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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130589
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240920BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240920BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20240920BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/16 C
B60W30/095
G07C5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040418
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】山崎 悦宏
【テーマコード(参考)】
3D241
3E138
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA65
3D241CD28
3D241DC60Z
3E138AA07
3E138MA01
3E138MB20
3E138MC06
3E138MD03
3E138MF02
5H181AA01
5H181BB17
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF10
5H181LL01
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でイベントデータ同士を時間同期する。
【解決手段】車両制御装置100は、車両1の外界状況を検出する外界センサ31を有する検出ユニット30と、外界状況に基づいて車両1を制御する制御ユニット40とを備える。検出ユニット30は、所定時刻からの経過時間である第1時間を計時する第1計時部32と、外界状況と第1時間とを対応付けて記憶する第1記憶部33とを有する。制御ユニット40は、外界状況に基づいて走行用アクチュエータ2の制御値を算出する制御値算出部42と、所定時刻からの経過時間である第2時間を計時する第2計時部43と、制御値と第2時間とを対応付けて記憶する第2記憶部46と、所定の送信周期で第2時間を検出ユニット30に送信する送信部44とを有する。第1計時部32は、第1時間を、送信部44により送信された第2時間に置き換えて計時を継続する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外界状況を検出する外界センサを有する検出ユニットと、
前記外界センサにより検出された外界状況に基づいて、前記車両を制御する制御ユニットと、を備え、
前記検出ユニットは、
所定時刻からの経過時間である第1時間を計時する第1計時部と、
前記外界センサにより検出された外界状況と前記第1計時部により計時された第1時間とを対応付けて記憶する第1記憶部と、を有し、
前記制御ユニットは、
前記外界センサにより検出された外界状況に基づいて、前記車両の走行用アクチュエータを制御するための制御値を算出する制御値算出部と、
前記所定時刻からの経過時間である第2時間を計時する第2計時部と、
前記制御値算出部により算出された制御値と前記第2計時部により計時された第2時間とを対応付けて記憶する第2記憶部と、
前記第2計時部により計時された所定の送信周期で、前記第2計時部により計時された第2時間を前記検出ユニットに送信する送信部と、を有し、
前記第1計時部は、前記第1時間を、前記送信部により送信された第2時間に置き換えて計時を継続することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記第1記憶部は、前記第1計時部により計時された、前記送信周期よりも長い所定の記録周期で、前記外界センサにより検出された外界状況と前記第1計時部により計時された第1時間とを対応付けて記憶することを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両制御装置において、
前記制御ユニットは、
前記第2計時部により計時された、前記送信周期よりも長い所定の判定周期で、前記制御ユニットと前記検出ユニットとの通信または前記第1計時部による計時が正常に行われているか否かを判定する故障判定部をさらに有することを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両制御装置において、
前記判定周期は、前記記録周期よりも長いことを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突被害軽減ブレーキ等の運転支援機能を搭載した車両の事故発生時の情報(イベントデータ)を記録する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、イベントデータを記録するようにしたプラント制御装置が知られている(例えば特許文献1,2参照)。特許文献1記載の装置では、イベント信号および同期信号の変化点をイベントデータとして収集するとともに、同期信号のイベントデータに基づいて補正係数を演算し、演算された補正係数に基づいてイベント信号のイベントデータの時刻を補正する。特許文献2記載の装置では、イベント信号の変化点をイベントデータとして、高分解能のカウント値を付加して収集するとともに、低分解能の時刻の変化点において時刻を基準時刻、カウント値を基準カウント値とし、基準時刻にイベントデータのカウント値と基準カウント値との差分を加えてイベントデータのイベント時刻を生成する。
【0003】
運転支援機能を有する車両が普及することで、交通社会全体の安全性や利便性が向上し、持続可能な輸送システムを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-305955号公報
【特許文献2】特開2001-34335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2記載の装置では、収集したイベントデータの時刻を補正するために演算処理が必要となるため、構成が複雑である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である車両制御装置は、車両の外界状況を検出する外界センサを有する検出ユニットと、外界センサにより検出された外界状況に基づいて、車両を制御する制御ユニットと、を備える。検出ユニットは、所定時刻からの経過時間である第1時間を計時する第1計時部と、外界センサにより検出された外界状況と第1計時部により計時された第1時間とを対応付けて記憶する第1記憶部と、を有する。制御ユニットは、外界センサにより検出された外界状況に基づいて、車両の走行用アクチュエータを制御するための制御値を算出する制御値算出部と、所定時刻からの経過時間である第2時間を計時する第2計時部と、制御値算出部により算出された制御値と第2計時部により計時された第2時間とを対応付けて記憶する第2記憶部と、第2計時部により計時された所定の送信周期で、第2計時部により計時された第2時間を検出ユニットに送信する送信部と、を有する。第1計時部は、第1時間を、送信部により送信された第2時間に置き換えて計時を継続する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成でイベントデータ同士を時間同期することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る車両制御装置の要部構成の一例を概略的に示すブロック図。
図2図1の第1計時部により計時された第1時間と第2計時部により計時された第2時間との同期について説明するためのタイムチャート。
図3図1の永続記憶部へのイベントデータの記録周期について説明するためのタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図3を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る車両制御装置は、衝突被害軽減ブレーキ(CMBS(Collision Mitigation Brake System))等の運転支援機能を搭載した車両に適用され、事故発生時における運転支援機能の作動情報等を含むイベントデータを記録する。なお、本実施形態の「運転支援」は、運転者の運転操作を支援する運転支援と、運転者の運転操作によらず車両を自動運転する自動運転とを含み、SAEにより定義されるレベル1~レベル4の自動運転に相当し、「自動運転」は、レベル5の自動運転に相当する。
【0010】
運転支援では、カメラ等の外界センサによる車両周辺の外界状況の認識結果に基づいて、車両の制動機構や駆動機構、転舵機構等の走行用アクチュエータを制御することで、衝突の回避や衝突被害の軽減等を支援する。そして、衝突事故が発生した場合には、エアバッグの作動情報や車速情報の急激な変化等に応じて、各車載ユニットでイベントデータが記録される(EDR(Event Data Recorder))。
【0011】
EDRでは、運転支援機能の作動情報として、走行用アクチュエータを制御する制御ユニットで時系列のイベントデータが記憶されるとともに、運転支援の基礎となる外界センサを有する検出ユニットでも時系列のイベントデータが記録される。しかしながら、各車載ユニットは個別の計時部により個別に計時を行うため、ユニット間の計時のずれが大きくなると、イベントデータ同士を精度よく対応付けて事故発生時の状況を精度よく解析することが難しくなる。そこで、本実施形態では、簡易な構成でイベントデータ同士を時間同期し、事故発生時の状況の解析精度を向上することができるよう、以下のように車両制御装置を構成する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置(以下、装置)100の要部構成の一例を概略的に示すブロック図である。図1に示すように、装置100は、車両1に搭載された走行用アクチュエータ2と、車両1の外界状況を検出する外界センサ31を有する検出ユニット30と、外界センサ31により検出された外界状況に基づいて車両1を制御する制御ユニット40とを備える。検出ユニット30と制御ユニット40とは、通信可能に接続される。制御ユニット40には、走行用アクチュエータ2が接続される。
【0013】
走行用アクチュエータ2には、車両1を駆動するエンジンやモータ等の駆動機構、車両1を制動するブレーキ等の制動機構、および車両1を転舵させるステアリングギア等の転舵機構が含まれる。
【0014】
検出ユニット30は、外界センサ31と、CPU、RAM、ROM、I/Oインタフェース、その他の周辺回路を有するコンピュータとを含んで構成される。検出ユニット30は、コンピュータの機能的構成として、第1計時部32と、第1記憶部33とを有し、コンピュータのCPUが第1計時部32として機能し、コンピュータのRAMおよびROMが第1記憶部33として機能する。第1記憶部33は、RAMの機能的構成に相当する一時記憶部33aと、ROMの機能的構成に相当する永続記憶部33bとを有する。
【0015】
外界センサ31は、車両1の周辺領域の物体の位置を含む外界状況を検出する。外界センサ31は、CCDやCMOS等の撮像素子を有し、車両1の周辺領域を撮像するカメラを含む。外界センサ31は、車両1から周辺領域の物体までの距離を検出する距離検出部を含んでもよい。距離検出部は、例えば、ミリ波(電波)を照射し、照射波が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離や方向を測定するミリ波レーダにより構成される。距離検出部は、レーザ光を照射し、照射光が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離や方向を測定するライダ(LiDAR)により構成されてもよい。外界センサ31による外界状況の検出は、所定の検出周期(例えば20ミリ秒程度)で行われる。外界センサ31により検出された外界状況(検出データ)は、制御ユニット40に送信される。
【0016】
第1計時部32は、所定時刻からの経過時間である第1時間T1を計時する。より具体的には、第1計時部32は、装置100が起動し、検出ユニット30が起動すると、起動時刻からの経過時間である第1時間T1の計時を開始する。第1計時部32による第1時間T1の計時(カウントアップ)は、外界センサ31の検出周期よりも十分短い所定の計時周期(例えば1ミリ秒毎)で行われる。
【0017】
外界センサ31により所定の検出周期で検出された外界状況の検出データは、第1計時部32により所定の計時周期で計時された第1時間T1に対応付けられ、第1記憶部33の一時記憶部33aに記憶される。一時記憶部33aに記憶された時系列の検出データは、一定の記憶容量に達すると、最古の検出データから順次、最新の検出データに上書きされることで失われる。あるいは、検出ユニット30への電源供給が停止されると消去されることで失われる。
【0018】
制御ユニット40は、CPU、RAM、ROM、I/Oインタフェース、その他の周辺回路を有するコンピュータを含んで構成される。制御ユニット40は、機能的構成として、外界認識部41と、制御値算出部42と、第2計時部43と、送信部44と、故障判定部45と、第2記憶部46とを有する。すなわち、CPUが外界認識部41と、制御値算出部42と、第2計時部43と、送信部44と、故障判定部45と、第2記憶部46として機能し、RAMおよびROMが第2記憶部46として機能する。第2記憶部46は、RAMの機能的構成に相当する一時記憶部46aと、ROMの機能的構成に相当する永続記憶部46bとを有する。
【0019】
外界認識部41は、外界センサ31からの信号に基づいて、車両1の進行方向を中心とする周辺領域の外界状況を認識する。より具体的には、道路上の区画線、縁石、ガードレール等の位置を認識することで、車両1が走行する走行車線を認識する。また、周辺領域に存在する他車両や歩行者、障害物等を物標として認識するとともに、車両1から各物標までの距離を認識する。
【0020】
制御値算出部42は、外界認識部41により認識された外界状況に基づいて、車両1の走行用アクチュエータ2を制御するための制御値を算出する。例えば、外界認識部41により認識された走行車線の中心に沿って車両1が走行するように転舵機構を制御するための制御値(例えば目標舵角やアシストトルク等)を算出する。また、外界認識部41により認識された先行車両から一定の距離をとって車両1が走行するように駆動機構および制動機構を制御するための制御値(例えば目標エンジン回転数やブレーキ圧等)を算出する。また、外界認識部41により認識された車両1の進行方向に存在する他車両や歩行者、障害物等までの距離に基づいて衝突の可能性を判定し、判定結果に応じて制動機構および駆動機構(あるいは、それらに加えて転舵機構)を制御するための制御値を算出する。制御値算出部42による制御値の算出は、所定の算出周期(例えば10ミリ秒程度)で行われる。
【0021】
第2計時部43は、所定時刻からの経過時間である第2時間T2を計時する。より具体的には、第2計時部43は、装置100が起動し、制御ユニット40が起動すると、起動時刻からの経過時間である第2時間T2の計時を開始する。第2計時部43による第2時間T2の計時(カウントアップ)は、制御値算出部42の算出周期よりも十分短い所定の計時周期(例えば1ミリ秒毎)で行われる。
【0022】
制御値算出部42により所定の算出周期で算出された制御値は、第2計時部43により所定の計時周期で計時された第2時間T2に対応付けられ、第2記憶部46の一時記憶部46aに記憶される。なお、一時記憶部46aには、走行用アクチュエータ2の制御に用いられる制御値のほか、外界状況の認識結果や衝突可能性の判定結果等も記憶される。一時記憶部46aに記憶された時系列の制御値は、一定の記憶容量に達すると、最古の検出データから順次、最新の制御値に上書きされることで失われる。あるいは、制御ユニット40への電源供給が停止されると消去されることで失われる。
【0023】
<ユニット間の時間同期>
図2は、第1計時部32により計時された第1時間T1と、第2計時部43により計時された第2時間T2との同期について説明するためのタイムチャートである。図2に示すように、制御ユニット40(図1)の送信部44は、所定の送信周期(例えば250ミリ秒)で、第2計時部43により計時された第2時間T2を検出ユニット30に送信する。
【0024】
より具体的には、送信部44は、時刻t0で装置100および各ユニット30,40が起動した後、時刻t1で第2計時部43により計時された第2時間T2が送信周期に達すると、第2時間T2(図2の例では250ミリ秒)を検出ユニット30に送信する。また、時刻t1で第2時間T2を検出ユニット30に送信した後、時刻t2で第2計時部43により計時された第2時間T2が送信周期に達すると、第2時間T2(図2の例では500ミリ秒)を検出ユニット30に送信する。
【0025】
検出ユニット30(図1)の第1計時部32は、第1時間T1を、制御ユニット40の送信部44により送信された第2時間T2に置き換えて計時を継続する。より具体的には、第1計時部32は、時刻t1で第2時間T2を受信すると、時刻t0から時刻t1までに計時(カウントアップ)した第1時間T1の計時値(図2の例では251ミリ秒)を、受信した第2時間(図2の例では250ミリ秒)に置き換える(同期)。そして、時刻t1から時刻t2までは、時刻t1で同期された第1時間T1(図2の例では250ミリ秒)をカウントアップすることで、第1時間T1の計時を継続する。同様に、時刻t2で第2時間T2を受信すると、時刻t1から時刻t2までに計時した第1時間T1の計時値(図2の例では502ミリ秒)を、受信した第2時間(図2の例では500ミリ秒)に置き換えることで、2回目の同期を行う。そして、時刻t2から次回の同期までは、時刻t2で同期された第1時間T1(図2の例では500ミリ秒)をカウントアップすることで、第1時間T1の計時を継続する。
【0026】
このように、検出ユニット30側の第1時間T1と制御ユニット40側の第2時間T2との同期では、計時値の送受信と置き換えのみが行われるため、同期処理による各ユニット30,40の演算負荷を極めて小さく抑制することができる。
【0027】
また、検出ユニット30側の第1時間T1と制御ユニット40側の第2時間T2とを適切に同期することで、制御ユニット40側における外界状況の認識精度を向上することができる。すなわち、検出ユニット30は、外界センサ31としてのステレオカメラのそれぞれを含む複数のカメラユニットを含む場合がある。あるいは、外界センサ31としての単眼カメラを含むカメラユニットと外界センサ31としてのミリ波レーダを含むレーダユニットとを含む場合がある。この場合、制御ユニット40は各検出ユニット30から受信した検出データのセンサフュージョンを行うことで外界状況を認識するため、各検出ユニット30と制御ユニット40との時間同期を適切に行うことで、外界状況の認識精度を向上することができる。
【0028】
<イベントデータの記録>
図3は、各ユニット30,40(図1)の永続記憶部33b,46bへのイベントデータの記録周期について説明するためのタイムチャートである。EDRでは、衝突事故等の所定の事象が発生すると、エアバッグの作動情報や車速情報の急激な変化等に応じ、走行用アクチュエータ2を制御する制御ユニット40に対し、イベントデータの記録が指令される。例えば、エアバッグを制御する不図示の車載ユニットから制御ユニット40に対し、イベントデータの記録指令が送信される。制御ユニット40の送信部44は、イベントデータの記録指令を受信すると、検出ユニット30にイベントデータの記録指令を送信(転送)する。
【0029】
イベントデータの記録が指令されると、制御ユニット40では、第2記憶部46の一時記憶部46aに記憶された時系列の制御値の全部または一部が、第2記憶部46の永続記憶部46bに記録される。永続記憶部46bに記録された制御値は、制御ユニット40への電源供給が停止された後も保持される。
【0030】
より具体的には、図3に示すように、一時記憶部46aに記憶された事象発生前後の所定期間における時系列(例えば10ミリ秒周期)の制御値のうち、所定の記録周期(例えば100ミリ秒)毎の時系列の制御値が抽出され、永続記憶部46bに記録される。この場合の記録周期は、第2計時部43により計時された第2時間T2における周期である。換言すると、永続記憶部46bには、制御ユニット40のイベントデータとして、第2計時部43により計時された所定の記録周期で、制御値算出部42により算出された制御値と、第2計時部43により計時された第2時間T2とが、対応付けて記憶される。なお、イベントデータには、走行用アクチュエータ2の制御に用いられる制御値のほか、外界状況の認識結果や衝突可能性の判定結果等も含まれる。
【0031】
制御ユニット40から検出ユニット30にイベントデータの記録指令が送信(転送)されると、検出ユニット30では、第1記憶部33の一時記憶部33aに記憶された時系列の検出データの全部または一部が、第1記憶部33の永続記憶部33bに記録される。永続記憶部33bに記録された検出データは、検出ユニット30への電源供給が停止された後も保持される。
【0032】
より具体的には、図3に示すように、一時記憶部33aに記憶された事象発生前後の所定期間における時系列(例えば20ミリ秒周期)の検出データのうち、所定の記録周期(例えば1秒)毎の時系列の検出データが抽出され、永続記憶部33bに記録される。この場合の記録周期は、第1計時部32により計時された第1時間T1における周期である。換言すると、永続記憶部33bには、検出ユニット30のイベントデータとして、第1計時部32により計時された所定の記録周期で、外界センサ31により検出された検出データと、第1計時部32により計時された第1時間T1とが、対応付けて記憶される。
【0033】
このように、検出ユニット30側のイベントデータを永続記憶部33bに記録する記録周期(例えば1秒)は、検出ユニット30と制御ユニット40との間で同期を行う送信周期(例えば250ミリ秒)よりも十分長い周期に設定される。これにより、検出ユニット30側のイベントデータの第1時間T1と制御ユニット40側のイベントデータの第2時間T2とのずれを十分小さくし、イベントデータ同士を精度よく対応付けることで、事故発生時の状況の解析精度を向上することができる。
【0034】
<故障判定>
制御ユニット40と検出ユニット30との間の通信障害や検出ユニット30の異常等の故障が発生した場合には、制御ユニット40側で外界状況に基づく車両制御を適切に実行することが難しくなる。したがって、装置100では、このような故障が発生すると、例えば車速制限等を行うことで、車両1を安全状態に移行させる。より具体的には、故障が発生してから安全状態に移行するまでの許容時間(FTTI(Fault Tolerant Time Interval))を基準とした所定の判定周期(例えば2秒)で故障判定を行い、故障が発生したことが確定すると、車両1を安全状態に移行させる。
【0035】
制御ユニット40(図1)の故障判定部45は、所定の判定周期(例えば2秒)で検出ユニット30と通信し、第1記憶部33に記憶された第1時間T1を検証することで、故障判定を行う。この場合の判定周期は、第2計時部43により計時された第2時間T2における周期である。より具体的には、制御ユニット40と検出ユニット30との通信が正常に行われているか否か、通信が正常に行われている場合は、さらに第1計時部32による計時(同期を含む)が正常に行われているか否かを判定することで、故障判定を行う。故障判定部45は、1回の判定周期において複数回(例えば、2秒/250ミリ秒=8回)行われる検出ユニット30と制御ユニット40との間の時間同期が全て失敗している場合には、故障が発生したと判定する。
【0036】
ここで、時間同期を行う送信周期(例えば250ミリ秒)と、検出ユニット30の第1記憶部33(永続記憶部33b)にイベントデータが記録される記録周期(例えば1秒)とは、いずれも判定周期(例えば2秒)よりも十分短い周期に設定されている。故障判定部45により、1回の判定周期において例えば1回でも、制御ユニット40と検出ユニット30との通信が正常に行われ、第1計時部32による計時が正常に行われていると判定されれば、故障発生が確定されず、車両1が安全状態に移行されない。したがって、一時的な通信エラーや同期エラー等により故障が確定されて不要に安全状態に移行するおそれを低減することができる。
【0037】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)装置100は、車両1の外界状況を検出する外界センサ31を有する検出ユニット30と、外界センサ31により検出された外界状況に基づいて、車両1を制御する制御ユニット40とを備える(図1)。検出ユニット30は、所定時刻(例えば装置100の起動時刻)からの経過時間である第1時間T1を計時する第1計時部32と、外界センサ31により検出された外界状況と第1計時部32により計時された第1時間T1とを対応付けて記憶する第1記憶部33とを有する。制御ユニット40は、外界センサ31により検出された外界状況に基づいて、車両1の走行用アクチュエータ2を制御するための制御値を算出する制御値算出部42と、所定時刻からの経過時間である第2時間T2を計時する第2計時部43と、制御値算出部42により算出された制御値と第2計時部43により計時された第2時間T2とを対応付けて記憶する第2記憶部46と、第2計時部43により計時された所定の送信周期で、第2計時部43により計時された第2時間T2を検出ユニット30に送信する送信部44とを有する。第1計時部32は、第1時間T1を、送信部44により送信された第2時間T2に置き換えて計時を継続する(図2)。これにより、簡易な構成で、第1時間T1と第2時間T2とを同期し、検出ユニット30側のイベントデータと制御ユニット40側のイベントデータとを精度よく対応付けることで、事故発生時の状況の解析精度を向上することができる。
【0038】
(2)第1記憶部33の永続記憶部33bは、第1計時部32により計時された、送信周期(例えば250ミリ秒)よりも長い所定の記録周期(例えば1秒)で、外界センサ31により検出された外界状況と第1計時部32により計時された第1時間T1とを記憶する。すなわち、検出ユニット30側のイベントデータを永続記憶部33bに記録する記録周期(例えば1秒)が、検出ユニット30と制御ユニット40との間で同期を行う送信周期(例えば250ミリ秒)よりも十分長い周期に設定される。これにより、検出ユニット30側のイベントデータの第1時間T1と、制御ユニット40側のイベントデータの第2時間T2とのずれを十分小さくすることができる。
【0039】
(3)制御ユニット40は、第2計時部43により計時された、送信周期(例えば250ミリ秒)よりも長い所定の判定周期(例えば2秒)で、制御ユニット40と検出ユニット30との通信または第1計時部32による計時が正常に行われているか否かを判定する故障判定部45をさらに有する(図1)。検出ユニット30と制御ユニット40との間で同期を行う送信周期(例えば250ミリ秒)を、判定周期(例えば2秒)よりも十分短い周期に設定することで、一時的なエラーにより故障が確定されて不要に安全状態に移行するおそれを低減することができる。
【0040】
(4)判定周期(例えば2秒)は、検出ユニット30側のイベントデータの記録周期(例えば1秒)よりも長い。検出ユニット30側のイベントデータを記録する記録周期(例えば1秒)についても、判定周期(例えば2秒)よりも十分短い周期に設定することで、一時的なエラーにより故障が確定されて不要に安全状態に移行するおそれを低減することができる。
【0041】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 車両、2 走行用アクチュエータ、30 検出ユニット、31 外界センサ、32 第1計時部、33 第1記憶部、33a 一時記憶部、33b 永続記憶部、40 制御ユニット、41 外界認識部、42 制御値算出部、43 第2計時部、44 送信部、45 故障判定部、46 第2記憶部、46a 一時記憶部、46b 永続記憶部、100 車両制御装置(装置)
図1
図2
図3