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特開2024-130731運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130731
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040619
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 一郎
(72)【発明者】
【氏名】白方 健登
(72)【発明者】
【氏名】土屋 成光
(72)【発明者】
【氏名】三枝 重信
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】車両の運転者に対して、より適切な運転支援を行うこと。
【解決手段】実施形態の一態様である運転支援装置において、自車両の周辺の状況を認識する認識部と、前記認識部の認識結果に基づいて、前記自車両の前方の走行区間の通過可否を判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づく情報を出力部に出力させる出力制御部と、を備え、前記判定部は、前記認識部により認識された前記自車両の走行路を区画する区画線と前記自車両の前方の障害物との間の第1距離が所定距離以上である場合に、前記自車両が前記障害物の横を通過できると判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺の状況を認識する認識部と、
前記認識部の認識結果に基づいて、前記自車両の前方の走行区間の通過可否を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づく情報を出力部に出力させる出力制御部と、を備え、
前記判定部は、前記認識部により認識された前記自車両の走行路を区画する区画線と前記自車両の前方の障害物との間の第1距離が所定距離以上である場合に、前記自車両が前記障害物の横を通過できると判定する、
運転支援装置。
【請求項2】
前記第1距離が前記所定距離未満である場合、前記認識部は、前記区画線からみて前記障害物とは反対側に存在するフリースペースの境界と、前記区画線との第2距離とを認識し、
前記第2距離が前記所定距離以上である場合、前記判定部は、前記自車両が前記区画線を越えて前記障害物の横を通過できると判定する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記認識部により前記フリースペースの境界となっている部分が壁と認識された場合であって、且つ、前記壁の認識度合が閾値未満である場合に、前記第2距離が前記所定距離以上であっても、前記自車両が前記障害物の横を通過できないと判定する、
請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記区画線から前記フリースペースの境界までの距離が上限距離以上である場合に、前記自車両が前記区画線を越えて前記障害物の横を通過できないと判定する、
請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記所定距離は、前記障害物が静的障害物である場合と動的障害物である場合とで異ならせる、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項6】
コンピュータが、
自車両の周辺の状況を認識し、
認識した結果に基づいて、前記自車両の前方の走行区間の通過可否を判定し、
判定した結果に基づく情報を出力部に出力させ、
認識した前記自車両の走行路を区画する区画線と前記自車両の前方の障害物との間の第1距離が所定距離以上である場合に、前記自車両が前記障害物の横を通過できると判定する、
運転支援方法。
【請求項7】
コンピュータに、
自車両の周辺の状況を認識させ、
認識された結果に基づいて、前記自車両の前方の走行区間の通過可否を判定させ、
判定された結果に基づく情報を出力部に出力させ、
認識された前記自車両の走行路を区画する区画線と前記自車両の前方の障害物との間の第1距離が所定距離以上である場合に、前記自車両が前記障害物の横を通過できると判定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて運転支援技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。これに関連して、従来では、自車両に設けられたカメラを用いて自車両が他車両とすれ違っているか否かを判定し、自車両が他車両とすれ違っている場合に自車両の周辺の状況を運転者に報知し、すれ違いが完了したことに応じて報知を終了する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-92505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転支援技術においては、道路状況に応じて、車両が前方の走行区間を走行できるか否かを適切に判定することができない場合があった。そのため、車両の運転者に対して適切な運転支援ができない場合があるということが課題である。
【0005】
本願は上記課題の解決のため、車両の運転者に対して、より適切な運転支援を行うことができる運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとしたものである。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る運転支援装置は、自車両の周辺の状況を認識する認識部と、前記認識部の認識結果に基づいて、前記自車両の前方の走行区間の通過可否を判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づく情報を出力部に出力させる出力制御部と、を備え、前記判定部は、前記認識部により認識された前記自車両の走行路を区画する区画線と前記自車両の前方の障害物との間の第1距離が所定距離以上である場合に、前記自車両が前記障害物の横を通過できると判定する、運転支援装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記第1距離が前記所定距離未満である場合、前記認識部は、前記区画線からみて前記障害物とは反対側に存在するフリースペースの境界と、前記区画線との第2距離とを認識し、前記第2距離が前記所定距離以上である場合、前記判定部は、前記自車両が前記区画線を越えて前記障害物の横を通過できると判定するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記判定部は、前記認識部により前記フリースペースの境界となっている部分が壁と認識された場合であって、且つ、前記壁の認識度合が閾値未満である場合に、前記第2距離が前記所定距離以上であっても、前記自車両が前記障害物の横を通過できないと判定するものである。
【0009】
(4):上記(2)の態様において、前記判定部は、前記区画線から前記フリースペースの境界までの距離が上限距離以上である場合に、前記自車両が前記区画線を越えて前記障害物の横を通過できないと判定するものである。
【0010】
(5):上記(1)の態様において、前記所定距離は、前記障害物が静的障害物である場合と動的障害物である場合とで異ならせるものである。
【0011】
(6):この発明の一態様に係る運転支援方法は、コンピュータが、自車両の周辺の状況を認識し、認識した結果に基づいて、前記自車両の前方の走行区間の通過可否を判定し、判定した結果に基づく情報を出力部に出力させ、認識した前記自車両の走行路を区画する区画線と前記自車両の前方の障害物との間の第1距離が所定距離以上である場合に、前記自車両が前記障害物の横を通過できると判定する、運転支援方法である。
【0012】
(7):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、自車両の周辺の状況を認識させ、認識された結果に基づいて、前記自車両の前方の走行区間の通過可否を判定させ、判定された結果に基づく情報を出力部に出力させ、認識された前記自車両の走行路を区画する区画線と前記自車両の前方の障害物との間の第1距離が所定距離以上である場合に、前記自車両が前記障害物の横を通過できると判定させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
上記(1)~(7)の態様によれば、車両の運転者に対して、より適切な運転支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る運転支援装置を利用した車両システム1の構成図である。
図2】第1の判定パターンについて説明するための図である。
図3】第2の判定パターンについて説明するための図である。
図4】第3の判定パターンについて説明するための図である。
図5】第4の判定パターンについて説明するための図である。
図6】実施形態の運転支援装置100による一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムの実施形態について説明する。なお、以下では、左側通行の法規が適用される場合について説明するが、右側通行の法規が適用される場合、左右を逆に読み替えればよい。
【0016】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る運転支援装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両(以下、自車両と称する)は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0017】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection And Ranging)14と、ソナー15と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、運転支援装置100とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。HMI30は、「出力部」の一例である。
【0018】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される自車両の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両の周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0019】
レーダ装置12は、自車両の周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両の任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0020】
LIDAR14は、自車両の周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両の任意の箇所に取り付けられる。なお、LIDAR14は、自車両の進行方向に対して横方向及び縦方向にスキャンすることにより、自車両から対象までの距離を検出する。
【0021】
ソナー15は、自車両の周辺に超音波を放射し、自車両から所定距離以内に存在する物体による反射又は散乱を検出することによって、当該物体までの距離又は位置等を検知する。ソナー15は、例えば、自車両の前端部および後端部に設けられバンパー等に設置される。
【0022】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、LIDAR14、およびソナー15のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度等を認識する。物体認識装置16は、認識結果を運転支援装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、LIDAR14、およびソナー15の検出結果をそのまま運転支援装置100に出力してよい。なお、物体認識装置16の機能を運転支援装置100に組み込み、車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0023】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等のネットワークを利用して、例えば、自車両の周辺に存在する他車両、自車両を利用する運転者の端末装置、或いは各種サーバ装置と通信する。
【0024】
HMI30は、自車両の乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、例えば、表示部32およびスピーカ34を含む。表示部32は、例えば、メータ内やインストルメントパネルの中央部に設けられたディスプレイ装置、またはヘッドアップディスプレイ(HUD)であってよい。スピーカ34は、例えば、自車両の車室内に設けられた音声出力装置であってよい。HMI30は、表示部32およびスピーカ34に加えて、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キー、マイク等を含んでもよい。
【0025】
車両センサ40は、自車両の速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、ヨーレート(例えば、自車両の重心点を通る鉛直軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサ、自車両の向きを検出する方位センサ等を含む。また、車両センサ40は、自車両の位置を検出する位置センサが設けられていてもよい。位置センサは、例えば、GPS(Global Positioning System)装置から位置情報(経度・緯度情報)を取得するセンサである。また、位置センサは、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を用いて位置情報を取得するセンサであってもよい。
【0026】
運転支援装置100は、運転者による自車両の運転を支援する装置である。運転支援装置100は、例えば、認識部110と、判定部120と、HMI制御部130と、記憶部140とを備える。認識部110、判定部120、およびHMI制御部130は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。HMI制御部130は、「出力制御部」の一例である。
【0027】
記憶部140は、上記の各種記憶装置、或いはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部140には、例えば、実施形態における各種制御を実行するために必要な情報、プログラム、その他の各種情報等が格納される。また、記憶部140には、地図情報142が含まれてよい。地図情報142は、例えば、所定区間の道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。また、地図情報142は、POI(Point Of Interest)情報を含んでもよく、道路形状や道路構造物に関する情報等を含んでもよい。道路形状には、例えば、分岐や合流、トンネル(入口、出口)、カーブ路(入口、出口)、道路または道路区画線(以下、「区画線」と称する)の曲率、曲率半径、車線数、幅員、勾配等が含まれる。道路構造物に関する情報には、道路構造物の種別、位置、道路の延伸方向に対する向き、大きさ、形状、色等の情報が含まれてよい。道路構造物の種別において、例えば、区画線を1つの種別としてもよく、区画線に属するレーンマークや縁石、中央分離帯、道路の延伸方向に沿って設置される壁(フェンス等も含む)のそれぞれを異なる種別としてもよい。地図情報142は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0028】
認識部110は、カメラ10、レーダ装置12、LIDAR14、およびソナー15のうち少なくとも一つから入力された情報、または物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両の周辺状況を認識する。認識部110は、例えば、物体認識部112と、道路状況認識部114とを備える。
【0029】
物体認識部112は、自車両、および自車両の周辺(所定距離以内)に存在する物体の種別や位置、大きさ(高さも含む)、速度、加速度等の状態を認識する。物体の種別は、例えば、物体が車両であるか、歩行者、電柱であるか等の種別であってもよく、車両ごとに識別するための種別であってもよい。物体の位置は、例えば、自車両の代表点(重心や駆動軸中心等)を原点とした絶対座標系(以下、車両座標系)の位置として認識されてよい。物体の位置は、その物体の重心やコーナー、進行方向の先端部等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。速度には、例えば、走行する車線の進行方向(縦方向)に対する自車両および他車両の速度(以下、縦速度と称する)と、車線の横方向に対する自車両および他車両の速度(以下、横速度)とが含まれる。物体の「状態」とは、例えば、物体が他車両等の移動体である場合には、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0030】
また、物体認識部112は、認識された物体のうち、自車両の前方(例えば、自車両の進行方向であり、且つ自車両から所定距離以内)の走行区間に存在する物体を障害物として認識する。なお、物体認識部112は、自車両の前方に存在する物体であっても、自車両Mの前走車両等の所定条件を満たす物体(例えば、所定時間における相対距離または相対速度の変化量が閾値未満である物体)である場合には、障害物として認識しない。また、物体認識部112は、障害物が、対向車両や歩行者等のように自らが移動している動的障害物であるか、電柱や駐車車両、放置物体等ように現状停止している静的障害物であるかを認識してもよい。
【0031】
道路状況認識部114は、自車両が走行する道路の状況を認識する。道路の状況には、例えば、道路を区画する区画線の位置や、道路境界の位置、区画線から道路境界までの領域(以下、必要に応じて「フリースペース」と称する)の状況等が含まれる。道路境界とは、自車両が走行可能な領域の境界であり、例えば、道路敷設面の端部や、自車両から見て区画線より遠方(外側)に壁や縁石等の物体がある場合には、その物体の道路側の端部の位置となる。また、道路状況認識部114は、物体認識部112により認識された物体と区画線との距離や、物体と道路境界との距離等を認識してもよい。また、道路状況認識部114は、自車両が走行する道路が狭路(道路の幅員(横幅)または車線幅が所定値未満)であるか否かを認識してもよい。
【0032】
また、物体認識部112および道路状況認識部114は、認識した物体に対する認識度合を設定してもよい。認識度合とは、認識した物体の確からしさ(確度)を示す指標値である。
【0033】
判定部120は、認識部110の認識結果に基づき、自車両の前方の走行区間の通過可否を判定する。例えば、判定部120は、認識部110により認識された自車両の走行路(例えば、道路)を区画する区画線と、自車両の前方に存在する障害物との間の距離に基づいて、自車両が障害物の横を接触せずに通過できるか否かを判定する。判定部120の機能の詳細については後述する。
【0034】
HMI制御部130は、認識部110の認識結果や判定部120の判定結果等に基づいて、HMI30に所定の情報を出力させて、自車両の運転者に通知等を行う。所定の情報には、例えば、自車両の状態に関する情報や運転支援情報等の自車両の走行に関連のある情報が含まれる。自車両の状態に関する情報には、例えば、自車両の速度、エンジン回転数、シフト位置等の情報が含まれる。また、運転支援情報には、例えば、自車両が障害物との接触を回避するための乗員による操舵操作や速度操作を支援する情報が含まれる。また、運転支援情報には、例えば、自車両が前方の走行区間を走行できるか否か示す情報や将来の走行経路に関する情報等が含まれてもよい。また、所定の情報には、通信装置20等が受信したテレビ番組、他のコンテンツ(例えば、音声、映像)等の自車両の走行制御に関連しない情報が含まれてもよい。また、所定の情報には、例えば自車両の現在位置や目的地、燃料の残量に関する情報が含まれてよい。
【0035】
例えば、HMI制御部130は、上述した所定の情報を含む画像を生成し、生成した画像をHMI30の表示部32に表示させもよく、所定の情報を示す音声を生成し、生成した音声をHMI30のスピーカ34から出力させてもよい。
【0036】
[判定部による通過可否の判定]
次に、判定部120による走行区間の通過可否の判定処理について具体的に説明する。なお、以下では、判定部120による判定処理を幾つかのパターンに分けて説明する。なお、以下に示す判定パターンは、何れも自車両の走行区間の道路が狭路である場合の判定パターンであるものとする。また、以降の説明において、自車両が物体(静的障害物、動的障害物)の横を通過するとは、自車両と物体とがすれ違う場合や、自車両が物体を追い越す場合等が含まれるものとする。
【0037】
<第1の判定パターン>
図2は、第1の判定パターンについて説明するための図である。図2の例において、自車両Mは、左右の区画線LL、RLで区画された道路RD1を速度VMで延伸方向(図中X軸方向)に沿って走行している。また、図2において、物体OB1は、道路RD1に存在する電柱を示しているが、電柱以外の静的障害物(例えば駐車車両や放置物体)であってもよい。図2の例では、自車両Mから見て区画線LLよりも遠方(外側)に、壁LWが区画線LLに沿って存在し、区画線RLの遠方に、壁RWが区画線RLに沿って存在しているものとする。
【0038】
物体認識部112は、例えば、カメラ10、レーダ装置12、LIDAR14、およびソナー15のうち少なくとも一つから入力された情報、または物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの前方(進行方向)に存在する物体OB1の位置、種類、大きさ等を認識する。また、物体認識部112は、壁LW、RWの位置や高さを認識する。
【0039】
道路状況認識部114は、カメラ10、レーダ装置12、LIDAR14、およびソナー15のうち少なくとも一つから入力された情報、または物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mが走行する道路RDの区画線LL、RLの位置を認識する。また、道路状況認識部114は、区画線LLと壁LWとの間の領域をフリースペースFS1として認識し、区画線RLと壁RWとの間の領域をフリースペースFS2として認識する。フリースペースFS1、FS2は、自車両Mが道路RD1を通常走行する場合には進入しないが、障害物との接触を回避する場合に、一時的に進入する自車両Mの走行可能領域である。また、フリースペースFS1、FS2は、自車両Mを一時的に路上駐車する場合にも利用可能である。道路状況認識部114は、壁LW、RWの位置(それぞれの道路RD1側の面)をフリースペースFS1、FS2の外側の境界位置として認識してもよい。また、道路状況認識部114は、物体OB1と区画線LL、RLとの距離や、物体OB1とフリースペースFS1、FS2との距離を認識してもよい。
【0040】
第1の判定パターンにおいて、判定部120は、物体認識部112および道路状況認識部114の認識結果に基づいて、自車両Mが物体OB1と接触せずに物体OB1の横を走行して通過できるか否か(物体OB1とすれ違うことができるか否か)を判定する。この場合、まず、道路状況認識部114は、区画線LL、RLのうち、物体OB1から遠方(離れた位置)に存在する区画線RLまでの第1距離D1を認識する。第1距離D1は、物体OB1と区画線RLとの最短距離であり、図2において道路RD1の横方向(Y軸方向)の距離である。
【0041】
判定部120は、第1距離D1が所定距離以上である場合に、自車両Mが道路RD1上を走行して物体OB1の横を通過できると判定し、所定距離未満である場合に自車両Mが道路RD1上を走行して物体OB1の横を通過できないと判定する。なお、所定距離は、自車両Mの車幅に応じて設定されてよく、更に車幅に対して所定のマージン幅(プラスα)が付加されてよい。マージン幅は固定値でもよく、自車両Mの速度、道路形状、運転者の過去の運転傾向等に応じて可変に設定されてもよい。上述の道路RD1上を走行するとは、自車両Mが区画線LL、RLを越えずに(フリースペースFS1、FS2に進入せずに)走行することである。
【0042】
また、第1距離D1が所定距離未満である場合、道路状況認識部114は、物体OB1から、区画線RLよりも遠方に存在する壁RW(言い換えると、区画線RLからみて物体OB1とは反対側にあるフリースペースFS2の境界)までの第2距離D2を認識する。そして、判定部120は、認識された第2距離D2が所定距離以上である場合に、自車両Mが区画線RLを越えて(フリースペースFS2に進入して)走行することで、物体OB1の横を通過できると判定し、所定距離未満である場合に自車両Mが物体OB1の横を通過できないと判定する。区画線RLを越えるとは、自車両Mの一部がフリースペースFS2内に進入することであり、区画線RLを跨ぐことや横断することの意味が含まれてよい。
【0043】
判定部120により物体OB1の横を通過できると判定された場合、HMI制御部130は、通過できることを示す情報や、自車両Mが通過すべき経路(推奨経路)K1を示す画像等の情報を生成し、生成した画像をHMI30に出力させる。経路K1は、自車両Mが物体OB1や壁RWと接触せずに走行するための経路である。後述する他の経路K2~K4についても同様である。また、HMI制御部130は、運転者による操舵方向を示す画像や音声または自車両Mの減速を促す画像や音声等を生成し、生成した情報をHMI30に出力させてもよい。
【0044】
また、判定部120により物体OB1の横を通過できないと判定された場合、HMI制御部130は、自車両Mが物体OB1の横を通過できないことを示す情報を生成してHMI30に出力させたり、道路RD1を戻ることを提案する情報を生成してHMI30に出力させたりする。これにより、自車両Mの前方の走行区間に物体OB1が存在する場合に、自車両Mの通過可否や将来の走行内容等の運転支援情報を運転者に提供することで、運転者に対して、より適切な運転支援を行うことができる。また、上述した運転支援情報を提供することで、運転者は物体OB1の横を通過できるか否かを考え続けることなく、道路状況に対応した運転を早期に行うことができる。
【0045】
なお、図2の例において、判定部120は、認識部110によりフリースペースFS2の境界となっている部分が壁RWであると認識されている場合であって、且つ、壁RWの認識度合が閾値未満である場合に、第2距離D2が所定距離以上であっても、自車両Mが区画線RLを越えて物体OB1の横を通過できない(言い換えると、自車両Mは区画線RLを越えて走行できない)と判定してもよい。なお、認識部110は、例えば、物体の高さが所定値以上であり、且つ、道路RD1の延伸方向への物体の長さが所定長以上である場合に、その物体が壁であると認識する。
【0046】
また、上記の認識度合は、物体認識部112により設定される。例えば、カメラ10、レーダ装置12、LIDAR14、およびソナー15のうち一部または全部による検出結果に対するセンサフュージョン処理により、認識した物体の確度を示す数値が出力される場合、物体認識部112は、上記数値が大きいほど認識度合を大きくなるように設定する。また、物体認識部112は、車両センサ40の位置センサから得られる自車両Mの位置情報に基づいて、記憶部140に格納された地図情報142を参照し、地図情報142から得られる自車両Mの周辺の道路状況の情報と、センサフュージョン処理の結果とを比較して、合致度合が大きいほど物体の認識度合が大きくなるように設定してもよい。また、物体認識部112は、物体の境界位置が認識できない場合(例えば、フリースペースが狭く、境界位置が区画線と近すぎて認識できない場合)に、認識度合が小さく(閾値未満)なるように設定してもよい。また、物体認識部112は、自車両Mと認識した物体との距離が離れるほど認識度合が低くなるように設定してもよく、天候や時間帯に応じて認識度合、道路形状、物体の形状等に応じて認識度合を設定してもよい。
【0047】
これにより、壁RWの位置(フリースペースFS2の領域)を誤認識して、実際には区画線RLを越えて走行できない状況で、自車両Mが区画線RLを越えて走行して物体OB1の横を通過できると誤判定することを抑制することができる。例えば、フリースペースFS2の境界が壁である場合は、境界が縁石である場合と比較しても接触時の自車両Mのダメージが大きいため、上述の制御によりより安全な運転支援情報を提供することができる。
【0048】
なお、HMI制御部130は、物体(壁RW)の認識度合が閾値未満であるため、自車両Mが区画線RLを越えて物体OB1の横を通過できないと判定されたことを示す情報をHMI30に出力させてもよい。これにより、自車両Mの運転者は、実際に壁RWの位置を確認して、物体OB1の横を通過できるか否かを判断して運転を行うことができる。なお、上述した認識度合を含めた判定処理は、後述する他の判定パターンにおいても同様に行われてよい。
【0049】
<第2の判定パターン>
次に、第2の判定パターンについて説明する。第2の判定パターンは、第1の判定パターンと比較して、障害物が静的障害物ではなく、対向車両等の動的障害物である点を相違する。図3は、第2の判定パターンについて説明するための図である。図3の例では、上述した道路RD1を走行する自車両Mに対して対向車両(他車両m1)が速度Vm1で接近している場面を示している。
【0050】
第2の判定パターンにおいて、判定部120は、自車両Mが他車両m1と接触せずに他車両m1の横を通過できるか否か(他車両m1とすれ違うことができるか否か)を判定する。この場合、道路状況認識部114は、他車両m1から、左右の区画線LL、RLまでのそれぞれの距離D3、D4を認識する。また、道路状況認識部114は、他車両m1から、左右のフリースペースFS1、FS2の境界までのそれぞれの距離D5、D6を認識してもよい。そして、判定部120は、区画線LL、RLのうち、他車両m1から遠方にある区画線LLと他車両m1との距離D3(以下、「第3距離D3」と称する)が所定距離以上である場合に自車両Mが道路RD1上を走行して他車両m1の横を通過できると判定し、第3距離D3が所定距離未満である場合に自車両Mが道路RD1上を走行して他車両m1の横を通過できないと判定する。ここで、第2の判定パターンにおける所定距離は、自車両Mの車幅に応じて設定されてよく、更に車幅に対して所定のマージン幅が含まれてよい。更に、他車両m1は動的障害物であり、道路RD1の横方向(図中Y軸方向)への移動が可能である。そのため、判定部120は、認識部110により認識された距離D4または距離D6、および/または、他車両m1の種類や速度等に基づいて他車両m1の横方向の移動可能幅を推定し、推定した移動可能幅に応じて所定距離を調整してもよい。例えば、他車両m1とすれ違う場合には、他車両m1が自車両Mを避ける方向(壁RW側の方向)に移動する可能性が高いため、第1の判定パターンにおける所定距離よりも短い距離が設定されてよい。
【0051】
また、第3距離D3が所定距離未満である場合に、判定部120は、他車両m1から、区画線LLよりも遠方に存在する壁LW(言い換えると、区画線LLからみて他車両m1とは反対側にあるフリースペースFS1の境界)までの距離D5(以下、「第4距離D5」と称する)が所定距離以上であるか否かを判定する。判定部120は、第4距離D5が所定距離以上である場合に自車両Mが区画線LLを越えて(フリースペースFS1に進入して)走行することで、他車両m1の横を通過できると判定し、所定距離未満である場合に自車両Mが他車両m1の横を通過できないと判定する。
【0052】
判定部120により他車両m1の横を通過できると判定された場合、HMI制御部130は、通過できることを示す情報や、通過するための経路K2を示す画像等の情報を生成し、生成した情報をHMI30に出力させる。また、判定部120により他車両m1の横を通過できないと判定された場合、HMI制御部130は、自車両Mが物体OB1の横を通過できないことを示す情報をHMI30に出力させたり、道路RD1を戻ることを提案する情報をHMI30に出力させたりする。更に、HMI制御部130は、自車両Mに一時停止を促し、他車両m1に自車両Mの横を通過させるように指示してもよい。また、HMI制御部130は、運転者による操舵方向を示す画像や音声または自車両Mの減速(一時停止を含む)を促す画像や音声等を生成し、生成した情報をHMI30に出力させてもよい。
【0053】
上述した第2の判定パターンによれば、上述した第1の判定パターンと同様の効果を奏する他、動的障害物の移動によってすれ違うことも含めて、より適切な運転支援を行うことができる。
【0054】
なお、判定部120は、自車両Mの前方の障害物が静的障害物や動的障害物かによって判定条件(より具体的には、所定距離)を異ならせてもよい。この場合、判定部120は、例えば、対象が動的障害物(例えば、対向車両等)の場合の所定距離を、対象が静的障害物の場合の所定距離よりも大きくする。したがって、図2に示す静的障害物(物体OB1)と、図3に示す動的障害物(他車両m1)との判定パターンにおいて、障害物の横を通過できると判定されるための距離D3は距離D1よりも大きく、距離D5は距離D2よりも大きくなる。対向車両等の動的障害物の場合には、進路が左右にぶれる可能性があるため、所定距離を大きくすることで運転に余裕を持たせることができる。また、判定部120は、動的障害物である他車両が駐車されていたり、一時的に停止している場合には、静的障害物とみなして他車両の横を通過できるか否かを判定してよい。このような判定処理を行うことで、道路状況や障害物の種類に応じて、より適切な判定を行うことができる。
【0055】
<第3の判定パターン>
次に、第3の判定パターンについて説明する。第3の判定パターンは、自車両Mの左右一方に複数の区画線が認識された場合の判定パターンである。図4は、第3の判定パターンについて説明するための図である。図4の例において、自車両Mが走行する道路RD2は、自車両Mの右側に2つの区画線RL1、RL2が存在し、自車両Mからみて区画線RL2よりも遠方に、フリースペースFS2と、フリースペースFS2の外側の境界である壁RWが区画線RL2に沿って存在している。つまり、道路RD2は、区画線LLとRL1とで区画される第1レーンL1と、区画線RL1とRL2とで区画される第2レーンL2とが存在する。なお、第2レーンL2は、対向車線でもよく、第1レーンL1と同一方向に走行可能な隣接レーンであってもよい。また、道路RD2の自車両Mの左側は、道路RD1と同様に区画線LL、フリースペースFS1、壁LW(フリースペースFS1の境界)が存在する。
【0056】
図4の例において、認識部110は、区画線LL、RL1、RL2の位置や壁LW、RWの位置を認識する。また、物体認識部112は、自車両Mの前方の走行区間に存在する他車両m2の位置や大きさを認識する。
【0057】
第3の判定パターンにおいて、判定部120は、自車両Mが他車両m2に接触せずに、他車両m2の横を通過して走行できるか否かを判定する。この場合、まず、道路状況認識部114は、自車両Mの走行路を区画する左右の区画線LL、RL1のうち、他車両m2から遠方にある区画線RL1までの第5距離D7を認識する。そして、判定部120は、第5距離D7が所定距離以上である場合に自車両Mが第1レーンL1上を走行して通過可能であると判定し、所定距離未満である場合に自車両Mが第1レーンL1上を走行して通過不可能であると判定する。第3の判定パターンに用いられる所定距離は、例えば第1の判定パターンの場合と同様の内容で設定されてよい。
【0058】
また、第5距離D7が所定距離未満である場合、道路状況認識部114は、他車両m2からみて区画線RL1よりも遠方にあるフリースペースFS2の境界までの第6距離D8を認識する。そして、判定部120は、第6距離D8が上限距離以上であるか否かを判定し、上限距離以上である場合に、第6距離D8が所定距離以上であっても、自車両Mが区画線RL1を越えて他車両m2の横を通過できない(自車両Mが区画線RL1を越えて走行できない)と判定する。なお、上述の処理では、第6距離D8に代えて、自車両Mから見て右側の区画線RL1からフリースペースFS1の境界までの距離D9を用いてもよく、第2レーンL2の車線幅(距離D10)を用いてもよい。
【0059】
これにより、例えば、第2レーンL2が対向車線である場合には、自車両Mが区画線RL1を越えて走行することによって第2レーンL2を走行する対向車両と接触することを抑制することができる。また、第2レーンL2が第1レーンL1と同一方向に進行可能な隣接車線である場合には、自車両Mが区画線RL1を越えて走行することによって、第2レーンL2を走行する後続車両(後方車両)と接触することを抑制することができる。また、壁RWは、自車両Mから離れた位置にあるため、第6距離D8を誤認識している可能性もあるため、誤認識による通過可否の誤判定を抑制することができる。
【0060】
HMI制御部130は、第3の判定パターンの結果に基づいて、第1の判定パターンの場合と同様に通過の可否に関する情報(画像や音声)等を生成し、HMI30に出力させる。具体的に歯、HMI制御部130は、第1レーンL1上を走行して他車両M2の横を通過できることを示す情報や、通過するための経路K3を示す画像等の情報を生成し、生成した情報をHMI30に出力させる。また、HMI制御部130は、自車両Mが区画線RL1を越えて走行できない判定された場合に、判定結果を示す情報をHMI30に出力させてもよい。これにより、運転者は、第2レーンL2の道路状況を実際に確認しながら、自己判断で区画線RL1を越えて他車両m2の横を通過するか否かを判断して運転することができる。
【0061】
<第4の判定パターン>
次に、第4の判定パターンについて説明する。図5は、第4の判定パターンについて説明するための図である。第4の判定パターンは、第3の判定パターンと比較して、自車両Mからみて他車両が存在する位置が異なる点で相違する。具体的には、図5に示すように、第1レーンL1の区画線RL1側(自車両Mから見て右側)に他車両m3が一時停止している場面である。このような場面において、他車両m3は右折するために一時停止していると推測することができ、その場合、第2レーンL2は対向車線であると推測できる。したがって、判定部120は、道路状況認識部114により認識される他車両m3の左側の区画線LLと、他車両m3との第7距離D11が所定距離以上であるか否かを判定する。ここで、図5に示す他車両m3は、一時停止している状態であるため、静的障害物として認識される。そのため、第4の判定パターンに用いられる所定距離は、例えば第1の判定パターンの場合と同様の内容で設定されてよい。
【0062】
判定部120は、第7距離D11が所定距離以上である場合に第1レーンL1上を走行して他車両m3の横を通過できると判定し、所定距離未満である場合に他車両m3からフリースペースFS1の境界までの第8距離D12が所定距離以上であるか否かを判定する。判定部120は、第8距離D12が所定距離以上である場合に自車両Mが区画線LLを越えて他車両m3の横を通過できると判定し、所定距離未満である場合に他車両m3の横を通過できないと判定する。
【0063】
判定部120により他車両m3の横を通過できると判定された場合、HMI制御部130は、通過可能であることを示す情報や、通過するための経路K4を示す画像等の情報を生成し、生成した情報をHMI30に出力させる。また、判定部120により他車両m3の横を通過できないと判定された場合、HMI制御部130は、自車両Mが他車両m3の横を通過できないことを示す情報をHMI30に出力させてもよく、近い将来に他車両m3が移動(右折)することが予測されるため、自車両Mを一時的に停止させ、他車両m3の右折後に走行を再開するように促す情報を生成して、HMI30に出力させてもよい。
【0064】
上述した第3および第4の判定パターンによれば、上述した第1の判定パターンと同様の効果を奏する他、複数車線が存在する道路状況においても、前方の障害物の状況に応じて、より適切な運転支援を行うことができる。
【0065】
なお、判定部120は、認識部110により認識された自車両Mの周囲の状況が所定の状況である場合に、上述した判定処理を行わないように制御してもよい(判定OFF制御)。例えば、判定部120は、認識部110により自車両Mが走行する道路を区画する区画線が認識できない、または、区画線の認識度合が閾値未満である場合に、上述した判定処理を行わないように制御する。なお、区画線の認識度合は、道路状況認識部114により設定されるが、設定手法は上述した物体(壁)の認識度合の設定手法と同様であってもよい。
【0066】
また、判定部120は、自車両Mの位置が交差点付近(交差点から所定距離未満)に存在する場合に、自車両Mの運転者がどの方向に移動させるかが特定できないため、上述した判定処理を行わないように制御する。また、判定部120は、自車両Mの走行区間の前方の障害物が、人や自転車等の動作の自由度が高い特定物体である場合には、特定物体の横を通過できるか否かの判定を行わないように制御してもよい。
【0067】
また、判定部120は、自車両Mに接近する他車両の速度が所定速度以上である場合や、自車両Mの進行方向に対して、接近する他車両の進行方向の角度が所定角度範囲内である場合に、上述の判定処理を行わなくてよい。所定角度範囲とは、例えば、90度を中心とした所定の範囲(例えば、約60~120度)である。
【0068】
また、判定部120は、自車両Mの進行方向と、区画線の延伸方向との乖離角度が所定角度以上である場合や、区画線の曲率が所定値以上である場合、天候や時間帯等により物体の認識度合が明らかに低下することが予測される場合、上述した判定処理を行わないように制御してもよい。これにより、自車両Mの状況や、周囲の状況に応じて、より適切な運転支援を行うことができる。
【0069】
[処理フロー]
以下、実施形態の運転支援装置100による一連の処理の流れを、フローチャートを用いて説明する。図6は、実施形態の運転支援装置100による一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図6の処理では、運転支援装置100により実行される各種処理のうち、主に第1、第2の判定パターンによる判定処理と、判定処理結果に基づく運転支援情報の出力処理とを中心として説明する。また、本フローチャートの処理は、例えば、所定のタイミングまたは周期で繰り返し実行されてよい。
【0070】
図6の例において、認識部110は、自車両Mが走行する道路(走行路)の区画線を認識する(ステップS100)。次に、認識部110は、自車両Mの前方に存在する障害物を認識し(ステップS110)、区画線と障害物との距離(第1距離)を認識する(ステップS120)。次に、判定部120は、認識された第1距離が所定距離以上であるか否かを判定する(ステップS130)。第1距離が所定距離以上であると判定した場合、判定部120は、区画線を越えずに障害物の横を通過できると判定する(ステップS140)。
【0071】
また、ステップS130の処理において、第1距離が所定距離以上ではない(所定距離未満である)と判定した場合、認識部110は、障害物に対して区画線より遠方にあるフリースペースの境界と、障害物との距離(第2距離)を認識する(ステップS150)。次に、判定部120は、認識された第2距離が所定距離以上であるか否かを判定する(ステップS160)。第2距離が所定距離以上であると判定した場合、判定部120は、自車両Mが区画線を越えて障害物の横を通過できると判定する(ステップS170)。また、第2距離が所定距離以上ではない(所定距離未満である)と判定した場合、判定部120は、自車両Mが障害物の横を通過できないと判定する(ステップS180)。
【0072】
次に、HMI制御部130は、判定結果(ステップS140、S170、またはS180の処理結果)に基づく運転支援情報を生成して、HMI30に出力させる(ステップS190)。例えば、区画線を越えずに通過できると判定された場合、HMI制御部130は、区画線を越えずに通過できることを示す画像や音声を生成してHMI30(表示部32、スピーカ34)に出力させたり、区画線を越えずに通過可能な推奨経路を示す画像を生成して表示部32に表示させる。また、区画線を越えて通過できると判定した場合、HMI制御部130は、区画線を越えて通過できることを示す画像や音声を生成してHMI30に出力させたり、区画線を越えて通過可能な推奨経路を示す画像を生成して表示部32に表示させる。また、通過できないと判定された場合、HMI制御部130は、通過できないと判定されたことを示す画像や音声を生成してHMI30に出力させたり、警告等の予め決められた情報をHMI30に出力する。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0073】
[変形例]
例えば、実施形態の車両システム1には、自車両Mの操舵または速度のうち、一方または双方を制御して自車両Mの運転制御を実行する運転制御装置(不図示)が搭載されていてもよい。この場合、運転支援装置100は、運転者に運転支援情報を提供することに代えて(または加えて)、上述の判定結果に基づいて自車両Mが経路(推奨経路)K1~K4上を走行するように運転制御を実行させてもよく、動的障害物が移動するまで自車両Mを一時停止するように自動運転制御システムを制御してもよい。
【0074】
また、実施形態において、自車両Mの前方に複数の障害物が存在する場合に、障害物ごとに上述した判定パターンによる判定を行ってもよく、障害物に優先度を設けて、優先度の高い順または優先度が閾値以上の障害物を対象に上述した判定を行ってもよい。この場合、優先度は、自車両Mに近いほど高くしてもよく、障害物が大きいほど高くしてもよい。また、優先度は、動的障害物の方が、静的障害物よりも高くしてもよく、障害物の種類に応じて設定してもよい。また、複数の障害物同士の距離が所定距離未満である場合に、複数の障害物を一つの障害物とみなして判定を行ってもよい。
【0075】
以上の通り説明した実施形態によれば、運転支援装置100において、自車両Mの周辺の状況を認識する認識部110と、認識部110の認識結果に基づいて、自車両Mの前方の走行区間の通過可否を判定する判定部120と、判定部120の判定結果に基づく情報をHMI30(出力部の一例)に出力させるHMI制御部130(出力制御部の一例)と、を備え、判定部120は、認識部110により認識された自車両Mの走行路を区画する区画線と自車両Mの前方の障害物との間の第1距離が所定距離以上である場合に、自車両Mが障害物の横を通過できると判定することにより、車両の運転者に対して、より適切な運転支援を行うことができる。また、実施形態によれば、例えば、狭路走行時において、自車両Mの前方に存在する障害物に対する通過の可否を道路状況に基づいて適切に判定することができる。したがって、実施形態によれば、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0076】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)、
自車両の周辺の状況を認識し、
認識した結果に基づいて、前記自車両の前方の走行区間の通過可否を判定し、
判定した結果に基づく情報を出力部に出力させ、
認識した前記自車両の走行路を区画する区画線と前記自車両の前方の障害物との間の第1距離が所定距離以上である場合に、前記自車両が前記障害物の横を通過できると判定する、
運転支援装置。
【0077】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 車両システム
10 カメラ
12 レーダ装置
14 LIDAR
15 ソナー
16 物体認識装置
20 通信装置
30 HMI
40 車両センサ
100 運転支援装置
110 認識部
112 物体認識部
114 道路状況認識部
120 判定部
130 HMI制御部
140 記憶部
M 自車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6