(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013073
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】床材補修構造、床材の補修方法および床構造
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20240124BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
E04G23/02 C
E04F15/02 B
E04F15/02 E
E04G23/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114996
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】梅田 直輝
【テーマコード(参考)】
2E176
2E220
【Fターム(参考)】
2E176AA09
2E176BB24
2E176BB36
2E220AA07
2E220AA29
2E220AA33
2E220AC01
2E220BA04
2E220DA02
2E220DA11
2E220DB03
2E220DB06
2E220DB09
2E220EA11
2E220FA03
2E220FA04
2E220FA05
2E220FA11
2E220GA02X
2E220GA07X
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GB33X
2E220GB37X
2E220GB39X
2E220GB43X
(57)【要約】
【課題】意匠性と止水性の低下を抑制することができる。
【解決手段】既設床材10の一部を補修する際に、補修する既設床材10を取り外し、先ず、取り外した補修スペースRを使用して受け部材20を補修スペースRを挟んだ一方の既設床材10の床材上係合部42に受け部材20の一方の受け下係合部43Aを係合させることで、受け部材20を取り付け、その後、受け部材20の他方の受け下係合部43Bに対して上方から補修用床材30の一方の補修上係合部44Aを係合させるとともに、補修スペースRを挟んだ他方の既設床材10の床材下係合部41に補修用床材30の他方の補修上係合部44Bを係合させることで、補修用床材30を補修スペースRを挟む一対の既設床材10同士の間に配置するようにした床材の補修方法を提供する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺方向に延びる平板形状をなし、対向する一対の長辺部のうち一方に設けられる第1係合部と、他方に設けられ前記第1係合部に対して上方から係合可能な第2係合部と、を有する既設床材を補修するために設けられ、前記既設床材の短辺方向に配列される前記既設床材同士の間で不要な前記既設床材が取り外された補修スペースに配置される床材補修構造であって、
一対の長辺部に第1係合部が形成され、そのうち一方の前記第1係合部が前記既設床材の前記第2係合部に係合可能な受け部材と、
一対の長辺部に第2係合部が形成され、そのうち少なくとも一方が前記受け部材の前記第1係合部に係合可能な補修用床材と、を備える、床材補修構造。
【請求項2】
前記受け部材の上面には、前記短辺方向に近接する床材の基材が載置されている、請求項1に記載の床材補修構造。
【請求項3】
前記既設床材及び前記補修用床材の前記第2係合部は、長辺方向に延在して下向きに開口する係合凹部を有し、
前記受け部材の前記第1係合部は、長辺方向に延在して上向きに突となる係合凸部を有し、
前記係合凸部に対して前記係合凹部が上方から係合可能に設けられている、請求項1又は2に記載の床材補修構造。
【請求項4】
長辺方向に延びる平板形状をなし、対向する一対の長辺部のうち一方に設けられる第1係合部と、他方に設けられ前記第1係合部に対して上方から係合可能な第2係合部と、を有する既設床材を補修するための床材の補修方法であって、
長辺部両側に第1係合部が形成され、そのうち一方の前記第1係合部が前記既設床材の前記第2係合部に係合可能な受け部材と、長辺部両側に第2係合部が形成され、そのうち少なくとも一方が前記受け部材の前記第1係合部に係合可能な補修用床材と、を備え、
前記既設床材の短辺方向に配列される前記既設床材同士の間で不要な前記既設床材を取り外して補修スペースを確保する工程と、
前記補修スペースを挟んだ一方の前記既設床材の前記第2係合部に前記受け部材の一方の前記第1係合部を係合させて前記受け部材を取り付ける工程と、
前記受け部材の他方の前記第1係合部に対して上方から前記補修用床材の一方の前記第2係合部を係合させるとともに、前記補修スペースを挟んだ他方の前記既設床材の前記第1係合部に前記補修用床材の他方の前記第2係合部を係合させることで、前記補修用床材を前記補修スペースを挟む一対の前記既設床材同士の間に配置する工程と、
を有する、床材の補修方法。
【請求項5】
前記不要な前記既設床材の基材を長辺方向に沿って切断し、切断した前記既設床材を取り外して補修スペースを設けるようにした、請求項4に記載の床材の補修方法。
【請求項6】
長辺方向に延びる平板形状をなし、対向する一対の長辺部のうち一方に設けられる第1係合部と、他方に設けられ前記第1係合部に対して上方から係合可能な第2係合部と、を有する既設床材と、
長辺部両側に第1係合部が形成され、そのうち一方の前記第1係合部が前記既設床材の前記第2係合部に係合可能な受け部材と、
前記既設床材の短辺方向に配列される前記既設床材同士の間で不要な前記既設床材が取り外された補修スペースに配置され、長辺部両側に第2係合部が形成され、そのうち少なくとも一方が前記受け部材の前記第1係合部に係合可能な補修用床材と、
を備える、床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材補修構造、床材の補修方法および床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な床材の接合方法として、床材の一端に設けられた凹部形状と、他端に設けられた凸部形状とを有する嵌合部を形成し、隣接する床材同士を横方向に嵌合させて敷設するものが知られている。このような嵌合部による嵌合方法では水等の液体が床面にこぼれた際に、嵌合部の隙間を伝って底面へ浸水するおそれがある。そこで、例えば、サネ部に返し形状を有する嵌合部を上下方向に嵌合させ、床面にこぼれた液体が嵌合部から底面へ浸水するのを防ぐ床材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な床材を補修する場合において既設床材の1枚を張替えて交換する作業では、交換時の取り外し作業時に長手下サネ部分を切断してから基材を取り外す。基材を剥がす際には、切り離された下サネ部分をそのまま残しておく。続いて、交換する床材を取り外した床部分(補修スペース)の床面を清掃した後、長手下サネ部分を切り離した床材と同形状の新たな床材を使用し、この新たな床材を補修材として取り外した補修スペースに配置する。このとき、下サネ部分が切り離された形状の床材によって補修されることから、補修スペースに隣接する取り外しを行っていない既設床材に対して非連結となる。そのため、双方間に空隙が発生し、その隙間を介して床材の下方の床面が見えるおそれがあり、意匠性が低下するという問題があった。
また、補修した床材と既設床材との間に隙間が生じることにより、止水性も低下することから、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、意匠性と止水性の低下を抑制することができる床材補修構造、床材の補修方法および床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る床材補修構造の態様1は、長辺方向に延びる平板形状をなし、対向する一対の長辺部のうち一方に設けられる第1係合部と、他方に設けられ前記第1係合部に対して上方から係合可能な第2係合部と、を有する既設床材を補修するために設けられ、前記既設床材の短辺方向に配列される前記既設床材同士の間で不要な前記既設床材が取り外された補修スペースに配置される床材補修構造であって、一対の長辺部に第1係合部が形成され、そのうち一方の前記第1係合部が前記既設床材の前記第2係合部に係合可能な受け部材と、一対の長辺部に第2係合部が形成され、そのうち少なくとも一方が前記受け部材の前記第1係合部に係合可能な補修用床材と、を備えることを特徴としている。
【0007】
(2)本発明の態様2は、態様1の床材補修構造において、前記受け部材の上面には、前記短辺方向に近接する床材の基材が載置されていることを特徴としてもよい。
【0008】
(3)本発明の態様3は、態様1又は態様2の床材補修構造において、前記既設床材及び前記補修用床材の前記第2係合部は、長辺方向に延在して下向きに開口する係合凹部を有し、前記受け部材の前記第1係合部は、長辺方向に延在して上向きに突となる係合凸部を有し、前記係合凸部に対して前記係合凹部が上方から係合可能に設けられていることが好ましい。
【0009】
(4)本発明に係る床材の補修方法の態様4は、長辺方向に延びる平板形状をなし、対向する一対の長辺部のうち一方に設けられる第1係合部と、他方に設けられ前記第1係合部に対して上方から係合可能な第2係合部と、を有する既設床材を補修するための床材の補修方法であって、長辺部両側に第1係合部が形成され、そのうち一方の前記第1係合部が前記既設床材の前記第2係合部に係合可能な受け部材と、長辺部両側に第2係合部が形成され、そのうち少なくとも一方が前記受け部材の前記第1係合部に係合可能な補修用床材と、を備え、前記既設床材の短辺方向に配列される前記既設床材同士の間で不要な前記既設床材を取り外して補修スペースを確保する工程と、前記補修スペースを挟んだ一方の前記既設床材の前記第2係合部に前記受け部材の一方の前記第1係合部を係合させて前記受け部材を取り付ける工程と、前記受け部材の他方の前記第1係合部に対して上方から前記補修用床材の一方の前記第2係合部を係合させるとともに、前記補修スペースを挟んだ他方の前記既設床材の前記第1係合部に前記補修用床材の他方の前記第2係合部を係合させることで、前記補修用床材を前記補修スペースを挟む一対の前記既設床材同士の間に配置する工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
(5)本発明の態様5は、態様4の床材の補修方法において、前記不要な前記既設床材の基材を長辺方向に沿って切断し、切断した前記既設床材を取り外して補修スペースを設けるようにしたことを特徴としてもよい。
【0011】
(6)本発明に係る床構造の態様6は、長辺方向に延びる平板形状をなし、対向する一対の長辺部のうち一方に設けられる第1係合部と、他方に設けられ前記第1係合部に対して上方から係合可能な第2係合部と、を有する既設床材と、長辺部両側に第1係合部が形成され、そのうち一方の前記第1係合部が前記既設床材の前記第2係合部に係合可能な受け部材と、前記既設床材の短辺方向に配列される前記既設床材同士の間で不要な前記既設床材が取り外された補修スペースに配置され、長辺部両側に第2係合部が形成され、そのうち少なくとも一方が前記受け部材の前記第1係合部に係合可能な補修用床材と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の床材補修構造、床材の補修方法および床構造によれば、意匠性と止水性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による床構造の斜視図である。
【
図3】複数が配置された既設床材を長辺方向から見た断面図である。
【
図4】既設床材同士の連結部の構成を示す要部断面図である。
【
図6】補修後の床材補修構造を長辺方向から見た断面図である。
【
図7】補修中で受け部材のみを取り付けた状態の床材補修構造を長辺方向から見た断面図である。
【
図8】補修用床材を長辺方向から見た断面図である。
【
図9】
図8において補修用床材の係合部の構成を示す拡大図である。
【
図10】受け部材を長辺方向から見た断面図である。
【
図11】(a)~(c)は床材の補修手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態による床材補修構造、床材の補修方法および床構造について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の床構造の斜視図である。
図2は、既設床材を一部破断した斜視図である。
図3は、複数が配置された既設床材を長辺方向から見た断面図である。
図4は、既設床材同士の連結部の構成を示す要部断面図である。
図5は、
図3の既設床材の要部断面図である。
【0016】
図1~
図3に示すように、本実施形態の床構造1は、既設床材10と、床材補修構造1Aと、を備えている。床材補修構造1Aは、既設床材10を補修するためのものである。なお、既設床材10は、後述する補修用床材30とは異なる構成である。床構造1では、既設床材10の幅方向X2に配列される既設床材10同士の間で不要な既設床材10が取り外された補修スペースRに床材補修構造1A配置される。
【0017】
<既設床材の構成>
既設床材10は、長辺方向X1に延びる平板形状をなしている。既設床材10は、長辺方向X1及び幅方向X2(短辺方向)に複数連結することにより床面を形成する。
図4に示すように、既設床材10は、対向する一対の長辺部のうち一方に設けられる床材下係合部41(第1係合部)と、他方に設けられ床材下係合部41に対して上方から係合可能な床材上係合部42(第2係合部)と、を有する。
【0018】
図5に示すように、既設床材10は、基材層11と、基材層11の下面11bに設けられた緩衝層12と、を有する。基材層11の上面11aには化粧層13が設けられている。既設床材10は、基材層11と緩衝層12とが第1接着層14で貼り合わされ、基材層11と化粧層13とが第1接着層14で貼り合わせられ、基材層11と緩衝層12とが第2接着層15で貼り合わせられ、緩衝層12の下面12bには第3接着層16が設けられている。すなわち、既設床材10は、上側から下側に向けて、化粧層13、第1接着層14、基材層11、第2接着層15、緩衝層12、第3接着層16の順で積層されている。
【0019】
ここで、以下の説明では、基材層11を基準として、既設床材10を設置する床面側の向きを「下側、下方」とし、その反対側の向きを「上側、上方」として説明する。すなわち、基材層11を基準として、緩衝層12が設けられる(積層される)側の基材層11の面を「下面(裏面)」とし、その反対側の面を「上面(おもて面)」として説明する。
【0020】
<基材層>
図2に示すように、基材層11は、平板形状をなす本体部110と、その本体部110の長辺方向X1の一方の端部(短辺部)に設けられた第1嵌合部111と、本体部110の長辺方向X1の一方の端部(短辺部)に設けられた第2嵌合部112と、を有する。さらに基材層11は、長辺方向X1に直交する方向(幅方向X2)の一方の側面部(長辺部)に設けられた床材下係合部41と、幅方向X2の他方の側面部(長辺部)に設けられた床材上係合部42と、を有する。
床材下係合部41と床材上係合部42とは幅方向X2に対向している。
図3に示すように、床材上係合部42は、隣接して設置される他の既設床材10の床材下係合部41に対して上方から係合可能である。
【0021】
図4に示すように、床材上係合部42は、長辺方向X1に延在して下向きに開口する係合凹部420を形成している。床材下係合部41は、長辺方向X1に延在して上向きに突となる係合凸部410を形成している。係合凸部410に対して係合凹部420が上方から係合可能に設けられている。すなわち、係合凹部420内に係合凸部410が進入した状態で係合される。
【0022】
床材下係合部41は、隣接して設置される他の既設床材10の床材上係合部42に対して互いに係合する。床材下係合部41は、本体部110から延出して上方にせり上がる。このせり上がる部分が係合凸部410となる。係合凸部410と本体部110との間には、上向き開口となる溝部411が形成されている。係合凸部410は、係合凹部420に対して下方から係合する。溝部411には、床材上係合部42の下向きに突出する先端片421が上方から係合する。係合凸部410には、溝部411側に突出する爪部412が形成されている。爪部412は、後述する床材上係合部42の爪部422に係止することで上下方向の移動が規制される。
【0023】
床材上係合部42は、隣接して設置される他の既設床材10の床材下係合部41に対して互いに係合する。床材上係合部42は、本体部110から延出し、その延出端から下方に垂下する先端片421を有する。この先端片421と本体部110との間には、下向き開口となる係合凹部420が形成されている。係合凹部420は、係合凸部410に対して上方から係合する。先端片421には、係合凹部420側に突出する爪部422が形成されている。爪部422は、上述した床材下係合部41の爪部412に係止することで上下方向の移動が規制される。
【0024】
床材下係合部41及び床材上係合部42は、基材層11の成形時に本体部110に対して同時に設けても良いし、成形後の本体部110に対して切削加工を行うことで設けてもよい。また、床材下係合部41及び床材上係合部42と矩形の本体部110を別々に成形し、それらを熱融着ないしは接着剤等を用いた接着処理によって結合することで形成してもよい。
【0025】
基材層11は、不図示の床材成型装置を使用して木質系樹脂発泡材料により製造される。
基材層11の材質としては、例えば、例えば木質系、金属系、合成樹脂系等、従来の床材における基材(層)と同様の材質を任意に採用可能である。例えば、木質系発泡樹脂を基材層11とした場合には、例えば木粉、タルク、ポリプロピレン樹脂(PP)、添加剤、発泡剤等を混合した材料である。
【0026】
木質系樹脂発泡成形体を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系の例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体や、これらを接着性の向上の目的で酸変性したもの、あるいはアイオノマー等から適宜選択が可能で、単一でも複数種の混合でも構わない。
中でも、基材として要求される剛性や表面硬度、寸法安定性などの面で、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂が最も適している。
【0027】
<緩衝層>
緩衝層12としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリウレタン、クロロプレン等のゴムなどが一般的であり、用途に合わせて適宜選択すればよい。さらに気泡を構成材料の中に持つことが望ましい。例えばPE系10倍発泡体(三福工業社製)を採用することができる。
【0028】
<化粧層>
化粧層13としては、基材層11の表面の意匠性を高める機能と表面保護の機能をもたせるため、例えば、ポリオレフィン系樹脂シートを使用できる。
【0029】
<接着層>
第1接着層14は、基材層11と化粧層13とを接着するために使用され、例えば、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤を使用できる。
第2接着層15は、基材層11と緩衝層12とを接着するために使用され、接着可能となるものであれば特に限定されるものではない。例えば、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤を使用できる。
第3接着層16としては、床面に対して緩衝層12を接着、固定するための両面テープが使用できる。
【0030】
<床材補修構造>
図6は、補修後の床材補修構造1Aを長辺方向から見た断面図である。
図7は、補修中で受け部材20のみを取り付けた状態の床材補修構造1Aを長辺方向から見た断面図である。
図8は、補修用床材30を長辺方向から見た断面図である。
図9は、
図8において補修用床材30の係合部の構成を示す拡大図である。
図10は、受け部材20を長辺方向から見た断面図である。
図6及び
図7に示すように、床材補修構造1Aは、受け部材20(
図10参照)と、補修用床材30(
図8、
図9参照))と、を有している。
【0031】
<受け部材>
受け部材20は、一対の長辺部に上記床材下係合部41と同様の受け下係合部43(第1係合部)が形成され、そのうち一方の受け下係合部43(43A)が既設床材10の床材上係合部42に係合可能に設けられている。受け部材20の上面2 0aには、幅方向X2に近接する床材(ここでは既設床材10と補修用床材30)の基材層11、31が載置されている。
【0032】
図10に示すように、受け部材20は、基材層21と、基材層21の下面21bに設けられた緩衝層22と、を有する。受け部材20は、基材層21と緩衝層22とが第1接着層23で貼り合わされている。すなわち、受け部材20は、上側から下側に向けて、基材層21、第1接着層23、緩衝層22の順で積層されている。
これら基材層21、緩衝層22、および第1接着層23のそれぞれの材質は、それぞれ既設床材10のものと同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0033】
受け下係合部43は、基材層21から幅方向X2の両側に延出して上方にせり上がる。このせり上がる部分が係合凸部430となる。幅方向両側の係合凸部430同士の間には、上向き開口となる溝部431が形成されている。係合凸部430は、既設床材10の係合凹部420及び後述する補修用床材30の補修上係合部44の係合凹部440に対して下方から係合する。溝部431には、床材上係合部42及び補修上係合部44のそれぞれ下向きに突出する先端片421、441が上方から係合する。溝部431に係合した先端片421、441同士(すなわち、既設床材10と補修用床材30の長辺部同士)は、互いに隣接した状態で配置される。一対の係合凸部430には、溝部431側に突出する爪部432が形成されている。すなわち、爪部432同士は幅方向X2に対向している。爪部432は、床材上係合部42及び補修上係合部44の爪部422、442に係止することで上下方向の移動が規制される。
【0034】
受け下係合部43は、基材層21の成形時に同時に設けても良いし、成形後の基材層21に対して切削加工を行うことで設けてもよい。また、受け下係合部43と矩形の基材層21を別々に成形し、それらを熱融着ないしは接着剤等を用いた接着処理によって結合することで形成してもよい。
【0035】
<補修用床材>
図8に示すように、補修用床材30は、一対の長辺部に上記床材上係合部42と同様の補修上係合部44(第2係合部)が形成され、そのうち少なくとも一方が受け部材20の受け下係合部43に対して上方から係合可能に設けられ、他方が既設床材10の床材下係合部41に対して上方から係合可能に設けられている。補修用床材30は、設置された状態で既設床材10の上面と面一になる。
【0036】
補修用床材30は、基材層31と、基材層31の下面31bに設けられた緩衝層32と、を有する。基材層31の上面31aには化粧層33が設けられている。補修用床材30は、基材層31と緩衝層32とが第1接着層34で貼り合わされ、基材層31と化粧層33とが第1接着層34で貼り合わせられ、基材層31と緩衝層32とが第2接着層35で貼り合わせられている。すなわち、補修用床材30は、上側から下側に向けて、化粧層33、第1接着層34、基材層31、第2接着層35、緩衝層32の順で積層されている。
これら化粧層33、第1接着層34、基材層31、第2接着層35、および緩衝層32のそれぞれの材質は、それぞれ既設床材10のものと同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0037】
図6、
図7及び
図9に示すように、補修上係合部44は、受け部材20の受け下係合部43、又は既設床材10の床材下係合部41に対して係合する。補修上係合部44は、基材層31の本体部310から延出し、その延出端から下方に垂下する先端片441を有する。この先端片441と本体部310との間には、下向き開口となる係合凹部440が形成されている。係合凹部440は、係合凸部430、410に対して上方から係合する。先端片441には、本体部310側に突出する爪部442が形成されている。爪部442は、上述した床材下係合部41及び受け下係合部43のそれぞれの爪部412、432に係止することで上下方向の移動が規制される。
【0038】
補修上係合部44は、基材層31の成形時に同時に設けても良いし、成形後の基材層31に対して切削加工を行うことで設けてもよい。また、補修上係合部44と矩形の基材層31を別々に成形し、それらを熱融着ないしは接着剤等を用いた接着処理によって結合することで形成してもよい。
【0039】
次に、上述した既設床材10、受け部材20及び補修用床材30の製造方法について説明する。これらは、ほぼ同様の製造方法であるので、既設床材10の製造方法について主に説明し、受け部材20及び補修用床材30の製造方法は、既設床材10と異なる点を説明する。
【0040】
先ず、不図示の床材成型装置を使用して既設床材10の基材層11の基材を製造する。床材成型装置の押出機のホッパーに、木粉、タルク、ポリプロピレン樹脂(PP)、添加剤、発泡剤等を混合した熱可塑性樹脂からなる木質系樹脂発泡材料を入れ、押出機内にて加熱可塑化しつつ混練し、これにより得られた加熱可塑化状態の木質系樹脂発泡材料を、セルカ発泡により実施して押出機の先端に装着された押出金型から押し出し、滑りサイジング金型に導入する。
そして、滑りサイジング金型内において、自重で変形することのない程度に冷却固化した木質系樹脂発泡材料Mを、滑りサイジング金型から脱型し、不図示の冷却水槽内を通過させることで十分に冷却した後、不図示の切断台に送り所定の寸法(例えば、1.8m)に切断し、温間養生を行う。これにより、床材成型装置を使用することにより、目的物の基材層11である木質系樹脂発泡成形体が得られる。
【0041】
次に、
図5に示すように、製造された基材層11の表面(上面11a)をコロナ処理した後、第1接着層14であるPUR接着剤(湿気硬化型)を塗布する。そして塗布後の表面に、ポリオレフィン系樹脂シート等の化粧シートをラッピングして化粧層13を設け、基材を半裁して養生を行う。
その後、半裁した基材の短手部を特殊な形状の丸鋸を使用して加工し、床材下係合部41及び床材上係合部42を加工する。
【0042】
次に、基材層11の下面11b側にコロナ処理を行い、2液硬化型エポキシ樹脂(第2接着層15)を塗布し、その後、クッション材(例えばPE系10倍発泡体)を貼り合わせて圧締して養生を行う。これにより基材層11の下側に緩衝層12が形成される。その後、クッション材(緩衝層12)の下面12bに両面テープ(第3接着層16)を張り付ける。これにより、既設床材10が製造される。
【0043】
補修用床材30の製造方法では、上記の既設床材10のうち第3接着層16が省略され、幅方向X2両側とも補修上係合部44を加工したものであり、他の製造方法は上記の既設床材10と同様である。
【0044】
受け部材20の製造方法では、上記の既設床材10のうち第1接着層14、化粧層13、及び第3接着層16が省略され、幅方向X2両側とも受け下係合部43を加工したものであり、他の製造方法は上記の既設床材10と同様である。
【0045】
次に、上述した床材補修構造1Aを使用した床材の補修方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
図11(a)~(c)は、床材の補修手順を示す図である。
先ず、
図11(a)に示すように、幅方向X2に配列される既設床材10同士の間で不要な1枚の既設床材10(10A)を取り外して補修スペースRを確保する。具体的には、不要な既設床材10Aの基材層11を長辺方向X1に沿って切断し、切断した既設床材10Aを取り外す。すなわち、切断される不要な既設床材10は、床材上係合部42を備えて上側に取り出し可能に切断された部分(
図11(a)の右側部分)と、床材下係合部41を備えて切断していない一方の既設床材10(符号10B)の下側で斜めに傾けながら取り出す部分(
図11(a)の左側部分)と、に切断により分離される。
【0046】
次に、
図11(b)に示すように、補修スペースRを挟んだ一方の既設床材10(10B)の床材上係合部42に対して、受け部材20の一方の受け下係合部43(43A)を係合させて受け部材20を取り付ける。つまり、受け部材20を既設床材10Bの床材上係合部42の下側に進入させるようにして床材上係合部42に受け部材20の受け下係合部43Aを係合させる。これにより、受け部材20の上面20aのうち幅方向X2の片側には既設床材10Bの床材上係合部42側の端部が載置した状態となる。
【0047】
次に、
図11(c)に示すように、受け部材20の他方の開放されている受け下係合部43(43B)に対して上方から補修用床材30の一方の補修上係合部44(44A)を係合させる。これにより、受け部材20の上面20aのうち幅方向X2のもう片側に補修用床材30の補修上係合部44A側の端部が載置した状態となる。さらに同時に、補修スペースRを挟んだ他方の既設床材10(10C)の床材下係合部41に補修用床材30の他方の補修上係合部44(44B)を係合させる。
これにより、幅方向X2で補修スペースRを挟む一対の既設床材10B、10C同士の間に補修用床材30が配置され、補修作業が完了となる。
【0048】
次に、上述した床材補修構造1A、床材の補修方法および床構造1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、
図11(a)~(c)に示すように、既設床材10の一部を補修する際に、補修する既設床材を取り外し、先ず、取り外した補修スペースRを使用して受け部材20を補修スペースRを挟んだ一方の既設床材10の床材上係合部42に受け部材20の一方の受け下係合部43Aを係合させることで、受け部材20を取り付ける。その後、受け部材20の他方の受け下係合部43Bに対して上方から補修用床材30の一方の補修上係合部44Aを係合させるとともに、補修スペースRを挟んだ他方の既設床材10の床材下係合部41に補修用床材30の他方の補修上係合部44Bを係合させることで、補修用床材30を補修スペースRを挟む一対の既設床材10同士の間に配置することができる。
このように、本実施形態では、受け部材20を補修スペースRを利用して簡単に設置することができ、さらに補修用床材30の両端が受け下係合部43及び床材下係合部41に対して上側から係合する補修上係合部44であるので、補修用床材30を上方から嵌め込むといった簡単な作業により設置することができる。
【0049】
本実施形態では、補修用床材30が受け部材20を介して既設床材10に連結され、補修用床材30と既設床材10との間に隙間が形成されにくく、既設床材10に対して隙間なく接触した位置で補修用床材30を取り付けることができる。さらに、既設床材10の床材上係合部42と補修用床材30の補修上係合部44とが受け部材20上に載置され、受け部材20が既設床材10と補修用床材30とによって上側から覆われているので、既設床材10と補修用床材30との間から床材下方の床面が見えることがなく、補修後の床材においても意匠性の低下を防止できる。
また、本実施形態では、既設床材10と補修用床材30と連結部が受け部材20によって下方から支持されているので、既設床材10と補修用床材30との間の止水性を確保することができる。
【0050】
本実施形態では、受け部材20の上面20aに幅方向X2に近接する床材(既設床材10及び補修用床材30)の基材層11、21が載置されているので、受け部材20が既設床材10と補修用床材30とによって上側から確実に覆われ、既設床材10と補修用床材30との間から床材下方の床面が見えることがなく、意匠性を高めることができる。
【0051】
また、本実施形態では、既設床材10及び補修用床材30の床材上係合部42及び補修上係合部44は、長辺方向X1に延在して下向きに開口する係合凹部420、440を有する。受け部材20の受け下係合部43は、長辺方向X1に延在して上向きに突となる係合凸部430を有し、この係合凸部430に対して係合凹部420、440が上方から係合可能に設けられている。この場合、既設床材10と補修用床材30との間の連結部分が、上面視して受け部材20の幅方向X2両側に位置する係合凸部430同士によって形成される溝部内に位置することから、既設床材10と補修用床材30との間から液体が下方に浸水しても受け部材20の溝部431で受けられ、床材下の床面に零れることを防止でき、より確実な止水を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態では、不要な既設床材10の基材層11を長辺方向X1に沿って切断し、切断した既設床材10を取り外して補修スペースRを設ける方法とすることで、切断した一方の上側から係合する床材上係合部42を有する既設床材10を先に取り外してスペースを形成することができ、このスペースを使用して切断した他方の床材下係合部41を有する既設床材10を容易に取り除くことが可能となり、補修にかかる作業効率を向上できる。
【0053】
このように、本実施形態による床材補修構造、床材の補修方法および床構造では、意匠性と止水性の低下を抑制することができる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0055】
例えば、既設床材10、受け部材20、補修用床材30の各積層部材の材料、積層構成、形状、厚さ等の構成は、上述した実施形態に限定されることはない。
また、既設床材10、受け部材20、補修用床材30に設けられる各係合部の形状については、とくに限定されることはなく変更可能である。すなわち、本実施形態では、既設床材10及び補修用床材30の第2係合部(床材上係合部42、補修上係合部44)が長辺方向に延在して下向きに開口する係合凹部420、440を有し、受け部材20の第1係合部(受け下係合部43)が長辺方向に延在して上向きに突となる係合凸部430を有し、係合凸部430に対して係合凹部420、440が上方から係合可能に設けられた構成であるが、これに限定されることはない。要は、既設床材10が第1係合部と、第1係合部に対して上から係合する第2係合部とを備え、受け部材20が第1係合部のみを備え、補修用床材30が第2係合部のみを備えた構成になっていればよいのである。
【0056】
また、本実施形態では、受け部材20の上面20aに幅方向X2(短辺方向)に近接する床材(本実施形態では既設床材10と補修用床材30)の基材層11、31(基材)が載置された構成となっているが、基材が受け部材20の上面20aに載置されることに限定されることはない。例えば、既設床材10と補修用床材30の第2係合部が受け部材20の上面20aに載置されていてもよい。
【0057】
また、本実施形態の補修方法では、不要な既設床材10の基材を長辺方向に沿って切断し、切断した既設床材10を取り外して補修スペースRを設けるようにしているが、切断方法、切断位置は任意に設定することが可能である。また。基材を切断することなく不要な既設床材10を取り外すことが可能な場合には、切断作業を省略してもよい。
【0058】
さらに、本実施形態では、不要な補修する補修用床材30が1枚である一例を示しているが、幅方向X2に配列される複数枚の床材を同時に補修、交換することも可能である。この場合には、補修用床材30同士が連結される箇所が発生するが、受け部材20で幅方向X2に隣り合う一対の補修用床材30を係合させてそれらの連結部分を受け部材20で下方より支持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 床構造
1A 床材補修構造
10 既設床材
11、21、31 基材層
20 受け部材
20a 上面
30 補修用床材
41 床材下係合部(第1係合部)
410 係合凸部
42 床材上係合部(第2係合部)
420 係合凹部
43 受け下係合部(第1係合部)
430 係合凸部
431 溝部
44 補修上係合部(第2係合部)
440 係合凹部
X1 長辺方向
X2 幅方向(短辺方向)