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特開2024-130587対向ピストン型ディスクブレーキ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130587
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】対向ピストン型ディスクブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/228 20060101AFI20240920BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16D55/228
F16D65/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040416
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ショーン
(72)【発明者】
【氏名】島村 健一
(72)【発明者】
【氏名】大竹 亮
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA66
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA84
3J058AA87
3J058BA64
3J058CC03
3J058CC22
3J058CD03
3J058DD03
3J058DE12
3J058EA15
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】連通管の浮き上がりを防止しつつ、従来技術に比べて、組立作業の効率を向上できるとともに、連通管とキャリパとの接続部に加わる引張応力を低減できる、対向ピストン型ディスクブレーキ装置を提供する。
【解決手段】連通管3を、パイプ本体26と、1対のフレアナット27a、27bと、パイプ本体26の一部を覆うとともにキャリパ2に対し締め代を持って接触した、弾性材製の被覆筒28とを有するものとする。被覆筒28を、キャリパ2に対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向以外の所定の一方向にのみ押し付け、被覆筒28に、フレアナット27a、27bの中心軸線方向の締め代を持たせない。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナシリンダを有するインナボディと、アウタシリンダを有するアウタボディとを備えたキャリパと、
前記キャリパの周囲に配置され、前記インナシリンダと前記アウタシリンダとを接続する連通管と、を備え、
前記連通管は、パイプ本体と、それぞれの中心軸を互いに略平行に配置した状態で、前記パイプ本体の両側の端部に前記パイプ本体に対する相対回転を可能に設けられ、かつ、前記インナボディ及び前記アウタボディのそれぞれに螺合接続された1対のフレアナットと、前記パイプ本体の一部を覆うとともに前記キャリパに対し締め代を持って接触した、弾性材製の被覆筒とを有しており、
前記被覆筒は、前記キャリパに対し、前記フレアナットの中心軸線方向の締め代を有していない、
対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記被覆筒と前記キャリパとの間には、前記フレアナットの中心軸線方向に隙間が設けられている、請求項1に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記被覆筒は、前記キャリパに対し、前記フレアナットの中心軸線方向以外の所定の一方向にのみ押し付けられている、請求項1に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項4】
前記被覆筒は、前記キャリパに対し、前記フレアナットの中心軸線方向に略直交する方向に押し付けられている、請求項3に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項5】
前記フレアナットの中心軸線方向は、周方向に略一致しており、
前記被覆筒は、前記キャリパのうちで径方向外側を向いた面に押し付けられている、
請求項4に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項6】
前記フレアナットの中心軸線方向は、周方向に略一致しており、
前記被覆筒は、前記キャリパのうちで径方向内側を向いた面に押し付けられている、
請求項4に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項7】
前記キャリパは、前記インナボディの周方向端部と前記アウタボディの周方向端部とを連結する連結部をさらに有しており、
前記被覆筒は、前記連結部に押し付けられている、
請求項1に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項8】
前記キャリパのうちで前記被覆筒が締め代を持って接触する面は、平面である、請求項1に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項9】
前記1対のフレアナットのそれぞれの中心軸と、前記キャリパのうちで前記被覆筒が締め代を持って接触する面とは、略平行に配置されている、請求項8に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項10】
前記キャリパは、前記被覆筒に対し接触する部分に突起部を有している、請求項1に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項11】
前記被覆筒は、前記キャリパに対し接触する部分に突起部を有している、請求項1に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項12】
前記突起部は、前記フレアナットの中心軸線方向に対し略直交する方向に突出している、請求項10又は請求項11に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項13】
前記突起部は、前記1対のフレアナットのそれぞれの中心軸を含む仮想平面のうちで、前記1対のフレアナットのそれぞれの中心軸までの距離が互い等しい位置を通り、かつ、前記仮想平面に直交する、直交平面上に配置されている、請求項10又は請求項11に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向ピストン型ディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車の制動を行うために、ディスクブレーキ装置が広く使用されている。ディスクブレーキ装置による制動時には、車輪とともに回転するロータの軸方向両側に配置された1対のパッドを、ピストンによりロータの軸方向両側面に押し付ける。このようなディスクブレーキ装置として、従来から各種構造のものが知られているが、ロータの軸方向両側にピストンを備える対向ピストン型ディスクブレーキ装置は、安定した制動力を得られることから、近年使用例が増えている。
【0003】
図42図45は、特開2022-1782号公報(特許文献1)に記載された、従来構造の対向ピストン型ディスクブレーキ装置100を示している。
【0004】
対向ピストン型ディスクブレーキ装置100は、車輪とともに回転する円板状のロータ101を径方向外側から覆うように配置され、かつ、車体に固定されるキャリパ102と、キャリパ102に対し軸方向の移動を可能に支持され、かつ、ロータ101の軸方向両側に配置される1対のパッド103a、103bとを備える。
【0005】
なお、対向ピストン型ディスクブレーキ装置100に関して、軸方向、周方向及び径方向とは、特に断らない限り、車輪とともに回転するロータ101の軸方向、周方向及び径方向をいう。
【0006】
キャリパ102は、ロータ101よりも軸方向内側に配置されるインナボディ104と、ロータ101よりも軸方向外側に配置されるアウタボディ105とを備えている。なお、軸方向内側とは、従来構造の対向ピストン型ディスクブレーキ装置100を車両に組み付けた状態で車両の幅方向中央側となる、図42の上側及び図43の下側をいい、軸方向外側とは、対向ピストン型ディスクブレーキ装置100を車両に組み付けた状態で車両の幅方向外側となる、図42の下側及び図43の上側をいう。
【0007】
インナボディ104は、複数のインナシリンダ106を有している。インナシリンダ106のそれぞれには、インナピストン107が軸方向に変位可能に嵌装されている。
【0008】
アウタボディ105は、複数のアウタシリンダ108を有している。アウタシリンダ108のそれぞれには、アウタピストン109が軸方向に変位可能に嵌装されている。
【0009】
インナボディ104は、インナシリンダ106の奥部にブレーキオイルを給排するために、図示しないインナ側通油孔を内部に備えている。インナ側通油孔は、複数のインナシリンダ106のそれぞれの奥部に連通している。
【0010】
アウタボディ105は、アウタシリンダ108の奥部にブレーキオイルを給排するために、図示しないアウタ側通油孔を内部に備えている。アウタ側通油孔は、複数のアウタシリンダ108のそれぞれの奥部に連通している。
【0011】
インナ側通油孔及びアウタ側通油孔のそれぞれの周方向一方側の端部同士は、連通管110により接続されている。これにより、インナ側通油孔とアウタ側通油孔とを連通している。インナ側通油孔及びアウタ側通油孔のそれぞれの周方向他方側の端部は、ブリーダスクリュ111により塞がれている。
【0012】
インナボディ104とアウタボディ105とは、回入側連結部112と、回出側連結部113と、中間連結部114とにより軸方向に連結されている。
【0013】
なお、従来構造の対向ピストン型ディスクブレーキ装置100においては、周方向一方側が、車両の前進時における回入側に相当し、周方向他方側が、車両の前進時における回出側に相当する。
【0014】
制動時には、インナボディ104に接続されたブレーキホースを介してマスターシリンダからインナ側通油孔にブレーキオイルが送り込まれる。これにより、インナピストン107をインナシリンダ106から軸方向に押し出し、インナボディ104に支持されたパッド103aを、ロータ101の軸方向内側面に押し付ける。また、連通管110を通じて、インナ側通油孔からアウタ側通油孔にブレーキオイルが送り込まれる。これにより、アウタピストン109をアウタシリンダ108から軸方向に押し出し、アウタボディ105に支持されたパッド103bを、ロータ101の軸方向外側面に押し付ける。この結果、ロータ101が、1対のパッド103a、103bにより軸方向両側から強く挟持され、車両の制動が行われる。
【0015】
連通管110は、キャリパ102の周方向一方側部を周方向一方側から覆うようにして、キャリパ102の周囲に配置されている。連通管110は、パイプ本体115と、1対のフレアナット116a、116bと、被覆筒117とを有している。
【0016】
パイプ本体115は、金属製で、径方向視で略U字形状を有している。
【0017】
1対のフレアナット116a、116bは、それぞれの中心軸O、Oを互いに略平行に配置した状態で、パイプ本体115の両側の端部に該パイプ本体115に対する相対回転を可能に設けられている。一方のフレアナット116aは、パイプ本体115の一方側の端部に設けられており、インナボディ104の周方向一方側部に螺合接続されている。他方のフレアナット116bは、パイプ本体115の他方側の端部に設けられており、アウタボディ105の周方向一方側部に螺合接続されている。
【0018】
従来構造の対向ピストン型ディスクブレーキ装置100では、1対のフレアナット116a、116bのそれぞれの中心軸O、Oは、周方向(図42及び図43の左右方向)に沿って伸びている。このため、フレアナット116a、116bの中心軸線方向は、周方向に略一致している。
【0019】
被覆筒117は、弾性材製で、円筒形状を有している。被覆筒117は、パイプ本体115の中間部を覆っている。
【0020】
被覆筒117は、一方のフレアナット116aをインナボディ104に螺合接続し、かつ、他方のフレアナット116bをアウタボディ105に螺合接続した状態で、キャリパ102に対し締め代を持って接触している。
【0021】
具体的には、被覆筒117は、キャリパ102を構成する回入側連結部112に備えられた第1接触面118及び第2接触面119のそれぞれに対し締め代を持って接触している。第1接触面118は、平面状で、周方向一方側を向いている。これに対し、第2接触面119は、平面状で、第1接触面118に対し略直角に配置されており、径方向外側を向いている。
【0022】
従来構造の対向ピストン型ディスクブレーキ装置100は、弾性材製の被覆筒117をキャリパ102に対し締め代を持って接触させることで、連通管110がキャリパ102から浮き上がることを防止し、被覆筒117とキャリパ102との間に隙間が生じることを防止している。これにより、キャリパ102の表面のうちで、被覆筒117により覆われて未塗装となった部分が露出することを防止するとともに、連通管110が、対向ピストン型ディスクブレーキ装置100の周囲に配置されるホイールと干渉することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2022-1782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
フレアナット116a、116bをインナボディ104及びアウタボディ105に螺合接続する際には、フレアナット116a、116bを中心軸O、O回りに回転させて、連通管110を、キャリパ102に近づけるように、フレアナット116a、116bの中心軸線方向に略一致する周方向に移動させる。具体的には、連通管110を、キャリパ102に対する近位側である、周方向他方側に移動させる。
【0025】
ところが、従来構造の対向ピストン型ディスクブレーキ装置100では、被覆筒117を周方向一方側に向いた第1接触面118に対し締め代を持って接触させるため、連通管110を周方向他方側に移動させる際に、第1接触面118に対する被覆筒117の弾性変形量を増大させる必要がある。このため、フレアナット116a、116bの締め付けトルクが増大し、対向ピストン型ディスクブレーキ装置100の組立作業の効率が低下する可能性がある。
【0026】
また、第1接触面118に対する被覆筒117の締め代を大きくすることは、連通管110の浮き上がりを防止する面で有利になるが、締め代を大きくし過ぎると、連通管110とキャリパ102との接続部に過大な引張応力が加わる可能性がある。この結果、該接続部の密封性能が低下し、対向ピストン型ディスクブレーキ装置100の不良率が上昇するといった問題を招く可能性がある。
【0027】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、キャリパに対する連通管の浮き上がりを防止しつつ、従来技術に比べて、組立作業の効率を向上させることができるとともに、連通管とキャリパとの接続部に加わる引張応力を低減できる、対向ピストン型ディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置は、キャリパと、連通管とを備える。
前記キャリパは、インナシリンダを有するインナボディと、アウタシリンダを有するアウタボディとを備えている。
前記連通管は、前記キャリパの周囲に配置され、前記インナシリンダと前記アウタシリンダとを接続する。
前記連通管は、パイプ本体と、それぞれの中心軸を互いに略平行に配置した状態で、前記パイプ本体の両側の端部に前記パイプ本体に対する相対回転を可能に設けられ、かつ、前記インナボディ及び前記アウタボディのそれぞれに螺合接続された1対のフレアナットと、前記パイプ本体の一部を覆うとともに前記キャリパに対し締め代を持って接触した、弾性材製の被覆筒とを有している。
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒は、前記キャリパに対し、前記フレアナットの中心軸線方向の締め代を有していない。
なお、本明細書及び特許請求の範囲で、略平行とは、完全な平行だけでなく、実質的に平行な場合を含む意味である。
【0029】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒と前記キャリパとの間に、前記フレアナットの中心軸線方向の隙間を設けることができる。
あるいは、本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒と前記キャリパとを、前記フレアナットの中心軸線方向に締め代を持たずに接触(ゼロタッチ)させることもできる。
【0030】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒を、前記キャリパに対し、前記フレアナットの中心軸線方向以外の所定の一方向にのみ押し付けることができる。
あるいは、本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒を、前記キャリパに対し、前記フレアナットの中心軸線方向以外の所定の複数方向に押し付けることもできる。
【0031】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒を、前記キャリパに対し、前記フレアナットの中心軸線方向に略直交する方向に押し付けることができる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲で、略直交する方向とは、完全に直交する方向だけでなく、実質的に直交する方向も含む意味である。具体的には、完全に直交する方向に対する角度のずれが、15度以下の場合を含む。
【0032】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記フレアナットの中心軸線方向を周方向に略一致させ、前記被覆筒を、前記キャリパのうちで径方向外側を向いた面に押し付けることができる。
あるいは、前記フレアナットの中心軸線方向を周方向に略一致させ、前記被覆筒を、前記キャリパのうちで径方向内側を向いた面に押し付けることができる。
あるいは、前記フレアナットの中心軸線方向を周方向に略一致させ、前記被覆筒を、前記キャリパのうちで軸方向内側を向いた面又は軸方向外側を向いた面に押し付けることもできる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲で、略一致とは、完全に一致する場合だけでなく、実質的に一致する場合も含む意味である。
【0033】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記フレアナットの中心軸線方向を、径方向に略一致させることもできる。
【0034】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記キャリパを、前記インナボディの周方向端部と前記アウタボディの周方向端部とを連結する連結部をさらに有するものとし、前記被覆筒を、前記連結部に押し付けることができる。
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒を、前記インナボディ、前記アウタボディ、又は、前記キャリパのうちのその他の部分に押し付けることもできる。
【0035】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記キャリパのうちで前記被覆筒が締め代を持って接触する面を、平面とすることができる。
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記キャリパのうちで前記被覆筒が締め代を持って接触する面を、前記フレアナットの中心軸に直交する断面において、凹凸形状を有する凹凸面、段差形状を有する段差面、又は、曲線形状を有する曲面とすることもできる。
【0036】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記1対のフレアナットのそれぞれの中心軸と、前記キャリパのうちで前記被覆筒が締め代を持って接触する面とを、略平行に配置することができる。
【0037】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒を、自由状態で円筒形状を有するものとすることができる。
あるいは、本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒を、自由状態で角筒形状を有するものとすることもできる。
【0038】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記キャリパを、前記被覆筒に対し接触する部分に突起部を有するものとすることができる。
【0039】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒を、前記キャリパに対し接触する部分に突起部を有するものとすることができる。
【0040】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記突起部を、前記フレアナットの中心軸線方向に対し略直交する方向に突出させることができる。
【0041】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記突起部を、前記1対のフレアナットのそれぞれの中心軸を含む仮想平面のうちで、前記1対のフレアナットのそれぞれの中心軸までの距離が互い等しい位置を通り、かつ、前記仮想平面に直交する、直交平面上に配置することができる。
【0042】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記突起部を、角柱形状(三角柱形状、四角柱形状などを含む)、角すい形状(三角すい形状、四角すい形状などを含む)、円柱形状(半円柱形状を含む)、円すい形状、半球形状のいずれかの形状とすることができる。
【0043】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記突起部を、前記キャリパ又は前記被覆筒のいずれかに、1つ又は複数設けることもできるし、前記キャリパ及び前記被覆筒の両方に、1つずつ又は複数ずつ設けることもできる。
【0044】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記被覆筒を、前記パイプ本体を覆った筒部本体と、前記筒部本体の表面に備えられた前記突起部とから構成することができる。
この場合、前記筒部本体の肉厚を、前記突起部の肉厚よりも大きくすることができる。
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記筒部本体の軸方向に関する前記筒部本体及び前記突起部のそれぞれの寸法を、互いに異ならせることもできるし、互いに同じにすることもできる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置によれば、キャリパに対する連通管の浮き上がりを防止しつつ、従来技術に比べて、組立作業の効率を向上させることができるとともに、連通管とキャリパとの接続部に加わる引張応力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を示す正面図である。
図2図2は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を示す平面図である。
図3図3は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を回入側から見た側面図である。
図4図4は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を回出側から見た側面図である。
図5図5は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を示す底面図である。
図6図6は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を示す背面図である。
図7図7は、図2のA-A線断面図である。
図8図8は、径方向外側に配置された3つのシリンダ中心を通る図1のB-B線断面図である。
図9図9は、図1の部分拡大図である。
図10図10(A)は、図5の部分拡大図であり、図10(B)は、図10(A)から連通管を省略した図である。
図11図11(A)は、図7の部分拡大図であり、図11(B)は、図11(A)から連通管を省略した図である。
図12図12は、図8の部分拡大図である。
図13図13は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を、軸方向外側、径方向外側かつ回出側から示す斜視図である。
図14図14は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を、軸方向内側、径方向外側かつ回出側から示す斜視図である。
図15図15は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を、軸方向外側、径方向内側かつ回出側から示す斜視図である。
図16図16は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を、軸方向内側、径方向内側かつ回出側から示す斜視図である。
図17図17は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置から連通管を取り出して示す図であり、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は底面図、(D)は右側面図、(E)は左側面図、(F)は背面図をそれぞれ示す。
図18図18は、図17(A)のC-C線断面図である。
図19図19は、実施の形態の第1例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置から連通管から取り出し、キャリパに対する押し付け方向を説明する図である。
図20図20は、実施の形態の第2例を示す、図1に相当する図である。
図21図21は、実施の形態の第2例を示す、図2に相当する図である。
図22図22は、実施の形態の第2例を示す、図3に相当する図である。
図23図23は、実施の形態の第2例を示す、図6に相当する図である。
図24図24は、実施の形態の第2例を示す、図7に相当する図である。
図25図25は、実施の形態の第2例を示す、図20の部分拡大図である。
図26図26(A)は、図21の部分拡大図であり、図26(B)は、図26(A)から連結管を省略した図である。
図27図27(A)は、図24の部分拡大図であり、図27(B)は、図27(A)から連結管を省略した図である。
図28図28は、実施の形態の第2例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を、軸方向外側、径方向外側かつ回入側から示す斜視図である。
図29図29は、実施の形態の第2例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を、軸方向内側、径方向外側かつ回入側から示す斜視図である。
図30図30は、実施の形態の第2例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を、軸方向外側、径方向内側かつ回入側から示す斜視図である。
図31図31は、実施の形態の第2例を示す、図19に相当する図である。
図32図32は、実施の形態の第3例を示す、図4に相当する図である。
図33図33は、実施の形態の第3例を示す、図10に相当する図である。
図34図34は、実施の形態の第3例を示す、図11に相当する図である。
図35図35は、実施の形態の第3例を示す、図34(A)のD矢視模式図である。
図36図36は、実施の形態の第3例の変形例を示す、図35に相当する図である。
図37図37は、実施の形態の第4例を示す、図4に相当する図である。
図38図38は、実施の形態の第4例を示す、図10に相当する図である。
図39図39は、実施の形態の第4例を示す、図11に相当する図である。
図40図40は、実施の形態の第4例を示す、図39(A)のE矢視模式図である。
図41図41は、実施の形態の第4例の変形例を示す、図40に相当する図である。
図42図42は、従来構造の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を示す平面図である。
図43図43は、従来構造の対向ピストン型ディスクブレーキ装置を示す底面図である。
図44図44は、図42のF-F線断面図である。
図45図45は、図44の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図19を用いて説明する。
【0048】
本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1は、自動車の制動を行うために使用するもので、キャリパ2と、連通管3と、1対のパッド4a、4bを備える。
【0049】
本明細書及び特許請求の範囲で、「軸方向」、「周方向」及び「径方向」とは、特に断らない限り、車輪とともに回転する円板状のロータ5(図2参照)の軸方向、周方向及び径方向をいう。図1図6図7図9及び図11の表裏方向、図2図5図8図10及び図12の上下方向、図3及び図4の左右方向が、それぞれ軸方向に相当し、対向ピストン型ディスクブレーキ装置1を車両に組み付けた状態での車両の幅方向中央側を軸方向内側といい、対向ピストン型ディスクブレーキ装置1を車両に組み付けた状態での車両の幅方向外側を軸方向外側という。また、図1図2図5図12の左右方向、図3及び図4の表裏方向が、それぞれ周方向に相当し、図1図2図5図7図12の右側、図6の左側、図3の表側、図4の裏側を、それぞれ周方向一方側といい、図1図2図5図7図12の左側、図6の右側、図3の裏側、図4の表側を、それぞれ周方向他方側という。本例では、周方向一方側が、車両前進時における回入側に相当し、周方向他方側が、車両前進時における回出側に相当する。また、図1図3図4図6図7図9及び図11の上下方向、図2図5図8図10及び図12の表裏方向が、それぞれ径方向に相当し、図1図3図4図6図7図9及び図11の上側、図2図8及び図12の表側、図5及び図10の裏側を、それぞれ径方向外側といい、図1図3図4図6図7図9及び図11の下側、図2図8及び図12の裏側、図5及び図10の表側を、それぞれ径方向内側という。
【0050】
〈キャリパ〉
キャリパ2は、ロータ5の周方向の一部を径方向外側から覆うように配置され、懸架装置を構成するナックルに支持固定される。キャリパ2は、アルミニウム合金などの軽合金や鉄系合金製の素材に、鍛造加工などを施すことにより一体に成形されており、1対のパッド4a、4bを、軸方向に移動可能に支持している。キャリパ2は、全体が舟型形状を有しており、図1及び図6に示すように、軸方向視で略弓形状を有している。
【0051】
キャリパ2は、インナボディ6と、アウタボディ7と、回入側連結部8と、回出側連結部9と、中間連結部10とを備える。
【0052】
インナボディ6及びアウタボディ7は、ロータ5を挟むようにロータ5の軸方向両側に配置されている。
【0053】
インナボディ6は、ロータ5よりも軸方向内側に配置されている。インナボディ6は、複数(図示の例では5つ)のインナシリンダ11を有している。インナシリンダ11のそれぞれには、インナピストン12が軸方向に変位可能に嵌装されている。
【0054】
インナボディ6は、図8に示すように、インナシリンダ11の奥部にブレーキオイルを給排するためのインナ側通油孔13を内部に有している。インナ側通油孔13は、周方向に伸長しており、複数のインナシリンダ11のそれぞれの奥部に連通している。
【0055】
インナボディ6は、図示しないブレーキホースを接続するための接続口14を有している。接続口14は、インナ側通油孔13に連通している。
【0056】
アウタボディ7は、ロータ5よりも軸方向外側に配置されている。アウタボディ7は、複数(図示の例では5つ)のアウタシリンダ15を有している。アウタシリンダ15のそれぞれには、アウタピストン16が軸方向に変位可能に嵌装されている。
【0057】
アウタボディ7は、図8に示すように、アウタシリンダ15の奥部にブレーキオイルを給排するためのアウタ側通油孔17を内部に有している。アウタ側通油孔17は、周方向に伸長しており、複数のアウタシリンダ15のそれぞれの奥部に連通している。
【0058】
インナ側通油孔13及びアウタ側通油孔17のそれぞれの周方向他方側の端部は、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれの周方向他方側部において、周方向他方側に向けて開口している。
【0059】
インナ側通油孔13及びアウタ側通油孔17のそれぞれの周方向他方側の端部同士は、連通管3により接続されている。これにより、インナ側通油孔13とアウタ側通油孔17とを連通している。
【0060】
図12に示すように、インナ側通油孔13及びアウタ側通油孔17のそれぞれの周方向他方側の端部には、雌ねじ部18が備えられている。雌ねじ部18には、連通管3を構成する後述のフレアナット27a、27bが螺合接続される。インナ側通油孔13に備えられた雌ねじ部18と、アウタ側通油孔17に備えられた雌ねじ部18とは、互いに平行に配置されている。
【0061】
インナ側通油孔13及びアウタ側通油孔17のそれぞれの周方向他方側の端部のうちで雌ねじ部18よりも奥側(周方向一方側)部分には、円すい凹面状の被押し付け面19が備えられている。被押し付け面19には、連通管3を構成する後述のパイプ本体26の端部に備えられたシール面32が押し付けられる。
【0062】
インナ側通油孔13及びアウタ側通油孔17のそれぞれの周方向一方側の端部は、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれの周方向一方側部において、周方向一方側に向けて開口している。
【0063】
インナ側通油孔13及びアウタ側通油孔17のそれぞれの周方向一方側の端部は、ブリーダスクリュ20により塞がれている。
【0064】
図7に示すように、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれは、パッド4a、4bを軸方向に移動可能に支持するために、ピン21及びガイド凹溝22を備える。
【0065】
ピン21は、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれの周方向一方側部の径方向内側部に備えられており、ロータ5の中心軸と平行に配置されている。ピン21は、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれに支持固定されている。インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれに支持固定された1対のピン21は、互いに同軸に配置されている。1対のピン21のうち、インナボディ6に支持固定された一方のピン21の先端部は、インナボディ6の軸方向外側面から軸方向外側に突出しており、ロータ5の軸方向内側面に対し、隙間を介して対向している。これに対し、アウタボディ7に支持固定された他方のピン21の先端部は、アウタボディ7の軸方向内側面から軸方向内側に突出しており、ロータ5の軸方向外面に対し、隙間を介して対向している。1対のピン21のそれぞれの先端部は、略円柱状に構成されており、円筒面状の外周面形状を有している。
【0066】
ガイド凹溝22は、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれの周方向他方側部の軸方向内側部に、軸方向に張り出すように設けられたガイド壁部23に備えられている。ガイド凹溝22は、ガイド壁部23の径方向中間部に備えられており、ガイド壁部23の軸方向側面(ロータ5側の側面)及び周方向一方側の側面にそれぞれ開口している。
【0067】
回入側連結部8及び回出側連結部9のそれぞれは、ロータ5の径方向外側に配置され、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれの周方向の端部同士を軸方向に連結している。回入側連結部8及び回出側連結部9のそれぞれは、ロータ5の外周縁に沿って円弧状に湾曲しており、所定の隙間を介して、ロータ5を径方向外方から覆う。
【0068】
回入側連結部8は、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれの周方向一方側の端部同士を軸方向に連結している。
【0069】
回出側連結部9は、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれの周方向他方側の端部同士を軸方向に連結している。
【0070】
図10(B)及び図11(B)に示すように、回出側連結部9は、周方向他方側の端部の軸方向中間部に、接触面24を有する。接触面24は、回出側連結部9の周方向他方側の端面に備えられており、平面状で、径方向内側を向いている。接触面24は、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれに備えられた雌ねじ部18よりも径方向内側に配置されている。また、接触面24は、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれに備えられた雌ねじ部18の中心軸、及び、連通管3を構成する後述のフレアナット27a、27bのそれぞれの中心軸O、Oと略平行に配置されている。本例では、接触面24は、軸方向幅と周方向幅とがほぼ同じ略正方形状を有している。
【0071】
回出側連結部9は、接触面24の軸方向両側に、軸方向に関して接触面24から離れるほど径方向外側に向けて延伸する、1対の傾斜面25a、25bを有している。
【0072】
中間連結部10は、ロータ5の径方向外側に配置されており、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれの周方向中間部同士を軸方向に連結している。中間連結部10と回入側連結部8及び回出側連結部9とは、周方向にそれぞれ離隔している。
【0073】
〈連通管〉
連通管3は、キャリパ2の周方向他方側部分を周方向他方側から覆うようにして、キャリパ2の周囲に配置されている。
【0074】
連通管3は、パイプ本体26と、1対のフレアナット27a、27bと、被覆筒28とを有している。
【0075】
パイプ本体26は、金属製で、径方向視で略U字形状を有している。
【0076】
パイプ本体26は、ロータ5を跨ぐように軸方向に略直線状に伸長した軸方向延伸部29と、軸方向延伸部29の軸方向両側の端部から周方向一方側かつ径方向外側に向けて伸長した1対の周方向延伸部30a、30bとを有する。
【0077】
連通管3をキャリパ2に接続した状態で、軸方向延伸部29は、回出側連結部9の周方向他方側の端部の径方向内側に配置されている。
【0078】
図18に示すように、パイプ本体26は、両側の端部に、その他の部分よりも外径が大きくなった屈曲部31をそれぞれ有する。すなわち、パイプ本体26を構成する1対の周方向延伸部30a、30bは、それぞれの周方向一方側の端部に、屈曲部31を有している。屈曲部31は、略V字形の断面形状を有し、周方向一方側を向いた円すい凸面状のシール面32を有している。屈曲部31は、フレアナット27a、27bの抜け止めとして機能する。
【0079】
1対のフレアナット27a、27bは、略円筒形状を有しており、それぞれの中心軸O、Oを互いに略平行に配置した状態で、パイプ本体26の両側の端部に、該パイプ本体26に対する相対回転を可能に設けられている。具体的には、フレアナット27a、27bは、周方向延伸部30a、30bに対する相対回転を可能に、周方向延伸部30a、30bのうちで屈曲部31から周方向他方側に外れた部分に遊嵌されている。
【0080】
フレアナット27a、27bは、外周面に雄ねじ部33を有している。フレアナット27a、27bは、屈曲部31よりも大きな外径を有する。
【0081】
フレアナット27a、27bのうち、一方のフレアナット27aは、ロータ5よりも軸方向内側に配置された周方向延伸部30aの周方向一方側の端部に遊嵌されており、インナボディ6の周方向他方側部に螺合接続されている。
【0082】
具体的には、図12に示すように、フレアナット27aは、外周面に備えられた雄ねじ部33を、インナ側通油孔13に備えられた雌ねじ部18に螺合することで、インナボディ6の周方向他方側部に螺合接続されている。
【0083】
また、雄ねじ部33を雌ねじ部18に螺合する際に、フレアナット27aにより周方向延伸部30aに備えられた屈曲部31を周方向一方側に向けて押圧することで、該屈曲部31のシール面32をインナ側通油孔13に備えられた被押し付け面19に押し付けている。これにより、シール面32と被押し付け面19とを密接(面接触)させて、連通管3とインナボディ6との接続部の密封性を確保している。
【0084】
フレアナット27a、27bのうち、他方のフレアナット27bは、ロータ5よりも軸方向外側に配置された周方向延伸部30bの周方向一方側の端部に遊嵌されており、アウタボディ7の周方向他方側部に螺合接続されている。
【0085】
具体的には、フレアナット27bは、外周面に備えられた雄ねじ部33を、アウタ側通油孔17に備えられた雌ねじ部18に螺合することで、アウタボディ7の周方向他方側部に螺合接続されている。
【0086】
また、雄ねじ部33を雌ねじ部18に螺合する際に、フレアナット27bにより周方向延伸部30bに備えられた屈曲部31を周方向一方側に向けて押圧することで、該屈曲部31のシール面32をアウタ側通油孔17に備えられた被押し付け面19に押し付けている。これにより、シール面32と被押し付け面19とを密接させて、連通管3とアウタボディ7との接続部の密封性を確保している。
【0087】
本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1の場合にも、1対のフレアナット27a、27bのそれぞれの中心軸O、Oは、周方向に沿って伸びている。このため、フレアナット27a、27bの中心軸線方向は、周方向に略一致している。
【0088】
被覆筒28は、ゴムなどの弾性材製で、自由状態で円筒形状を有している。被覆筒28は、パイプ本体26を構成する軸方向延伸部29の軸方向中間部を覆っている。これにより、被覆筒28は、キャリパ2を構成する回出側連結部9の周方向他方側の端部の径方向内側に配置されている。また、被覆筒28の中心軸は、ロータ5の中心軸と略平行に配置されている。
【0089】
被覆筒28は、一方のフレアナット27aをインナボディ6に螺合接続し、かつ、他方のフレアナット27bをアウタボディ7に螺合接続した状態で、キャリパ2に対し締め代を持って接触している。
【0090】
ただし、本例では、被覆筒28は、キャリパ2に対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向(周方向)の締め代は有していない。
【0091】
本例では、被覆筒28は、キャリパ2に対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向以外の所定の一方向にのみ押し付けられている。つまり、被覆筒28は、キャリパ2に対し一方向にのみ押し付けられており、かつ、キャリパ2に対する被覆筒28の押し付け方向は、フレアナット27a、27bの中心軸線方向と不一致である。
【0092】
具体的には、被覆筒28は、キャリパ2のうちで回出側連結部9に備えられた径方向内側を向いた接触面24にのみ接触し、該接触面24に対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略直交する径方向外側(図9及び図11(A)の上側、図10(A)の裏側)に押し付けられている。このため、被覆筒28は、キャリパ2に対し、径方向外側にのみ押し付けられており、径方向の締め代のみを持って接触している。したがって、被覆筒28は、キャリパ2に対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略一致する周方向の締め代を有していない。被覆筒28とキャリパ2との間には、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に、隙間34が設けられている。
【0093】
本例では、被覆筒28は、キャリパ2のうちの接触面24にのみ接触しているため、被覆筒28の外周面の径方向外側部と、接触面24の軸方向両側に備えられた傾斜面25a、25bとの間には隙間が設けられている。このため、被覆筒28は、接触面24に接触した軸方向中間部の径方向外側部のみが、弾性変形している。
【0094】
本例では、被覆筒28は、キャリパ2に対し径方向外側にのみ押し付けられているため、連通管3のキャリパ2への接続作業時に、被覆筒28の移動(動き)は、径方向外側への移動のみがキャリパ2によって制限される。別の言い方をすれば、被覆筒28の径方向外側以外への移動は、キャリパ2による制限を受けずに行うことができる。
【0095】
本例では、被覆筒28の軸方向寸法は、接触面24の軸方向幅よりも大きい。図示の例では、被覆筒28の軸方向寸法は、接触面24の軸方向幅のおよそ5倍である。また、被覆筒28の外径は、接触面24の周方向幅よりも大きい。
【0096】
被覆筒28の周方向他方側の端部は、回出側連結部9の周方向他方側の端部とほぼ同じ周方向位置に配置されている。ただし、被覆筒28の周方向他方側の端部を回出側連結部9の周方向他方側の端部よりも、周方向他方側に配置することもできるし、周方向一方側に配置することもできる。
【0097】
連通管3をキャリパ2に接続する際には、先ず、被覆筒28の径方向外側の端部を接触面24に接触させた状態で、フレアナット27a、27bをインナ側通油孔13及びアウタ側通油孔17のそれぞれの周方向他方側の端部に挿入し、フレアナット27a、27bを中心軸O、O回りに回転させる。これにより、フレアナット27a、27bの外周面に備えられた雄ねじ部33を、インナ側通油孔13及びアウタ側通油孔17のそれぞれに備えられた雌ねじ部18に螺合し、連通管3全体を、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略一致する周方向のうち、キャリパ2に対する近位側である周方向一方側に移動させる。そして、パイプ本体26の両側の端部に備えられたシール面32をインナ側通油孔13及びアウタ側通油孔17のそれぞれに備えられた被押し付け面19に押し付ける。
【0098】
〈パッド〉
1対のパッド4a、4bのそれぞれは、ライニング35と、該ライニング35の裏面を支持した金属製のプレッシャプレート36とを備えている。
【0099】
プレッシャプレート36は、周方向他方側の端部の径方向中間部に、ライニング35よりも周方向他方側に向けて突出した耳部37を備えている。
【0100】
耳部37は、略矩形板状に構成されており、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれに備えられたガイド凹溝22に対して、軸方向に移動可能に係合している。
【0101】
プレッシャプレート36は、周方向一方側の端部の径方向内側部に、ライニング35から周方向に張り出した、略三角板状の張出板部38を有する。張出板部38には、軸方向に貫通した挿通孔39が形成されている。挿通孔39は、軸方向視で略矩形状に構成されており、張出板部38の軸方向両側にのみ開口している。挿通孔39の内側には、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれに備えられたピン21を緩く挿通している。これにより、挿通孔39は、ピン21に対して軸方向に移動可能に係合している。
【0102】
以上のように、パッド4a、4bのそれぞれは、耳部37をガイド凹溝22に対して軸方向に移動可能に係合させ、かつ、挿通孔39にピン21を軸方向に移動可能に係合させることにより、インナボディ6及びアウタボディ7のそれぞれに対し軸方向に移動可能に支持されている。なお、キャリパに対する1対のパッドの支持構造については、従来から知られた各種構造を採用することもできる。
【0103】
プレッシャプレート36の裏側には、プレッシャプレート36の裏面を覆うように、ステンレス鋼板などの金属板製のシム板40が取り付けられている。
【0104】
本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1は、1対のパッドスプリング41a、41bをさらに備えている。パッドスプリング41a、41bは、パッド4a、4bを径方向内側に向けて押圧することで、非制動時にパッド4a、4bにがたつきが生じることを防止する。
【0105】
本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1による制動時には、インナボディ6の接続口14に接続された図示しないブレーキホースを介してマスターシリンダからインナ側通油孔13にブレーキオイルが送り込まれる。これにより、インナピストン12をインナシリンダ11から軸方向に押し出し、インナボディ6に支持されたパッド4aを、ロータ5の軸方向内側面に押し付ける。また、連通管3を通じて、インナ側通油孔13からアウタ側通油孔17にブレーキオイルが送り込まれる。これにより、アウタピストン16をアウタシリンダ15から軸方向に押し出し、アウタボディ7に支持されたパッド4bを、ロータ5の軸方向外側面に押し付ける。この結果、ロータ5が、1対のパッド4a、4bにより軸方向両側から強く挟持され、車両の制動が行われる。
【0106】
以上のような本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1によれば、キャリパ2に対する連通管3の浮き上がりを防止しつつ、従来構造に比べて、組立作業の効率を向上させることができるとともに、連通管3とキャリパ2との接続部に過大な引張応力が加わることを防止できる。
【0107】
すなわち、本例の場合にも、弾性材製の被覆筒28をキャリパ2に対し締め代を持って接触させているため、連通管3がキャリパ2から浮き上がることを防止でき、被覆筒28とキャリパ2との間に隙間が生じることを防止できる。これにより、キャリパ2の表面のうちで、被覆筒28により覆われて未塗装となった部分が露出することを防止できるとともに、連通管3が、対向ピストン型ディスクブレーキ装置1の周囲に配置されるホイールと干渉することを防止できる。
【0108】
特に本例では、被覆筒28に、フレアナット27a、27bの中心軸線方向の締め代を持たせていない。本例では、被覆筒28を、キャリパ2に対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向には押し付けずに、キャリパ2のうちの接触面24に対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略直交する径方向外側にのみ押し付けている。これにより、被覆筒28に、径方向の締め代のみを持たせ、フレアナット27a、27bの中心軸線方向(周方向)の締め代を持たせないようにしている。
【0109】
このため、図19に示すように、フレアナット27a、27bをインナボディ6及びアウタボディ7に螺合接続するべく、連通管3全体を周方向一方側に移動させる際に、接触面24に対する被覆筒28の弾性変形量を増大させずに済む。したがって、フレアナット27a、27bを螺合接続する際の締め付けトルクを増大させずに済む。この結果、本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1によれば、従来構造に比べて、組立作業の効率を向上させることができる。
【0110】
また、本例では、接触面24を、フレアナット27a、27bの中心軸O、Oと略平行に配置しているため、連通管3を周方向一方側に移動させる際の、接触面24に対する被覆筒28の弾性変形量を一定にできる。このため、フレアナット27a、27bの締め付けトルクが増大することを有効に防止できる。
【0111】
また、本例では、連通管3の接続作業時に、被覆筒28を、径方向外側以外の方向であれば、キャリパ2による制限を受けずに動かすことができる。このため、パイプ本体26に寸法のバラツキなどが存在する場合にも、当該バラツキを、被覆筒28を動かすことによって吸収することができる。このため、この面からも、対向ピストン型ディスクブレーキ装置1の組立作業の効率を向上させることができる。
【0112】
また、本例では、被覆筒28に、径方向の締め代のみを持たせ、フレアナット27a、27bの中心軸線方向の締め代を持たせていないため、従来構造に比べて、連通管3とキャリパ2との接続部に加わる引張応力を低減できる。このため、パイプ本体26に端部に備えられたシール面32が被押し付け面19から離隔して、シール面32と被押し付け面19との間に隙間が生じることを防止できる。これにより、連通管3とキャリパ2との接続部の密封性能を確保できる。この結果、本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1によれば、不良率の低減を図れる。また、接触面24に対する被覆筒28の締め代を大きくした場合にも、連通管3とキャリパ2との接続部に加わる引張応力に影響がないため、締め代を大きくすることで、連通管3の浮き上がり防止効果を高めることもできる。
【0113】
また、本例では、被覆筒28を、回出側連結部9に備えられた接触面24に対し径方向外側に向けて押し付けているため、車両走行時に加わる振動等により、軸方向延伸部29が径方向外側に浮き上がることを回出側連結部9によって阻止することができ、連通管3とホイールとの干渉を有効に防止できる。
【0114】
また、本例では、被覆筒28の軸方向中間部のみを接触面24に接触させており、被覆筒28の軸方向全体を接触させていない。このため、パイプ本体26のうちで、キャリパ2との接触によりキャリパ2に対する移動が制限される範囲を小さくでき、パイプ本体26を変形させやすくできる。したがって、パイプ本体26に寸法のバラツキなどが存在する場合にも、連通管3の接続作業の作業性が低下することを防止できる。
【0115】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、図20図31を用いて説明する。
【0116】
本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1aは、キャリパ2aに対する被覆筒28の接触態様が、実施の形態の第1例とは異なる。
【0117】
本例のキャリパ2aは、回入側連結部8aの周方向一方側の端部の径方向内側の端部に、周方向に張り出した張出部42を有している。なお、図示の例では、キャリパ2aは、回入側連結部8aだけでなく、回出側連結部9aにも、張出部42を有している。
【0118】
張出部42は、径方向外側面に、接触面24aを有している。接触面24aは、平面状で、径方向外側を向いている。接触面24aは、連通管3を構成するフレアナット27a、27bのそれぞれの中心軸O、Oと略平行に配置されている。
【0119】
接触面24aは、周方向幅よりも軸方向幅が大きい略長方形状を有している。
【0120】
本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1aでは、連通管3は、インナボディ6に備えられたインナ側通油孔13及びアウタボディ7に備えられたアウタ側通油孔17のそれぞれの周方向一方側の端部同士を接続している。インナ側通油孔13及びアウタ側通油孔17のそれぞれの周方向他方側の端部は、ブリーダスクリュ20により塞がれている。
【0121】
連通管3は、キャリパ2aの周方向一方側部を周方向一方側から覆うようにして、キャリパ2aの周囲に配置されている。
【0122】
本例の場合にも、連通管3を構成する被覆筒28は、一方のフレアナット27aをインナボディ6に螺合接続し、かつ、他方のフレアナット27bをアウタボディ7に螺合接続した状態で、被覆筒28は、キャリパ2aに対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向(周方向)の締め代を有していない。被覆筒28は、キャリパ2aに対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向以外の所定の一方向にのみ押し付けられている。
【0123】
具体的には、被覆筒28は、キャリパ2aのうちで回入側連結部8aに備えられた径方向外側を向いた接触面24aにのみ接触し、該接触面24aに対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略直交する径方向内側(図25及び図27(A)の下側、図26(A)の裏側)に押し付けられている。このため、被覆筒28は、キャリパ2aに対し、径方向内側にのみ押し付けられており、径方向の締め代のみを持って接触している。したがって、被覆筒28は、キャリパ2aに対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略一致する周方向の締め代を有していない。被覆筒28とキャリパ2aとの間には、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に、隙間34aが設けられている。
【0124】
被覆筒28は、接触面24aに接触した径方向内側部のみが、弾性変形している。本例では、被覆筒28の軸方向寸法は、接触面24aの軸方向幅よりも小さいため、被覆筒28の軸方向全体が、接触面24aに接触し、弾性変形している。
【0125】
以上のような本例の場合にも、被覆筒28を、キャリパ2aに対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向には押し付けずに、キャリパ2aのうちの接触面24aに対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略直交する径方向内側にのみ押し付けている。これにより、被覆筒28に、径方向の締め代のみを持たせ、被覆筒28にフレアナット27a、27bの中心軸線方向(周方向)の締め代を持たせないようにしている。
【0126】
このため、図31に示すように、フレアナット27a、27bをインナボディ6及びアウタボディ7に螺合接続するべく、連通管3全体を周方向他方側に移動させる際に、接触面24aに対する被覆筒28の弾性変形量を増大させずに済む。したがって、フレアナット27a、27bを螺合接続する際の締め付けトルクを増大させずに済む。また、被覆筒28に、径方向の締め代のみを持たせ、フレアナット27a、27bの中心軸線方向の締め代を持たせていないため、従来構造に比べて、連通管3とキャリパ2aとの接続部に加わる引張応力を低減できる。
【0127】
また、本例の場合にも、接触面24aを、フレアナット27a、27bの中心軸O、Oと略平行に配置しているため、連通管3を周方向他方側に移動させる際の、接触面24aに対する被覆筒28の弾性変形量を一定にできる。
【0128】
また、連通管3の接続作業時に、被覆筒28を、径方向内側以外の方向であれば、キャリパ2aによる制限を受けずに動かすことができる。このため、パイプ本体26に寸法のバラツキなどが存在する場合にも、当該バラツキを、被覆筒28を動かすことによって吸収することができる。このため、この面からも、対向ピストン型ディスクブレーキ装置1aの組立作業の効率を向上させることができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0129】
[実施の形態の第3例]
実施の形態の第3例について、図32図35を用いて説明する。
【0130】
本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1bは、キャリパ2bに対する被覆筒28の接触態様が、実施の形態の第1例とは異なる。
【0131】
キャリパ2bは、回出側連結部9bの周方向他方側の端部の軸方向中間部に、径方向内側を向いた面43を有している。また、面43の軸方向中間部には、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に直交する方向である径方向内側に向けて突出した突起部44が設けられている。図示の例では、面43は、平面状に構成されており、突起部44は、面43に1つだけ設けられている。ただし、面を、平面以外の面から構成することもできるし、突起部を、複数設けることもできる。
【0132】
図示の例では、突起部44は、三角柱形状を有しており、周方向に伸長している。突起部44の軸方向幅は、径方向内側に向かうほど小さくなる。なお、突起部の形状は、三角柱形状に限定されず、四角柱形状、円柱形状(半円柱形状を含む)などを採用することもできる。
【0133】
図示の例では、突起部44の径方向の突出量は、周方向にわたり一定であり、被覆筒28の肉厚よりも小さい。ただし、突起部44の突出量は、周方向一方側に向かうほど大きくするなど、周方向に関して変化させることもできる。
【0134】
図32に示すように、突起部44は、連通管3を構成する1対のフレアナット27a、27bのそれぞれの中心軸O、Oを含む仮想平面αのうちで、1対のフレアナット27a、27bのそれぞれの中心軸O、Oまでの距離(X1、X2)が互い等しい位置(Y)を通り、かつ、前記仮想平面αに直交する、直交平面β上に配置されている。
【0135】
本例では、被覆筒28は、キャリパ2bのうちの回出側連結部9bに備えられた突起部44に接触し、該突起部44に対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略直交する径方向外側(図32及び図35の上側)に押し付けられている。このため、被覆筒28は、キャリパ2bに対し、径方向外側にのみ押し付けられており、径方向の締め代のみを持って接触している。したがって、被覆筒28は、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略一致する周方向の締め代を有していない。
【0136】
本例では、被覆筒28は、突起部44にのみ押し付けられて接触している。ただし、被覆筒28のうちで、突起部44に接触した部分の軸方向両側部分を、面43に接触させる(径方向外側に押し付ける)こともできる。
【0137】
以上のような本例では、被覆筒28をキャリパ2bのうちの突起部44に押し付けているため、被覆筒28を平面に押し付ける場合に比べて、キャリパ2bに対する面圧を上昇させることができる。このため、被覆筒28の弾性変形量を大きくすることができ、キャリパ2bに対する被覆筒28の締め代を大きくできる。したがって、連通管3のパイプ本体26に寸法のバラツキなどが存在する場合にも、被覆筒28をキャリパ2bに対し十分に大きな力で押し付けることが可能になり、被覆筒28がキャリパ2bから浮き上がることを有効に防止できる。
【0138】
また、本例では、突起部44を前記直交平面β上に配置しているため、パイプ本体26のうちで、突起部44の軸方向両側に存在する部分の寸法(X1、X2)を十分に長くできる。このため、パイプ本体26のうちで、突起部44の軸方向両側に存在する部分を、変形させやすくすることができるため、パイプ本体26に寸法のバラツキなどが存在する場合にも、連通管3の接続作業の作業性が低下することを防止できる。
【0139】
なお、本例では、径方向内側に向けて突出した突起部44を設けた場合について説明したが、図36に示した変形例のように、被覆筒28を、径方向外側に向けて突出する突起部44に対し、径方向内側に押し付けることもできる。
【0140】
[実施の形態の第4例]
実施の形態の第4例について、図37図40を用いて説明する。
【0141】
本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1cは、キャリパ2に対する被覆筒28aの接触態様が、実施の形態の第1例とは異なる。
【0142】
本例のキャリパ2は、実施の形態の第1例の構造と同様に、回出側連結部9の周方向他方側の端部の軸方向中間部に、径方向内側を向いた平面状の接触面24を有している。
【0143】
本例では、連通管3aを構成する被覆筒28aを、円筒形状を有する筒部本体45と、突起部46とから構成している。
【0144】
筒部本体45は、パイプ本体26を構成する軸方向延伸部29の軸方向中間部を覆っている。
【0145】
突起部46は、筒部本体45の外周面の軸方向中間部の円周方向一箇所に備えられている。本例では、突起部46は、筒部本体45の外周面のうち、径方向外側の端部に備えられている。つまり、突起部46は、筒部本体45の外周面から、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に直交する方向である径方向外側に向けて突出している。図示の例では、突起部46は、筒部本体45の外周面の軸方向中間部に1つだけ設けられているが、複数設けることもできる。
【0146】
図示の例では、突起部46は、四角柱形状を有している。なお、突起部の形状は、四角柱形状に限定されず、三角柱形状、角すい形状、円柱形状(半円柱形状を含む)、円すい形状、半球形状などを採用することもできる。
【0147】
図示の例では、突起部46の径方向高さ(被覆筒28aの中心軸を含む仮想面からの径方向距離)は、周方向にわたり一定である。ただし、突起部46の径方向高さは、周方向一方側に向かうほど高くするなど、周方向に関して変化させることもできる。
【0148】
図37に示すように、突起部46は、連通管3aを構成する1対のフレアナット27a、27bのそれぞれの中心軸O、Oを含む仮想平面αのうちで、1対のフレアナット27a、27bのそれぞれの中心軸O、Oまでの距離(X1、X2)が互い等しい位置(Y)を通り、かつ、前記仮想平面αに直交する、直交平面β上に配置されている。
【0149】
本例では、被覆筒28aのうちの突起部46が、回出側連結部9に備えられた接触面24に接触し、該接触面24に対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略直交する径方向外側(図37及び図40の上側)に押し付けられている。このため、被覆筒28aは、キャリパ2に対し、径方向外側にのみ押し付けられており、径方向の締め代のみを持って接触している。したがって、被覆筒28aは、キャリパ2に対し、フレアナット27a、27bの中心軸線方向に略一致する周方向の締め代を有していない。
【0150】
本例では、被覆筒28aは、突起部46のみが接触面24に接触しており、筒部本体45の外周面のうちで突起部46から外れた部分は、接触面24に接触していない。ただし、筒部本体45の外周面のうちで突起部46の軸方向両側に存在する部分を、接触面24に接触させる(径方向外側に押し付ける)こともできる。
【0151】
以上のような本例では、被覆筒28aのうちの突起部46をキャリパ2の接触面24に押し付けているため、円筒面状の外周面を平面状の接触面に押し付ける場合に比べて、キャリパ2に対する面圧を上昇させることができる。このため、被覆筒28aを大きく弾性変形させることができ、キャリパ2に対する被覆筒28aの締め代を大きくできる。したがって、連通管3aのパイプ本体26に寸法のバラツキなどが存在する場合にも、被覆筒28aをキャリパ2に対し十分に大きな力で押し付けることが可能となり、被覆筒28aがキャリパ2から浮き上がることを有効に防止できる。
【0152】
また、本例では、突起部46を、前記直交平面β上に配置しているため、パイプ本体26のうちで、突起部46の軸方向両側に存在する部分の寸法(X1、X2)を十分に長くできる。このため、パイプ本体26のうちで、突起部46の軸方向両側に存在する部分を、変形させやすくすることができるため、パイプ本体26に寸法のバラツキなどが存在する場合にも、連通管3aの接続作業の作業性が低下することを防止できる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例及び第3例の構造と同じである。
【0153】
なお、本例では、被覆筒28aの外周面に設けた突起部46を、径方向内側を向いた接触面24に押し付ける場合について説明したが、図41に示した変形例のように、径方向外側を向いた接触面24に、被覆筒28aの外周面に備えられた突起部46を径方向内側に押し付けることもできる。
【0154】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、実施の形態の各例の構造は、矛盾を生じない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。
【0155】
本発明の技術思想は、連通管を構成する1対のフレアナットの中心軸を、ロータの周方向に配置する構造に限らず、ロータの径方向など、その他の方向に配置する構造に適用することもできる。
【0156】
本発明を実施する場合には、インナシリンダ及びアウタシリンダのそれぞれの数及び配置は、実施の形態の各例の構造に限定されず、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0157】
1、1a、1b、1c 対向ピストン型ディスクブレーキ装置
2、2a、2b キャリパ
3、3a 連通管
4a、4b パッド
5 ロータ
6 インナボディ
7 アウタボディ
8、8a 回入側連結部
9、9a、9b 回出側連結部
10 中間連結部
11 インナシリンダ
12 インナピストン
13 インナ側通油孔
14 接続口
15 アウタシリンダ
16 アウタピストン
17 アウタ側通油孔
18 雌ねじ部
19 被押し付け面
20 ブリーダスクリュ
21 ピン
22 ガイド凹溝
23 ガイド壁部
24、24a 接触面
25a、25b 傾斜面
26 パイプ本体
27a、27b フレアナット
28、28a 被覆筒
29 軸方向延伸部
30a、30b 周方向延伸部
31 屈曲部
32 シール面
33 雄ねじ部
34、34a 隙間
35 ライニング
36 プレッシャプレート
37 耳部
38 張出板部
39 挿通孔
40 シム板
41a、41b パッドスプリング
42 張出部
43 面
44 突起部
45 筒部本体
46 突起部
100 対向ピストン型ディスクブレーキ装置
101 ロータ
102 キャリパ
103a、103b パッド
104 インナボディ
105 アウタボディ
106 インナシリンダ
107 インナピストン
108 アウタシリンダ
109 アウタピストン
110 連通管
111 ブリーダスクリュ
112 回入側連結部
113 回出側連結部
114 中間連結部
115 パイプ本体
116a、116b フレアナット
117 被覆筒
118 第1接触面
119 第2接触面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
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図45