(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130758
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240920BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/28 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040652
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】小柳 佑市
(72)【発明者】
【氏名】外海 透
(72)【発明者】
【氏名】石原 知弥
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AA03
5E070AB03
5E070BA11
5E070BB03
5E070DA13
(57)【要約】
【課題】漏れ磁束の低減が図られたコイル部品を提供する。
【解決手段】 コイル部品1においては、磁性シート30は、コイル20と上下方向において重なる領域31において傾いており、磁性シート30がコイル20の内縁近傍の磁束Fの向きに沿っている。そのため、磁束Fが磁性シート30を通りやすくなっており、コイル部品1における漏れ磁束の低減が実現されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉および樹脂を含む材料で構成された素体と、
前記素体内に設けられたコイルと、
前記素体内において前記コイルの軸線に対して交差して延在する磁性シートと
を備え、
前記磁性シートは、前記コイルの軸線の方向に関する前記コイルの先端位置に対応する部分が、前記コイルの軸線に近づくにつれて前記コイル側に近づくように傾いている、コイル部品。
【請求項2】
金属粉および樹脂を含む材料で構成された素体と、
前記素体内に設けられたコイルと、
前記素体内において前記コイルの軸線に対して交差して延在する磁性シートと
を備え、
前記磁性シートは、前記コイルの軸線の方向に関する前記コイルの先端位置に対応する部分が、前記コイルの軸線から離れるにつれて前記コイル側に近づくように傾いている、コイル部品。
【請求項3】
金属粉および樹脂を含む材料で構成された素体と、
前記素体内に設けられたコイルと、
前記素体内において前記コイルの軸線に対して交差して延在する磁性シートと
を備え、
前記磁性シートは、前記コイルの軸線の方向に関する前記コイルの先端位置に対応する部分と前記コイルの軸線に対応する部分とで、前記コイルの軸線の方向に関する位置が異なっている、コイル部品。
【請求項4】
前記磁性シートが前記素体内に複数層設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記複数層の磁性シートの構成材料が異なっている、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
隣り合う前記磁性シートの層間に、前記素体の材料が介在している、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項7】
隣り合う前記磁性シートの層間に介在している前記素体の材料は、前記コイルの軸線に直交する方向に関し、前記コイルの内側の量より外側の量の方が多い、請求項6に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記磁性シートの層間に前記コイルが位置している、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記磁性シートが複数層構造を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記磁性シートに含まれる複数層の構成材料が異なっている、請求項9に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記磁性シートが金属板で構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記コイルの軸線方向から見て、前記磁性シートは前記素体の全面に亘っている、請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記コイルはワイヤが巻回されたコイルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、コイルを含む絶縁性素体と、素体上に配置されたシート状の磁性体とを備えるコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、ノイズの原因となるコイル部品の漏れ磁束について研究を重ねた末に、コイルを含む磁性素体の内部に磁性シートを設けることで、漏れ磁束を低減できるとの知見を得た。特に、コイルの形状に応じた姿勢で磁性シートを設けることで、漏れ磁束をさらに低減することができるとの知見を得た。
【0005】
本発明の一側面は、漏れ磁束の低減が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、金属粉および樹脂を含む材料で構成された素体と、素体内に設けられたコイルと、素体内においてコイルの軸線に対して交差して延在する磁性シートとを備え、磁性シートは、コイルの軸線の方向に関するコイルの先端位置に対応する部分が、コイルの軸線に近づくにつれてコイル側に近づくように傾いている。
【0007】
上記コイル部品においては、コイルの軸線に近づくにつれてコイル側に近づくように傾いている磁性シートの部分をコイルの内縁近傍の磁束が通ることで、漏れ磁束が有意に低減される。
【0008】
本発明の一側面に係るコイル部品は、金属粉および樹脂を含む材料で構成された素体と、素体内に設けられたコイルと、素体内においてコイルの軸線に対して交差して延在する磁性シートとを備え、磁性シートは、コイルの軸線の方向に関するコイルの先端位置に対応する部分が、コイルの軸線から離れるにつれてコイル側に近づくように傾いている。
【0009】
上記コイル部品においては、コイルの軸線から離れるにつれてコイル側に近づくように傾いている磁性シートの部分をコイルの外縁近傍の磁束が通ることで、漏れ磁束が有意に低減される。
【0010】
本発明の一側面に係るコイル部品は、金属粉および樹脂を含む材料で構成された素体と、素体内に設けられたコイルと、素体内においてコイルの軸線に対して交差して延在する磁性シートとを備え、磁性シートは、コイルの軸線の方向に関するコイルの先端位置に対応する部分とコイルの軸線に対応する部分とで、コイルの軸線の方向に関する位置が異なっている。
【0011】
上記コイル部品においては、磁性シートが、コイルの軸線の方向に関する位置が均一ではなく、平坦なシートではない。この場合、コイルの軸線の方向に関するコイルの先端位置に対応する磁性シートは、少なくとも部分的にコイルの形状に沿うため、コイルの磁束が通りやすくなっており、漏れ磁束が有意に低減される。
【0012】
他の側面に係るコイル部品では、前記磁性シートが前記素体内に複数層設けられている。
【0013】
他の側面に係るコイル部品では、前記複数層の磁性シートの構成材料が異なっている。
【0014】
他の側面に係るコイル部品では、隣り合う前記磁性シートの層間に、前記素体の材料が介在している。
【0015】
他の側面に係るコイル部品では、隣り合う前記磁性シートの層間に介在している前記素体の材料は、前記コイルの軸線に直交する方向に関し、前記コイルの内側の量より外側の量の方が多い。
【0016】
他の側面に係るコイル部品では、前記磁性シートの層間に前記コイルが位置している。
【0017】
他の側面に係るコイル部品では、前記磁性シートが複数層構造を有する。
【0018】
他の側面に係るコイル部品では、前記磁性シートに含まれる複数層の構成材料が異なっている。
【0019】
他の側面に係るコイル部品では、前記磁性シートが金属板で構成されている。
【0020】
他の側面に係るコイル部品では、前記コイルの軸線方向から見て、前記磁性シートは前記素体の全面に亘っている。
【0021】
他の側面に係るコイル部品では、前記コイルはワイヤが巻回されたコイルである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の種々の側面によれば、漏れ磁束の低減が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係るコイル部品を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示したコイル部品のII-II線断面図である。
【
図3】
図2に示したコイルの構成を示した概略斜視図である。
【
図5】磁性シートとコイルとの位置関係を示した図である。
【
図6】
図2とは異なる態様のコイル部品を示した断面図である。
【
図7】第2実施形態に係るコイル部品の断面図である。
【
図8】磁性シートとコイルとの位置関係を示した図である。
【
図9】
図2とは異なる態様のコイル部品を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係るコイル部品1は、
図1、2に示すように、素体10と、素体10内に埋設されたコイル20と、素体10の表面に設けられた一対の外部端子14A、14Bとを備えて構成されている。
【0025】
素体10は、略直方体状の外形を有し、6つの面10a~10fを有する。素体10は、一例として、長辺2.5mm、短辺2.0mm、高さ1.2mmの寸法で設計される。素体10の面10a~10fのうち、端面10aと端面10bとが互いに平行であり、上面10cと下面10dとが互いに平行であり、側面10eと側面10fとが互いに平行である。素体10の下面10dは、コイル部品1が実装される実装基板の実装面と平行に対向する面である。
【0026】
素体10は、磁性材料の一種である金属磁性粉含有樹脂で構成されている。金属磁性粉含有樹脂は、金属磁性粉体がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、たとえば鉄を含有し、合金系であるパーマロイ、センダスト、FeSiCr、FeSiや、カルボニル鉄、または、アモルファス合金、ナノ結晶等で構成されている。このような金属磁性粉は、後述する磁性シート30の硬度より高い硬度を有する材料から選択することができる。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは75~92vol%であり、質量パーセントでは95~99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで80~92vol%、質量パーセントで97~99wt%であってもよい。
【0027】
素体10を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。素体10を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉が混合粉体の場合、平均粒径が異なる磁性粉の種類やFe組成比は、同一であってもよく、異なっていてもよい。本実施形態では、素体10を構成する金属磁性粉含有樹脂は、3種類の平均粒径を有する混合粉体を含んでいる。一例として、最大の平均粒径を有する磁性粉(
図4に示した大径粉13)の粒径は15~30μm、最小の平均粒径を有する磁性粉(
図4に示した小径粉11)の粒径は0.3~1.5μm、大径粉と小径粉との間の平均粒径を有する磁性粉(
図4に示した中径粉12)は3~10μmである。混合粉体100重量部に対して、大径粉13は60~80重量部の範囲、中径粉12は10~20重量部の範囲、小径粉11は10~20重量部の範囲で含まれていてもよい。
【0028】
コイル20は、素体10に埋設されている。
図3に示すように、コイル20は、Cuなどからなる芯材21を絶縁被覆22(絶縁体)で覆ったワイヤ状の被覆導線で構成されている。コイル20は、上下方向(すなわち、上面10cと下面10dとの対面方向)に延びる軸線Zを有する。軸線Zは、上下方向から見てコイル20の中心に位置する。本実施形態においては、1本のコイル導線が上下方向に沿って螺旋状に多重に巻回されている。コイル20の一端20aおよび他端20bは、素体10の下面10dに露出している。本実施形態では、コイル20の端部20a、20bは、素体10の下面10dにおいて端面10a、10bに平行な方向に延びている。コイル20の端部20a、20bはいずれも、研磨等によって絶縁被覆22が除去されており、下面10dに芯材21が露出している。コイル20の一端20aおよび他端20bは、素体10の下面10dを覆う部分の外部端子14A、14Bにそれぞれ接続されている。コイル20は、断面が円形である丸線ワイヤであってもよく、断面が四角形である平角ワイヤであってもよい。
【0029】
外部端子14A、14Bはいずれも、L字状に屈曲しており、端面10a、10bと下面10dとを連続的に覆っている。外部端子14Aは、端面10aの全域および下面10dの一部領域(具体的には、端面10a側の縁に沿って延びる矩形領域)を覆っている。外部端子14Bは、端面10bの全域および下面10dの一部領域(具体的には、端面10b側の縁に沿って延びる矩形領域)を覆っている。外部端子14A、14Bのうちの下面10dを覆う部分が、下面10dに露出したコイル20の端部20a、20bを覆っている。
【0030】
本実施形態では、外部端子14A、14Bは、樹脂電極で構成されており、たとえばAg粉を含有する樹脂で構成されている。外部端子14A、14Bは、金属メッキにより構成することができる。外部端子14A、14Bは、単層構造であってもよく、複数層構造であってもよい。外部端子14A、14Bは、素体10の表面を直接覆っていてもよく、所定の絶縁層を介して素体10の表面を間接的に覆っていてもよい。絶縁層は、たとえば、コイル20の端部20a、20bと外部端子14A、14Bとの接続領域を除く外部端子14A、14Bの形成領域の全域に亘って設けられていてもよい。このような絶縁層は、たとえばエポキシ系樹脂等の樹脂によって構成され得る。
【0031】
素体10の内部には、さらに磁性シート30が設けられている。磁性シート30は、コイル20の軸線Zに対して交差するように延在している。本実施形態では、磁性シート30は、コイル20の軸線Zの方向から見て、素体10の全面に亘っている。すなわち、コイル20の軸線Zの方向から見て、素体10は矩形状を呈し、磁性シート30も素体10と実質的に同一寸法の矩形状を呈する。また、磁性シート30は、素体10の両端面10a、10bから露出している。磁性シート30は、素体10の両側面10e、10fから露出していてもよい。磁性シート30は、コイル20の軸線Zの方向から見て、素体10の全面に亘っている限りにおいて、完全なシート状であってもよく、局所的に分断されたシート状であってもよい。
【0032】
本実施形態では、磁性シート30はコイル20の上側に位置している。すなわち、磁性シート30は、素体10の上下方向(コイル20の軸線Zの方向)に関し、コイル20と素体10の上面10cとの間に位置している。本実施形態において、磁性シート30は素体10の上面10cから露出しておらず、かつ、コイル20には接していない。
【0033】
磁性シート30は、たとえば金属板(または金属リボン)で構成することができる。磁性シート30は、アモルファスリボンやナノ結晶リボンで構成することもできる。磁性シート30は、金属磁性粉と樹脂とを含む複合材料で構成することもできる。磁性シート30は、単一種類の材料で構成された単層構造であってもよく、単一種類または複数種類の材料で構成された複数層構造であってもよい。磁性シート30が複数層構造である場合、磁性シート30は、磁性材料で構成された層(磁性層)に加えて、非磁性材料で構成された層(たとえば樹脂層)を含んでいてもよい。
【0034】
図2に示されているとおり、磁性シート30は、素体10の下面10d側に向かって凸となるように全体的に撓んでいる。具体的には、磁性シート30は、コイル20の軸線Zの方向に関して、コイル20の軸線Zに対応する位置P1が最下位置となり、コイル20の軸線Zに対応する位置P1から離れるにつれて漸次高くなるように、全体的に湾曲している。本実施形態では、磁性シート30は、
図2に示す断面において、コイル20の軸線Zに関して線対称の断面形状を有する。このとき、磁性シート30は、
図5に示すように、コイル20と上下方向において重なる領域31において一様に傾いている。すなわち、磁性シート30は、コイル20の内縁側が低く外縁側が高くなるように傾いている。特に、磁性シート30は、コイル20の軸線Zの方向に関する端面10a側のコイル20の先端位置Qに対応する位置P2および端面10b側のコイル20の先端位置Qに対応する位置P2の部分がいずれも、コイル20の軸線Zに近づくにつれて下側(すなわち、コイル20側)に近づくように傾いている。コイル20の軸線Zの方向に関し、端面10a側および端面10b側のコイル20の先端位置Qに対応する磁性シート30の位置P2はいずれも、位置P1より上側(すなわち、素体10の上面10c側)に位置している。
【0035】
磁性シート30は、コイル20の軸線Zに関して、線対称ではない断面形状(非対称な断面形状)を有していてもよい。この場合、磁性シート30の最下位置は、
図2に示す断面において、コイル20の軸線Zに対応する位置P1からズレていてもよい。また、磁性シート30は、
図2に示す断面において、端面10a側のコイル20の先端位置Qに対応する位置P2と、端面10b側のコイル20の先端位置Qに対応する位置P2とで、上下方向に関する位置(すなわち、高さ位置)が異なっていてもよく、コイル20と上下方向において重なる領域31における傾きが異なっていてもよい。
【0036】
第1実施形態に係るコイル部品1においては、磁性シート30は、コイル20と上下方向において重なる領域31において傾いており、
図5に示すように、磁性シート30がコイル20の内縁近傍の磁束Fの向きに沿っている。そのため、磁束Fが磁性シート30を通りやすくなっており、コイル部品1における漏れ磁束の低減が実現されている。
【0037】
なお、磁性シート30は、素体10内に一つだけ設けられていてもよく、素体10内に複数設けられていてもよい。
図6には、3つの磁性シート30(磁性シート30A、30B、30C)が設けられた態様が示されている。3つの磁性シート30A、30B、30Cはいずれも、コイル20の軸線Zに対して交差するように延在している。磁性シート30A、30B、30Cはいずれも、コイル20の軸線Zの方向から見て、素体10の全面に亘っている。また、磁性シート30A、30B、30Cはいずれも、素体10の両端面10a、10bから露出している。磁性シート30A、30B、30Cはいずれも、素体10の両側面10e、10fから露出していてもよい。磁性シート30A、30B、30Cの全部または一部は、コイル20の軸線Zの方向から見て、素体10の全面に亘っている限りにおいて、完全なシート状であってもよく、局所的に分断されたシート状であってもよい。
【0038】
磁性シート30A、30B、30Cはいずれも、コイル20の上側に位置している。すなわち、磁性シート30A、30B、30Cはいずれも、素体10の上下方向に関し、コイル20と素体10の上面10cとの間に位置している。本実施形態において、磁性シート30A、30B、30Cはいずれも、素体10の上面10cから露出しておらず、かつ、コイル20には接していない。
【0039】
磁性シート30A、30B、30Cの層間には、素体10を構成する金属磁性粉含有樹脂が介在している。磁性シート30A、30B、30Cの層間距離は、均等であってもよく異なっていてもよい。
【0040】
磁性シート30A、30B、30Cの構成材料は、上述した磁性シート30と同様、単一種類の材料で構成された単層構造であってもよく、単一種類または複数種類の材料で構成された複数層構造であってもよい。各磁性シート30A、30B、30Cが複数層構造である場合、各磁性シート30A、30B、30Cは、磁性材料で構成された層(磁性層)に加えて、非磁性材料で構成された層(たとえば樹脂層)を含んでいてもよい。
(第2実施形態)
第2実施形態に係るコイル部品1は、第1実施形態に係るコイル部品1とは、磁性シート30の形状が異なり、その他の要素については第1実施形態と同一または同様である。
【0041】
第2実施形態に係る磁性シート30は、第1実施形態に係る磁性シート30同様、コイル20の軸線Zに対して交差するように延在している。軸線Zは、上下方向から見てコイル20の中心に位置する。本実施形態では、磁性シート30は、コイル20の軸線Zの方向から見て、素体10の全面に亘っている。すなわち、コイル20の軸線Zの方向から見て、素体10は矩形状を呈し、磁性シート30も素体10と実質的に同一寸法の矩形状を呈する。また、磁性シート30は、素体10の両端面10a、10bから露出している。磁性シート30は、素体10の両側面10e、10fから露出していてもよい。磁性シート30は、コイル20の軸線Zの方向から見て、素体10の全面に亘っている限りにおいて、完全なシート状であってもよく、局所的に分断されたシート状であってもよい。
【0042】
第2実施形態に係る磁性シート30は、
図7に示されているとおり、磁性シート30は、素体10の上面10c側に向かって凸となるように全体的に撓んでいる。具体的には、磁性シート30は、コイル20の軸線Zの方向に関して、コイル20の軸線Zに対応する位置P1が最高位置となり、コイル20の軸線Zに対応する位置P1から離れるにつれて漸次低くなるように、全体的に湾曲している。本実施形態では、磁性シート30は、
図7に示す断面において、コイル20の軸線Zに関して線対称の断面形状を有する。このとき、磁性シート30は、
図8に示すように、コイル20と上下方向において重なる領域31において一様に傾いている。すなわち、磁性シート30は、コイル20の内縁側が高く外縁側が低くなるように傾いている。特に、磁性シート30は、コイル20の軸線Zの方向に関する端面10a側のコイル20の先端位置Qに対応する位置P2および端面10b側のコイル20の先端位置Qに対応する位置P2の部分がいずれも、コイル20の軸線Zから離れるにつれて下側(すなわち、コイル20側)に近づくように傾いている。コイル20の軸線Zの方向に関し、端面10a側および端面10b側のコイル20の先端位置Qに対応する磁性シート30の位置P2はいずれも、位置P1より下側(すなわち、素体10の下面10d側)に位置している。
【0043】
第2実施形態に係る磁性シート30は、コイル20の軸線Zに関して、線対称ではない断面形状(非対称な断面形状)を有していてもよい。この場合、磁性シート30の最上位置は、
図7に示す断面において、コイル20の軸線Zに対応する位置P1からズレていてもよい。また、磁性シート30は、
図7に示す断面において、端面10a側のコイル20の先端位置Qに対応する位置P2と、端面10b側のコイル20の先端位置Qに対応する位置P2とで、上下方向に関する位置(すなわち、高さ位置)が異なっていてもよく、コイル20と上下方向において重なる領域31における傾きが異なっていてもよい。
【0044】
第2実施形態に係るコイル部品1においては、磁性シート30は、コイル20と上下方向において重なる領域31において傾いており、
図8に示すように、磁性シート30がコイル20の外縁近傍の磁束Fの向きに沿っている。そのため、磁束Fが磁性シート30を通りやすくなっており、コイル部品1における漏れ磁束の低減が実現されている。
【0045】
なお、第2実施形態に係る磁性シート30は、第1実施形態同様、素体10内に一つだけ設けられていてもよく、素体10内に複数設けられていてもよい。
【0046】
図9に示すように、複数の磁性シート30がコイル20の上側および下側に位置する態様であってもよい。この場合、複数の磁性シート30の層間にコイル20が位置する。このような態様であっても、磁性シート30がコイル20と上下方向において重なる領域31において傾いており、コイル20の内縁近傍(または外縁近傍)の磁束Fの向きに沿うことで、磁束Fが磁性シート30を通りやすくなり、その結果、コイル部品1における漏れ磁束の低減を図ることができる。
【0047】
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、コイルの平面形状は、楕円環状や矩形環状に限らず、円環状や多角形環状であってもよい。
【0048】
上述の記載から把握されるとおり、本明細書は下記を開示している。
[付記1]
金属粉および樹脂を含む材料で構成された素体と、
前記素体内に設けられたコイルと、
前記素体内において前記コイルの軸線に対して交差して延在する磁性シートと
を備え、
前記磁性シートは、前記コイルの軸線の方向に関する前記コイルの先端位置に対応する部分が、前記コイルの軸線に近づくにつれて前記コイル側に近づくように傾いている、コイル部品。
[付記2]
金属粉および樹脂を含む材料で構成された素体と、
前記素体内に設けられたコイルと、
前記素体内において前記コイルの軸線に対して交差して延在する磁性シートと
を備え、
前記磁性シートは、前記コイルの軸線の方向に関する前記コイルの先端位置に対応する部分が、前記コイルの軸線から離れるにつれて前記コイル側に近づくように傾いている、コイル部品。
[付記3]
金属粉および樹脂を含む材料で構成された素体と、
前記素体内に設けられたコイルと、
前記素体内において前記コイルの軸線に対して交差して延在する磁性シートと
を備え、
前記磁性シートは、前記コイルの軸線の方向に関する前記コイルの先端位置に対応する部分と前記コイルの軸線に対応する部分とで、前記コイルの軸線の方向に関する位置が異なっている、コイル部品。
[付記4]
前記磁性シートが前記素体内に複数層設けられている、付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記5]
前記複数層の磁性シートの構成材料が異なっている、付記4に記載のコイル部品。
[付記6]
隣り合う前記磁性シートの層間に、前記素体の材料が介在している、付記4に記載のコイル部品。
[付記7]
隣り合う前記磁性シートの層間に介在している前記素体の材料は、前記コイルの軸線に直交する方向に関し、前記コイルの内側の量より外側の量の方が多い、付記6に記載のコイル部品。
[付記8]
前記磁性シートの層間に前記コイルが位置している、付記4に記載のコイル部品。
[付記9]
前記磁性シートが複数層構造を有する、付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記10]
前記磁性シートに含まれる複数層の構成材料が異なっている、付記9に記載のコイル部品。
[付記11]
前記磁性シートが金属板で構成されている、付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記12]
前記コイルの軸線方向から見て、前記磁性シートは前記素体の全面に亘っている、付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記13]
前記コイルはワイヤが巻回されたコイルである、付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0049】
1…コイル部品、10…素体、20…コイル、30、30A~30C…磁性シート。