(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130638
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置及びキャリッジ水平維持方法
(51)【国際特許分類】
B21C 49/00 20060101AFI20240920BHJP
B21B 41/00 20060101ALI20240920BHJP
B65H 75/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B21C49/00 C
B21B41/00 A
B65H75/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040478
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】田内 秀昌
(72)【発明者】
【氏名】恵上 寿雄
【テーマコード(参考)】
3F058
4E026
【Fターム(参考)】
3F058AA04
3F058AC08
3F058FA06
4E026HA03
4E026HA06
(57)【要約】
【課題】被測定体に、センサでの測定に影響を与える歪みがあっても、キャリッジの水平状態を精密に維持することが可能な縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置及び水平維持方法を提供する。
【解決手段】キャリッジ5の吊り下げ高さを調整するジャッキ22と、キャリッジの昇降方向に鉛直に設けた支柱11と、キャリッジの上部側及び下部側に設けられ、支柱までの第1及び第2水平距離D1,D2を測定する上部及び下部変位測定センサ26,27と、水平姿勢のキャリッジを昇降移動させる計測時に、計測高さ位置Hxと、計測高さ位置で、各上部及び下部変位測定センサによる支柱までの水平距離の計測時距離差ΔDSxとを記憶する演算記憶部と、搬送時のキャリッジが昇降移動されるときに、計測高さ位置で、各上部及び下部変位測定センサによる支柱までの水平距離の搬送時距離差ΔDRxが計測時距離差に等しくなるようにジャッキを動作制御する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトムフレームに配列される第1ロールと吊り材で吊り下げられて昇降移動されるキャリッジに配列される第2ロールとに交互に、搬送される帯状材を掛け回すようにした縦型ルーパであって、
上記キャリッジと上記吊り材との間に設けられ、吊り方向にストローク動作されて、該吊り材で吊り下げられる該キャリッジの吊り下げ高さ位置を調整する調整手段と、
上記キャリッジの昇降移動方向に沿って鉛直に設けられた被測定体と、
上記キャリッジの上部側に設けられ、上記被測定体までの第1水平距離を測定する上部変位測定センサと、
上記キャリッジの下部側に設けられ、上記被測定体までの第2水平距離を測定する下部変位測定センサと、
上記被測定体に対し、水平姿勢の上記キャリッジを昇降移動させる計測時に、複数の計測高さ位置と、該各計測高さ位置それぞれで、上記上部及び下部変位測定センサから入力される上記第1水平距離と上記第2水平距離の複数の計測時距離差とを1対1で対応させて記憶する演算記憶部と、
上記被測定体に対し、上記帯状材の搬送時の上記キャリッジが昇降移動されるときに、上記各計測高さ位置それぞれについて、上記上部及び下部変位測定センサから入力される上記第1水平距離と上記第2水平距離との各搬送時距離差が上記各計測時距離差に等しくなるように上記調整手段を動作制御するコントローラとを備えていることを特徴とする縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置。
【請求項2】
前記第1水平距離及び前記第2水平距離は、前記第2ロールのロール軸の軸方向に測定されることを特徴とする請求項1に記載の縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置。
【請求項3】
請求項1に記載の縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置を用いたキャリッジ水平維持方法であって、
前記被測定体に対し、水平姿勢の前記キャリッジを昇降移動させる計測時に、複数の前記計測高さ位置と、該各計測高さ位置それぞれで、前記上部及び下部変位測定センサから入力される前記第1水平距離と前記第2水平距離の複数の前記計測時距離差とを1対1で対応させて前記演算処理部に記憶させる計測時ステップと、
上記被測定体に対し、前記帯状材の搬送時の上記キャリッジが昇降移動されるときに、上記各計測高さ位置それぞれについて、上記上部及び下部変位測定センサから入力される上記第1水平距離と上記第2水平距離との各搬送時距離差が上記各計測時距離差に等しくなるように前記コントローラで前記調整手段を作動させる姿勢制御ステップとを含むことを特徴とする縦型ルーパのキャリッジ水平維持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定体に、センサでの測定に影響を与える歪みがあっても、キャリッジの水平状態を精密に維持することが可能な縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置及びキャリッジ水平維持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボトムフレームに配列されるロールと、吊り材で吊り下げられて昇降移動されるキャリッジに配列されるロールとに交互に、搬送される鋼帯を掛け回すようにした縦型ルーパでは、鋼帯の蛇行を抑えるためにキャリッジの水平姿勢を維持することが求められる。
【0003】
キャリッジの水平姿勢を維持する縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置として、例えば、特許文献1が知られている。
【0004】
特許文献1の「縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置」は、固定ベッドに配列される第1ロールと、吊り材で吊り下げて昇降動作されるキャリッジに配列される第2ロールとに交互に、帯状材を掛け回すようにした縦型ルーパであって、上記キャリッジと上記吊り材との間に設けられ、吊り方向にストローク動作されて、吊り下げられる該キャリッジの吊り下げ高さ位置を調整する調整手段と、上記キャリッジの昇降動作方向に沿って鉛直に設けられた被測定体と、昇降される上記キャリッジの上部側に搭載され、上記被測定体までの第1水平距離を測定する上部変位測定センサと、昇降される上記キャリッジの下部側に搭載され、上記被測定体までの第2水平距離を測定する下部変位測定センサと、これら上部変位測定センサ及び下部変位測定センサから上記第1水平距離及び上記第2水平距離が入力され、これら水平距離が等距離となるように上記調整手段を動作させるコントローラを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背景技術では、コントローラで調整手段を動作させる基準となる第1水平距離及び第2水平距離は、キャリッジに搭載された上部変位測定センサ及び下部変位測定センサから、キャリッジの昇降動作方向に沿って鉛直に設けられた被測定体までの距離である。
【0007】
ところで、これらセンサで距離測定を行う被測定体に、凹凸の歪みがあると、この歪みが、測定される水平距離に含まれてしまって、当該歪みに影響を受けて、キャリッジの水平姿勢を精密に維持することができないという課題があった。
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、被測定体に、センサでの測定に影響を与える歪みがあっても、キャリッジの水平状態を精密に維持することが可能な縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置及びキャリッジ水平維持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置は、ボトムフレームに配列される第1ロールと吊り材で吊り下げられて昇降移動されるキャリッジに配列される第2ロールとに交互に、搬送される帯状材を掛け回すようにした縦型ルーパであって、上記キャリッジと上記吊り材との間に設けられ、吊り方向にストローク動作されて、該吊り材で吊り下げられる該キャリッジの吊り下げ高さ位置を調整する調整手段と、上記キャリッジの昇降移動方向に沿って鉛直に設けられた被測定体と、上記キャリッジの上部側に設けられ、上記被測定体までの第1水平距離を測定する上部変位測定センサと、上記キャリッジの下部側に設けられ、上記被測定体までの第2水平距離を測定する下部変位測定センサと、上記被測定体に対し、水平姿勢の上記キャリッジを昇降移動させる計測時に、複数の計測高さ位置と、該各計測高さ位置それぞれで、上記上部及び下部変位測定センサから入力される上記第1水平距離と上記第2水平距離の複数の計測時距離差とを1対1で対応させて記憶する演算記憶部と、上記被測定体に対し、上記帯状材の搬送時の上記キャリッジが昇降移動されるときに、上記各計測高さ位置それぞれについて、上記上部及び下部変位測定センサから入力される上記第1水平距離と上記第2水平距離との各搬送時距離差が上記各計測時距離差に等しくなるように上記調整手段を動作制御するコントローラとを備えていることを特徴とする。
【0010】
前記第1水平距離及び前記第2水平距離は、前記第2ロールのロール軸の軸方向に測定されることを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持方法は、上記縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置を用いたキャリッジ水平維持方法であって、前記被測定体に対し、水平姿勢の前記キャリッジを昇降移動させる計測時に、複数の前記計測高さ位置と、該各計測高さ位置それぞれで、前記上部及び下部変位測定センサから入力される前記第1水平距離と前記第2水平距離の複数の前記計測時距離差とを1対1で対応させて前記演算処理部に記憶させる計測時ステップと、上記被測定体に対し、前記帯状材の搬送時の上記キャリッジが昇降移動されるときに、上記各計測高さ位置それぞれについて、上記上部及び下部変位測定センサから入力される上記第1水平距離と上記第2水平距離との各搬送時距離差が上記各計測時距離差に等しくなるように前記コントローラで前記調整手段を作動させる姿勢制御ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置及びキャリッジ水平維持方法にあっては、被測定体に、センサでの測定に影響を与える歪みがあっても、キャリッジの水平状態を精密に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置及びキャリッジ水平維持方法の好適な一実施形態を説明するための縦型ルーパの正面図である。
【
図3】
図1に示した縦型ルーパを説明するための説明図である。
【
図4】
図1に示した縦型ルーパに備えられるキャリッジ水平維持装置を説明するための説明図である。
【
図5】
図1に示した縦型ルーパに備えられるキャリッジ水平維持方法を説明するための説明図である。
【
図6】
図2の縦型ルーパにおけるジャッキへの出力信号について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置及びキャリッジ水平維持方法の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
縦型ルーパ1は、金属ストリップなどの帯状材2の加工ラインの入側及び出側にそれぞれ設置される。
【0016】
図1及び
図2に示すように、縦型ルーパ1は従来周知のように、回転自在に軸支されて、ボトムフレーム3に並べて配列される複数の第1ロールとしての下ロール4と、回転自在に軸支されて、ボトムフレーム3上方のキャリッジ5に並べて配列される複数の第2ロールとしての上ロール6とを備える。
【0017】
縦型ルーパ1は、搬送される帯状材2を、下ロール4と上ロール6に交互に、これらロール4,6の配列方向に向かって順次掛け回し、ボトムフレーム3に対しキャリッジ5を昇降移動させて上ロール6と下ロール4の間隔を伸び縮みさせることで、加工ラインを停止させることなく、その加工ラインの入口より上流のライン及び出口より下流のラインの速度の加減速や停止を行うことができるように構成される。
【0018】
本実施形態では、以下、下ロール4が固定ロールであり、上ロール6が昇降移動される移動ロールである場合を例示して説明するが、下ロール4が移動ロールであり、上ロール6が固定ロールであっても良いことはもちろんである。
【0019】
キャリッジ5及びボトムフレーム3はともに、平面視で細長な長方形状に形成される。キャリッジ5は、水平姿勢をとり得るように、後述するチェーン7,8やワイヤロープなどの吊り材により4点で支持される。
【0020】
吊り材7,8は、縦型ルーパ1を構成する立体フレーム9の天井部10から支持される。
【0021】
立体フレーム9は、キャリッジ5及びボトムフレーム3を取り囲むようにして、天井部10をその四隅に鉛直に立設された4本の支柱11で支えることで構成され、ボトムフレーム3が設置される機台12上に組み立てて設けられる。
【0022】
複数の上ロール6及び下ロール4は、キャリッジ5及びボトムフレーム3の長辺に沿うそれらの長さ方向に配列される。
【0023】
吊り材7,8がチェーンの場合のキャリッジ5の昇降機構について、
図3を参照して略述する。
【0024】
図3(A)は、天井部10の平面図、
図3(B)は、
図3(A)中、B-B線矢視断面図、
図3(C)は、
図3(A)中、C-C線矢視断面図である。
【0025】
キャリッジ5の昇降機構は、天井部10の中央位置に設けられた駆動モータ13と、天井部10に設けられて駆動モータ13と連結され、キャリッジ5の長さ方向にカップリング41を介して一連に連設された回転軸系14に駆動モータ13の回転駆動力を減速して伝達するギヤボックス15と、天井部10に設けられ、回転軸系14の両端部を支持する各軸受部材16近くで、当該回転軸系14の両端部に、互いに隣り合う配置で連結されて、回転軸系14により等速度で同じ方向に回転駆動されることにより、それぞれに巻き掛けられる第1チェーン7及び第2チェーン8を等速で駆動する同一寸法の一組の第1スプロケット17及び第2スプロケット18と、天井部10に、各第1スプロケット17それぞれと向かい合う配置で、軸受部材19を介して回転自在に支持され、第1スプロケット17から巻き掛けられる第1チェーン7を案内する2つの第3スプロケット20と、キャリッジ5の長さ方向の両側それぞれで、第1チェーン7及び第2チェーン8の各一端部が連結される重錘21とから構成される。
【0026】
重錘21は、キャリッジ5の昇降移動に要する必要動力を低減すると共に、チェーン7,8の浮き上がりを防止する。
【0027】
キャリッジ5には、幅方向一方の側で、長さ方向に間隔を隔てて2つの第1チェーン7の他端部が連結されると共に、幅方向他方の側で、長さ方向に間隔を隔てて2つの第2チェーン8の他端部が連結され、これによりキャリッジ5は、4本のチェーン7,8により4点で支持される。
【0028】
吊り点となる4点は、キャリッジ5の幅方向を短辺方向とする長方形状の4隅であることが望ましい。
【0029】
吊り材7,8がワイヤロープの場合には、スプロケット17,18,20に代えて、プーリが用いられる。
【0030】
例えば、駆動モータ13を正転駆動すると、一組の第1及び第2スプロケット17,18が同じ方向に正転駆動されると共に、第1チェーン7を介して各第3スプロケット20も同じ方向に正回転され、第1及び第2チェーン7,8は、それらの一端で重錘21を引き上げながら他端でキャリッジ5を下降動作させ、他方、駆動モータ13を逆転駆動すると、第1~第3スプロケット17,18,20はすべて同じ方向に逆転駆動されて、第1及び第2チェーン7,8は、それらの一端で重錘21の吊り降ろしをしながら他端でキャリッジ5を吊り上げて上昇動作させる。
【0031】
キャリッジ5は、駆動モータ13の正転駆動により上昇動作させ、逆転駆動により下降動作させるようにしてもよい。
【0032】
また、この機構に代えて、4台のウィンチ(図示せず)を用い、チェーン7,8に代わるワイヤなどの吊り材を、同期させて巻き上げ、巻き下ろすようにしても良い。
【0033】
キャリッジ5には、チェーン7,8による吊り方向にストローク動作され、これらチェーン7,8で吊り下げられるキャリッジ5の吊り下げ高さ位置を調整する調整手段が搭載される。
【0034】
調整手段は本実施形態では、ジャッキ22を用いる場合が例示されており、第1チェーン7の他端とキャリッジ5の間に設けられる。
【0035】
調整手段は、ジャッキ22に限定されるものではなく、吊り方向にストローク動作されるものであれば、どのような手段であってもよい。
【0036】
図示例のジャッキ22は、モータ駆動式ネジ機構23でロッド24に出没するストロークが生じる周知のネジジャッキであり、ネジ機構23の部分がキャリッジ5に取り付けられ、ロッド24が第1チェーン7と連結されている。
【0037】
第1及び第2チェーン7,8によってキャリッジ5の吊り下げ状態が一定であるとき、ロッド24に進出ストロークが生じると、第2チェーン8側に対し第1チェーン7側で、吊り下げられているキャリッジ5の吊り下げ高さ位置が低くなり、反対にロッド24に没入ストロークが生じると、キャリッジ5の吊り下げ高さ位置が高くなり、これにより、第1及び第2チェーン7,8でキャリッジ5が水平に吊り下げられていない場合であっても、ジャッキ22のストローク調整で、チェーン7,8によりキャリッジ5を水平姿勢で吊り下げることができるようになっている。
【0038】
ジャッキ22は、第1チェーン7に代えて、第2チェーン8とキャリッジ5の間に設けるようにしてもよい。
【0039】
縦型ルーパ1では、キャリッジ5の長さ方向に複数配列され、ロール軸6aがキャリッジ5の幅方向に向けて設置される上ロール6の当該ロール軸6aがその軸方向で傾くことにより、帯状材2の蛇行が発生するため、ロール軸6aの軸方向において、当該キャリッジ5の水平姿勢を維持することが求められる(
図1及び
図2参照)。言い換えれば、キャリッジ5が幅方向で傾かないようにすることが要請される。
【0040】
キャリッジ5の幅方向において、キャリッジ5の吊り下げ姿勢を検出し、水平姿勢に維持する構成として、被測定体とされる上記支柱11と、キャリッジ5の上部側及び下部側に搭載される変位測定センサ26,27と、これら変位測定センサ26,27からの検出信号でジャッキ22を動作制御するコントローラ28とが備えられる。
【0041】
支柱11は、キャリッジ5の昇降移動方向に沿って鉛直に設けられ、変位測定センサ26,27は、支柱11に向かい合うように配置される。
【0042】
本実施形態では、変位測定センサ26,27はそれぞれ、キャリッジ5の長さ方向両端側で、当該キャリッジ5の幅方向一方の側に配置して2つ(上下1対)ずつ設けられていて、また、これら変位測定センサ26,27に近接して向かい合う2本の支柱11が被測定体として用いられるようになっている。
【0043】
変位測定センサ26,27は、キャリッジ5の幅方向一方の側だけでなく両側に配置して、4つ設けるようにすれば、キャリッジ5の姿勢制御の精度を向上することができて好ましい。
【0044】
図1~
図4に示すように、キャリッジ5には、当該キャリッジ5の上面5aに取り付けられる上部変位測定センサ26と当該キャリッジ5の下面5bに取り付けられる下部変位測定センサ27とが対で設けられる。
【0045】
これら変位測定センサ26,27は、投光部33からキャリッジ5の幅方向に、向かい合う支柱11の側面に向けてレーザー光Lを発出し、支柱11で反射したキャリッジ5の幅方向からのレーザー光Lを受光部34で受光して、支柱11までの水平距離D1,D2を測定するようになっている。
【0046】
これら上部及び下部変位測定センサ26,27のキャリッジ5への取り付けは具体的には、キャリッジ5が傾きのない水平状態であって、変位測定センサ26,27の受光部34の位置が鉛直方向で同じ位置であってかつ水平方向で支柱11から等距離の位置であることが望ましい。
【0047】
レーザー光を利用するセンサは、温度、外乱光、ほこりなど、周囲の環境外乱の影響を受けることで、測定距離が長いほど、測定誤差が生じやすい。
【0048】
これに対し、本発明では、キャリッジ5の姿勢(傾き)を測定するにあたり、変位測定センサ26,27によりできる限り誤差なく測定を行い、測定値(水平距離D1,D2)の僅かな微差をキャリッジ5の姿勢制御に用いることができるように、支柱11に対して至近距離から測定するようにしている。
【0049】
上部変位測定センサ26は、キャリッジ5の上部で、キャリッジ5の幅方向に支柱11までの第1水平距離D1を測定する。下部変位測定センサ27は、キャリッジ5の下部で、キャリッジ5の幅方向に支柱11までの第2水平距離D2を測定する。
【0050】
上部変位測定センサ26及び下部変位測定センサ27は、複数の計測高さ位置、すなわち支柱の複数の高さ位置で第1水平距離D1及び第2水平距離D2を測定し、コントローラ28へ入力する。
【0051】
センサからコントローラへの水平距離の入力は、事前準備として、キャリッジを水平姿勢で昇降移動させる「計測時」に実行されると共に、帯状材2を搬送する操業中に、キャリッジを昇降移動させる「姿勢制御時」に実行される。
【0052】
コントローラ28は、演算記憶部28aを備えている。演算記憶部28aは、コントローラ28に入力された複数の計測高さ位置それぞれについて、第1水平距離D1及び第2水平距離D2から距離差ΔDを算出する。
【0053】
「計測時」に算出された距離差ΔDは、計測時距離差ΔDSxとして扱われ、「姿勢制御時」に算出された距離差ΔDは、搬送時距離差ΔDRxとして扱われる。
【0054】
また、演算記憶部28aには、水平姿勢のキャリッジ5を昇降移動させたときに、各計測高さ位置での計測時距離差ΔDSxが、当該計測高さ位置Hxと1対1の関係で、予め記憶される。
【0055】
キャリッジ5には、水準器(図示せず)が設けられ、「計測時」に変位測定センサ26,27で距離D1,D2を測定するとき、水準器によってキャリッジ5が水平姿勢であることが確認される。
【0056】
コントローラ28は、各計測高さ位置Hxそれぞれにおいて、搬送時距離差ΔDRxが、演算記憶部28aに記憶されている計測時距離差ΔDSxに等しくなるように、ジャッキ22を動作制御するようになっている。
【0057】
計測高さ位置Hxは、例えば、ボトムフレーム3側にレーザー光式の高さセンサを固定し、この高さセンサにより、上下方向に昇降するキャリッジ5までの高さ距離を測定したり、駆動モータ13の正・逆方向の回転量や駆動モータ13によるチェーン7,8の巻き上げ長さや巻き下ろし長さを検出すればよい。
【0058】
次に、本実施形態にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置及びキャリッジ水平維持方法の作用について説明する。
【0059】
まず、帯状体2が掛けられていない「計測時」、水平姿勢にあるキャリッジ5の状態を維持しつつ、
図5に示すように、上部変位測定センサ26及び下部変位測定センサ27によって、支柱11の高さ方向に沿って複数の計測高さ位置Hxで第1及び第2水平距離D1,D2を測定し、キャリッジ5が水平状態のときの第1水平距離D1と第2水平距離D2との計測時距離差ΔDSxを算出して、演算記憶部28aに記憶しておく(計測時ステップ)。
【0060】
計測時ステップにより、複数の計測高さ位置Hxで、支柱11の歪みを含む水平距離D1,D2から、計測時距離差ΔDSxが算出され集積される。
【0061】
そして、帯状材2の「搬送時」において、上述した搬送時距離差ΔDRxが各計測高さ位置Hxで計測時距離差ΔDSxに等しく一致すれば、キャリッジ5は、支柱11の歪みに影響を受けることなく、変位測定センサ26,27から入力される水平距離D1,D2から算出される搬送時距離差ΔDRxに基づき、コントローラ28でジャッキ22が動作制御されて水平姿勢が維持される。
【0062】
具体的には、演算記憶部28aに記憶される計測時距離差ΔDSxは、例えば、水平状態を確認できる水準器をキャリッジ5に搭載し、キャリッジ5が昇降移動する過程で通過する複数の計測高さ位置Hxにて、キャリッジ5の昇降動作を止め、水準器でキャリッジ5が水平であることを確認した上で、上部変位測定センサ26及び下部変位測定センサ27により、第1及び第2水平距離D1,D2を測定し、測定した第1及び第2水平距離D1,D2をコントローラ28に入力し、第1水平距離D1と第2水平距離D2との距離差(計測時距離差)ΔDSxを算出し、測定した計測高さ位置Hxと対応付けて演算記憶部28aに記憶させる。
【0063】
計測時距離差ΔDSxは、キャリッジ5の昇降動作を止めることなく、昇降動作させながら、連続的かつ自動的に第1及び第2水平距離D1,D2を測定し、コントローラ28に入力させるようにしてもよい。
【0064】
図5に示した波線Fが支柱11の歪みを表している。図示では、複数の計測高さ位置Hxをつないだ波線で表記している。
【0065】
図示例では、計測高さ位置Hxは、下部変位測定センサ27による測定位置を基準として示されているが、上部変位測定センサ26による測定位置に代えてもよい。
【0066】
次に、帯状材2をロール4,6に掛け回して搬送するキャリッジ5の昇降移動中、常時継続的に、時々刻々変位測定センサ26,27で測定される第1及び第2水平距離D1,D2(
図5中、一番上に示したキャリッジ5は、水平でない状態を仮定していて、その場合は、点線で示したレーザー光L’で測定される)が、各計測高さ位置Hxに達する毎に、そのタイミングでコントローラ28に入力される。
【0067】
コントローラ28は、各計測高さ位置Hxにおいて、入力された第1及び第2水平距離D1,D2から、第1水平距離D1と第2水平距離D2との搬送時距離差ΔDRxを算出する。
【0068】
コントローラ28は、搬送時距離差ΔDRxを算出した計測高さ位置Hxに関し、その計測高さ位置Hxに対応付けて演算記憶部28aに記憶されている計測時誤差ΔDSxを読み出す。
【0069】
コントローラ28は、搬送時距離差ΔDRxと読み出した計測時誤差ΔDSxとの差を算出し、当該差がなくなる、すなわちこれら距離差が等しくなる(計測高さ位置HxにてΔDRx=ΔDSx)ように、ジャッキ22に対して制御信号を出力する。
【0070】
ジャッキ22は、コントローラ28から出力されたストローク制御の制御信号に基づいて作動され、これにより、キャリッジ5が水平姿勢に保持される(姿勢制御ステップ)。
【0071】
例えば、演算記憶部28aに、いずれかの計測高さ位置Hxにおける計測時距離差ΔDSxよりも、搬送時距離差ΔDRxが大きいあるいは小さいときには、キャリッジ5は水平姿勢になくて傾いていることが判別される。
【0072】
コントローラ28は、計測時距離差ΔDSxと搬送時距離差ΔDRxの大小関係に応じて、ジャッキ22を、ロッド24が突出する方向または没入する方向に作動させる。
【0073】
このようにして、コントローラ28は、各計測高さ位置Hxについて、計測時誤差ΔDSxに搬送時距離差ΔDRxが一致するように、ジャッキ22を作動させる。
【0074】
要するに、傾いたときのレーザー光L’で計測される距離を、水平姿勢のときのレーザー光Lで計測される距離になるように修正される。
【0075】
ジャッキ22は、リアルタイムで第1チェーン7の吊り方向にストローク動作され、キャリッジ5の吊り下げ高さ位置を調整して、キャリッジ5の水平姿勢を維持することができる。
【0076】
本実施形態にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置及びキャリッジ水平維持方法にあっては、キャリッジ5と第1チェーン7との間に設けられ、吊り方向にストローク動作されて、第1チェーン7で吊り下げられるキャリッジ5の吊り下げ高さ位置を調整するジャッキ22と、キャリッジ5の昇降移動方向に沿って鉛直に設けられた支柱11と、キャリッジ5の上部側に設けられ、支柱11までの第1水平距離D1を測定する上部変位測定センサ26と、キャリッジ5の下部側に設けられ、支柱11までの第2水平距離D2を測定する下部変位測定センサ27と、支柱11に対し、水平姿勢のキャリッジ5を昇降移動させる「計測時」に、複数の計測高さ位置Hxと、各計測高さ位置Hxそれぞれで、上部及び下部変位測定センサ26,27から入力される第1水平距離D1と第2水平距離D2の複数の計測時距離差ΔDSxとを1対1で対応させて記憶する演算記憶部28aと、支柱11に対し、帯状材2の「搬送時」のキャリッジ5が昇降移動されるときに、各計測高さ位置Hxそれぞれについて、上部及び下部変位測定センサ26,27から入力される第1水平距離D1と第2水平距離D2との各搬送時距離差ΔDRxが各計測時距離差ΔDSxに等しくなるようにジャッキ22を動作制御するコントローラ28とを備えていて、支柱11に歪みFがあっても、キャリッジを水平姿勢とした「計測時」に、キャリッジ5から支柱11までの距離に歪みFが含まれた計測時距離差ΔDSxを測定してあるため、当該計測時距離差ΔDSxと、帯状材2の「搬送時」に測定するキャリッジ5から支柱11までの搬送時距離差ΔDRxとを各計測高さ位置Hxで比較して、これら距離差ΔDSx,ΔDRxが等しく一致するようにジャッキ22でキャリッジ5の姿勢を調整することにより、支柱11に歪みFがあっても、キャリッジ5の水平状態を精密に維持することができる。
【0077】
従って、被測定体である支柱11に対し、高い平面度の加工を要求する必要がなく、製造及び組み立て等を容易化でき、設備コストも低減することができる。
【0078】
キャリッジ5の停止状態に限らず、キャリッジ5が昇降移動中であっても、キャリッジ5に設けた変位測定センサ26,27で支柱11までの水平距離D1,D2を測定して、時々刻々連続的にキャリッジ5の姿勢制御を高精度で細密に実行することができる。
【0079】
キャリッジ5には、上ロール6がロール軸6aをキャリッジ5の幅方向に向けて設けられ、第1水平距離D1及び第2水平距離D2は、キャリッジ5の幅方向に測定されるので、帯状材2に蛇行を生じさせるキャリッジ5の幅方向の水平姿勢を的確に維持することができ、帯状材2の蛇行を防止することができる。
【0080】
上記説明では、投光部33及び受光部34を備えた変位測定センサ26,27を用いる場合について説明したが、距離を測定できるものであれば、他の形式のセンサを用いても良い。
【0081】
上記説明では、第1ロール(下ロール4)を設けたボトムフレーム3を床面に設置し、その上方で、第2ロール(上ロール6)を設けたキャリッジ5が昇降移動される縦型ルーパ1を例示したが、天井部10に、第1ロールのボトムフレーム3を設置し、その下方で、第2ロールのキャリッジ5が昇降移動される縦型ルーパ1に対しても適用できることはもちろんである。
【0082】
コントローラ28は、ジャッキ22のストローク制御について、被測定体である支柱11の位置と、水平姿勢を維持するために制御されるジャッキ22の位置とが異なることを考慮し、
図6に示すように、水平距離D1,D2を測定する上部及び下部変位測定センサ26,27(受光部34)間の鉛直距離Vと、キャリッジ5を吊り下げている第1及び第2チェーン7,8間の水平距離Wとから、第1及び第2水平距離D1,D2の差の値に対し、センサ26,27が、W/Vの倍率を乗じた出力信号をジャッキ22に出力するようになっている。
【0083】
これら鉛直距離V及び水平距離Wは、キャリッジ5が水平姿勢のときに計測される寸法である。
【0084】
上記実施形態では、被測定体が支柱11である場合について説明したが、支柱11に代えて、
図1及び
図2に示しているように、立体フレーム9の天井部10に、吊り下げベース29を介して、上端が連結されたワイヤなどの線材30と、線材30の下端に連結され、当該線材30を下方へ引張して鉛直方向に真っ直ぐに張るためのウエイト31とを備え、線材30の振れ止めのために、ボトムフレーム3に設置した容器32内に油を満たした油溜まりにウエイト31を浸漬する構成を採用し、線材30を、レーザー光Lを照射して水平距離D1,D2を測定する被測定体とするようにしても良い。
【0085】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1 縦型ルーパ
2 帯状材
3 ボトムフレーム
4 第1ロール(下ロール)
5 キャリッジ
5a 上面
5b 下面
6 第2ロール(上ロール)
6a ロール軸
7 第1チェーン(吊り材)
8 第2チェーン(吊り材)
9 立体フレーム
10 天井部
11 支柱
12 機台
13 駆動モータ
14 回転軸系
15 ギヤボックス
16 軸受部材
17 第1スプロケット
18 第2スプロケット
19 軸受部材
20 第3スプロケット
21 重錘
22 ジャッキ
23 モータ駆動式ネジ機構
24 ロッド
26 上部変位測定センサ
27 下部変位測定センサ
28 コントローラ
28a 演算記憶部
29 吊り下げベース
30 線材
31 ウエイト
32 容器
33 投光部
34 受光部
41 カップリング
D1 第1水平距離
D2 第2水平距離
ΔD 距離差
ΔDRx 搬送時距離差
ΔDSx 計測時距離差
F 歪み
Hx 計測高さ位置
L レーザー光
V 上部及び下部変位測定センサ間の鉛直距離
W 第1及び第2チェーン間の水平距離