(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130582
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】バッテリ装置、制御方法、及び、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/382 20190101AFI20240920BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240920BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01R31/382
G01R31/385
H01M10/48 301
H01M10/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040407
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】穂刈 正樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 博史
(72)【発明者】
【氏名】田所 博
(72)【発明者】
【氏名】野口 健司
(72)【発明者】
【氏名】小池 洋恵
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA16
5H030AA09
5H030AS20
5H030FF22
5H030FF51
(57)【要約】
【課題】リチウムイオンのバッテリセルのSOCを精度良く測定することが可能なバッテリ装置、制御方法、及び、制御プログラムを提供すること。
【解決手段】本実施の形態にかかるバッテリ装置は、リチウムイオンのバッテリセルと、バッテリセルの表面に取り付けられたひずみゲージと、バッテリセルの温度を検出する温度センサと、温度センサによって検出された温度と、バッテリセルの充放電による体積変化に伴って変化する前記ひずみゲージのひずみ量と、に基づいて、バッテリセルのSOC(State Of Charge)を算出する測定装置と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンのバッテリセルと、
前記バッテリセルの表面に取り付けられたひずみゲージと、
前記バッテリセルの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサによって検出された温度と、前記バッテリセルの充放電による体積変化に伴って変化する前記ひずみゲージのひずみ量と、に基づいて、前記バッテリセルのSOC(State Of Charge)を算出する測定装置と、
を備えたバッテリ装置。
【請求項2】
前記バッテリセルと前記測定装置とを熱結合させる結合部材をさらに備えた、
請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項3】
前記結合部材は、シリコン、シリコーン、及び、アクリルのうち少なくとも何れかを含む樹脂である、
請求項2に記載のバッテリ装置。
【請求項4】
前記バッテリセルは円筒形状を有し、
前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの側面に周方向に沿って取り付けられている、
請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項5】
前記バッテリセルは円筒形状を有し、
前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの側面において当該バッテリセルの軸方向よりも周方向に沿って長くなるように取り付けられている、
請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項6】
前記バッテリセルは円筒形状を有し、
前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの底面に取り付けられている、
請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項7】
前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの負極側の底面に取り付けられている、
請求項6に記載のバッテリ装置。
【請求項8】
前記バッテリセルはラミネート形状を有し、
前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの外装フィルムに一体に形成されている、
請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項9】
前記バッテリセルはラミネート形状を有し、
前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの主面に取り付けられている、
請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項10】
前記バッテリセルはラミネート形状を有し、
前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの主面において放射状に取り付けられている、
請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項11】
前記バッテリセルはラミネート形状を有し、
前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの主面において、第1方向の長さと、前記第1方向に直交する第2方向の長さと、が均等になるように取り付けられている、
請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項12】
前記温度センサによって検出された温度に対応する、前記ひずみゲージのひずみ量と前記バッテリセルのSOCとの関係を表す情報、が格納されたデータベースと、
をさらに有し、
前記測定装置は、前記データベースから、前記温度センサによって検出された温度、及び、前記ひずみゲージのひずみ量、に応じたSOCを抽出して測定結果として出力する、
請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項13】
前記測定装置は、SOC及び温度が何れも同じ条件である場合において、前記データベースに格納されたひずみ量と、前記ひずみゲージのひずみ量と、を比較した結果が所定の条件を満たしている場合、前記データベースに格納されたひずみ量を、前記ひずみゲージのひずみ量の値に更新する、
請求項12に記載のバッテリ装置。
【請求項14】
筐体をさらに備え、
前記バッテリセル、前記ひずみゲージ、及び、前記測定装置は、何れも前記筐体の内部に設けられている、
請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項15】
リチウムイオンのバッテリセルと、
前記バッテリセルの表面に取り付けられたひずみゲージと、
温度センサと、
測定装置と、
を備えたバッテリ装置の前記測定装置による制御方法であって、
前記温度センサを用いて前記バッテリセルの温度を検出し、
前記バッテリセルの充放電による体積変化に伴って変化する前記ひずみゲージのひずみ量を検出し、
前記バッテリセルの温度と、前記ひずみゲージのひずみ量と、に基づいて、前記バッテリセルのSOC(State Of Charge)を算出する、
制御方法。
【請求項16】
前記バッテリセルのSOCの算出では、
前記温度センサによって検出された温度に対応する、前記ひずみゲージのひずみ量と前記バッテリセルのSOCとの関係を表す情報、が格納されたデータベースから、前記温度センサによって検出された温度、及び、前記ひずみゲージのひずみ量、に応じたSOC(State Of Charge)を抽出して算出結果として出力する、
請求項15に記載の制御方法。
【請求項17】
SOC及び温度が何れも同じ条件である場合において、前記データベースに格納されたひずみ量と、前記ひずみゲージのひずみ量と、を比較した結果が所定の条件を満たしている場合、前記データベースに格納されたひずみ量を、前記ひずみゲージのひずみ量の値に更新する、
請求項16に記載の制御方法。
【請求項18】
リチウムイオンのバッテリセルと、
前記バッテリセルの表面に取り付けられたひずみゲージと、
温度センサと、
測定装置と、
を備えたバッテリ装置の前記測定装置による制御処理をコンピュータに実行させる制御プログラムであって、
前記温度センサを用いて前記バッテリセルの温度を検出する処理と、
前記バッテリセルの充放電による体積変化に伴って変化する前記ひずみゲージのひずみ量を検出する処理と、
前記バッテリセルの温度と、前記ひずみゲージのひずみ量と、に基づいて、前記バッテリセルのSOC(State Of Charge)を算出する処理と、
をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【請求項19】
前記バッテリセルのSOCを算出する処理では、
前記温度センサによって検出された温度に対応する、前記ひずみゲージのひずみ量と前記バッテリセルのSOCとの関係を表す情報、が格納されたデータベースから、前記温度センサによって検出された温度、及び、前記ひずみゲージのひずみ量、に応じたSOC(State Of Charge)を抽出して算出結果として出力する、
請求項18に記載の制御プログラム。
【請求項20】
SOC及び温度が何れも同じ条件である場合において、前記データベースに格納されたひずみ量と、前記ひずみゲージのひずみ量と、を比較した結果が所定の条件を満たしている場合、前記データベースに格納されたひずみ量を、前記ひずみゲージのひずみ量の値に更新する処理をさらにコンピュータに実行させる、
請求項19に記載の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ装置、制御方法、及び、制御プログラムに関し、リチウムイオンのバッテリセルのSOCを精度良く測定するのに適したバッテリ装置、制御方法、及び、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、リチウムイオンバッテリのSOC(State Of Charge)を測定する測定装置の開発が進められている。バッテリのSOCの測定に関する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定装置には、依然として、リチウムイオンバッテリのSOCをより精度良く測定することが求められている。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示にかかるバッテリ装置は、リチウムイオンのバッテリセルと、前記バッテリセルの表面に取り付けられたひずみゲージと、前記バッテリセルの温度を検出する温度センサと、前記温度センサによって検出された温度と、前記バッテリセルの充放電による体積変化に伴って変化する前記ひずみゲージのひずみ量と、に基づいて、前記バッテリセルのSOC(State Of Charge)を算出する測定装置と、を備える。
【0006】
本開示にかかる制御方法は、リチウムイオンのバッテリセルと、前記バッテリセルの表面に取り付けられたひずみゲージと、温度センサと、測定装置と、を備えたバッテリ装置の前記測定装置による制御方法であって、前記温度センサを用いて前記バッテリセルの温度を検出し、前記バッテリセルの充放電による体積変化に伴って変化する前記ひずみゲージのひずみ量を検出し、前記バッテリセルの温度と、前記ひずみゲージのひずみ量と、に基づいて、前記バッテリセルのSOC(State Of Charge)を算出する。
【0007】
本開示にかかる制御プログラムは、リチウムイオンのバッテリセルと、前記バッテリセルの表面に取り付けられたひずみゲージと、温度センサと、測定装置と、を備えたバッテリ装置の前記測定装置による制御処理をコンピュータに実行させる制御プログラムであって、前記温度センサを用いて前記バッテリセルの温度を検出する処理と、前記バッテリセルの充放電による体積変化に伴って変化する前記ひずみゲージのひずみ量を検出する処理と、前記バッテリセルの温度と、前記ひずみゲージのひずみ量と、に基づいて、前記バッテリセルのSOC(State Of Charge)を算出する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、リチウムイオンのバッテリセルのSOCを精度良く測定することが可能なバッテリ装置、制御方法、及び、制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1にかかるバッテリ装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1にかかるバッテリ装置に設けられたバッテリセルの放電時の内部構造を示す概念図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1にかかるバッテリ装置に設けられたバッテリセルの充電時の内部構造を示す概念図である。
【
図4】
図4は、バッテリセル及び当該バッテリセルに取り付けられたひずみゲージの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1にかかるバッテリ装置の一例を示す概略斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1にかかるバッテリ装置に設けられた測定装置によって実運用前に行われる、ひずみゲージによって検出される圧力の温度特性パラメータの取得処理、の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、温度センサによって検出された温度と、ひずみゲージによって検出された圧力と、の関係を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1にかかるバッテリ装置に設けられた測定装置によって実運用前に行われる、SOCパラメータの取得処理、の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施の形態1にかかるバッテリ装置に設けられた測定装置によって実運用時に行われるSOC測定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、温度特性のキャンセル前後の、ひずみゲージによって検出された圧力と、バッテリセルのSOCと、の関係を示す図である。
【
図11】
図11は、充放電を繰り返すバッテリセルからひずみゲージが受ける圧力の変化を示すタイミングチャートである。
【
図12】
図12は、実施の形態2にかかるバッテリ装置のバッテリセルに取り付けられたひずみゲージのレイアウトの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施の形態2にかかるバッテリ装置のバッテリセルに取り付けられたひずみゲージのレイアウトの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施の形態2にかかるバッテリ装置のバッテリセルに取り付けられたひずみゲージのレイアウトの一例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施の形態2にかかるバッテリ装置のバッテリセルに取り付けられたひずみゲージのレイアウトの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、実施の形態2にかかるバッテリ装置のバッテリセルに取り付けられたひずみゲージのレイアウトの一例を示す図である。
【
図17】
図17は、ラミネート形状のバッテリセルの外観を示す図である。
【
図18】
図18は、ラミネート形状のバッテリセルの内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。ただし、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0012】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0013】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1にかかるバッテリ装置1の構成例を示す図である。バッテリ装置1は、バッテリセル11と、ひずみゲージ12と、測定装置13と、結合部材14(不図示)と、を備える。ひずみゲージ12は、測定装置13の一部ということもできる。バッテリセル11、ひずみゲージ12、測定装置13、及び、結合部材14は、図示しない筐体によってパッケージされていてもよい。
【0014】
バッテリセル11は、リチウムイオンバッテリのセルである。
図2は、バッテリセル11の放電時の内部構造を示す概念図である。
図3は、バッテリセル11の充電時の内部構造を示す概念図である。
【0015】
図2及び
図3に示すように、バッテリセル11は、筐体115の内部に、正極活物質が形成された正極層111と、負極活物質が形成された負極層112と、正極層111と負極層112との間に設けられたセパレータ113と、それらを浸す電解液114と、を備える。ここで、
図2に示すように、バッテリセル11の放電時には、リチウムイオン116が正極層111に留まっているため、負極層112の体積は膨張しない。それに対し、
図3に示すように、バッテリセル11の充電時には、正極層111のリチウムイオン116が負極層112に移動して負極活物質に挿入されるため、負極層112の体積は膨張する。
【0016】
図1において、ひずみゲージ12は、バッテリセル11の表面に取り付けられている。例えば、ひずみゲージ12は、バッテリセル11の樹脂製の表面に、印刷(蒸着)されることによって取り付けられる(一体形成される)。それにより、バッテリ装置1の部品点数が少なくなるため、コストが低減される。ひずみゲージ12は、例えば樹脂製の保護膜によって覆われてもよい。
【0017】
図4は、バッテリセル11及び当該バッテリセル11に取り付けられたひずみゲージ12の一例を示す図である。
図4に示すように、ひずみゲージ12は、円筒形状のバッテリセル11の側面に、周方向に沿って取り付けられている。これは、バッテリセル11の充電時の体積膨張に伴って、バッテリセル11が軸方向(z軸方向)よりも径方向(xy平面上の任意の方向)に変化しやすいためである。なお、ひずみゲージ12は、円筒形状のバッテリセル11の底面(例えば、負極活物質が支配的な負極側の底面)に取り付けられてもよい。
【0018】
図1において、測定装置13は、バッテリセル11の充電率であるSOC(State Of Charge)を測定する。ここで、測定装置13はIC(Integrated Circuit)化により小型化されている。それにより、測定装置13は、バッテリセル11に近接して配置されることが可能となっている。そのため、測定装置13は、バッテリセル11に近接して配置されている。より好ましくは、測定装置13は、バッテリセル11に隣接して配置されている。
【0019】
図5は、バッテリセル11及び測定装置13の一例を示す概略斜視図である。
図5に示すように、測定装置13が形成されるプリント基板は、バッテリセル11に近接配置されている。また、測定装置13が形成されるプリント基板と、バッテリセル11とは、シリコン、シリコーン、及び、アクリルのうち少なくとも何れかを含む樹脂からなる結合部材14によって熱結合されている。そのため、バッテリセル11及び測定装置13は、実質的に同じ温度条件で動作するということができる。
【0020】
図1において、測定装置13は、抵抗素子R1~R4と、アナログ処理回路131と、デジタル処理回路132と、通信インタフェース(通信IF)133と、を備える。
【0021】
抵抗素子R1の一端は、ひずみゲージ12の一端に接続され、抵抗素子R1の他端は、ノードN4を介して抵抗素子R4の一端に接続される。抵抗素子R4の他端は、ノードN3を介して抵抗素子R3の一端に接続される。抵抗素子R3の他端は、ノードN2を介して抵抗素子R2の一端に接続される。抵抗素子R2の他端は、ノードN1を介してひずみゲージ12の他端に接続される。つまり、ひずみゲージ12と、抵抗素子R1~R4と、によってホイートストンブリッジ回路が構成されている。
【0022】
ここで、バッテリセル11の充放電による変形に伴って、ひずみゲージ12がひずむと、ひずみゲージ12の抵抗値は変化する。以下、充放電によってバッテリセル11が受ける圧力を、圧力Pと称し、バッテリセル11の充放電による体積変化に伴って変化するひずみゲージ12のひずみ量を、ひずみ量Sと称す場合がある。
【0023】
例えば、充電によりバッテリセル11の体積が膨張して、バッテリセル11の変形量が大きくなると、それに伴って、ひずみゲージ12のひずみ量が大きくなるため、ひずみゲージ12の抵抗値は大きくなる。それにより、ノードN4の電位は低下する。それに対し、放電によりバッテリセル11の体積が収縮して、バッテリセル11の変形量が小さくなると、それに伴って、ひずみゲージ12のひずみ量が小さくなるため、ひずみゲージ12の抵抗値は小さくなる。それにより、ノードN4の電位は上昇する。
【0024】
即ち、ホイートストンブリッジ回路は、充放電によるバッテリセル11の変形に伴うひずみゲージ12のひずみ量(抵抗値)を、ノードN2,N4の電位差に変換して出力している。
【0025】
アナログ処理回路131は、電圧検出回路1311、マルチプレクサ(MUX)1312、プログラマブルアンプ(PGA)1313、AD変換器(ADC)1314、及び、温度センサ1315を有する。電圧検出回路1311は、ホイートストンブリッジ回路のノードN2,N4の電位差を検出する。マルチプレクサ1312は、電圧検出回路1311の検出結果、及び、温度センサ1315の検出結果、の何れかを選択的に出力する。プログラマブルアンプ1313は、マルチプレクサ1312の出力を増幅して出力する。AD変換器1314は、プログラマブルアンプ1313の出力信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換して出力する。
【0026】
温度センサ1315は、測定装置13の温度Tを検出する。ここで、上述のように、バッテリセル11及び測定装置13は実質的に同じ温度条件で動作している。そのため、温度センサ1315は、バッテリセル11の温度を検出しているとも言える。温度センサ1315は、アナログ処理回路131内に設けられる場合に限られず、例えばバッテリセル11に接触するように設けられてもよい。
【0027】
デジタル処理回路132は、少なくともBMS1321を有する。BMSは、Battery Management Systemの略である。BMS1321は、アナログ処理回路131から出力されたデジタル信号(ホイートストンブリッジ回路のノードN2,N4の電位差に応じたデジタル信号)に対して所定の演算処理を行うことにより、バッテリセル11の充電率であるSOCを算出する。なお、デジタル処理回路132は、ホイートストン回路の出力電圧だけでなく、バッテリセルの電圧、電流、温度(温度センサ1315の検出結果)などを取得可能に構成されている。
【0028】
ここで、デジタル処理回路132において、BMS1321は、温度センサ1315の検出結果を参照することにより、温度による誤差成分がキャンセルされたバッテリセル11のSOCを算出する。なお、SOC算出に必要な演算処理は、測定装置13の外部に設けられた図示しないMCU(Micro Controller Unit)によって行われてもよい。或いは、デジタル処理回路132において、BMS1321は、温度Tに対応するひずみ量SとSOCとの関係を表す情報が格納されたテーブル(データベース)から、温度センサ1315によって検出された温度T、及び、ひずみゲージ12のひずみ量S、に応じたSOCを抽出して測定結果として出力してもよい。なお、テーブル中のひずみ量Sは、相関関係のある、充放電によりバッテリセル11が受ける圧力Pや、ホイートストンブリッジの出力電圧、に置き換えられてもよい。
【0029】
それにより、デジタル処理回路132は、温度によらず、精度良くバッテリセル11のSOCを算出することができる。特に、本実施の形態では、バッテリセル11と測定装置13とが近接配置されるとともに、バッテリセル11と測定装置13とが結合部材14によって熱結合されているため、バッテリセル11と測定装置13とが実質的に同じ温度条件で動作すると見做すことができ、その結果、バッテリセル11及び測定装置13が互いに異なる温度条件で動作する場合と比較して、温度によるSOCの誤差成分をキャンセルするのに必要な演算処理の負担が軽減される。
【0030】
デジタル処理回路132によって算出されたバッテリセル11のSOCに関する情報は、通信インタフェース133を介して、外部装置に送信される。測定装置13によるバッテリセル11のSOC測定方法の詳細については後述する。
【0031】
なお、測定装置13は、上述の構成要素に限られず、実動作前の各パラメータの設定等を行う制御回路や、温度T、ひずみ量S及びSOCの関係を表す情報を格納するデータベース(テーブル)等をさらに備えていてもよい。
【0032】
<バッテリ装置1の動作>
続いて、測定装置13によるバッテリセル11のSOC測定方法の詳細について説明する。
【0033】
(温度特性パラメータの事前取得)
図6は、測定装置13によって実運用前に行われる圧力Pの温度特性パラメータの取得処理の一例を示すフローチャートである。なお、実運用前に行われる圧力Pの温度特性パラメータの取得処理は、バッテリ装置1が恒温槽内に設置された状態で行われる。なお、以下の説明において、充放電によりバッテリセル11が受ける圧力Pは、ひずみゲージ12のひずみ量Sや、ホイートストンブリッジの出力電圧、に置き換えられてもよい。
【0034】
まず、バッテリセル11のSOCが所定率(例えば50%)に固定される(ステップS101)。
【0035】
その後、バッテリ装置1が設置された恒温槽の温度が低温に設定される(ステップS102)。例えば、恒温槽の温度が-20℃に設定される。
【0036】
その後、測定装置13は、バッテリセル11が受ける圧力P、及び、温度センサ1315により検出される温度T、のデータを取得する(ステップS103)。測定装置13による圧力P及び温度Tのデータの取得は、所定期間(例えば30分間)繰り返される(ステップS103→S104のNO)。
【0037】
所定期間が経過すると(ステップS104のYES)、恒温槽の温度が一段階高い温度に設定される(ステップS105)。例えば、恒温槽の温度が20℃高い温度に設定される。具体的には、直前の恒温槽の温度が-20℃であった場合、恒温槽の温度は0℃に設定される。
【0038】
その後、測定装置13は、圧力P及び温度Tのデータを取得する(ステップS106のNO→ステップS103)。測定装置13による圧力P及び温度Tのデータの取得は、所定期間(例えば30分間)に定期的に行われる(ステップS103→S104のNO)。
【0039】
所定期間が経過すると(ステップS104のYES)、恒温槽の温度が一段階高い温度に設定される(ステップS105)。例えば、恒温槽の温度が現在の設定温度から20℃高い温度に設定される。具体的には、恒温槽の現在の設定温度が0℃である場合、恒温槽の温度は20℃に設定される。
【0040】
このようなステップS103~S106の処理は、恒温槽の温度が上限の温度(例えば80℃)になるまで繰り返される。そして、恒温槽の温度が上限に達すると(ステップS106のYES)、測定装置13は、圧力P及び温度Tのデータの取得を終了し、取得したデータから、所定充電率における温度Tと圧力Pとの関係を表す温度特性(係数)、即ち、圧力Pの温度特性パラメータ、を算出する(ステップS107)。
【0041】
図7は、温度Tと圧力Pとの関係を示す図である。
図7の例では、バッテリセル11のSOCが0%に固定された場合における圧力Pの温度特性と、SOCが100%に設定された場合における圧力Pの温度特性が示されている。
図7において、横軸は温度を表し、縦軸は圧力Pに対応するホイートストンブリッジの出力電圧を表している。したがって、縦軸では、出力電圧が大きくなるほど圧力Pが小さくなり(即ち、ひずみ量Sが小さくなり)、出力電圧が小さくなるほど圧力Pが大きくなる(即ち、ひずみ量Sが大きくなる)。したがって、
図7を参照すると、圧力P(ひずみ量)が同じ場合、SOCは、温度Tが高いほど低くなり、温度Tが低いほど高くなる。また、温度Tが同じ場合、SOCは、圧力P(ひずみ量S)が大きいほど高くなり、圧力P(ひずみ量)が小さいほど低くなる。
【0042】
(SOCパラメータの事前取得)
図8は、測定装置13によって実運用前に行われるSOCパラメータの取得処理の流れを示すフローチャートである。なお、実運用前に行われるSOCパラメータの取得処理は、バッテリ装置1が恒温槽内に設置された状態で行われる。
【0043】
まず、バッテリセル11のSOCが100%に設定される(ステップS201)。つまり、バッテリセル11が満充電の状態に設定される。
【0044】
その後、バッテリ装置1が設置された恒温槽の温度が常温に設定される(ステップS202)。例えば、恒温槽の温度が25℃に設定される。
【0045】
その後、測定装置13は、バッテリセル11が満充電の状態における、圧力P及び温度Tのデータを取得する(ステップS203)。
【0046】
その後、バッテリセル11の放電が開始される(ステップS204)。それにより、バッテリセル11のSOCが徐々に低下する。
【0047】
測定装置13は、バッテリセル11のSOCが0%になるまで、定期的に圧力P及び温度Tのデータを取得する(ステップS205→S206のNO)。つまり、測定装置13は、バッテリセル11の複数のSOCのそれぞれでの、圧力P及び温度Tのデータを取得する。
【0048】
バッテリセル11のSOCが0%に達すると(ステップS206のYES)、測定装置13は、圧力P及び温度Tのデータの取得を終了し、取得したデータから、所定温度における圧力PとSOCとの関係を表すSOC特性(係数)を算出する(ステップS207)。
【0049】
測定装置13は、算出した温度特性及びSOC特性を用いることにより、任意の温度でのSOC特性を求めることができる。つまり、測定装置13は、温度によらず圧力Pから精度良くバッテリセル11のSOCを算出することができる。
【0050】
(実運用時のSOC測定)
図9は、測定装置13によって実運用時に行われるSOC測定処理を示すフローチャートである。
【0051】
まず、測定装置13は、圧力P及び温度Tのデータを取得する(ステップS301)。
【0052】
その後、測定装置13は、圧力Pに対する温度特性のキャンセル処理を行う(ステップS302)。換言すると、測定装置13は、温度による誤差成分を差し引いた圧力Pを算出する。
【0053】
その後、測定装置13は、温度特性のキャンセルされた圧力Pからバッテリセル11のSOCを算出し、初期値に設定する(ステップS303)。なお、SOCの初期値が設定された後、バッテリセル11の充放電が開始される前に、既存の残量アルゴリズムを用いて、電圧及び電流の使用状況に基づいた、SOCのオフセットのキャンセル処理が行われてもよい。
【0054】
その後、バッテリセル11の充放電が開始される(ステップS304)。例えば、バッテリセル11の使用時(放電時)にはSOCが徐々に低下し、バッテリセル11の充電時にはSOCが徐々に増加する。
【0055】
その後、測定装置13は、任意のタイミングで、圧力P及び温度Tのデータを取得する(ステップS305)。任意のタイミングは、例えばバッテリセル11の充電を開始したタイミングや、バッテリセル11の充電を終了させたタイミングなどである。
【0056】
その後、測定装置13は、取得した圧力P及び温度Tのデータに対して、ノイズ除去のためのフィルタリング処理を行う(ステップS306)。
【0057】
その後、測定装置13は、圧力Pに対する温度特性のキャンセル処理を行う(ステップS307)。換言すると、測定装置13は、温度による誤差成分を差し引いた圧力Pを算出する。
【0058】
その後、測定装置13は、温度特性のキャンセルされた圧力PからSOCを算出し、測定結果として出力する(ステップS308)。測定装置13は、測定が終了するまでは、ステップS304~S308の処理を繰り返す(ステップS309)。
【0059】
図10は、温度特性のキャンセル前後の、圧力Pと、バッテリセル11のSOCと、の関係を示す図である。
図10において、横軸はSOCを表し、縦軸は圧力Pに対応するホイートストンブリッジの出力電圧を表している。したがって、縦軸では、出力電圧が大きくなるほど圧力Pが小さくなり(即ち、ひずみ量Sが小さくなり)、出力電圧が小さくなるほど圧力Pが大きくなる(即ち、ひずみ量Sが大きくなる)。
【0060】
このように、本実施の形態にかかるバッテリ装置1では、測定装置13が、温度センサ1315の検出結果を参照することにより、温度による誤差成分がキャンセルされたバッテリセル11のSOCを算出する。それにより、本実施の形態にかかるバッテリ装置1では、測定装置13が、温度によらず、精度良くバッテリセル11のSOCを算出することができる。特に、本実施の形態にかかるバッテリ装置1では、バッテリセル11と測定装置13とが近接配置されるとともに、バッテリセル11と測定装置13とが結合部材14によって熱結合されているため、バッテリセル11と測定装置13とが実質的に同じ温度条件で動作すると見做すことができ、その結果、バッテリセル11及び測定装置13が互いに異なる温度条件で動作する場合と比較して、温度によるSOCの誤差成分をキャンセルするのに必要な演算処理の負担が軽減される。
【0061】
また、本実施の形態にかかるバッテリ装置1では、バッテリセル11と測定装置13とが近接配置されているため、バッテリセル11に取り付けられたひずみゲージ12と測定装置13との間の配線が短くなり、その結果、外乱ノイズが抑制されるとともに、ひずみゲージ12の検出精度が向上する。さらに、本実施の形態にかかるバッテリ装置1では、バッテリセル11によって中間SOCでの充放電が繰り返される場合でも、電流積算のような誤差蓄積がないため、測定装置13によるSOCの測定精度が安定する。
【0062】
なお、本実施の形態にかかるバッテリ装置1では、測定装置13が、ひずみゲージ12によって検出されるひずみ(圧力Pに対応)のうち、ガス発生起因のひずみ成分を除去して、電極膨張ひずみ成分のみを抽出するように構成されることができる。それにより、測定装置13は、より精度良くバッテリセル11のSOCを測定することができる。以下、ひずみゲージ12によって検出されるひずみから、ガス発生起因のひずみ成分を除去して、電極膨張ひずみ成分のみを抽出する方法について、具体的に説明する。
【0063】
まず、測定装置13は、初期設定として、予め取得した圧力特性の近似式Y=ax+bのゲインa及びオフセットbをテーブルTBに格納する。Yは、ひずみゲージ12のひずみ量を表し、xは、バッテリセル11のSOCを表している。ひずみ量は、圧力Pと読み替えてもよい。
【0064】
その後、例えば、バッテリセル11の放電が行われる。ここで、SOCが所定率(例えば30%)以下の状態でバッテリセル11の放電が終了した場合において、一定期間が経過すると、測定装置13は、OCV及びひずみ量のデータを取得する。なお、OCVは、Open Circuit Voltageの略であって、バッテリセル11の開回路電圧を表している。
【0065】
その後、測定装置13は、OCVとSOCとの関係を表したテーブルを参照して、取得したOCVからバッテリセル11のSOCを算出する。
【0066】
その後、測定装置13は、圧力特性の近似式を式変換することによって得られる式b=-ax-Yに対し、Yに取得したひずみ量を代入し、xに算出したSOCを代入することにより、オフセット(切片)bを算出する。
【0067】
その後、測定装置13は、算出したオフセットbを、第1のFIFOバッファに格納する。そして、測定装置13は、第1のFIFOバッファに格納された複数のオフセットbの平均値(即ち、オフセットbの移動平均値)bAを算出する。
【0068】
その後、例えば、バッテリセル11の充電が行われる。ここで、SOCが所定率(例えば90%)以上の状態でバッテリセル11の充電が終了した場合において、一定期間が経過すると、測定装置13は、OCV及びひずみ量のデータを取得する。
【0069】
その後、測定装置13は、OCVとSOCとの関係を表したテーブルを参照して、取得したOCVからバッテリセル11のSOCを算出する。
【0070】
その後、測定装置13は、圧力特性の近似式を式変換することによって得られる式b=-ax-Yに対し、Yに取得したひずみ量を代入し、xに算出したSOCを代入することにより、オフセット(切片)b’を算出する。
【0071】
その後、測定装置13は、圧力特性の近似式Y=ax+bに対して、bに算出したオフセットb’を代入し、xにSOCが100%を表す“1”を代入することにより、SOCが100%の場合におけるひずみゲージ12のひずみ量Yを算出する。
【0072】
その後、測定装置13は、算出したひずみ量Yを第2のFIBOバッファに格納する。そして、測定装置13は、第2のFIFOバッファに格納された複数のひずみ量Yの平均値(即ち、SOCが100%の場合におけるひずみゲージ12のひずみ量Yの移動平均値)YAを算出する。
【0073】
その後、測定装置13は、移動平均値bAと、テーブルTBに格納されたオフセットbと、を比較して、差分が所定値以上であれば、テーブルTBに格納されたオフセットbを移動平均値bAの値に更新する。
【0074】
その後、測定装置13は、圧力特性の近似式Y=ax+bに対し、bに移動平均値bAを代入し、Yに移動平均値YAを代入することにより、ゲイン(傾き)aを算出する。ここで、測定装置13は、算出したゲインaと、テーブルTBに格納されたゲインaと、を比較して、差分が所定値以上であれば、テーブルTBに格納されたゲインaを新たなゲインaの値に更新する。
【0075】
その後、測定装置13は、初期設定よりも後の処理を繰り返す。
【0076】
ここで、テーブルTBに格納されたオフセットb及びゲインaの更新によって、バッテリセル11内のガス発生に起因した圧力上昇に伴う、ひずみゲージ12によるひずみ量(即ち圧力P)の検出誤差、が抑制される。なお、オフセットbの更新は、例えば減少する場合に限られる。また、ゲインaの更新は、例えば増加する場合に限られる。但し、ひずみゲージ12がホイートストンブリッジの下側(即ち、抵抗素子R4側)に接続されている場合、オフセットbの更新は、増加する場合に限られ、ゲインaの更新は、減少する場合に限られる。
【0077】
図11は、充放電を繰り返すバッテリセル11からひずみゲージ12が受ける圧力Pの変化を示すタイミングチャートである。なお、
図11には、圧力Pの変化に加えて、バッテリセル11に流れる電流の変化も示されている。
図11に示すように、バッテリセル11の充放電が繰り返されると、経時劣化により、バッテリセル11内にガスが発生してバッテリセル11の内圧が上昇する。つまり、バッテリセル11の充放電が繰り返されると、例えばバッテリセル11が完全に放電された状態でも、ひずみゲージ12によって検出される圧力Pが初期(時刻t0)の場合と比較して高くなる(時刻t10)。そこで、上述のようなテーブルTBに格納されたオフセットb及びゲインaの更新が行われることにより、バッテリセル11内のガス発生に起因した圧力上昇に伴う、ひずみゲージ12によるひずみ量(即ち圧力P)の検出誤差、が抑制される。
【0078】
なお、測定装置13におけるガス発生起因のひずみ成分を除去する構成は、上述の構成に限定されるものではなく同等の機能を有する他の構成に適宜変更可能である。具体的には、測定装置13は、SOC及び温度が何れも同じ条件である場合において、データベース(テーブル)に格納された圧力と、ひずみゲージによって検出された圧力と、の差分が所定値以上である場合に、データベースに格納された圧力を、ひずみゲージによって検出された圧力の値に更新するように構成されていればよい。なお、ひずみゲージ12によって検出される圧力Pは、ひずみゲージに12によって検出されるひずみ量に対応する。
【0079】
また、本実施の形態に係るバッテリ装置1では、測定装置13が、バッテリセルのセル構造毎に、ひずみ量S(圧力P)とSOCとの関係を表す情報が格納されたテーブルを備えていてもよい。
【0080】
<実施の形態2>
本実施の形態では、バッテリセル11に取り付けられたひずみゲージ12のレイアウトの例について説明する。なお、ひずみゲージ12がバッテリセル11に取り付けられるとは、ひずみゲージ12がバッテリセル11と一体に形成されることを含む。
【0081】
図12~
図16は、バッテリセル11に取り付けられたひずみゲージ12のレイアウトの例を示す図である。
図12~
図14には、円筒形状のバッテリセル11の側面に取り付けられたひずみゲージ12のレイアウトの例が示されている。なお、
図12には、バッテリセル11の側面を展開した図も示されている。
図15~15には、ラミネート形状のバッテリセル11の主面に取り付けられたひずみゲージ12のレイアウトの例が示されている。
【0082】
図12の例では、ひずみゲージ12が、円筒形状のバッテリセル11の側面において、バッテリセル11の軸方向(z軸方向)よりも周方向(xy平面上の方向)に沿って長くなるように取り付けられている。ここで、バッテリセル11は、充電時の体積膨張に伴って、軸方向(z軸方向)よりも径方向(xy平面上の任意の方向)に変化しやすい。そのため、ひずみゲージ12は、
図12の例のように取り付けられることにより、バッテリセル11の変形をより敏感に検知することができる。
【0083】
図13の例では、ひずみゲージ12が、円筒形状のバッテリセル11の側面において、バッテリセル11の周方向よりも軸方向に沿って長くなるように取り付けられている。また、
図14の例では、ひずみゲージ12が、円筒形状のバッテリセル11の側面において、バッテリセル11の軸方向の長さと周方向の長さとが均等になるように取り付けられている。
【0084】
図15の例では、ひずみゲージ12が、ラミネート形状のバッテリセル11の主面において、第1方向(例えばy軸方向)に沿って長くなるように取り付けられている。なお、ひずみゲージ12は、ラミネート形状のバッテリセル11の主面において、第1方向(例えばy軸方向)の長さと、第1方向に直交する第2方向(例えばx軸方向)の長さと、が均等になるように取り付けられてもよい。或いは、
図16の例に示すように、ひずみゲージ12が、放射状に取り付けられてもよい。
【0085】
図17は、ラミネート形状のバッテリセル11の外観を示す図である。
図18は、ラミネート形状のバッテリセル11の内部構造を示す図である。
図17及び
図18に示すように、ひずみゲージ12は、ラミネート形状のバッテリセル11の外装フィルムに印刷(蒸着)することにより、当該外装フィルムに一体に形成されてもよい。それにより、ひずみゲージ12を別途取り付ける場合と比較して、コストの増大が抑制されるとともに、製品の歩留まりが向上する。
【0086】
以上のように、上記実施の形態にかかるバッテリ装置1では、測定装置13が、温度センサ1315の検出結果を参照することにより、温度による誤差成分がキャンセルされたバッテリセル11のSOCを算出する。それにより、本実施の形態にかかるバッテリ装置1では、測定装置13が、温度によらず、精度良くバッテリセル11のSOCを算出することができる。特に、本実施の形態にかかるバッテリ装置1では、バッテリセル11と測定装置13とが近接配置されるとともに、バッテリセル11と測定装置13とが結合部材14によって熱結合されているため、バッテリセル11と測定装置13とが実質的に同じ温度条件で動作すると見做すことができ、その結果、バッテリセル11及び測定装置13が互いに異なる温度条件で動作する場合と比較して、温度によるSOCの誤差成分をキャンセルするのに必要な演算処理の負担が軽減される。
【0087】
また、上記実施の形態にかかるバッテリ装置1では、バッテリセル11と測定装置13とが近接配置されているため、バッテリセル11に取り付けられたひずみゲージ12と測定装置13との間の配線が短くなり、その結果、外乱ノイズが抑制されるとともに、ひずみゲージ12の検出感度が向上する。さらに、上記実施の形態にかかるバッテリ装置1では、バッテリセル11によって中間SOCでの充放電が繰り返される場合でも、電流積算のような誤差蓄積がないため、測定装置13によるSOCの測定精度が安定する。
【0088】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0089】
さらに本開示は、測定装置13の処理の一部又は全部を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
【0090】
上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、RAM(Random-Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid-State Drive)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0091】
1 バッテリ装置
11 バッテリセル
12 ひずみゲージ
13 測定装置
14 結合部材
111 正極層
112 負極層
113 セパレータ
114 電解液
115 筐体
116 リチウムイオン
131 アナログ処理回路
132 デジタル処理回路
133 通信インタフェース
1311 電圧検出回路
1312 マルチプレクサ
1313 プログラマブルアンプ
1314 AD変換器
1315 温度センサ
R1~R4 抵抗素子