(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130761
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物、スタッドレスタイヤ、及び、ポリウレタン系発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20240920BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240920BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240920BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240920BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240920BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240920BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/04
C08L75/04
C08G18/00 H
C08L1/02
B60C1/00 A
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040656
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】影山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】木村 和資
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA05
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC19
4J002AB014
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4J034CA03
4J034CA04
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4J034CB04
4J034CB05
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4J034HC67
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4J034LA24
4J034MA03
4J034MA04
4J034NA03
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】タイヤにしたときにウェット性能及び氷上性能に優れるタイヤ用ゴム組成物、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたスタッドレスタイヤ、及び、上記タイヤ用組成物に使用されるポリウレタン系発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む充填剤30~100質量部と、セルロース繊維を含むポリウレタン系発泡体1~30質量部とを含有し、上記ポリウレタン系発泡体全体に対する上記セルロース繊維の割合が、1~25質量%である、タイヤ用ゴム組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む充填剤30~100質量部と、セルロース繊維を含むポリウレタン系発泡体1~30質量部とを含有し、
前記ポリウレタン系発泡体全体に対する前記セルロース繊維の割合が、1~25質量%である、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン系発泡体のポリウレタン系樹脂を構成するポリオールが、水酸基価30~400mgKOH/gの、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン系発泡体のポリウレタン系樹脂を構成するポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及び、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記セルロース繊維が、平均繊維長が0.1~1000μmであり、平均繊維径が1~1000nmである、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ポリオールが、さらに、水酸基を2つ以上有するグリコールエーテルを含む、請求項2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴムとブタジエンゴムとを含み、
前記ジエン系ゴム全体に対する前記ブタジエンゴムの割合が、30質量%以上である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造された、スタッドレスタイヤ。
【請求項8】
請求項1に記載のポリウレタン系発泡体の製造方法であって、
セルロース繊維とポリオールとを混合することで、分散系を得る、分散工程と、
前記分散系に、ポリイソシアネートを混合することで、水、シリコーン系界面活性剤及び触媒の存在下で前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素を発生させて、前記セルロース繊維を含むポリウレタン系発泡体を得る、重合工程とを備える、ポリウレタン系発泡体の製造方法。
【請求項9】
前記触媒が、反応性触媒である、請求項8に記載のポリウレタン系発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、スタッドレスタイヤ、及び、ポリウレタン系発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの性能を向上させる観点から、種々添加剤を配合したタイヤ用ゴム組成物が検討されている。
例えば、特許文献1では、氷上性能及びウェット性能を向上させる観点から、ポリウレタン系発泡体を配合したタイヤ用ゴム組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、タイヤ(特にトレッド)に使用されるゴム組成物に対して、安全性等の観点から、タイヤにしたときのウェット性能や氷上性能のさらなる向上が求められている。
このようななか本発明者らが特許文献1に記載のタイヤ用ゴム組成物について検討したところ、将来的な要求まで考慮した場合、タイヤにしたときのウェット性能や氷上性能のさらなる向上が望ましいことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、タイヤにしたときにウェット性能及び氷上性能に優れるタイヤ用ゴム組成物、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたスタッドレスタイヤ、及び、上記タイヤ用組成物に使用されるポリウレタン系発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、セルロース繊維を含むポリウレタン系発泡体をタイヤ用ゴム組成物に配合することで上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む充填剤30~100質量部と、セルロース繊維を含むポリウレタン系発泡体1~30質量部とを含有し、
上記ポリウレタン系発泡体全体に対する上記セルロース繊維の割合が、1~25質量%である、タイヤ用ゴム組成物。
(2) 上記ポリウレタン系発泡体のポリウレタン系樹脂を構成するポリオールが、水酸基価30~400mgKOH/gの、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選択される少なくとも1種を含む、上記(1)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3) 上記ポリウレタン系発泡体のポリウレタン系樹脂を構成するポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及び、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、上記(1)又は(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4) 上記セルロース繊維が、平均繊維長が0.1~1000μmであり、平均繊維径が1~1000nmである、上記(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(5) 上記ポリオールが、さらに、水酸基を2つ以上有するグリコールエーテルを含む、上記(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(6) 上記ジエン系ゴムが、天然ゴムとブタジエンゴムとを含み、
上記ジエン系ゴム全体に対する上記ブタジエンゴムの割合が、30質量%以上である、上記(1)~(5)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(7) 上記(1)~(6)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造された、スタッドレスタイヤ。
(8) 上記(1)~(5)のいずれかに記載のポリウレタン系発泡体の製造方法であって、
セルロース繊維とポリオールとを混合することで、分散系を得る、分散工程と、
上記分散系に、ポリイソシアネートを混合することで、水、シリコーン系界面活性剤及び触媒の存在下で上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素を発生させて、上記セルロース繊維を含むポリウレタン系発泡体を得る、重合工程とを備える、ポリウレタン系発泡体の製造方法。
(9) 上記触媒が、反応性触媒である、上記(8)に記載のポリウレタン系発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、タイヤにしたときにウェット性能及び氷上性能に優れるタイヤ用ゴム組成物、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたスタッドレスタイヤ、及び、上記タイヤ用組成物に使用されるポリウレタン系発泡体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】発泡体1の顕微鏡(キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX-5000)による写真である。
【
図2】本発明のタイヤの実施態様の一例を表す部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物等について説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、タイヤ用ゴム組成物について、タイヤにしたときのウェット性能及び氷上性能を単に「ウェット性能」及び「氷上性能」とも言う。
【0011】
[1]タイヤ用ゴム組成物
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む充填剤30~100質量部と、セルロース繊維を含むポリウレタン系発泡体1~30質量部とを含有し、
上記ポリウレタン系発泡体全体に対する上記セルロース繊維の割合が、1~25質量%である、タイヤ用ゴム組成物である。
【0012】
本発明の組成物は、このような構成をとるために上述した課題を解決できるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと考えられる。
本発明の組成物にはポリウレタン系発泡体が含有されるため、タイヤにしたときに上記発泡体がタイヤの表面粗さを向上させるものと考えられる。ここで、上記発泡体にはセルロース繊維が含まれるため、発泡体の構造は複雑且つ強靭なものとなり、タイヤ表面の摩擦係数が大幅に増加するものと考えられる。結果として、本発明の組成物は極めて優れた氷上性能を示すものと考えられる。また、上記発泡体の気泡やその断片によって低温でのエネルギー消費が増加することで、本発明の組成物はウェット性能にも優れるものと考えられる。
【0013】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について説明する。
【0014】
[ジエン系ゴム]
本発明の組成物が含有するジエン系ゴムは特に限定されない。
本発明の組成物は1種のジエン系ゴムを含有するのでも2種以上のジエン系ゴムを含有するのでもよい。
【0015】
〔具体例〕
ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴム、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレン共重合ゴムなどが挙げられる。
ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むのが好ましく、天然ゴム及びブタジエンゴムを含むのがより好ましい。
【0016】
ジエン系ゴムが天然ゴム及びブタジエンゴムを含む場合、ジエン系ゴム全体に対するブタジエンゴムの割合は、本発明の効果がより優れる理由から、30質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、80質量%以下であることが好ましい。
【0017】
〔分子量〕
ジエン系ゴムの数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50,000~2,500,000であることが好ましく、100,000~1,500,000であることがより好ましく、150,000~1,000,000であることがさらに好ましい。
ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100,000~5,000,000であることが好ましく、200,000~3,000,000であることがより好ましく、300,000~2,000,000であることがさらに好ましい。
【0018】
[充填剤]
本発明の組成物は、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む充填剤を含有する。
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラック及び白色充填剤(特にシリカ)の両方を含有するのがより好ましい。
【0019】
〔カーボンブラック〕
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0020】
〔白色充填剤〕
上記白色充填剤は特に限定されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、シリカが好ましい。
【0021】
上記シリカは特に限定されないが、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、湿式シリカであることが好ましい。
【0022】
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100~400m2/gであることが好ましく、150~300m2/gであることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0023】
〔含有量〕
本発明の組成物において、充填剤の含有量は、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、30~100質量部である。なかでも、50~90質量部であることが好ましく、60~80質量部であることがより好ましい。
【0024】
本発明の組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、10~30質量部であることがより好ましい。
【0025】
本発明の組成物が白色充填剤(特に、シリカ)を含有する場合、白色充填剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、10~90質量部であることが好ましく、30~70質量部であることがより好ましい。
【0026】
[特定発泡体]
本発明の組成物は、セルロース繊維を含むポリウレタン系発泡体であって、上記ポリウレタン系発泡体全体に対する上記セルロース繊維の割合(以下、「セルロース繊維含有量」とも言う)が1~25質量%である、ポリウレタン系発泡体(以下、「特定発泡体」とも言う)を含有する。
【0027】
〔ポリウレタン系発泡体〕
ポリウレタン系発泡体は、ポリウレタン系樹脂の発泡である。
また、ポリウレタン系樹脂は、ウレタン結合(-NH-COO-)を有する樹脂である。ポリウレタン系樹脂は、本発明の効果がより優れる理由から、ウレタン結合に加えて、ウレア結合(-NH-CO-NH-)を有する樹脂であるのが好ましい。
【0028】
上記ポリウレタン系樹脂は、本発明の効果がより優れる理由から、ポリオールとポリイソシアネートとの重合体であることが好ましい。
【0029】
<ポリオール>
ポリオールは、ヒドロキシ基(水酸基)を2個以上有する化合物である。
ポリオールは、20℃、1気圧において、液体であることが好ましい。
【0030】
ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール;ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマシ油の水素添加物であるヒマシ硬化油、ヒマシ油のアルキレンオキサイド5~50モル付加体等のヒマシ油系ポリオール;ポリエステルポリオール(特にセバシン酸系ポリエステルポリオール);アクリルポリオール、ポリブタジエンジオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素-炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。
【0031】
(水酸基価)
ポリオールの水酸基価は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、30~400mgKOH/gであることが好ましく、50~300mgKOH/gであることがより好ましく、100~250mgKOH/gであることがさらに好ましく、150~200mgKOH/gであることが特に好ましい。
なお、水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に記載の水酸基価であり、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数である。
【0032】
(好適な態様)
ポリオールは、本発明の効果がより優れる理由から、水酸基価30~400mgKOH/gの、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選択される少なくとも1種(以下、「特定ポリオール」とも言う)を含むのが好ましい。
ポリオールは、本発明の効果がより優れる理由から、特定ポリオールに加えて、さらに、2つ以上の水酸基を有するグリコールエーテルを含むのが好ましい。グリコールエーテルは、グリコールの片末端、又は両末端の水酸基がエーテル結合となった化合物を指す。
【0033】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネートは、イソシアネート基(-NCO)を2個以上有する化合物である。
【0034】
ポリイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI;例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族ポリイソシアネート(脂環式ポリイソシアネートを含む);
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;
これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0035】
ポリイソシアネートは、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。
上記MDIとしては、モノメリックMDI、ポリメリックMDI、変性MDI(例えば、カルボジイミド変性MDI)等が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリメリックMDIが好ましい。
【0036】
(平均官能基数)
ポリイソシアネートの平均官能基数は、本発明の効果がより優れる理由から、2.1以上であることが好ましく、2.3以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましく、2.7以上であることが特に好ましく、2.9以上であることが最も好ましい。
ポリイソシアネートの平均官能基数の上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
なお、平均官能基数は、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の平均の数を表す。
【0037】
(NCO%)
ポリイソシアネートのNCO%は、本発明の効果がより優れる理由から、5~80%であることが好ましく、10~50%であることがより好ましく、20~40%であることがさらに好ましい。
なお、NCO%は、ポリイソシアネート全体に対してイソシアネート基が占める割合(質量%)を表す。
【0038】
(好適な態様)
ポリイソシアネートは、本発明の効果がより優れる理由から、ジフェニルメタンジイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及び、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むのが好ましい。
【0039】
〔セルロース繊維〕
セルロース繊維はとくに制限されず、例えば木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、再生パルプ、古紙、バクテリアセルロース等を原料として公知の方法により得られたセルロース繊維を使用できる。
【0040】
<セルロース繊維含有量>
特定発泡体において、特定発泡体全体に対するセルロース繊維の割合(セルロース繊維含有量)は、1~25質量%である。
セルロース繊維含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、2~20質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましく、4~8質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
〔好適な態様〕
特定発泡体において、セルロース繊維は、本発明の効果がより優れる理由から、特定発泡体のポリウレタン系樹脂中に含まれているのが好ましい。
【0042】
特定発泡体は、本発明の効果がより優れる理由から、後述する本発明の発泡体であるのが好ましい。
【0043】
〔含有量〕
本発明の組成物において、特定発泡体の含有量は、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、1~30質量部である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、2~20質量部であることが好ましく、5~15質量部であることがより好ましい。
【0044】
[任意成分]
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに他の成分(任意成分)を含有することができる。
上記任意成分としては、例えば、上述した充填剤以外の充填剤、シランカップリング剤、テルペン樹脂(例えば、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、オイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0045】
〔シランカップリング剤〕
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に限定されない。
上記加水分解性基は特に限定されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0046】
上記有機官能基は特に限定されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基(特に、ポリスルフィド基(-Sn-:nは2以上の整数))、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0048】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した充填剤(特にシリカ)の含有量に対して2~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0050】
[タイヤ用ゴム組成物の製造方法]
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄又は加硫促進剤を含有する場合は、硫黄及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~155℃)で混合し、冷却してから、硫黄又は加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0051】
[2]特定発泡体の製造方法
上述した特定発泡体を製造する方法は特に制限されないが、得られる発泡体をタイヤ用ゴム組成物に使用したときに本発明の効果がより優れる理由から、下記(1)~(2)の工程を備える方法(以下、「本発明の製造方法」とも言う)であることが好ましい。なお、以下、「得られる発泡体をタイヤ用ゴム組成物に使用したときに本発明の効果がより優れる」ことを単に「本発明の効果がより優れる」とも言う。
【0052】
(1)分散工程
セルロース繊維とポリオールとを混合することで、分散系を得る工程
(2)重合工程
上記分散系に、ポリイソシアネートを混合することで、水の存在下で上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素を発生させて、上記セルロース繊維を含むポリウレタン系発泡体を得る工程
【0053】
以下、本発明の製造方法について説明する。
【0054】
[分散工程]
分散工程は、セルロース繊維とポリオールとを混合することで、分散系を得る工程である。
【0055】
分散工程で使用されるセルロース繊維及びポリオールについては上述のとおりである。
【0056】
[重合工程]
重合工程は、分散工程で得られた分散系に、ポリイソシアネートを混合することで、水の存在下でポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素を発生させて、セルロース繊維を含むポリウレタン系発泡体を得る工程である。
【0057】
重合工程で使用されるポリイソシアネートについては上述のとおりである。
【0058】
重合工程では、ポリオールのヒドロキシ基とポリイソシアネートのイソシアネート基とが反応して、ウレタン結合(-NH-COO-)を形成する。また、水が存在するため、水とイソシアネート基が反応して、アミノ基を生成する。このとき二酸化炭素が発生する。さらに、生成したアミノ基はイソシアネート基と反応して、ウレア結合(-NH-CO-NH-)を形成する。
結果として、上記重合工程では、ポリオールとポリイソシアネートとが重合して、ウレタン結合及びウレア結合を有するポリウレタン系樹脂が生成する。このとき、上述のとおり二酸化炭素が発生するため、生成するポリウレタン系樹脂は、発泡体となる。
【0059】
重合工程で得られたポリウレタン系発泡体は、所望の大きさに粉砕してから使用するのが好ましい。
【0060】
[水]
本発明の製造方法においては、分散工程及び重合工程の少なくとも一方で水を混合する。本発明の効果がより優れる理由から、重合工程で水を混合するのが好ましい。
【0061】
〔水/イソシアネート基〕
ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する水のモル比(以下、「水/イソシアネート基」とも言う)は、本発明の効果がより優れる理由から、0.03~0.6であることが好ましく、0.1~0.5であることがより好ましい。
【0062】
[シリコーン系界面活性剤]
本発明の製造方法においては、本発明の効果がより優れる理由から、分散工程及び重合工程の少なくとも一方でシリコーン系界面活性剤を混合するのが好ましく、分散工程でシリコーン系界面活性剤を混合するのがより好ましい。
【0063】
シリコーン系界面活性剤は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
シリコーン系界面活性剤は、ポリシロキサン鎖及びポリオキシアルキレン鎖を有し、主鎖であるポリシロキサン鎖に、ポリオキシアルキレン鎖が変性されたものであることが好ましい。
上記ポリシロキサン鎖は、オルガノポリシロキサン鎖であることが好ましい。オルガノポリシロキサン鎖の具体例としては、ポリジメチルシロキサン鎖が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等の1種のオキシアルキレン基から構成されたポリオキシアルキレン鎖、及び、オキシエチレンオキシプロピレンブロック鎖、オキシエチレンオキシプロピレンランダム鎖等の2種以上のオキシアルキレン基から構成されたポリオキシアルキレン鎖が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の使用量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ポリオールに対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0064】
[触媒]
本発明の製造方法においては、本発明の効果がより優れる理由から、分散工程及び重合工程の少なくとも一方で触媒を混合するのが好ましく、重合工程で触媒を混合するのがより好ましい。
【0065】
触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応、又は、ポリイソシアネートと水との反応を促進する触媒であれば特に制限されないが、ポリイソシアネートと水との反応を促進する触媒であることが好ましい。
【0066】
触媒は、本発明の効果がより優れる理由から、反応性触媒であることが好ましい。
ここで、反応性触媒の反応性とは、イソシアネート基と反応し得ることを意味する。
反応性触媒は、本発明の効果がより優れる理由から、アミン、ヒドロキシ基を有する化合物であることが好ましく、ヒドロキシ基を有するアミン(特に、ヒドロキシ基を有する3級アミン)であることがより好ましく、アルコール基(-ROH、R:アルキレン基)を3個有する3級アミンであることがさらに好ましく、トリエタノールアミンであることが特に好ましい。
【0067】
[イソシアネート基/活性水素基]
本発明の製造方法において、活性水素基に対するイソシアネート基のモル比(以下、「イソシアネート基/活性水素基」とも言う)は、本発明の効果がより優れる理由から、1.1~6.0であることが好ましく、1.2~5.0であることがより好ましく、1.3~4.0であることがさらに好ましく、1.4~3.0であることが特に好ましい。
ここで、活性水素基とは、ポリオールのヒドロキシ基を指し、触媒であるアミンやヒドロキシ基を有する化合物が存在する場合には、ポリオールのヒドロキシ基に加えて、上記アミンのアミノ基や上記ヒドロキシ基を有する化合物のヒドロキシ基を指す。なお、水のヒドロキシ基(水酸基)は、活性水素基に含まれない。
【0068】
[粉砕工程]
本発明の製造方法は、さらに、上述した重合工程によって得られたポリウレタン系発泡体を粉砕することで、特定発泡体の粉砕物を得る、粉砕工程を備えていてもよい。粉砕工程は、タイヤ用ゴム組成物を製造する前にポリウレタン系発泡体のみを粉砕することによって行うのでも、タイヤ用ゴム組成物を製造する際の混練によって行うのでも、これらの両方によって行うのでもよい。なお、本明細書において、特定発泡体は、特定発泡体の粉砕物を含む概念である。
【0069】
〔粉砕前〕
【0070】
<気泡の平均径>
粉砕前の気泡の平均径は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1~500μmであることが好ましく、10~300μmであることがより好ましい。
なお、気泡の平均径は、各種顕微鏡写真の画像解析によってその円相当径の平均値として測定することができる。
【0071】
〔粉砕後〕
【0072】
<セルロース繊維の平均繊維長>
粉砕後のセルロース繊維の平均繊維長は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1μm以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。
なお、平均繊維長は、各種顕微鏡写真の画像解析によってその平均値として測定することができる。
【0073】
<セルロール繊維の平均繊維径>
粉砕後のセルロース繊維の平均繊維径は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、70nm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、200nm以下である。
なお、平均繊維径は、各種顕微鏡写真の画像解析によってその平均値として測定することができる。
【0074】
<セルロース繊維のアスペクト比>
粉砕後のセルロース繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、500以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましい。
【0075】
<特定発泡体の大きさ>
粉砕後の特定発泡体の大きさは特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1~1000μmであることが好ましく、10~500μmであることがより好ましく、20~200μmであることがさらに好ましく、30~100μmであることが特に好ましい。
なお、特定発泡体の大きさは、各種顕微鏡写真の画像解析によってその円相当径の平均値として測定することができる。
【0076】
[3]本発明の発泡体
本発明の発泡体は、上述した本発明の製造方法によって製造されたポリウレタン系発泡体である。
【0077】
なお、本発明の発泡体に関し、以下のとおり、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが」が不可能又はおよそ非実際的である事情が存在する。
【0078】
本発明の製造方法の重合工程においては、ポリオールのヒドロキシ基とポリイソシアネートのイソシアネート基との反応(ウレタン結合の形成)、ポリイソシアネートのイソシアネート基と水との反応(アミノ基の生成)、水との反応によって生成したアミノ基とポリイソシアネートのイソシアネート基との反応(ウレア結合の形成)が競合する。すなわち、上記重合工程においては、ポリイソシアネートとして、水と反応して一部のイソシアネート基がアミノ基になったもの、水と反応して全てのイソシアネート基がアミノ基になったもの、水と反応せずに全てのイソシアネート基がそのまま残ったものが混在し、これらがポリオール又はポリイソシアネートと反応する。そのため、本発明の発泡体の構造は極めて複雑なものとなり一般式で表すことは到底できない。このことは当業者の技術常識である。そして、構造が特定されなければそれに応じて決まるその物質の特性も容易には分からないこと、及び、異なる複数のモノマーを反応させるにあたっては、それらの配合比、反応条件を変化させれば、得られるポリウレタン系発泡体の特性が大きく変化することから、特性で表現することも到底できない。すなわち、本発明の発泡体は、その構造又は特性により直接特定することが不可能であり、ポリウレタン系発泡体を得るためのプロセスによって初めて特定することが可能なものである。
【0079】
[4]タイヤ
本発明のタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造されたタイヤである。本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
本発明のタイヤは、スタッドレスタイヤであることが好ましい。
【0080】
図2に、本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示す。ただし、本発明のタイヤは
図2に示す態様に限定されるものではない。
【0081】
図2において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5及びビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、符号2~3、5~6及び8の少なくともいずれか(好ましくは符号3)は上述した本発明の組成物により形成されている。
【0082】
本発明のタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例0083】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
[発泡体等の製造]
以下のとおり、各発泡体等を製造した。
なお、発泡体1~10は、セルロース繊維含有量が1~25質量%のポリウレタン系発泡体であるため、上述した特定発泡体に該当する。一方、比較発泡体1は、セルロース繊維を含まないため、上述した特定発泡体に該当しない。また、比較発泡体2は、セルロース繊維を含むが、セルロース繊維含有量が25質量%を超えるため、上述した特定発泡体に該当しない。
【0085】
〔発泡体1〕
【0086】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)11.7gと、ポリエステルポリオール(伊藤製油社製URIC SE-1013C、水酸基価:117mgKOH/g)106gと、シリコーン系界面活性剤(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製Niax silicone L-5345)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0087】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(日本触媒社製トリエタノールアミン)13.0gを投入し、公転回転数1300rpm(rotations per minite)、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)(東ソー社製ミリオネートMR-400)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を発泡体1とも言う。
【0088】
発泡体1は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。発泡体1のセルロース繊維含有量は5質量%である。また、発泡体1の気泡の平均径は約113μmである。
【0089】
〔発泡体2〕
【0090】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)12.5gと、ポリブタジエンポリオール(出光興産社製Poly bd R-15HT、水酸基価:101mgKOH/g)123gと、シリコーン系界面活性剤(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製Niax silicone L-6164)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0091】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(日本触媒社製トリエタノールアミン)13.0gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMR-400)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を発泡体2とも言う。
【0092】
発泡体2は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。発泡体2のセルロース繊維含有量は5質量%である。また、発泡体2の気泡の大きさは約122μmである。
【0093】
〔発泡体3〕
【0094】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)20.0gと、ポリイソプレンポリオール(出光興産社製Poly ip、水酸基価:47mgKOH/g)260gと、シリコーン系界面活性剤(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製Niax silicone L-6164)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0095】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(東京化成工業社製N-メチルジエタノールアミン)10.5gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMR-400)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を発泡体3とも言う。
【0096】
発泡体3は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。発泡体3のセルロース繊維含有量は5質量%である。また、発泡体3の気泡の平均径は約153μmである。
【0097】
〔発泡体4〕
【0098】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)18.7gと、ポリオレフィンポリオール(出光興産社製EPOL、水酸基価:51mgKOH/g)240gと、シリコーン系界面活性剤(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製Niax silicone L-6164)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0099】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(東京化成工業社製N-メチルジエタノールアミン)10.5gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMR-400)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を発泡体4とも言う。
【0100】
発泡体4は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。発泡体4のセルロース繊維含有量は5質量%である。また、発泡体4の気泡の平均径は約136μmである。
【0101】
〔発泡体5〕
【0102】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)9.7gと、ヒマシ油系ポリオール(伊藤製油社製URIC AC-009、水酸基価:223mgKOH/g)68gと、シリコーン系界面活性剤(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製Niax silicone L-5111)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0103】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(日本触媒社製トリエタノールアミン)13.0gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、ジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMT)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を発泡体5とも言う。
【0104】
発泡体5は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。発泡体5のセルロース繊維含有量は5質量%である。また、発泡体5の気泡の平均径は約118μmである。
【0105】
〔発泡体6〕
【0106】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)18.5gと、ポリカプロラクトンポリオール(ダイセル社製プラクセル L212AL 、水酸基価:90mgKOH/g)247gと、シリコーン系界面活性剤(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製Niax silicone L-5345)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0107】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(サンアプロ社製U-CAT SA 102 )1.5gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、1,5ーペンタンジイソシアネートのイソシアヌレート体(三井化学社製スタビオ D-370N)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を発泡体6とも言う。
【0108】
発泡体6は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。発泡体6のセルロース繊維含有量は5質量%である。また、発泡体6の気泡の平均径は約141μmである。
【0109】
〔発泡体7〕
【0110】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)3.0gと、ポリカーボネートポリオール(旭化成社製デュラノール T5650J、水酸基価:140mgKOH/g)80gと、シリコーン系界面活性剤(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製Niax silicone L-5111)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0111】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(日本触媒社製トリエタノールアミン)13.0gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMTL)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を発泡体7とも言う。
【0112】
発泡体7は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。発泡体7のセルロース繊維含有量は1.5質量%である。また、発泡体7の気泡の平均径は約175μmである。
【0113】
〔発泡体8〕
【0114】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)20.0gと、ヒマシ油系ポリオール(伊藤製油社製URIC H-30、水酸基価:160mgKOH/g)30gと、グリコールエーテル(日本乳化剤社製、BA-4JU、水酸基価:280mgKOH/g)27g、シリコーン系界面活性剤(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製Niax silicone L-5111)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0115】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(日本触媒社製トリエタノールアミン) 13.0gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMR-400)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を発泡体8とも言う。
【0116】
発泡体8は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。発泡体8のセルロース繊維含有量は10質量%である。また、発泡体8の気泡の平均径は約109μmである。
【0117】
〔発泡体9〕
【0118】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)40.0gと、ヒマシ油系ポリオール(伊藤製油社製URIC HF-2009、水酸基価:43mgKOH/g)175gと、ポリイソプレンポリオール(出光興産社製Poly ip、水酸基価:47mgKOH/g)40gと、グリコールエーテル(日本乳化剤社製、BA-4JU、水酸基価:280mgKOH/g)10gと、シリコーン系界面活性剤(ダウ・東レ社製、VORASURF SH 193 Additive)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0119】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(東京化成工業社製N-メチルジエタノールアミン)10.5gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMR-400)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を発泡体9とも言う。
【0120】
発泡体9は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。発泡体9のセルロース繊維含有量は10質量%である。また、発泡体9の気泡の平均径は約119μmである。
【0121】
〔発泡体10〕
【0122】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)100.0gと、ヒマシ油系ポリオール(伊藤製油社製URIC HF-2009、水酸基価:43mgKOH/g)175gと、ポリイソプレンポリオール(出光興産社製Poly ip、水酸基価:47mgKOH/g)40gと、グリコールエーテル(日本乳化剤社製、BA-4JU、水酸基価:280mgKOH/g)10gと、シリコーン系界面活性剤(ダウ・東レ社製、VORASURF SH 193 Additive)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0123】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(東京化成工業社製N-メチルジエタノールアミン)10.5gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMR-400)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を発泡体10とも言う。
【0124】
発泡体10は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。発泡体10のセルロース繊維含有量は23質量%である。また、発泡体10の気泡の平均径は約123μmである。
【0125】
〔比較発泡体1〕
ヒマシ油系ポリオール(伊藤製油社製URIC HF-2009、水酸基価:43mgKOH/g)175gと、ポリイソプレンポリオール(出光興産社製Poly ip、水酸基価:47mgKOH/g)40gと、グリコールエーテル(日本乳化剤社製、BA-4JU、水酸基価:280mgKOH/g)10gと、シリコーン系界面活性剤(ダウ・東レ社製、VORASURF SH 193 Additive)2.2gと、水1.7gと、3級アミン触媒(東京化成工業社製N-メチルジエタノールアミン)10.5gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMR-400)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素(泡)を発生させて、ポリウレタン系発泡体を得た。得られたポリウレタン系発泡体を比較発泡体1とも言う。
【0126】
比較発泡体1は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)の発泡体である。比較発泡体1の気泡の平均径は約366μmである。
【0127】
〔比較発泡体2〕
【0128】
<分散工程>
セルロース繊維(星光PMC社製T-NP144)150.0gと、ヒマシ油系ポリオール(伊藤製油社製URIC HF-2009、水酸基価:43mgKOH/g)175gと、ポリイソプレンポリオール(出光興産社製Poly ip、水酸基価:47mgKOH/g)40gと、グリコールエーテル(日本乳化剤社製、BA-4JU、水酸基価:280mgKOH/g)10gと、シリコーン系界面活性剤(ダウ・東レ社製、VORASURF SH 193 Additive)2.2gをディゾルバー式撹拌機で回転数600rpmで5分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0129】
<重合工程>
得られた分散系を、ディゾルバー付攪拌機から、自転公転撹拌機に移し、水1.7gと、3級アミン触媒(東京化成工業社製N-メチルジエタノールアミン)10.5gを投入し、公転回転数1300rpm、自転回転数850rpmで1分間撹拌した。次いでこれに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMR-400)100gを投入し、30秒間攪拌することで、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させた。このとき泡の発生は見られなかった。セルロース繊維の量が多過ぎたためと推測される。得られたポリウレタン系樹脂を比較発泡体2とも言う。
【0130】
比較発泡体2は、ウレタン結合及びウレア結合を有する樹脂(ポリウレタン系樹脂)であり、樹脂中にセルロース繊維が含まれている。比較発泡体2のセルロース繊維含有量は30質量%である。比較発泡体2は発泡体ではない。
【0131】
[タイヤ用ゴム組成物の調製]
表1に示す成分を、同表に示す割合(質量部)で配合した。具体的には、まず硫黄及び加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。次に、得られたマスターバッチに硫黄及び加硫促進剤をオープンロールで混練し、タイヤ用ゴム組成物(実施例及び比較例)を得た。なお、発泡体等(発泡体1~10、比較発泡体1~2)は約1cm角にした後、ミキサーへ投入した。また、発泡体等は、ミキサー投入後に粉砕されて、タイヤ用ゴム組成物中での大きさは約70μmであった。また、タイヤ用ゴム組成物において、発泡体等中のセルロース繊維の平均繊維長は約10μm、平均繊維径は約100nmであった。
【0132】
[評価]
得られたタイヤ用ゴム組成物について、以下の評価を行った。
【0133】
〔ウェット性能〕
得られたタイヤ用ゴム組成物を、所定形状の金型(内寸:長さ150mm、幅150mm、厚さ2mm)を用いて170℃、10分間加硫し、加硫ゴム試験片を作成した。その加硫ゴム試験片の動的粘弾性を、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件にて測定し、tanδ(0℃)を求めた。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1に示した。この指数が大きいほどtanδ(0℃)が大きく、ウェット性能(ウェットグリップ性能)が優れることを意味する。実用上、105以上であることが好ましい。
【0134】
〔氷上性能〕
得られたタイヤ用ゴム組成物を、所定形状の金型(内寸:長さ150mm、幅150mm、厚さ2mm)を用いて170℃、10分間加硫し、加硫ゴム試験片を作成した。その加硫ゴム試験片を偏平円柱状の台ゴムに貼り付け、インサイドドラム型氷上摩擦試験機を用いて、測定温度-3.0℃、荷重5.5kg/cm2、ドラム回転速度25km/h(時間)の条件で氷上摩擦係数を測定した。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1に示した。この指数が大きいほど氷上摩擦力が大きく、氷上性能に優れることを意味する。実用上、105以上であることが好ましい。
【0135】
【0136】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム(STR20、ガラス転移温度:-65℃、ボンバンディット社製)
・BR:ポリブタジエンゴム(Nipol BR1220、ガラス転移温度:-110℃、日本ゼオン社製)
・シリカ:ULTRASIL VN3(エボニック・デグッサ社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製)
・シランカップリング剤:シランカップリング剤(Si69、エボニック・デグッサ社製)
・発泡体1~10:上述のとおり製造したもの
・比較発泡体1~2:上述のとおり製造したもの
・セルロース繊維:T-NP144(星光PMC社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸YR(日本油脂社製)
・老化防止剤:アミン系老化防止剤(サントフレックス 6PPD、フレクシス社製)
・ワックス:パラフィンワックス(大内新興化学社製)
・オイル:アロマオイル(エクストラクト4号S、昭和シェル石油社製)
・硫黄:5%油処理硫黄(細井化学社製)
・加硫促進剤:スルフェンアミド系加硫促進剤(サンセラーCM-G、三新化学社製)
【0137】
なお、表1中、「イソシアネート基/活性水素基」は各例で使用された発泡体等の「イソシアネート基/活性水素基」を表し、「水/イソシアネート基」は各例で使用された発泡体等の「水/イソシアネート基」を表し、「セルロース繊維含有量」は各例で使用された発泡体等のセルロース繊維含有量を表す。
【0138】
表1から分かるように、特定発泡体を含有する実施例1~10は、いずれも優れたウェット性能及び氷上性能を示した。
【0139】
実施例1~9の対比(特定発泡体のセルロース繊維含有量が1~20質量%の態様同士の対比)から、特定発泡体のポリウレタン系樹脂を構成するポリオールが、特定ポリオールに加えて、さらに、グリコールエーテルを含む実施例8~9は、より優れた氷上性能を示した。
また、実施例9~10の対比(特定発泡体のセルロース繊維含有量のみが異なる態様同士の対比)から、特定発泡体のセルロース繊維含有量が20質量%以下である実施例9は、より優れた氷上性能を示した。
【0140】
また、実施例1~7の対比(特定発泡体のポリウレタン系樹脂を構成するポリオールがグリコールエーテルを含まない態様同士の対比)から、特定発泡体のポリウレタン系樹脂が反応性触媒の存在下でポリオールとポリイソシアネートとを重合させたものである実施例1~5及び実施例7は、より優れた氷上性能を示した。なかでも、実施例1~5の対比(特定発泡体のセルロース繊維含有量が5質量%の態様同士の対比)から、特定発泡体のポリウレタン系樹脂を構成するポリオールの水酸基価が110mgKOH/g以上である実施例及び実施例5は、より優れた氷上性能を示した。そのなかでも、特定発泡体のポリウレタン系樹脂を構成するポリイソシアネートがポリメリックMDIである実施例1は、より優れたウェット性能を示した。
【0141】
一方、特定発泡体を含有しない標準例1、セルロース繊維を含まないポリウレタン系発泡体を含有する比較例1、セルロース繊維含有量が25質量%を超えるポリウレタン系樹脂を含有する比較例2、特定発泡体の代わりにセルロース繊維のみを配合した比較例3、及び、ポリウレタン系発泡体とセルロース繊維とを別々に配合した比較例4は、氷上性能及びウェット性能が不十分であった。