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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130752
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】走行可否判定装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240920BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20240920BHJP
   B60L 7/22 20060101ALI20240920BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240920BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20240920BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20240920BHJP
   B60L 58/40 20190101ALI20240920BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240920BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240920BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20240920BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20240920BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B60L7/14
B60L7/22 Z
B60L50/60
B60L50/75
B60L58/10
B60L58/40
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04313
H01M8/04694
H01M8/04225
H01M8/04302
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040645
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】波間 惇
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BA00
5H125CB01
5H125CB02
5H125CD02
5H125DD05
5H125EE32
5H125EE51
5H127AB04
5H127AB29
5H127DA01
5H127DB41
5H127DC45
5H127DC99
(57)【要約】
【課題】燃料電池自動車の走行可否をより適切に判定し、燃料電池自動車の走行性能を報知する。
【解決手段】状態判定部21は、動力部10が通常性能状態であるか、通常性能状態よりも走行性能が低い制限性能状態であるか、及び制限性能状態よりも走行性能が低い低性能状態であるかを判定する。走行可否判定部22は、通常性能状態又は制限性能状態であると判定された場合、燃料電池自動車Vの走行が可能であると判定する。通知制御部23は、制限性能状態であると判定され且つ走行が可能であると判定された場合、燃料電池自動車Vの走行性能が制限された状態であることを示す制限状態通知を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、燃料電池と、前記バッテリ及び前記燃料電池の少なくともいずれかの電力によって作動するモータとを備える動力部の動力によって走行する燃料電池自動車において、前記燃料電池自動車の走行が可能であるか否かを判定する走行可否判定装置であって、
前記動力部の状態に基づいて、前記動力部が発揮可能な前記燃料電池自動車の走行性能の状態が、前記燃料電池自動車の通常走行が可能な予め定められた通常性能状態であるか、前記通常性能状態よりも走行性能が低い制限性能状態であるか、及び前記制限性能状態よりも走行性能が低い低性能状態であるかを判定する状態判定部と、
前記状態判定部によって前記通常性能状態又は前記制限性能状態であると判定された場合、前記燃料電池自動車の走行が可能であると判定する走行可否判定部と、
前記状態判定部によって前記制限性能状態であると判定され且つ前記走行可否判定部によって走行が可能であると判定された場合、前記燃料電池自動車の走行性能が制限された状態であることを示す制限状態通知を通知部を通じて行う通知制御部と、を備える、走行可否判定装置。
【請求項2】
前記制限性能状態には、第1制限性能状態と、前記第1制限性能状態よりも走行性能が低い第2制限性能状態とが含まれており、
前記状態判定部は、前記動力部が発揮可能な走行性能の状態が、前記通常性能状態であるか、前記第1制限性能状態であるか、前記第2制限性能状態であるか、及び前記低性能状態であるかを判定し、
前記通知制御部は、
前記状態判定部によって前記第1制限性能状態であると判定され且つ前記走行可否判定部によって走行が可能であると判定された場合、前記制限状態通知として第1制限状態通知を前記通知部を通じて行い、
前記状態判定部によって前記第2制限性能状態であると判定され且つ前記走行可否判定部によって走行が可能であると判定された場合、前記制限状態通知として、前記第1制限性能状態よりも前記燃料電池自動車の走行性能が低いことを示す第2制限状態通知を前記通知部を通じて行う、請求項1に記載の走行可否判定装置。
【請求項3】
前記第2制限状態通知は、前記第1制限状態通知よりも、前記燃料電池自動車の走行性能が制限された状態であることをより強調した通知である、請求項2に記載の走行可否判定装置。
【請求項4】
前記走行性能は、前記燃料電池自動車の駆動性能又は制動性能である、あるいは、前記燃料電池自動車の前記駆動性能及び前記制動性能の両方を含み、
前記制動性能は、前記モータを回生ブレーキとして用いた場合に前記モータによって発電された電力を前記バッテリ及び前記燃料電池自動車に搭載された制動時電力吸収装置の少なくともいずれかによって吸収するときの電力吸収性能を示す、請求項1に記載の走行可否判定装置。
【請求項5】
前記通知制御部は、前記走行可否判定部によって走行が可能であると判定された場合、前記燃料電池自動車が走行可能な状態であることを示す走行可能通知を前記通知部を通じて行う、請求項1に記載の走行可否判定装置。
【請求項6】
前記走行可否判定部は、
前記燃料電池の状態が、前記燃料電池の起動に予め設定された時間以上要する起動遅延状態であるか否かを判定し、
前記燃料電池の状態が前記起動遅延状態である場合、前記状態判定部によって前記制限性能状態であると判定されても、前記燃料電池自動車の走行が可能であると判定しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の走行可否判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池自動車の走行可否を判定する走行可否判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ及び燃料電池の電力によって作動するモータを備える燃料電池自動車がある。一般に、燃料電池は起動に時間が掛かる。このため、例えば特許文献1には、燃料電池自動車に搭載された燃料電池が所定の出力以上で発電可能な状態となったことを報知する報知手段について記載されている。また、特許文献2には、燃料電池の状態を表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-218165号公報
【特許文献2】特開2005-297962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、燃料電池自動車は、燃料電池が発電を行っていなくても、バッテリの電力のみによって走行することができる。この場合、燃料電池自動車によっては、バッテリの電力のみでは十分なモータの出力を得ることができないことがある。このような状態で燃料電池自動車を走行させると、燃料電池自動車の加速力の不足等により、周囲の車両の走行の妨げとなるおそれがある。
【0005】
このため、本開示は、燃料電池自動車の走行可否をより適切に判定し、燃料電池自動車の走行性能を通知可能な走行可否判定装置について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、[1]「バッテリと、燃料電池と、前記バッテリ及び前記燃料電池の少なくともいずれかの電力によって作動するモータとを備える動力部の動力によって走行する燃料電池自動車において、前記燃料電池自動車の走行が可能であるか否かを判定する走行可否判定装置であって、前記動力部の状態に基づいて、前記動力部が発揮可能な前記燃料電池自動車の走行性能の状態が、前記燃料電池自動車の通常走行が可能な予め定められた通常性能状態であるか、前記通常性能状態よりも走行性能が低い制限性能状態であるか、及び前記制限性能状態よりも走行性能が低い低性能状態であるかを判定する状態判定部と、前記状態判定部によって前記通常性能状態又は前記制限性能状態であると判定された場合、前記燃料電池自動車の走行が可能であると判定する走行可否判定部と、前記状態判定部によって前記制限性能状態であると判定され且つ前記走行可否判定部によって走行が可能であると判定された場合、前記燃料電池自動車の走行性能が制限された状態であることを示す制限状態通知を通知部を通じて行う通知制御部と、を備える、走行可否判定装置。」である。
【0007】
この走行可否判定装置は、通常性能状態よりも走行性能が低い制限性能状態であっても、走行が可能と判定する。これにより、例えば、燃料電池の起動が完了していない状態であっても、燃料電池の起動が完了することを見越して、燃料電池自動車の走行が可能となる。但し、走行可否判定装置は、制限性能状態で走行が可能と判定した場合には、走行性能が制限された状態であることを示す制限状態通知を通知部を通じて行う。これにより、燃料電池自動車のドライバは、燃料電池自動車の走行が可能であるものの、走行性能が制限された状態であることを認識することができる。そして、ドライバは、制限された走行性能に応じた運転操作を行うことができる。このように、走行可否判定装置は、燃料電池自動車の走行可否をより適切に判定し、燃料電池自動車の走行性能を通知することができる。
【0008】
本開示の走行可否判定装置は、[2]「前記制限性能状態には、第1制限性能状態と、前記第1制限性能状態よりも走行性能が低い第2制限性能状態とが含まれており、前記状態判定部は、前記動力部が発揮可能な走行性能の状態が、前記通常性能状態であるか、前記第1制限性能状態であるか、前記第2制限性能状態であるか、及び前記低性能状態であるかを判定し、前記通知制御部は、前記状態判定部によって前記第1制限性能状態であると判定され且つ前記走行可否判定部によって走行が可能であると判定された場合、前記制限状態通知として第1制限状態通知を前記通知部を通じて行い、前記状態判定部によって前記第2制限性能状態であると判定され且つ前記走行可否判定部によって走行が可能であると判定された場合、前記制限状態通知として、前記第1制限性能状態よりも前記燃料電池自動車の走行性能が低いことを示す第2制限状態通知を前記通知部を通じて行う、上記[1]に記載の走行可否判定装置。」であってもよい。この場合、走行可否判定装置は、制限性能状態であっても制限性能状態における走行性能に応じて、第1制限状態通知又は第2制限状態通知を行うことができる。これにより、ドライバは、燃料電池自動車の走行が可能であるものの、走行性能がどの程度制限された状態であるかを認識することができる。
【0009】
本開示の走行可否判定装置は、[3]「前記第2制限状態通知は、前記第1制限状態通知よりも、前記燃料電池自動車の走行性能が制限された状態であることをより強調した通知である、上記[2]に記載の走行可否判定装置。」であってもよい。この場合、ドライバは、第1制限状態通知と第2制限状態通知とを、容易に区別して認識することができる。
【0010】
本開示の走行可否判定装置は、[4]「前記走行性能は、前記燃料電池自動車の駆動性能又は制動性能である、あるいは、前記燃料電池自動車の前記駆動性能及び前記制動性能の両方を含み、前記制動性能は、前記モータを回生ブレーキとして用いた場合に前記モータによって発電された電力を前記バッテリ及び前記燃料電池自動車に搭載された制動時電力吸収装置の少なくともいずれかによって吸収するときの電力吸収性能を示す、上記[1]~[3]のいずれかに記載の走行可否判定装置。」であってもよい。この場合、走行可否判定装置は、動力部が発揮可能な駆動性能及び/又は制動性能に基づいて、燃料電池自動車の走行の可否を判定することができる。
【0011】
本開示の走行可否判定装置は、[5]「前記通知制御部は、前記走行可否判定部によって走行が可能であると判定された場合、前記燃料電池自動車が走行可能な状態であることを示す走行可能通知を前記通知部を通じて行う、上記[1]~[4]のいずれかに記載の走行可否判定装置。」であってもよい。この場合、ドライバは、燃料電池自動車が走行可能な状態であることを容易に認識することができる。
【0012】
本開示の走行可否判定装置は、[6]「前記走行可否判定部は、前記燃料電池の状態が、前記燃料電池の起動に予め設定された時間以上要する起動遅延状態であるか否かを判定し、前記燃料電池の状態が前記起動遅延状態である場合、前記状態判定部によって前記制限性能状態であると判定されても、前記燃料電池自動車の走行が可能であると判定しない、上記[1]~[5]のいずれかに記載の走行可否判定装置。」であってもよい。これにより、走行可否判定装置は、燃料電池が起動遅延状態である場合、動力部が通常性能状態となるまで燃料電池自動車の走行が可能であると判定しない。つまり、走行可否判定装置は、例えば、燃料電池の起動が完了していない状態のときに起動が完了することを見越して、燃料電池自動車が走行可能であると判定することを行わない。このように、走行可否判定装置は、燃料電池の状態に基づいて、燃料電池自動車の走行可否をより適切に判定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、燃料電池自動車の走行可否をより適切に判定し、燃料電池自動車の走行性能を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る走行可否判定装置が搭載された燃料電池自動車の一例を示すブロック図である。
図2図2は、動力部の各性能状態と駆動性能及び制動性能との関係、並びに、動力部の各性能状態と通知例を示す表である。
図3図3は、動力部の起動開始後における駆動性能及び制動性能の時間的変化と、動力部の各状態との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示される走行可否判定装置1は、燃料電池自動車Vの走行が可能であるか否かを判定する。この判定は、燃料電池自動車Vの始動時(走行開始時)に行われる。ここで、燃料電池自動車Vは、電力源としてバッテリ11と燃料電池12とを搭載している。燃料電池自動車Vは、バッテリ11及び燃料電池12を含む動力部10の動力によって走行する。例えば、燃料電池自動車Vは、商用車等の大型の車両であってもよい。
【0017】
詳細には、動力部10は、バッテリ11、燃料電池12、ブレーキレジスタ(制動時電力吸収装置)13、電力変換部14、及びモータ15を備えている。電力変換部14は、バッテリ11が蓄える電力及び燃料電池12が発電した電力をモータ15の駆動に適した電力に変換し、モータ15に供給する。モータ15は、供給された電力によって回転力を生成し、燃料電池自動車Vのタイヤを駆動する。モータ15は、バッテリ11及び燃料電池12の少なくともいずれかの電力によって作動する。
【0018】
ここで、モータ15は、燃料電池自動車Vを減速させる回生ブレーキとして用いられ得る。この場合、電力変換部14は、モータ15が発電した電力を、バッテリ11の充電に適した電力に変換し、及びブレーキレジスタ13に供給するのに適した電力に変換し、バッテリ11及びブレーキレジスタ13にそれぞれ供給する。電力変換部14から供給された電力によってバッテリ11の充電が行われる。ブレーキレジスタ13は、モータ15が回生ブレーキとして用いられるときにモータ15が発電した電力を消費する。ここでは、ブレーキレジスタ13は、電力変換部14から供給された電力を熱に変換することにより、電力を消費する。このように、バッテリ11及びブレーキレジスタ13は、モータ15が回生ブレーキとして用いられたときに発電された電力を吸収する。
【0019】
走行可否判定装置1は、判定ECU[Electronic Control Unit]2、及び通知部3を備えている。通知部3は、燃料電池自動車Vのドライバに対して各種の情報を通知する。例えば、通知部3は、文字及び絵等を表示すること及び/又は音を出力することができる。例えば、通知部3は、燃料電池自動車Vの運転席に設置された計器パネルに設けられたモニタであってもよい。また、例えば、通知部3は、運転席周りに設置されたスピーカであってもよい。
【0020】
判定ECU2は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。判定ECU2は、例えば、ROMに記録されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。判定ECU2は、機能的には、状態判定部21、走行可否判定部22、及び通知制御部23を含んでいる。
【0021】
状態判定部21は、動力部10の状態に基づいて、動力部10が発揮可能な燃料電池自動車Vの走行性能の状態を判定する。ここでは、状態判定部21は、動力部10が発揮可能な走行性能の状態が、燃料電池自動車Vの通常走行が可能な予め定められた通常性能状態であるか、通常性能状態よりも走行性能が低い制限性能状態であるか、及び制限性能状態よりも走行性能が低い低性能状態であるかを判定する。
【0022】
なお、本実施形態において、制限性能状態には、第1制限性能状態と、第1制限性能状態よりも走行性能が低い第2制限性能状態とが含まれている。状態判定部21は、動力部10が発揮可能な走行性能の状態が制限性能状態である場合、第1制限性能状態及び第2制限性能状態の何れであるかをさらに判定する。つまり、状態判定部21は、動力部10が発揮可能な走行性能の状態が、通常性能状態であるか、第1制限性能状態であるか、第2制限性能状態であるか、及び低性能状態であるかを判定する。
【0023】
また、本実施形態においては、一例として、バッテリ11が供給可能な電力よりも、燃料電池12が供給可能な電力の方が大きいとする。また、燃料電池自動車Vは、一例として、バッテリ11の電力だけで走行が可能であるものの、動力部10が発揮可能な走行性能の状態が通常性能状態に満たないものとする。つまり、動力部10は、バッテリ11の最大の出力電力が小さいため、燃料電池12の出力電力を用いないと、燃料電池自動車Vの通常の走行が可能な通常性能状態にならないとする。動力部10は、バッテリ11の出力電力のみでは、通常性能状態よりも走行性能が低い制限性能状態となる。また、例えば、動力部10は、バッテリ11の起動が完了するまでは、低性能状態となる。このように、動力部10は、バッテリ11の起動が完了し、その後に燃料電池12の起動が完了する。これにより、動力部10は、一例として、低性能状態、制限性能状態、及び通常性能状態の順に状態が変化する。
【0024】
なお、本実施形態において、動力部10が発揮可能な走行性能は、燃料電池自動車の駆動性能及び制動性能の両方を含む。駆動性能は、モータ15が燃料電池自動車Vを駆動するときの性能を示す。制動性能は、モータ15を回生ブレーキとして用いた場合にモータ15によって発電された電力をバッテリ11及びブレーキレジスタ13の少なくともいずれかによって吸収するときの電力吸収性能を示す。
【0025】
ここで、通常性能状態とは、例えば、燃料電池自動車Vが走行する際に周囲の車用の走行を妨げることなく、一般道路及び高速道路において通常の走行が可能な状態とすることができる。例えば、動力部10が通常性能状態であるときの駆動性能とは、燃料電池自動車Vと同格のエンジン自動車が発揮可能な駆動性能とされてもよい。例えば、動力部10が通常性能状態であるときの制動性能とは、燃料電池自動車Vと同格のエンジン自動車が発揮可能なエンジンブレーキによる制動力よりも強い制動力を発揮可能な所定の制動性能とされてもよい。
【0026】
つまり、例えば、通常性能状態であるときの駆動性能とは、モータ15に対して供給可能な電力値が所定の高出力電力値以上の場合であるとして定められ得る。また、例えば、通常性能状態であるときの制動性能とは、バッテリ11及びブレーキレジスタ13において吸収可能な電力値が所定の高吸収電力値以上の場合であるとして定められ得る。なお、状態判定部21は、駆動性能及び制動性能の両方が上記条件を満たす場合に、通常性能状態であると判定する。
【0027】
制限性能状態とは、例えば、通常性能状態における走行性能には達しないものの、燃料電池自動車Vの走行が可能な状態とすることができる。制限性能状態において、第2制限性能状態は、第1制限性能状態よりも動力部10が発揮可能な走行性能が低い状態となる。
【0028】
例えば、第1制限性能状態であるときの駆動性能とは、モータ15に対して供給可能な電力値が所定の中出力電力値以上の場合であるとして定められ得る。なお、中出力電力値は、高出力電力値よりも低い値とする。また、例えば、第1制限性能状態であるときの制動性能とは、バッテリ11及びブレーキレジスタ13において吸収可能な電力値が所定の中吸収電力値以上の場合であるとして定められ得る。なお、中吸収電力値は、高吸収電力値よりも低い値とする。なお、状態判定部21は、駆動性能及び制動性能の両方が上記条件を満たす場合に、第1制限性能状態であると判定する。
【0029】
例えば、第2制限性能状態であるときの駆動性能とは、モータ15に対して供給可能な電力値が所定の低出力電力値以上の場合であるとして定められ得る。なお、低出力電力値は、中出力電力値よりも低い値とする。また、例えば、第2制限性能状態であるときの制動性能とは、バッテリ11及びブレーキレジスタ13において吸収可能な電力値が所定の低吸収電力値以上の場合であるとして定められ得る。なお、低吸収電力値は、中吸収電力値よりも低い値とする。なお、状態判定部21は、駆動性能及び制動性能の両方が上記条件を満たす場合に、第2制限性能状態であると判定する。
【0030】
但し、第1制限性能状態であるときの制動性能と、第2制限性能状態であるときの制動性能とは同じ吸収電力値が設定されていてもよい。つまり、低吸収電力値と中吸収電力値とは同じ値が設定されていてもよい。この場合であっても、第2制限性能状態の駆動性能が第1制限状態の駆動性能よりも低いため、第2制限性能状態は、第1制限性能状態よりも走行性能が低い。
【0031】
低性能状態とは、例えば、燃料電池自動車Vを走行させるだけの十分な性能を動力部10が発揮できない状態とすることができる。例えば、低性能状態とは、燃料電池自動車Vが走行できない状態、又は走行できる状態であるとはみなせない状態とされてもよい。低性能状態とは、制限性能状態に満たない状態である。例えば、低性能状態であるときの駆動性能とは、モータ15に対して供給可能な電力値が所定の低出力電力値未満の場合であるとして定められ得る。また、例えば、低性能状態であるときの制動性能とは、バッテリ11及びブレーキレジスタ13において吸収可能な電力値が所定の低吸収電力値未満の場合であるとして定められ得る。
【0032】
このように、状態判定部21は、モータ15に対して供給可能な電力値と、バッテリ11及びブレーキレジスタ13において吸収可能な電力値とに基づいて、通常性能状態等の各状態を判定することができる。なお、図2には、上述した各性能状態と駆動性能及び制動性能との関係について示されている。
【0033】
走行可否判定部22は、状態判定部21によって通常性能状態又は制限性能状態であると判定された場合、燃料電池自動車Vの走行が可能であると判定する。一方、走行可否判定部22は、状態判定部21によって低性能状態であると判定された場合、燃料電池自動車Vの走行が不可能であると判定する。
【0034】
なお、本実施形態において走行可否判定部22は、燃料電池12の状態が、燃料電池12の起動に予め設定された時間以上要する起動遅延状態であるか否かを更に判定する。一般に、燃料電池12は、温度が低い場合には温度が適正な場合に比べて起動が完了するまでに時間を要する。例えば、走行可否判定部22は、外気温又は燃料電池12の温度等に基づいて、燃料電池12が起動遅延状態であるか否かを判定することができる。そして、走行可否判定部22は、燃料電池12の状態が起動遅延状態である場合、状態判定部21によって制限性能状態であると判定されても、燃料電池自動車Vの走行が可能であると判定しない。つまり、走行可否判定部22は、燃料電池12の状態が起動遅延状態である場合、状態判定部21によって通常性能状態であると判定されるまで、燃料電池自動車Vの走行が可能であると判定しない。
【0035】
通知制御部23は、通知部3が通知する通知内容を制御する。ここでは、通知制御部23は、走行可否判定部22によって走行が可能であると判定された場合、燃料電池自動車Vが走行可能な状態であることを示す走行可能通知を通知部3を通じて行う。この走行可能通知は、文字及び絵等を表示すること及び/又は音を出力することによって行われ得る。一例として、走行可能通知は、「READY」等の文字を表示することによって行われてもよい。
【0036】
また、通知制御部23は、状態判定部21によって制限性能状態であると判定され且つ走行可否判定部22によって走行が可能であると判定された場合、走行可能通知に加え、制限状態通知を通知部3を通じて行う。この制限状態通知とは、燃料電池自動車Vの走行性能が制限された状態であることをドライバに通知するためのものである。
【0037】
ここで、上述したように、制限性能状態には、第1制限性能状態と、第1制限性能状態よりも走行性能が低い第2制限性能状態とが含まれている。このため、通知制御部23は、状態判定部21によって第1制限性能状態であると判定され且つ走行可否判定部22によって走行が可能であると判定された場合、走行可能通知に加え、制限状態通知として第1制限状態通知を通知部3を通じて行う。第1制限状態通知は、動力部10の状態が第1制限性能状態であることを示す通知である。この第1制限状態通知は、文字及び絵等を表示すること及び/又は音(音声)を出力することによって行われ得る。
【0038】
なお、第1制限状態通知は、駆動性能が第1制限性能状態であることを示す駆動性能側の通知と、制動性能が第1制限性能状態であることを示す制動性能側の通知とが別々に通知される態様であってもよい。また、第1制限状態通知として、駆動性能が第1制限性能状態であることを示す駆動性能側の通知と、制動性能が第1制限性能状態であることを示す制動性能側の通知とのいずれか一方のみが行われてもよい。
【0039】
また、通知制御部23は、状態判定部21によって第2制限性能状態であると判定され且つ走行可否判定部22によって走行が可能であると判定された場合、走行可能通知に加え、制限状態通知として第2制限状態通知を通知部3を通じて行う。第2制限状態通知は、第1制限性能通知よりも燃料電池自動車Vの走行性能が低いことを示す通知である。また、第2制限状態通知は、第1制限状態通知よりも、燃料電池自動車Vの走行性能が制限された状態であることをより強調して示す通知である。この第2制限状態通知は、動力部10の状態が第2制限性能状態であることを示す通知である。この第2制限状態通知は、文字及び絵等を表示すること及び/又は音を出力することによって行われ得る。一例として、第2制限状態通知とは、上述した第1制限状態通知の通知に加えて、「モータ出力制限中」等の文字を含む表示を行ったり音を出力したりする通知であってもよい。
【0040】
ここで、第2制限状態通知は、第1制限状態通知よりも、燃料電池自動車Vの走行性能が制限された状態であることをより強調して示す通知である。つまり、ここでの、より強調して通知することとは、例えば、表示の文字及びイラストの個数をより多く表示することであってもよい。これ以外にも、より強調して表示することとは、例えば、表示の文字及びイラストの色がより認識し易い色又は注意を引きやすい色で表示することであってもよい。また、より強調して表示することとは、例えば、表示の文字及びイラストの大きさをより大きくすること又は輝度をより高くすることであってもよい。より強調して表示することとは、例えば、表示の文字及びイラストを、より注意を引きやすい文字(文章の内容)及びイラスト(図柄)で表示することであってもよい。より強調して音によって通知することとは、例えば、注意を引きやすい音色又は音量で通知することであってもよい。より強調して音によって通知することとは、例えば、より注意を引きやすい音声内容で通知することであってもよい。その他、より強調して通知することとして、種々の形態を採用し得る。
【0041】
また、通知制御部23は、走行可否判定部22によって燃料電池自動車Vの走行が不可能であると判定された場合、走行が不可能であることを示す走行不可能通知を通知部3を通じて行う。例えば、この走行不可能通知とは、バッテリ11等の起動が完了していないために走行が不可能であることを示している。この走行不可能通知は、文字及び絵等を表示すること及び/又は音を出力することによって行われ得る。一例として、走行不可能通知とは、「READY」等の文字を点滅させる表示であってもよい。
【0042】
このように、通知制御部23は、状態判定部21及び走行可否判定部22の判定結果に応じた各通知を通知部3を通じて行う。
【0043】
ここで、走行可否判定部22によって、燃料電池12の状態が起動遅延状態であると判定される場合がある。この場合、走行可否判定部22は、状態判定部21によって制限性能状態であると判定されても、燃料電池自動車Vの走行が可能であると判定しない。つまり、この場合には、制限状態通知は行われない。なお、図2には、燃料電池12が通常状態及び起動遅延状態のそれぞれの場合における、制限状態通知の有無と動力部10の各状態との関係について示されている。
【0044】
次に、動力部10の起動開始後における駆動性能及び制動性能の時間的変化と、動力部10の状態との関係について説明する。なお、図3に示される駆動性能及び制動性能の時間的変化は一例である。また、図3では、燃料電池12が通常の状態である場合(起動遅延状態ではない場合)が示されている。図3の縦軸において、「正」の領域は駆動性能としてモータ15に対して供給可能な電力値を示している。図3の縦軸において、「負」の領域は制動性能としてバッテリ11及びブレーキレジスタ13が吸収可能な電力値を示している。なお、図3の縦軸の「負」の領域において、電力値が小さくなるほど(負の度合いが大きくなるほど)、バッテリ11等の吸収電力が大きくなる。
【0045】
また、図3に示される例においてブレーキレジスタ13は、一例として、冷却水が供給されることによって、所定の電力吸収性能を発揮することができる。この冷却水は、電力の吸収によって発熱するブレーキレジスタ13を冷却する。また、この冷却水は、燃料電池12の起動が完了するときに、ブレーキレジスタ13に供給される。つまり、図3に示される例においてブレーキレジスタ13は、燃料電池12の起動が完了したときに、所定の電力吸収性能を発揮することができる。
【0046】
図3に示されるように、動力部10の起動が開始されると、バッテリ11及び燃料電池12の起動が開始される。バッテリ11が起動されることにより、駆動性能としてモータ15への供給可能な電力値が徐々に上昇する。また、バッテリ11が起動されることにより、バッテリ11が吸収可能な電力値が徐々に上昇する。
【0047】
これにより、時刻t0において、バッテリ11において吸収可能な電力値が低吸収電力値以上となる。その後、時刻t1において、バッテリ11が出力可能な電力値が低出力電力値以上となる。つまり、状態判定部21は、時刻t1となるまで、動力部10が低性能状態であると判定する。そして、時刻t1において、状態判定部21は、動力部10が第2制限性能状態になったと判定する。
【0048】
その後、時刻t2において、バッテリ11において吸収可能な電力値が中吸収電力値以上となる。その後、時刻t3において、バッテリ11が出力可能な電力値が中出力電力値以上となる。これにより、時刻t3において、状態判定部21は、動力部10が第1制限性能状態になったと判定する。
【0049】
その後、時刻t4において、燃料電池12の起動が完了すると、バッテリ11及び燃料電池12によってモータ15へ供給可能な電力値が大きく増加する。そして、時刻t4において、冷却水がブレーキレジスタ13に供給されることにより、バッテリ11及びブレーキレジスタ13によって吸収可能な電力値が大きく増加する。これにより、時刻t4において、バッテリ11及びブレーキレジスタ13が吸収可能な電力値が高吸収電力値以上となる。その後、時刻t5において、モータ15へ供給可能な電力値が高出力電力値以上となる。これにより、時刻t5において、状態判定部21は、動力部10が通常性能状態になったと判定する。
【0050】
なお、図3に示される例においてブレーキレジスタ13は、燃料電池12の起動が完了したときに、所定の電力吸収性能を発揮することができるものとした。ブレーキレジスタ13の構成は、これに限定されず、時刻t4以外のタイミングで所定の電力吸収性能を発揮する構成であってもよい。
【0051】
以上のように、走行可否判定装置1は、通常性能状態よりも走行性能が低い制限性能状態であっても、走行が可能と判定する。これにより、例えば、燃料電池12の起動が完了していない状態であっても、燃料電池12の起動が完了することを見越して、燃料電池自動車Vの走行が可能となる。但し、走行可否判定装置1は、制限性能状態で走行が可能と判定した場合には、走行性能が制限された状態であることを示す制限状態通知(第1制限状態通知又は第2制限状態通知)を行う。これにより、燃料電池自動車Vのドライバは、燃料電池自動車Vの走行が可能であるものの、走行性能が制限された状態であることを認識することができる。そして、ドライバは、制限された走行性能に応じた運転操作を行うことができる。このように、走行可否判定装置1は、燃料電池自動車Vの走行可否をより適切に判定し、燃料電池自動車Vの走行性能を通知することができる。
【0052】
また、状態判定部21が判定する制限性能状態には、第1制限性能状態と、第1制限性能状態よりも走行性能が低い第2制限性能状態とが含まれている。通知制御部23は、状態判定部21によって第1制限性能状態であると判定され且つ走行可否判定部22によって走行が可能であると判定された場合、制限状態通知として第1制限状態通知を通知部3を通じて行う。また、通知制御部23は、状態判定部21によって第2制限性能状態であると判定され且つ走行可否判定部22によって走行が可能であると判定された場合、制限状態通知として第2制限状態通知を通知部3を通じて行う。この場合、走行可否判定装置1は、制限性能状態であっても制限性能状態における走行性能に応じて、第1制限状態通知又は第2制限状態通知を行うことができる。これにより、ドライバは、燃料電池自動車Vの走行が可能であるものの、走行性能がどの程度制限された状態であるかを認識することができる。
【0053】
なお、通知制御部23が行う第2制限状態通知は、第1制限状態通知よりも燃料電池自動車Vの走行性能が制限された状態であることをより強調して示す通知となっている。この場合、ドライバは、第1制限状態通知と第2制限状態通知とを、容易に区別して認識することができる。
【0054】
状態判定部21が判定する燃料電池自動車Vの走行性能は、燃料電池自動車Vの駆動性能及び制動性能の両方を含んでいる。この場合、走行可否判定装置1は、動力部10が発揮可能な駆動性能及び制動性能に基づいて、燃料電池自動車Vの走行の可否を判定することができる。
【0055】
通知制御部23は、走行可否判定部22によって走行が可能であると判定された場合、燃料電池自動車Vが走行可能な状態であることを示す走行可能通知を通知部3を通じて行う。この場合、ドライバは、燃料電池自動車Vが走行可能な状態であることを容易に認識することができる。
【0056】
走行可否判定部22は、燃料電池12の状態が、起動に予め設定された時間以上要する起動遅延状態であるか否かを判定することができる。そして、走行可否判定部22は、状態判定部21によって制限性能状態であると判定されても、燃料電池自動車Vの走行が可能であると判定しない。これにより、走行可否判定装置1は、燃料電池12が起動遅延状態である場合、動力部10が通常性能状態となるまで燃料電池自動車Vの走行が可能であると判定しない。つまり、走行可否判定装置1は、例えば、燃料電池12の起動が完了していない状態のときに起動が完了することを見越して、燃料電池自動車Vが走行可能であると判定することを行わない。このように、走行可否判定装置1は、燃料電池12の状態に基づいて、燃料電池自動車Vの走行可否をより適切に判定することができる。
【0057】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態において状態判定部21は、動力部10が発揮可能な走行性能を判定する際に、駆動性能及び制動性能の両方を考慮して判定を行った。これに限定されず、状態判定部21は、動力部10が発揮可能な走行性能を判定する際に、駆動性能及び制動性能のいずれか一方のみを用いて判定を行ってもよい。
【0058】
また、状態判定部21が判定する制限性能状態には、第1制限性能状態及び第2制限性能状態の2つの状態が含まれていなくてもよい。
【0059】
上記実施形態では、モータ15が回生ブレーキとして用いられるときにモータ15が発電した電力を、ブレーキレジスタ13によっても吸収可能な場合について説明した。つまり、ブレーキレジスタ13は、モータ15が発電した電力を吸収する制動時電力吸収装置として機能する。但し、制動時電力吸収装置は、ブレーキレジスタ13であることに限定されない。上記実施形態において、ブレーキレジスタ13に代えて、他の制動時電力吸収装置が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…走行可否判定装置、3…通知部、11…バッテリ、12…燃料電池、13…ブレーキレジスタ(制動時電力吸収装置)、15…モータ、21…状態判定部、22…走行可否判定部、23…通知制御部、V…燃料電池自動車。
図1
図2
図3