(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013061
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】移動体走行システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240124BHJP
【FI】
G05D1/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114978
(22)【出願日】2022-07-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】522182851
【氏名又は名称】阿蘇 武
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】阿蘇 武
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE09
5H301EE12
5H301FF05
5H301FF11
5H301FF15
5H301GG08
(57)【要約】
【課題】移動経路を変更しやすい技術を提供する。
【解決手段】移動体走行システムは、自走移動体と、自走移動体が走行する床部と、統括制御装置を有する。床部は、複数の赤外線発光体と発光体制御部を備える。自走移動体は、車輪、駆動部、赤外線検出部、発光体識別情報検出部、移動体制御部を備える。統括制御装置は、統括記録部と経路・速度制御部を備える。発光体制御部は統括制御装置からの指示にしたがって赤外線発光体を制御する。赤外線発光体が出力する赤外線は、当該赤外線発光体若しくは当該赤外線発光体を含む赤外線発光体のグループを識別するための発光体識別情報を示す信号を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走移動体と、前記自走移動体が走行する床部と、統括制御装置を有する移動体走行システムであって、
前記床部は、
前記自走移動体を誘導するために配列された複数の赤外線発光体と、
前記統括制御装置からの指示にしたがって、前記赤外線発光体を制御する発光体制御部と
を備え、
前記赤外線発光体が出力する赤外線は、当該赤外線発光体若しくは当該赤外線発光体を含む赤外線発光体のグループを識別するための発光体識別情報を示す信号を含んでおり、
前記自走移動体は、
車輪と、
前記車輪の方向と回転速度の制御のための駆動部と、
前記赤外線発光体から出力される赤外線を検出する赤外線検出部と、
検出した赤外線に含まれている発光体識別情報を検出する発光体識別情報検出部と、
前記統括制御装置からの指示と、検出した赤外線にしたがって前記駆動部を制御する移動体制御部と
を備え、
前記自走移動体は、前記発光体識別情報を前記統括制御装置に送信し、
前記統括制御装置は、
前記赤外線発光体の位置情報と前記発光体識別情報とを対応付けて記録し、前記自走移動体の移動経路情報を記録する統括記録部と、
前記自走移動体から受信する発光体識別情報と前記移動経路情報にしたがって、発光する赤外線発光体と発光しない赤外線発光体を指定する指示である経路指示を前記床部に送信するとともに、前記車輪の回転速度に関する指示である速度指示を前記自走移動体に送信する経路・速度制御部と
を備える
ことを特徴とする移動体走行システム。
【請求項2】
請求項1記載の移動体走行システムであって、
前記床部は、複数の床ユニットで構成されており、
各床ユニットは、
前記の複数の赤外線発光体の一部と、
前記統括制御装置からの指示にしたがって、当該床ユニット内の前記赤外線発光体を制御するユニット制御部と
を有し、
前記発光体制御部は、複数の前記ユニット制御部で構成されている
ことを特徴とする移動体走行システム。
【請求項3】
請求項2記載の移動体走行システムであって、
前記床ユニットは、他の床ユニットと結合させることにより、配線同士が接続される
ことを特徴とする移動体走行システム。
【請求項4】
請求項1記載の移動体走行システムであって、
前記経路・速度制御部は、前記自走移動体の現在位置と移動経路上の進行方向のあらかじめ定めた範囲の赤外線発光体を発光させる
ことを特徴とする移動体走行システム。
【請求項5】
請求項4記載の移動体走行システムであって、
前記自走移動体は、発光体識別情報と一緒に自走移動体の識別情報である移動体識別情報も前記統括制御装置に送信し、
前記統括記録部は、複数の自走移動体の移動経路情報を、移動体識別情報に対応させて記録しており、
前記経路・速度制御部は、自走移動体ごとの経路指示を前記床部に送信するとともに、速度指示を自走移動体ごとに送信する
ことを特徴とする移動体走行システム。
【請求項6】
請求項1記載の移動体走行システムであって、
前記床部は、
あらかじめ定めた位置をあらかじめ定めた方向に走行する自走移動体に停止要求をするために、前記統括制御装置に信号識別情報と要求情報を送信する信号機も備え、
前記統括記録部は、前記信号機の位置情報と方向情報と前記信号識別情報とを対応付けて記録しており、
前記経路・速度制御部は、受信した前記信号識別情報と前記要求情報を、前記自走移動体の現在位置と移動経路と対比し、前記停止要求に対応するための速度指示を前記自走移動体に送信する
ことを特徴とする移動体走行システム。
【請求項7】
請求項1記載の移動体走行システムであって、
前記統括制御装置は、あらかじめ定めた位置をあらかじめ定めた方向に走行する自走移動体に停止要求をするために、前記経路・速度制御部に信号識別情報と要求情報を送信する信号機制御部も備え、
前記統括記録部は、信号機の位置情報と方向情報と前記信号識別情報とを対応付けて記録しており、
前記経路・速度制御部は、受信した前記信号識別情報と前記要求情報を、前記自走移動体の現在位置と移動経路と対比し、前記停止要求に対応するための速度指示を前記自走移動体に送信する
ことを特徴とする移動体走行システム。
【請求項8】
請求項1記載の移動体走行システムであって、
前記統括制御装置は、移動経路情報を取得し、前記統括記録部に記録する移動経路情報入力部
も備えることを特徴とする移動体走行システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の移動体走行システムであって、
前記自走移動体は、模型自動車であり、
前記赤外線検出部は、前記自走移動体が走行する面に平行かつ進行方向と垂直な方向に配列された複数の赤外線センサで構成されており、
前記移動体制御部は、複数の赤外線センサが検出する強度に基づいて、発光している赤外線発光体が前記自走移動体の進行方向の中心線上に位置するように前記駆動部を制御する
ことを特徴とする移動体走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動部を有する自走移動体と、当該自走移動体が走行する床部を有する移動体走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動部を有する自走移動体としては、倉庫や工場などで無人で走行する搬送用などの無人走行車と、模型自動車が代表的である。無人走行車の誘導方法に関する従来技術として、特許文献1~4などが知られている。特許文献5には、走行速度可変の自走可能な搬送用走行体を作業区間に進入させるときの搬送用走行体の走行制御方法に関する技術が示されている。また、模型自動車に関する技術として、特許文献6~8などには自走体を用いたゲーム装置において自走体の位置を検出する技術などが示されている。模型自動車を誘導する技術としては、特許文献9,10などが知られている。
【0003】
上述の従来技術の多くは、床に誘導するための手段を配置しておき、その手段を利用して走行する。例えば、特許文献4の要約には、『四輪で走行並びにステアリングを行う自動搬送台車において、走行経路1を検出するセンサ3A,3Bを車体2の前部及び後部にそれぞれ設置し、前部センサ3Aによる検出信号で前輪4のステアリングを行い、後部センサ3Bによる検出信号で後輪5のステアリングを行う。』と記載されている。また、特許文献10では、段落0038に『可動金具52は側面視横U字形状をなすU字部521とU字部521の上板から上方に延在する突出板部522を備える。可動金具52は例えば、細長い平板状の金属板を折り曲げることにより形成する。可動金具52は強磁性体材料、例えば鉄板で構成する。』、段落0041に『突出板部522に近づいた車両4の磁石464 は突出板部522 に吸引される。それによって、タイロッド462が左右方向に移動し、前輪461が操舵される。その結果、車両4は交差点を右折又は左折する。』のように記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-24606号公報
【特許文献2】特開平2-105206号公報
【特許文献3】特開平3-129409号公報
【特許文献4】特開平4-299711号公報
【特許文献5】特開2012-160105号公報
【特許文献6】特開2002-306831号公報
【特許文献7】特開2002-306834号公報
【特許文献8】特開2003-24618号公報
【特許文献9】特開2021-41265号公報
【特許文献10】特開2021-180764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず、倉庫や工場などで無人で走行する無人走行車もしくは搬送用走行体と、模型自動車に共通する点を説明する。床に配置された誘導用の手段が固定されている場合、移動経路を変更することが難しい。例えば、特許文献10では移動経路を変更する手段も示されているが、突出板部を機械的に動かさなければ移動経路を変更できない。そこで、本発明の第1の目的は、自走移動体の分野において、移動経路を変更しやすい技術を提供することとする。
【0006】
次に、倉庫や工場などで無人で走行する無人走行車と、模型自動車との相違点を説明する。無人走行車には縮尺という概念はなく、実環境で安全な動きが望まれる。一方、模型自動車の場合は、人と分離された場所で走行することが多いので、実際の自動車に近い動きの方が望ましいという要求がある。つまり、模型自動車の縮尺と対比して自然な速度で移動することが求められる。例えば、縮尺が1/100であれば、100mm/秒(0.36km/時)で移動すれば時速36kmに相当し、300mm/秒(1.08km/時)で移動すれば時速108kmに相当する。しかし、特許文献10のように磁石を用いてステアリングを操作する方法の場合、磁性体と磁石との間隔などによって磁力が変化するため、操作する力自体が間隔に依存してしまい、模型自動車が移動経路から外れてしまう問題が生じやすい。そこで、本発明の第2の目的は、模型自動車の分野において、模型自動車が移動経路から外れにくい技術を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の移動体走行システムは、自走移動体と、自走移動体が走行する床部と、統括制御装置を有する。床部は、複数の赤外線発光体と発光体制御部を備える。自走移動体は、車輪、駆動部、赤外線検出部、発光体識別情報検出部、移動体制御部を備える。統括制御装置は、統括記録部と経路・速度制御部を備える。複数の赤外線発光体は、自走移動体を誘導するために配列される。発光体制御部は、統括制御装置からの指示にしたがって赤外線発光体を制御する。また、赤外線発光体が出力する赤外線は、当該赤外線発光体若しくは当該赤外線発光体を含む赤外線発光体のグループを識別するための発光体識別情報を示す信号を含んでいる。駆動部は、車輪の方向と回転速度の制御のために用いられる。赤外線検出部は、赤外線発光体から出力される赤外線を検出する。発光体識別情報検出部は、検出した赤外線に含まれている発光体識別情報を検出する。自走移動体は、発光体識別情報を統括制御装置に送信する。移動体制御部は、統括制御装置からの指示と、検出した赤外線にしたがって駆動部を制御する。統括記録部は、赤外線発光体の位置情報と発光体識別情報とを対応付けて記録し、自走移動体の移動経路情報を記録する。経路・速度制御部は、自走移動体から受信する発光体識別情報と移動経路情報にしたがって、発光する赤外線発光体と発光しない赤外線発光体を指定する指示である経路指示を床部に送信するとともに、車輪の回転速度に関する指示である速度指示を自走移動体に送信する。
【0008】
本発明の第2の移動体走行システムでは、自走移動体は模型自動車である。第2の移動体走行システムは、第1の移動体走行システムに加え、以下の特徴を有する。赤外線検出部は、自走移動体が走行する面に平行かつ進行方向と垂直な方向に配列された複数の赤外線センサで構成されている。移動体制御部は、複数の赤外線センサが検出する強度に基づいて、発光している赤外線発光体が自走移動体の進行方向の中心線上に位置するように駆動部を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の移動体走行システムによれば、床部は複数の赤外線発光体と発光体制御部を備え、発光体制御部は統括制御装置からの指示にしたがって赤外線発光体を制御する。よって、床部に配置された誘導するための手段を機械的に動かすことなく移動経路を変更できる。また、赤外線発光体が出力する赤外線は、当該赤外線発光体若しくは当該赤外線発光体を含む赤外線発光体のグループを識別するための発光体識別情報を示す信号を含んでいる。よって、自走移動体は現在位置の情報を正確に取得できる。したがって、自走移動体の移動経路を変更しやすい。
【0010】
本発明の第2の移動体走行システムによれば、第1の移動体走行システムに加え、赤外線検出部は、自走移動体が走行する面に平行かつ進行方向と垂直な方向に配列された複数の赤外線センサで構成されている。また、移動体制御部は、複数の赤外線センサが検出する強度に基づいて、発光している赤外線発光体が自走移動体の進行方向の中心線上に位置するように駆動部を制御する。駆動部による車輪の方向と回転速度を操作する力は、赤外線発光体と赤外線検出部との間隔には依存しないので、模型自動車を移動経路から外れにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施例の移動体走行システムの構成例を示す図。
【
図2】本実施例の移動体走行システムの処理フローの例を示す図。
【
図5】床部を構成する床ユニットの第1の例を示す図。
【
図6】床部を構成する床ユニットの第2の例を示す図。
【
図7】床部を構成する床ユニットの第3の例を示す図。
【
図9】車線を変更可能な床ユニットの第1の例を示す図。
【
図10】車線を変更可能な床ユニットの第2の例を示す図。
【
図11】2つの進行方向が交差する床ユニットの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0013】
図1に本実施例の移動体走行システムの構成例を示す。
図2に本実施例の移動体走行システムの処理フローの例を示す。
図3は自走移動体と床部の関係を示す側面図、
図4は自走移動体と床部の関係を示す平面図である。移動体走行システム10は、自走移動体100と、自走移動体100が走行する床部200と、統括制御装置300を有する。以下の説明では、M,N,K,P,Qは2以上の整数、mは1以上M以下の整数、nは1以上N以下の整数、kは1以上K以下の整数、pは1以上P以下の整数、qは1以上Q以下の整数とする。
【0014】
床部200は、複数の赤外線発光体210
1,…,210
Mと発光体制御部220と床面230を備える。発光体制御部220は、床部200の通信機能も含んでおり、統括制御装置300の経路・速度制御部310との通信機能を行う。床部200は、信号機250
1,…,250
Nも備えてもよい。信号機250
nの詳細は後述する。床面230は、赤外線発光体210
1,…,210
Mを保護すると共に、赤外線発光体210
1,…,210
Mが出力した赤外線を自走移動体100側に透過させるような材質、もしくは構造である。複数の赤外線発光体210
1,…,210
Mは、自走移動体100を誘導するために配列される。
図3に示すように、赤外線発光体210
1,…,210
Mは、自走移動体100の移動経路となり得る位置の床部200に配列されている。床部200は、実際の床に赤外線発光体210
1,…,210
Mと発光体制御部220とを備えさせたものでもよい。模型自動車用であれば、模型の道路を床部200としてもよい。
【0015】
統括制御装置300の経路・速度制御部310は、発光する赤外線発光体と発光しない赤外線発光体を指定する指示である経路指示を床部200に送信する(S310)。統括制御装置300の詳細は、後述する。発光体制御部220は、統括制御装置300からの指示にしたがって赤外線発光体2101,…,210Mを制御する(S220)。発光体制御部220は、点灯する赤外線発光体と消灯する赤外線発光体とを統括制御装置300からの指示にしたがって決め、制御する。赤外線発光体2101,…,210Mには、赤外線LEDなどを利用すればよい。隣り合う赤外線発光体同士の間隔は、後述する自走移動体100の赤外線検出部130の検出可能な範囲を考慮して決めればよい。
【0016】
赤外線発光体2101,…,210Mが出力する赤外線には、発光体識別情報を示す信号が含まれている。発光体識別情報は、例えば、100μ秒程度で1ビットを送信できるような変調方式を用いて、赤外線発光体210mの発光を変調することで伝送すればよい。変調方式には、例えば、パルス幅変調方式もしくはパルス同士の間隔で“0”,“1”を伝える方式などを用いればよい。パルス同士の間隔で“0”,“1”を伝える方式の場合は、赤外線発光体210mが点灯する時間を短くできるという長所がある(例えば、カメラなどで模型自動車を撮影したときに、撮影画像に赤外線が映り込むリスクを低くできる)。100μ秒で1ビットの伝送であれば、5m秒で50ビットを伝送できる。赤外線検出部130は、赤外線発光体210mから出力される赤外線を検出する(S130)。例えば、5m秒分の赤外線を赤外線検出部130が確実に検出できる長さの赤外線発光体210mに共通の発光体識別情報を出力させれば、発光体識別情報検出部140は、発光体識別情報を検出できる。そして、自走移動体100は、統括制御装置300に発光体識別情報を送信できる(S140)。
【0017】
発光体識別情報は、赤外線発光体210m若しくは赤外線発光体210mを含む赤外線発光体のグループを識別するための情報である。つまり、赤外線発光体210m単体ごとに異なる発光体識別情報としてもよいし、いくつかの赤外線発光体210mで共通の発光体識別情報としてもよい。どの程度の長さの赤外線発光体210mに共通の発光体識別情報を出力させるかは、情報伝達に必要な時間と、位置を特定する際の精度とを考慮して決めればよい。例えば、情報伝達に5m秒が必要であり、最高速度が200mm/秒の自走移動体100の場合であれば、情報伝達に必要な長さは1.0mm以上となる。一方、自走移動体100の位置を特定する際の精度が5mm程度で十分であれば、位置を特定する際の精度に基づいて共通の発光体識別情報を出力する赤外線発光体の数を決めればよい。
【0018】
自走移動体100は、車輪110、駆動部120、赤外線検出部130、発光体識別情報検出部140、移動体制御部150を備える。自走移動体100は、通信機能も有している。駆動部120は、車輪110の方向と回転速度の制御のために用いられる。駆動部120は、少なくとも2つのアクチュエータ(モータなど)を含めばよい。1つは前輪もしくは後輪だけ、または前輪と後輪の両方の方向を動かすアクチュエータである。もう1つは、前輪もしくは後輪だけ、または前輪と後輪の両方の回転速度を調整するためのアクチュエータである。上述の駆動のために3つ以上のアクチュエータを含んでもよい。
【0019】
赤外線検出部130は、赤外線発光体210
1,…,210
Mから出力される赤外線を検出する(S130)。
図4に示すように、赤外線検出部130は、自走移動体100が走行する面に平行かつ進行方向と垂直な方向に配列された複数の赤外線センサ135
1,…,135
6で構成されている。
図4では6つの赤外線センサ135
1,…,135
6で構成されているが、他の数でもよい。また、「垂直な方向に配列」とは、赤外線センサ135
1,…,135
6が直線状に配列され、その直線が進行方向と垂直な方向という意味に限定されるものではない。「垂直な方向に配列」とは、進行方向を示す線からの距離が異なるように、赤外線センサ135
1,…,135
6を配列する配列も含む意味である。例えば、赤外線センサ135
1,…,135
3が作る直線と、赤外線センサ135
4,…,135
6が作る直線で“く”の字となるように配列してもよい。もしくは、赤外線センサ135
1,…,135
6をジグザグに配列してもよい。移動体制御部150は、複数の赤外線センサ135
1,…,135
6が検出する強度に基づいて、発光している赤外線発光体210
1,…,210
Mが自走移動体100の進行方向の中心線上に位置するように駆動部120を制御する(S150)。ステップS130とステップS150の繰り返し処理(S151)は、できるだけ短い周期で繰り返すことが望ましい。このような構成の場合、駆動部120による車輪110の方向と回転速度を操作する力は、赤外線発光体210
1,…,210
Mと赤外線検出部130との間隔には依存しない。よって、特許文献10のような磁石を利用した方式に比べ、自走移動体100が模型自動車のように大きさに比べて高速で走行する場合であっても、移動経路から外れにくくできる。移動体制御部150は、ステップS150において、統括制御装置300からの車輪110の回転速度に関する指示である速度指示と、検出した赤外線にしたがって駆動部120を制御する。
【0020】
また、上述した通り、発光体識別情報検出部140は、検出した赤外線に含まれている発光体識別情報を検出する。そして、自走移動体100は、発光体識別情報を統括制御装置300に送信する(S140)。なお、複数の自走移動体1001,…,100Pがある場合は、自走移動体100pは、発光体識別情報と一緒に自走移動体100pの識別情報である移動体識別情報も統括制御装置300に送信する。「複数の自走移動体がある場合」とは、同時に走行させる場合だけでなく、移動体識別情報を付与されている複数の自走移動体1001,…,100Pの中から1つ以上を選択して走行させる場合も含む。
【0021】
統括制御装置300は、統括記録部390と経路・速度制御部310を備える。経路・速度制御部310は、統括制御装置300の通信機能も含んでいる。また、統括制御装置300は、移動経路情報入力部320も備えてもよい。統括記録部390は、赤外線発光体2101,…,210Mの位置情報と発光体識別情報とを対応付けて記録するとともに、自走移動体100の移動経路情報を記録する。「赤外線発光体2101,…,210Mの位置情報」とは、赤外線発光体2101,…,210Mの配列(どの赤外線発光体が隣に存在するか、若しくは移動経路として接続できる関係にあるか)に関する情報である。さらに、地図上の座標のような実際の位置と対応させた情報を含んでもよい。「移動経路情報」は、例えば、発光体識別情報の順番を示す情報とすればよい。「移動経路情報」は、始点から終点までの発光体識別情報の順番を示す情報でもよいし、ループ状の発光体識別情報の順番を示す情報でもよい。「移動経路情報」には自走移動体100の速度に関する情報も含んでもよい。複数の自走移動体1001,…,100Pの移動経路情報を記録する場合は、統括記録部390は、複数の自走移動体1001,…,100Pの移動経路情報を、自走移動体100pの識別情報である移動体識別情報に対応させて記録する。統括制御装置300の経路・速度制御部310と自走移動体100との通信には、Bluetooth(登録商標)、WiFi(登録商標)のような近距離の無線通信技術を利用すればよい。また、統括制御装置300の経路・速度制御部310と床部200の発光体制御部220との通信には、近距離の無線通信技術を利用してもよいし、有線の通信技術を利用してもよい。
【0022】
経路・速度制御部310は、自走移動体100から受信する発光体識別情報と移動経路情報にしたがって、発光する赤外線発光体と発光しない赤外線発光体を指定する指示である経路指示を床部200に送信するとともに、車輪110の回転速度に関する指示である速度指示を自走移動体100に送信する(S310)。複数の自走移動体1001,…,100Pが同時に走行している場合は、経路・速度制御部310は、それぞれの自走移動体100pから受信する発光体識別情報と移動体識別情報と移動経路情報にしたがって、自走移動体100pごとの経路指示を床部200に送信するとともに、速度指示を自走移動体100pごとに送信する(S310)。経路・速度制御部310は、自走移動体100pの現在位置と移動経路上の進行方向のあらかじめ定めた範囲の赤外線発光体210mを発光させればよい。「あらかじめ定めた範囲の赤外線発光体」とは、自走移動体100pの赤外線検出部130が検出する可能性がある範囲の赤外線発光体とすれば十分である。1つの自走移動体100pに対して、限定的な範囲の赤外線発光体だけを発光させるので、複数の自走移動体1001,…,100Pを同時に走行させやすい。
【0023】
統括制御装置300の移動経路情報入力部320は、移動経路情報を取得し、統括記録部390に記録する。複数の自走移動体1001,…,100Pがある場合は、移動経路情報入力部320は、自走移動体100pの識別情報である移動体識別情報と移動経路情報を取得し、統括記録部390に記録する。取得する移動経路情報は、既にある移動経路情報の一部を書き換える情報でもよいし、完全に新しい情報でもよい。
【0024】
図5に床部を構成する床ユニットの第1の例を、
図6に床部を構成する床ユニットの第2の例を、
図7に床部を構成する床ユニットの第3の例を示す。
図8は発光体制御部220の構成例を示す図である。
図9は車線を変更可能な床ユニットの第1の例、
図10は車線を変更可能な床ユニットの第2の例を示す図である。
図11は2つの進行方向が交差する床ユニットの例を示す図である。
【0025】
床部200は、複数の床ユニット205
1,…,205
Kで構成してもよい。
図5の例では、床ユニット205
kは、複数の赤外線発光体210
1,…,210
Mの一部である赤外線発光体210
k,1,…,210
k,Qと、ユニット制御部225
kと、配線245
kを有する。ユニット制御部225
kは、統括制御装置300からの指示にしたがって、床ユニット205
k内の赤外線発光体210
k,1,…,210
k,Qを制御する。配線245
kは、ユニット制御部225
kと赤外線発光体210
k,1,…,210
k,Qへの電力の供給と、ユニット制御部225
kと統括制御装置300との通信に利用される。
図5~7では、配線245
k,…,245
k+5は1本の線で示しているが、電力共有用、通信用として必要な数の心線で構成される。
【0026】
図8に示すように、発光体制御部220は、複数のユニット制御部225
1,…,225
Kで構成すればよい。それぞれのユニット制御部225
kは、同じ床ユニット205
kに含まれる赤外線発光体210
k,1,…,210
k,Qの発光体識別情報を記録しておく。そして、ユニット制御部225
kは、統括制御装置300から発光体識別情報を指定した経路指示を受信した際に、同じ床ユニット205
kに含まれる赤外線発光体210
k,1,…,210
k,Qの発光体識別情報が含まれているかを判断し、該当する赤外線発光体210
k,1,…,210
k,Qを制御すればよい。このような処理であれば、ユニット制御部225
1,…,225
K全体を統括するような制御部は不要である。
【0027】
図5では、床ユニット205
k内の赤外線発光体210
k,1,…,210
k,Qと、床ユニット205
k+1内の赤外線発光体210
k+1,1,…,210
k+1,Qにそれぞれ符号を付している。赤外線発光体210
k,1,…,210
k,Qで赤外線発光体列215
kが構成され、赤外線発光体210
k+1,1,…,210
k+1,Qで赤外線発光体列215
k+1が構成される。
図6,7,9~11では、個々の赤外線発光体には符号を付すのを省略する。説明のため、
図6,7では赤外線発光体全体を赤外線発光体列215
k1,…,215
k+5と示している。
図9~11では赤外線発光体を複数のグループに分け、それぞれのグループを赤外線発光体列215
k+6,1,…,215
k+6,4,215
k+7,1,…,215
k+7,4,215
k+8,1,215
k+8,2と示している。また、
図7,9~11ではユニット制御部は省略している。
図9~11では配線も省略している。
【0028】
床ユニット2051,…,205Kは、他の床ユニットと結合させることにより、配線2451,…,245K同士が接続される構造とすればよい。統括制御装置300とユニット制御部2251,…,225Kとの通信用の配線は、ネットワークトポロジーはバス配線接続とすればよい。プロトコルとしては、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)などを利用すればよい。ただし、他の床ユニットと結合させることにより、配線同士が接続される構造にしやすいネットワークトポロジーとプロトコルであれば、上述の例に限定する必要はない。このような床ユニットを用いれば、利用者自身が床ユニットを並べることで自由に移動経路を設定できる。
【0029】
図5の例では、赤外線発光体210
k,1,…,210
k,Qと赤外線発光体210
k+1,1,…,210
k+1,Qは、直線状に配置されている。経路・速度制御部310は経路指示を床部200に送信するので、ユニット制御部225
k,225
k+1は経路指示にしたがって、赤外線発光体210
k,1,…,210
k,Qと赤外線発光体210
k+1,1,…,210
k+1,Qを制御する。
図6の例では、赤外線発光体215
k+2が分岐している。自走移動体100が右側から左側に進むことを想定する。経路・速度制御部310は、自走移動体100を誘導したい方向の赤外線発光体215
k+2を発光させるようにユニット制御部225
k+2を制御すればよい。
【0030】
図7の例では、床ユニット205
k,…,205
k+5が接続された様子が示されている。床ユニット205
k+2と床ユニット205
k+5は分岐を含んでいる。したがって、経路・速度制御部310は、赤外線発光体列215
k,…,210
k+5の発光を制御することによって、床ユニット205
kに右側から走行してきた自走移動体100を、
図7の(1)~(4)のいずれの方向にでも誘導できる。
【0031】
図9と
図10は、車線変更が可能な床ユニットの例である。床ユニット205
k+6は、赤外線発光体列215
k+6,1,…,215
k+6,4を有する。赤外線発光体列215
k+6,1と215
k+6,2が車線の位置に配置されており、赤外線発光体列215
k+6,3と215
k+6,4は車線を変更する際に利用する経路である。床ユニット205
k+7は、赤外線発光体列215
k+7,1,…,215
k+7,4を有する。赤外線発光体列215
k+7,1と215
k+7,4が車線の位置に配置されており、赤外線発光体列215
k+7,2と215
k+7,3は車線と車線の間の経路である。
図9と
図10の中心部分が黒く塗りつぶされた円は発光する赤外線発光体の例であり、黒く塗りつぶしていない円は発光しない赤外線発光体の例である。発光するタイミングは、自走移動体100に位置に応じて制御すればよい。自走移動体100は、中心部分が黒く塗りつぶされた円が示す経路で誘導されるので、車線を変更できる。
図9の床ユニット205
k+6の場合は、車線変更できる位置は固定である。
図10の床ユニット205
k+7の場合は床ユニット205
k+7内のどの位置で車線変更してもよいし、床ユニット205
k+7と同じ床ユニットを複数接続すれば、車線変更を自由に制御できるようになる。ただし、自由度が増すほど制御プログラムへの負荷は大きくなる。したがって、用途に合わせて適宜選択すればよい。床部200は、複数の赤外線発光体210
1,…,210
Mと発光体制御部220を有する構成なので、
図6,7に示した分岐だけでなく
図9,10に示した車線変更も可能である。特許文献10に示された可動金具では機械的な操作が必要だが、移動体走行システム10であれば、電気的な制御だけで誘導できるので、複雑な制御が可能になる。
【0032】
図11の床ユニット205
k+8は、赤外線発光体列215
k+8,1,215
k+8,2と、信号機250
n+1,250
n+2を有する。赤外線発光体列215
k+8,1は右側から左側に進む自走移動体100を誘導し、赤外線発光体列215
k+8,2は下側から上側に進む自走移動体100を誘導する。信号機250
n+1は、右側から左側に進む自走移動体100に対する停止の要求と走行の許可を行う。信号機250
n+2は、下側から上側に進む自走移動体100に対する停止の要求と走行の許可を行う。なお、「走行の許可」は、「停止の要求」をしていないときと定義してもよい。
【0033】
例えば、信号機250nは、あらかじめ定めた位置をあらかじめ定めた方向に走行する自走移動体100に停止要求をするために、統括制御装置300に信号識別情報と要求情報を送信するとともに、信号機250nの表示を制御する(250n)。信号機250nは、あらかじめ定めたタイムスケジュールに従って信号識別情報と要求情報を送信し、信号機250nの表示を制御すればよい。「信号機250nの表示」とは、床部200に備えられている信号機250nが示す表示を意味している。例えば、自走移動体100が模型自動車の場合、信号機2501,…,250Nも模型であり、利用者から見たときに模型自動車の動きと連動するように見せるためである。なお、倉庫内の無人走行車の場合は、信号機250nの表示は必ずしも変更しなくてもよい。信号機2501,…,250Nと統括制御装置300との通信は、配線2451,…,245Kを用いた有線通信でもよいし、近距離用の無線通信でもよい。信号機2501,…,250Nを有する場合は、統括記録部390は、信号機2501,…,250Nの位置情報と方向情報と信号識別情報とを対応付けて記録する。経路・速度制御部310は、ステップS310において、受信した信号識別情報と要求情報を、自走移動体100の現在位置と移動経路と対比し、停止要求に対応するための速度指示を自走移動体100に送信する処理も行う(S310)。
【0034】
上述の説明は、信号機2501,…,250N自体が、統括制御装置300から独立に動作する例である。次の例では、統括制御装置300が、信号機2501,…,250Nの制御も行う。この例では、統括制御装置300は、信号機制御部330も備える。信号機制御部330は、あらかじめ定めた位置をあらかじめ定めた方向に走行する自走移動体100に停止要求をするために、経路・速度制御部310に信号識別情報と要求情報を送信するとともに、信号機2501,…,250Nの表示を制御する(S330)。信号機制御部330は、あらかじめ定めたタイムスケジュールに従って信号識別情報と要求情報を送信し、信号機2501,…,250Nに表示を制御するための信号を送信すればよい。なお、倉庫内の無人走行車の場合は、信号機250nの表示は必ずしも変更しなくてもよい。この場合は、床部200に実際の信号機2501,…,250Nがない状態で、仮想的に存在させてもよい。あらかじめ定めた位置をあらかじめ定めた方向に走行する自走移動体100に停止要求を送信する場合は、信号機2501,…,250Nが実際に存在するか仮想的に存在するかに関わらず、統括記録部390は、信号機2501,…,250Nの位置情報と方向情報と信号識別情報を対応付けて記録する。経路・速度制御部310は、ステップS310において、受信した信号識別情報と要求情報を、自走移動体100の現在位置と移動経路と対比し、停止要求に対応するための速度指示を自走移動体100に送信する処理も行う(S310)。
【0035】
移動体走行システム10によれば、床部200は複数の赤外線発光体2101,…,210Mと発光体制御部220を備え、発光体制御部220は統括制御装置300からの指示にしたがって赤外線発光体2101,…,210Mを制御する。よって、床部200に配置された誘導するための手段を機械的に動かすことなく移動経路を変更できる。また、赤外線発光体2101,…,210Mが出力する赤外線は、当該赤外線発光体若しくは当該赤外線発光体を含む赤外線発光体のグループを識別するための発光体識別情報を示す信号を含んでいる。よって、自走移動体100は現在位置の情報を正確に取得できる。したがって、自走移動体100の移動経路を変更しやすい。