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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130578
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20240920BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240920BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P25/18
A61K9/08
A61K9/14
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/22
A61K47/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040400
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】500537556
【氏名又は名称】東洋酵素化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】植草 晴美
(72)【発明者】
【氏名】中島 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竹野 日津彦
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA14
4C076AA29
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD07F
4C076DD09F
4C076DD46F
4C076DD59
4C076DD67
4C076EE23F
4C076EE38
4C076FF03
4C076FF16
4C076FF34
4C076FF43
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA09
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA10
4C206ZA18
(57)【要約】
【課題】
本発明は、常温で水に溶けやすく、粉末組成物を水に溶解させた場合や液状組成物の場合に透明性に優れ、また、pH変化や熱負荷に対し、油性成分が分離しない安定性に優れた、カンナビノイドを含む組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、カンナビノイドと、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、を含む組成物を提供する。前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数6~22の脂肪酸から選択される1種以上の脂肪酸と重合度5~20であるポリグリセリンとをエステル化したものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビノイドと、
ポリグリセリン脂肪酸エステルと、
を含む組成物。
【請求項2】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数6~22の脂肪酸から選択される1種以上の脂肪酸と重合度5~20であるポリグリセリンとをエステル化したものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、HLB値10以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、さらに親油性乳化剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記親油性乳化剤は、HLB値8以下である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、さらにオクテニルコハク酸澱粉を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、さらにビタミンCを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、さらにビタミンEを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が粉末組成物であって、当該粉末組成物を水に溶解させ、カンナビノイド濃度として0.04%となるように調整して得られる水溶液中の500nm以下の油滴の割合が、全油滴のうちの60%以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が液状組成物であって、当該液状組成物を、カンナビノイド濃度として0.04%となるように調整して得られる溶液中の500nm以下の油滴の割合が、全油滴のうちの96%以上である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関し、特にはカンナビノイドを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
新たな薬理作用が期待される成分として、カンナビジオール(CBD)が注目されている。カンナビジオールは、113種以上あるカンナビノイドの一つであり、大麻植物から抽出される親油性の化学成分であって、脳や体内の受容体と相互作用することで、向精神効果等を発揮することが知られ、例えばてんかん発作の治療薬や、結節性硬化症の治療用組成物などが開発されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
カンナビジオールは、親油性であるため経口摂取の際に水に溶かしながら口の中に流し込むことが困難であった。また、カンナビジオールは、水に難溶であるため、日常生活への用途や経口摂取の形態が限られていた。カンナビジオールの効果を利用するため、容易に経口摂取可能な製剤の開発が求められている。また、カンナビジオールの効果を得るためには長期的に経口摂取が必要となる場合がある。例えば、カンナビジオールは油への溶解性が高いため、オイル状の製剤として利用されている。しかしながら、オイル状の製剤は経口摂取しにくく、健康志向の高まりから、オイル(油脂)を摂取することに抵抗感もあるため、カンナビジオールを配合し、容易に、かつ、長期的に経口摂取が可能な固形組成物の開発は十分ではなかった。
【0004】
そこで、経口摂取を行いやすくするため、例えば、中鎖脂肪酸油にカンナビジオールを溶解させたカンナビジオール油を包接し、粉末化して、親水性のカンナビジオール含有水溶性粉末とすることが開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-523708号公報
【特許文献2】特表2017-537064号公報
【特許文献3】特開2022-129204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カンナビノイドを含む粉末組成物は、常温で水に溶けにくく、また、粉末組成物を水に溶解させた際に水溶液の透明性が低くなるという問題があり、また、pH変化や熱負荷に対し、油性成分が分離して不安定になるという問題がある。カンナビノイドを含む液状組成物は、粉末組成物の場合と同様に透明性が低く、また、pH変化や熱負荷に対し、油性成分が分離して不安定になるという問題がある。
本発明は、常温で水に溶けやすく、粉末組成物を水に溶解させた場合や液状組成物の場合に透明性に優れ、また、pH変化や熱負荷に対し、油性成分が分離しない安定性に優れた、カンナビノイドを含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
カンナビノイドと、
ポリグリセリン脂肪酸エステルと、
を含む組成物を提供する。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数6~22の脂肪酸から選択される1種以上の脂肪酸と重合度5~20であるポリグリセリンとをエステル化したものであってよい。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、HLB値10以上であってよい。
前記組成物は、さらに親油性乳化剤を含みうる。
前記親油性乳化剤は、HLB値8以下であってよい。
前記組成物は、さらにオクテニルコハク酸澱粉を含みうる。
前記組成物は、さらにビタミンCを含みうる。
前記組成物は、さらにビタミンEを含みうる。
前記組成物が粉末組成物であって、当該粉末組成物を水に溶解させ、カンナビノイド濃度として0.04%となるように調整して得られる水溶液中の500nm以下の油滴の割合が、全油滴のうちの60%以上であってよい。
前記組成物が液状組成物であって、当該液状組成物を、カンナビノイド濃度として0.04%となるように調整して得られる溶液中の500nm以下の油滴の割合が、全油滴のうちの96%以上であってよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、常温で水に溶けやすく、粉末組成物を水に溶解させた場合や液状組成物の場合に透明性に優れ、また、pH変化や熱負荷に対し、油性成分が分離しない安定性に優れた、カンナビノイドを含む組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0010】
本発明について、以下の順序で説明を行う。
1.第1の実施形態(組成物)
(1)組成
(2)物性
2.第2の実施形態(液状組成物の製造方法)
3.第3の実施形態(粉末組成物の製造方法)
4.実施例
【0011】
1.第1の実施形態(組成物)
【0012】
上記で述べたとおり、カンナビノイドを含む組成物は、水に対する溶解性や水溶液等の透明性などにおいて問題を有する場合がある。このような問題は、特にはカンナビノイドの含有割合を高める場合に特に生じやすい。
【0013】
本発明者らは、特定の組成によって、カンナビノイドを含む組成物の水に対する溶解性やカンナビノイドを含む水溶液等の透明性などを改善できることを見出した。一実施態様において、本発明の組成物は、カンナビノイドと、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む。
【0014】
以下で、本発明の組成物についてより具体的に説明する。
【0015】
(1)組成
【0016】
(1-1)カンナビノイド
【0017】
本発明の組成物は、カンナビノイドを含む。このようなカンナビノイドとしてカンナビジオール(CBD)を主成分として含むカンナビノイドが好ましい。ここで主成分とは、カンナビノイド中に最も多く含まれる成分であって、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であってよい。
カンナビジオール(CBD)として、植物由来の植物性カンナビジオールや、合成カンナビジオールが挙げられる。特に、原料として豊富で、抽出方法も確立されていることから、大麻等の麻から抽出される麻由来のカンナビジオールを用いることが望ましい。
麻由来のカンナビジオールは、麻の、種子、茎、葉、花穂等の部位から、各種手法により抽出することができる。カンナビジオールの抽出は、例えば、含水エタノール、ヘキサン、エーテル等を用いた液体抽出や、COを用いた超臨界流体抽出(SFE)等により行われる。また、カンナビジオールは、麻から抽出したテトラヒドロカンナビノールを含むフルスペクトラムオイルからテトラヒドロカンナビノールを除去してブロードスペクトラムオイルを得た後、ブロードスペクトラムオイルを固形化したものであってもよい。このようなカンナビジオールの種類は特に限定されず、例えば、CBDのみを抽出したアイソレートパウダー(公知貿易)等の市販されているものを適宜使用できる。
【0018】
カンナビノイドは、水に難溶で親油性を示す。カンナビノイドの有する薬理効果を得る観点から、本発明の組成物が粉末である場合、カンナビノイドの含有量は、前記組成物の質量に対し、少なくとも1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、20質量%以上、さらにより好ましくは25質量%以上であってよい。カンナビノイドの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下であってよい。
【0019】
カンナビノイドは、水に難溶で親油性を示す。カンナビノイドの有する薬理効果を得る観点から、本発明の組成物が液状である場合、カンナビノイドの含有量は、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.50質量%以上、より好ましくは0.75質量%以上、さらに好ましくは1.00質量%以上、さらにより好ましくは1.25質量%以上であってよい。カンナビノイドの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは2.50質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下、さらに好ましくは1.75質量%以下、さらにより好ましくは1.50質量%以下であってよい。
【0020】
(1-2)ポリグリセリン脂肪酸エステル
【0021】
本発明の組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数6~22の脂肪酸から選択される1種以上の脂肪酸と重合度5~20であるポリグリセリンとをエステル化したものからなるものが挙げられる。前記脂肪酸には、例えば、好ましくは炭素数8~40、より好ましくは炭素数12~22の飽和又は不飽和高級脂肪酸等が含まれる。このような脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リシノール酸、カプリル酸、カプリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0022】
ポリグリセリンとはグリセリンが2以上重合した構造を有する化合物であり、重合度5~20であるポリグリセリンが好ましい。なお、2個のグリセリンが結合したポリグリセリンをジグリセリン、3個のグリセリンが結合したポリグリセリンをトリグリセリン、10個のグリセリンが結合したポリグリセリンをデカグリセリンともいう。
【0023】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、パルミチン酸グリセリンエステルが挙げられる。より詳細には、デカグリセリンのパルミチン酸とのモノ~デカエステルがあり、例えば、モノパルミチン酸デカグリセリル、ジパルミチン酸デカグリセリル、トリパルミチン酸デカグリセリル、テトラパルミチン酸デカグリセリル、ペンタパルミチン酸デカグリセリル、ヘキサパルミチン酸デカグリセリル、ヘプタパルミチン酸デカグリセリル、オクタパルミチン酸デカグリセリル、ノナパルミチン酸デカグリセリル、デカパルミチン酸デカグリセリル等が挙げられる。好ましくはモノパルミチン酸デカグリセリルである。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、1種又は2種以上の混合物として用いてもよい。本発明においては、組成物の製造の際、乳化時の透明度を高くする観点から、特にモノパルミチン酸デカグリセリルが好ましい。
【0024】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノパルミチン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ)等の市販されているものを適宜使用できる。
【0025】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、特に、親水性/親油性の度合いを表すHLB値が好ましくは10以上、より好ましくは12以上のものを適宜使用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値の上限値は、特に制限されないが、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは16以下であってよい。
【0026】
カンナビノイドや油性成分の乳化を十分に行う観点から、本発明の組成物が粉末である場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、前記組成物の質量に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上であってよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは45質量%以下であってよい。
【0027】
カンナビノイドや油性成分の乳化を十分に行う観点から、本発明の組成物が液状である場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上、さらに好ましくは0.75質量%以上、さらにより好ましくは1.00質量%以上であってよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは3.00質量%以下、より好ましくは2.75質量%以下、さらに好ましくは2.50質量%以下、さらにより好ましくは2.25質量%以下であってよい。
【0028】
(1-3)親油性乳化剤
【0029】
本発明の組成物を経口摂取した際、胃酸における乳化安定性を向上させる観点から、本発明の組成物は、さらに親油性乳化剤を含むのが好ましい。親油性乳化剤とは、水に対する親和性よりも油に対する親和性が大きい性質を有し、油分散性あるいは油溶性が良好な乳化剤をいう。特に、親水性/親油性の度合いを表すHLB値が8以下のものが好ましく、HLB値6以下のものがより好ましい。本発明の組成物においては、特に前記ポリグリセリン脂肪酸エステルに加えて、親油性乳化剤として、ソルビタン脂肪酸エステルを含むのが好ましい。
【0030】
ソルビタン脂肪酸エステルとは、ソルビタンと脂肪酸のエステルである。ソルビタンとエステル化生成物を生成する脂肪酸には、例えば、好ましくは炭素数8~40、より好ましくは炭素数12~22の飽和又は不飽和高級脂肪酸等が含まれる。このような脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リシノール酸、カプリル酸、カプリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルとして、具体的には、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらのソルビタン脂肪酸エステルは、1種又は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0031】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ)、モノラウリン酸ソルビタン(NIKKOL SL-10F、日光ケミカルズ)、モノステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SS-10VF、日光ケミカルズ)、モノパルミチン酸ソルビタン(NIKKOL SP-10VF、日光ケミカルズ)、トリオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-30VF、日光ケミカルズ)およびセスキオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-15VF、日光ケミカルズ)等の市販されているものを適宜使用できる。
【0032】
本発明の組成物を経口摂取した際、胃酸における乳化安定性を向上させる観点から、本発明の組成物において、親油性乳化剤の含有量は、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、さらにより好ましくは2.0質量%以上であってよい。親油性乳化剤の含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下、さらにより好ましくは3.5質量%以下であってよい。
【0033】
本発明の組成物を経口摂取した際、胃酸における乳化安定性をさらに向上させる観点から、本発明の組成物において、親油性乳化剤1質量部に対し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを5質量部以上の組成比で含むのが好ましく、親油性乳化剤1質量部に対し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを8質量部以上の組成比で含むのがより好ましく、親油性乳化剤1質量部に対し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを10質量部以上の組成比で含むのがさらに好ましく、親油性乳化剤1質量部に対し、ポリグリセリン脂肪酸エステル15質量部以下の組成比で含むのがさらにより好ましい。
【0034】
(1-4)その他の乳化剤
【0035】
本発明の組成物は、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルと前記親油性乳化剤の他の種類の乳化剤を含んでいてもよい。このような乳化剤としてオクテニルコハク酸澱粉、キラヤサポニン等が挙げられる。本発明の組成物においては、特に乳化安定性の観点から、オクテニルコハク酸澱粉を含むのが好ましい。
【0036】
オクテニルコハク酸澱粉とは、澱粉を無水オクテニルコハク酸でエステル化して得られる加工澱粉である。オクテニルコハク酸澱粉は、澱粉に疎水基が導入されているので界面活性効果を有する。オクテニルコハク酸澱粉としては、例えば、エマルスター500A(松谷化学工業)等の市販されているものを適宜使用できる。
【0037】
組成物の水に対する溶解性を向上させる観点から、本発明の組成物が粉末である場合、オクテニルコハク酸澱粉の含有量は、前記組成物の質量に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは7質量%以上であってよい。オクテニルコハク酸澱粉の含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下であってよい。
【0038】
組成物の水に対する溶解性を向上させる観点から、本発明の組成物が液状である場合、オクテニルコハク酸澱粉の含有量は、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.25質量%以上、さらにより好ましくは0.35質量%以上であってよい。オクテニルコハク酸澱粉の含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.75質量%以下、さらに好ましくは0.65質量%以下、さらにより好ましくは0.50質量%以下であってよい。
【0039】
キラヤサポニンは、キラヤ抽出物、キラヤニンとも呼ばれる。キラヤサポニンはバラ科植物キラヤ(Quilaia saponalia Molina)の樹皮に含まれている配糖体成分であって、キラヤ酸をアグリコンとするトリテルペン系サポニンからなる数種のサポニンを主成分とする天然の界面活性物質である。キラヤはチリ、ボリビア、ペルー等の南米に自生するほか栽培もされている。キラヤサポニンは乳化力があるだけではなく起泡力も強い。キラヤサポニンは親水性が高く、表面張力低下力が強く、また、水に透明に溶解しやすいため、高いHLBを有する乳化剤であるといえる。また、乳化力が強いため油溶性物質の透明乳化(微細に乳化を行うと肉眼では透明に見える)に用いることもできる。
【0040】
キラヤサポニンはキラヤ樹皮から、水、低級アルコール、またはこれらの混合物を用いて抽出することができる。また、キラヤサポニンとして、例えば、キラヤニンS-100、キラヤニンC-100、キラヤニンP-20(以上、丸善製薬社製)等の市販品を適宜使用することができる。
【0041】
組成物の水に対する溶解性を向上させる観点から、組成物が粉末である場合、キラヤサポニンの含有量は、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であってよい。キラヤサポニンの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下であってよい。
【0042】
組成物の水に対する溶解性を向上させる観点から、組成物が液状である場合、キラヤサポニンの含有量は、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.0025質量%以上、より好ましくは0.025質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であってよい。キラヤサポニンの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.25質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下であってよい。
【0043】
カンナビノイドの乳化を十分なものとする観点から、本発明の組成物において、カンナビノイド1質量部に対し、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、親油性乳化剤と、その他の乳化剤を含めた乳化剤を1.5質量部以上の組成比で含むのが好ましく、2.0質量部以上の組成比で含むのがより好ましく、2.5質量部以上の組成比で含むのがさらに好ましく、3.0質量部以上の組成比で含むのがさらにより好ましい。
上限値は、特に制限されないが、カンナビノイド1質量部に対し、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、親油性乳化剤と、その他の乳化剤を含めた乳化剤を10質量部以下の組成比で含むのが好ましく、8質量部以下の組成比で含むのがより好ましい。
【0044】
(1-5)多糖類
【0045】
本発明の組成物は、さらに多糖類を含んでもよい。このような多糖類は特に限定されないが、例えば、大豆多糖類、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン等の加工澱粉(前記オクテニルコハク酸澱粉を除く。)、キサンタンガム、アラビアガム、アルカリゲネス産生多糖体(アルカシーランとも称される。)、トラガカントガム、カラヤガム、タマリンドガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、ジェランガム、ネイティブジェランガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、これらの塩、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの多糖類は、1種又は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0046】
目的とする水溶液の粘度を得る点から、組成物が粉末である場合、多糖類の含有量は、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上であってよい。多糖類の含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8.0質量%以下であってよい。
【0047】
目的とする水溶液の粘度を得る点から、組成物が液状である場合、多糖類の含有量は、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.025質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.10質量%以上であってよい。多糖類の含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.60質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下、さらに好ましくは0.40質量%以下であってよい。
【0048】
(1-6)酸化防止剤
【0049】
粉末組成物の色をより白色とするため、本発明の組成物は、さらに酸化防止剤を含んでもよい。このような酸化防止剤として、ビタミンC、ビタミンE等が挙げられる。
【0050】
ビタミンCとしては、アスコルビン酸及びその塩や誘導体等が挙げられる。より詳細には、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、リン酸アスコルビン酸マグネシウム、リン酸パルミチン酸アスコルビル3-ナトリウム、エリソルビン酸、アスコルビン酸2-グルコシド、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸ステアリン酸エステル等が挙げられ、これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。このようなビタミンCの種類は特に限定されず、例えば、V.C Na(Northeast Pharmaceutical Grop社)、VC(Northeast Pharmaceutical Grop社)、ビタミンCパルミテート(三菱ケミカル)等の市販されているものを適宜使用できる。
【0051】
ビタミンCの含有量は、組成物が粉末である場合、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上、さらにより好ましくは1.0質量%以上であってよい。ビタミンCの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、さらにより好ましくは1.5質量%以下であってよい。
【0052】
ビタミンCの含有量は、組成物が液状である場合、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.015質量%以上、さらに好ましくは0.035質量%以上、さらにより好ましくは0.050質量%以上であってよい。ビタミンCの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下、さらにより好ましくは0.075質量%以下であってよい。
【0053】
ビタミンEとしては、トコフェロール、トコトリエノール、トコフェルソラン、又はそれらの誘導体が挙げられ、これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なお、トコフェロール及びトコトリエノールは、α-、β-、γ-、δ-のいずれであってもよく、また、d体、dl体のいずれであってもよい。このようなビタミンEの種類は特に限定されず、例えば、ガンマブライト90(三菱ケミカル社)等の市販されているものを適宜使用できる。
【0054】
ビタミンEの含有量は、組成物が粉末である場合、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.35質量%以上、さらにより好ましくは0.50質量%以上であってよい。ビタミンEの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、さらにより好ましくは1.0質量%以下であってよい。
【0055】
ビタミンEの含有量は、組成物が液状である場合、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.0075質量%以上、さらに好ましくは0.0175質量%以上、さらにより好ましくは0.025質量%以上であってよい。ビタミンEの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.200質量%以下、より好ましくは0.150質量%以下、0.100質量%以下、さらに好ましくは0.075質量%以下、さらにより好ましくは0.050質量%以下であってよい。
【0056】
(1-7)油性成分
【0057】
カンナビノイドの分散安定化の観点から、本発明の組成物は、さらに油性成分を含んでもよい。このような油性成分としては、25℃で液体である油性成分であることが好ましい。
本発明の組成物において、油性成分とは、25℃における水への溶解度が0.1質量%未満(1g/L未満)である成分をいう。
また、25℃で液体とは、油性成分の融点又は軟化点が25℃未満であることを意味する。
【0058】
油性成分としては、具体的には、油脂、炭化水素、ロウ、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの中で、25℃で液体であるものが好ましい。これらの油性成分は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を用いてもよい。
【0059】
油脂としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、牛油、ゴマ油、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ヒマシ油、ブドウ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、ヤシ油、モクロウ、ローズヒップ油、ダイズ油、硬化油(例えば、硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油、硬化カカオ油、硬化タートル油、硬化ミンク油等)、中鎖脂肪酸トリグリセライド(トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル等)、ラノリン(羊毛脂)等が挙げられ、特に中鎖脂肪酸トリグリセライドが好ましい。
【0060】
炭化水素としては、流動パラフィン、イソパラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。
【0061】
ロウとしては、オレンジラフィー油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、水素添加ラノリン、水素添加ホホバ油、水素添加カルナバロウ等が挙げられる。
【0062】
高級脂肪酸としては、炭素数が12以上の脂肪酸であれば特に限定されず、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソトリデカン酸等が挙げられる。
【0063】
高級脂肪酸エステルとしては、高級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、高級脂肪酸と中級又は高級アルコールとのエステル、高級脂肪酸と多価アルコールとのエステル、オキシ酸と高級アルコールとのエステル、環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
より具体的には、高級脂肪酸と低級(炭素数2以上4以下)アルコールとのエステルとしては、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル等を例示することができる。
高級脂肪酸と中級(炭素数5以上11以下)又は高級(炭素数12以上)アルコールとのエステルとしては、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル等を例示することができる。
高級脂肪酸と多価アルコールとのエステルとしては、トリミリスチン酸グリセリル、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリル等を例示することができる。
オキシ酸と高級アルコールとのエステルとしては、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル等を例示することができる。
環状アルコール脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル等を例示することができる。
【0064】
上記した油性成分の中でも、カンナビノイドとの相溶性及び安定性に優れる点から、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリルが好ましく、例えば、ココナードMT(花王社)等の市販されているものを適宜使用できる。
【0065】
油性成分の含有量は、組成物が粉末の場合、前記組成物の質量に対し、少なくとも1質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらにより好ましくは25質量%以上であってよい。油性成分の含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下であってよい。
【0066】
油性成分の含有量は、組成物が液状の場合、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.50質量%以上、より好ましくは0.75質量%以上、さらに好ましくは1.00質量%以上、さらにより好ましくは1.25質量%以上であってよい。油性成分の含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは2.50質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下、さらに好ましくは1.75質量%以下、さらにより好ましくは1.50質量%以下であってよい。
【0067】
(1-8)トレハロース
【0068】
本発明の組成物を製造する際、水なじみを向上させる観点から、組成物は、さらにトレハロースを含んでもよい。
トレハロースとは、2分子のD-グルコースが1,1結合した形の非還元二糖類の一種であり、3種類の異性体(α,α-トレハロース、α,β-トレハロース、β,β-トレハロース)が存在する。本技術に従う組成物に用いるトレハロースの種類は特に限定されず、トレハ(林原社)等の市販されているものを適宜用いることができる。トレハロースは、1種を単独で用いても、複数種を併用してもよい。
【0069】
トレハロースの含有量は、組成物が粉末の場合、前記組成物の質量に対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、さらにより好ましくは30質量%以上であってよい。トレハロースの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、さらにより好ましくは50質量%以下であってよい。
【0070】
トレハロースの含有量は、組成物が液状の場合、前記組成物の質量に対し、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.25質量%以上、さらにより好ましくは1.50質量%以上であってよい。トレハロースの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記組成物の質量に対し、好ましくは3.50質量%以下、より好ましくは3.00質量%以下、さらに好ましくは2.75質量%以下、さらにより好ましくは2.50質量%以下であってよい。
【0071】
(2)物性
【0072】
[油滴割合]
【0073】
本発明の組成物は、液状組成物の場合、溶液中において粒子サイズが小さな油滴の占める割合が大きいほど透明性に優れることを意味する。また、本発明の組成物が粉末組成物の場合、粉末組成物を水に溶解した場合、水液中において粒子サイズが小さな油滴の占める割合が大きいほど透明性に優れることを意味する。
例えば、本発明の組成物が液状組成物の場合、液状組成物を、カンナビノイド濃度として0.04%となるように調整して得られる溶液中の500nm以下の油滴の割合が、全油滴のうちの96%以上であってよく、溶液中の200nm以下の油滴の割合が、全油滴のうちの96%以上であってよく、溶液中の100nm以下の油滴の割合が、全油滴のうちの93%以上であってよい。
また、前記組成物が粉末組成物の場合、前記組成物を水に溶解させ、カンナビノイド濃度として0.04%となるように調整して得られる水溶液中の500nm以下の油滴の割合が、全油滴のうちの60%以上であってよく、前記組成物を水に溶解させ、カンナビノイド濃度として0.04%となるように調整して得られる水溶液中の200nm以下の油滴の割合が、全油滴のうちの30%以上であってよく、前記組成物を水に溶解させ、カンナビノイド濃度として0.04%となるように調整して得られる水溶液中の100nm以下の油滴の割合が、全油滴のうちの15%以上であってよい。
【0074】
2.第2の実施形態(液状組成物の製造方法)
【0075】
第2の実施形態に係る液状組成物の製造方法は、カンナビノイドとポリグリセリン脂肪酸エステルとを少なくとも含む水溶液をナノサイズへ乳化処理して乳化液を得る乳化工程を含む。
【0076】
以下、より詳細に液状組成物の製造方法について述べるが、本発明は、これらの方法に限定されない。乳化工程において、例えば、プレ乳化液を調製し、得られたプレ乳化液にナノ乳化処理を施し、油滴がナノサイズ化された乳化液を得る。
【0077】
(1)プレ乳化液の調製
【0078】
先ず、プレ乳化液を以下の操作により調製する。
(i)室温下、精製水へトレハロース、オクテニルコハク酸澱粉、アラビアガム、ビタミンC、ビタミンCナトリウムを加え十分分散させた後、所定温度で加温撹拌する。
(ii)別容器にて前記(i)の所定温度と同じ温度に加温した精製水へ脂肪酸グリセリンエステルを撹拌溶解し、そこへ親油性乳化剤を添加混合する。
(iii)前記操作(ii)で調製された液を前記操作(i)で調製された液へ添加する。所定温度で所定時間撹拌混合後、ホモジナイザーで所定時間分散し、乳化剤水溶液を調製する。
(iv)別容器にて油性成分とビタミンE、ビタミンCパルミテートを所定温度で撹拌混合し、所定量のカンナビノイドを加え、所定温度で撹拌し溶解させる。
(v)前記操作(iii)で調製された乳化剤水溶液へ、前記操作(iv)で調製されたカンナビノイドと油性成分とビタミンEとビタミンCパルミテートの混合物を数回に分けて滴下し、ホモジナイザーで分散し乳化させる。
(vi)水道水の流水に容器をさらし、内容物を室温から40℃程度まで冷却し、プレ乳化液を得る。
【0079】
(2)ナノ乳化処理
【0080】
前記操作で調製されたプレ乳化液にナノ乳化処理を施し、油滴がナノサイズ化された乳化液を得る。ナノ乳化処理は、超音波処理による方法やビーズミルによる方法等が挙げられる。プレ乳化液の変色を避ける観点から、ナノ乳化処理は好ましくは超音波処理による方法であってよい。ナノ乳化処理が超音波処理により行われる場合、例えば以下の操作により行われる。
(i)プレ乳化液を氷冷しながら超音波ホモジナイザーにセットする。
(ii)プレ乳化液に超音波処理を所定時間施す。
(iii)乳化液の透明度が低い場合、操作(ii)を繰り返す。
また、ナノ乳化処理がビーズミルにより行われる場合、以下の操作により行われる。
(i)プレ乳化液を撹拌しながらビーズミルに所定流量で供給し、ビーズミル内を所定温度に維持する。
(ii)ビーズミル出口から流出するナノ乳化処理が施された処理液に光が通過しない不透明な白濁や沈殿、析出がなく、透明感のある乳白色で、顕微鏡で油滴が存在しないことを確認後、処理液を濾過する。
【0081】
(3)濾過処理
【0082】
超音波処理又はビーズミルによる処理液を、濾紙により濾過し、異物等を除去し、液状組成物を調製する。
【0083】
3.第3の実施形態(粉末組成物の製造方法)
【0084】
第3の実施形態に係る粉末組成物の製造方法は、カンナビノイドとポリグリセリン脂肪酸エステルとを少なくとも含む水溶液をナノサイズへ乳化処理して乳化液を得る乳化工程と、前記乳化液を乾燥処理によって粉末化して粉末組成物を得る粉末化工程と、を含む。
【0085】
以下、より詳細に粉末組成物の製造方法について述べるが、本発明は、これらの方法に限定されない。乳化工程において、例えば、プレ乳化液を調製し、得られたプレ乳化液にナノ乳化処理を施し、油滴がナノサイズ化された乳化液を調製する。粉末化工程において、油滴がナノサイズ化された乳化液を乾燥処理によって粉末化する。
【0086】
(1)プレ乳化液の調製
【0087】
先ず、プレ乳化液を調製する。第3の実施形態におけるプレ乳化液の調製は、第2の実施形態におけるものと同様である。すなわち、第3の実施形態におけるプレ乳化液の調製については、上記2.(1)において述べた説明が当てはまる。
【0088】
(2)ナノ乳化処理
【0089】
調製されたプレ乳化液にナノ乳化処理を施し、油滴がナノサイズ化された乳化液を得る。第3の実施形態におけるナノ乳化処理は、第2の実施形態におけるものと同様である。すなわち、第3の実施形態におけるナノ乳化処理については、上記2.(2)において述べた説明が当てはまる。
【0090】
(3)濾過処理
【0091】
ナノ乳化処理された処理液を濾紙により濾過し、異物等を除去し、液状組成物を調製する。第3の実施形態における濾過処理は、第2の実施形態におけるものと同様である。すなわち、第3の実施形態における濾過処理については、上記2.(3)において述べた説明が当てはまる。
【0092】
(4)粉末化処理
【0093】
濾過処理された液状組成物を真空凍結乾燥機へセットする。液状組成物を所定温度、所定時間凍結乾燥し粉末化する。凍結乾燥後、粉末組成物を取り出し、30Mステンレスメッシュでふるい整粒する。
【0094】
4.実施例
【0095】
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0096】
以下の実施例及び比較例において、油滴割合及び乳化安定性(pH、熱、胃酸)の評価方法を以下に説明する。
【0097】
[油滴割合]
【0098】
液状組成物と粉末組成物のそれぞれについて油滴割合の評価方法を以下に説明する。
【0099】
<液状組成物における油滴の割合>
【0100】
濾過後の液状組成物を、カンナビノイド濃度として0.04%となるよう精製水で希釈し、サンプル液とした。サンプル液を孔径500nmの親水性PTFEフィルター(アドバンテック東洋社製)に通過させた。通過前後のサンプル液についてHPLC法(カラム:Shin-pack Scepter C18、島津製作所社製)によりカンナビノイド含有量を測定し、通過サンプル中のカンナビノイド量を500nm以下の油滴と判断し、全油滴中における500nm以下の油滴の割合を求めた。
また、サンプル液を孔径200nmの親水性PTFEフィルター(アドバンテック東洋社製)に通過させた。通過前後のサンプル液についてHPLC法(カラム:Shin-pack Scepter C18、島津製作所社製)によりカンナビノイド含有量を測定し、通過サンプル中のカンナビノイド量を200nm以下の油滴と判断し、全油滴中における200nm以下の油滴の割合を求めた。
また、サンプル液を孔径100nmの親水性PTFEフィルター(アドバンテック東洋社製)に通過させた。通過前後のサンプル液についてHPLC法によりカンナビノイド含有量を測定し、通過サンプル中のカンナビノイド量を100nm以下の油滴と判断し、全油滴中における100nm以下の油滴の割合を求めた。
【0101】
<粉末組成物における油滴の割合>
【0102】
常温で粉末組成物を水に溶解させ、カンナビノイド濃度として0.04%となるよう水溶液を調製し、サンプル液とした。液状組成物の場合と同じ方法により、サンプル液を孔径1000nmの親水性PTFEフィルター(Merck Millipore社製)に通過させ、通過前後のサンプル液についてHPLC法(カラム:Shin-pack Scepter C18、島津製作所社製)によりカンナビノイド含有量を測定し、通過サンプル中のカンナビノイド量を1000nm以下の油滴と判断し、全油滴中における1000nm以下の油滴の割合を求めた。
また、サンプル液を孔径500nmの親水性PTFEフィルター(アドバンテック東洋社製)に通過させ、通過前後のサンプル液についてHPLC法(カラム:Shin-pack Scepter C18、島津製作所社製)によりカンナビノイド含有量を測定し、通過サンプル中のカンナビノイド量を500nm以下の油滴と判断し、全油滴中における500nm以下の油滴の割合を求めた。
また、サンプル液を孔径200nmの親水性PTFEフィルター(アドバンテック東洋社製)に通過させ、通過前後のサンプル液についてHPLC法(カラム:Shin-pack Scepter C18、島津製作所社製)によりカンナビノイド含有量を測定し、通過サンプル中のカンナビノイド量を200nm以下の油滴と判断し、全油滴中における200nm以下の油滴の割合を求めた。
また、サンプル液を孔径100nmの親水性PTFEフィルター(アドバンテック東洋社製)に通過させ、通過前後のサンプル液についてHPLC法(カラム:Shin-pack Scepter C18、島津製作所社製)によりカンナビノイド含有量を測定し、通過サンプル中のカンナビノイド量を100nm以下の油滴と判断し、全油滴中における100nm以下の油滴の割合を求めた。
【0103】
[乳化安定性]
【0104】
粉末組成物の場合についてpHと熱に対する乳化安定性の評価方法を以下に説明する。
粉末組成物へ水を添加し、60℃加温下スターラー撹拌を行い、そこへ果糖ぶどう糖液糖を35%配合となるよう添加し、さらに10%クエン酸水溶液を添加し、pHを3.5に調整後、カンナビノイド濃度として0.04%となるよう水を加え調整したサンプル液を得た。また、サンプル液を90℃、15分間加熱した。目視により、清澄性、変色、沈殿・浮遊物の有無について観察した。
【0105】
[実施例1]
【0106】
(1)プレ乳化液の調製
【0107】
以下、各成分の質量%は組成物の質量に対する割合を意味する。
室温下、トレハロース(トレハ、林原製)(11.09質量%)と、オクテニルコハク酸澱粉(エマルスター500A、松谷化学工業製)(5.58質量%)とを、精製水へ分散させた後、70℃で加温撹拌した(溶液1)。別容器にて、70℃に加温した精製水へ80℃の湯せんで溶解させたモノパルミチン酸デカグリセリル(HLB値12.5)(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)(30質量%)を添加し、撹拌溶解し、そこへモノオレイン酸ソルビタン(HLB値4.5)(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製)(3.33質量%)を添加混合した(溶液2)。溶液2を溶液1へ加え、70℃加温下、5分程度撹拌し、混合後、撹拌しながらホモジナイザー(6500rpm)で10分間分散し、乳化剤水溶液を調製した(溶液3)。別容器にて、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)(29.17質量%)へ、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)(20.83質量%)を添加し、60℃加温下で撹拌し、溶解させた(溶液4)。溶液3を撹拌させながら、その中へ溶液4を数回に分けて滴下し、ホモジナイザーで乳化させた。水道水の流水に容器をさらし、内容物を室温から40℃程度まで冷却し、プレ乳化液を得た。
【0108】
(2)ナノ乳化処理
【0109】
上記で調製されたプレ乳化液を撹拌しながらビーズミルへ流量20mL/分で供給し、プレ乳化液にナノ乳化処理を施し、乳化液を得た。なお、乳化液に光が通過しない不透明な白濁や沈殿、析出がなく透明感のある乳白色で、顕微鏡により油滴が確認されなくなるまで循環し、ナノ乳化処理を施した。
【0110】
(3)濾過処理
【0111】
上記で調製された乳化液を濾紙により濾過処理を施し、液状組成物を得た。
得られた液状組成物は、pHを3.5に変化させた場合も、90℃まで加温した場合も、濁りや沈殿は全く見られない透明感に優れた均一な白色乳化液となり、油性成分の分離も全く確認されなかった。
さらに、室温で2週間静置後も透明感を維持していた。
【0112】
[実施例2]
【0113】
液状組成物における組成が、トレハロース(トレハ、林原製)を25質量%、オクテニルコハク酸澱粉(エマルスター500A、松谷化学工業製)を5.6質量%、モノオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製)を2.7質量%、アラビアガム(アラビックコールSS、三栄薬品貿易製)を10.3質量%、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)を15.4質量%、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)を11質量%となるように配合したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた液状組成物のpHを3.5に変化させ、90℃まで加温した場合、室温で一晩静置後、透明感が高いものであった。
さらに、得られた液状組成物から上記3(4)粉末化処理で述べた方法により粉末組成物を得た。得られた粉末組成物はクリーム色がかった白色粉末で、サラサラ感にはやや欠けていた。
【0114】
[実施例3]
【0115】
トレハロース(トレハ、林原製)を25質量%、オクテニルコハク酸澱粉(エマルスター500A、松谷化学工業製)を5.6質量%、モノオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製)を2.7質量%、アラビアガム(アラビックコールSS、三栄薬品貿易製)を10.3質量%、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)を15.4質量%、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)を11質量%、モノパルミチン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)を10質量%、さらにモノステアリン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-SVEXF、日光ケミカルズ製)を20質量%となるように配合したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた液状組成物のpHを3.5に変化させ、90℃まで加温した場合、室温で一晩静置後、透明感が高いものであった。
さらに、得られた液状組成物から上記3(4)粉末化処理で述べた方法により粉末組成物を得た。得られた粉末組成物はクリーム色がかった白色粉末で、サラサラ感にはやや欠けていた。
【0116】
[実施例4]
【0117】
液状組成物における組成が、トレハロース(トレハ、林原製)を22質量%、モノオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製)を2.7質量%、アラビアガム(アラビックコールSS、三栄薬品貿易製)を6.12質量%、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)を12.6質量%、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)を21質量%となるように配合したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた液状組成物のpHを3.5に変化させ、90℃まで加温した場合、室温で一晩静置後、透明感が高いものであった。
【0118】
[実施例5]
【0119】
液状組成物における組成が、トレハロース(トレハ、林原製)を22質量%、モノオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製)を2.7質量%、アラビアガム(アラビックコールSS、三栄薬品貿易製)を6.12質量%、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)を12.6質量%、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)を21質量%、モノパルミチン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)を10質量%、さらにモノステアリン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-SVEXF、日光ケミカルズ製)を20質量%となるように配合したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた液状組成物のpHを3.5に変化させ、90℃まで加温した場合、室温で一晩静置後、実施例2より透明感が少し低いものの透明感は高いものであった。
【0120】
[実施例6]
【0121】
液状組成物における組成が、オクテニルコハク酸澱粉を配合せず、トレハロース(トレハ、林原製)を25質量%、モノオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製)を2.7質量%、アラビアガム(アラビックコールSS、三栄薬品貿易製)を8.7質量%、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)を12.6質量%、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)を21質量%、モノパルミチン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)を30質量%となるように配合したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた液状組成物のpHを3.5に変化させ、90℃まで加温した場合、室温で一晩静置後、実施例2より透明感が少し低いものの透明感は高いものであった。
【0122】
[実施例7]
【0123】
液状組成物における組成が、オクテニルコハク酸澱粉を配合せず、トレハロース(トレハ、林原製)を25質量%、モノオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製)を2.7質量%、アラビアガム(アラビックコールSS、三栄薬品貿易製)を8.7質量%、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)を12.6質量%、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)を21質量%、モノパルミチン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)を10質量%、さらにモノステアリン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-SVEXF、日光ケミカルズ製)を20質量%となるように配合したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた液状組成物のpHを3.5に変化させ、90℃まで加温した場合、室温で一晩静置後、実施例2より透明感が少し低いものの透明感は高いものであった。
【0124】
[実施例8]
【0125】
室温下、トレハロース(トレハ、林原製)(44.5質量%)と、オクテニルコハク酸澱粉(エマルスター500A、松谷化学工業製)(7質量%)と、アスコルビン酸ナトリウム(VC Na、Northeast Pharmaceutical Group製)(1.0質量%)とを、精製水へ分散させた後、70℃で加温撹拌した(溶液1)。別容器にて、70℃に加温した精製水へ80℃の湯せんで溶解させたモノパルミチン酸デカグリセリル(HLB値12.5)(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)(20質量%)を添加し、撹拌溶解し、そこへモノオレイン酸ソルビタン(HLB値4.5)(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製)(1.8質量%)を添加混合した(溶液2)。溶液2を溶液1へ加え、70℃加温下、5分程度撹拌し、混合後、撹拌しながらホモジナイザー(6500rpm)で10分間分散し、乳化剤水溶液を調製した(溶液3)。別容器にて、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)(5.5質量%)とγ-トコフェロール(ガンマブライト90、三菱ケミカル製)(1質量%)の混合液へ、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)(11質量%)を添加し、60℃加温下で撹拌し、溶解させた(溶液4)。溶液3を撹拌させながら、その中へ溶液4を数回に分けて滴下し、ホモジナイザーで乳化させた。水道水の流水に容器をさらし、内容物を室温から40℃程度まで冷却し、プレ乳化液を得た。得られたプレ乳化液に、実施例1と同じ方法でナノ乳化処理を施し、アラビアガム(アラビックコールSS、三栄薬品貿易製)(8.2質量%)溶液を添加し、濾過処理を施して、液状組成物を得た。得られた液状組成物は、一晩静置後、油滴の分離や沈殿は発生しなかった。
さらに、得られた液状組成物から上記3(4)粉末化処理で述べた方法により粉末組成物を得た。得られた粉末組成物は白色粉末であり、乳鉢で粉砕後、サラサラ感があった。得られた粉末組成物は、実施例2、3で得られた粉末組成物よりも白色であった。
【0126】
[実施例9]
【0127】
液状組成物における組成が、トレハロース(トレハ、林原製)を20質量%、オクテニルコハク酸澱粉(エマルスター500A、松谷化学工業製)を5.6質量%、モノパルミチン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)を30質量%、モノオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製を2.7質量%、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)を10.5質量%、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)を21質量%となるように配合したこと以外は実施例8と同じ方法で液状組成物を得た。得られた液状組成物は、一晩静置後、油滴の分離や沈殿は発生しなかった。
さらに、得られた液状組成物から上記3(4)粉末化処理で述べた方法により粉末組成物を得た。得られた粉末組成物は実施例8の粉末組成物よりもより白色であった。また、粉末組成物を水に再分散させた場合、実施例8よりも透明感が若干高かった。
【0128】
[実施例10]
【0129】
液状組成物における組成が、トレハロース(トレハ、林原製)を22質量%、オクテニルコハク酸澱粉(エマルスター500A、松谷化学工業製)を5.58質量%、モノパルミチン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)を30質量%、モノオレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製を2.7質量%、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)を12.6質量%、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)を21質量%、アラビアガム(アラビックコールSS、三栄薬品貿易製)を6.12質量%となるように配合したこと以外は実施例8と同じ方法で液状組成物を得た。得られた液状組成物から上記3(4)粉末化処理で述べた方法により粉末組成物を得た。
【0130】
得られた粉末組成物を人工胃液に溶解し、経時的に乳化状態を目視により観察した。同時にHPLC分析を行った。
【0131】
<人工胃液>
日本薬局方 溶出試験第1液(人工胃液pH1.2)に準拠し、塩化ナトリウム2.0gを塩酸7.0mL及び水に溶解させ1000mLとした。
【0132】
粉末組成物50mgを人工胃液25mLに溶解し(CBD0.04%=20mg/50mL相当)、37℃の温浴上でスターラー撹拌を行った。5分間のスターラー撹拌により透明感のある均一な乳化液となった。経時的に4時間、乳化状態を目視により確認するとともに人工胃液を100μL採取し、HPLC移動相で10倍希釈し、HPLC分析を行った。4時間経過後も、分離や沈殿、不溶分は発生せず、乳化状態が維持された。また、HPLC分析の結果よりカンナビジオールの分解も全く見られなかった。
【0133】
[実施例11]
【0134】
モノパルミチン酸デカグリセリル(HLB値12.5)(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)の代わりにモノステアリン酸デカグリセリル(HLB値15)(NIKKOL Decaglyn 1-50SV、日光ケミカルズ製)を使用したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた液状組成物は、沈殿や析出はなく、透明感が高かった。
また、得られた液状組成物から上記3(4)粉末化処理で述べた方法により得られた粉末組成物は、ロウ状粉末であった。
【0135】
[実施例12]
【0136】
モノパルミチン酸デカグリセリル(HLB値12.5)(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)の代わりにモノステアリン酸デカグリセリル(HLB値12.5)(NIKKOL Decaglyn 1-SVEXF、日光ケミカルズ製)を使用したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた液状組成物は、沈殿や析出はなく、透明感が高かった。
また、得られた液状組成物から上記3(4)粉末化処理で述べた方法により得られた粉末組成物は、ロウ状粉末であった。
【0137】
[実施例13]
【0138】
モノパルミチン酸デカグリセリル(HLB値12.5)(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)の代わりにモノオレイン酸デカグリセリル(HLB値12.0)(NIKKOL Decaglyn 1-OVEXF、日光ケミカルズ製)を使用したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた液状組成物は、沈殿や析出はなく、透明感が高かった。
また、得られた液状組成物から上記3(4)粉末化処理で述べた方法により得られた粉末組成物は、実施例11、実施例12と比べて、よりサラサラ感のないロウ状粉末であった。
【0139】
[実施例14]
【0140】
モノパルミチン酸デカグリセリル(HLB値12.5)(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)の代わりにモノミリスチン酸デカグリセリル(HLB値14.5)(NIKKOL Decaglyn 1-MVEXF PN、日光ケミカルズ製)を使用したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた液状組成物は、沈殿や析出はなく、透明感が高かった。
また、得られた液状組成物から上記3(4)粉末化処理で述べた方法により得られた粉末組成物は、実施例11、実施例12と比べて、よりサラサラ感のないロウ状粉末であった。
【0141】
[実施例15]
【0142】
室温下、オクテニルコハク酸澱粉(エマルスター500A、松谷化学工業製)(7質量%)と、アラビアガム(アラビックコールSS、三栄薬品貿易製)(7質量%)と、アスコルビン酸ナトリウム(VC Na、Northeast Pharmaceutical Group製)(0.98質量%)と、アスコルビン酸(VC、Northeast Pharmaceutical Group製)(0.02質量%)とを、精製水へ分散させた後、70℃で加温撹拌した(溶液1)。別容器にて、70℃に加温した精製水へ80℃の湯せんで溶解させたモノパルミチン酸デカグリセリル(HLB値12.5)(NIKKOL Decaglyn 1-PVEXF、日光ケミカルズ製)(25質量%)を添加し、撹拌溶解し、そこへモノオレイン酸ソルビタン(HLB値4.5)(NIKKOL SO-10VF、日光ケミカルズ製)(2.5質量%)を添加混合した(溶液2)。溶液2を溶液1へ加え、70℃加温下、5分程度撹拌し、混合後、撹拌しながらホモジナイザー(6500rpm)で10分間分散し、乳化剤水溶液を調製した(溶液3)。別容器にて、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)(11質量%)とγ-トコフェロール(ガンマブライト90、三菱ケミカル製)(0.5質量%)の混合液へ、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル(ビタミンCパルミテート、三菱ケミカル製)(0.01質量%)をプロピレングリコール(プロピレングリコール、AGC製)(0.2質量%)に溶解させた液を添加し、さらにカンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)(11質量%)を添加し、60℃加温下で撹拌し、溶解させた(溶液4)。溶液3を撹拌させながら、その中へ溶液4を数回に分けて滴下し、ホモジナイザーで乳化させた。水道水の流水に容器をさらし、内容物を室温から40℃程度まで冷却し、プレ乳化液を得た。得られたプレ乳化液に、上記2(2)ナノ乳化処理で述べた超音波処理方法により、ナノ乳化処理を施し、トレハロース(トレハ、林原製)(34.79質量%)溶液を添加し、濾過処理を施して、液状組成物を得た。
得られた液状組成物は、実施例9で得られた液状組成物よりも更に透明度が高く、一晩静置後も濁りや析出は一切なく、透明感を維持していた。
また、得られた液状組成物のpHを3.5に変化させた場合も、90℃まで加温した場合も、濁りや沈殿は全く見られない清澄な乳化液となり、油性成分の分離も全く確認されず、室温で2週間静置後も透明感を維持していた。
液状組成物に関し、全油滴中における500nm以下の油滴の割合は101.93%、全油滴中における200nm以下の油滴の割合は99.10%、全油滴中における100nm以下の油滴の割合は93.36%であった。
さらに、得られた液状組成物から上記3(4)粉末化処理で述べた方法により粉末組成物を得た。得られた粉末組成物は、実施例9で得られた粉末組成物よりも更に白色であった。
粉末組成物に関し、全油滴中における1000nm以下の油滴の割合は83.34%、500nm以下の油滴の割合は63.77%、全油滴中における200nm以下の油滴の割合は39.66%、全油滴中における100nm以下の油滴の割合は18.72%であった。
【0143】
[比較例1]
【0144】
液状組成物における組成が、トレハロース(トレハ、林原製)を58.84質量%、ショ糖ステアリン酸エステル(リョートーシュガーエステルS-770)を5.88質量%、ショ糖ステアリン酸エステル(リョートーシュガーエステルS-1170)を5.88質量%、ショ糖ステアリン酸エステル(DKエステルF-160)を11.76質量%、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン(ココナードMT、花王ケミカル製)を10.29質量%、カンナビジオール(CBDアイソレートパウダー、公知貿易製)を7.35質量%となるように配合したこと以外は実施例1と同じ方法で液状組成物を得た。
得られた粉末組成物へ水40g添加し、60℃加温下スターラー撹拌を20分間行った。次に果糖ぶどう糖液糖を7.5g添加し、撹拌した。さらに、10%クエン酸水溶液を滴下し、pHを3.5に変化させて全量を50gとした。室温で一晩静置後、容器内の底への沈殿物が確認された。
【0145】
以上、本技術の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0146】
例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等を用いてもよい。また、化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。
【0147】
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等は、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0148】
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。