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特開2024-130644アニメーションホログラムの表示装置及び表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130644
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】アニメーションホログラムの表示装置及び表示方法
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/22 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G03H1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040490
(22)【出願日】2023-03-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G網におけるホログラフィ通信のための高効率圧縮伝送技術の研究開発 研究開発項目1 ホログラフィの高効率圧縮技術の研究開発 研究開発項目1-c)ホログラフィに適したビデオベース圧縮技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】小磯 諒太
(72)【発明者】
【氏名】松島 恭治
【テーマコード(参考)】
2K008
【Fターム(参考)】
2K008CC03
2K008HH12
2K008HH16
(57)【要約】
【課題】複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ再生光を照射して各コマのアニメーションを再生するアニメーションホログラムの表示装置及び表示方法を提供する。
【解決手段】複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ再生光を照射して各コマを再生するアニメーションホログラム表示装置1において、干渉縞形成媒体20に近接配置された光学パターンフィルタ10と、コマ毎に特性の異なる再生光を前記光学パターンフィルタを介して干渉縞形成媒体へ順次に照射する再生光源30とを具備し、光学パターンフィルタ10は、各コマの干渉縞と対向する領域毎に再生光をその特性に基づいて透過又は遮断するようにした。光学パターンフィルタ10は、再生光をその偏光方向に基づいて透過又は遮断することができる。光学パターンフィルタ10はまた、再生光をその波長に基づいて透過又は遮断することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ再生光を照射して各コマを再生するアニメーションホログラムの表示装置において、
干渉縞形成媒体に近接配置された光学パターンフィルタと、
コマ毎に特性の異なる再生光を前記光学パターンフィルタを介して干渉縞形成媒体へ順次に照射する照明手段とを具備し、
前記光学パターンフィルタは、各コマの干渉縞と対向する領域毎に再生光をその特性に基づいて透過又は遮断することを特徴とするアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項2】
前記光学パターンフィルタは、再生光をその偏光方向に基づいて透過又は遮断することを特徴とする請求項1に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項3】
前記光学パターンフィルタは各コマの干渉縞と対向する領域ごとに偏光パターンが異なり、
前記照明手段は、再生するコマの干渉縞と対向する領域の偏光パターンにより透過され、再生しないコマの干渉縞と対向する領域の偏光パターンにより遮断される偏光方向の再生光を照射することを特徴とする請求項2に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項4】
前記光学パターンフィルタは、再生光をその波長に基づいて透過又は遮断することを特徴とする請求項1に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項5】
前記光学パターンフィルタは各コマの干渉縞と対向する領域ごとに色が異なり、
前記照明手段は、再生するコマの干渉縞と対向する領域の色により透過され、再生しないコマの干渉縞と対向する領域の色により遮断される波長の再生光を照射することを特徴とする請求項4に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項6】
前記照明手段は、再生するコマ毎に再生光の偏光方向を所定の角度へ回転させることを特徴とする請求項2又は3に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項7】
前記照明手段が偏光方向の異なる再生光を選択的に照射する複数の光源を含み、
再生するコマ毎に、対応する一の光源を点灯し、他の光源を消灯することを特徴とする請求項2又は3に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項8】
前記照明手段は再生光を直線偏光することを特徴とする請求項6に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項9】
前記照明手段は再生光を直線偏光することを特徴とする請求項7に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項10】
前記照明手段は再生光を円偏光することを特徴とする請求項7に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項11】
前記照明手段は、再生するコマの遷移中に発光を一時的に中断することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項12】
前記照明手段は、再生するコマの遷移中に偏光方向を連続的に変化させることを特徴とする請求項6に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項13】
複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ偏光方向の異なる再生光を順次に照射して各コマを再生するアニメーションホログラムの表示方法において、
干渉縞形成媒体に光学パターンフィルタを近接配置し、
再生するコマ毎に再生光の偏光方向を所定の角度へ回転させ、
前記光学パターンフィルタは、各コマの干渉縞と対向する領域毎に再生光をその特性に基づいて透過又は遮断することを特徴とするアニメーションホログラムの表示方法。
【請求項14】
複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ偏光方向の異なる再生光を順次に照射して各コマを再生するアニメーションホログラムの表示方法において、
干渉縞形成媒体に光学パターンフィルタを近接配置し、
偏光方向の異なる再生光を照射する複数の光源の中から、再生するコマ毎に対応する一の光源を点灯し、他の光源を消灯し、
前記光学パターンフィルタは、各コマの干渉縞と対向する領域毎に再生光をその特性に基づいて透過又は遮断することを特徴とするアニメーションホログラムの表示方法。
【請求項15】
複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ波長の異なる再生光を順次に照射して各コマを再生するアニメーションホログラムの表示方法において、
干渉縞形成媒体に光学パターンフィルタを近接配置し、
再生するコマ毎に再生光の波長を異ならせ、
前記光学パターンフィルタは、各コマの干渉縞と対向する領域毎に再生光をその特性に基づいて透過又は遮断することを特徴とするアニメーションホログラムの表示方法。
【請求項16】
複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ波長の異なる再生光を順次に照射して各コマを再生するアニメーションホログラムの表示方法において、
干渉縞形成媒体に光学パターンフィルタを近接配置し、
波長の異なる再生光を照射する複数の光源の中から、再生するコマ毎に対応する一の光源を点灯し、他の光源を消灯し、
前記光学パターンフィルタは、各コマの干渉縞と対向する領域毎に再生光をその波長に基づいて透過又は遮断することを特徴とするアニメーションホログラムの表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニメーションホログラムの表示装置及び表示方法に係り、特に、複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ再生光を照射して各コマのアニメーションを再生するアニメーションホログラムの表示装置及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログホログラム及び全方向視差高解像度計算機合成ホログラムは、干渉縞形成媒体に微細な干渉縞パターンを形成することで広い観察範囲と大きなサイズとを両立する高品質な立体映像を再生できる一方、単一の干渉縞形成媒体に固定の干渉縞パターンを記録するという特性上、静止画のみで再生像の切り替えができないという特徴がある。
【0003】
特許文献1には、1枚の干渉縞形成媒体を用いて複数の再生像を切り替え可能にするために、図12のように、コンピュータホログラフィによって計算された複数のホログラムの各々の干渉縞データの一部を所定の空間分割パターンに従って抽出し、各干渉縞データの一部を一つに統合することにより干渉縞形成媒体を生成する技術が開示されている。
【0004】
このようにして生成した干渉縞形成媒体へ、図13に示すように、干渉縞データの空間分割パターンと同一のパターンのパターン照明(構造化照明)を切り替えながら順次に照射すれば、複数のホログラム再生像を切り替え可能なアニメーションホログラムが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2021-057938号
【特許文献2】特願2022-043137号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Matsushima and S. Nakahara: Extremely high-definition full-parallax computer-generated hologram created by the polygon-based method, App. Opt. 48, H54-H63 (2009).
【非特許文献2】近藤暁靖, 松島恭治: シルエット近似を用いた全方向視差CGH の隠面消去, 信学論D-II J87-D-II, 7, 1487-1495 (2004).
【非特許文献3】K. Nakamoto, K. Matsushima: Exact mask-based occlusion processing in large-scale computer holography for 3D display, SPIE Digital Optical Technologies 2019, Munich, Germany, SPIE Proc. 11062, 1106204(2019.6.24).
【非特許文献4】A. Stein, Z. Wang, and J. Jr, "Computer-generated holograms: A simplified ray-tracing approach," Comput. Phys. 6, 389‐392 (1992).
【非特許文献5】H. Ando, T. Sogawa and H. Gotoh, Appl. Phys. Lett. 73(1998)566.
【非特許文献6】Color Animated Full-parallax High-definition Computer-generated Hologram,SIGGRAPH Asia 2022,2022/12.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、空間分割パターンと同一パターンの構造化照明を切り替えているが、光の広がりにより構造化照明の光が所望の領域外に漏れ出すことにより、所望のホログラムの再生像以外の再生像が重畳表示されてしまうという課題がある。
【0008】
加えて、構造化照明を干渉縞形成媒体の空間分割パターンに寸分の狂いもなく正確に位置合わせを行う必要があるため、位置合わせに時間を要することや、何らかの衝撃によって構造化照明にずれが生じてしまった場合に正しい映像が再生できなくなるといった問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上記の技術課題を解決し、アニメーションホログラムにおいて、干渉縞形成媒体に光学パターンフィルタを近接配置し、フィルタの特性に対応する光を可変再生光源及び制御装置によって切り替えることで、所望の領域外への光漏れを抑制し、異なる再生像の重畳による品質劣化を抑制することができるアニメーションホログラムの表示装置及び表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ再生光を照射して各コマを再生するアニメーションホログラム表示装置において、干渉縞形成媒体に近接配置された光学パターンフィルタと、コマ毎に特性の異なる再生光を前記光学パターンフィルタを介して干渉縞形成媒体へ順次に照射する照明手段とを設け、光学パターンフィルタは、各コマの干渉縞と対向する領域毎に再生光をその特性に基づいて透過又は遮断するようにした点に特徴がある。
【0011】
なお、本発明は上記の特徴的な構成を備えるアニメーションホログラムの表示装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとするアニメーションホログラムの表示方法としても実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、干渉縞形成媒体に光学パターンフィルタを近接配置し、フィルタの特性に対応する光を切り替えることで、所望の領域外への光漏れを抑制し異なる再生像の重畳による品質劣化を抑制することができる。
【0013】
また、構造化照明を用いず、光学パターンフィルタ及び可変再生光源により干渉縞生成媒体へ当たる光を高精度に切り替えるため、従来必要であった精密な光源の位置合わせが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用したアニメーションホログラム表示装置の構成を模式的に示した図である。
図2】第1実施形態に係るアニメーションホログラム表示装置の構成を模式的に示した図である。
図3】アナログホログラムの生成方法を模式的に示した図である。
図4】第2実施形態に係るアニメーションホログラム表示装置の構成を模式的に示した図である。
図5】第2実施形態における複数の再生光源の配置例(その1)を示した図である。
図6】第2実施形態における複数の再生光源の配置例(その2)を示した図である。
図7】光学パターンフィルタ及び再生光源の種類と光源の制御方法との組み合わせを一覧表示した図表である。
図8】本発明の反射型ホログラムへの適用例を示した図である。
図9】本発明の透過型ホログラムへの適用例を示した図である。
図10】コマ切替の遷移中に再生光を一時的に消灯する例を示した図である。
図11】コマ切替の遷移中に再生光の偏光方向を回転させる例を示した図である。
図12】コマ毎に空間分割した干渉縞を多重化により1枚に統合する従来例を示した図である。
図13】各コマの干渉縞を統合した1枚の干渉縞にコマ毎に固有の照射パターンで再生光を照射してアニメーションを再生する従来例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明を適用したアニメーションホログラム表示装置1の主要部の構成を模式的に示した図であり、ここでは本発明の説明に不要な構成は図示を省略している。
【0016】
アニメーションホログラム表示装置1は、再生する複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体20へ、再生光源30から特性、例えば偏光方向や波長の異なる再生光を切り替えながら順次に照射して各コマを再生する。本実施形態では、再生コマ数が「2」であって、干渉縞形成媒体20にはコマ1に対応する干渉縞21とコマ2に対応する干渉縞22とが格子状に空間分割多重化されている場合を例にして説明する。
【0017】
干渉縞形成媒体20の光源側には、各コマの干渉縞と対向する領域毎に再生光をその特性に基づいて透過又は遮断する光学パターンフィルタ10が近接配置されている。
【0018】
光学パターンフィルタ10には干渉縞形成媒体20における各干渉縞の配置パターンと同一のパターンで、コマ1の干渉縞21と対向する領域11には、コマ1の再生光は透過するがコマ2の再生光は遮断するフィルタ機能が与えられ、コマ2の干渉縞22と対応する領域12には、コマ2の再生光は透過するがコマ1の再生光は遮断するフィルタ機能が与えられている。光学パターンフィルタ10は干渉縞形成媒体20の光源側に、各パターンが正確に位置決めされた状態で、例えば貼り付けにより密着固定される。
【0019】
図2は、本発明の第1実施形態に係るアニメーションホログラム表示装置1の主要部の構成を模式的に示した図であり、前記と同一の符号は同一又は同等部分を表している。本実施形態は、再生光源30として偏光方向や波長を可変の光源(可変再生光源)30Aを採用した点に特徴がある。
【0020】
本実施例では光の特性として偏光方向に注目し、光学パターンフィルタ10は、偏光方向が互いに直交する2種類の直線偏光フィルタを干渉縞と同様に格子状に空間分割多重化することで構成される。
【0021】
光学パターンフィルタ10としては、例えば1μm単位で偏光方向を自在に形成可能なフォトニック結晶偏光素子を用いることができるが、偏光フィルムを空間分割のパターンに合わせて切り貼りするなどして直線偏光された再生光を対向領域ごとに透過、遮蔽できるのであれば、どのようなフィルタを用いても良い。
【0022】
また、本実施例では直線偏光用の光学パターンフィルタを用いるが、右円偏光又は左円偏光のパターンが空間分割パターンに合わせて配置された光学パターンフィルタを用いてもよい。円偏光を用いる場合、再生光源30Aの光軸が干渉縞形成媒体20の垂直軸に対して傾いても正常に光を透過、遮断することができるため、再生光源30Aの設置の自由度が増すという利点がある。
【0023】
光学パターンフィルタ10は1枚のフィルタである必要はなく複数のフィルタや光学素子を組み合わせた構造であってもよい。例えば、直線偏光の光源と円偏光の偏光素子とを組み合わせたい場合には、光学パターンフィルタとしては空間分割パターンと同様のパターンを持つ円偏光の偏光素子と1/4波長板を組み合わせたものを用いることが望ましい。
【0024】
なお、光の特性として波長に注目するのであれば、偏光素子に代えてカラーフィルタを用いてもよい。例えば、コマ1は赤の単色再生像、コマ2は青の単色再生像といったように、再生に用いる再生光源30Aの波長が異なる2種類の再生像を切り替える場合には光学パターンフィルタとしてカラーフィルタを用いることができる。
【0025】
干渉縞形成媒体20は、3Dモデルを入力としてコンピュータホログラフィによって計算された2コマ分の干渉縞を、前記図12と同様の手法により空間分割多重化することで形成できる。このような干渉縞は、非特許文献1が開示するように再生対象となる3Dポリゴンメッシュモデルに含まれるポリゴンを面光源として扱い、各面光源から干渉縞形成媒体20への光波伝搬計算を実施することによって形成される。
【0026】
その際、正しい陰面消去で3Dモデルを表示するため、ポリゴン法の陰面消去手法として、非特許文献2が開示するシルエット法や、非特許文献3が開示するサーフェースマスク法を採用し、マスクを用いた光波の遮蔽を行い、遮蔽関係を考慮した上で干渉縞形成媒体20までの光波伝搬を計算する。
【0027】
なお、3Dモデルとしてポリゴンメッシュモデルではなく点群モデルを入力として計算する場合は、非特許文献4が開示する点光源法を採用し、点群を点光源として扱って伝搬計算を実施する。
【0028】
こうして伝搬計算された物体光と呼ばれる3Dモデルに関する光波分布に対して、再生時の再生光源と位置や波長が同一の参照光を計算機上で足し合わせることにより干渉計算を行う。干渉計算によって得た振幅分布または位相分布を量子化した干渉縞のデータに対して空間分割多重した上で、レーザ描画装置又は電子線描画装置を用いたリソグラフィ技術やその他微細加工技術を用いることで干渉縞形成媒体20が生成される。
【0029】
本実施例では、干渉縞として計算機合成ホログラムを用いるが、実物体を被写体として光の干渉を生じさせ、その干渉縞を記録したアナログホログラムを用いても良い。
【0030】
図3は、アナログホログラムの生成方法を模式的に示した図であり、初めに、予め設計した空間分割パターンと同一パターンのマスク51を介してコマ1の物体光L1及び参照光L2を干渉縞記録材料50に記録してコマ1の干渉縞のみを生成する。
【0031】
次いで、前記マスク51と逆パターンのマスク52を介してコマ2の物体光L1及び参照光L2を干渉縞記録材料50に記録してコマ2の干渉縞を追加することで、2コマ分の干渉縞が形成された干渉縞形成媒体20が生成される。
【0032】
図2へ戻り、可変再生光源30Aの偏光方向は制御装置40により制御される。制御装置40は、予め設定された更新頻度で可変再生光源30Aの偏光方向を自動的に切り替えることでアニメーションを再生しても良いし、入力ボタン等の入力デバイスを備えて任意のタイミングで偏光方向を切り替えられるようにしても良い。
【0033】
光学パターンフィルタ10として2方向の直交する偏光方向をもつ直線偏光フィルタを用いるのであれば、可変再生光源30Aには直交する2方向の直線偏光の光を切り替えて出力可能な光源を用いる。具体的には通常のレーザダイオードなど、直線偏光特性を有する光源を用いて構成できる。
【0034】
なお、光学パターンフィルタ10に円偏光のフィルタを用いるのであれば、可変再生光源30Aには非特許文献5が開示するスピン制御半導体レーザや直線偏光レーザに1/4波長板を組み合わせたものなど、円偏光を切り替え可能なレーザを用いる。また、特殊な偏光レーザではなくても光源側にも偏光素子を配置し切り替えることで可変再生光源30Aとしてもよい。
【0035】
制御装置40は再生光の偏光方向を、コマ1のアニメーションを再生する際は光学パターンフィルタ10のコマ1の干渉縞と対向する領域(対向領域)では透過され、他の領域では遮断される第1の偏光方向へ調節して照明する。これにより、再生光がコマ1の干渉縞へは照射される一方、コマ2の干渉縞へは照射されないのでコマ1のみを再生できるようになる。
【0036】
コマ2のアニメーションを再生する際は、再生光の偏光方向を再生コマの切替タイミングに同期して、光学パターンフィルタ10の前記コマ2の対向領域では透過され、他の領域では遮断される第2の偏光方向へ90°回転させる。これにより、コマ2の再生時には再生光がコマ2の干渉縞へは照射される一方、コマ1の干渉縞へは照射されないのでコマ2のみを再生できるようになる。
【0037】
このような制御装置40は、CPU、ROM、RAM、バス、インタフェース等を備えた1台以上の汎用のコンピュータやサーバに、以下に詳述する各機能を実現するアプリケーション(プログラム)を実装することで構成できる。あるいはアプリケーションの一部をハードウェア化またはソフトウェア化した専用機や単能機としても構成できる。
【0038】
図4は、本発明の第2実施形態に係るアニメーションホログラム表示装置1の主要部の構成を模式的に示した図であり、前記と同一の符号は同一又は同等部分を表している。
【0039】
本実施形態は、再生光源30として偏光方向が相互に直行する2つの光源30B,30Cを具備した点に特徴がある。なお、光学パターンフィルタ10では偏光方向が互いに直交する2種類の直線偏光フィルタが干渉縞と同様に格子状に空間分割多重化されているものとする。再生光源30B,30Cの切替は制御装置40により制御される。
【0040】
再生光源30Bは、光学パターンフィルタ10のコマ1の干渉縞と対向する領域(対向領域)では透過され、他の領域では遮断される第1の偏光方向の再生光を照射する。再生光源30Cは、光学パターンフィルタ10のコマ2の対向領域では透過され、他の領域では遮断される第2の偏光方向の再生光を照射する。
【0041】
制御装置40は、コマ1を再生する際は再生光源30Bをオン(点灯)、再生光源30Cをオフ(消灯)にする。これにより、再生光源30Bによる再生光がコマ1の干渉縞へは照射される一方、コマ2の干渉縞へは照射されないのでコマ1のみを再生できるようになる。
【0042】
制御装置40は更に、コマ2を再生する際は再生コマの切替タイミングに同期して、再生光源30Bをオフ、再生光源30Cをオンに切り替える。これにより、コマ2の再生時には再生光源30Cによる再生光がコマ2の干渉縞へは照射される一方、コマ1の干渉縞へは照射されないのでコマ2のみを再生できるようになる。
【0043】
図5,6は、前記第2実施形態における2つの再生光源30B,30Cの配置例を示した図である。
【0044】
図5の例では、一方の再生光源30B及び他方の再生光源30Cを、それぞれの再生光の光軸をハーフミラー60を介して一致させ、光学パターンフィルタ10を介して干渉縞形成媒体20へ照射されるように配置する。
【0045】
コマ1を再生する際は、同図(a)に示すように、再生光源30Bの再生光がハーフミラー60を透過して光学パターンフィルタ10へ到達し、干渉縞形成媒体20へ照射される。コマ2を再生する際は、同図(b)に示すように、再生光源30Cの再生光がハーフミラー60で反射されて光学パターンフィルタ10へ到達し、干渉縞形成媒体20へ照射される。
【0046】
図6の例では、2つの再生光源30B,30Cを、その再生光が光学パターンフィルタ10を介して干渉縞形成媒体20へ直接照射される位置に配置する。各再生光源30B,30Cのオン/オフはコマ切替に同期して切り替えられる。この場合、各コマに対応する干渉縞を計算もしくは記録する際に、各コマ用の光源位置にあわせて参照光の位置を設定することで、各コマの再生像を同じ位置に再生することができる。
【0047】
図7は、光学パターンフィルタ10及び再生光源30の種類と当該光源30の制御方法との組み合わせを一覧表示した図表である。
【0048】
光学パターンフィルタ10を円偏光フィルタと1/4偏光板との組み合わせで構成した場合、再生光は1/4偏光板で円偏光へ変換された後に円偏光フィルタへ到達するものとする。同様に、光学パターンフィルタ10を直線偏光フィルタと1/4偏光板との組み合わせで構成した場合、再生光は1/4偏光板で円偏光へ変換された後に直線偏光フィルタへ到達するものとする。
【0049】
本実施形態では、光学パターンフィルタ10として直線偏光フィルタを採用するのであれば、図8に示すように再生光70の反射光71を観察させる反射型ホログラム、及び図9に示したように再生光70の透過光72を観察させる透過型ホログラムのいずれにも適用できる。光学パターンフィルタ10として円偏光フィルタを採用するのであれば、反射によって回転方向が反転してしまうため透過型ホログラムへの適用となる。
【0050】
図10,11は、コマ切替の遷移中における再生光の制御方法を模式的に示した図であり、直線偏光を採用するのであれば、第1及び第2実施形態のいずれにおいても、図10に示すように、再生コマの切り替え時に偏光方向の切り替えの間のわずかな時間だけ可変再生光源30Aを消灯することで即座に別の映像に切り替えても良いし、第1実施形態では更に、スムーズな切り替えのためには、図11に示すように偏光方向を徐々に回転させることで、2つの映像の透過割合が徐々に変更されるようにしても良い。
【0051】
そして、上記の各実施形態によれば、アニメーションホログラムにおいて所望の領域外への光漏れを抑制し異なる再生像の重畳による品質劣化を抑制することができるのみならず、従来必要であった精密な光源の位置合わせが不要となるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、包括的で持続可能な産業化を推進する」や目標11「都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1…アニメーションホログラム表示装置,10…光学パターンフィルタ,20…干渉縞形成媒体,21…コマ1に対応する干渉縞,22…コマ2に対応する干渉縞,30,30A,30B,30C…再生光源,11…コマ1の干渉縞に対向する光学パターンフィルタの領域,12…コマ2の干渉縞に対向する光学パターンフィルタの領域,60…ハーフミラー,70…再生光,71…反射光,72…透過光
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