IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特開2024-130739制御装置、制御方法、およびプログラム
<>
  • 特開-制御装置、制御方法、およびプログラム 図1
  • 特開-制御装置、制御方法、およびプログラム 図2
  • 特開-制御装置、制御方法、およびプログラム 図3
  • 特開-制御装置、制御方法、およびプログラム 図4
  • 特開-制御装置、制御方法、およびプログラム 図5
  • 特開-制御装置、制御方法、およびプログラム 図6
  • 特開-制御装置、制御方法、およびプログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130739
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20240920BHJP
   B60W 30/045 20120101ALI20240920BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240920BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W30/045
B60W40/04
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040630
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 一郎
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕司
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241BA17
3D241BA32
3D241BB17
3D241DC25Z
5H181AA01
5H181AA03
5H181AA05
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF07
5H181FF22
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】移動体が旋回を伴う走路を移動する際のパスを、より適切に生成することができる制御装置、制御方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】移動体の周辺状況を認識する認識部と、前記周辺状況に基づいて前記移動体の基準位置が通過すべきパスを生成するパス生成部と、前記パスから左右それぞれにオフセットさせた位置を移動体の通過領域の境界線として設定する通過領域設定部と、前記移動体の通過領域と前記周辺状況に基づいて前記パスを修正する修正部と、前記修正部によって修正がなされたパスに沿って前記移動体が移動するように前記移動体に設けられた駆動装置を制御する制御部と、を備え、前記通過領域設定部は、前記パスが旋回部を含む場合、旋回外側のオフセット量を旋回内側のオフセット量よりも大きくする、制御装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周辺状況を認識する認識部と、
前記周辺状況に基づいて前記移動体の基準位置が通過すべきパスを生成するパス生成部と、
前記パスから左右それぞれにオフセットさせた位置を移動体の通過領域の境界線として設定する通過領域設定部と、
前記移動体の通過領域と前記周辺状況に基づいて前記パスを修正する修正部と、
前記修正部によって修正がなされたパスに沿って前記移動体が移動するように前記移動体に設けられた駆動装置を制御する制御部と、
を備え、
前記通過領域設定部は、前記パスが旋回部を含む場合、旋回外側のオフセット量を旋回内側のオフセット量よりも大きくする、
制御装置。
【請求項2】
前記パス生成部は、所定距離ごとの到達点を連ねて前記パスを生成し、
前記通過領域設定部は、各到達点に前記移動体の基準位置が到達した時点の、旋回外側の前輪の位置に基づいて、前記パスを旋回外側にオフセットさせる量を決定する、
請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記パス生成部は、所定距離ごとの到達点を連ねて前記パスを生成し、
前記基準位置は、前記移動体の後輪軸中心であり、
前記通過領域設定部は、各到達点に前記移動体の基準位置が到達した時点の、旋回外側の前輪の位置から、前記移動体の基準位置を通り前記移動体の側方に延伸する基準線と前記パスに垂直な線との交点として求められる旋回中心までの距離に基づいて、前記パスを旋回外側にオフセットさせる量を決定する、
請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記通過領域設定部は、前記修正部が修正したパスから左右それぞれにオフセットした位置を移動体の通過領域の境界線として再設定し、
前記修正部は、前記再設定された前記移動体の通過領域と前記周辺状況に基づいて前記パスを再度修正する、
ことを繰り返し実行する、
請求項1記載の制御装置。
【請求項5】
制御装置を用いて実行される制御方法であって、
移動体の周辺状況を認識することと、
前記周辺状況に基づいて前記移動体の基準位置が通過すべきパスを生成することと、
前記パスから左右それぞれにオフセットさせた位置を移動体の通過領域の境界線として設定することと、
前記移動体の通過領域と前記周辺状況に基づいて前記パスを修正することと、
前記修正がなされたパスに沿って前記移動体が移動するように前記移動体に設けられた駆動装置を制御することと、
を備え、
前記通過領域の境界線を設定することは、前記パスが旋回部を含む場合、旋回外側のオフセット量を旋回内側のオフセット量よりも大きくすることを含む、
制御方法。
【請求項6】
制御装置のプロセッサに、
移動体の周辺状況を認識することと、
前記周辺状況に基づいて前記移動体の基準位置が通過すべきパスを生成することと、
前記パスから左右それぞれにオフセットさせた位置を移動体の通過領域の境界線として設定することと、
前記移動体の通過領域と前記周辺状況に基づいて前記パスを修正することと、
前記修正がなされたパスに沿って前記移動体が移動するように前記移動体に設けられた駆動装置を制御することと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記通過領域の境界線を設定することは、前記パスが旋回部を含む場合、旋回外側のオフセット量を旋回内側のオフセット量よりも大きくすることを含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体が走行する経路の走行軌道を生成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、自車両が走行する経路の幅に応じて、自車両の走行軌道および速度を決定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/116265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、移動体が旋回する際の前輪の膨らみによって移動体の通過領域が変化することについて十分に検討されていなかった。このため、移動体がクランクやS字カーブなどの旋回を伴う走路を移動する際のパスを適切に生成することができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、移動体が旋回を伴う走路を移動する際のパスを、より適切に生成することができる制御装置、制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る制御装置、制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る制御装置は、移動体の周辺状況を認識する認識部と、前記周辺状況に基づいて前記移動体の基準位置が通過すべきパスを生成するパス生成部と、前記パスから左右それぞれにオフセットさせた位置を移動体の通過領域の境界線として設定する通過領域設定部と、前記移動体の通過領域と前記周辺状況に基づいて前記パスを修正する修正部と、前記修正部によって修正がなされたパスに沿って前記移動体が移動するように前記移動体に設けられた駆動装置を制御する制御部と、を備え、前記通過領域設定部は、前記パスが旋回部を含む場合、旋回外側のオフセット量を旋回内側のオフセット量よりも大きくするものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記パス生成部は、所定距離ごとの到達点を連ねて前記パスを生成し、前記通過領域設定部は、各到達点に前記移動体の基準位置が到達した時点の、旋回外側の前輪の位置に基づいて、前記パスを旋回外側にオフセットさせる量を決定するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記パス生成部は、所定距離ごとの到達点を連ねて前記パスを生成し、前記基準位置は、前記移動体の後輪軸中心であり、前記通過領域設定部は、各到達点に前記移動体の基準位置が到達した時点の、旋回外側の前輪の位置から、前記移動体の基準位置を通り前記移動体の側方に延伸する基準線と前記パスに垂直な線との交点として求められる旋回中心までの距離に基づいて、前記パスを旋回外側にオフセットさせる量を決定するものである。
【0009】
(4):上記(1)の態様において、前記通過領域設定部は、前記修正部が修正したパスから左右それぞれにオフセットした位置を移動体の通過領域の境界線として再設定し、前記修正部は、前記再設定された前記移動体の通過領域と前記周辺状況に基づいて前記パスを再度修正する、ことを繰り返し実行するものである。
【0010】
(5):本発明の他の態様に係る制御方法は、制御装置を用いて実行される制御方法であって、移動体の周辺状況を認識することと、前記周辺状況に基づいて前記移動体の基準位置が通過すべきパスを生成することと、前記パスから左右それぞれにオフセットさせた位置を移動体の通過領域の境界線として設定することと、前記移動体の通過領域と前記周辺状況に基づいて前記パスを修正することと、前記修正がなされたパスに沿って前記移動体が移動するように前記移動体に設けられた駆動装置を制御することと、を備え、前記通過領域の境界線を設定することは、前記パスが旋回部を含む場合、旋回外側のオフセット量を旋回内側のオフセット量よりも大きくすることを含むものである。
【0011】
(6):本発明の他の態様に係るプログラムは、制御装置のプロセッサに、移動体の周辺状況を認識することと、前記周辺状況に基づいて前記移動体の基準位置が通過すべきパスを生成することと、前記パスから左右それぞれにオフセットさせた位置を移動体の通過領域の境界線として設定することと、前記移動体の通過領域と前記周辺状況に基づいて前記パスを修正することと、前記修正がなされたパスに沿って前記移動体が移動するように前記移動体に設けられた駆動装置を制御することと、を実行させるためのプログラムであって、前記通過領域の境界線を設定することは、前記パスが旋回部を含む場合、旋回外側のオフセット量を旋回内側のオフセット量よりも大きくすることを含むものである。
【発明の効果】
【0012】
(1)~(6)の態様によれば、移動体が旋回を伴う走路を移動する際のパスを、より適切に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システムの構成図である。
図2】第1制御部および第2制御部の機能構成図である。
図3】リスク設定部が設定するリスクについて説明するための図である。
図4図3における4-4線におけるリスクの値を示している。
図5】通過領域設定部による処理の内容について説明するための図である。
図6】通過領域設定部の計算手法の一例について説明するための図である。
図7】旋回方向が途中で切り替わる場合の通過領域の変化を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。以下の説明において、移動体の代表例として車両を挙げるが、移動体は車両に限らず、マイクロモビリティやロボット(車輪を有するもの、多足歩行するものなどを含む)など、自律移動するあらゆる移動体に適用可能である。
【0015】
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システムの構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0016】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0017】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0018】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0019】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0020】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0021】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0022】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0023】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0024】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0025】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。
推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0026】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0027】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0028】
自動運転制御装置100は、車両制御装置の一例である。自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0029】
図2は、第1制御部および第2制御部の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0030】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物標の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物標とは、静止している物体と、移動している物体との双方を含むものである。物標の位置は、例えば、自車両Mの代表点を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。
【0031】
本実施形態において、認識部130は、カメラ10によって撮像された、自車両Mの周辺状況を表す画像に少なくとも基づいて、自車両Mが走行可能な領域の境界線(例えば、道路区画線、路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなど)や、自車両Mが接触する可能性のある物体(例えば、歩行者や他車両など)を認識するものとする。認識部130は、左右の道路区画線を、例えば、複数の点群データとして認識し、左右の道路区画線を構成する点群の間の距離を算出することによって、幅員を認識する。
【0032】
認識部130は、リスク設定部132を備える。リスク設定部132は、認識部130により認識された物体に近いほど否定的な値になる指標値であるリスクRを、自車両Mの進行方向側の走路平面上に設定する。リスクRは、自車両Mが進入を避けるべき度合いを表す指標値である。走路平面とは、仮想的に上空から見た平面であり、地図と同様のものである。図3は、リスク設定部132が設定するリスクについて説明するための図である。図中、R(O)は障害物(例えば駐車車両)OBに対応するリスクである。リスクR(O)は、障害物OBに近い程大きくなり(例えば、障害物OBの中心に近い程大きくなり)、障害物OBから離れるのに連れて小さくなり、ゼロに到達する。図中、R(B)は走路境界に対応するリスクである。リスクR(B)は、例えば、自車両Mが居る車線L1の中心線CLに近い程小さくなり、左側の走路境界に近づく程大きくなり、右側の走路境界に近づく程大きくなる。但し、図示する場面では車線L2に車線変更可能であるため、右側の走路境界におけるリスクR(B)の値は左側の走路境界におけるリスクR(B)の値よりも小さく設定されてもよい。
【0033】
図4は、図3における4-4線におけるリスクの値を示している。リスク設定部132は、このようにリスクR(O)、R(B)を計算し、各地点についてリスクR(O)とリスクR(B)を加算して合成リスクとする。以下、この合成リスクを単にリスクRと称する。
【0034】
なお、リスクRの分布を示すリスクマップは、例えば0.1秒後、0.2秒後、…というように将来の各時点に対応したものとして時系列に作成される。障害物OBの中には、車両、自転車、歩行者といった交通参加者が含まれ、交通参加者に関しては、時点によって位置が変わるものであるため、既知の技術によって将来の位置がリスク設定部132により予測され、将来の各時点に対応するリスクが計算される。後にリスクRの値参照される場合、何秒後の軌道点に対応するリスクRを取得するかに応じて、リスクマップが選択される。これについては本発明の中核部分では無いため詳細な説明を省略する。リスク設定部132により設定されたリスクRの分布は、「移動体の周辺状況」の一例である。
【0035】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行するパス(目標パス)を生成する。行動計画生成部140は、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行するパスを、リスクRが小さい地点を通るように生成する。パスは、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、パスは、自車両Mの基準位置(例えば、前端部中央、重心、後輪軸中心などであり、以下の説明では後輪軸中心であるものとする)が到達すべき地点(到達点)を順に並べたものとして表現される。到達点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、パスの一部として生成される。また、到達点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は到達点の間隔で表現される。この詳細については後述する。
【0036】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成されたパスを、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0037】
第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成されたパス(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶されたパスに付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶されたパスの曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、パスからの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0038】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0039】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0040】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。
電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0041】
以下、パスの生成手法について説明する。行動計画生成部140は、例えば、初期パス生成部142と、通過領域設定部144と、パス修正部146とを備える。
【0042】
初期パス生成部142は、なるべく走路(車線)の中央に沿いつつ、リスクが第1所定値以上の地点を通らないように初期パスを生成する。初期パス生成部142は、例えば、初期パスを構成する到達点におけるリスクの総和が閾値未満となるまで初期パスを探索する。この際に、初期パス生成部142は、ランダム変数を用いた確率的な勾配法の一種である同時摂動最適化(SPSA:Simultaneous Perturbation Stochastic Approximation)を用いて初期パスの探索を行っても良い。初期パス生成部142は、所定距離ごとの到達点を連ねて初期パスを生成する。
【0043】
通過領域設定部144は、初期パスから左右それぞれにオフセットさせた位置(平行移動させた位置)を、移動体の通過領域の境界線として設定する。また、通過領域設定部144は、パス修正部146によって修正されたパスがフィードバックされた場合も同様に、修正されたパスから左右それぞれにオフセットさせた位置を移動体の通過領域の境界線として設定する場合がある。以下、これらを区別せずに「パスを修正する」と称する。
【0044】
図5は、通過領域設定部144による処理の内容について説明するための図である。図中、AP(k)は、計算時点(t=k)の自車両Mの基準位置(=前回以前のサイクルで設定された到達点)であり、AP(k-1)は1サイクル前の到達点、AP(k+1)は1サイクル後の到達点である。以下、到達点の間のベクトル線分を単位パスと称する。Pth(k-1)は到達点AP(k-1)から到達点AP(k)に向かう単位パス、Pth(k)は到達点AP(k)から到達点AP(k+1)に向かう単位パス、Pth(k+1)は到達点AP(k+1)から到達点AP(k+2)に向かう単位パスである。通過領域設定部144は、例えば、単位パスPth(k)を左側にオフセットさせた左オフセットパスL-Pth(k)と、単位パスPth(k)を右側にオフセットさせた右オフセットパスR-Pth(k)とを設定し、同様に単位パスPth(k+1)を左側にオフセットさせた左オフセットパスL-Pth(k+1)と、単位パスPth(k+1)を右側にオフセットさせた右オフセットパスR-Pth(k+1)とを設定し、順次このような処理を行う。そして、通過領域設定部144は、左オフセットパスL-Pth(k)と右オフセットパスR-Pth(k)により区画される矩形領域、左オフセットパスL-Pth(k+1)と右オフセットパスR-Pth(k+1)により区画される矩形領域、更には以降の制御サイクルに関して設定される矩形領域を適宜連ねることで、自車両Mの通過領域PAを設定する。矩形領域の継ぎ目において間隔が空いたりすることが想定されるが、頂点同士を繋ぐなどの補間処理が行われてよい。
【0045】
ここで、単位パスPth(k)は単位パスPth(k-1)に対して右方向に傾きをもっている。同様に単位パスPth(k+1)は単位パスPth(k)に対して右方向に傾きをもっている。このため、通過領域設定部144は、制御時刻k、k+1においてパスが右方向に旋回している、つまりパスが旋回部を含んでいると判断する。このとき、通過領域設定部144は、旋回外側である左側に相当する左オフセットパスL-Pth(k)の単位パスPth(k)からのオフセット量を、旋回内側である右オフセットパスR-Pth(k)の単位パスPth(k)からのオフセット量よりも大きくし、旋回外側である左オフセットパスL-Pth(k+1)の単位パスPth(k+1)からのオフセット量を、旋回内側である右オフセットパスR-Pth(k+1)の単位パスPth(k+1)からのオフセット量よりも大きくする。これによって、通常であれば最も旋回に対して外側を通る旋回外側の前輪の軌跡に近い位置を、通過領域の境界線とすることができる。
【0046】
以下、上記の処理を行うための具体的な計算手法の一例について説明する。図6は、通過領域設定部144の計算手法の一例について説明するための図である。通過領域設定部144は、各到達点に自車両Mの基準位置が到達した時点の、旋回外側の前輪の位置に基づいて、パスを旋回外側にオフセットさせる量を決定する。より具体的に、通過領域設定部144は、各到達点に自車両Mの基準位置が到達した時点の(図ではt=k)、旋回外側の前輪の位置Rp-OF(k)から、自車両Mの後輪軸を旋回内側に仮想的に延伸させた基準線(基準位置を通り自車両Mの側方に延伸する基準線)Rl1(k)と、単位パスPth(k)の垂直二等分線Rl2(k)との交点として求められる旋回中心C(k)までの距離(Rl3(k)の距離)に基づいて、単位パスを旋回外側にオフセットさせる量を決定する。通過領域設定部144は、Rl3(k)の距離から、垂直二等分線Rl2(k)の距離を差し引いた距離を、パスを旋回外側にオフセットさせる量O-O(k)とする。一方、通過領域設定部144は、パスを旋回内側にオフセットさせる量O-I(k)については、自車両Mのトレッド幅の半分をオフセットさせる量として決定してよい。
【0047】
Rl3(k)の距離とRl2(k)の距離は、三平方の定理から以下の式(1)、(2)により求めることができる。そして、パスを旋回外側にオフセットさせる量O-O(k)は式(3)により求めることができる。
【0048】
Rl3(k)=√[(自車両Mのホイールベース)+{(自車両Mのトレッド幅)/2+Rl1(k)}] …(1)
Rl2(k)=√[{Rl1(k)}-{(単位パスの長さ)/2}] …(2)
O-O(k)=Rl3(k)-Rl2(k) …(3)
【0049】
図7は、旋回方向が途中で切り替わる場合の通過領域PAの変化を例示した図である。図示する例では、到達点AP(k+2)においてパスが右旋回から左旋回に切り替わっている。この結果、到達点AP(k+2)よりも先の通過領域PAは、単位パスPth(k+2)からの右側へのオフセット量が左側へのオフセット量よりも大きくなるように設定される。また、このときの計算上の旋回中心C(k+2)は、自車両の左側にあるものとして計算される。
【0050】
パス修正部146は、例えば、上記のように設定された通過領域PAに含まれる位置について、改めてリスクを取得し、リスクが第2所定値以上の位置が存在する場合、当該箇所の単位パスを基点を中心に回転させることで通過領域PAを変更し、リスクが第2所定値以上の位置が無くなるようにする。第2所定値は、初期パス生成部142が参照する第1所定値よりも大きい値であってよい。
【0051】
通過領域設定部144およびパス修正部146は、上記説明した処理を、例えば、通過領域PAにリスクが第2所定値以上の位置が存在しなくなるまで繰り返し実行する。これによって、自車両Mの全ての箇所が、リスクが第2所定値未満の領域を通過するように自車両Mの軌跡が制御される。この結果、自動運転制御装置100は、自車両Mが旋回を伴う走路を移動する際のパスを、より適切に生成することができる。
【0052】
上記の説明において、自動運転制御装置100(制御装置)は、自車両M(移動体)に搭載されるものとしたが、これに限らず、移動体から離れた場所に設置され、通信によってカメラ10、レーダ装置12、LIDAR14、物体認識装置16などの出力データを取得すると共に、生成したパスの情報を第2制御部160に相当する機能部に送信することで、移動体を遠隔制御するものであってもよい。
【0053】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
移動体の周辺状況を認識することと、
前記周辺状況に基づいて前記移動体の基準位置が通過すべきパスを生成することと、
前記パスから左右それぞれにオフセットさせた位置を移動体の通過領域の境界線として設定することと、
前記移動体の通過領域と前記周辺状況に基づいて前記パスを修正することと、
前記修正部によって修正がなされたパスに沿って前記移動体が移動するように前記移動体に設けられた駆動装置を制御することと、
を実行し、
前記通過領域の境界線を設定することは、前記初期パスが旋回部を含む場合、旋回外側のオフセット量を旋回内側のオフセット量よりも大きくすることを含む、
制御装置。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0055】
100 自動運転制御装置
120 第1制御部
130 認識部
132 リスク設定部
140 行動計画生成部
142 初期パス生成部
144 通過領域設定部
146 パス修正部
160 第2制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7