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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130720
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】口元管および口元管埋設方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 33/03 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
E21B33/03
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040603
(22)【出願日】2023-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】512010982
【氏名又は名称】宮古 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】宮古 茂
(57)【要約】
【課題】セメントミルクを用いずに掘削孔の口元に強固に固定され、地下水の水圧によって地中から押し出されるのを防ぐことができる、口元管、口元管埋設方法およびこれらに用いられる口元管保持リングを提供する。
【解決手段】掘削孔Hの口元から所定の深さまで連結される複数本の円管2によって構成されており、各円管2のうち少なくとも1本が、一端部に複数本のスリット311と各スリット311間に形成された複数枚の拡開片312とを有するスリット部31を備えたスリット管3であるとともに、各円管2のうちスリット管3のスリット部31側に連結される他の1本が、スリット管3におけるスリット部31に押入されて拡開片312を押し拡げる先細状のテーパー部41を備えたテーパー管4である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔の口元の地盤が崩壊するのを防止するために前記口元に埋設される口元管であって、
前記口元から所定の深さまで連結される複数本の円管によって構成されており、
前記各円管のうち少なくとも1本が、一端部に複数本のスリットと前記各スリット間に形成された複数枚の拡開片とを有するスリット部を備えたスリット管であるとともに、
前記各円管のうち前記スリット管のスリット部側に連結される他の1本が、前記スリット管における前記スリット部に押入されて前記拡開片を押し拡げる先細状のテーパー部を備えたテーパー管である、前記口元管。
【請求項2】
最先端の前記円管は、前記掘削孔に押し込まれるときに挿入される押込用棒材の先端を係止可能に内方へ突出された係止突出部を備える押込管である、請求項1に記載の口元管。
【請求項3】
前記各円管のうち少なくとも1本が、地下水を管内部に集水する集水孔を備えた集水管である、請求項1または請求項2に記載の口元管。
【請求項4】
前記各拡開片の基端部側における内周面には、前記テーパー管のテーパー部の先端と前記内周面との間の水密状態を保持する環状パッキンが設けられている、請求項1または請求項2に記載の口元管。
【請求項5】
請求項2に記載の口元管を前記押込用棒材に保持させる口元管保持リングであって、
前記押込用棒材の任意の位置に着脱可能なリング本体と、
前記リング本体の先端側において前記口元管と前記押込用棒材との間の隙間に挿入可能に一段細く形成されたセンタリング部とを有する、前記口元管保持リング。
【請求項6】
請求項1に記載された口元管を掘削孔の口元に埋設する口元管埋設方法であって、
地盤に掘削孔を掘削する掘削孔掘削工程と、
前記掘削孔の口元に前記口元管を押し込む口元管押込工程と、
前記掘削孔に押し込まれた前記口元管の後端側を押し、前記テーパー部により前記スリット部の前記拡開片を押し拡げて前記口元管を前記地盤に固定する口元管固定工程と
を有する前記口元管埋設方法。
【請求項7】
請求項2に記載された口元管を掘削孔の口元に埋設する口元管埋設方法であって、
地盤に掘削孔を掘削する掘削孔掘削工程と、
前記押込用棒材を前記口元管に挿入し前記押込用棒材の先端を前記係止突出部に係止させるとともに、請求項5に記載された口元管保持リングを、そのセンタリング部が前記口元管と前記押込用棒材との間の隙間に配置され、かつ前記押込用棒材に固定し、前記口元管を前記押込用棒材に保持させる口元管保持工程と、
前記押込用棒材に保持された前記口元管を前記掘削孔の口元に押し込む口元管押込工程と、
前記掘削孔に押し込まれた前記口元管の後端側を押し、前記テーパー部により前記スリット部の前記拡開片を押し拡げて前記口元管を前記地盤に固定する口元管固定工程と
を有する前記口元管埋設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に開口した掘削孔の口元の地盤が崩壊するのを防止するための口元管、口元管埋設方法およびこれらに用いられる口元管保持リングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事では、本格的な掘削作業を進める前に地中に含まれる重金属量などの地質調査を実施するために地質資料が採取される。重金属が多く含まれている土壌は産業廃棄物として処理する必要があり、地質調査によって事前準備ができるためその後の掘削作業がスムーズになる。
【0003】
このような地質を調査するための地質試料(土、砂、砂利、砕石など)の採取に、地中を掘削する掘削装置を用いる方法があり、特開2007-70870号公報には、掘削装置としてロータリーパーカッションドリルを用いる地盤調査工法が開示されている(特許文献1)。具体的には、アウターロッドとインナーロッドからなる二重管で掘削し、前記インナーロッドを地盤のコアを採取するサンプラ(以下「インナーチューブアセンブリ」ともいう)と交換した後、サンプラの先端を地盤に当接させた状態で、ドリルの駆動部からサンプラに対して所定のスラスト力及び所定の連続した打撃力を作用させて、サンプラを地盤に貫入させ、前記サンプラをワイヤーラインで引き上げることで、地質試料を採取することができるとされている。
【0004】
しかしながら、地質試料の採取中に、掘削孔の口元が崩壊してサンプラを貫入させられなくなったり、引き上げることができなくなったりすることがある。そこで、掘削孔の口元に口元管と呼ばれる管を埋設し、口元の地盤崩壊を防ぐ工事が行われる。
【0005】
また、地質試料を採取した後の口元管は、口元側にバルブなどを設けて、地盤から湧き出る地下水の排出口として利用される。このとき、地下水の水圧によって、口元管が地中から押し出されないように掘削孔と口元管との間にセメントミルクを注入し、硬化させることで前記口元管を地盤に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-70870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、トンネル工事における地質試料を採取するための掘削孔は地盤に対して略水平方向に掘削する。そのため注入したセメントミルクが硬化する前に重力によって下方に流れ落ち、上方側に隙間ができるなどして地盤に固定する力が不十分になるという問題がある。固定力が不十分な場合は、地下水の水圧によって、口元管が地中から押し出されてしまう被害に繋がる。
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、セメントミルクを用いずに掘削孔の口元に強固に固定され、地下水の水圧によって地中から押し出されるのを防ぐことができる、口元管、口元管埋設方法およびこれらに用いられる口元管保持リングを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る口元管は、口元管を掘削孔の口元に強固に固定させるという課題を解決するために、掘削孔の口元の地盤が崩壊するのを防止するために前記口元に埋設される口元管であって、前記口元から所定の深さまで連結される複数本の円管によって構成されており、前記各円管のうち少なくとも1本が、一端部に複数本のスリットと前記各スリット間に形成された複数枚の拡開片とを有するスリット部を備えたスリット管であるとともに、前記各円管のうち前記スリット管のスリット部側に連結される他の1本が、前記スリット管における前記スリット部に押入されて前記拡開片を押し拡げる先細状のテーパー部を備えたテーパー管である。
【0010】
また、本発明の一態様として、口元管を掘削孔に押し込む途中で拡開片が拡開してしまうのを防ぐという課題を解決するために、最先端の前記円管は、前記掘削孔に押し込まれるときに挿入される押込用棒材の先端を係止可能に内方へ突出された係止突出部を備える押込管であってもよい。
【0011】
さらに、本発明の一態様として、地質試料の採取などを行った後に地下水の排水口として利用できるようにするという課題を解決するために、前記各円管のうち少なくとも1本が、地下水を管内部に集水する集水孔を備えた集水管であってもよい。
【0012】
また、本発明の一態様として、地質試料の採取などを行った後に地下水の排水口として利用するときの漏水を防ぐという課題を解決するために、前記各拡開片の基端部側における内周面には、前記テーパー管のテーパー部の先端と前記内周面との間の水密状態を保持する環状パッキンが設けられていてもよい。
【0013】
本発明に係る口元管保持リングは、口元管を掘削孔に押し込む際にスリット管とテーパー管との距離が離れて脱落するのを防止するという課題を解決するために、前記口元管を前記押込用棒材に保持させる口元管保持リングであって、前記押込用棒材の任意の位置に着脱可能なリング本体と、前記リング本体の先端側において前記口元管と前記押込用棒材との間の隙間に挿入可能に一段細く形成されたセンタリング部とを有する。
【0014】
本発明に係る口元管埋設方法は、口元管を掘削孔の口元に強固に固定させるという課題を解決するために、前記口元管を掘削孔の口元に埋設する口元管埋設方法であって、地盤に掘削孔を掘削する掘削孔掘削工程と、前記掘削孔の口元に前記口元管を押し込む口元管押込工程と、前記掘削孔に押し込まれた前記口元管の後端側を押し、前記テーパー部により前記スリット部の前記拡開片を押し拡げて前記口元管を前記地盤に固定する口元管固定工程とを有する。
【0015】
本発明に係る口元管埋設方法は、口元管を掘削孔の口元に強固に固定させるとともに、口元管を掘削孔に押し込む途中で拡開片が拡開したり、スリット管からテーパー管が脱落するのを防止するという課題を解決するために、前記口元管を掘削孔の口元に埋設する口元管埋設方法であって、地盤に掘削孔を掘削する掘削孔掘削工程と、前記押込用棒材を前記口元管に挿入し前記押込用棒材の先端を前記係止突出部に係止させるとともに、請求項5に記載された口元管保持リングを、そのセンタリング部が前記口元管と前記押込用棒材との間の隙間に配置され、かつ前記押込用棒材に固定し、前記口元管を前記押込用棒材に保持させる口元管保持工程と、前記押込用棒材に保持された前記口元管を前記掘削孔の口元に押し込む口元管押込工程と、前記掘削孔に押し込まれた前記口元管の後端側を押し、前記テーパー部により前記スリット部の前記拡開片を押し拡げて前記口元管を前記地盤に固定する口元管固定工程とを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セメントミルクを用いずに掘削孔の口元に強固に固定され、地下水の水圧によって地中から押し出されるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る口元管の一実施形態を示す斜視図である。
図2】本実施形態におけるスリット管およびテーパー管を示す一部断面図である。
図3】本実施形態における押込管および集水管を示す一部断面図である。
図4】本実施形態の口元管を押込用棒材に保持させた状態を示す断面図である。
図5】本実施形態における押込用棒材を備えたボーリングマシンを示す模式図である。
図6】本実施形態の口元管保持リングを示す側面図である。
図7】本実施形態の口元管埋設方法のフローを示すチャート図である。
図8】本実施形態における拡開片を地盤に食い込ませた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る口元管、口元管埋設方法およびこれらに用いられる口元管保持リングの一実施形態について図面を用いて説明する。
【0019】
本実施形態の口元管1は、掘削孔Hの口元(掘削孔Hの入口側)に埋設される複数本の円管2によって構成されており、本実施形態では、図1に示すように、一端部にスリット部31を備えたスリット管3と、前記スリット部31を拡開させるテーパー部41を備えたテーパー管4と、最先端の押込管5と、地下水を内部に集水する集水孔61が形成された集水管6とにより構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0020】
スリット管3は、一端部にスリット部31を備えた円管2であり、口元管1の各円管2のうち少なくとも1本がこのスリット管3である。本実施形態におけるスリット管3は、図1に示すように、口元側から数えて2本目の位置に配置されている。
【0021】
また、スリット管3の先端側は、図2に示すように、雄ネジが形成されており、本実施形態では、集水管6と螺合により連結可能に構成されている。
【0022】
スリット部31は、図1および図2に示すように、口元側の端部から他端部(先端側)に向かって形成された複数本のスリット311と、各スリット311間に形成された複数枚の拡開片312とから構成されている。本実施形態におけるスリット部31は、12本のスリット311と、12枚の拡開片312により構成されている。
【0023】
拡開片312は、後述するように、外側に屈曲することで拡開して周囲の地盤に食い込み、地下水圧(被圧)によって口元管1が掘削孔Hから押し出されるのを防ぐものである。拡開片312の長さ(スリット311の深さ)は、特に限定されるものでは無いが、屈曲した拡開片312の先端が掘削孔Hの地盤に食い込ませるため、円管2の直径の約0.5~1.5倍の長さに形成されることが好ましい。
【0024】
また、本実施形態における拡開片312は、連結するテーパー管4との摩擦抵抗を増やして抜けにくくするため、内周面に梨地状または線状の細かな凹凸面となる表面加工が施されている。
【0025】
さらに、本実施形態における拡開片312の基端近傍には、テーパー管4との連結部分の止水のための環状パッキン313が設けられている。本実施形態における環状パッキン313は、水を吸水して膨張する素材で作成されたシート状のパッキンを環状に形成したものであり、図2に示すように、拡開片312の基端部における内周面に貼設されている。なお、環状パッキン313は、本実施形態のものに限定されるものではなく、市販のゴムシートを環状に形成したものや市販のOリングなどから適宜選択してもよい。
【0026】
テーパー管4は、前記スリット部3を拡開させるテーパー部41を備えた円管2であって、複数本の円管2のうちスリット管3のスリット部31側に連結される円管2である。
【0027】
テーパー部41は、スリット部31に向けて先細状に形成された部分であり、図2に示すように、先端側の外径は拡開片312が拡開する前のスリット部31の内径よりも小径に形成されている。また、後端側の外径は拡開する前の拡開片312の内径よりも大径に形成されており、本実施形態では、スリット管3の外径と同径に形成されている。これにより、テーパー部41が、スリット部31に挿入されることで、後述するように、拡開片312が押し拡げられ、地盤に食い込むようになっている。
【0028】
本実施形態におけるテーパー部41は、拡開片312の内周面と同様に、摩擦抵抗を増やして抜け難くするために、図示しないが、外周面が梨地状または線状の細かな凹凸面となる表面加工が施されている。
【0029】
本実施形態における口元管1は、図1に示すように、このテーパー管4を口元側から数えて1本目の位置に配置し、かつ拡開片312が拡開しない程度にテーパー部41の先端をスリット部31に挿入した状態で構成されている。
【0030】
なお、テーパー管4およびスリット管3は、掘削孔Hの口元側に配置されていることが好ましいが、配置は特に限定されるのではなく、口元管1の中間や先端側の位置に配置してもよい。また、テーパー管4およびスリット管3の設置数は、1本ずつに限定されるものではなく、複数本設置してもよい。さらに、テーパー管4およびスリット管3の配置の順番は、口元側からテーパー管4、スリット管3の順に配置するものに限定されるものではなく。スリット管3、テーパー管4の順に配置してもよい。
【0031】
押込管5は、口元管1を構成する複数本の円管2のうち最先端に配置される円管2であって、図1および図3に示すように、その内周面に係止突出部51を備えており、口元側端部の内周面には集水管6と連結するための雌ネジが形成されている。
【0032】
係止突出部51は、口元管1を掘削孔Hに押し込む際に前記口元管1に挿入される押込用棒材7の先端に係止するために円管2の内周面に設けられた突起である。つまり口元管1を押し込む力を前記係止突出部51に伝えることで、前記スリット管3の拡開片312に負荷をかけない状態で口元管1を所定の深さまで押し込むことができる。本実施形態における係止突出部51は、凸形リング状に肉盛り溶接することで形成している。
【0033】
なお、係止突出部51は、リング状に限定されるものではなく、周方向に間隔を開けて形成されていてもよい。また、押込管5は、単独の円管2として構成しているが、スリット管3またはテーパー管4が最先端の円管2となる場合には、その円管2に係止突出部51を形成して押込管5としての機能を兼ねるようにしてもよい。
【0034】
集水管6は、地下水を口元管1の管内部に流入させて集水するための円管2であり、複数個の集水孔61を備えている。本実施形態における集水孔61は、図1および図3に示すように、長孔状に形成されている。各集水孔61の大きさや形状は、特に限定されるものではないが、周囲の土砂が管内に侵入しない程度の大きさや形状が好ましい。また、集水孔61には、土砂の侵入を防止するストレーナーを設けてもよい。
【0035】
また、集水管6の口元側の口元側端部の内周面にはテーパー管4と連結するための雌ネジが形成されているとともに、先端側の外周面には押込管5と連結するための雄ネジが形成されている。
【0036】
なお、本実施形態における集水管6は、単独の円管2として構成しているが、スリット管3、テーパー管4および押込管5のいずれかが集水孔61を備えることで集水管6としての機能を兼ねるようにしてもよい。
【0037】
次に、押込用棒材7および口元管保持リング8について説明する。
【0038】
まず、押込用棒材7は、口元管1を掘削孔Hに押し込む際に用いられる棒材であり、前記口元管1に挿入されて押込管5の係止突出部51に係止可能に形成されている。具体的には、押込用棒材7は、図4に示すように、口元管1において内径の最も小さいテーパー管4のテーパー部41を通過可能で、かつ前記係止突出部51に係止可能な外径寸法に形成されている。本実施形態における押込用棒材7は、図5に示すように、ボーリングマシンBによって掘削孔Hに対し押し込みおよび引き抜き可能に構成されている。
【0039】
口元管保持リング8は、口元管1を押込用棒材7で掘削孔Hに押し込む際に前記口元管1の口元側を押込用棒材7に保持させるためのものであり、本実施形態では、図4および図6に示すように、押込用棒材7に着脱可能なリング本体81と、このリング本体81の先端側に形成されるセンタリング部82とを有する。
【0040】
リング本体81は、押込用棒材7に対して任意の位置に固定できるように複数個に分割可能に構成されている。本実施形態におけるリング本体81は、左右2つに分解可能な約半円状に形成されており、上下端には互いをボルト止め可能なボルト固定部811を有している。
【0041】
センタリング部82は、押込用棒材7と口元管1との間の隙間に配置されて後端側の円管2の重さによって拡開片312が拡開してしまうのを防ぐものであり、その外径は口元管1の内径とほぼ同径で、かつリング本体81に対して一段細く形成されている。
【0042】
そして、口元管保持リング8は、図4に示すように、口元管1に挿入された押込用棒材7に対し、センタリング部82が口元管1と押込用棒材7との隙間に配置し、リング本体81の上下端部のボルト固定部811をボルトで締結することで前記押込用棒材7に固定される。
【0043】
次に、本実施形態の口元管1および口元管保持リング8の作用について、本実施形態の口元管埋設方法とともに説明する。
【0044】
本実施形態の口元管埋設方法は、図7に示すように、掘削孔Hを掘削する掘削孔工程と、押込用棒材7に口元管1を保持させる口元管保持工程と、口元管1を掘削孔Hに押し込む口元管押込工程と、テーパー管4によって拡開片312を拡開させて口元管1を地盤に固定する口元管固定工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0045】
掘削孔工程は、地盤に口元管1を挿入可能な内径の掘削孔を掘削する工程である(S1)。具体的には、掘削用のドリルビットを備えた掘削ロッドをボーリングマシンB等で回転させながら地盤を押し込み、掘削孔Hを口元管1を挿入可能な深さまたはそれ以上の深さまで掘削する。本実施形態では、トンネル工事における地質資料の採取のために、略水平方向に向けて掘削孔Hを掘削する。
【0046】
口元管保持工程は、口元管1を押込用棒材7に保持させる工程である(S2)。具体的には、図4に示すように、押込用棒材7を口元側から口元管1に挿入し、前記押込用棒材7の先端を最先端の押込管5に形成されている係止突出部51に係止させるとともに、口元管1の口元側に口元管保持リング8を固定する。リング本体81は、分割可能に形成されているため任意の位置に着脱することが容易であり、素早く口元管1の口元側に設置することができる。
【0047】
これにより、口元管1は、係止突出部51と口元管保持リング8とによりスリット管3とテーパー管4との距離が一定に保たれた状態で押込用棒材7に保持される。
【0048】
また、センタリング部82は、口元管1と押込用棒材7との間の隙間に配置することで、後端部の円管2であるテーパー管4を支持し、その重さにより拡開片312が拡開してしまうのを防止することができる。
【0049】
なお、次の口元管押込工程において、口元管1をスリット管3とテーパー管4との距離を保った状態で掘削孔Hに押し込むことができる場合は、口元管保持工程は省略してもよい。
【0050】
口元管押込工程は、掘削された掘削孔Hの口元に口元管1を押し込む工程である(S3)。本実施形態では、押込用棒材7に保持された口元管1をボーリングマシンBを用いて掘削孔Hに所定の深さまで押し込む。このとき押込用棒材7による押込力は係止突出部51を介して口元管1に伝えられる。よって、最先端の押込管5が連結された他の円管2を引っ張るように押し込むことで、拡開片312が押込途中で拡開するのを防ぐことができる。
【0051】
また、口元管1の後端側は口元管保持リング8によって保持されているため、掘削孔Hとの摩擦等により押込途中でスリット管3とテーパー管4との距離が一定に保たれ、スリット部31からテーパー部41抜け落ちてしまうことがない。
【0052】
口元管固定工程は、掘削孔Hの所定の深さまで押し込まれた口元管1の後端側を押し、テーパー部41で拡開片312を押し拡げて当該拡開片312を地盤に食い込ませ、口元管1を地盤に固定する工程である(S4)。
【0053】
具体的には、テーパー管4をスリット管3側に押すことで、先細状のテーパー部41がスリット部31に押入される。拡開片312は、テーパー部41に押されて徐々に拡開し、図8に示すように、地盤に食い込む。これにより口元管1は、セメントミルクを使用しなくても掘削孔Hの口元に固定される。
【0054】
テーパー部41は、先端をスリット部31より奥まで押し入れ、スリット管3に嵌着させる。本実施形態におけるテーパー部41の外周面および拡開片31の内周面に施された凹凸状の表面加工によって、摩擦抵抗が増加し水圧で押し出されるのが防止される。
【0055】
このように口元の固定された口元管1は、掘削孔Hにおける口元の地盤の崩壊を防止する。これにより、地質試料の採取を安全かつ確実に行うことができる。
【0056】
地質試料を採取した後の口元管1は、地盤から湧き出る地下水の排出口として利用することができる。このとき口元管1は、セメントミルクにより固定されていないため、先端の開口のみならず集水管6の集水孔61からも地下水を集水することができる。
【0057】
また、環状パッキン313は、スリット管3とテーパー管4との接続部を止水し集めた地下水の漏水を防ぐことができる。
【0058】
以上のような本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
1.拡開片312が地盤に食い込むことで、口元管1を掘削孔Hの口元に強固に固定し、地下水圧による抜け出すのを防止することができる。
2.固定にセメントミルクを用いないため、硬化する時間を要せず、口元管1の後端側を押して拡開片312を拡開させるという簡単な作業で、確実に固定することができる。
3.最先端の押込管5における係止突出部51に押込用棒材7を係止させて押し込むことで、押し込み途中で拡開片312が拡開してしまうのを防ぐことができる。
4.口元管保持リング8が最先端に押込管5を配置した口元管1の後端側を保持しているため、スリット管3とテーパー管4との距離が一定に保たれており、押込時に地盤から受ける摩擦抵抗によりテーパー部41がスリット部31から抜け落ちるのを防止することができる。
5.地質試料の採取などを行った後に地下水の排水口として利用する際には、集水管6によりセメントミルクにより固定されていない外側の地盤から地下水を集水することができる。
6.環状パッキン313によりスリット管3とテーパー管4との接続部分から集水した地下水が漏水するのを防止することができる。
【0059】
なお、本発明に係る口元管、口元管埋設方法およびこれらに用いられる口元管保持リングは、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、スリット管3は、テーパー管4よりも口元側(口元管1の後端側)に配置してもよい。また、各円管2の連結構造は、ネジ構造に限定されるものではなく、嵌着や溶着などにより連結してもよい。さらに、掘削孔掘削工程において掘削孔Hを掘削する方向は略水平方向に限定されるものではなく、垂直方向や水平に対して傾斜した斜め方向など、適宜応用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 口元管
2 円管
3 スリット管
4 テーパー管
5 押込管
6 集水管
7 押込用棒材
8 口元管保持リング
31 スリット部
41 テーパー部
51 係止突出部
61 集水孔
81 リング本体
82 センタリング部
311 スリット
312 拡開片
313 環状パッキン
811 ボルト固定部
H 掘削孔
B ボーリングマシン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔の口元の地盤が崩壊するのを防止するために前記口元に埋設される口元管であって、
前記口元から所定の深さまで連結される複数本の円管によって構成されており、
前記各円管のうち少なくとも1本が、一端部に複数本のスリットと前記各スリット間に形成された複数枚の拡開片とを有するスリット部を備えたスリット管であるとともに、
前記各円管のうち前記スリット管のスリット部側に連結される他の1本が、前記スリット管における前記スリット部に押入されて前記拡開片を押し拡げて地盤に食い込ませる先細状のテーパー部を備えたテーパー管である、前記口元管。
【請求項2】
最先端の前記円管は、前記掘削孔に押し込まれるときに挿入される押込用棒材の先端を係止可能に内方へ突出された係止突出部を備える押込管である、請求項1に記載の口元管。
【請求項3】
前記各円管のうち少なくとも1本が、地下水を管内部に集水する集水孔を備えた集水管である、請求項1または請求項2に記載の口元管。
【請求項4】
前記各拡開片の基端部側における内周面には、前記テーパー管のテーパー部の先端と前記内周面との間の水密状態を保持する環状パッキンが設けられている、請求項1または請求項2に記載の口元管。
【請求項5】
最後端の前記円管の口元側に、前記押込用棒材の任意の位置に着脱可能なリング本体と、前記リング本体の先端側において前記口元管と前記押込用棒材との間の隙間に挿入可能に一段細く形成されたセンタリング部とを有する口元管保持リングを備えた、請求項2に記載の口元管。
【請求項6】
請求項1に記載された口元管を掘削孔の口元に埋設する口元管埋設方法であって、
地盤に掘削孔を掘削する掘削孔掘削工程と、
前記掘削孔の口元に前記口元管を押し込む口元管押込工程と、
前記掘削孔に押し込まれた前記口元管の後端側を押し、前記テーパー部により前記スリット部の前記拡開片を押し拡げて前記口元管を前記地盤に固定する口元管固定工程と
を有する前記口元管埋設方法。
【請求項7】
請求項5に記載された口元管を掘削孔の口元に埋設する口元管埋設方法であって、
地盤に掘削孔を掘削する掘削孔掘削工程と、
前記押込用棒材を前記口元管に挿入し前記押込用棒材の先端を前記係止突出部に係止させるとともに、最後端の前記円管の口元側における口元管保持リングを、そのセンタリング部が前記口元管と前記押込用棒材との間の隙間に配置され、かつ前記押込用棒材に固定し、前記口元管を前記押込用棒材に保持させる口元管保持工程と、
前記押込用棒材に保持された前記口元管を前記掘削孔の口元に押し込む口元管押込工程と、
前記掘削孔に押し込まれた前記口元管の後端側を押し、前記テーパー部により前記スリット部の前記拡開片を押し拡げて前記口元管を前記地盤に固定する口元管固定工程と
を有する前記口元管埋設方法。