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特開2024-130718電動パワーステアリング装置及び電動駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130718
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置及び電動駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240920BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B62D5/04
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040597
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 輝幸
【テーマコード(参考)】
3D333
5G363
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB19
3D333CD31
3D333CD37
3D333CD39
5G363AA09
5G363AA16
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】 部品点数の増加とコスト増を抑制することができる電動パワーステアリング装置等の電動駆動装置を提供することにある。
【解決手段】 電動パワーステアリング装置は、ハーネスの中間部に、導電性樹脂クリップが配置され、導電性樹脂クリップは、ハーネスのシールド部材に接触した状態でハーネスを保持するとともに、ハウジングに直接固定される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに設けられ、モータを制御する制御部と操舵状態を検出するセンサとを電気的に接続し、シールド部材で覆われるハーネスを有する電動パワーステアリング装置であって、
前記ハーネスの中間部には、導電性樹脂クリップが配置され、
前記導電性樹脂クリップは、前記ハーネスのシールド部材に接触した状態で前記ハーネスを保持するとともに、前記ハウジングに直接固定される、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記シールド部材は、導電性の金属であって、細い素線が編み組みされてチューブ状に形成され、
前記チューブ内に前記センサの検出信号を前記制御部に伝達する芯線がおさまっている、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記導電性樹脂クリップは、前記ハウジングと固定できる固定部を持つ、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記導電性樹脂クリップは、前記固定部がスナップフィット形状である、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記導電性樹脂クリップは、前記固定部が前記ハウジングと共締めできるタイラップ形状である、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ハウジングは、アルミニウム合金で形成される、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
制御部へ制御信号を供給するためにハウジングに保持されてシールド部材で覆われるハーネスを有する電動駆動装置であって、
前記ハーネスの中間部には、導電性樹脂クリップが配置され、
前記導電性樹脂クリップは、前記ハーネスのシールド部材に接触した状態で前記ハーネスを保持するとともに、前記ハウジングに直接固定される、
ことを特徴とする電動駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置及び電動駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芯線及び芯線を覆う絶縁被覆を備える電線11と、少なくとも芯線を覆って電磁シールドする編組部材12と、電線11よりも曲げ剛性が高く、長尺状に形成された経路規制部材13と、電線11と編組部材12と経路規制部材13とを覆う外装部材15と、を有するワイヤハーネス10が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-103221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のワイヤハーネスを電動パワーステアリング装置等の電動駆動装置に適用した場合、上記ワイヤハーネスは、電磁的なアンテナとして作用してしまい、上記ワイヤハーネスにノイズが注入されやすく、逆に上記ワイヤハーネスから自身のノイズを放射しやすい。このため、上記ワイヤハーネスの適用においては、シールド部材としての編組部材12の端部を加工して、この端部を上記ワイヤハーネス自体の保持部材とは別の部材によってハウジングにグランドしてノイズを逃がすようにすることが考えられる。
このため、ワイヤハーネスの加工処理が必要となり、部品点数の増加が発生するという課題を有している。
本発明の目的の一つは、部品点数の増加を抑制することができる電動パワーステアリング装置等の電動駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態における電動パワーステアリング装置は、ハーネスの中間部に、導電性樹脂クリップが配置され、導電性樹脂クリップは、ハーネスのシールド部材に接触した状態でハーネスを保持するとともに、ハウジングに直接固定される。
【発明の効果】
【0006】
よって、部品点数の削減を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の電動パワーステアリング装置を車両前方側から見た模式図である。
図2】実施形態1の電動パワーステアリング装置の要部を車両後方側から見た模式図である。
図3】実施形態1のハーネスの概略図である。
図4】実施形態1のスナップフィット式クリップの斜視図である。
図5】実施形態2の電動パワーステアリング装置の要部を車両後方側から見た模式図である。
図6】実施形態2のクリップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1の電動パワーステアリング装置を車両前方側から見た模式図である。
電動パワーステアリング装置(電動駆動装置)1は、ラック軸2に転舵力を付与する電動モータ3を備えたラック&ピニオン式の操舵装置である。
ラック軸2は、車両の左右方向に延び、両端にタイロッド4がジョイント5を介して接続されている。ラック軸2は、アルミニウム合金製のラックハウジング6に収容されている。ラックハウジング6の端部は、ブーツ7によって覆われている。ラック軸2の端部は、ブーツ7から突出している。ラック軸2の移動によりタイロッド4が動かされ、タイロッド4を介して転舵輪8が転舵される。
【0009】
ラックハウジング6の一端側(図1の左側)には、ステアリングギヤハウジング9が設けられている。ステアリングギヤハウジング9内には、ステアリングホイール10に連結されたインプットシャフト11が回転自在に軸支されている。インプットシャフト11は、図外のトーションバーを介してピニオン軸(不図示)と相対回転可能に接続されている。
ステアリングギヤハウジング9の上部には、トルク舵角センサ(センサ)12が設けられている。トルク舵角センサ12は、インプットシャフト11とピニオン軸との相対回転量に応じた舵角センサ出力信号を出力する。
ピニオン軸は、ラック軸2と噛み合い、ステアリングホイール10に入力された操舵トルクを、ラック軸2に伝達する。
【0010】
ラックハウジング6の他端側(図1の右側)には、アクチュエータハウジング13が設けられている。アクチュエータハウジング13には、電動モータ3が固定されると共に、電動モータ3の出力をラック軸2に伝達するアシスト機構が収容されている。アシスト機構は、電動モータ3の駆動力を、入力プーリ、ベルト、出力プーリを介してナットに伝達し、ボールねじ機構によりラック軸2の軸方向推力に変換する。なお、ベルトに代えてチェーンを用いてもよい。
電動モータ3は、モータECU(制御部)14が一体化された、いわゆるEPSパワーパックである。モータECU14は、トルク舵角センサ12からの舵角センサ検出信号に加えて、CAN通信により他のECU(例えば、エンジンECU)やセンサ(例えば、車輪速センサ)から情報を受け取る。モータECU14は、各種情報に基づき、電動モータ3を駆動制御する。以下の説明では、電動モータ3およびモータECU14を合わせてEPP15と記載する。
【0011】
図2は、実施形態1の電動パワーステアリング装置の要部を車両後方側から見た模式図である。
トルク舵角センサ12には、センサ側コネクタ16が設けられている。センサ側コネクタ16には、第1ハーネス17および第2ハーネス18がそれぞれ接続されている。第1ハーネス17の長さは、第2ハーネス18よりも短く設定されている。
第1ハーネス17における、センサ側コネクタ16と反対側の端部には、EPP15の第1端子19と接続可能なモータ側第1コネクタ20が設けられている。
また、第2ハーネス18における、センサ側コネクタ16と反対側の端部には、EPP15の第2端子21と接続可能なモータ側第2コネクタ22が設けられている。第1端子19は、第2端子21よりもステアリングギヤハウジング9(ピニオン軸)に近い位置に設けられている。第1ハーネス17および第2ハーネス18は、電動モータ3を駆動制御するための検出信号(制御信号)をモータECU14に供給する。
【0012】
ラックハウジング6には、アジャストスクリュ6aが取り付けられている。アジャストスクリュ6aは、図外のラックリテーナを介してラック軸2をピニオン軸に向けて付勢するコイルスプリングのセット荷重を調整するものである。
また、ラックハウジング6には、第1ハーネス17および第2ハーネス18をラックハウジング6に固定するための導電性樹脂で形成されたスナップフィット式クリップ(導電性クリップ)K1が取り付けられている。スナップフィット式クリップK1は、第1ハーネス17および第2ハーネス18のシールド部材24(図3参照)を保持し、ラックハウジング6のスナップフィット式クリップ固定用孔6bにスナップフィット式固定部K1aが挿入固定される(図4参照)。
【0013】
図3は、実施形態1のハーネスの概略図である。
第1ハーネス17は、トルク舵角センサ12の検出信号をモータECU14に伝達する芯線及び該芯線を覆う絶縁被覆を備える電線23と、電線23を一括して覆い内部に収める導電性の金属で細い素線が編み組みされてチューブ状に形成され、第1ハーネス17に外部からのノイズの注入あるいは第1ハーネス17の芯線が放射するノイズを遮蔽するシールド部材24と、電線23が固定される経路規制部材25と、シールド部材24と経路規制部材25を固定する固定部材26と、電線23、シールド部材24及び経路規制部材25を覆う外装部材27と、を有する。
なお、第2ハーネス18も同様の構造を有している。
【0014】
図4は、実施形態1のスナップフィット式クリップの斜視図である。
【0015】
導電性樹脂で形成されたスナップフィット式クリップK1は、図2に示されるラックハウジング6のスナップフィット式クリップ固定用孔6bに挿入固定されるスナップフィット式固定部K1aと、第1ハーネス17および第2ハーネス18のシールド部材24を保持するバンド部K1bを備えている。
すなわち、導電性樹脂で形成されたスナップフィット式クリップK1は、第1ハーネス17および第2ハーネス18のシールド部材24に接触した状態で第1ハーネス17および第2ハーネス18を保持するとともに、ラックハウジング6に直接固定される。
【0016】
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
(1)導電性樹脂で形成されたスナップフィット式クリップK1により、第1ハーネス17および第2ハーネス18のシールド部材24を保持し、ラックハウジング6のスナップフィット式クリップ固定用孔6bにスナップフィット式固定部K1aが挿入固定されるようにした。
よって、第1ハーネス17および第2ハーネス18に外部からのノイズの注入あるいは第1ハーネス17および第2ハーネス18の芯線が放射するノイズを遮蔽するシールド部材24をラックハウジング6に直接接続できる。
また、上記放射するノイズをラックハウジング6にグランドしてノイズを逃がすことができるので、別部材を必要としない。
さらに、シールド部材24の端部の加工処理も不要となり、前記別部材を削減することができる。
【0017】
(2)シールド部材24は、導電性の金属であって、細い素線が編み組みされてチューブ状に形成され、チューブ内にトルク舵角センサ12の検出信号をモータECU14に伝達する芯線がおさまるようにした。
よって、外部からのノイズの注入から第1ハーネス17および第2ハーネス18の芯線を電気的に保護し、第1ハーネス17および第2ハーネス18の芯線が放射するノイズがラックハウジング6の外に放射されることも保護することができる。
【0018】
(3)導電性樹脂で形成されたスナップフィット式クリップK1は、ラックハウジング6のスナップフィット式クリップ固定用孔6bに挿入、固定されるスナップフィット式固定部K1aと、第1ハーネス17および第2ハーネス18のシールド部材24を保持するバンド部K1bを備えるようにした。
よって、導電性樹脂で形成されたスナップフィット式クリップK1とラックハウジング6を物理的に固定、接続し、電気的にも接続することができ、ラックハウジング6との接続にねじ等の追加部品が不要になる。
【0019】
(4)ラックハウジング6は、アルミニウム合金で形成するようにした。
よって、ラックハウジング6自体で、ノイズを逃がすようにすることができる。
【0020】
〔実施形態2〕
図5は、実施形態2の電動パワーステアリング装置の要部を車両後方側から見た模式図であり、図6は、実施形態2のクリップの斜視図である。
【0021】
実施形態2の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、実施形態1と相違する部分のみ説明する。
実施形態1では、導電性樹脂で形成されたスナップフィット式クリップK1により、第1ハーネス17および第2ハーネス18のシールド部材24を保持し、ラックハウジング6のスナップフィット式クリップ固定用孔6bにスナップフィット式固定部K1aが挿入固定されるようにしたが、実施形態2では、導電性樹脂で形成されたタイラップ式クリップK2のバンド部(固定部)K2aにより、第1ハーネス17および第2ハーネス18のシールド部材24とラックハウジング6の外周を共締めすることにより保持するようにしている。
【0022】
次に、実施形態2の作用効果を説明する。
実施形態1の作用効果(1)、(2)、(4)に加え、以下の作用効果を奏する。
(1)ラックハウジング6のスナップフィット式クリップ固定用孔6bの加工が不要となり、コストを更に抑制することができ、ラックハウジング6に直接共締めしているので、密着性が良く抵抗値が安定するので、ノイズがより逃げやすくなる。
【0023】
〔他の実施形態〕
以上、本発明を実施するための実施形態を説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施形態では、電動駆動装置の一例として電動パワーステアリング装置を説明したが、これに限らず、制御部へ制御信号を供給するためにハウジングに保持されてシールド部材で覆われるハーネスを有する、電動ブレーキ装置や自動車用電動パワートレイン等の電動駆動装置に本実施形態の導電性樹脂クリップを適用することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…電動パワーステアリング装置(電動駆動装置)、6…ラックハウジング(ハウジング)、12…トルク舵角センサ(センサ)、14…モータECU(制御部)、17…第1ハーネス(ハーネス)、18…第2ハーネス(ハーネス)、24…シールド部材、K1…スナップフィット式クリップ(導電性樹脂クリップ)、K1a…スナップフィット式固定部(固定部)、K2…タイラップ式クリップ(導電性樹脂クリップ)、K2a…バンド部(固定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6