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  • 特開-受光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130595
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】受光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040426
(22)【出願日】2023-03-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築/次世代グリーンデータセンター技術開発/光電融合デバイス開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】517177464
【氏名又は名称】アイオーコア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 真一
(72)【発明者】
【氏名】芝 和宏
【テーマコード(参考)】
5F149
【Fターム(参考)】
5F149AA04
5F149AB02
5F149BA09
5F149DA44
5F149FA05
5F149GA05
5F149LA09
5F149XB15
5F149XB24
5F149XB37
(57)【要約】
【課題】受光感度特性の光波長に対する依存性および光吸収層の膜厚に対する依存性を低減した受光素子を提供する。
【解決手段】受光素子は、基板上に形成された、または基板の一部を構成する第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成された光吸収層と、前記光吸収層上に形成された第2半導体層と、を備え、前記第1半導体層は、膜厚がそれぞれ異なる複数の領域を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された、または基板の一部を構成する第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成された光吸収層と、
前記光吸収層上に形成された第2半導体層と、
を備え、前記第1半導体層は、膜厚がそれぞれ異なる複数の領域を有する、
受光素子。
【請求項2】
前記第1半導体層における前記複数の領域の数は3以上である、請求項1に記載の受光素子。
【請求項3】
前記第1半導体層は、第1誘電体層上に形成されている、請求項1または2に記載の受光素子。
【請求項4】
前記第2半導体層上に第2誘電体層をさらに備える、請求項3に記載の受光素子。
【請求項5】
前記第1誘電体層はSOI基板における埋め込み酸化膜であり、
前記第1半導体層はSOI基板における前記埋め込み酸化膜上のSi薄膜である、
請求項3に記載の受光素子。
【請求項6】
前記光吸収層はGeを含む層である、請求項1または2に記載の受光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信用の半導体受光素子として、光吸収層の下部に作り込まれた光導波路を介して光吸収層に側方から光を入射するように構成されたもの(例えば、特許文献1参照)や、光吸収層の上方から、すなわち光吸収層の上面に対して垂直な方向から光吸収層に光を入射する面入射型の受光素子(例えば、特許文献2参照)が開発されている。前者のタイプの受光素子は、導波路への光の結合効率を上げるのが困難であるのに対し、後者のタイプの受光素子は、光吸収層に高効率で光を入射できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-256869号公報
【特許文献2】特開2022-161169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、半導体受光素子を他の光・電気素子と集積化したシリコンフォトニクスデバイスの研究開発も行われている。このようなシリコンフォトニクスデバイスにおいては、十分な厚さの光吸収層を作製することが難しいため、光吸収層を含む多層膜での光の多重反射を利用して実効的な光吸収層の厚さを厚くし、受光感度の低下を防いでいる。しかし、多層膜内での多重反射に起因して、受光感度特性に光波長依存性や光吸収層の膜厚依存性が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、受光感度特性の光波長に対する依存性および光吸収層の膜厚に対する依存性を低減した受光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様によれば、基板上に形成された、または基板の一部を構成する第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成された光吸収層と、前記光吸収層上に形成された第2半導体層と、を備え、前記第1半導体層は、膜厚がそれぞれ異なる複数の領域を有する、受光素子が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、上記一態様において、前記第1半導体層における前記複数の領域の数は3以上である、受光素子が提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、上記一態様において、前記第1半導体層は、第1誘電体層上に形成されている、受光素子が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、上記一態様において、前記第2半導体層上に第2誘電体層をさらに備える、受光素子が提供される。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、上記一態様において、前記第1誘電体層はSOI基板における埋め込み酸化膜であり、前記第1半導体層はSOI基板における前記埋め込み酸化膜上のSi薄膜である、受光素子が提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、上記一態様において、前記光吸収層はGeを含む層である、受光素子が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受光感度特性の光波長に対する依存性および光吸収層の膜厚に対する依存性を低減した受光素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る受光素子の模式的な断面構成を示した図である。
図2A図1の構成による受光素子の例示的な量子効率のグラフである。
図2B図1の構成による受光素子の例示的な量子効率のグラフである。
図2C図1の構成による受光素子の例示的な量子効率のグラフである。
図3】本発明の一実施形態に係る受光素子の模式的な断面構成を示した図である。
図4】本発明の一実施形態に係る受光素子の模式的な断面構成を示した図である。
図5図3に示される受光素子の例示的な量子効率のグラフである。
図6図4に示される受光素子の例示的な量子効率のグラフである。
図7図4の受光素子におけるp型半導体層の平面構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る受光素子100の模式的な断面構成を示した図である。受光素子100は、埋め込み酸化膜(BOX層)102上に形成されたp型半導体層103と、p型半導体層103上に形成されたi型半導体層104と、i型半導体層104上に形成されたn型半導体層105とを備えており、p型半導体層102とn型半導体層104でi型半導体層103を挟み込んだpin構造を有している。受光素子100は、バルクのシリコン(Si)層101、BOX層102、およびBOX層102上のSOI(Silicon On Insulator)層からなる、SOI基板を利用して作製されている。
【0016】
p型半導体層103は、p型の不純物がドープされたシリコンからなる層である。p型の不純物として、例えばホウ素(B)を用いることができる。p型半導体層103は、BOX層102上のSOI層にp型不純物をドープすることによって形成されている。
【0017】
i型半導体層104は、不純物がドープされていないゲルマニウム(Ge)またはシリコンゲルマニウム(SiGe1-x)からなる層である。i型半導体層104は、p型半導体層103上にゲルマニウムまたはシリコンゲルマニウムの結晶層をエピタキシャル成長させることによって形成されている。
【0018】
n型半導体層105は、n型の不純物がドープされた半導体層であり、例えばシリコンまたはシリコンゲルマニウムから構成される。n型の不純物として、例えばリン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。n型半導体層105は、i型半導体層104の上面を覆うようにシリコン等の結晶層をエピタキシャル成長させ、更にこの半導体層にn型不純物をドープすることによって形成されている。なお、i型半導体層104の側面は、図1では垂直な面で描かれているが、実際にはi型半導体層104を構成する原子の結晶方位に依存した斜面をなしており、この斜面上にもシリコン結晶層が成長する。ただし、図1ではi型半導体層104の側面を覆っているシリコン結晶層の図示を省略している。
【0019】
受光素子100の表面は、絶縁膜(例えばSiO膜)106によって覆われている。絶縁膜106のうちn型半導体層105の上部には、n型半導体層105の表面に達する開口が設けられており、当該開口内に第1金属電極107が形成されている。また、絶縁膜106のうちn型半導体層105およびi型半導体層104から離れた部分におけるp型半導体層103の上部には、p型半導体層103の表面に達する開口が設けられており、当該開口内に第2金属電極108が形成されている。
【0020】
第1金属電極107は、受光素子100に電圧を印加する電極であり、通常、2~10V程度の電圧が印加される。第2金属電極108は、電気信号を取り出すための電極であり、光電変換により生じた微小電流を電圧信号に変換および増幅するためのトランスインピーダンスアンプ(不図示)に接続される。
【0021】
受光素子100は、n型半導体層105の上方向からの光が絶縁膜106とn型半導体層105を介してi型半導体層104へ入射するように構成されている。受光素子100を動作させる際、第1金属電極107と第2金属電極108を介してp型半導体層103とn型半導体層105間に逆バイアス電圧が印加され、これによりi型半導体層104に空乏層が形成される。i型半導体層104への入射光は、i型半導体層104に吸収され、これにより、i型半導体層104内にフォトキャリア(電子及びホール)が発生する。i型半導体層104で発生した電子とホールは、空乏層内の電界の作用を受けて、i型半導体層104からそれぞれn型半導体層105またはp型半導体層103へと移動する。こうして受光素子100に光電流が流れる。
【0022】
ここで、光吸収層であるi型半導体層104へ入射した光がi型半導体層104内を伝搬する距離が長いほど、より多くのフォトキャリアが発生し、受光素子100の量子効率(あるいは受光感度)は高くなる。受光素子100においては、i型半導体層104を含む多層膜において光が多重反射してi型半導体層104内を上下方向(図1における上下方向)に多数回往復して伝搬するため、i型半導体層104の膜厚が薄くても、実効的にi型半導体層104内の光の伝搬距離が長くなり、高い量子効率を実現することが可能である。
【0023】
一方、多層膜反射が生じることに起因して、受光素子100の量子効率には、光の波長に対する依存性や、多層膜を構成している各層の膜厚に対する依存性が存在する。受光素子100が光通信システムに組み込まれる場合、送信器に用いられる半導体レーザの発光波長は一般に温度依存性を有するので、送信される光信号の波長は送信器が置かれた環境の温度によって変動し得る。したがって、受光素子100の量子効率の波長依存性を低減することが望まれる。また、受光素子100の量子効率は、光吸収層となるi型半導体層104の膜厚に対する依存性が特に顕著となるので、その依存性を低減することも望まれる。
【0024】
図2A、2B、および2Cは、図1の構成による受光素子100の例示的な量子効率のグラフである。各図は、p型半導体層103(SOI層)の膜厚がそれぞれ、およそ200nm、およそ140nm、およそ90nmである受光素子100における量子効率の波長依存性を示し、各図の横軸は光の波長、縦軸は量子効率を表している。また、各図には、ゲルマニウムからなるi型半導体層104の複数の膜厚(680nm~780nm)に対するグラフが示されている。これらのグラフから、図1の構成による受光素子100は、量子効率の光波長に対する依存性およびi型半導体層104の膜厚に対する依存性が大きいことが見てとれる。なお、量子効率のこのような波長依存性は、多層膜反射における反射率が波長依存性波を有することによるものであり、多層膜の屈折率差が大きいほど、反射率の波長依存性、ひいては量子効率の波長依存性は大きくなる。受光素子100は屈折率差の大きな半導体層と誘電体層(102、106)を備えているため、比較的大きな量子効率の波長依存性を有している。
【0025】
図3および4は、上記の問題点を解決することが可能な一実施形態に係る受光素子200、300の模式的な断面構成を示した図である。図3および4において、図1の受光素子100を構成する要素と同様の要素については図1における符号と同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0026】
受光素子200および300は、複数の領域からなるp型半導体層103を備えている。具体的に、図3の受光素子200におけるp型半導体層103は、第1領域103aおよび第2領域103bからなり、図4の受光素子300におけるp型半導体層103は、第1領域103a、第2領域103b、および第3領域103cからなる。p型半導体層103の領域数は、2または3に限らず、4以上であってもよい。p型半導体層103の各領域103a、103b、103cは、それぞれ異なる膜厚を有するように構成されている。例えば、第1領域103aの膜厚は、前述の図2Aに対応するおよそ200nmであってよく、第2領域103bの膜厚は、前述の図2Bに対応するおよそ140nmであってよく、第3領域103cの膜厚は、前述の図2Cに対応するおよそ90nmであってよい。なお、これらの数値は単なる一例であり、各領域の膜厚値はこれらと異なる値であってもよいことはもちろんである。
【0027】
受光素子200および300において、複数の領域からなるp型半導体層103の上には、図1の受光素子100と同様のi型半導体層104が形成され、さらにその上に図1の受光素子100と同様のn型半導体層105が形成される。p型半導体層103の各領域の上におけるi型半導体層104の膜厚は互いに等しく、p型半導体層103の各領域の上におけるn型半導体層105の膜厚は互いに等しい。よって、受光素子200および300は、p型半導体層103の膜厚が領域ごとに異なっている点においてのみ、図1の受光素子100と相違している。
【0028】
なお、図3および4において、i型半導体層104とn型半導体層105との界面およびn型半導体層105と絶縁膜106との界面は、p型半導体層103の各領域の境目で段差を有するように描かれているが、実際にはi型半導体層104を成膜する工程およびn型半導体層105を成膜する工程において、i型半導体層104およびn型半導体層105は、その表面が滑らかになるように(あるいは段差で描かれている部分が斜面になるように)形成される。
【0029】
受光素子200および300は、p型半導体層103の膜厚が異なる領域ごとに、異なる受光感度特性(前述した量子効率の波長依存性および膜厚依存性)を有する。例えば、図4に示される受光素子300において、p型半導体層103の第1領域103a、第2領域103b、および第3領域103cの各膜厚がそれぞれおよそ200nm、およそ140nm、およそ90nmである場合、受光素子300全体のうち第1領域103aに対応する部分の各半導体層から構成される部分的な受光素子300aは、図2Aに示される受光感度特性を有し、第2領域103bに対応する部分的な受光素子300bは、図2Bに示される受光感度特性を有し、第3領域103cに対応する部分的な受光素子300bは、図2Cに示される受光感度特性を有する。したがって、受光素子300全体としての受光感度特性は、図2A、2B、および2Cの受光感度特性を平均化したものとなる。
【0030】
図5は、図3に示される受光素子200の例示的な量子効率のグラフである。図5は、p型半導体層103が膜厚およそ200nmの第1領域103aと膜厚およそ140nmの第2領域103bからなり、p型半導体層103全体のうちの第1領域103aと第2領域103bの割合(例えば平面視での面積比)がそれぞれ50%、50%であるような受光素子200における、量子効率の波長依存性を示す。このグラフから分かるように、p型半導体層103が膜厚の異なる2つの領域で構成されている受光素子200においては、図1の構成の受光素子100(図2Aのグラフを参照)と比べて、量子効率の波長依存性がなだらかになるとともに、i型半導体層104の膜厚に対する依存性も緩和している。
【0031】
図6は、図4に示される受光素子300の例示的な量子効率のグラフである。図6は、p型半導体層103が膜厚およそ200nmの第1領域103a、膜厚およそ140nmの第2領域103b、および膜厚およそ90nmの第3領域103cからなり、p型半導体層103全体のうちの第1領域103a、第2領域103b、および第3領域103cの割合(例えば平面視での面積比)がそれぞれ35%、20%、45%であるような受光素子300における、量子効率の波長依存性を示す。このように、p型半導体層103が膜厚の異なる3つの領域で構成されている受光素子300においては、量子効率が波長全域(図6に示される波長1200nmから1400nmの範囲)にわたってほぼフラットになり、またi型半導体層104の膜厚に対する依存性もほぼ解消されている。
【0032】
なお、図5のグラフにおける受光素子200、ならびに図6のグラフにおける受光素子300の構成に関する数値(すなわち、膜厚の数値および各領域の割合の数値)は、単なる一例に過ぎず、受光素子の所望の受光感度特性(例えば量子効率のフラットな波長依存性)を実現するために、それらの数値は適宜最適化することができる。
【0033】
図7は、図4の受光素子300におけるp型半導体層103の平面構成のいくつかの例を示す図である。p型半導体層103の第1領域103a、第2領域103b、および第3領域103cは、図7左に示されるように、扇形の形状を有するように構成されてもよいし、図7右に示されるように、同心円状に構成されるのであってもよい。前述したように、p型半導体層103の領域の数は任意である。p型半導体層103の各領域の平面形状は、図7に示されるような扇形や同心円以外のものであってもよい。
【0034】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
100 受光素子
101 バルクシリコン層
102 埋め込み酸化膜(BOX層)
103 p型半導体層
103a 第1領域
103b 第2領域
103c 第3領域
104 i型半導体層
105 n型半導体層
106 絶縁膜
107 第1金属電極
108 第2金属電極
200 受光素子
300 受光素子
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7