(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130639
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】工程設計装置、工程設計方法、および工程設計プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20240920BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240920BHJP
G05B 19/418 20060101ALN20240920BHJP
G06F 119/18 20200101ALN20240920BHJP
【FI】
G06F30/20
G06Q50/08
G05B19/418 Z
G06F119:18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040484
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】杉原 哲朗
【テーマコード(参考)】
3C100
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA43
3C100AA65
3C100BB06
3C100BB27
5B146AA17
5B146DE12
5B146EC08
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】組立工程において適切に検査を行えるようにするための、工程設計の支援を行う工程設計装置を実現する。
【解決手段】本発明の一側面に係る工程設計装置(100)は、製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する推定部(110)と、各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程後において不可能になるかを、前記推定部の推定結果を参照して判定する判定部(120)と、前記判定部の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲をそれぞれ特定する特定部(130)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する推定部と、
各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程後において不可能になるかを、前記推定部の推定結果を参照して判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲をそれぞれ特定する特定部と、を備える、
工程設計装置。
【請求項2】
前記推定部は、3次元コンピュータ支援設計(3D-CAD)プログラムを用いて前記3次元形状を推定する、
請求項1に記載の工程設計装置。
【請求項3】
前記判定部は、或る組付工程の成否の検査が、前記或る組付工程の後の組付工程後において可能であるかを、前記或る組付工程の成否を確認するための部位が、前記後の組付工程後に外部から観察またはアクセス可能であるかに基づいて判定する、
請求項1に記載の工程設計装置。
【請求項4】
製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する推定処理と、
各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程において不可能になるかを、前記推定処理の推定結果を参照して判定する判定処理と、
前記判定処理の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲をそれぞれ特定する特定処理と、を実行する、
工程設計方法。
【請求項5】
コンピュータに、
製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する推定処理と、
各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程後において不可能になるかを、前記推定処理の推定結果を参照して判定する判定処理と、
前記判定処理の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲をそれぞれ特定する特定処理と、を実行させる、
工程設計プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程設計装置、工程設計方法、および工程設計プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部品を組み付けて製品を製造する場合には、ネジ止め、ハンダ付け等の組付作業が必要となる。そして、これら組付作業が十分に行われており欠陥が無いことを確認するためには、検査が必要となる。ここで、一つの部品を組み付ける毎に検査を行えばよいが、コストが膨大となり、現実的ではない。そのため、複数の組み付け工程の後にまとめて検査が行われるが検査漏れが生じる場合があり、このような事情に鑑みて、品質検査を過不足なく行うことが求められている。
【0003】
特許文献1では、まず加工順序の候補を作成し、その後に除去する領域の形状の情報を得て、品質検査を行うべき工程を抽出し、加工および品質検査の順序を決定する工程設計システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているのは、加工工程の検査である。加工工程では、工程が最後まで進んだ段階でも、過去のすべての段階で不具合があれば気付くことができる。一方、組立工程では、工程が進むと、過去の工程での不具合が確認できなることがある。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、組立工程において適切に検査を行えるようにするための、工程設計の支援を行う工程設計装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
すなわち、本発明の一態様に係る工程設計装置は、製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する推定部と、各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程後において不可能になるかを、前記推定部の推定結果を参照して判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲をそれぞれ特定する特定部と、を備える。
【0009】
上記構成では、或る組付工程の成否の検査が可能な工程の範囲が特定される。そのため、前記組付工程の成否の検査を前記検査が可能な工程の範囲の中で行い、不具合のある箇所の組み付けを行い或いは修正することにより、次に示す利点がある。すなわち、既に組み付けを行った部材を取り外し、不具合のある箇所の組み付けを行い或いは修正した後に、再度組み付けを行わなければならないというコストが発生しない。これにより、組立工程の検査において、ユーザの未知の品質問題がおきてしまうという不安を解消し、未知の品質問題が起きることによる事後対応を避けることができる。
【0010】
上記一態様に係る工程設計装置において、前記判定部は、或る組付工程の成否の検査が、前記或る組付工程の後の組付工程後において可能であるかを、前記或る組付工程の成否を確認するための部位が、前記後の組付工程後に外部から観察またはアクセス可能であるかに基づいて判定してよい。前記構成によれば、或る組付工程に不具合があることの検査が確実に行える。
【0011】
上記一態様に係る工程設計装置において、前記判定部は、或る組付工程について判定を行う場合に、前記或る組付工程の次の組付工程後において、前記或る組付工程の成否の検査が可能であるかを判定し、可能であると判定した場合には、さらに次の組付工程において、前記或る組付工程の成否の検査が可能であるかを判定することを繰り返してよい。前記構成によれば、一つ一つの組付工程毎に、前記組付工程後に検査が可能か判定するため、組付工程の成否の検査が可能な工程範囲の特定にあたり、漏れのない判定を行うことができる。
【0012】
上記一態様に係る工程設計装置において、前記推定部は、3次元コンピュータ支援設計(3D-CAD)プログラムを用いて前記3次元形状を推定してよい。前記構成によれば、前記推定にあたりコンピュータの支援を受けるため、正確かつ迅速な推定が行える。
【0013】
また、本発明の一態様に係る工程設計方法は、製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する推定処理と、各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程において不可能になるかを、前記推定処理の推定結果を参照して判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲をそれぞれ特定する特定処理と、を実行する。
【0014】
また、本発明の一態様に係る工程設計プログラムは、コンピュータに、製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する推定処理と、各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程後において不可能になるかを、前記推定処理の推定結果を参照して判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲をそれぞれ特定する特定処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、組立工程の検査において、ユーザの未知の品質問題がおきてしまうという不安を解消し、未知の品質問題が起きることによる事後対応を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る工程設計装置の構成を模式的に例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る工程設計装置の処理の流れを模式的に例示するフローチャートである。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る工程設計装置の適用場面の一例を模式的に例示する図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る工程設計装置の処理の結果を例示する表である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る工程設計装置のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る工程設計装置の処理の流れを模式的に例示するフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る判定部および特定部の処理の流れの一例を模式的に例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
§1 適用例
図1~
図2を参照しつつ、本発明の適用例に係る工程設計装置100が説明される。
図1は、本実施形態に係る工程設計装置100の構成を模式的に例示するブロック図である。
図2は、本実施形態に係る工程設計装置100の処理の流れを模式的に例示するフローチャートである。
【0018】
図1に示されるとおり、工程設計装置100は、製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する推定部110、各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程後において不可能になるかを、前記推定部の推定結果を参照して判定する判定部120、および、前記判定部の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲を特定する特定部130、を備えている。なお、組付工程の成否の検査が可能な工程範囲とは、前記組付工程が成功したか否かの結果を、どの工程からどの工程までの間に行なうことができるかを示す。
【0019】
図2のステップS11(推定処理)は、複数の部材から或る製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または完成した製品の3次元形状を推定する。ステップS12(判定処理)は、前記推定部の推定結果を参照して、各組付工程について、前記組付工程に不具合が存在するか否かの検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程においては不可能になるかを判定する。ステップS13(特定処理)は、前記判定部の判定結果に基づいて、各組付工程に不具合が存在するか否かの検査が可能な工程範囲(各組付工程から、前記検査が不可能になる組付工程の直前の組付工程まで)を前記各組付工程のそれぞれについて特定する。
【0020】
よって、本適用例によれば、組立工程において適切に検査を行えるようにするための、工程設計の支援を行う工程設計装置が実現できる。
【0021】
§2 構成例
以下、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」とも表記する)について、図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【0022】
[ハードウェア構成]
<工程設計装置>
図5を用いて、本実施形態に係る工程設計装置100のハードウェア構成の一例について説明する。
図5は、本実施形態に係る工程設計装置100のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図である。
【0023】
図5の例では、本実施形態に係る工程設計装置100は、制御部151、記憶部152、入力装置154、出力装置155、記憶媒体156、および、ドライブ157が電気的に接続されたコンピュータであってよい。本実施形態に係る工程設計装置100は、本発明の「工程設計装置」に相当する。制御部151は、推定部162,判定部163,および特定部164を備えている。また、記憶部152は、CADデータ153を格納する。
【0024】
ここで、CADとはComputer Aided Designの略語であり、コンピュータ支援設計のことである。より詳細には、コンピュータの助けを借りて、製品の設計を省力化・効率化し、正確な設計を行うことを含む。CADデータとは、或る製品、および前記製品の製造に用いられる部材に関する、CADで用いられる情報を含む。3D-CADとは、3次元コンピュータ支援設計のことであり、或る製品、および前記製品の製造に用いられる部材が3次元空間上の物体である場合のCADを含む。3D-CADデータとは、3D-CADで用いられる3次元空間上での情報を有する製品および前記製品の製造に用いられる部材に関する情報を含む。
【0025】
制御部151は、推定部162、判定部163、特定部164、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。記憶部152は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、制御部11で用いられるCADデータ153等を記憶する。
【0026】
CADデータ153は、3次元CAD(3D-CAD)のデータである。一例として、完成した製品を分解する順番の逆を組立順番とすることにより前記複数の組付工程を決定する際に用いる、前記完成した製品を分解する順番を導出するために用いられる。具体的には、完成品を示す3次元のCADデータから部材を破壊することなく取り外して部材一つ一つが分離している状態にまで分解し、前記取り外しの順番の逆の順番を組付工程としてもよい。
【0027】
これにより、3次元のCADデータから、組付工程が自動生成できる。
【0028】
また、前記組付工程を示す3次元のCADデータを辿ることにより、推定部162はS11の中間製品または完成製品の3次元形状を推定してもよい。
【0029】
ここで、前記部材の取り外しの順番が複数存在する場合には、前記順番の逆の組付工程も複数存在することとなる。この場合には、複数の順番のいずれを採用しても、組付に不具合が有った場合には既に組み付けを行った部材を取り外さなければ確認ができなくなる前に不具合に気付けるので、いずれを採用してもよい。また、前記複数の組付工程の順番を出力し、前記出力を見た者がいずれを採用するかを決めてもよい。
【0030】
また、前記3次元のCADデータは、判定部163が、前記各組付工程に不具合が有るか否かの検査がいずれの組付工程より後の組付工程後において不可能になるかを、前記推定部の推定結果を参照して判定する際に、前記推定結果を表すために用いられる。
【0031】
入力装置154は、例えば、マウス、キーボード等の入力を行うための装置である。出力装置155は、例えば、ディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置である。
【0032】
ドライブ157は、例えば、CD(Compact Disk)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disk)ドライブ等であり、記憶媒体156に記憶されたプログラムを読み込むための装置である。ドライブ157の種類は、記憶媒体156の種類に応じて適宜選択されてよい。上記CADデータ153は、この記憶媒体156に記憶されていてもよい。
【0033】
記憶媒体156は、コンピュータその他装置、機械等が、記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、前記プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的または化学的作用によって蓄積する媒体である。工程設計装置100は、この記憶媒体156から、CADデータ153を取得してもよい。
【0034】
ここで、
図5では、記憶媒体156の一例として、CD、DVD等のディスク型の記憶媒体を例示している。しかしながら、記憶媒体156の種類は、ディスク型に限定される訳ではなく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。
【0035】
なお、工程設計装置100の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換および追加が可能である。例えば、制御部151は、複数のプロセッサを含んでもよい。工程設計装置100は、複数台の情報処理装置で構成されてもよい。また、工程設計装置100は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、汎用のデスクトップPC(Personal Computer)、タブレットPC等が用いられてもよい。
【0036】
図3は、本実施形態に係る工程設計装置100の適用場面の一例を模式的に例示する図である。
図4は、本実施形態に係る工程設計装置100の処理の結果を例示する表である。本実施形態に係る工程設計装置100は、製品を製造するための組付工程の情報から、各組付工程について、前記工程の組付が成功したか否かを検査することが可能な組付工程の区間を特定する装置である。
【0037】
図3のステップ1~ステップ5は、組付工程が進む様子の一例である。ステップ1において、部材201が定盤である作業台に水平に置かれ、部材202が部材201上に組み付けられる。具体的な組付方法の一例としては、部材202は部材201に4隅をネジ止めされることにより組み付けられる。ステップ2において、部材203、204、および205が部材201上にさらに組み付けられる。具体的な組付方法の一例としては、部材203、204、および205はそれぞれ部材201に差し込まれることにより組み付けられる。ステップ3において、金属線206の片端が部材202にハンダ付けされ、金属線207の片端が部材201にハンダ付けされる。ステップ4において、金属線207の片端が部材202にハンダ付けされる。ここで、前記ハンダ付けが行いやすいように部材201は縦置きのための専用台に置かれ、縦置きにされる。ステップ5において、部材201に組み付けられた部材202および金属線207の部材201にハンダ付けした箇所を覆い隠す態様で部材208が部材201に組み付けられる。具体的な組付方法の一例としては、前記部材208は、4隅をネジ止めすることにより部材201に組み付けられる。
【0038】
図4の出力例のステップ(n)の列の数は、
図3中に示された組付工程の内の各組付工程のステップ番号を表す数である。検査可能なステップ(最大値)の列の数は、その数の左にある数で表される組付工程の検査が、
図3中の各組付工程の内の何番目の組付工程の直後までは可能であるかを示す。
【0039】
以下に、
図3と
図4を相互に参照して両者の関連を説明する。
【0040】
図3中のステップ1が成功しなかった場合を考える。具体例は、部材201と部材202の間に異物が挟まれていた場合である。前記異物の存在の結果、部材202の4隅のネジが1cmねじ込まれてネジ止めがされるはずのところ、4隅ともネジは5mmしかねじ込まれなかったとする。部材202の4隅のネジ止めの成否は、ステップ5で部材202が部材208により覆い隠されると判断することが不可能になる。
【0041】
ここで、工程設計装置100の推定部110は、少なくとも
図3のステップ1~ステップ5に示された3次元構造を推定する。工程設計装置100の判定部120は、前記推定の結果に基づいて、部材202の組付工程(ステップ1)が十分になされているか否かの検査は、部材208の組み付けを行った後には不可能になると判定する。工程設計装置100の特定部130は、部材201の組付工程が十分になされているか否かの検査は、ステップ1の直後からステップ4の直後にのみできるということを特定する。従って、
図4中の検査可能なステップ(最大値)の列の値は4となる。
【0042】
図3中のステップ1は成功したが、ステップ2が成功しなかった場合を考える。具体例は、ステップ2における部材203、部材204、および部材205のいずれかの差込が不十分であった場合である。
【0043】
ここで、工程設計装置100の推定部110は、少なくとも
図3のステップ2~ステップ5に示された3次元構造を推定する。工程設計装置100の判定部120は、前記推定の結果に基づいて、ステップ2における部材203、部材204、および部材205の組付について、十分になされているか否かの検査は、ステップ2の直後からステップ5の直後まで可能であると特定される。従って、
図4中の検査可能なステップ(最大値)の列の値は5となる。
【0044】
図3中のステップ1および2は成功したが、ステップ3が成功しなかった場合を考える。具体例は、ステップ3では2か所のハンダ付けが行われるはずのところ、金属線207のハンダ付けが行われずに金属線207は部材201の上に置かれただけの状態の場合である。更に、この場合に、ステップ4において金属線207の部材202へのハンダ付けが成功した場合を考える。この場合には、金属線207の片端のみが部材202にハンダ付けされ、他の片端はハンダ付けされていない状態となる。金属線207の部材202へのハンダ付けの成否は、ステップ5で部材202が部材208により覆い隠されると判断することが不可能になる。
【0045】
ここで、工程設計装置100の推定部110は、少なくとも
図3のステップ3~ステップ5に示された3次元構造を推定する。工程設計装置100の判定部120は、前記推定の結果に基づいて、金属線207の部材201への組付工程が十分になされているか否かの検査は、部材208の組み付けを行った後には不可能になると判定する。工程設計装置100の特定部130は、金属線207の組付工程が十分になされているか否かの検査は、ステップ3の直後からステップ4の直後にのみできるということを特定する。
【0046】
図3中のステップ1、2および3は成功したが、ステップ4が成功しなかった場合を考える。具体例は、ステップ4では金属線207の部材202へのハンダ付けが行われるはずのところ、前記ハンダ付けが行われずに金属線207は部材201にハンダ付けされただけの状態の場合である。金属線207の部材202へのハンダ付けの成否は、ステップ5で部材202が部材208により覆い隠されると判断することが不可能になる。
【0047】
ここで、工程設計装置100の推定部110は、少なくとも
図3のステップ4およびステップ5に示された3次元構造を推定する。工程設計装置100の判定部120は、前記推定の結果に基づいて、金属線207の部材202への組付工程が十分になされているか否かの検査は、部材208の組み付けを行った後には不可能になると判定する。工程設計装置100の特定部130は、金属線207の組付工程が十分になされているか否かの検査は、ステップ4の直後にのみできるということを特定する。
【0048】
図3中のステップ1、2、3および4が成功した場合に、ステップ5の成否の検査が可能な工程の範囲は、
図3にはステップ5より後の工程が示されていないため、
図4中には書かれていない。
【0049】
上記において、判定部120が部材208により覆い隠された部分の検査が不可能になるとの判定の基準の一例として、外部から観察もアクセスもできなくなるか否か、ということがある。
【0050】
前記観察は、外観検査を含んでもよい。前記アクセスは、通電検査を含む、前記観察以外の方法により部材の組付に不具合が無いことを検知できる各種の検査、試験等を含んでもよい。部材にアクセスができるとは、通電検査の場合には、前記部材に通電のためのプローブを当てることができるということを含む。
【0051】
以上より、或る製品の組立工程において、前記組立工程のそれぞれを検査すべき適切なタイミングが分かる。現状においては、組付作業が十分に行われていなかったために欠陥があることが発覚してから、新たな検査内容を追加する場合が頻繁に発生している。また、現状は、問題は顕在化していないとしても、いつ問題が顕在化してもおかしくない状況にあるともいえる。しかしながら、本実施形態によれば、ユーザは、未知の品質問題がおきてしまうという不安を解消し、未知の品質問題が起きることによる事後対応を避けることができる。また、前記製品の専門家や前記製品に熟練した作業者でなければ知らなかったり、気づくことが難しい不具合でも、見落とすことがなくなる。更に、既存の検査と工程設計装置100が提示する検査と比べることにより、検査を行い過ぎていて不要な検査が存在する場合には、不要な検査が分かる。また、前記通電検査等の外観検査以外の方法も検査に用いられた場合には、3次元情報に基づいて判定部が行う外観検査のみにより検査が行われる場合に比べて、不具合が検査で発見できない可能性が更に低くなる。
【0052】
[各構成部分の動作]
<制御部151の処理>
次に、
図6を用いて、本実施形態に係る工程設計装置100中の制御部151の処理について説明する。
図6は、本実施形態に係る工程設計装置の処理の流れを模式的に例示するフローチャートである。
【0053】
図5に示されるとおり、本実施形態に係る工程設計装置100の制御部151は、推定部162、判定部163、および特定部164を備えている。
【0054】
ステップS22に先立って、製造しようとする製品の3次元のCADデータ153に基づいて、製造しようとする製品を分解する順番を得てもよい。そして、前記分解順番の逆を組立順番とすることにより、製造しようとする製品の組付工程を生成してもよい。
【0055】
ステップS22(推定処理)では、推定部162は、製造しようとする製品の3次元のCADデータ153、および、既存の組付工程に基づいて、前記製造しようとする製品の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する。
【0056】
ステップS23(判定処理)では、判定部163は、各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程後において不可能になるかを、前記推定部162の推定結果を参照して判定する。前記判定は、或る組付工程の成否の検査が、前記或る組付工程の後の組付工程後において可能であるかに基づいて行われる。前記可能であるかの判断は、前記或る組付工程の成否を確認するための部位が、前記後の組付工程後に外部から観察またはアクセス可能であるかに基づいて行われる。
【0057】
ステップS24(特定処理)では、特定部164は、前記判定部163の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程をそれぞれ特定する。
【0058】
その後、前記複数の組付工程に対して、前記特定部164が特定した各組付工程の成否の検査が可能な工程に基づいて、前記組付工程を検査する検査工程をそれぞれ挿入してもよい。
【0059】
以上のステップS22からS24までの処理により、製造しようとする製品の3次元のCADデータ153を入力すると、既存の組付工程に対して、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲が生成される。生成された各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲を示す情報(例えば、
図4に示すような表)は、例えば、出力装置155によって出力されてよい。
【0060】
<判定部の動作>
次に、
図7を用いて、本実施形態に係る判定部163および特定部164の処理の流れを説明する。
図7は、本実施形態に係る判定部163および特定部164の処理の流れの一例を模式的に例示するフローチャートである。
【0061】
S502からS511までの内の、S505からS508までのループを含む処理は判定部163の処理に対応し、S509が特定部164の処理に対応する。その他の繰り返しを表すステップは判定部163の処理および特定部164の処理のいずれにも対応する。
【0062】
S502において、特定部164は、変数nの値を初期化する。
例えば、特定部164は、各組付工程の工程順の番号を表すnの値を1に設定する。
【0063】
S503において、判定部163および特定部164は、組付工程のn工程目における処理を開始する。
【0064】
S504において、判定部163は、変数kの値を初期化する。例えば、判定部163は、kの値を1に設定する。変数kは、組付工程のn工程目における組付作業に不具合が無いか検査できる工程数のチェックに用いられる変数である。換言すると、変数kにより、n工程目の次の工程から起算してk工程目の直後までの分だけが検査可能か調べる。
【0065】
S505において、判定部163は、推定部162が3次元のCADデータを用いて推定した(n+k)工程後の中間製品または製品の3次元のCADデータを取得する。
【0066】
S506において、判定部163は、(n+k)工程目の直後に、n工程目における組付作業に不具合が無いか検査できるかを調べる。前記検査は、実際の製品製造段階で行われる検査の態様に対応した様式で行われる。一例として、実際の製品製造段階で中間製品又は完成製品を全方位から観察する場合には、前記3次元のCADデータ上でも全方位から観察する。他の例として、観察コストの問題等の理由で実際の製品製造段階で中間製品又は完成製品を一方位からしか観察しない場合には、前記3次元のCADデータ上でも前記一方位からのみ観察する。他の例として、実際の製品製造段階で中間製品又は完成製品に通電検査用のプローブを当てる箇所が限定されている場合には、前記3次元のCADデータ上でも前記箇所にのみプローブを当てる。
【0067】
調べた結果が「検査できる」だった場合、判定部163は、S507において、kの値を1増加させた後に、S508にてkの値がNの値より大きくないか調べる。
【0068】
調べた結果が「kの値がNの値より大きくない」だった場合、判定部163は、S505に戻ってS505からS507までの処理を繰り返す。
【0069】
S506において調べた結果が「検査できない」だった場合、特定部164は、S509において、「n工程目の検査は、(n+k-1)工程目の直後まで可能」という結果を特定する。これは、(n+k)工程目の直後においてはn工程目の検査ができないという結果を受けたものである。
図4の表記では、ステップ(n)の列に「n」が記入され、検査可能なステップ(最大値)に「n+k-1」が記入される。その後、S510において、特定部164は、nの値を1増加させた後に、S511において、nの値がNに等しいか調べる。
【0070】
調べた結果が「nの値はNに等しくない」だった場合、判定部163および特定部164は、S503に戻ってループを含むS503からS511までの処理を繰り返す。
【0071】
S508において、kの値が(N+1)に等しかった場合、特定部164は、S510に進みnの値を1増加させる。これは、kの値が(N+1)に等しいということは、組立工程がN工程目までしかないことから不当であるため、今考えているn工程目の検査可能性から、次の組立工程の検査可能性の検討に移るという意味である。
【0072】
S511において調べた結果が、「nの値はNに等しい」だった場合、判定部163および特定部164は、本フローチャートの処理を終了させる。以上により、判定処理S23および特定処理S24を実現することができる。
【0073】
なお、製品を製造するための複数の組付工程に対して、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲に基づいて、前記組付工程を検査する検査工程をそれぞれ挿入してもよい。
【0074】
前記挿入により、前記複数の組付工程に1つまたは複数の検査工程が挿入された工程順ができ上がる。この工程順に含まれる検査工程において検査を実施すれば、既に組み付けを行った部材を取り外さなければ確認ができなくなる前に不具合に気付けるようにすることができる。
【0075】
前記工程順を確認した者は、挿入された検査工程の要否について判断し、不要と判断した検査工程については削除してもよい。削除した検査工程が有る場合、前記削除後の工程順について再度、本実施形態の処理を行い、新たに挿入される検査工程が有るか否かを確かめてもよい。前記の削除と新たな検査工程の挿入を所望の工程順が得られるまで繰り返してもよい。
【0076】
〔まとめ〕
(1)本発明の態様1に係る工程設計装置(100)は、製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する推定部(110、162)と、各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程後において不可能になるかを、前記推定部の推定結果を参照して判定する判定部(120、163)と、前記判定部の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲をそれぞれ特定する特定部(130、163)と、を備える。
【0077】
(2)本発明の態様2に係る工程設計装置(100)は、態様1において、前記推定部(110、162)は、3次元コンピュータ支援設計(3D-CAD)プログラムを用いて前記3次元形状を推定する。
【0078】
(3)本発明の態様3に係る工程設計装置(100)は、態様1または2において、前記判定部(120、163)は、或る組付工程の成否の検査が、前記或る組付工程の後の組付工程後において可能であるかを、前記或る組付工程の成否を確認するための部位が、前記後の組付工程後に外部から観察またはアクセス可能であるかに基づいて判定する。
【0079】
(4)本発明の態様4に係る工程設計方法は、製品を製造するための複数の組付工程における各組付工程後の中間製品または前記製品の3次元形状を推定する推定処理と、各組付工程について、前記組付工程の成否の検査が、前記組付工程よりも後のいずれの組付工程において不可能になるかを、前記推定処理の推定結果を参照して判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に基づいて、各組付工程の成否の検査が可能な工程範囲をそれぞれ特定する特定処理と、を実行する。
【0080】
(5)本発明の各態様に係る工程設計装置(100)は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記工程設計装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記工程設計装置をコンピュータにて実現させる工程設計装置の工程設計制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0081】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
100…工程設計装置
110…推定部
120…判定部
130…特定部
152…記憶部
153…CADデータ
154…入力装置
155…出力装置
156…外部インタフェース
157…ドライブ
162…推定部
163…判定部
164…特定部