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特開2024-13063建築用パネル取付金具用ボルトの回転防止具及び建築用パネルの取付構造
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  • 特開-建築用パネル取付金具用ボルトの回転防止具及び建築用パネルの取付構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013063
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】建築用パネル取付金具用ボルトの回転防止具及び建築用パネルの取付構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20240124BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240124BHJP
   E04B 2/94 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
E04F13/08 101B
E04B2/56 631C
E04B2/94
E04B2/56 631H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114983
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000135335
【氏名又は名称】株式会社ノザワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邑橋 将男
(72)【発明者】
【氏名】藤井 博文
【テーマコード(参考)】
2E002
2E110
【Fターム(参考)】
2E002EA01
2E002EA02
2E002FA02
2E002FB02
2E002JC03
2E002JD01
2E002NA01
2E002NB06
2E002NC01
2E002PA04
2E002PA08
2E002RB01
2E110AA42
2E110AA50
2E110AB04
2E110CA09
2E110CC02
2E110CC03
2E110CC04
2E110CC06
2E110CC14
2E110DC12
2E110GB01Z
2E110GB02Z
2E110GB03Z
2E110GB23W
2E110GB42Z
(57)【要約】
【課題】 現場での施工性がよく、建築用パネルの取付後に取付金具用ボルトの回転を適切に防止することができる回転防止具を提供する。
【解決手段】 所定の厚みを有し、取付金具用ボルトの頭部の平行な2辺と係合する保持辺を具備した開口部を有する本体部と、本体部の片面から開口部の厚み方向に突出する立上がり部と、立上がり部に設けられた係止部と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みを有し、取付金具用ボルトの頭部の平行な2辺と係合する保持辺を具備した開口部を有する本体部と、
前記本体部の片面から前記開口部の厚み方向に突出する立上がり部と、
前記立上がり部に設けられた係止部と、を備えている、
建築用パネル取付金具用ボルトの回転防止具。
【請求項2】
所定の厚みを有し、取付金具用ボルトの頭部の平行な2辺と係合する保持辺を具備した開口部を有する本体部材と、
前記本体部材の片面から前記開口部の厚み方向に突出する立上がり部を有する係止部材と、
前記係止部材の前記立上がり部に設けられた係止部と、を備えている、
建築用パネル取付金具用ボルトの回転防止具。
【請求項3】
前記開口部の前記保持辺と直交する位置から該開口部の空間に向けて突出して前記取付金具用ボルトで保持する保持部を有している、
請求項1又は2に記載の建築用パネル取付金具用ボルトの回転防止具。
【請求項4】
前記保持部は、前記開口部の対向する位置にそれぞれ備えられている、
請求項3に記載の建築用パネル取付金具用ボルトの回転防止具。
【請求項5】
前記開口部は、前記本体部又は前記本体部材の前記立上がり部の位置とは異なる位置で該本体部又は該本体部材の外周位置まで開口している、
請求項1又は2に記載の建築用パネル取付金具用ボルトの回転防止具。
【請求項6】
所定の厚みを有し、取付金具用ボルトの頭部の平行な2辺と係合する保持辺を具備した開口部を有する本体部と、
前記本体部から前記開口部の厚み方向に突出する立上がり部と、
前記立上がり部に設けられた係止部と、を備えた回転防止具を建築用パネルの前記取付金具用ボルトの頭部に取り付け、
前記係止部に係止した連結部材の端部を固定部に固定して前記回転防止具の回転を防止するようにした、
建築用パネルの取付構造。
【請求項7】
前記回転防止具を複数の前記取付金具用ボルトの頭部にそれぞれ取り付け、
複数の前記回転防止具の前記係止部に係止した前記連結部材でそれぞれの係止部を連結して前記回転防止具の回転を防止するようにした、
請求項6に記載の建築用パネルの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、建築用パネルに取付金具を固定する取付金具用ボルトの回転防止具と、それを用いた建築用パネルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築用パネルは、内面に取付金具がボルトによって取り付けられ、建築用パネルと取付金具の間に建物躯体の下地材を挟持することで施工されている。建築用パネルには、例えば、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート板、プレキャストコンクリート板などがあるが、以下の説明では、押出成形セメント板を例に説明する。
【0003】
押出成形セメント板を建物駆体の下地材に取り付ける場合、押出成形セメント板の裏面側に、中空部に至るボルト挿入孔を開ける。そして、中空部に角ナットを挿入し、取付金具であるZクリップをパネル裏面側からボルト挿入孔に挿入した取付金具用ボルトを角ナットに螺合して取り付けられる。そして、押出成形セメント板は、Zクリップにより下地材を挟持して下地材に固定される。このとき、押出成形セメント板にZクリップを取り付ける取付金具用ボルトは所定のトルクで締め付けられる。所定のトルクで締め付けられた取付金具用ボルトは、通常の状態において緩む可能性は少ない。
【0004】
なお、成形板の取付金具が緩むことを防止するための先行技術として、例えば、取付金具の両側部に回転防止片を設け、この回転防止片を下地アングルの端部に臨ませることにより、取付金具がボルト回りで回転することを防止したものがある(例えば、特許文献1参照)。この構造では、成形板を取り付ける取付金具を専用のものとする必要があるとともに、成形板の施工後に取り付けることができない。
【0005】
また、他の先行技術として、下地アングルと成形板との間に回転防止板を装着し、この回転防止板の回転防止片によってZクリップ(取付金具)の回転を防止するものがある(例えば、特許文献2参照)。この構造では、成形板の取り付け時に回転防止板を装着する必要があり、施工後に取り付けることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-046721号公報
【特許文献2】特開2003-074166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、押出成形セメント板を下地材に取り付ける場合、取り付ける位置の下地材の構造によってはZクリップを所定のトルク値より低いトルク値で締め付けなければならない場合がある。しかし、Zクリップを所定のトルク値より低いトルク値で押出成形セメント板に取り付けた場合、施工後にボルトが緩んで所定のトルク値を維持できないおそれがある。また、ボルトの締付トルク値の変化は、押出成形セメント板の変位によってボルトが緩む方向に回転してトルク値が低くなるだけでなく、締まる方向に回転してトルク値が高くなるおそれもある。
【0008】
また、上記した特許文献1及び2は、Zクリップの回転を防止することにより取付金具用ボルトが緩むのを防止する金具であるとともに、いずれも成形板の施工後に取り付けることができず、現場の施工性から採用が難しい場合がある。
【0009】
そこで、本出願は、現場での施工性がよく、建築用パネルの取付後に取付金具用ボルトの回転を適切に防止することができる回転防止具と、それを用いた建築用パネルの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願の一態様に係る取付金具用ボルトの回転防止具は、所定の厚みを有し、取付金具用ボルトの頭部の平行な2辺と係合する保持辺を具備した開口部を有する本体部と、前記本体部の片面から前記開口部の厚み方向に突出する立上がり部と、前記立上がり部に設けられた係止部と、を備えている。
【0011】
この構成により、本体部の開口部に取付金具用ボルトの頭部が入るように挿入することで、開口部の保持辺が取付金具用ボルトの頭部と係合する。そして、立上がり部の係止部に連結部材などを係止して位置を保つことで、取付金具用ボルトの回転を防止できる。よって、所定のトルクで締め付けられた取付金具用ボルトは、その締め付け状態を適切に維持することができる。
【0012】
また、他の態様に係る建築用パネル取付金具用ボルトの回転防止具は、所定の厚みを有し、取付金具用ボルトの頭部の平行な2辺と係合する保持辺を具備した開口部を有する本体部材と、前記本体部材の片面から前記開口部の厚み方向に突出する立上がり部を有する係止部材と、前記係止部材の前記立上がり部に設けられた係止部と、を備えている。
【0013】
この構成により、本体部材の開口部に取付金具用ボルトの頭部が入るように挿入することで、開口部の保持辺が取付金具用ボルトの頭部と係合する。そして、立上がり部の係止部に連結部材などを係止して位置を保つことで、取付金具用ボルトの回転を防止できる。よって、所定のトルクで締め付けられた取付金具用ボルトは、その締め付け状態を適切に維持することができる。また、開口部を有する本体部材と立上がり部を有する係止部材とを別体として組み合わせることで、一体的に構成する場合に比べてコストを低減できる。
【0014】
また、前記開口部の前記保持辺と直交する位置から該開口部の空間に向けて突出して前記取付金具用ボルトで保持する保持部を有していてもよい。このように構成すれば、保持部を取付金具用ボルトによって保持することで、回転防止具を取付金具用ボルトの位置に保持できる。
【0015】
また、前記保持部は、前記開口部の対向する位置にそれぞれ備えられていてもよい。このように構成すれば、開口部の対向する位置に備えられた保持部を取付金具用ボルトで保持するようにできる。
【0016】
また、前記開口部は、前記本体部又は前記本体部材の前記立上がり部の位置とは異なる位置で該本体部又は該本体部材の外周位置まで開口していてもよい。このように構成すれば、回転防止具を建築用パネルに取り付けられた取付金具用ボルトの頭部に開口部から挿入することができ、回転防止具の装着が容易にできて作業性の向上ができる。
【0017】
一方、本出願の一態様に係る建築用パネルの取付構造は、所定の厚みを有し、取付金具用ボルトの頭部の平行な2辺と係合する保持辺を具備した開口部を有する本体部と、前記本体部から前記開口部の厚み方向に突出する立上がり部と、前記立上がり部に設けられた係止部と、を備えた回転防止具を建築用パネルの前記取付金具用ボルトの頭部に取り付け、前記係止部に係止した連結部材の端部を固定して前記回転防止具の回転を防止するようにしている。
この構成により、本体部の開口部に取付金具用ボルトの頭部が入るように挿入することで、開口部の保持辺が取付金具用ボルトの頭部と係合する。そして、立上がり部の係止部に係止した連結部材を固定することで回転防止具の位置が保たれるので、取付金具用ボルトの回転を防止できる。よって、所定のトルクで締め付けられた取付金具用ボルトは、その締め付け状態を適切に維持することができる。例えば、取付金具用ボルトは、所定のトルクより低いトルクで締め付けている場合でも、建築用パネルの取付後にそのトルクを維持することができる。
【0018】
また、前記回転防止具を複数の前記取付金具用ボルトの頭部にそれぞれ取り付け、複数の前記回転防止具の前記係止部に係止した前記連結部材でそれぞれの係止部を連結して前記回転防止具の回転を防止するようにしてもよい。このように構成すれば、複数の回転防止具の係止部を連結した連結部材により、複数の回転防止具が一体となって取付金具用ボルトの回転を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本出願によれば、現場での施工性がよく、建築用パネルの取付後に取付金具用ボルトの回転を適切に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本出願の第1実施形態に係る第1回転防止具を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す第1回転防止具の正面図である。
図3図3は、図2に示すIII-III矢視の断面図である。
図4図4は、図1に示す第1回転防止具の一部変形例を示す側面図である。
図5図5は、図1に示す第1回転防止具の取り付け状態を示す断面図である。
図6図6は、本出願に係る建築用パネルの取付構造の一例を示す斜視図である。
図7図7は、図6に示す取付構造における連結部材の他の例を示す図面であり、(A)は連結部材の一部を示す分解図面であり、(B)は連結部材の連結状態を建築用パネルの内方から見た正面図である。
図8図8(A)~(E)は、本出願に係る回転防止具の他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本出願の一実施形態について、図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、建築用パネルである押出成形セメント板100に用いる第1回転防止具1を例として主に説明する。また、建築用パネルの取付構造40は、縦張りで施工する押出成形セメント板100の取付金具用ボルト102に回転防止具1を用いた例を説明する。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における方向は、押出成形セメント板100の表面方向を「外方」、裏面方向を「内方」という。
【0022】
<回転防止具の構成>
図1は、第1実施形態に係る第1回転防止具1を示す斜視図である。図2は、図1に示す第1回転防止具1の正面図である。図3は、図2に示すIII-III矢視の断面図である。
【0023】
図1,2に示すように、この実施形態の第1回転防止具1は、取付金具用ボルト102の頭部103の平行な2辺と係合する2つの保持辺12を具備した開口部11を有する本体部材10を備えている。また、第1回転防止具1は、本体部材10の片面から開口部11の厚み方向に突出する立上がり部21を有する係止部材20を備えている。取付金具用ボルト102は、六角ボルトであり頭部103が六角形に形成されている。
【0024】
本体部材10の開口部11は、図示する幅方向の寸法W1が取付金具用ボルト102の頭部103の平行な二面幅寸法B1よりも少し大きく形成されている。開口部11は、上下方向の寸法W2は頭部103の平行な2辺と直交する方向の寸法B2よりも大きく形成されている。この例の寸法W2は、寸法B2に加えて後述する保持部23を設けることができる寸法となっている。この例の立上がり部21は、本体部材10の保持辺12と平行になっている。本体部材10は、所定の厚みW3を有する部材であり、係止部材20は薄板部材である。本体部材10の厚みW3は、取付金具用ボルト102の頭部103と係合して回転を止めることができる厚みとなっている。
【0025】
この実施形態の第1回転防止具1は、本体部材10と係止部材20とを別々の部材として製造し、これらを組み合わせて第1回転防止具1を形成している。本体部材10と係止部材20とを別々の部材とすることで、厚みのある金属で本体部材10を効率良く製造し、厚みの薄い金属で係止部材20を効率良く製造することで、第1回転防止具1を効率良く製造することができる。例えば、本体部材10は、2mm~5mm程度の厚みW3にできるが、ボルト頭部に取り付けた際に、ボルト頭部にレンチ等の口部で締め付けできる部分が残る厚さであることが望ましい。係止部材20は、0.1mm~0.6mm程度の厚さにできる。また、本体部材10を樹脂で製造し、係止部材20を金属で製造して組み合わせることなどもできる。第1回転防止具1は、鉄、ステンレスなどの金属、樹脂などで製造できる。
【0026】
この実施形態の本体部材10には、開口部11の保持辺12と並行に平面部13が設けられている。平面部13は、本体部材10の外周に設けられており、薄板の係止部材20に設けられた立上がり部21を平面部13に沿って折り曲げることで、立上がり部21が本体部材10の厚み方向に突出するようにしている。このようにして、本体部材10と係止部材20とを組み合わせている。図3に示すように、本体部材10の平面部13は、本体部材10の外周面よりも少し窪んで形成されている。係止部材20は、立上がり部21を平面部13に沿って折り曲げることで、立上がり部21が本体部材10に沿った状態となり、一体的な第1回転防止具1となる。
【0027】
また、図1,2にも示すように、係止部材20は、立上がり部21の上部に係止部たる貫通孔22が設けられている。貫通孔22は、本体部材10の外方から取付金具用ボルト102の頭部103の厚みB3よりも高い高さH1に設けられている。立上がり部21は、貫通孔22を高さH1で設けることができる高さで形成されている。貫通孔22は、後述するように、他の第1回転防止具1などと連結するための連結部材30(例えば、線材など)が取り付けられる。
【0028】
また、図1,2に示すように、係止部材20には、本体部材10の開口部11に向けて突出する保持部23が設けられている。保持部23は、本体部材10の開口部11に設けられた保持辺12と直交する方向の2箇所に設けられている。2箇所の保持部23は、一方の第1保持部23Aは、開口部11への突出量が大きい寸法P1で突出しており、他方の第2保持部23Bは、第1保持部23Aに比べて短い寸法P2で突出している。図では、上方が第1保持部23Aであり、下方が第2保持部23Bとなっている。第1保持部23Aと第2保持部23Bとの間の寸法P3は、上記した取付金具用ボルト102の頭部103の寸法B2よりも第1保持部23Aの寸法P1と第2保持部23Bの寸法P2との差分だけ小さくなっている。第1保持部23Aは、後述するように、取付金具用ボルト102の頭部103とスプリングワッシャ104との間に挟み込まれる。第1回転防止具1は、第1保持部23Aを頭部103とスプリングワッシャ104との間に挟み込むことで、保持状態を保つようにしている。
【0029】
なお、第1回転防止具1は、本体部材10に対応する本体部と、係止部材20に設けられた立上がり部21とを一体的に形成した構成でもよい。また、本体部材10は、この実施形態のように正面視が円形に限定されない。本体部材10は、正面視が矩形や多角形であってもよい。
【0030】
<回転防止具の一部変形例>
図4は、図1に示す第1回転防止具1の一部変形例を示す側面図である。この例は、上記した第1回転防止具1とは係止部材20の立上がり部21が異なる。図2の構成と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。この例の立上がり部21は、係止部としての係止溝25が設けられている。この係止溝25には、貫通孔22と同じく、他の第1回転防止具1などと連結するための連結部材30(例えば、線材など)が取り付けられる。また、立上がり部21は、上記第2保持部23Bの方向の角部に切除部26が設けられている。第2保持部23Bは、第1保持部23Aに比べて短く形成されているので、切除部26を設けることで第2保持部23Bの方向を作業者が容易に認識できるようにしている。この例の第1回転防止具1は、第1保持部23Aが取付金具用ボルト102の頭部103の上方に位置し、第2保持部23Bが頭部103の下方に位置するようにして取り付けることが容易に判断できる。第1回転防止具1は、図4に示す構成と図2に示す構成とを組み合わせた構成とすることもできる。
【0031】
<回転防止具の取付状態>
図5は、図1に示す第1回転防止具1の取り付け状態を示す断面図である。上記した第1回転防止具1によれば、以下のようにして、押出成形セメント板100(建築用パネル)を下地材110に取り付けた後に、取付金具用ボルト102に取り付けることができる。この実施形態の押出成形セメント板100は、取付金具101であるZクリップが取付金具用ボルト102と中空部に挿入した角ナット106とによって取り付けられている。取付金具用ボルト102は、取付金具101との間にスプリングワッシャ104とワッシャ105とが挿入されている。このように取付金具101が取り付けられた押出成形セメント板100は、取付金具101によって下地材110に取り付けられる。
【0032】
第1回転防止具1の取り付け時には、押出成形セメント板100を下地材110に取り付けている取付金具101の取付金具用ボルト102を少し緩める。これにより、取付金具用ボルト102は、頭部103とスプリングワッシャ104との間にスペースを作ることができる。そして、第1回転防止具1を、開口部11に形成された保持辺12が取付金具用ボルト102の頭部103の平行な2辺と平行になるようにして取付金具用ボルト102の頭部103に押し込む。この時、頭部103に係止部材20の第1保持部23Aと第2保持部23Bとが当たるが、係止部材20は薄い部材であるため、変形して押し込むことができる。これにより、第1回転防止具1は、開口部11に取付金具用ボルト102の頭部103が挿入されて、取付金具用ボルト102の頭部103に取り付けることができる。第1回転防止具1は、取付金具用ボルト102の頭部103に取り付けられた状態で、頭部103が第1回転防止具1のほぼ中央部に位置した状態となる。
【0033】
そして、第1回転防止具1は、第1保持部23Aの端部を取付金具用ボルト102の頭部103とスプリングワッシャ104との間に挟み込む。その後、取付金具用ボルト102が所定の設定トルクで締め付けられる。この実施形態では、取付金具用ボルト102の締め付けは、立上がり部21が上下方向を向く位置まで締め付けられる。このような締め付け状態とすることで、取付金具用ボルト102がほぼ所定の設定トルクで締め付けられた状態で立上がり部21が上下方向を向いた状態となる。また、これにより第1回転防止具1は、取付金具用ボルト102の頭部103に保持される。なお、押出成形セメント板100の施工後に本回転防止具1を取り付ける場合には、取付金具101に一カ所ずつ順番に取り付けるのが望ましい。これは押出成形セメント板100の取付金具用ボルト102を一度に複数箇所緩めると、取り付けた押出成形セメント板100の位置ずれ等が発生する恐れがあるためである。
【0034】
このようにして取り付けられた第1回転防止具1によれば、押出成形セメント板100を下地材110に取り付けた後、以下のようにして取付金具用ボルト102の頭部103に取り付けて、取付金具用ボルト102の回転を防止することができる。
【0035】
<建築用パネルの取付構造>
図6は、建築用パネルの取付構造40の一例を示す斜視図である。図6は、取付構造40を、建築用パネルである押出成形セメント板100の内方から見た斜視図である。この実施形態では、1枚の押出成形セメント板100に対して2つの取付金具101が設けられている。このため、2つの第1回転防止具1は、所定の設定トルクで締め付け後にそれぞれの立上がり部21が平行となるように取付金具用ボルト102の頭部103に取り付けられる。
【0036】
このように、押出成形セメント板100の施工後の状態において、複数の取付金具用ボルト102の頭部103は、第1回転防止具1に保持される平行する2辺が、押出成形セメント板100の長手方向と平行にすることが望ましい。このようにすれば、複数の取付金具101の位置の第1回転防止具1を、以下の用にして連結することができる。
【0037】
すなわち、2つの第1回転防止具1は、平行となった立上がり部21の貫通孔22に連結部材30が挿通され、貫通孔22に係止した連結部材30で貫通孔22同士を連結することができる。この実施形態の連結部材30は、線材である金属ワイヤが用いられており、貫通孔22に挿通した後に折り返して固定することで2つの貫通孔22が連結されている。連結部材30は、単に隣り合う第1回転防止具1を連結するように取り付けるだけでもよいが、連結部材30にテンションを掛けてもよい。連結部材30が線材の場合は、連結部材30を2重にしてそれぞれの第1回転防止具1の貫通孔22に挿入して連結し、2重の針金をねじるように巻くことでテンションを掛けることができる。
【0038】
連結部材30は、針金やワイヤなどの線材の他、金属製の棒などを用いることができる。連結部材30は、線材の場合は、端部を立上がり部21の貫通孔22に通して結ぶことにより取り付ければよい。また、連結部材30は、金属製の棒の場合は、端部に立上がり部21の貫通孔22に引っ掛ける引っ掛け部を設けて取り付けるようにしてもよい。
【0039】
このような取付構造40によれば、2つの第1回転防止具1は連結部材30によって一体的な構成となり、それぞれの第1回転防止具1の回転が他方の第1回転防止具1によって防止される。
【0040】
なお、連結部材30で連結する第1回転防止具1は、隣り合う第1回転防止具1であれば、同じ押出成形セメント板100の第1回転防止具1でも、隣の押出成形セメント板100の第1回転防止具1でもよい。
【0041】
また、押出成形セメント板100が1つの取付金具101で下地材110に取り付けられている場合などは、1つの第1回転防止具1の立上がり部21に設けられた貫通孔22に連結部材30の一端を係止し、他端を下地材110などの固定部に固定すればよい。
【0042】
このように、第1回転防止具1を用いた押出成形セメント板100の取付構造40によれば、押出成形セメント板100を下地材110に取り付けた後、取付金具用ボルト102の頭部103に取り付け、取付金具用ボルト102の回転を防止することができる。
【0043】
よって、取付金具用ボルト102は、所定の設定トルクで締め付けられた状態を保つことができる。すなわち、押出成形セメント板100(建築用パネル)の取付金具101は、使用場所などに応じて所定の設定トルクで締め付けられているので、その設定トルクを維持することができる。しかも、第1回転防止具1によって、施工後に生じる風などの影響で押出成形セメント板100に層間変位による変位が生じても、取付金具用ボルト102に緩みや締まりが生じないようにできる。このように、第1回転防止具1によれば、取付金具用ボルト102を施工時の設定トルクで維持することができる。
【0044】
<取付構造の他の実施形態>
図7は、図6に示す取付構造40における連結部材30の他の例を示す図面であり、(A)は連結部材31の一部を示す分解図面であり、(B)は連結部材31の連結状態を建築用パネル(押出成形セメント板100)の内方から見た正面図である。図7は、連結部材31の部分のみを示している。
【0045】
図7(A)、(B)に示すように、この例の連結部材31は棒材を用いた例であり、2つの係止棒35と、これらの係止棒35に対してテンションを掛けるターンバックル37とを備えている。係止棒35は、金属棒の両端部に折り曲げ部36が設けられている。また、ターンバックル37は、係止棒35の折り曲げ部36に引っ掛けるフック38が両端部に設けられている。なお、係止棒35は、金属棒以外に、端部にフック38を引っ掛けるリング状部を設けたワイヤとすることもできる。
【0046】
この連結部材31は、係止棒35の一端部に設けられた折り曲げ部36を第1回転防止具1の立上がり部21に設けられた貫通孔22に引っ掛け、他方の折り曲げ部36をターンバックル37のフック38にそれぞれ引っ掛ける。その後、ターンバックル37の中央部分を所定方向に回転させることで、2つの第1回転防止具1の間にテンションを掛けて連結することができる。このように、連結部材31は、中間部にターンバックル37を設けてテンションを掛けるような構成にしてもよい。
【0047】
さらに、連結部材31は、係止棒35の両端部を雌ねじ部とし、貫通孔22の外側部分で雌ねじ部にナットを螺合して保持するようにしてもよい。この場合は、両端部のナットのねじ込み量を調整することでテンションを掛けるような構成にしてもよい。
【0048】
なお、第1回転防止具1を連結する連結部材30,31に掛けるテンションとしては、強い力で掛ける必要はなく、連結部材30,31にたるみがない程度の力で掛けるだけでもよい。このようにすれば、互いの第1回転防止具1の回転が抑止され、より回転防止の機能が向上する。
【0049】
<回転防止具の他の実施形態>
図8(A)~(E)は、回転防止具の他の実施形態を示す正面図である。なお、以下に説明する実施形態の第2回転防止具2~第6回転防止具6は、正面図のみで説明する。第2回転防止具2~第6回転防止具6は、上記した第1回転防止具1と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0050】
図8(A)は、第2回転防止具2を示す正面図である。第2回転防止具2は、第1回転防止具1とは本体部材10の開口部11の向きが90度異なっている。第2回転防止具2は、開口部11の長手方向が横向きとなっている。また、第2回転防止具2は、開口部11に向けて、左方向から第1保持部23Aが突出し、右方向から第2保持部23Bが突出している。なお、第2回転防止具2は、第1保持部23Aが右方向から突出し、第2保持部23Bが左方向から突出するようにしてもよい。各部の寸法は、上記した第1回転防止具1と同一となっている。
【0051】
この第2回転防止具2によれば、係止部材20の立上がり部21を上下方向に向けた状態で、取付金具用ボルト102の頭部103を第1回転防止具1とは90度異なる角度で固定することができる。よって、第2回転防止具2は、取付金具用ボルト102の締め付けトルクを所定のトルク値とした場合に、取付金具用ボルト102の頭部103の平行な2辺が押出成形セメント板100の長手方向と直交する方向が好ましい場合に用いることができる。
【0052】
すなわち、押出成形セメント板100(建築用パネル)は、通常の施工時における取付金具用ボルト102の締め付けトルク値は決まるが、トルク調整により頭部103の止まる角度が様々になることが想定される。この場合に、頭部103の止まる角度に応じて第1回転防止具1と第2回転防止具2の2種類から、立上がり部21が押出成形セメント板100の長手方向と並行になるようにした場合に、所定の締め付けトルク値に近い値となる方を用いることができる。なお、取付金具用ボルト102の適切な締め付けトルク値は、目的のトルク値に対して概ね10%以内の誤差で所定のトルク値に近い値が好ましいので、第1回転防止具1と第2回転防止具2とを選択的に用いることで、所定のトルク値により近い値で頭部103の回転を適切に防止することができる。
【0053】
図8(B)は、第3回転防止具3を示す正面図である。第3回転防止具3は、本体部材10の開口部15が、立上がり部21の位置とは異なる位置で外周位置まで開口している。この例の開口部15は、第1保持部23Aが設けられた位置と対向する下方が開口している。この第3回転防止具3によれば、第3回転防止具3を取付金具用ボルト102の頭部103に開口部15の開口している部分から挿入することができる。よって、第3回転防止具3を取付金具用ボルト102に取り付ける作業が容易にでき、作業性の向上を図ることができる。
【0054】
図8(C)は、第4回転防止具4を示す正面図である。第4回転防止具4は、回転防止具1の開口部16の上側部分が取付金具用ボルト102の頭部103の形状に沿うようにした例である。第4回転防止具4は、開口部16の上部が、取付金具用ボルト102の頭部103の傾斜に沿うような傾斜辺17となっている。傾斜辺17の中間部分に第1保持部23Aが設けられている。この第4回転防止具4によれば、取付金具用ボルト102の頭部103に装着した状態で開口部16の保持辺12と上部の傾斜辺17が頭部103に沿うため、第4回転防止具4を取付金具用ボルト102の定位置に保持することが適切にできる。
【0055】
図8(D)は、第5回転防止具5を示す正面図である。第5回転防止具5は、第4回転防止具4の開口部16が、立上がり部21の位置とは異なる位置で外周位置まで開口した開口部18となっている。この例の開口部18は、第1保持部23Aが設けられた位置と対向する下方が開口している。この第5回転防止具5によれば、第5回転防止具5を取付金具用ボルト102の頭部103に開口部18の開口している部分から挿入することができる。よって、第5回転防止具5を取付金具用ボルト102に取り付ける作業が容易にでき、作業性の向上を図ることができる。
【0056】
図8(E)は、第6回転防止具6を示す正面図である。第6回転防止具6は、第1回転防止具1の第2保持部23Bを第1保持部23Aとした例である。第6回転防止具6は、開口部11に向けて同じ長さの第1保持部23Aが突出している。第6回転防止具6によれば、取付金具用ボルト102の頭部103に取り付けた後、両方の第1保持部23Aを、取付金具用ボルト102の頭部103とスプリングワッシャ104との間に挟み込むことができる。よって、第6回転防止具6は、取付金具用ボルト102による第6回転防止具6の保持をより強固にできる。
【0057】
なお、上記した第1回転防止具1~第6回転防止具6は一例を示しており、本出願は要旨を損なわない範囲で種々の変更は可能であり、本出願は上記した実施形態に限定されるものではない。また、上記した第1回転防止具1~第6回転防止具6の構成を組み合わせることも可能であり、各回転防止具1~6の構成は、上記した実施形態に限定されるものではない。
【0058】
<まとめ>
以上のように、回転防止具1~6は、押出成形セメント板100(建築用パネル)を下地材110に取り付けた後でも、取付金具101を取り外すことなく取付金具用ボルト102の頭部103に取り付けて、取付金具用ボルト102の回転を防止できる。よって、回転防止具1~6は、取付金具用ボルト102の回転防止を、押出成形セメント板100(建築用パネル)の施工後でも効率良く行うことが可能となる。
【0059】
また、回転防止具1~6は、取付金具用ボルト102を通常のトルクよりも低い設定トルクで締め付けている場合でも、その状態で取付金具用ボルト102の回転を防止できる。よって、取付金具用ボルト102は、通常のトルクよりも低い設定トルクを維持することが適切に可能である。
【0060】
また、回転防止具1~6は、取付金具用ボルト102を通常の設定トルクで締め付けている場合でも,その状態で取付金具用ボルト102の回転を防止できる。よって、回転防止具1~6は、台風や地震などで押出成形セメント板100(建築用パネル)に層間変位による変位が生じても、取付金具用ボルト102の設定トルクを適切に維持することができ、取付後の安定性をさらに高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 第1回転防止具
2 第2回転防止具
3 第3回転防止具
4 第4回転防止具
5 第5回転防止具
6 第6回転防止具
10 本体部材
11 開口部(第1回転防止具)
12 保持辺
13 平面部
15 開口部(第3回転防止具)
16 開口部(第4回転防止具)
17 傾斜辺
18 開口部(第5回転防止具)
20 係止部材
21 立上がり部
22 貫通孔
23 保持部
23A 第1保持部
23B 第2保持部
25 係止溝
26 切除部
30 連結部材(線材)
31 連結部材(棒材)
40 取付構造
100 押出成形セメント板
101 取付金具(Zクリップ)
102 取付金具用ボルト
103 頭部
104 スプリングワッシャ
105 ワッシャ
106 角ナット
110 下地材
B1 二面幅寸法
B2 寸法
B3 厚み
W1,W2 寸法
P1,P2,P3 寸法
H1 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8