(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130641
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】調整方法、調整装置、測定装置の製造方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20240920BHJP
G01N 33/28 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N33/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040487
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 順基
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059AA05
2G059BB04
2G059CC09
2G059CC14
2G059CC15
2G059DD12
2G059DD13
2G059EE01
2G059GG03
2G059KK01
2G059KK03
2G059MM01
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】オイルを用いることなく測定装置を調整することができる。
【解決手段】測定流路に光を照射する光照射部と、光照射部から照射されて測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、を有し、測定流路にオイルを流した状態において受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置を調整する。測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが測定流路を流れたときに受光部に入力される光と同等な光を照射させる第1疑似信号を用いて光照射部から光を照射し、当該照射された光を受光部で受光して得られた電気信号に基づいて第1汚染度における測定値を得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定流路に光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、を有し、前記測定流路にオイルを流した状態において前記受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置を調整する調整方法であって、
前記測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等な光を照射させる第1疑似信号を用いて前記光照射部から光を照射し、当該照射された光を前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得る第1調整ステップを含む
ことを特徴とする調整方法。
【請求項2】
基準測定装置を用いて、前記第1疑似信号を生成する疑似信号生成ステップを含み、
前記基準測定装置は、基準測定流路に光を連続して照射する基準光照射部と、前記基準光照射部から連続して照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る基準受光部と、を有し、
前記疑似信号生成ステップは、
前記基準測定流路に前記第1汚染度のオイルを流した状態で前記基準光照射部から光を照射し、当該照射された光を前記基準受光部で受光して得られた電気信号を測定して前記第1汚染度における第1基準測定値を得る第1基準値測定ステップと、
前記測定流路にオイルを流さない状態で、前記基準受光部を点滅させる点滅信号を用いて前記基準光照射部から光を照射させ、当該基準受光部で得られた電気信号が前記基準受光部で得られた電気信号と同等であるときの前記点滅信号を前記第1疑似信号とする第1疑似信号取得ステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の調整方法。
【請求項3】
前記第1基準値測定ステップでは、前記基準受光部で受光して得られた電気信号の単位時間当たりの積分値を平滑化して前記第1基準測定値を得、
前記第1疑似信号取得ステップでは、前記基準受光部で受光して得られた電気信号の単位時間当たりの積分値が前記第1基準測定値と同等となったときの前記点滅信号を前記第1疑似信号とする
ことを特徴とする請求項2に記載の調整方法。
【請求項4】
前記第1疑似信号取得ステップでは、前記測定流路にオイルを流さない状態で、前記基準受光部で得られる信号の出力値の最大値が、前記第1基準値測定ステップにおいて前記基準受光部で受光して得られた電気信号の最大値である基準出力値と同等な値となるように前記基準光照射部の出力レベルを調整し、当該調整後に前記基準光照射部から光を照射させて前記第1疑似信号を得る
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の調整方法。
【請求項5】
前記第1調整ステップでは、前記第1疑似信号取得ステップにおける出力レベルの調整結果に基づいて前記光照射部の出力レベルを調整し、当該調整後の出力レベルで前記第1疑似信号を用いて前記光照射部から光を照射する
ことを特徴とする請求項4に記載の調整方法。
【請求項6】
前記測定流路は、少なくとも一部がガラスで形成された配管を含み、
前記測定流路にオイルを流さない状態とは、前記測定流路に液体を流さない状態、前記測定流路にオイル以外の液体を流した状態、又は、前記配管に変えてガラス棒を設けた状態である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の調整方法。
【請求項7】
前記測定流路にオイル以外の液体を流した状態とは、前記測定流路に水、アルコール、又は、水とアルコールの混合物を流した状態である
ことを特徴とする請求項6に記載の調整方法。
【請求項8】
測定流路に光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、を有し、前記測定流路にオイルを流した状態で前記受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置を調整する調整方法であって、
任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等となるように、光を通さない遮光スリットが複数設けられた棒状部材を第1速度で前記測定流路内を移動させながら前記光照射部から連続的に光を照射し、当該照射により前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得る第1調整ステップを含む
ことを特徴とする調整方法。
【請求項9】
基準測定装置を用いて、前記棒状部材の前記遮光スリットの大きさ及び数と、前記第1速度とを調整する棒状部材調整ステップを含み、
前記基準測定装置は、基準測定流路に光を連続して照射する基準光照射部と、前記基準光照射部から連続して照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る基準受光部と、を有し、
前記棒状部材調整ステップは、
前記基準測定流路に前記第1汚染度のオイルを流した状態で前記基準光照射部から光を照射し、当該照射された光を前記基準受光部で受光して得られた電気信号を測定して前記第1汚染度における第1基準測定値を得る第1基準値測定ステップと、
前記基準光照射部から光を連続的に点灯し、前記遮光スリットを任意の大きさ及び数で設けた仮棒状部材を任意の仮速度で前記基準測定流路内を移動させながら前記基準受光部で電気信号を得、当該電気信号が前記第1基準測定値と同等となった場合に前記仮棒状部材及び前記仮速度を前記棒状部材及び前記第1速度とする調整ステップと、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の調整方法。
【請求項10】
前記第1基準値測定ステップでは、前記基準受光部で受光して得られた電気信号の単位時間当たりの積分値を平滑化して前記第1基準測定値を得、
前記調整ステップでは、前記基準受光部で受光して得られた電気信号の単位時間当たりの積分値が前記第1基準測定値と同等となったときの前記仮棒状部材及び前記仮速度を前記棒状部材及び前記第1速度とする
ことを特徴とする請求項9に記載の調整方法。
【請求項11】
測定流路に光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、を有し、前記測定流路にオイルを流した状態において前記受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置を調整する調整装置であって、
前記測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等な光を照射させる第1疑似信号を用いて前記光照射部から光を照射する照射制御部と、
前記光照射部から照射された光を前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得る測定部と、
を含むことを特徴とする調整装置。
【請求項12】
測定流路に光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、を有し、前記測定流路にオイルを流した状態において前記受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置を調整する調整装置であって、
任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等となるように、光を通さない遮光スリットが複数設けられた棒状部材を第1速度で前記測定流路内を移動させながら前記光照射部から連続的に光を照射する照射制御部と、
前記光照射部から照射された光を前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得る測定部と、
を含むことを特徴とする調整装置。
【請求項13】
配管を含む測定流路にオイルを流した状態において、前記測定流路に光を照射する光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を受光部で連続して受光して得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置の製造方法であって、
前記配管を挟むように、前記光照射部と前記受光部とを設けるステップと、
前記測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等な光を照射させる第1疑似信号を用いて前記光照射部から光を照射し、当該照射された光を前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得るステップと、
前記測定流路、前記光照射部及び前記受光部が内部に設けられた筐体を組み立てるステップと、
を含むことを特徴とする測定装置の製造方法。
【請求項14】
配管を含む測定流路にオイルを流した状態において、前記測定流路に光を照射する光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を受光部で連続して受光して得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置の製造方法であって、
前記配管を挟むように、前記光照射部と前記受光部とを設けるステップと、
前記測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等となるように、光を通さない遮光スリットが複数設けられた棒状部材を第1速度で前記測定流路内を移動させながら前記光照射部から連続的に光を照射し、当該照射により前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得るステップと、
前記測定流路、前記光照射部及び前記受光部が内部に設けられた筐体を組み立てるステップと、
を含むことを特徴とする測定装置の製造方法。
【請求項15】
測定流路に光を照射する光照射部と、
前記光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、
前記光照射部の点灯を制御し、かつ、前記受光部での受光結果に基づいて測定値を得る制御部と、
前記測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等な光を照射させる第1疑似信号を用いて前記光照射部から光を照射させ、当該照射された光を前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得る場合と、前記第1汚染度における測定値及び前記測定流路にオイルを流した状態において前記受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する場合とで前記受光部からの出力を切り替える切替部と、
を備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項16】
測定流路に光を照射する光照射部と、
前記光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、
前記光照射部の点灯を制御し、かつ、前記受光部での受光結果に基づいて測定値を得る制御部と、
任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等となるように、光を通さない遮光スリットが複数設けられた棒状部材を第1速度で前記測定流路内を移動させながら前記光照射部から連続的に光を照射し、当該照射により前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得る場合と、前記第1汚染度における測定値及び前記測定流路にオイルを流した状態において前記受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する場合とで前記受光部からの出力を切り替える切替部と、
を備えたことを特徴とする測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整方法、調整装置、測定装置の製造方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体に光を連続して照射する光照射部と、光照射部から連続して照射されて液体を通った光を連続して受光し、連続して受光した光を連続した電気信号に変換する受光部と、受光部で変換した連続した電気信号を第1の倍率で増幅して、連続した信号である粒子検出信号を生成する粒子検出部と、受光部で変換した連続した電気信号を第1の倍率より小さい第2の倍率で増幅して、連続した信号である気泡検出信号を生成する気泡検出部と、粒子検出信号と気泡検出信号とに基づいて体の汚染度を測定するための信号を生成する汚染度測定部と、を備えた測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の測定装置では、汚染度の測定を行う前に受光部を調整しておく必要がある。受光部の調整は、予め汚染度が既知の液体(作動油等のオイル)を測定流路に流した状態で光照射部から連続して光を照射し、それを受光部で受光して得られた電気信号に基づいて行われる。しかしながら、測定流路にオイルを流すと、オイルの洗浄に手間がかかり調整に時間を要してしまう。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、オイルを用いることなく測定装置を調整することができる調整方法、調整装置、測定装置の製造方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る調整方法は、例えば、測定流路に光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、を有し、前記測定流路にオイルを流した状態において前記受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置を調整する調整方法であって、前記測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等な光を照射させる第1疑似信号を用いて前記光照射部から光を照射し、当該照射された光を前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得る第1調整ステップを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の別の態様に係る調整装置は、例えば、測定流路に光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、を有し、前記測定流路にオイルを流した状態において前記受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置を調整する調整装置であって、前記測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等な光を照射させる第1疑似信号を用いて前記光照射部から光を照射する照射制御部と、前記光照射部から照射された光を前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得る測定部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の別の態様に係る測定装置の製造方法は、配管を含む測定流路にオイルを流した状態において、前記測定流路に光を照射する光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を受光部で連続して受光して得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置の製造方法であって、前記配管を挟むように、前記光照射部と前記受光部とを設けるステップと、前記測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等な光を照射させる第1疑似信号を用いて前記光照射部から光を照射し、当該照射された光を前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得るステップと、前記測定流路、前記光照射部及び前記受光部が内部に設けられた筐体を組み立てるステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の上記いずれかの態様では、測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度(第1汚染度)のオイルが測定流路を流れたときに受光部に入力される光と同等な光を照射させる第1疑似信号を用いて、前記光照射部から照射された光を受光部で受光して得られた電気信号に基づいて第1汚染度における測定値を得て、測定装置を調整する。これにより、オイルを用いることなく測定装置を調整することができる。
【0010】
基準測定装置を用いて、前記第1疑似信号を生成する疑似信号生成ステップを含み、前記基準測定装置は、基準測定流路に光を連続して照射する基準光照射部と、前記基準光照射部から連続して照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る基準受光部と、を有し、前記疑似信号生成ステップは、前記基準測定流路に前記第1汚染度のオイルを流した状態で前記基準光照射部から光を照射し、当該照射された光を前記基準受光部で受光して得られた電気信号を測定して前記第1汚染度における第1基準測定値を得る第1基準値測定ステップと、前記測定流路にオイルを流さない状態で、前記基準受光部を点滅させる点滅信号を用いて前記基準光照射部から光を照射させ、当該基準受光部で得られた電気信号が前記基準受光部で得られた電気信号と同等であるときの前記点滅信号を前記第1疑似信号とする第1疑似信号取得ステップと、を含んでもよい。これにより、第1疑似信号の精度を高くすることができる。
【0011】
前記第1基準値測定ステップでは、前記基準受光部で受光して得られた電気信号の単位時間当たりの積分値を平滑化して前記第1基準測定値を得、前記第1疑似信号取得ステップでは、前記基準受光部で受光して得られた電気信号の単位時間当たりの積分値が前記第1基準測定値と同等となったときの前記点滅信号を前記第1疑似信号としてもよい。これにより、正確な第1疑似信号を得、これにより調整の精度を高くすることができる。
【0012】
前記第1疑似信号取得ステップでは、前記測定流路にオイルを流さない状態で、前記基準受光部で得られる信号の出力値の最大値が、前記第1基準値測定ステップにおいて前記基準受光部で受光して得られた電気信号の最大値である基準出力値と同等な値となるように前記基準光照射部の出力レベルを調整し、当該調整後に前記基準光照射部から光を照射させて前記第1疑似信号を得てもよい。これにより、正確な第1疑似信号を得、調整の精度を高くすることができる。
【0013】
前記第1調整ステップでは、前記第1疑似信号取得ステップにおける出力レベルの調整結果に基づいて前記光照射部の出力レベルを調整し、当該調整後の出力レベルで前記第1疑似信号を用いて前記光照射部から光を照射してもよい。これにより、調整の精度を高くすることができる。
【0014】
前記測定流路は、少なくとも一部がガラスで形成された配管を含み、前記測定流路にオイルを流さない状態とは、前記測定流路に液体を流さない状態、前記測定流路にオイル以外の液体を流した状態、又は、前記配管に変えてガラス棒を設けた状態であってもよい。また、前記測定流路にオイル以外の液体を流した状態とは、前記測定流路に水、アルコール、又は、水とアルコールの混合物を流した状態であってもよい。測定流路に液体を流さない状態では、調整の時間を特に短縮することができる。また、測定流路にオイル以外の液体を流した状態や配管に変えてガラス棒を設けた状態では、配管にオイルを流した状態に近いため、調整の時間を短縮しつつも、調整の精度が向上しやすい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る調整方法は、例えば、測定流路に光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、を有し、前記測定流路にオイルを流した状態で前記受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置を調整する調整方法であって、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等となるように、光を通さない遮光スリットが複数設けられた棒状部材を第1速度で前記測定流路内を移動させながら前記光照射部から連続的に光を照射し、当該照射により前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得る第1測定ステップを含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の別の態様に係る調整装置は、例えば、測定流路に光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る受光部と、を有し、前記測定流路にオイルを流した状態において前記受光部で得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置を調整する調整装置であって、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等となるように、光を通さない遮光スリットが複数設けられた棒状部材を第1速度で前記測定流路内を移動させながら前記光照射部から連続的に光を照射する照射制御部と、前記光照射部から照射された光を前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得る測定部と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の別の態様に係る測定装置の製造方法は、配管を含む測定流路にオイルを流した状態において、前記測定流路に光を照射する光照射部から照射されて前記測定流路を通った光を受光部で連続して受光して得られた電気信号に基づいてオイルの汚染度を測定する測定装置の製造方法であって、前記配管を挟むように、前記光照射部と前記受光部とを設けるステップと、前記測定流路にオイルを流さない状態で、任意の汚染度である第1汚染度のオイルが前記測定流路を流れたときに前記受光部に入力される光と同等となるように、光を通さない遮光スリットが複数設けられた棒状部材を第1速度で前記測定流路内を移動させながら前記光照射部から連続的に光を照射し、当該照射により前記受光部で受光して得られた電気信号に基づいて前記第1汚染度における測定値を得るステップと、前記測定流路、前記光照射部及び前記受光部が内部に設けられた筐体を組み立てるステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の上記いずれかの態様では、任意の汚染度(第1汚染度)のオイルが測定流路を流れたときに受光部に入力される光と同等となるように、光を通さない遮光スリットが複数設けられた棒状部材を第1速度で測定流路内を移動させながら光照射部から光を連続的に光を照射し、当該照射により受光部で受光して得られた電気信号に基づいて第1汚染度における測定値を得て、測定装置を調整する。これにより、オイルを用いることなく測定装置を調整することができる。
【0019】
基準測定装置を用いて、前記棒状部材の前記遮光スリットの大きさ及び数と、前記第1速度とを調整する棒状部材調整ステップを含み、前記基準測定装置は、基準測定流路に光を連続して照射する基準光照射部と、前記基準光照射部から連続して照射されて前記測定流路を通った光を連続して受光して連続した電気信号を得る基準受光部と、を有し、前記棒状部材調整ステップは、前記基準測定流路に前記第1汚染度のオイルを流した状態で前記基準光照射部から光を照射し、当該照射された光を前記基準受光部で受光して得られた電気信号を測定して前記第1汚染度における第1基準測定値を得る第1基準値測定ステップと、前記基準光照射部から光を連続的に点灯し、前記遮光スリットを任意の大きさ及び数で設けた仮棒状部材を任意の仮速度で前記基準測定流路内を移動させながら前記基準受光部で電気信号を得、当該電気信号が前記第1基準測定値と同等となった場合に前記仮棒状部材及び前記仮速度を前記棒状部材及び前記第1速度とする調整ステップと、を含んでもよい。これにより棒状部材及び第1速度の調整精度を高くすることができる
【0020】
前記第1基準値測定ステップでは、前記基準受光部で受光して得られた電気信号の単位時間当たりの積分値を平滑化して前記第1基準測定値を得、前記調整ステップでは、前記基準受光部で受光して得られた電気信号の単位時間当たりの積分値が前記第1基準測定値と同等となったときの前記仮棒状部材及び前記仮速度を前記棒状部材及び前記第1速度としてもよい。これにより、調整の精度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、オイルを用いることなく測定装置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】測定装置1、1A及び測定装置1、1Aに接続される調整装置2の電気的な構成の概略を示すブロック図である。
【
図3】調整装置2が測定装置1Aの調整処理を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】測定装置1Aの製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】測定値を得る方法を説明する模式図であり、(A)は配管39に流れるオイルに含まれる粒子(ダスト)の流れを模式的に示し、(B)は電気信号の出力の時間変化を模式的に示す。
【
図6】疑似信号を取得する処理(ステップSP20)の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】発光素子11から照射された光の様子を示す図であり、(A)は配管39内にオイルがある状態を示し、(B)は配管39内にオイルが無く空気がある状態を示す。
【
図8】点滅信号snを用いて発光素子11が点滅したときに受光部20で得られた電気信号を模式的に示す図である。
【
図9】ステップSP30の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】測定装置1で疑似信号を得る、及び、測定装置1Aで測定値を得る様子を模式的に示す図である。
【
図11】測定装置1、1A及び測定装置1、1Aに接続される調整装置2Aの電気的な構成の概略を示すブロック図である。
【
図12】調整装置2Aが測定装置1Aの調整処理を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】棒状部材調整ステップ(ステップSP40)の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】ステップSP50の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】測定装置1B及び測定装置1、1Aに接続される調整装置2Aの電気的な構成の概略を示すブロック図である。
【
図16】調整装置2が測定装置1Bの調整処理を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、建設機械、油圧機器等のオイルを用いて所望の動作を行う装置の所望の位置に設けられ、オイルの汚染度を測定する測定装置の調整に関するものである。測定装置の調整は、測定装置を出荷する前の製造工程で行われる。
【0024】
<第1の実施の形態>
図1は、測定装置1の概略を示す断面図である。なお、
図1では、断面を示すハッチングを一部省略する。測定装置1は、主として、光照射部10と、受光部20と、筐体30と、配管39とを有する。
【0025】
光照射部10は、主として、発光素子11と、発光素子11が設けられた基板15とを有する。発光素子11は、例えば、LEDであり、配管39に向けて光を照射する。
【0026】
受光部20は、主として、受光素子21と、受光素子21が設けられた基板25とを有する。受光素子21は、例えばフォトダイオード(PD)であり、光の照射による透過光を検出する。
【0027】
発光素子11と受光素子21とは、配管39を挟んで配置されている。また、発光素子11の光軸ax1は、受光素子21の受光領域と重なる。なお、受光領域とは、入射した光が検出可能な領域であり、受光素子21は、受光領域に入射した光を電気信号に変換する。例えば、受光素子21がフォトダイオードである場合には、環状電極に囲まれた内側の領域が受光領域である。
【0028】
なお、
図1では、発光素子11の光軸ax1は受光素子21の光軸ax2と一致しているが、光軸ax1と光軸ax2とは一致していなくてもよい。
【0029】
配管39は、少なくとも一部が光透過性の材料(ここでは、ガラス)で形成されており、測定対象である油、水等の液体が内部を通過する。配管39の光透過性材料で形成された部分に対し、一方から発光素子11が光を照射し、反対側で受光素子21が光を受光する。
【0030】
なお、配管39は全体が光透過性の材料で形成されたものであってもよいし、一部に光を導入及び導出するための窓が形成されたものであってもよい。
図1では、配管39は、全体がガラスで形成されたガラス管である。
【0031】
配管39は、筐体30の内部に設けられている。筐体30は、主として、第1筐体31と、第2筐体32と、第3筐体33とを有する。
【0032】
第1筐体31は、両端にそれぞれ設けられた穴31aと、2つの穴31aを連通する孔31bと、が設けられている。穴31aの中心軸と孔31bの中心軸は略一致する。
【0033】
孔31bには配管39が挿入されており、穴31aにはそれぞれ第2筐体32が挿入されている。また、穴31aには、第2筐体32の外側に第3筐体33の一部が挿入されている。穴31aには雌ねじ部31cが形成されており、第2筐体32及び第3筐体33の外周面に形成された雄ねじ部32a、33aが螺合することにより、第2筐体32及び第3筐体33が穴31aに設けられ、筐体30が組み立てられる。
【0034】
第2筐体32及び第3筐体33には、それぞれ孔32b、33bが設けられている。孔32b、33bは、配管39の中空部と連通している。孔32b、33b及び配管39は、測定流路に含まれる。
【0035】
なお、本実施の形態では、第2筐体32と第3筐体33とは別部材であるが、第2筐体32と第3筐体33とは一つの部材であってもよい。
【0036】
第1筐体31は、凹部31d、31eを有する。凹部31dには基板15が設けられ、凹部31eには基板25が設けられている。凹部31dの底面には孔31gが設けられており、孔31gに発光素子11が設けられている。また、凹部31eの底面には孔31fが設けられており、発光素子11から照射された光は、配管39及び孔31fを通って受光素子21に入射する。
【0037】
本実施の形態では、少なくとも2つの測定装置1、1Aを用いる。測定装置1は汚染度測定の基準となる基準測定装置であり、測定装置1における測定結果を用いて測定装置1Aの調整を行う。基準測定装置は測定装置1のみであるが、測定装置1を用いて測定装置1A以外の複数の測定装置の調整を行うことができる。
【0038】
図2は、測定装置1、1A及び測定装置1、1Aに接続される調整装置2の電気的な構成の概略を示すブロック図である。
【0039】
測定装置1、1Aは制御部40を有し、調整装置2は制御部50を有する。制御部40は、主として、駆動部41と、汚染度測定部42と、記憶部43と、出力部45と、表示部46とを有する。また、制御部50は、主として、照射制御部51と、測定部52と、記憶部53とを有する。
【0040】
駆動部41は、発光素子11を駆動する機能部である。駆動部41は、発光素子11を駆動形態を切り替える切替部41aを有する。駆動部41は、発光素子11を駆動する複数の駆動回路を含む。第1駆動回路は、発光素子11の発光量を一定とする定電流回路等を含む。切替部41aが第1駆動回路に切り替えた場合には、駆動部41は、発光素子11から連続して光を照射させる。また、駆動部41は、切替部41aが駆動回路を用いない第2回路に切り替えた場合には、照射制御部51から出力された疑似信号(後に詳述)に基づいて発光素子11を点滅させる。なお、第1駆動回路は、受光素子21の受光量をフィードバックするAPC回路を含んでもよい。
【0041】
なお、本実施の形態では、駆動部41(切替部41a)が制御部40に含まれていたが、駆動部41(切替部41a)が基板15に設けられたアナログ回路であってもよい。
【0042】
受光素子21は、発光素子11から照射されて配管39を通った光を受光する。受光部20はアンプ22を有し、受光素子21の出力信号はアンプ22により増幅された後に汚染度測定部42及び測定部52に入力される。
【0043】
受光部20は、出力を切り替える切替部23を有する。ここでは、切替部23は、受光素子21の出力信号を汚染度測定部42に入力するか、測定部52に入力するかを切り替える。
【0044】
なお、本実施の形態では、切替部23が受光部20(基板25)に含まれていたが、切替部23が制御部40に含まれていてもよい。
【0045】
汚染度測定部42は、受光素子21からの出力信号に基づいて、液体の汚染度を測定する機能部である。オイルに粒子(不純物)が含まれていると、粒子により光が遮られた分だけ受光素子21に光が入射しない。汚染度測定部42は、受光素子21からの出力信号が遮られた回数及び時間に基づいて、液体に含まれる粒子の量、すなわち汚染度を測定する。汚染度測定部42の処理は公知の方法を用いることができるため、説明を省略する。
【0046】
汚染度測定部42には、出力部45が接続される。出力部45には、ディスプレイ、処理装置、記憶装置、通信機械、建設機械等が接続されている。測定結果は、ディスプレイに表示されたり、記憶装置に記憶されたり、通信機械を介して建設機械に出力され、建設機械で表示されたりするようになっている。本実施の形態では、出力部45には表示部46が接続されている。なお、出力部45は、ネットワーク(有線、無線を問わない)を介して測定結果を外部の出力装置等に出力するようにしてもよい。
【0047】
照射制御部51は、点滅信号を駆動部41に出力する機能部である。疑似信号は、発光素子11を点滅(フラッシング)させる。
【0048】
測定部52は、照射制御部51から出力された点滅信号を用いて駆動部41が発光素子11を駆動させたときに受光部20で受光して得られた電気信号を取得し、測定値を得る機能部である。また、測定部52は、得られた測定値に基づいて、照射制御部51から出力された点滅信号が疑似信号であるか否か判定する。測定部52が行う処理の詳細については後に詳述する。
【0049】
図3は、調整装置2が測定装置1Aの調整処理を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
(ステップSP10)
調整装置2に測定装置1(本発明の基準測定装置に相当)を接続する。測定装置1の測定流路(配管39を含む)に任意の汚染度(本発明の第1汚染度に相当)のオイルを流した状態で、測定装置1の駆動部41は、測定装置1の光照射部10(本発明の基準光照射部に相当)から光を照射する。このとき、測定装置1は、連続して発光素子11を点灯させる。この照射された光を測定装置1の受光部20(本発明の基準受光部に相当)で受光し、それにより得られた電気信号を測定部52が取得し、測定部52はこの電気信号から測定値を取得する。測定部52は、取得した測定値を、任意の汚染度における基準測定値(本発明の第1基準測定値に相当)として記憶部53に記憶させる。ステップSP10は、本発明の第1基準値測定ステップに相当する。
【0051】
任意の汚染度は、例えば、ISO等級が16~22のいずれかである。配管39に流すオイルは、予めISO等級が16~22のいずれかの汚染度となるように清浄なオイルに粒子(ダスト)を混ぜて作成されている。例えば、調整済みの測定装置で汚染度を確認しながらオイルに徐々にダストを投入し、任意の汚染度等級のオイルを作成する。
【0052】
なお、ステップSP10では、測定装置1の汚染度測定部42が受光部20で受光して得られた電気信号から測定値を得、測定部52がこれを取得してもよい。
【0053】
(ステップSP20)
ステップSP10の処理が終了したら、測定装置1の測定流路からオイルを除去して洗浄する。そして、制御部50は、測定流路にオイルが無い状態で、測定装置1の光照射部10を点滅させる点滅信号を用いて測定装置1の光照射部10を照射させ、基準測定値と同等の電気信号が測定装置1の受光部20で得られたときの点滅信号を疑似信号とする。ステップSP20は、本発明の第1疑似信号取得ステップに相当する。
【0054】
本実施の形態では、測定流路にオイルが無い状態とは、測定流路に液体を流さず、測定流路(配管39含む)に空気が入った状態である。
【0055】
(ステップSP30)
ステップSP10及びSP20(本発明の疑似信号生成ステップに相当)の処理が終了したら、調整装置2に測定装置1A(本発明の測定装置に相当)を接続する。照射制御部51は、ステップSP20で得られた疑似信号を駆動部41に出力する。測定装置1の駆動部41は、測定装置1Aの測定流路に液体を流さない状態で、照射制御部51から出力された疑似信号を用いて測定装置1Aの光照射部10(本発明の光照射部に相当)から光を照射する。すなわち、疑似信号とは、測定流路にオイルが無い状態で、任意の汚染度(第1汚染度)のオイルが測定流路を流れたときに受光部20に入力される光と同等な光を照射させる信号である。したがって、ステップSP230では、測定装置1Aは、発光素子11を点滅させる。
【0056】
この照射された光を測定装置1Aの受光部20(本発明の受光部に相当)で受光し、受光部20で電気信号を得、測定部52はこれを取得する。測定部52は、取得した電気信号から測定値を得、この測定値を測定装置1Aにおける任意の汚染度のときの出力値として記憶部43に記憶させる。ステップSP30は、本発明の第1調整ステップに相当する。これにより、任意の汚染度における測定装置1Aの調整処理を終了する。
【0057】
図4は、測定装置1Aの製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。
(ステップSP110)
まず、配管39を挟むように光照射部10と受光部20とを第1筐体31に設ける。この段階では、筐体30は組み立てられていない。
【0058】
(ステップSP120)
次いで、測定装置1Aの調整処理(ステップSP120)を行う。ステップSP120とステップSP30とは同一の処理である。
【0059】
(ステップSP130)
次いで、配管39、光照射部10及び受光部20が内部に設けられた筐体30を組み立てて測定装置1Aの完成品を得る。
【0060】
このようにして得られた測定装置1Aの完成品は、梱包して出荷される。その後、測定装置は、建設機械、油圧機器等の装置に設けられ、ステップSP120(ステップSP30)で記憶部43に格納された出力値と、受光部20で取得された電気信号を用いて得られた測定値とに基づいてオイルの汚染度を測定する。
【0061】
次に、ステップSP10~ステップSP30の処理の詳細について説明する。まず、ステップSP10及び出荷後の汚染度測定時において、受光部20で取得された電気信号を用いて測定値をどのようにして得るか説明する。測定値を得る方法は、ステップSP10及び出荷後の汚染度測定時で同様である。
【0062】
図5は、測定値を得る方法を説明する模式図であり、(A)は配管39に流れるオイルに含まれる粒子(ダスト)の流れを模式的に示し、(B)は電気信号の出力の時間変化を模式的に示す。
【0063】
光照射部10は連続的に光を照射しており、連続して照射された光を受光部20で連続して受光している。配管39内をダストが通過する(
図5(A)参照)ことで影が作られ、これにより受光部20における受光量が下がり、ダストが無いときに比べて出力が低下する(
図5(B)参照)。
【0064】
汚染度測定部42及び測定部52は、
図5(B)に示す電気信号の単位時間当たりの積分値を求める(
図5(B)の網掛け部参照)。また、汚染度測定部42及び測定部52は、電気信号の単位時間当たりの積分値の移動平均を求めて、単位時間当たりの積分値を平滑化する。ダストが含まれるオイルの汚染度を測定する場合には、ダストの大きさ等によって出力低下の程度にばらつきが生じるため、単位時間当たりの積分値を平滑化する必要がある。
【0065】
汚染度測定部42は、平滑化された積分値に基づいて単位時間当たりの総ダスト量(汚染度等級)を算出する。また、測定部52は、平滑化された積分値に基づいて基準測定値を得る。
【0066】
なお、発光素子11及び受光素子21は個体差がある。例えば、発光素子11の発光効率に個体差があり、照射される光量にばらつきが生じる。また、受光素子21の光から電圧への変換効率に個体差があり、出力値にばらつきが生じる。そのため、配管39内をダストが通過しない場合に、発光素子11に同じ電圧を入力したとしても受光部20から得られる出力値が異なる。
【0067】
したがって、ステップSP10及び出荷後の汚染度測定時においては、駆動部41及び照射制御部51は、受光部20で得られる電気信号の最大値Omax(
図5(B)参照)が所定の値となるように、光照射部10に印加する電力(発光素子11の明るさ)を調整して、受光部20から得られる出力の出力レベルを調整する。
【0068】
なお、電子回路(センシング回路)での個体差も考慮し、汚染度測定部42及び測定部52は、センシング回路から出力された電気信号を処理することにより出力レベルを調整するようにしてもよい。
【0069】
図6は、疑似信号を取得する処理(ステップSP20)の処理の流れを示すフローチャートである。まず、調整装置2から測定装置1を外し、調整装置2に測定装置1Aを接続する。
【0070】
(ステップSP21)
測定装置1の測定流路からオイルを除去して洗浄し、測定流路にオイルが無い状態(ここでは、配管39に空気が入った状態)とする。照射制御部51は、受光部20で得られる電気信号の最大値OmaxがステップSP10における最大値Omaxと同様になるように、光照射部10に印加する電力、すなわち光照射部10の出力レベルを調整する。
【0071】
図7は、発光素子11から照射された光の様子を示す図であり、(A)は配管39内にオイルがある状態を示し、(B)は配管39内にオイルが無く空気がある状態を示す。オイルの屈折率は1.467であり、配管39内にオイルがある状態ではオイルがある配管39がレンズの役割を果たし、発光素子11から照射された光が受光素子21に集光される(
図7(A)参照)。それに対し、空気の屈折率は1であるため、配管39内に空気がある状態では配管39がレンズの役割を果たさず、発光素子11から照射された光が受光素子21に集光されない(
図7(B)参照)。したがって、配管39内に空気がある状態では、配管39内にオイルがある状態に比べて、受光素子21に入光する光が少なく、受光部20で得られる電気信号の最大値Omaxが小さくなる。
【0072】
そのため、ステップSP21において、照射制御部51が光照射部10の出力レベルを調整して、受光部20で得られる電気信号の最大値OmaxがステップSP10における最大値Omaxと同様になるようにする。
【0073】
例えば、配管39内にオイルがある状態において受光部20で得られる電気信号の最大値Omaxが3.5Vであり、配管39内に空気がある状態において受光部20で得られる電気信号の最大値Omaxが1Vであるとすると、照射制御部51は、配管39内に空気がある状態においては、配管39内にオイルがある状態に対して光照射部10に印加する電力を3.5倍して、最大値Omaxを同等にする。これにより、疑似信号の精度が向上する。
【0074】
(ステップSP22、23)
図6の説明に戻る。照射制御部51は、点滅信号snを駆動部41に出力し、駆動部41は、点滅信号snを用いて発光素子11を点滅させる。ステップSP22でn=1に設定するため、最初にステップSP23を実行する際の点滅信号は点滅信号s1である。このようにして照射された光を受光部20で受光して得られた電気信号は、測定部52に入力される。測定部52は、この電気信号に基づいて測定値を得る。
【0075】
図8は、点滅信号snを用いて発光素子11が点滅したときに受光部20で得られた電気信号を模式的に示す図である。電気信号では、周期的に出力が高い状態と低い状態とが現れている。測定部52は、この電気信号の単位時間当たりの積分値を求め(
図8の網掛け部参照)、これを測定値とする。
【0076】
図6の説明に戻る。なお、複数の点滅信号sn(nは自然数)は、記憶部53に記憶されている。照射制御部51は、ステップSP23を実行するのに必要な点滅信号snを記憶部53から取得して駆動部41に出力する。
【0077】
(ステップSP24)
測定部52は、ステップSP23で得られた測定値が、ステップSP10で得られた基準測定値と同等であるか否かを判定する。測定部52は、基準測定値を記憶部53から取得する。ここで、基準測定値と同等であるとは、基準測定値と略同等である場合、すなわち基準測定値と一致する場合や、基準測定値と一致しないが誤差が微小な場合を含む概念である。
【0078】
ステップSP23で得られた測定値が基準測定値と同等でない場合(ステップSP24でNo)には、処理はステップSP25に進む。ステップSP23で得られた測定値が基準測定値と同等である場合(ステップSP24でYes)には、処理はステップSP26に進む。
【0079】
(ステップSP25)
ステップSP23で得られた測定値が基準測定値と同等でない場合(ステップSP24でNo)には、測定部52は、n=n+1とし、処理をステップSP23に戻す。例えば、点滅信号s1を用いて発光素子11を点滅駆動したときの測定値が基準測定値と同等でない場合には、測定部52は、点滅信号s2を用いてステップSP23の処理を行う。このように、基準測定値と同等となる点滅信号snが見つかるまでステップSP23~ステップSP25が繰り返し行われる。
【0080】
(ステップSP26)
ステップSP23で得られた測定値が基準測定値と同等である場合(ステップSP24でYes)には、測定部52は、基準測定値と同等となったときに用いた点滅信号snを疑似信号(本発明の第1疑似信号に相当)とする。そして、測定部52は、疑似信号を記憶部53に格納する。これにより、ステップSP20の一連の処理が終了する。このように、単位時間当たりの積分値である測定値と基準測定値とを同等とすることで正確な疑似信号を得、これにより、調整の精度を高くすることができる。
【0081】
図9は、ステップSP30の処理の流れを示すフローチャートである。
(ステップSP31)
測定装置1Aの測定流路にオイルが無い状態(ここでは、配管39に空気が入った状態)で、照射制御部51は、ステップSP21における出力レベルの調整結果に基づいて光照射部10の出力レベルを調整する。例えば、照射制御部51は、駆動部41を介して、ステップSP21で照射制御部51が光照射部10に印加した電力と同じ電力を光照射部10に印加する。これにより、受光部20で得られる電気信号の最大値Omaxが、測定流路にオイルがある状態で出力レベルの調整をせずに受光部20で得られる電気信号の最大値Omaxと同等になる。
【0082】
(ステップSP32)
照射制御部51は、記憶部53に記憶された疑似信号を駆動部41に出力する。駆動部41は、ステップSP31で出力レベルが調整された後の状態で、疑似信号を用いて光照射部10から光を照射する。このようにして照射された光を受光部20で受光して得られた電気信号は、測定部52に入力される。測定部52は、この電気信号に基づいて測定値(本発明の第1汚染度における測定値に相当)を得る。例えば、測定部52は、ステップSP23と同様に、電気信号の単位時間当たりの積分値を求め、これを測定値とする。測定部52は、この測定値を記憶部43に記憶させる。これにより、ステップSP30の一連の処理が終了する。
【0083】
本実施の形態によれば、配管39を含む測定流路にオイルを流すことなく、測定装置1Aの調整を行うことができる。これにより、調整に要する時間が短縮される。また、調整の精度が高くなる。
【0084】
従来のように、測定流路にオイルを入れて調整する場合には、調整後の洗浄に手間がかかり、調整完了までに時間がかかってしまう。また、納品で空輸を利用する場合が有るが、空輸では空輸対象物の内部にオイルが残っていることを嫌うため、測定流路にオイルを注した実績があると梱包費がかさんでしまう。
【0085】
さらに、測定流路にオイルを入れて調整する場合には、測定装置1Aの調整時にダストを入れたオイルを準備する必要がある。しかしながら、オイルの加熱、ダストのオイルへの分散に時間がかかってしまう。特に、ダストをオイルに分散させるには、ダストを複数回に分けて投入しつつ、希望の汚染度になるまでダストの注入を行う必要があり、ダストをオイルに入れ終わるまでに長い時間を要する。また、一度調整に使用したオイルを再利用するためには、オイルをクリーンアップしなければならないが、これにも時間を要する。
【0086】
それに対し、本実施の形態のように測定流路にオイルを流すことなく測定装置1Aの調整を行うことで、オイルを用いることによる時間、費用及び手間に関する問題点を無くすことができる。
【0087】
また、測定装置1Aの調整時にダストを入れたオイルを用いる場合には、汚染度測定部42での測定に時間がかかってしまう。それに対し、疑似信号を用いる場合には、平滑化する必要が無く、短時間で調整を行うことができる。
【0088】
さらに、粒子径が所定の範囲内にある粒子をオイルに所定量だけ混合させることで汚染度が既知のオイルを生成するが、粒子径や粒子の混合量等のばらつきをなくすことはできず、これにより調整の精度が安定しないおそれがある。それに対し、本実施の形態では、疑似信号を用いるため、光照射部10から照射される光が安定しており、調整の精度が向上する。
【0089】
また、本実施の形態によれば、測定の前に光照射部10の出力レベルを調整することで、正確な疑似信号を得、かつ、正確に調整を行うことができる。
【0090】
なお、本実施の形態では、測定流路にオイルを流さず、配管39に空気が入った状態で疑似信号の取得及び測定装置1Aの調整を行ったが、測定流路にオイルが無い状態はこれに限られない。例えば、測定流路にオイルが無い状態とは、測定流路に液体を流さず空気が含まれている状態、測定流路にオイル以外の液体を流した状態、又は、配管39に変えてガラス棒を設けた状態であってもよい。
【0091】
測定流路にオイル以外の液体を流す状態とは、配管39を含む測定流路に水、アルコール、又は、水とアルコールの混合物を入れた状態であってもよい。空気の屈折率は1であるが、水、アルコールの屈折率は1.3~1.4であり、オイルの屈折率である1.467に近い。具体的には、水の屈折率は1.33であり、エタノールの屈折率は1.361であり、メタノールの屈折率は1.329であり、イソプロピルアルコールの屈折率は1.384である。
【0092】
このように、配管39に水、アルコール、又は、水とアルコールの混合物を入れた状態では、配管39に空気が入った状態とは異なり、配管39がレンズの役割を果たし、発光素子11から照射された光が受光素子21に集光される。したがって、疑似信号の取得や測定装置1Aの調整が容易になる。また、配管39に流す液体の種類によっては、出力レベルを調整することなく、疑似信号の取得や測定装置1Aの調整が可能になる(ステップSP21、SP31は必須ではない)。また、水やアルコールは速乾性を有するため、測定流路に水やアルコールを流したとしても乾くまでの時間が短く、調整に要する時間が短くて済む。
【0093】
また、例えば、測定流路にオイルが無い状態を配管39に変えてガラス棒を設けた状態とすることができる。ガラス、例えば石英ガラスの屈折率は1.46~1.47であり、BK7の屈折率は1.51~1.53であるため、オイルの屈折率である1.467に近い屈折率を有する。したがって、ガラス棒がレンズの役割を果たし、発光素子11から照射された光が受光素子21に集光される。したがって、疑似信号の取得や測定装置1Aの調整が容易となる。また、出力レベルを調整することなく、疑似信号の取得や測定装置1Aの調整が可能となる(ステップSP21、SP31は不要である)。
【0094】
また、本実施の形態では、ステップSP10で任意の汚染度(第1汚染度)のオイルを用いて基準測定値(第1基準測定値)を測定し、ステップSP20で測定流路にオイルが無い状態で第1汚染度のオイルが測定流路を流れたときに受光部20に入力される光と同等な光を照射させる信号を疑似信号として取得し、ステップSP30でこの疑似信号を用いて第1汚染度における測定値を得た、すなわち測定装置1Aの調整を1つの汚染度で行ったが、複数の汚染度(第1汚染度及び第2汚染度の少なくとも2つ)で測定装置1Aの調整を行ってもよい。任意の汚染度はISO等級が16~22とすると、例えば、第1汚染度がISO等級が16であり、第2汚染度がISO等級が20であってもよい。
【0095】
つまり、制御部40、50は、測定値を得たい各等級において、それぞれ、基準測定値及び疑似信号を探し出す。また、制御部40、50は、各等級における疑似信号を用いてそれぞれ測定値を得る。例えば、第1汚染度及び第2汚染度で測定装置1Aの調整を行う場合には、ステップSP10で第1汚染度及び第2汚染度における基準測定値(第1基準測定値及び第2基準測定値)を測定し、ステップSP20で第1汚染度及び第2汚染度のそれぞれに対する疑似信号(第1疑似信号及び第2疑似信号)を得、ステップSP30で第1疑似信号及び第2疑似信号を用いて第1汚染度及びにおける測定値をそれぞれ得ればよい。
【0096】
また、本実施の形態では、1つの測定装置1Aの調整を行ったが、複数の測定装置1Aの調整を連続して行うことも可能である。この場合には、ステップSP30の処理を測定装置1Aの数だけ連続して行えばよい。
【0097】
また、本実施の形態では、ステップSP30の前にステップSP10及びSP20を行ったが、ステップSP10及びSP20は必須ではない。例えば、疑似信号が予め記憶部43又は53に記憶されており、この疑似信号を用いてステップSP30の処理を行ってもよい。この場合には、疑似信号を求める処理は、ステップSP10及びSP20の方法に限られない。ただし、疑似信号の精度を高くするためには、ステップSP10及びSP20の方法を用いて疑似信号を求めることが望ましい。
【0098】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、疑似信号を用いて測定装置1Aの調整を行ったが、測定装置1Aの調整を行う方法はこれに限られない。本発明の第2の実施の形態は、光を通さない遮光スリットが複数設けられた棒状部材を用いて測定装置1Aの調整を行う形態である。以下、第2の実施の形態について説明する。ただし、第1の実施の形態と同様の構成及び処理については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0099】
図10は、測定装置1で疑似信号を得る、及び、測定装置1Aで測定値を得る様子を模式的に示す図である。棒状部材90を測定流路(配管39を含む)を移動させながら光照射部10から光を連続的に点灯する。光照射部10から照射され、配管39及び棒状部材90を通過した光を受光部20で受光して電気信号を得る。棒状部材90は例えばガラス棒であり、棒状部材90には光を通さない遮光スリット91が複数設けられている。
【0100】
なお、
図10に示す形態では、遮光スリット91は、一定間隔で設けられている。ただし、棒状部材90の形態はこれに限られない。遮光スリット91の幅及び配置間隔は任意である。例えば、太さが異なる複数種類の遮光スリットが棒状部材90に設けられていてもよい。また、隣接する遮光スリット91の間隔は同一でなくてもよい。
【0101】
棒状部材90には、駆動装置3が設けられている。駆動装置3は、主として、棒状部材90を移動させるアクチュエータ等の駆動部35と、駆動部35の出力を棒状部材90に伝達する伝達部36とを有する。駆動部35は、伝達部36を介して棒状部材90を棒状部材90の長手方向に沿って移動させる。
【0102】
図11は、測定装置1、1A及び測定装置1、1Aに接続される調整装置2Aの電気的な構成の概略を示すブロック図である。
【0103】
測定装置1、1Aは制御部40を有し、調整装置2Aは制御部50Aを有する。制御部50Aは、主として、照射制御部51と、測定部52と、記憶部53と、駆動制御部54とを有する。
【0104】
駆動制御部54は、駆動部35を駆動させる信号を駆動装置3に出力する機能部である。駆動部35を駆動させる信号smは、所定の速度cmで棒状部材bnを移動させる。信号sm(mは自然数)は、記憶部53に複数記憶されている。
【0105】
図12は、調整装置2Aが測定装置1Aの調整処理を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0106】
(ステップSP10)
調整装置2Aに測定装置1を接続する。測定装置1の測定流路に任意の汚染度のオイルを流した状態で、測定装置1の駆動部41は、測定装置1の光照射部10から連続して光を照射する。この照射された光を測定装置1の受光部20で受光して得られた電気信号を測定し、測定部52はこれを取得する。測定部52は、取得した測定値を、任意の汚染度における基準測定値として記憶部53に記憶させる。ステップSP40は、本発明の第1基準値測定ステップに相当する。
【0107】
(ステップSP40)
ステップSP10の処理が終了したら、測定装置1の測定流路からオイルを除去して洗浄する。また、遮光スリット91の幅及び数が異なる複数の棒状部材90を用意する。以下、複数の棒状部材を棒状部材bn(nは自然数)とする。
【0108】
制御部50Aは、測定流路にオイルが無い状態で、棒状部材90の遮光スリット91の大きさ及び数と、棒状部材90を移動させる速度とを調整する。例えば、測定装置1の光照射部10から連続して光を照射させた状態で、棒状部材bnを任意の速度で移動させながら、測定装置1の受光部20で光を受光して電気信号を取得する。そして、制御部50Aは、基準測定値と同等の電気信号が測定装置1の受光部20で得られたときの棒状部材bn及びその移動速度(本発明の第1速度)を得る。ステップSP40は、本発明の調整ステップに相当する。
【0109】
(ステップSP50)
ステップSP10及びSP40(本発明の棒状部材調整ステップに相当)の処理が終了したら、調整装置2Aに測定装置1Aを接続する。測定装置1の駆動部41は、測定装置1Aの光照射部10から連続して光を照射する。このとき、配管39内を、ステップSP40で得られた移動速度で棒状部材bnを移動させる。
【0110】
この照射された光を測定装置1Aの受光部20で受光して得られた電気信号を測定し、測定部52はこれを取得する。測定部52は、取得した測定値を、測定装置1Aにおける任意の汚染度のときにおける出力値として記憶部43に記憶させる。ステップSP50は、本発明の第1調整ステップに相当する。これにより、任意の汚染度における測定装置1Aの調整処理を終了する。
【0111】
本実施の形態における測定装置1Aの製造方法は、第1の実施の形態と同様である。すなわち、配管39を挟むように光照射部10と受光部20とを第1筐体31に設け(ステップSP110)、測定装置1Aの調整処理(ステップSP120)を行い、配管39、光照射部10及び受光部20が内部に設けられた筐体30を組み立てて測定装置1Aの完成品を得る(ステップSP130)。ただし、本実施の形態のステップSP120は、ステップSP50と同一の処理である。
【0112】
このようにして得られた測定装置1Aの完成品は、梱包して出荷される。その後、測定装置は、建設機械、油圧機器等の装置に設けられ、ステップSP120(ステップSP50)で記憶部43に格納された出力値と、受光部20で取得された電気信号を用いて得られた測定値とに基づいてオイルの汚染度を測定する。
【0113】
図13は、調整ステップ(ステップSP40)の処理の流れを示すフローチャートである。まず、調整装置2Aから測定装置1を外し、調整装置2Aに測定装置1Aを接続する。また、複数の棒状部材bn(nは自然数)はあらかじめ準備されている。
【0114】
(ステップSP41)
測定装置1の測定流路からオイルを除去して洗浄し、測定流路に配管39に空気が入った状態とする。照射制御部51は、受光部20で得られる電気信号の最大値OmaxがステップSP10における最大値Omaxと同様になるように、光照射部10に印加する電力、すなわち光照射部10の出力レベルを調整する。ステップSP41の処理はステップSP21と同様である。
【0115】
(ステップSP42、43)
照射制御部51は、速度cmを記憶部53から取得して駆動部41に出力し、駆動装置3を介して棒状部材bn(本発明の仮棒状部材)を速度cm(本発明の仮速度)で移動させる。この状態で、駆動部41は光照射部10(発光素子11)を連続して点灯させる。このようにして照射された光を受光部20で受光して得られた電気信号は、測定部52に入力される。測定部52は、この電気信号に基づいて測定値を得る。測定部52は、電気信号の単位時間当たりの積分値を求め、これを測定値とする。
【0116】
ステップSP42でn、m=1に設定するため、最初にステップSP43を実行する際の棒状部材は棒状部材b1であり、速度は速度c1である。
【0117】
(ステップSP44)
測定部52は、ステップSP43で得られた測定値が、ステップSP10で得られた基準測定値と同等であるか否かを判定する。測定部52は、基準測定値を記憶部53から取得する。
【0118】
ステップSP43で得られた測定値が基準測定値と同等でない場合(ステップSP24でNo)には、処理はステップSP45に進む。ステップSP23で得られた測定値が基準測定値と同等である場合(ステップSP44でYes)には、処理はステップSP48に進む。
【0119】
(ステップSP45~SP47)
ステップSP43で得られた測定値が基準測定値と同等でない場合(ステップSP44でNo)には、測定部52は、速度cmが変更可能か、すなわち記憶部53に記憶されている速度を全て実施し終わっていないかを判定する(ステップSP45)。
【0120】
速度cmが変更可能である場合(ステップSP45でYes)には、測定部52は、m=m+1として(ステップSP46)、処理をステップSP43に戻す。速度cmが変更可能でない場合(ステップSP45でNo)には、測定部52は、mを1に戻し、かつ、n=n+1として棒状部材bnを変更して(ステップSP47)、処理をステップSP43に戻す。このように、測定値が基準測定値と同等となる棒状部材bn及び速度cmが見つかるまでステップSP43~ステップSP47が繰り返し行われる。
【0121】
(ステップSP48)
ステップSP43で得られた測定値が基準測定値と同等である場合(ステップSP44でYes)には、測定部52は、基準測定値と同等であるときに用いた棒状部材bn及び速度cm(以下、棒状部材bx及び速度cx)を、任意の汚染度(第1汚染度)のときの棒状部材(本発明の棒状部材)及び速度(本発明の第1速度)とする。そして、測定部52は、棒状部材bx及び速度cxを記憶部53に格納する。これにより、ステップSP40の一連の処理が終了する。
【0122】
図14は、ステップSP50の処理の流れを示すフローチャートである。
(ステップSP51)
測定装置1Aの測定流路にオイルが無い状態(ここでは、配管39に空気が入った状態)で、照射制御部51は、ステップSP21における出力レベルの調整結果に基づいて光照射部10の出力レベルを調整する。ステップSP51の処理はステップSP31と同様である。
【0123】
(ステップSP52)
駆動制御部54は、記憶部53に記憶された速度cxを駆動装置3に出力し、駆動部35は速度cxで棒状部材bxを移動させる。また、駆動部41及び照射制御部51は、ステップSP31で出力レベルが調整された後の状態で光照射部10から連続して光を照射する。このようにして照射された光を受光部20で受光して得られた電気信号は、測定部52に入力される。測定部52は、この電気信号に基づいて測定値(本発明の第1汚染度における測定値に相当)を得る。例えば、測定部52は、ステップSP43と同様に、電気信号の単位時間当たりの積分値を求め、これを測定値とする。
【0124】
本実施の形態によれば、配管39を含む測定流路にオイルを流すことなく、測定装置1Aの調整を行うことができる。そのため、調整に要する時間を短縮することができる。また、調整の精度を高くすることができる。
【0125】
また、本実施の形態によれば、棒状部材90はガラス製であるため、配管39にオイルが流れている場合と同様に光を受光部20に集光させることができる。これにより、出力レベルを調整することなく、疑似信号の取得や測定装置1Aの調整が可能になり得る(ステップSP41、SP51は必須ではない)。
【0126】
また、本実施の形態によれば、測定値を得る前に光照射部10の出力レベルを調整することで、正確な疑似信号を得、かつ、正確に調整を行うことができる。
【0127】
なお、本実施の形態では、測定装置1Aの調整を1つの汚染度で行ったが、第1の実施の形態と同様、複数の汚染度(第1汚染度及び第2汚染度の少なくとも2つ)で測定装置1Aの調整を行ってもよい。また、本実施の形態では、1つの測定装置1Aの調整を行ったが、第1の実施の形態と同様、複数の測定装置1Aの調整を連続して行うことも可能である。
【0128】
<第3の実施の形態>
なお、第1、2の実施の形態では、発光素子11及び受光素子21がそれぞれ1つであったが、発光素子11及び受光素子21の数はこれに限られない。例えば、発光素子11及び受光素子21がそれぞれ複数設けられていてもよいし、発光素子11が1つで受光素子21が2つ設けられていてもよい。
【0129】
本発明の第3の実施の形態は、発光素子11及び受光素子21がそれぞれ2つであり、2つの受光素子21で受光された光の差分に基づいて汚染度を測定する形態である。以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。ただし、第1、2の実施の形態と同様の構成及び処理については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0130】
図15は、測定装置1B及び測定装置1、1Aに接続される調整装置2Aの電気的な構成の概略を示すブロック図である。測定装置1Bは、調整が行われる測定装置であり、基準測定値及び疑似信号の取得には測定装置1を用いる。
【0131】
測定装置1Bは、複数(ここでは2つ)の発光素子11を有する光照射部10Aと、複数(ここでは2つ)の受光素子21及びアンプ22を有する受光部20Aを有する。また、測定装置1Bは制御部40Aを有し、調整装置2は制御部50を有する。制御部40は、主として、駆動部41Aと、汚染度測定部42Aと、記憶部43と、切替部44と、出力部45と、表示部46とを有する。
【0132】
駆動部41Aは、2つの発光素子11のうちの所望の発光素子11のみを駆動する機能部である。発光素子11の駆動については、駆動部41と同様であるため説明を省略する。
【0133】
汚染度測定部42Aは、2つの受光素子21からの出力信号に基づいて、液体の汚染度を測定する機能部である。例えば、汚染度測定部42Aは、一方の受光素子21からの出力信号から得られた測定値と、他方の受光素子21からの出力信号から得られた測定値との差分に基づいて汚染度を測定する。汚染度の測定は、様々な方法を用いることができるため説明を省略する。
【0134】
切替部44は、受光部20Aからの出力を切り替える機能部である。切替部44は、調整時には受光部20Aからの信号を測定部52に出力し、出荷後の汚染度測定時には受光部20Aからの信号を汚染度測定部42に出力する。このように、切替部44は、調整時か汚染度測定時かで受光部20Aからの出力先を異ならせる。
【0135】
また、切替部44は、調整時には、複数の受光素子21及びアンプ22からの信号をそれぞれ別々に測定部52に出力する。例えば、切替部44は、駆動された発光素子11に対応する受光素子21で得られた信号を測定部52に出力する。
【0136】
図16は、調整装置2が測定装置1Bの調整処理を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0137】
(ステップSP10)
調整装置2に測定装置1を接続する。測定装置1の測定流路に任意の汚染度(第1汚染度)のオイルを流した状態で、測定装置1の駆動部41は、測定装置1の光照射部10から連続して光を照射する。この照射された光を測定装置1の受光部20で受光して得られた電気信号を測定し、測定部52はこれを取得する。測定部52は、取得した測定値を、任意の汚染度における基準測定値(第1基準測定値)として記憶部53に記憶させる。
【0138】
(ステップSP20)
ステップSP10の処理が終了したら、測定装置1の測定流路からオイルを除去して洗浄する。そして、制御部50は、測定流路にオイルが無い状態で、測定装置1の光照射部10を点滅させる点滅信号を用いて測定装置1の光照射部10を照射させ、基準測定値と同等の電気信号が測定装置1の受光部20で得られたときの点滅信号を疑似信号とする。
【0139】
(ステップSP30A)
ステップSP20Aの処理が終了したら、調整装置2に測定装置1B(本発明の測定装置に相当)を接続する。照射制御部51は、ステップSP20Aで得られた疑似信号を駆動部41Aに出力する。測定装置1の駆動部41Aは、測定装置1Aの測定流路に液体を流さない状態で、照射制御部51から出力された疑似信号を用いて測定装置1Bの光照射部10A(本発明の光照射部に相当)のいずれかの発光素子11を駆動する。この照射された光を測定装置1Bの受光部20A(本発明の受光部に相当)のうちの光を照射した発光素子11に対応する受光素子21で受光し、得られた電気信号を切替部44を介して測定部52が取得する。測定部52は、電気信号に基づいて測定値を取得し、これを測定装置1Aにおける任意の汚染度のときの出力値として記憶部43に記憶させる。ステップSP30Aは、本発明の第1調整ステップに相当する。
【0140】
ステップSP30とステップSP30Aとの差異は、測定値を取得を発光素子11及び受光素子21の数(ここでは2回)だけ繰り返す点であり、具体的な処理の内容は同じである。これにより、任意の汚染度における測定装置1Bの調整処理を終了する。
【0141】
なお、測定装置1Bの製造方法は、測定装置1Aの製造方法(
図4)と同様である。
【0142】
本実施の形態によれば、配管39を含む測定流路にオイルを流すことなく、測定装置1Bの調整を行うことができる。そのため、調整に要する時間を短縮することができる。また、調整の精度を高くすることができる。
【0143】
なお、本実施の形態では、配管39に空気が入った状態で調整を行ったが、第1の実施の形態と同様、配管39を含む測定流路に水、アルコール、又は、水とアルコールの混合物を入れた状態であってもよいし、配管39に変えてガラス棒を設けた状態でもよい。
【0144】
また、本実施の形態では、疑似信号を用いて調整を行ったが、第2の実施の形態と同様、棒状部材90を用いて調整を行ってもよい。
【0145】
また、本実施の形態では、ステップSP10、20を発光素子11及び受光素子21を1つずつ有する測定装置1を用いて行ったが、ステップSP10、20を発光素子11及び受光素子21をそれぞれ複数有する測定装置を用いて行ってもよい。この場合には、ステップSP10、20の処理を発光素子11及び受光素子21の数(ここでは2回)だけ繰り返せばよく、具体的な処理の内容は同じである。
【0146】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0147】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「略直交」とは、厳密に直交の場合には限られず、例えば数度程度の誤差を含む概念である。また、例えば、単に直交、平行、一致等と表現する場合において、厳密に直交、平行、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。
【0148】
また、本発明において「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0149】
1、1A、1B:測定装置
2、2A :調整装置
3 :駆動装置
10、10A:光照射部
11 :発光素子
15 :基板
20、20A:受光部
21 :受光素子
22 :アンプ
23 :切替部
25 :基板
30 :筐体
31 :第1筐体
31a :穴
31b :孔
31c :雌ねじ部
31d、31e:凹部
31f、31g:孔
32 :第2筐体
32a :雄ねじ部
32b :孔
33 :第3筐体
33a :雄ねじ部
33b :孔
35 :駆動部
36 :伝達部
39 :配管
40、40A:制御部
41、41A:駆動部
41a :切替部
42、42A:汚染度測定部
43 :記憶部
44 :切替部
45 :出力部
46 :表示部
50、50A:制御部
51 :照射制御部
52 :測定部
53 :記憶部
54 :駆動制御部
90 :棒状部材
91 :遮光スリット