を他の監視衛星200に送信する(ステップS72)。
【0098】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0099】
(付記1)管理部と、通信部と、飛行物体を監視して前記飛行物体に対する脅威物体を発見する監視部と、を備え、前記管理部は、前記飛行物体を監視するよう、前記監視部に指示を送信する監視指示部と、前記監視部が前記脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報であるミッションコマンドを作成するミッションコマンド作成部と、を含み、前記通信部は、前記脅威物体を調査するSDA衛星に前記ミッションコマンドを送信する、監視衛星。
【0100】
(付記2)前記管理部は、前記監視衛星の位置に関する判定を行う位置判定部を含み、前記通信部は、前記SDA衛星と通信できる位置にあると前記位置判定部が判定した前記監視衛星から、前記SDA衛星に前記ミッションコマンドを送信する、付記1に記載の監視衛星。
【0101】
(付記3)管理部と、通信部と、飛行物体を監視して前記飛行物体に対する脅威物体を発見する監視部と、を備え、前記管理部は、前記飛行物体を監視するよう、前記監視部に指示を送信する監視指示部と、前記監視部が前記脅威物体を発見したとき、前記脅威物体に関する情報であるミッションコマンドを作成するミッションコマンド作成部と、を含み、前記通信部は、前記ミッションコマンドを作成した前記監視衛星から、他の前記監視衛星に、前記ミッションコマンドを送信する、監視衛星。
【0102】
(付記4)管理部と、通信部と、飛行物体を監視して前記飛行物体に対する脅威物体を発見する監視部と、を備え、前記管理部は、前記監視衛星の位置に関する判定を行う位置判定部と、前記飛行物体を監視するよう、前記監視部に指示を送信する監視指示部と、を含み、前記監視指示部は、前記監視衛星が前記飛行物体を監視できる位置にあると前記位置判定部が判定したとき、前記飛行物体を監視するよう、前記監視部に指示を送信する、監視衛星。
【0103】
(付記5)前記監視衛星を飛行させる駆動部を備え、前記管理部は、他の監視衛星と互いに間隔を空けて軌道を飛行するよう、前記駆動部に指示を送信する駆動指示部を含む、付記1から4のいずれか1つに記載の監視衛星。
【0104】
(付記6)大容量のデータストレージを備える、付記1から4のいずれか1つに記載の監視衛星。
【0105】
(付記7)前記監視部が取得したデータに基づき、前記脅威物体が前記飛行物体に対して攻撃又は通信妨害を行っているか否かを判定するアルゴリズムを備える、付記1から4のいずれか1つに記載の監視衛星。
【符号の説明】
【0106】
1…監視衛星システム
10…SDA衛星
11…管理部
111…駆動指示部
112…位置判定部
113…調査指示部
114…データ送信部
12…通信部
13…駆動部
131…姿勢制御部
132…速度変化部
14…調査部
141…センサ部
142…記録部
15…電源部
20…監視衛星群
200…監視衛星
210…管理部
2101…駆動指示部
2102…位置判定部
2103…監視指示部
2104…ミッションコマンド作成部
220…通信部
2201…監視衛星通信部
2202…SDA衛星通信部
2203…地上通信部
230…駆動部
2301…姿勢制御部
2302…速度変化部
240…監視部
2401…センサ部
2402…脅威物体判定部
250…電源部
E…地球
S…飛行物体
T…脅威物体