(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130674
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】水中油型日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20240920BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240920BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240920BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20240920BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/29
A61K8/85
A61Q17/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040532
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】吉川 真由
(72)【発明者】
【氏名】河内 佑介
(72)【発明者】
【氏名】植山 有里
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB212
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC492
4C083AC511
4C083AC512
4C083AC551
4C083AC552
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC902
4C083AC912
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD212
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD572
4C083AD612
4C083AD642
4C083AD662
4C083BB46
4C083BB51
4C083CC19
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特に二次付着レス効果と化粧ノリに優れ、加えて乾燥感、きしみ感やべたつき感がなく、凝集や析出などの安定性不良も起こらない水中油型日焼け止め化粧料を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)~(D)
(A)ラウリン酸イソアミル
(B)(イソステアリン酸/コハク酸)ポリグリセリル-10及び、またはポリヒドロキシステアリン酸から選ばれる1種また2種
(C)紫外線散乱剤
(D)紫外線吸収剤
を含むことを特徴とする水中油型日焼け止め化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D)
(A):ラウリン酸イソアミル
(B):(B-1)(イソステアリン酸/コハク酸)ポリグリセリルー10
及び
(B-2)ポリヒドロキシステアリン酸
から選ばれる1種また2種以上
(C):紫外線散乱剤
(D):紫外線吸収剤
を含むことを特徴とする水中油型日焼け止め化粧料。
【請求項2】
さらに成分(E)揮発性炭化水素を含む請求項1に記載の水中油型日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型日焼け止め化粧料に関し、更に詳細には、特定成分を含むことにより特に二次付着レス効果と化粧ノリに優れ、加えて乾燥感、きしみ感やべたつき感がなく、凝集や析出などの安定性不良も起こらない水中油型日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア、ボディケアにとって紫外線の害から皮膚を守ることは重要な課題の一つである。日焼け止め化粧料は、紫外線を防御し、その皮膚に対する悪影響を最小限に抑えることを目的としている。一般的に日焼け止め化粧料では紫外線吸収剤と紫外線散乱剤を組み合わせて高い紫外線防御効果を付与している(非特許文献1)。
【0003】
日焼け止め化粧料の剤形としては、水中油型や油中水型の乳化剤形が用いられる。近年では、高いSPF(Sun Protection Factor)値でありながらもスキンケア感覚で使用できるようなみずみずしい使用感の日焼け止め製剤の需要が高まっており、水中油型の日焼け止め製剤が特に広く用いられている。
【0004】
しかし、水中油型乳化化粧料は油中水型乳化化粧料に比べ塗布膜が不均一になりやすく、膜の耐性も劣るため、高いSPF値を目指す場合にはより多量の紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を高配合する必要がある。これらを高配合すると皮膚刺激につながったり、きしみ感やべたつき等の使用感の悪化が起こったり、課題が生じる(特許文献1)。
【0005】
さらに油中水型乳化化粧料よりも油含有量が少ない水中油型乳化化粧料で、多量の紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を配合すると、乳化安定性を維持することが難しいだけでなく、経時的に紫外線吸収剤の析出や、紫外線散乱剤の凝集などの安定性不良が起こりやすくなるといった課題も生じる。
【0006】
紫外線吸収剤は一般的に水に難溶性のものが多く、それらを製剤に高配合するためには溶解安定性を考慮する必要がある。溶解安定性を高めるためには、紫外線吸収剤の溶解性がよい、高極性油などを用いることが知られている。例えば、セバシン酸ジイソプロピルなどが用いられるが、これらの高極性油を水中油型の乳化物に高配合するためには、界面活性剤を多量に配合しなければならず、その結果べたつきや油っぽさといった使用感の課題が生じてしまう。
【0007】
加えて、高い紫外線防御効果を付与するためには、紫外線散乱剤の配合も必要である。紫外線散乱剤には一般的に酸化チタンや酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウムなどの金属酸化物が使用される。これらの紫外線散乱剤を配合して製剤を安定化させるためには、分散性のよい油や分散剤を配合する必要がある。しかし、紫外線吸収剤の溶解性を阻害する油を配合すると、紫外線吸収剤と併用した際に、析出などの安定性不良が生じる。そのため、分散安定性と溶解安定性が両立できる素材を選択しなければならない。例えば、先に述べたセバシン酸ジイソプロピル等は紫外線吸収剤の溶解性に優れた溶媒であるが、紫外線散乱剤の分散性に関しては、満足いく結果ではなかった。紫外線散乱剤の分散が悪くなると、製剤安定性が悪化するだけでなく、きしみ感やべたつき感も悪化するため、これらの両立は必須である。
【0008】
従来の技術としては、例えば揮発性炭化水素やイソステアリン酸を用いることで紫外線散乱剤を油相中に安定に分散させる技術が報告されている(特許文献2)。しかし、使われている紫外線吸収剤は液体の成分が多く、難溶性の紫外線吸収剤が配合されていないことから、紫外線吸収剤の凝集安定性と紫外線散乱剤の分散安定性を両立しているとは言えない。
【0009】
化粧ノリとは、メイクアップ化粧品が肌へなじんでいるかどうかを表す言葉である。化粧ノリがよいとは、メイクアップ化粧品がムラなく肌に伸ばせたり、仕上がりの肌がきれいに見えたりすることである。一般的に化粧持ち効果が化粧下地の効果として付与されることがあるが(特許文献3)、化粧持ち効果とは、化粧持続性に関する技術であり、汗や皮脂に強いといった機能に関する。本願効果の化粧ノリ効果とは、持続性に関する効果ではなく、即時的に感じるメイクアップ化粧料の仕上がりや、ムラなく伸ばせる効果のことを指す。
近年、消費者の美容意識の高まりにより、化粧ノリに優れた化粧料の需要は高まってきている。加えて、消費者の時短意識や、日焼け止め効果の需要拡大により、日焼け止めを化粧下地の代わりとして使いたいというニーズも増えてきている。そのため、近年では日焼け止め化粧料においても化粧ノリ効果に優れた製品開発が求められている。
【0010】
化粧ノリ効果を付与する技術としては、一般的に肌荒れを改善させる製剤技術であるものが多い。例えば皮膚の老化現象の抑制成分である1-アシル-2,3-環状ホスファチジン酸またはその塩と、エチレンオキサイドが特定の平均付加モル数であるポリオキシエチレンメチルグルコシドとを特定の比率で組み合わせた製剤を1週間使用した結果、化粧ノリの改善効果がみられたといった結果が出ている(特許文献4)。
さらに、スフィンゴシン、スフィンゴシンの塩、擬似スフィンゴシン、擬似スフィンゴシンの塩、アニオン界面活性剤及びカチオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の化合物、セラミド類、グリセリン脂肪酸エステル、高級アルコール、セタノール100質量部に対して25質量部を85℃で混合した後に25℃で測定したときの光透過度が90%以上であり、且つ主鎖のガラス転移温度Tgが25℃以下である、ポリマーを特定の質量比で組み合わせた乳化組成物が、3日間の連用であっても、連用部位を洗浄してメイクアップを行った場合の化粧ノリを改善すると報告されている(特許文献5)。
しかし、いずれも即時的な化粧ノリ効果改善ではなく、化粧ノリを改善するのに時間を要する。化粧下地は塗ってすぐメイクアップ化粧料がきれいに仕上がることが求められるため、化粧ノリ効果改善としては満足できる効果ではなかった。
【0011】
日焼け止め化粧料で化粧ノリ効果を改善した例としては、紫外線吸収剤を内包する平均粒径0.1~10μmのポリシリコーンのマイクロカプセル1~13質量%、式(I)で示される化合物0.5~10質量%、カルボキシビニルポリマー又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー0.1~1質量%を組み合わせたものが開発されている(特許文献6)が、化粧ノリ効果は十分な物とは言えず、さらには紫外線散乱剤との併用でもないため、紫外線防御効果においても満足のいくものではなかった。
【0012】
また、近年マスク着用の背景や日焼け止め効果の持続性の観点から、衣服などへの二次付着レス効果が求められている(特許文献7)。二次付着とは、塗布した日焼け止めが衣服や持ち物などに再付着することである。二次付着してしまうと、紫外線防御効果や化粧膜の仕上がりが劣化してしまう可能性があり、近年日焼け止めにおいても二次付着レス効果が求められている。
二次付着レス効果を高める技術としては、揮発性シリコーン油や揮発性炭化水素油、揮発性のハイドロフルオロエーテル、水などの常温で蒸発する成分を多量に配合し、速乾性を付与する技術や、硬い転写性のないシリコーン系樹脂などの油性皮膜形成剤を組み合わせる技術が開示されている(特許文献8、特許文献9)
しかし、特許文献8、9は油中水型化粧料に関する技術であり、水中油型化粧料に開示されている技術を応用すると、硬い皮膜性が付与され、乾燥感が感じられ、保湿効果が下がる課題が生じる。また、皮膜形成剤特有のきしみ感やべたつき感も生じてしまうため、使用感触としても十分なものではない。
【0013】
以上のことから、二次付着レス効果と化粧ノリに優れ、加えて乾燥感、きしみ感やべたつき感がなく、凝集や析出などの安定性不良も起こらない水中油型日焼け止め化粧料を開発することは急務であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】「新化粧品学」第2版、光井武夫編、2001年、南山堂発行、第497~504頁
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003-206214号公報
【特許文献2】特開2012-111726号公報
【特許文献3】特開2012-091642号公報
【特許文献4】特開2016-121118号公報
【特許文献5】特開2020-203877号公報
【特許文献6】特開2014-005250号公報
【特許文献7】特開2016-069325号公報
【特許文献8】特開2005-225806号公報
【特許文献9】特開2006-306860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、二次付着レス効果と化粧ノリに優れ、加えて乾燥感、きしみ感及びべたつき感がなく、凝集及び析出などの安定性不良も起こらない水中油型日焼け止め化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明者らが研究を重ねたところ下記に示す特定の成分を組み合わせることにより、目的とする上記の課題を解決できる日焼け止め化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明の水中油型日焼け止め化粧料は成分(A)~(D)
(A)ラウリン酸イソアミル
(B):(B-1)(イソステアリン酸/コハク酸)ポリグリセリルー10
及び
(B-2)ポリヒドロキシステアリン酸
から選ばれる1種また2種以上
(C)紫外線散乱剤
(D)紫外線吸収剤
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、二次付着レス効果と化粧ノリに優れ、加えて乾燥感、きしみ感及びべたつき感がなく、凝集及び析出などの安定性不良も起こらない水中油型日焼け止め化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について更に詳しく説明する。なお、特段注釈のない限り、以下で成分の配合量を「%」で表示する場合は質量%を意味する。
【0021】
本発明に用いる成分(A)ラウリン酸イソアミルは、イソペンチルアルコールとラウリン酸のエステル化によって製造することができる。
【0022】
本発明の水中油型日焼け止め化粧料製剤中における成分(A)のラウリン酸イソアミルの配合量としては、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、通常、化粧料全量に対し、1.0質量%~20.0質量%が好ましく、より好ましくは2.0質量%~15.0質量%である。この範囲であれば、二次付着レス効果や化粧ノリ効果、析出や凝集安定性、きしみ感やべたつき感に優れる。
【0023】
本発明に用いる成分(B)は、(B-1)(イソステアリン酸/コハク酸)ポリグリセリルー10及び(B-2)ポリヒドロキシステアリン酸から選ばれる。
【0024】
本発明に用いる成分(B-1)(イソステアリン酸/コハク酸)ポリグリセリル-10とは、グリセリンの平均重合度が10のポリグリセリンの水酸基に、イソステアリン酸及びコハク酸がエステル結合した化合物をいう。通常、粉体分散剤として使われる。特に制限はなく、通常化粧料に用いられるものを使用することができる。
【0025】
本発明に用いる成分(B-2)ポリヒドロキシステアリン酸とは、一つの水酸基を有するヒドロキシステアリン酸の重合物である。本発明において、(C)の分散安定性を向上させる点で、ヒドロキシステアリン酸の水酸基は12位が好ましく、また、ヒドロキシステアリン酸の平均重合度は3~12が好ましく、平均重合度4~8が更に好ましい。
【0026】
本発明の水中油型日焼け止め化粧料における成分(B)の総配合量としては、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、通常、化粧料全量に対し、0.1~5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.3質量%~3質量%である。この範囲であれば、二次付着レス効果や化粧ノリ効果、凝集安定性、きしみ感やべたつき感に優れる。
【0027】
(B-1)及び(B-2)は、どちらかから1種を単独で用いてもよく、片方を2種以上を用いてもいいし、両方から1種ずつ以上を組み合わせて用いても差し支えない。
【0028】
本発明に用いる成分(C)紫外線散乱剤は特に制限がなく、通常化粧料に用いられるものを使用することができるが、疎水化処理金属酸化物が好適に用いられる。紫外線防御の観点から、走査型電子顕微鏡を用いて、任意の視野の粒子10個について、粒子径を測定した平均一次粒子径が100nm以下の微粒子を用いることが好ましい。なお、本発明における平均一次粒子径は、例えば、透過電子顕微鏡の画像解析から、粒子の長軸と短軸の相加平均として求めることができる。特に好ましい金属酸化物としては酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウムなどが挙げられる。疎水化処理の方法は特に制限無く、被覆処理、焼付処理、及びシランカップリング剤処理等の一般的に用いられている処理方法等が挙げられる。疎水化処理剤は特に限定されず、金属石鹸、シリコーン、脂肪酸、リン脂質、フッ素化合物、シリル化剤、及びアシルアミノ酸などが好適に使用できる。特にトリエトキシカプリリルシラン処理、イソステアリン酸などの脂肪酸処理、及びシリコーン処理が、組成物の安定性、耐水性、洗浄性の観点から好適である。シリコーン処理に用いるシリコーンとしては特に限定されないが、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコンなどが挙げられる。
【0029】
本発明の水中油型日焼け止め化粧料における成分(C)紫外線散乱剤の配合量としては、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、通常、化粧料全量に対し、3質量%~35質量%が好ましく、より好ましくは5質量%~25質量%である。この範囲ではきしみ感を抑えながらも二次付着レス効果や化粧ノリ効果、凝集安定性に優れる。
【0030】
成分(C)は、単独で用いても、2種以上を混合して用いても差し支えない。
【0031】
本発明に用いる成分(D)紫外線吸収剤は、特に制限がなく、通常化粧料に用いられるものを使用することができる。好ましい紫外線吸収剤としては、オクチルメトキシシンナメート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)、オクトクリレン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オキシベンゾン-3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンのような紫外線吸収剤が挙げられる。
【0032】
本発明の水中油型日焼け止め化粧料における成分(D)紫外線吸収剤の配合量としては、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されないが、化粧料全量に対し、0.1質量%~25質量%が好ましく、より好ましくは1質量%~20質量%の範囲で用いられる。この範囲であればべたつき感を抑えながらも高い化粧ノリ効果、析出安定性に優れる。
【0033】
成分(D)は、単独で用いても、2種以上を混合して用いても差し支えない。
【0034】
本発明に用いる成分(E)の揮発性炭化水素とは、常温(15~25℃)で揮発性を有する炭化水素である。通常化粧料に用いられる揮発性炭化水素油であれば特に制限されない。このような揮発性炭化水素油としては、例えばn-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン等のパラフィン系炭化水素油、イソデカン、イソドデカン、水添ポリイソブテン等のイソパラフィン系炭化水素油、シクロデカン、シクロドデカン等の環状パラフィン炭化水素油を挙げることができる。これらの中でも、分散安定性や使用感を向上させる点より、水添ポリイソブテンが好ましい。
【0035】
本発明の水中油型日焼け止め化粧料製剤中における成分(E)の揮発性炭化水素の配合量としては、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、通常、化粧料全量に対し、1.0質量%~20.0質量%が好ましく、より好ましくは2.0質量%~15.0質量%である。この範囲であれば、高い二次付着レス効果や、べたつきを抑えながら良好な化粧ノリ効果に優れる。
【0036】
成分(E)は、単独で用いても、2種以上を混合して用いても差し支えない。
【0037】
本発明の水中油型日焼け止め化粧料は水を含有する様々な剤型、例えば、化粧水、乳液、ジェル、クリームなどの剤型を採ることができる。
【0038】
本発明の水中油型日焼け止め化粧料を皮膚に適用するに際しては、化粧料を直接皮膚に塗布する方法、不織布等の吸収体に化粧料を含侵させたもので皮膚を拭く方法などが用いられる。
【0039】
本発明の水中油型日焼け止め化粧料には、上記の必須成分のほかに、必要に応じ一般的に化粧料などに用いられる成分を配合することも可能である。例えば、成分B以外の分散剤、成分C以外の粉体、パール剤、保湿剤、水溶性高分子、香料、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、抗炎症剤、抗酸化剤、清涼剤、生薬抽出物やビタミン類等の添加物を適時配合することができる。これら成分を含有させる場合の配合割合は、その種類や目的に応じて適宜選択することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【実施例0040】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。なお、これら実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0041】
〔実施例1~14及び比較例1~7〕
表1に示す成分につき常法にて日焼け止め化粧料を調製し、下記の方法により評価を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
<二次付着レス性の評価方法>
ISO-24444に規定されているSPF測定法に準じてサンプル調製を行った。ヘリオプレートHD6(HELIOPLATE(登録商標)HD6、HerioScreen Lab.社製、プレートサイズ:5cm×5cm、材質:PMMA)に2mg/cm2の組成物を均一に塗布しSPFアナライザーUV-2000S(三洋貿易株式会社製)にてSPF値を測定した。次いで、上記のサンプル調製を行ったプレートをティッシュペーパー上に塗布面を下にして置き、500gの負荷をプレートの上に10分間乗せることでティッシュペーパーに付着させた後、ティッシュペーパーを剥がしSPF値を再度測定した。ティッシュペーパーを剥がした後のSPF値が元のSPF値に対して何パーセントに該当するかを算出し、その値を残存率(%)とした。
(評価基準)
◎:75%以上の残存率
○:50%以上75%未満の残存率
△:25%以上50%未満の残存率
×:25%未満の残存率
【0043】
<化粧ノリの評価方法>
20名の女性(25~40歳)をパネラーとし、上記日焼け止め化粧料を洗顔後全顔に塗布したのち、各自が普段使用しているファンデーションを全顔に塗布し、化粧ノリについてパネラーが下記のとおりに評価した。
2点:化粧ノリがよいと感じた場合。
1点:僅かに化粧ノリがよいと感じた場合。
0点:どちらともいえない、または化粧ノリが悪いと感じた場合。
【0044】
20名の合計点を求め、以下のように判定した。
◎:合計点が35点以上である。:化粧ノリが非常に良好な化粧料である。
○:合計点が25点以上、35点未満である。:化粧ノリが良好な化粧料である。
△:合計点が10点以上、25点未満である。:化粧ノリがあまく良くない化粧料である。
×:合計点が10点未満である。:化粧ノリが悪い化粧料である。
【0045】
<きしみ感の評価方法>
20名の女性(25~40歳)をパネラーとし、上記日焼け止め化粧料を洗顔後全顔に塗布したのち、きしみ感についてパネラーが下記のとおりに評価した。
2点:きしみ感を感じなかった場合。
1点:僅かにきしみ感を感じた場合。
0点:きしみ感を感じた場合。
【0046】
20名の合計点を求め、以下のように判定した。
◎:合計点が35点以上である。:非常にきしみ感のない化粧料である。
○:合計点が25点以上、35点未満である。:きしみ感がない化粧料である。
△:合計点が10点以上、25点未満である。:きしみ感があまりない化粧料である。
×:合計点が10点未満である。:きしみ感がある化粧料である。
【0047】
<べたつき感の評価方法>
20名の女性(25~40歳)をパネラーとし、上記日焼け止め化粧料を洗顔後全顔に塗布したのち、べたつき感についてパネラーが下記のとおりに評価した。
2点:べたつき感を感じなかった場合。
1点:僅かにべたつき感を感じた場合。
0点:べたつき感を感じた場合。
【0048】
20名の合計点を求め、以下のように判定した。
◎:合計点が35点以上である。:非常にべたつき感のない化粧料である。
○:合計点が25点以上、35点未満である。:べたつき感がない化粧料である。
△:合計点が10点以上、25点未満である。:べたつき感があまりない化粧料である。
×:合計点が10点未満である。:べたつき感がある化粧料である。
【0049】
<乾燥感の評価方法>
20名の女性(25~40歳)をパネラーとし、上記日焼け止め化粧料を洗顔後全顔に塗布したのち、乾燥感についてパネラーが下記のとおりに評価した。
2点:乾燥感を感じない場合。
1点:僅かに乾燥感を感じる場合。
0点:乾燥感を感じる場合。
【0050】
20名の合計点を求め、以下のように判定した。
◎:合計点が35点以上である。:乾燥感を全く感じない化粧料である。
○:合計点が25点以上、35点未満である。:乾燥感を感じない化粧料である。
△:合計点が10点以上、25点未満である。:やや乾燥感を感じる化粧料である。
×:合計点が10点未満である。:非常に乾燥感を感じる化粧料である。
【0051】
<安定性の評価(凝集)>
製剤は透明PET容器(30ml)に30g充填し、40℃で1か月静置させ、熟練した技術者が目視で判定した。
(評価基準)
◎:凝集が全く起こっていない。
〇:凝集がほとんど起こっていない。
△:凝集がわずかに起こっている。
×:凝集が顕著に起こっている。
【0052】
<安定性の評価(析出)>
製剤は透明PET容器(30ml)に30g充填し、40℃で1か月静置させ、熟練した技術者が目視で判定した。
(評価基準)
◎:析出が全く起こっていない。
〇:析出がほとんど起こっていない。
△:析出がわずかに起こっている。
×:析出が顕著に起こっている。
【0053】
【0054】
【0055】
本発明の水中油型日焼け止め化粧料(実施例1~14)によれば、二次付着レス効果と化粧ノリに優れ、加えて乾燥感、きしみ感やべたつき感がなく、凝集や析出などの安定性など全てにおいて良好な結果が得られた。また化粧ノリに関しては、異なるファンデーションを用いても化粧ノリを向上することが確認できた。実施例13~14では成分Eを類似成分に置き換えた例であるが、成分Eを置き換えると二次付着レス効果や化粧ノリ、きしみ感やべたつき感、凝集安定性がわずかに劣る傾向があるため、本願課題を達成するためには成分Eは揮発性炭化水素がより好ましいことが分かった。比較例1~3では成分Aを未配合、もしくは類似成分に置き換えた例であるが、成分Aを置き換えると化粧ノリ、二次付着レス効果、きしみ感やべたつき感、乾燥感や析出安定性が顕著に悪化する傾向があり、本願課題を達成することができなかった。比較例4~7では成分Bを未配合、もしくは類似成分に置き換えた例であるが、成分Bを置き換えると化粧ノリ、二次付着レス効果が悪化し、きしみ感やべたつき感、乾燥感や析出安定性も悪化する傾向があった。以上の結果からも、本願構成の水中油型日焼け止め化粧料であれば、本願課題をすべて達成することができ、従来の成分構成では到底到達できない機能を付与した新たな水中油型日焼け止め化粧料を提供することができる。
【0056】
常法にて、各処方の日焼け止め化粧料を作製した。いずれの処方においても本発明の効果を奏することが確認された。
【0057】
処方1:日焼け止めクリーム
配合成分 配合量(%)
ラウリン酸イソアミル 7
カプリリルメチコン 1.0
ポリヒドロキシステアリン酸 1
イソステアリン酸処理酸化亜鉛 15
イソステアリン酸処理酸化セリウム 1
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 2.5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1
エチルヘキシルトリアゾン 1
ドロメトリゾールトリシロキサン 0.1
水添ポリイソブテン 5
ステアリン酸ポリグリセリル-10 0.5
ステアリン酸グリセリル 0.5
1,3-ブチレングリコール 9
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)
コポリマー 0.5
シリカ 2
パルミチン酸デキストリン 0.5
グリチルレチン酸ステアリル 0.05
キサンタンガム 0.05
水添ナタネ油アルコール 1.5
セチルリン酸カリウム 0.5
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)
コポリマー 0.5
ユビキノン 0.001
コレステロール 0.1
セラミド3 0.05
ニコチン酸アミド 5.0
フィトステロール 0.1
アスコルビルグルコシド 0.1
タベブイアインペチギノサ樹皮エキス 0.01
コンフリー葉エキス 0.01
防腐剤 適量
精製水 残余
合計 100
【0058】
処方2:日焼け止め乳液
配合成分 配合量(%)
ラウリン酸イソアミル 2
(イソステアリン酸/コハク酸)ポリグリセリル-10 0.3
トリエトキシカプリリルシラン処理酸化亜鉛 5
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 1
オクトクリレン 0.1
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 0.1
オキシベンゾン-3 0.1
水添ポリイソブテン 2
1,3-ブチレングリコール 9
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)
コポリマー 0.3
エチルヘキサン酸セチル 5
ジメチコン 4
イソノナン酸イソトリデシル 3
トリエチルヘキサノイン 3
シリカ 1.5
グリコシルトレハロース 0.5
加水分解水添デンプン 0.3
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル 0.05
シロキクラゲ多糖体 0.03
セルロースナノファイバー 0.1
30%ジラウロイルグルタミン酸リシンNa水溶液 0.1
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 0.5
水添レシチン 0.05
ヒアルロン酸Na 0.1
防腐剤 適量
精製水 残余
合計 100
【0059】
処方3:日焼け止めジェル
配合成分 配合量(%)
ラウリン酸イソアミル 2
ポリヒドロキシステアリン酸 0.3
ジメチコン処理酸化亜鉛 4.5
ハイドロゲンジメチコン処理酸化チタン 0.5
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 2
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1
オクトクリレン 1
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール 0.1
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 0.1
ホモサレート 0.1
サリチル酸エチルへキシル 0.1
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)
コポリマー 0.3
エタノール 8
ジメチコン 3
シリカ 2.5
ジプロピレングリコール 2
(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル 1.5
アクリレーツコポリマー 1
セテス-20 0.2
ベヘニルアルコール 1
PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン 1
(VP/エイコセン)コポリマー 0.5
ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 0.5
セチルリン酸カリウム 0.5
カルボマー 0.1
水酸化カリウム 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
メントール 0.05
トコフェロール 0.01
ポリアクリル酸アンモニウム 0.0001
香料 適量
精製水 残余
合計 100
【0060】
処方例4:化粧下地
ラウリン酸イソアミル 10
(イソステアリン酸/コハク酸)ポリグリセリル-10 0.3
ポリヒドロキシステアリン酸 0.7
疎水化処理酸化亜鉛 16
疎水化処理酸化チタン 3
水添ポリイソブテン 4
ステアロイルグルタミン酸Na 0.01
1,3-ブチレングリコール 6
ジメチコン 2.5
シクロペンタシロキサン 2
DPG 2
PEG-50水添ヒマシ油 1
シリカ 1
ポリアクリルアミド 0.52
セテス-20 0.5
セチルリン酸K 0.2
防腐剤 適量
精製水 残余
合計 100