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  • 特開-固定部材 図1
  • 特開-固定部材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130694
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】固定部材
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20240920BHJP
   A61C 13/263 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C13/263
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040556
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】柏原 和久
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA51
4C159AA62
4C159JJ03
4C159JJ13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ピンの配置の作業性を高めることができる固定部材を提供する。
【解決手段】口腔内に配置される人工膜を固定するピン11を具備する固定部材10であって、ピンと棒状の支持部材20とが連結部材21を介して一体に形成されており、ピンは柱状の挿入部を備え、連結部材は支持部材及びピンより細く、ピン、支持部材、及び連結部材は生分解樹脂からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に配置される人工膜を固定するピンを具備する固定部材であって、
前記ピンと棒状の支持部材とが連結部材を介して一体に形成されており、
前記ピンは柱状の挿入部を備え、
前記連結部材は前記支持部材及び前記ピンより細く、
前記ピン、前記支持部材、及び前記連結部材は生分解樹脂からなる、
固定部材。
【請求項2】
前記挿入部の表面には凹凸が形成されている請求項1に記載の固定部材。
【請求項3】
前記支持部材が延びる方向と前記挿入部が延びる方向とが2°以上の角度を有している、請求項1又は2に記載の固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯槽骨の欠損部等を覆う人工膜を固定する固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から歯槽骨を削った部位や、凹部に詰め物をした後に蓋をする場面等に、人工膜で患部を覆ってこれを物理的に固定するように配置するネジ状の部材がある。このようなネジ状の部材はその性質上非常に小さいものであるため、口腔内での取り扱いが難しく、ネジ状の部材をねじ回しに取り付け、その後に必要部位に配置して回転させ、ねじ込む必要があり、作業の難易度が高かった。
【0003】
特許文献1にはチタン等の生体親和性を有するネジ状の部材(スクリュー)を軸状の部材に一体化して形成することで、スクリューの配置の難易度を低くする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4480993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術のようなネジ状の部材と軸状の部材とが一体化されたものでは、ネジ状の部材を患部に配置した後に、ネジ状の部材から軸状の部材を分断することについて必ずしも容易であるとはいえなかった。例えばネジ状の部材を配置している最中に軸状の部材と分断してしまったり、ネジ状の部材の患部への配置後に軸状の部材を分断する際に手間取ったりする問題があった。
【0006】
そこで本開示では、ピンの配置の作業性を高めることができる固定部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、口腔内に配置される人工膜を固定するピンを具備する固定部材であって、ピンと棒状の支持部材とが連結部材を介して一体に形成されており、ピンは柱状の挿入部を備え、連結部材は支持部材及び挿入部より細く、ピン、支持部材、及び連結部材は生分解樹脂からなる、固定部材を開示する。
【0008】
挿入部には表面に凹凸が形成されてもよい。
【0009】
支持部材が延びる方向と挿入部が延びる方向とが2°以上の角度を有するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ピン、連結部材、及び、支持部材がいずれも生分解樹脂からなっており、ピンの挿入時には施術者は支持部材を持ってピンを目的の部分(人工膜)に挿入させ、挿入後には連結部材を確実に破壊させることができ、円滑にピンと支持部材とを分断することが可能であり、ピンの配置の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は固定部材10の外観を表す図である。
図2図2はピン11の付近を拡大した図である。
図3図3は固定部材30の外観を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.固定部材の形態
図1には1つの形態にかかる固定部材10の外観を示した。本形態にかかる固定部材10はピン11、支持部材20、及び、連結部材21を有しており、これらが一体に形成されている。以下、各部材について説明する。
【0013】
1.1.ピン
ピン11は人工膜を固定するために人工膜に挿入される部材である。そのためピン11はいわゆるビスやネジに似た形状を有している。図2には図1のうちピン11の周囲に注目して拡大した図を表した。図2からよくわかるように、本形態でピン11は頭部12及び挿入部13を有して構成されている。
【0014】
頭部12は、本形態では円板状の部材である。本形態では円板状であるが形状は特に限定されることはなく楕円形、三角形、四角形、及び、多角形であってもよい。このように頭部12を有し、当該頭部12が挿入部13に対して広く形成されていることで人工膜を抑え込んでより安定して固定することができる。
頭部12の寸法は特に限定されることはないが、その直径D1は1.5mm~4.0mm程度、厚さt1は0.3mm~1.0mm程度とすることができる。
【0015】
挿入部13は頭部12の一方の面から延びる柱状の部位であり、本形態では円柱状である。ただし、これに限定されることはなく楕円柱状であったり、角柱状であったりすることができる。この挿入部13が人工膜に入り込み、人工膜を固定する機能を有する。
【0016】
本形態で挿入部13はその外周面に凹凸を有する。これにより人工膜中に挿入された後に抜け防止のための抵抗体となって抜け難くなり、安定した配置が可能である。
本形態でより具体的には挿入部13は、頭部12側の第一部14と、第一部14より細く、先端側に配置される第二部15と、を有し、第一部14と第二部15との間に挿入部13の外周を一周するように凸条16が設けられている。この凸条16は第一部14及び第二部15と接する部位において、当該部位よりも外周が太く形成されており、アンダーカットを形成する凸となる。凸条16の外表面の形状は特に限定されることはないが円弧状や多角形状であってよい。
また、第一部14のうち頭部12との接続部では円弧状の部位17が形成されて少し太くなる。一方、第二部15では先端側でさらに先細となるようにテーパ面18を有している。テーパ面18により挿入部13の挿入の際の円滑性を高めることができる。
【0017】
本形態における各部位の寸法は特に限定されることはないが例えば次のような範囲で形成することができる。
・挿入部13の長さt2:2.0mm~5.0mm
・第一部14の直径D2(凸条16との接続部分):0.5mm~2.0mm
・第一部14の円弧部分17の半径:0.2mm~0.6mm
・第二部15の直径(凸条16との接続部分):1.0mm~1.4mm
・第二部15のテーパ面18の傾斜角:40°~60°
・凸条16の外径D3:1.1mm~1.5mm
【0018】
本形態では挿入部13の表面における凹凸として、第一部14と凸条16との段差と、凸条16と第二部15との段差の2か所とした。このような段差の数は特に限定されることはないが、1か所~20か所程度が好ましく、より好ましくは2か所~10か所程度である。少なくとも1か所の段差があることで抜け防止の効果を奏するものとなる。一方で段差の数が多すぎると挿入時の抵抗が大きくなりすぎ、連結部材21の強度を高める必要が生じ、支持部材20との円滑な分断とのバランスを取り難くなる。
凹凸(段差)の形状の具体的態様は特に限定されることはなく、段差、本形態のような環状の凸条の他、螺旋状の凸条(いわゆるオネジ条)であってもよい。
【0019】
1.2.支持部材
支持部材20は棒状の部材であり、施術者がこの支持部材20を持って施術をする。棒状の長手方向に対して直交する断面の形状は特に限定されることはなく円形、楕円形、角形等を挙げることができる。
支持部材20は施術に適するある程度の長さ及び太さを有していればよく、特に限定されることはないが、長さは10mm~150mm程度、太さは断面が円形であれば直径が1mm~5mm程度(楕円、角形であればこれに相当する断面積を有する形状)とすることができる。
【0020】
1.3.連結部材
連結部材21はピン11と支持部材20とを連結する部材である。具体的には、連結部材21は、支持部材20のいずれかの面と、ピン11の頭部12のうち挿入部13が設けられた側とは反対側の面とが連結されている。
【0021】
連結部材21は、ピン11を人工膜等の必要な場所に配置し終わるまでは支持部材20とピン11との連結を維持し、当該配置の完了後に支持部材20を回転させる等してねじ切ることでピン11と支持部材20とが円滑に分断される。連結部材21はこのような維持及び分断を円滑に行うことができればその形状は特に限定されることはなく、円板形、角板形、錐台形等折り欠きしやすい形とすることができる。その目的を達するため、連結部材21は少なくとも、連結部材21との接続面において支持部材20及びピン11のいずれよりも細くなるように構成されている。また、折り欠きし易いように連結部材の表面に切り欠きを設けてもよい。
【0022】
上記したように連結部材21により、ピン11を人工膜等に配置するまで支持部材20とピン11との確実な連結を維持でき、かつ、当該配置完了後に簡便に連結部材21とピン11とを分断できる観点、及び、生産性(製造のし易さ)の観点を考慮すると、連結部材21の具体的な形態例として、図2にD4で示した連結部材21のうち最も太い部分の大きさは円形であれば直径が0.3mm~0.5mm(他の形状であればこれに相当する断面積を有する形状)、図2にt3で示した連結部材21の厚さは0.3mm~0.5mmであることが好ましい。
【0023】
1.4.部材間の関係
上記したようにピン11と支持部材20とは連結部材21を介して一体に形成されている。さらに、これらは次のような関係を有してもよい。
図1にθで示した、柱状の支持部材20が延びる方向である軸線Aと、ピン11の柱状である挿入部13が延びる方向である軸線Bとが成す角は、2°以上することができる。図1の例はθ=90°である。このように角度を有することにより狭い口腔内であっても固定部材10の取り回しがし易くなり作業性が向上する。図1の例ではピン11は支持部材20の柱状の側面に配置されているが必要に応じてピン11を支持部材20の端面に配置してもよい。
【0024】
図3には他の形態例の固定部材30を示した。固定部材30は上記θが0°であり、ピン11が支持部材20の端面に配置されることで軸線Aと軸線Bとが同軸である例である。口腔内へのピン11の配置位置によってはこのような形態であっても足りる場合がある。このような固定部材30はピン11と支持部材20とが同軸であるため製造し易い利点がある。
【0025】
このようにθは配置する部位やその他の必要に応じて設定することができるが、θは0°~160°の範囲で設定することができ、好ましくは0°~120°、より好ましくは0°~90°である。
【0026】
2.固定部材の材料
本開示ではピン11、支持部材20、及び、連結部材21が生分解性樹脂により形成されている。これにより口腔内に配置されたピン11は時間の経過で分解されるため、後で除去する必要がない。また、樹脂により形成することで、連結部材21の形状の自由度が高くて調整し易いことから、上記した連結部材21によるピン11と支持部材20との連結の維持及び両者の分断の円滑をバランスよく行うための調整がし易い。
【0027】
生分解樹脂としては、生体適合性があるとともに生分解される樹脂であれば特に限定されることはないが、例えばポリ-L-乳酸(PLLA)を挙げることができる。
【0028】
3.固定部材の作用例
固定部材は例えば次のように用いることができる。
人工歯根を埋入しようとする部位の歯肉が切り開かれて歯槽骨を露出した状態で、歯槽骨の欠損部位に骨補填材が填入された部位に欠損部位を覆う人工膜が配置される。この人工膜が位置する歯槽骨には予めドリルにより下穴が形成されており、人工膜を貫通させてこの下穴に挿入するように固定部材30に設けられたピン11の挿入部13を押し込む。そして、押し込んだ後に、支持部材20を傾けたり回転させたりすることで連結部材21を折り、ピン11から分離する。このようなピン11の配置を複数か所に亘って行うことで、ピン11により人工膜が歯槽骨に固定される。
本形態の固定部材10、30によれば、上記のようにこのような作業を円滑に効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0029】
10、30…固定部材、11…ピン、13…挿入部、20…支持部材、21…連結部材
図1
図2
図3