(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130693
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】水切り装置
(51)【国際特許分類】
B24B 5/37 20060101AFI20240920BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20240920BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20240920BHJP
B21B 28/02 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B24B5/37
B24B55/06
B24B5/04
B21B28/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040555
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】平島 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 拓良
(72)【発明者】
【氏名】豊田 奨
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悠紀
【テーマコード(参考)】
3C043
3C047
【Fターム(参考)】
3C043AA03
3C043AC13
3C043CC03
3C043DD06
3C047FF09
3C047FF17
3C047FF19
(57)【要約】
【課題】研削後のロール表面の水切り作業の効率化を図る。
【解決手段】本発明の水切り装置20は、回転台に設置されたロールRを回転砥石5で研削するロール研削装置10に設けられ、回転砥石5をロールRに対して移動させるロール研削装置10の移動装置2によってロールRの一端側から他端側に移動可能に設けられる。水切り装置20は、長尺状の空気吐出部21a(22a)を備え、回転するロール表面に対してカーテン状の圧縮空気を噴出するエアーノズル(21,22)を有する。エアーノズル(21,22)は、ロールの一端側から他端側に向かう進行方向において、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22が並んで配置されている。そして、進行方向の先頭に位置する第1エアーノズル21が、進行方向のロール端部に向かって傾斜して配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転台に設置されたロールを回転砥石で研削するロール研削装置に設けられ、前記回転砥石をロールに対して移動させる前記ロール研削装置の移動装置によってロールの一端側から他端側に移動可能に設けられる水切り装置であって、
長尺状の空気吐出部を備え、回転するロール表面に対してカーテン状の圧縮空気を噴出するエアーノズルを有し、
前記エアーノズルは、ロールの一端側から他端側に向かう進行方向において、第1エアーノズル及び第2エアーノズルが並んで配置され、
前記進行方向の先頭に位置する前記第1エアーノズルが、前記進行方向のロール端部に向かって傾斜して配置されることを特徴とする水切り装置。
【請求項2】
前記第2エアーノズルは、前記進行方向に対して前記空気突出部が水平に位置するように配置され、
前記進行方向において、前記第1エアーノズルの前記空気吐出部の後端部は、前記第2エアーノズルの前記空気突出部の前端部の下方に位置し、カーテン状の圧縮空気の噴出領域の一部が互いに重複するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の水切り装置。
【請求項3】
前記第1エアーノズル及び前記第2エアーノズルの双方が、前記進行方向のロール端部に向かって傾斜して配置されることを特徴とする請求項1に記載の水切り装置。
【請求項4】
前記第2エアーノズルの前記空気突出部の前端部が、前記第1エアーノズルの前記空気吐出部の後端部と離間して配置されることを特徴とする請求項3に記載の水切り装置。
【請求項5】
前記第1エアーノズルの傾斜角度は、前記進行方向に対し、40度以上55度以下であることを特徴とする請求項1に記載の水切り装置。
【請求項6】
前記第1エアーノズル及び前記第2エアーノズルの各傾斜角度は、前記進行方向に対し、40度以上55度以下であることを特徴とする請求項3に記載の水切り装置。
【請求項7】
前記第1エアーノズルの前記空気吐出部は、ロール表面に対して直交する方向を基準とした吐出角度が、1度以上から15度以下であり、
前記第1エアーノズルから噴出される圧縮空気が、ロール表面に斜めに吹き付けられることを特徴とする請求項1に記載の水切り装置。
【請求項8】
ロール表面に対して直交する方向において、前記第1エアーノズルの前記空気吐出部とロール表面との間のクリアランスが、1mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の水切り装置。
【請求項9】
前記第1エアーノズル及び前記第2エアーノズルに圧縮空気を供給する圧縮空気供給機構をさらに備え、
前記圧縮空気供給機構は、
エアーコンプレッサーと、
前記エアーコンプレッサーの供給路から分岐し、前記第1エアーノズルに接続される第1流路と、
前記供給路から分岐し、前記第2エアーノズルに接続される第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路それぞれに設けられる弁と、を備え、
前記第1エアーノズルに供給される圧縮空気量が、前記第2エアーノズルに供給される圧縮空気量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の水切り装置。
【請求項10】
前記弁は、電磁弁であり、
前記圧縮空気供給機構は、前記電磁弁の開度を調節する流量制御部をさらに備え、
前記流量制御部は、前記進行方向において、先頭の前記第1エアーノズルがロールの他端部を通過した後、前記電磁弁を制御して前記第1エアーノズルに供給されていた圧縮空気を後続の前記第2エアーノズルに供給し、前記第2エアーノズルがロールの他端部を通過する際の前記第2エアーノズルから噴出する圧縮空気の量を増加させることを特徴とする請求項9に記載の水切り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面研削で付着したロール表面の水等を除去する水切り技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロールの表面は、被圧延物や被搬送物への品質に影響するため、表面検査が行われ、凹凸や欠損を取り除くため表面研削が行われる。このとき、ロール研削中又はロール研削後のロール表面には、研削水(研削液)が付着しているので、研削状態や疵を確認する際に、ロール表面の研削水を除去する必要がある。ロール表面の研削水の除去は、例えば、特許文献1,2に記載のように、水切り板をロール表面に押し当てたり、ロール表面に空気を吹き掛けたりする技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-237369号公報
【特許文献2】実開平4-104201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研削後のロール表面に、水(水膜)が残っていると、乾燥によって水跡が残ったり、錆の原因になったり、埃等が付着したりする原因となる。水跡や錆、付着物がロール表面に存在すると、例えば、圧延された鋼材の表面に、水跡が転写されたり、錆や埃による疵が発生したりし、品質への影響が大きくなる。
【0005】
このため、研削後のロール表面の水切り作業は重要であるが、特許文献に記載のように従来の水切り装置は、水切りが不十分であることが多かった。水切り性能が不十分だと、水切り動作を複数回行う必要があり、作業効率が低下する課題があった。
【0006】
また、従来の水切り装置では、水切り作業の効率化を図り難いことから、水切り装置を使った後、又は水切り装置を使わずに、作業員が直接、ロール表面の水切り作業を行うケースもあり、回転するロール表面に対する安全性の確保が必要となる。
【0007】
一方で、作業員による水切り作業は、例えば、作業員がゴムヘラ等の水切り部材をロール表面に押し付けて水を飛ばしたりするが、作業員の熟練度によって必ずしも確実に水切りすることができず、この場合においても複数回の水切り作業が必要となるケースがあるなど、作業効率の面でも課題があった。
【0008】
本発明の目的は、研削後のロール表面の水切りを確実に行うことができる水切り装置を提供し、ロール表面の水切り作業を安全にかつ効率的に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の水切り装置は、回転台に設置されたロールを回転砥石で研削するロール研削装置に設けられ、回転砥石をロールに対して移動させるロール研削装置の移動装置によってロールの一端側から他端側に移動可能に設けられる。本水切り装置は、長尺状の空気吐出部を備え、回転するロール表面に対してカーテン状の圧縮空気を噴出するエアーノズルを有する。エアーノズルは、ロールの一端側から他端側に向かう進行方向において、第1エアーノズル及び第2エアーノズルが並んで配置されており、進行方向の先頭に位置する第1エアーノズルが、進行方向のロール端部に向かって傾斜して配置される。
【0010】
(2)上記(1)において、上記第2エアーノズルは、進行方向に対して空気突出部が水平に位置するように配置することができる。そして、進行方向において、第1エアーノズルの空気吐出部の後端部は、第2エアーノズルの空気突出部の前端部の下方に位置し、カーテン状の圧縮空気の噴出領域の一部が互いに重複するように配置されている。
【0011】
(3)上記(1)において、上記第1エアーノズル及び第2エアーノズルの双方が、進行方向のロール端部に向かって傾斜して配置されるように構成することができる。
【0012】
(4)上記(3)において、上記第2エアーノズルの空気突出部の前端部が、上記第1エアーノズルの空気吐出部の後端部と離間して配置されるように構成することができる。
【0013】
(5)上記(1)において、上記第1エアーノズルの傾斜角度は、進行方向に対し、40度以上55度以下とすることができる。
【0014】
(6)上記(3)において、上記第1エアーノズル及び第2エアーノズルの各傾斜角度は、進行方向に対し、40度以上55度以下とすることができる。
【0015】
(7)上記(1)において、上記第1エアーノズルの空気吐出部は、ロール表面に対して直交する方向を基準とした吐出角度が、1度以上から15度以下となるように構成することができ、第1エアーノズルから噴出される圧縮空気が、ロール表面に斜めに吹き付けられるように構成することができる。
【0016】
(8)上記(1)において、ロール表面に対して直交する方向において、上記第1エアーノズルの空気吐出部とロール表面との間のクリアランスが、1mm以上5mm以下となるように構成することができる。
【0017】
(9)上記(1)において、水切り装置は、上記第1エアーノズル及び第2エアーノズルに圧縮空気を供給する圧縮空気供給機構を備えることができる。圧縮空気供給機構は、エアーコンプレッサーと、エアーコンプレッサーの供給路から分岐し、第1エアーノズルに接続される第1流路と、上記供給路から分岐し、第2エアーノズルに接続される第2流路と、第1流路及び第2流路それぞれに設けられる弁と、含んで構成することができる。そして、第1エアーノズルに供給される圧縮空気量は、第2エアーノズルに供給される圧縮空気量よりも多くなるように構成することができる。
【0018】
(10)上記(9)において、上記弁は、電磁弁で構成することができ、上記圧縮空気供給機構は、電磁弁の開度を調節する流量制御部を備えるように構成することができる。ここで、上記流量制御部は、進行方向において、先頭の第1エアーノズルがロールの他端部を通過した後、電磁弁を制御して第1エアーノズルに供給されていた圧縮空気を後続の第2エアーノズルに供給し、第2エアーノズルがロールの他端部を通過する際の第2エアーノズルから噴出する圧縮空気の量を増加させるように構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、水切り装置を回転するロールの一端側から他端側に移動させるだけで、確実にロール表面の水切りを完了させることができ、ロール表面の水切り作業を安全にかつ効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の水切り装置が適用されたロール研削装置の構成図である。
【
図2】第1実施形態のロール研削装置に搭載されたロール表面検査装置を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態の水切り装置の各構成と、ロールとの位置関係を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態の第1エアーノズル及び第2エアーノズルによる水切り動作を説明するための図である。
【
図6】第1実施形態の水切り動作及びロール表面検査を含むロール研削方法のフローチャートである。
【
図7】第1実施形態の第1エアーノズル及び第2エアーノズルのロール端部流量制御を説明するための図である。
【
図8】第1実施形態の第1エアーノズル及び第2エアーノズルのロール端部流量制御を適用した水切り動作のフローチャートである。
【
図9】第1実施形態の水切り装置の第1変形例を示す図である。
【
図10】第1実施例の第1エアーノズルの傾斜角度を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1から
図9は、第1実施形態の水切り装置付きロール研削装置を説明するための図である。ロールは、鉄鋼用圧延ロールや製紙用ロールなどを含むことができ、ロールの形状等は特に問わず、本装置によるロール表面検査、研削、及び水切りに適用することができる。
【0023】
なお、各図において、X方向は、ロールRの長手方向(ロールRの軸方向)、Y方向は、ロールRの長手方向と直交するロールRの幅方向、Z方向は、ロール研削装置10の高さ方向である。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交している。
【0024】
<ロール研削装置の構成>
図1は、ロール研削装置10の構成図である。本実施形態のロール研削装置10は、水切り装置20と、ロール表面検査装置100とを含んで構成されている。水切り装置20の詳細な説明は、後述する。
【0025】
本実施形態のロール研削装置10は、基台8上に、ロール回転駆動装置1が設けられ、支柱としての回転受け台1aとの間に研削対象(検査対象)のロールRが設置される。ロールRは、その長手方向(軸方向)が、基台8と平行となるようにロール回転駆動装置1及び回転受け台1aとの間に設置される。
【0026】
基台8には、ロールRの長手方向左右に往復移動可能な第1移動装置2が設けられている。第1移動装置2には、ロールRの軸方向と直交する方向(Y方向)に進退可能な第2移動装置3が設けられている。これにより、ロールRの表面に接触して研削を行う回転砥石5は、ロールRの長手方向に沿って移動でき、ロールRの表面に対して進退移動が可能となる。
【0027】
回転砥石5は、所定幅の砥石面を有する円盤状の砥石であり、回転砥石駆動装置4によって回転駆動する。また、回転砥石5は、カバー部材6が設けられ、砥石面を含む一部だけを残し、回転砥石5の少なくとも一部を覆っている。
【0028】
ロール回転駆動装置1に設置されたロールRに対し、第1移動装置2で回転砥石5をロールRの軸方向端部に移動させ、さらに、第2移動装置3でロールRに近づけて回転砥石5の砥面をロールRの表面に接触させる。そして、ロール回転駆動装置1及び回転砥石駆動装置4でロールR及び回転砥石5をそれぞれ回転駆動させることで、ロールRの表面を研削する。研削中は、水等の研削液がロールRと回転砥石5の接触領域に供給される。
【0029】
ロール研削装置10は、ロール研削制御装置7によって制御されるNC加工機であり、ロール研削制御装置7は、ロール回転駆動装置1、第1移動装置2、第2移動装置3及び回転砥石駆動装置4の各駆動制御を行う。ロール研削制御装置7は、ロールRの回転速度及び回転砥石5の回転速度を制御して研削スピードを制御するとともに、第2移動装置3をロールRの表面に対して進退させ、回転砥石5の砥面とロールRの表面間の相対位置を可変に制御する。なお、本実施形態のロール研削装置10は、公知の研削装置を適用することができる。
【0030】
ロール研削装置10には、ロール表面検査装置100が取り付けられている。
図1及び
図2を参照し、ロール表面検査装置100について詳細に説明する。
【0031】
ロール表面検査装置100は、カメラ110、照明装置120、及びロール表面検査装置130を含んで構成され、カメラ110及び照明装置120がユニット化されて、ロール研削装置10に取り付けられている。ロール表面検査装置100は、ロール表面検査制御装置130によって制御される。
【0032】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、回転砥石5のカバー部材6に柱部材101が固定され、鉛直方向に延びている。柱部材101の端部には、取付部材102が設けられ、柱部材101からロールRの上方に延設されている。取付部材102は、カメラ110及び照明装置120が取り付けられる検査ユニット取付部103が設けられており、検査ユニット取付部103の下方に位置するロールRに向けて、カメラ110及び照明装置120がロールRの上方に検査ユニットとして取り付けられている。
【0033】
検査ユニットは、回転砥石5をロールRへ移動させるロール研削装置10の移動装置(第1移動装置2及び第2移動装置3)によって回転砥石5の移動と一緒に軸方向及び軸方向に直交する方向に移動可能に設けられている。
【0034】
カメラ110は、
図1に示すように、回転砥石5に対してロールRの軸方向と直交する方向において延長線上に配置され、回転するロールRの表面を撮影する。つまり、カメラ110は、回転砥石5と接触した面(周面)が、回転するロールRによって撮影範囲に連続して入ってくる位置に設置され、撮影範囲が回転砥石5と接触した面を含む所定の大きさの撮影領域となる。また、カメラ110のレンズ111は、ロールRの中心軸(回転軸の中心)に向かうように設けられている。
【0035】
照明装置120は、カメラ110の撮影範囲を含むロール表面を照射する。例えば、LED照明装置などで構成することができる。なお、照明装置120は、
図2に示すように、ロールRの中心軸に向かうレンズ111に対して撮影範囲を照らす位置関係で固定配置されている。
【0036】
<水切り装置20の構成>
図3は、水切り装置20の構成と、ロールRとの位置関係を説明するための図である。
図4は、本実施形態の水切り装置20の構成図である。水切り装置20は、研削後のロールRの表面に滞留する水等(水や研削液など)を、圧縮空気でロールRの表面から除去するための装置である。
【0037】
水切り装置20は、板状のノズル取付部材23に、第1エアーノズル21と第2エアーノズル22とが固定され、ノズル取付部材23にアーム24が接続されている。アーム24には、アーム進退装置25が連結されており、アーム24を進退させることで、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22が、ロールRの軸方向(ロールRの表面)と直交する方向に進退する。
【0038】
水切り装置20は、ロール研削装置10の第1移動装置2に載設することができ、ロールRの一端から他端に向かう進行方向において、ロール表面検査装置100よりも前方に設けられている(
図1参照)。
【0039】
本実施形態の水切り装置20は、回転砥石5をロールRに対して移動させるロール研削装置10の第1移動装置2によってロールRの一端側から他端側に移動可能に設けられている。水切り装置20は、
図3の正面視において、回転するロールRの一端から他端に向かって移動しながら、ロールRの表面の水切り動作を行う。以下、ロールRの一端から他端に向かう方向(ロールRの軸方向)を水切り装置20の進行方向である。
【0040】
第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22は、同じ構成のエアーノズルであり、
図4に示すように、長尺状の空気吐出部21a,22aをそれぞれ備え、回転するロールRの表面に対してカーテン状の圧縮空気を噴出する。空気吐出部21a,22aの吐出面は、ロールRの表面と対向し、ロールRの表面から所定の間隔(クリアランスc)を空けて配置されている。
【0041】
本実施形態の水切り装置20は、2つのエアーノズルが使用され、進行方向において、第1エアーノズル21、第2エアーノズル22の順で並んで配置される。このとき、進行方向の先頭に位置する第1エアーノズル21が、進行方向の終端であるロールRの端部(他端)に向かって傾斜して配置される。言い換えれば、第1エアーノズル21は、進行方向の終端に向かってロールRの表面の水等を斜め下方に追い込むように、進行方向に対して第1エアーノズル21の後端側が下方に位置して配置されている。第1エアーノズル21は、進行方向に対し角度αで下方に傾斜している。
【0042】
一方、第2エアーノズル22は、進行方向に対して空気突出部22aの長手方向が水平に位置するように配置されている。そして、進行方向において、第1エアーノズル21の空気吐出部21aの後端は、第2エアーノズル22の空気突出部22aの前端の下方に位置し、カーテン状の圧縮空気の噴出領域の一部が互いに重複するように配置されている。
【0043】
また、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22は、ロールRの回転軸よりも下側に位置するように配置されており、後続の第2エアーノズル22の空気吐出口22aが、ロールRの回転軸と平行に、かつ回転軸よりも下側に位置している。ロールRは、
図3の正面図において下から上に向かって回転しており、回転軸よりも下側ではロールRの表面が下方を向いている。このように構成することで、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22の圧縮空気の吹き付けによって効率よく水切りを行うことができる。
【0044】
さらに、ロールRの表面の水等を斜め下方に追い込みつつ、効率よく水切りを行う工夫として、
図3の上面視で示すように、第1エアーノズル21の空気吐出部21aは、ロールRの表面に対して直交する方向を基準としたとき、ロールRの表面に対して直角に圧縮空気を吹き付けるのではなく、ロールRの表面に斜めに圧縮空気が吹き付けられるように構成することができる。第1エアーノズル21の空気吐出部21aは、ロール表面に直交する方向(Y方向)を基準に、角度βの吐出角度で斜めに圧縮空気を噴出する。なお、第2エアーノズル22の空気吐出部22aは、ロールRの表面に対して垂直に、又は垂直方向から下方に向かう吐出角度β1で、圧縮空気を噴出するように構成することができる。吐出角度β1は、任意の角度とすることができるが、例えば、ロールRの表面に対して垂直方向から数度の斜め下方に傾けた吐出角度としてもよい。
【0045】
第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22において、空気吐出部21a,22aは、長さdの長尺状に形成され、少なくとも長さdの圧縮空気を噴出する。第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22は、フラット型のエアーノズルやカーテン型のエアーノズルを適用することができる。空気吐出部21a,22aは、例えば、長さd内に複数の噴出穴が形成された構造や、長穴状の噴出スリットの構造を有することができる。
【0046】
なお、空気吐出部21a,22aから吹き出される圧縮空気の長手方向の長さは、ロールRの表面に対して少なくても長さdのカーテン状の圧縮空気が接触するように構成することができる。つまり、空気吐出部21a,22aの吐出面から噴出した圧縮空気は、長さdよりも長手方向に広がって、ロールRの表面に接触する態様であってもよい。
【0047】
次に、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22に圧縮空気を供給する圧縮空気供給機構について説明する。圧縮空気供給機構は、エアーコンプレッサー9と、エアーコンプレッサー9の供給路rから分岐し、第1エアーノズル21に接続される第1流路r1と、供給路rから分岐し、第2エアーノズル22に接続される第2流路r2と、第1流路r1及び第2流路r2それぞれに設けられる弁V1,V2と、を備えている。また、第1流路r1及び第2流路r2には、流量計F1,F2が設けられている。
【0048】
エアーコンプレッサー9は、供給路rに対し、一定量の圧縮空気を供給する。第1流路r1を流れる圧縮空気の流量と第2流路r2を流れる圧縮空気の流量の合計は、エアーコンプレッサー9から供給路rに供給された流量となる。例えば、第1エアーノズル21への流量を増加させると、第2エアーノズル22へ供給される圧縮空気の流量は、第1エアーノズル21へ増加させた分、減少する。
【0049】
そして、本実施形態では、第1エアーノズル21に供給される圧縮空気量が、第2エアーノズル22に供給される圧縮空気量よりも多く設定される。圧縮空気量の流量調整は、弁V1,V2で調節することができる。弁V1,V2は、例えば、電磁弁である。
【0050】
水切り装置20の水切り動作制御及び圧縮空気供給機構の圧縮空気の流量制御は、水切り制御装置7Aによって遂行される。水切り制御装置7Aは、例えば、
図1に示すように、ロール研削制御装置7に包含されるように構成したり、ロール研削制御装置7とは独立した制御装置として構成し、当該ロール研削制御装置7と連携するように構成したりすることができる。
【0051】
また、ノズル取付部材23には、ロールRの表面に面してセンサ23aが配置されている。センサ23aは、近接センサや測距センサを適用することができる。センサ23aにより、ロールRの端部を検出したり、ロールRの表面からの距離(クリアランスc)を測定したりすることができ、センサ23aによるセンサ情報は、水切り制御装置7Aに出力される。センサ23aによるセンサ情報により、水切り制御装置7Aは、水切り動作開始時のロールRの端部への位置決め制御やロールRの他端への到達後の水切り動作の終了制御などを行うことができる。
【0052】
なお、圧縮空気供給機構として、1つのエアーコンプレッサー9から分岐させて2つの第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22の双方に圧縮空気を供給する態様を一例に説明したが、これに限るものではない。例えば、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22それぞれに、独立した各エアーコンプレッサーから圧縮空気が供給される構成であってもよい。
【0053】
図5は、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22による水切り動作を説明するための図である。
【0054】
図5の右図に示すように、研削後のロールRの表面には、水等の表面張力により、薄い水膜が残る。水膜は、ロールRの表面において、重力により上部が薄く、下部が厚くなっている。このようにロールRの表面に残留する水膜は、単に圧縮空気を吹き付けるだけでは、その表面張力によって十分に除去することが難しい。
【0055】
図5の左図は、ロールRが下から上に向かって回転しており、水切り装置20が右側に向かって移動する態様を示している。角度αで傾斜している第1エアーノズル21は、ロールRの表面に対して進行方向斜め下向きに水等を追い込みながら吹き飛ばし、水切りピッチpで回転するロールRの表面の水切り動作を行う。
【0056】
このとき、第1エアーノズル21の後端において、右側に移動する第1エアーノズル21から外側後方に水等が逃げたり、回り込んだりする現象が生じる。第2エアーノズル22は、第1エアーノズル21の水切りピッチpよりも進行方向内側に圧縮空気が吹き付け可能な位置に配置されており、第1エアーノズル21から外側後方に逃げる水等を含めて、第1エアーノズル21によって圧縮空気が吹き付けられる領域に対して再度圧縮空気を吹き付ける。
【0057】
本実施形態の水切り装置20は、第1エアーノズル21が進行方向のロールRの端部に向かって傾斜して配置されているので、ロールRの表面の水等をロールRの端部に向けて追い込みながら除去する。つまり、第1エアーノズル21で圧縮空気が吹き付けられたロールRの表面の水等は、進行方向斜め下向きに移動しながら吹き飛ばされたり、落下したりするので、下方向への吹き付け力と共に進行方向に追い込まれる吹き付け力が作用し、ロール表面から水(水膜)が剥離しやすくなる。
【0058】
そして、進行方向斜め下向きに追い込まれる水(水膜)の一部は、傾斜して配置される第1エアーノズル21の進行方向後方の端部に向かって移動し、その一部が第1エアーノズル21の後方端部を回り込むようにしてロールRの表面に残留することがある。そこで、後続の第2エアーノズル22が、第1エアーノズル21で除去しきれなかった残留水を除去しつつ、第1エアーノズル21の圧縮空気が吹き付けられたロールRの表面に圧縮空気で再度吹き付けて水切りさせる機能を担う。
【0059】
このように構成することで、ロールRの一端側から他端側に移動させるだけで、確実にロールRの表面の水切りを完了させることができ、人手で水切り作業を行ったり、何度も水切り装置20を往復させたりする手間等を低減させることができる。水切り作業の安全性及び作業効率を向上させることができる。
【0060】
<水切り動作を含むロール研削方法>
図6は、水切り動作及びロール表面検査を含むロール研削方法のフローチャートである。
【0061】
作業員は、ロール研削装置10にロールRをセットし、ロール研削制御装置7を操作して、回転砥石5を研削開始位置まで移動させ、回転砥石5をロールRの表面に接触させる。ロール研削制御装置7は、作業員によって入力された、または予め入力された、ロールRの回転速度、回転砥石5の回転速度などの制御情報に基づいて、研削を開始する(S101)。
【0062】
研削終了後、ロール表面検査装置100によるロールRの表面検査を行うが(S103)、表面検査前に、ロールRを回転させて水切り装置20による水切り動作を行う(S102)。
【0063】
具体的には、ロール表面検査制御装置130は、ロール研削制御装置7に表面検査制御情報を出力し、ロールRを所定の回転速度で回転させ、ロール表面検査装置100を所定の速度で軸方向に移動させながら、ロールRの表面全体を撮影する。なお、回転砥石5は、ロールRの表面と接触しない位置に離間している。つまり、ロール表面検査制御装置130は、ロール表面検査装置100をロールRの一端に位置させ、他端に向けて軸方向に移動させつつ、回転するロールRの表面に対し、照明装置120で照射された領域をカメラ110で連続撮影する。
【0064】
カメラ110で撮影された撮影画像は、ロール表面検査制御装置130に連続して入力され、ロールRの表面検査を行う。例えば、ロール表面検査制御装置130は、撮影画像内に含まれる疵や凹み、模様などの検出を行うことができる。なお、模様は、研削によるロール表面粗さの差異がうねり状に発生することで生じるロール表面の模様である。疵や凹み、模様などの検出は、物体認識や物体検知などの公知の画像処理技術を適用することができる。なお、模様に関しては、明部と暗部の境界を認識し、模様として区画される領域を「模様」として識別することができる。
【0065】
ロール表面検査制御装置130は、検出処理の結果、疵や凹み、模様などがあると判定された場合、ロール研削制御装置7に検出結果を出力する。そして、ステップS101に戻り、ロール研削制御装置7は、ロール表面検査装置100で検出された疵や凹み、模様などに対し、回転砥石5とロールRの表面との相対位置を変位させて研削を行う。
【0066】
ステップS101の研削工程、ステップS102の水切り工程、及びステップS103の表面検査工程は、当該ステップS103の表面検査工程において「検査OK」となるまで繰り返し行われる。
【0067】
ステップS103の表面検査工程において「検査OK」である場合、研削を終了し(S104)、表面検査後の水切り装置20による水切り動作を行う(S105)。ステップS102とステップS105の各水切り工程は、同じ工程であり、
図6の右側に図示されたロール表面水切り動作を行う。
【0068】
まず、水切り制御装置7Aは、アーム進退装置25を制御し、アーム24をロールRの表面に対して近接させる(S301)。次に、水切り制御装置7Aは、ロールRの表面をセンサ23aで検知しながら、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22をロールRの端部に位置決めする(S302)。第1エアーノズル21の進行方向前部が、ロールRの端部に位置するように制御する。
【0069】
水切り制御装置7Aは、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22から所定流量の圧縮空気を噴出させる(S303)。このとき、水切り制御装置7Aは、例えば、エアーコンプレッサー9からの圧縮空気の供給量が700L/minである場合、第1エアーノズル21の流量を500L/min、第2エアーノズル22の流量を200L/minとして、圧縮空気を噴出させることができる。その後、水切り制御装置7Aは、ロール研削制御装置7に制御情報を出力し、ロールRを所定の回転速度で回転させ、水切り装置20を所定の速度で軸方向に移動させる(S304)。
【0070】
水切り制御装置7Aは、ロールRの他端に向かって移動する水切り装置20の第2エアーノズル22が、当該他端を通過した後、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22への圧縮空気の供給を停止する(S305)。その後、水切り制御装置7Aは、アーム進退装置25を制御し、アーム24をロールRの表面から後退させる(S306)。
【0071】
なお、
図6の例において、研削終了後の水切り動作のステップS102と、ロール表面検査装置100によるロール表面検査のステップS103とを別々の工程で行っているが、一緒に(同時に)行うことができる。つまり、水切り装置20は、
図1に示すように、ロールRの一端から他端に向かう進行方向において、ロール表面検査装置100よりも前方に設けられている。このため、ロール表面検査装置100よりも先行して水切り動作を行いつつ、水切り動作に追従させてロール表面検査を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0072】
図7は、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22のロール端部流量制御を説明するための図である。
図8は、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22のロール端部流量制御を適用した水切り動作のフローチャートである。
【0073】
図7に示すように、ロールRの進行方向終端である端部(他端)には、第1エアーノズル21によって進行方向斜め下方に追い込まれた水等が、表面張力によって除去しきれずに戻り水となって当該端部付近に留まることがある。
【0074】
そこで、第1エアーノズル21が、ロールRの進行方向終端を通過した後、後続の第2エアーノズル22の吐出量を増加させ、ロールRの進行方向終端に溜まった戻り水を除去するように、圧縮空気の流量制御を行うことができる。
【0075】
例えば、水切り制御装置7Aは、電磁弁で構成される弁V1,V2の開度を調節する流量制御部を含むように構成することができる。水切り制御装置7A(流量制御部)は、進行方向において、先頭の第1エアーノズル21がロールRの他端部を通過した後、弁V1を完全に閉じて弁V2を全開に制御し、第1エアーノズル21に供給されていた圧縮空気を後続の第2エアーノズル22に供給する。第2エアーノズル22がロールRの他端部を通過する際の第2エアーノズル22から噴出する圧縮空気の量を増加させ、ロールRの進行方向他端付近に留まっている水を除去する。
【0076】
図8は、
図6に示した水切り動作に、ステップS305A及びS305Bを追加した物である。ステップS304において水切り装置20を所定の速度で軸方向に移動させた後、水切り制御装置7Aは、第1エアーノズル21がロールRの他端部を通過したか否かを判定する(S305A)。例えば、センサ23aが、水平配置される第2エアーノズル22の上方で、かつ第1エアーノズル21の進行方向後端に対応する位置に設置されるようにする。センサ23aのセンサ情報に基づいて、第1エアーノズル21がロールRの他端部を通過したか否かを判定することができる。
【0077】
第1エアーノズル21がロールRの他端部を通過した場合(S305AのYES)、水切り制御装置7Aは、弁V1,V2の開度を制御し、第2エアーノズル22から噴出する圧縮空気の量を増加させる(S305B)。第2エアーノズル22は、ロールRの他端部に差し掛かり、通過するまで、エアーコンプレッサー9から供給される全流量で圧縮空気を噴出する。
【0078】
図9は、本実施形態の水切り装置20の第1変形例を示す図である。本変形例は、第2エアーノズル22も第1エアーノズル21同様に、進行方向端部に向かって傾斜している。第2エアーノズル22の傾斜角度α1は、第1エアーノズル21の傾斜角度αと同じである。
【0079】
図9の変形例においても、
図5で説明したように、第1エアーノズル21の後端において、右側に移動する第1エアーノズル21から外側後方に水等が逃げたり、回り込んだりしても、傾斜する第2エアーノズル22によって、ロールRの進行方向端部に追い込みながら除去することができる。
【0080】
なお、本変形例のように、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22の双方が、進行方向のロールRの端部に向かって傾斜して配置される場合、
図9に示すように、第2エアーノズル22の空気突出部22aの前端部が、第1エアーノズル21の空気吐出部21aの後端部と離間して配置してもよい。
図9の例の場合、距離gの間隔を空けて第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22を配置し、カーテン状の圧縮空気の噴出領域が互いに重複しない構成となっている。このように第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22を離間して配置しても、傾斜する第2エアーノズル22は、第1エアーノズル21同様に、進行方向斜め下方に追い込みながらロールRの表面の水等を確実に除去することができる。
【0081】
また、本変形例の水切り装置20は、
図7及び
図8で示したロール端部流量制御において、後続の第2エアーノズル22によって、当該端部付近に留まる戻り水を進行方向斜め下方に吹き飛ばすことができ、効率よく除去することができる。
【0082】
さらに、本変形例の水切り装置20は、距離gの間隔を空けて第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22が配置されている。このため、ロール端部流量制御における第2エアーノズル22への流量切り替えの際に、第1エアーノズル21による干渉を低減させることができる。例えば、第1エアーノズル21が進行方向終端のロールRの端部を通過する前に、第2エアーノズル22の流量増加の切り替え制御を行うと、双方の圧縮空気が干渉し、水切り性能が低下する場合がある。そこで、第1エアーノズル21及び第2エアーノズル22との間に設けられた間隔gによって、進行方向に移動中に、第1エアーノズル21から第2エアーノズル22への流量増加の切り替え時間を稼ぐことができ、互いの圧縮空気が干渉しないように制御することができる。
【0083】
なお、本変形例の第2エアーノズル22は、第1エアーノズル21同様の吐出角度βでロールRの表面に圧縮空気を吹き付けるように構成することができる。
【0084】
(第1実施例)
図10は、本実施形態の第1エアーノズル21の傾斜角度を説明するための図である。表1は、第1エアーノズル21の傾斜角度αを異ならせて水切り動作を行った評価試験の試験結果を示している。傾斜角度αは、進行方向(ロールRの軸方向)を0度とした場合の角度である。
【表1】
【0085】
表1は、第1エアーノズル21の空気吐出部21aの長さd=100mm、圧縮空気の流量=700L/min、クリアランスc(ギャップ)=4mm、ロールRの回転速度=25rpm,進行方向への移動速度(第1移動装置2のロールRの軸方向への移動速度)=1500mm/minの条件下で試験を行い、ロールRの表面に水膜がある状態で、それぞれ異なる傾斜角度αの水切り動作を行った。なお、第2エアーノズル22の圧縮空気の流量は0である。
【0086】
そして、水切り動作終了から1分経過したときのロールRの表面の残留水の有無を目視で確認し、ロールRの表面の状態を評価した。
【0087】
水切りピッチpは、傾斜角度αが大きいほど小さくなり、残り水幅hが大きくなる。つまり、傾斜角度αの大きいほど、進行方向に追い込んでロールRの表面から水を除去する力が弱くなり、ロールRの表面に残留水がある結果となった。一方で、傾斜角度αが小さいほど、水切りピッチpは大きくなり残り水幅hが小さくなるが、こちらも進行方向斜め下に向かってロールRの表面の水膜を追い込む力が弱くなり、水切り動作後におけるロールRの表面に残留水がある結果となった。
【0088】
そして、第1エアーノズル21の傾斜角度αが40度以上55度以下である場合は、進行方向斜め下に向かってロールRの表面の水膜を追い込む力が適切に作用し、水切り動作後のロールRの表面には、残留水がほとんどなかった。
【0089】
このように、第1エアーノズル21(空気吐出部21a)の傾斜角度αは、進行方向に対し、40度以上55度以下の範囲とすることができる。なお、
図9に示した第1変形例の第1エアーノズル21(空気吐出部21a)及び第2エアーノズル22(空気吐出部22a)の双方も、傾斜角度α,α1が40度以上55度以下となるように構成することができる。
【0090】
次に、表2は、
図3の上面視で示した、第1エアーノズル21の空気吐出部21aの吐出角度βを異ならせて水切り動作を行った評価試験の試験結果を示している。
【表2】
【0091】
吐出角度βは、ロールRの表面に直交する方向を0度とし、ロールRの表面と水平の方向を90として、ロールR表面に直交する方向を基準に、ロールRの表面に対して斜めに圧縮空気を噴出する角度である。
【0092】
また、表2において、第1エアーノズル21の空気吐出部21aの長さd=100mm、圧縮空気の流量=700L/min、クリアランスc(ギャップ)=4mm、傾斜角度α=45度、ロールRの回転速度=25rpm,進行方向への移動速度(第1移動装置2のロールRの軸方向への移動速度)=1500mm/minの条件下で試験を行い、ロールRの表面に水膜がある状態でそれぞれ異なる吐出角度βの水切り動作を行った。なお、第2エアーノズル22の圧縮空気の流量は0である。
【0093】
そして、水切り動作終了から1分経過したときのロールRの表面の残留水の有無を目視で確認し、ロールRの表面の状態を評価した。
【0094】
吐出角度βが大きいほど、ロールRの表面と空気吐出部21aとの距離、言い換えれば、空気吐出部21aから噴出された圧縮空気がロールRの表面に届くまでの距離が長くなるため、吐出角度β=20度では、残留水がある結果となり、吐出角度β=60度を超えると、ロールRの表面の水を吹き飛ばすことが困難な状態であった。
【0095】
一方、吐出角度βが小さいと、空気吐出部21aから噴出された圧縮空気がロールRの表面に届くまでの距離が短く、かつロールRの表面に対して鋭角斜めに圧縮空気を吹き付けるので、水が効率よく吹き飛ばされて残留水がほとんどなかった。
【0096】
第1エアーノズル21の空気吐出部21aにおいて、ロールRの表面に対して直交する方向を基準とした吐出角度βを、1度以上から15度以下の範囲とし、第1エアーノズル21から噴出される圧縮空気が、ロールRの表面に斜めに吹き付けられるように構成することで、確実な水切り動作を行えることがわかった。
【0097】
なお、吐出角度β=0度、すなわち、ロールRの表面に対して直角に圧縮空気を吹き付けても効率よく水を吹き飛ばすことができ、ロールRの表面に残留水はあまりなかったが、吐出角度として1度以上の角度を付けた方が、さらに効率よく水を除去することができたため、吐出角度βを1度以上から15度以下の範囲とすることが好ましい。
【0098】
次に、表3は、
図3の側面視で示した、第1エアーノズル21の空気吐出部21aとロールRの表面との間のクリアランスc(ギャップ)を異ならせて水切り動作を行った評価試験の試験結果を示している。
【表3】
【0099】
クリアランスcは、ロールRの表面に直交する方向のギャップ(間隙)であり、クリアランスcが小さいほど、ロールRの表面に吹き付けられる圧縮空気の力が強くなる。なお、
図3の側面視に示すように、クリアランスcは、ロールRの表面と第1エアーノズル21の空気吐出部21aとの最小間隙であり、第1エアーノズル21は、進行方向後端に向かうにつれてロールRの周面から離間している。このため、クリアランスcは、ロールRの回転軸に最も近い部分の空気吐出部21aとロールRの表面との間の距離としている。
【0100】
また、表3において、第1エアーノズル21の空気吐出部21aの長さd=100mm、圧縮空気の流量=700L/min、傾斜角度α=45度、ロールRの回転速度=25rpm,進行方向への移動速度(第1移動装置2のロールRの軸方向への移動速度)=1500mm/minの条件下で試験を行い、ロールRの表面に水膜がある状態でそれぞれ異なるクリアランスcの水切り動作を行った。なお、第2エアーノズル22の圧縮空気の流量は0である。
【0101】
そして、水切り動作終了から1分経過したときのロールRの表面の残留水の有無を目視で確認し、ロールRの表面の状態を評価した。
【0102】
クリアランスcが6mmを超えたところで、残留水がある結果となり、ロールRの表面の水を吹き飛ばし難くなっていた。一方、クリアランスcが5mm以下では、水が効率よく吹き飛ばされており、残留水がほとんどなかった。
【0103】
ロール表面に対して直交する方向において、第1エアーノズル21の空気吐出部21aとロールRの表面との間のクリアランスcが、1mm以上5mm以下の範囲とすることで、確実な水切り動作を行えることがわかった。
【0104】
以上、本実施形態について説明したが、ロール表面検査装置100のロール表面検査制御装置130は、ロール研削制御装置7と別体で構成する態様の他に、ロール研削制御装置7及びロール表面検査制御装置130を一体的に構成し、例えば、ロール研削制御装置7の機能として、ロール表面検査装置100の制御装置が含まれるように構成することもできる。水切り制御装置7Aも同様である。
【0105】
また、本実施形態の水切り装置20及びロール表面検査装置100は、ロール研削装置10に対して後付け可能であり、既存のロール研削装置10に対する個別の水切り装置20、ロール表面検査装置100として提供することもできる。
【0106】
また、本実施形態の研削中のロール表面検査処理は、中研削や仕上げ研削などの研削工程で行うことができる。ロール研削装置10での研削工程は、主に、粗研削、中研削、仕上げ研削に分けることができ、粗研削では、ロール表面検査処理を行わず研削のみを行うことができる。このように研削中のロール表面検査処理は、研削する状況や目的に合わせて、適用することができる。そして、ロール表面検査前には、必ず水切り装置20による水切り処理が行われる。
【符号の説明】
【0107】
1 ロール回転駆動装置
1a 回転受け台
2 第1移動装置
3 第2移動装置
4 回転砥石駆動装置
5 回転砥石
6 カバー部材
7 ロール研削制御装置
7A 水切り制御装置
8 基台
9 エアーコンプレッサー
10 ロール研削装置
20 水切り装置
21 第1エアーノズル
22 第2エアーノズル
21a,22a 空気吐出部
23 ノズル取付部材
23a センサ
24 アーム
25 アーム進退装置
100 ロール表面検査装置
101 柱部材
102 取付部材
103 検査ユニット取付部
110 カメラ
111 レンズ(レンズ鏡筒)
120 照明装置
130 ロール表面検査制御装置
F1,F2 流量計
R ロール
r 供給路
r1 第1流路
r2 第2流路
V1,V2 弁