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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130762
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ステアリングストッパ装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240920BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B62D5/04
F16H1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040657
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆英
【テーマコード(参考)】
3D333
3J027
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB29
3D333CB45
3D333CC16
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD16
3D333CD21
3D333CD22
3D333CD23
3D333CE53
3J027FB02
3J027GB02
3J027GC22
3J027GD02
3J027GD08
3J027GD14
(57)【要約】
【課題】高い強度を必要とせず、コンパクトなステアリングストッパ装置を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール2の回転が入力されるリングギヤ25と、リングギヤ25の回転中心を中心に回転可能に支持される遊星キャリヤ27と、リングギヤ25の回転を減速して遊星キャリヤ27に伝達する減速機構16と、リングギヤ25に設けられたストッパ17と、遊星キャリヤ27に設けられたストッパ受け部18とを有し、ストッパ17をストッパ受け部18で周方向に受け止めることでステアリングホイール2の回転角度を規制する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール(2)の回転が入力される入力側回転部材と、
前記入力側回転部材の回転中心を中心に回転可能に支持される出力側回転部材と、
前記入力側回転部材の回転を減速して前記出力側回転部材に伝達する減速機構(16)と、
前記入力側回転部材と一体に回転するように前記入力側回転部材に設けられたストッパ(17)と、
前記ストッパ(17)と同一円周上に位置し、前記出力側回転部材と一体に回転するように前記出力側回転部材に設けられたストッパ受け部(18)と、を有し、
前記入力側回転部材と一体に回転する前記ストッパ(17)を、前記出力側回転部材と一体に回転する前記ストッパ受け部(18)で周方向に受け止めることで前記ステアリングホイール(2)の回転角度を規制するステアリングストッパ装置。
【請求項2】
前記減速機構(16)は、サンギヤ(24)と、前記サンギヤ(24)を囲む環状に形成された内歯のリングギヤ(25)と、前記リングギヤ(25)の内周と前記サンギヤ(24)の外周との間に周方向に間隔をおいて配置され、前記リングギヤ(25)と前記サンギヤ(24)に同時に噛み合う複数の遊星ギヤ(26)と、前記複数の遊星ギヤ(26)を自転可能に支持する遊星キャリヤ(27)とを有する遊星歯車減速機構である請求項1に記載のステアリングストッパ装置。
【請求項3】
前記サンギヤ(24)は回転しないように固定して設けられ、
前記リングギヤ(25)が、前記入力側回転部材であり、
前記遊星キャリヤ(27)が、前記出力側回転部材である請求項2に記載のステアリングストッパ装置。
【請求項4】
前記リングギヤ(25)は、前記ステアリングホイール(2)の回転が入力されるリングギヤ軸部(30)と、内歯(29)を内周にもつ環状のリングギヤ本体部(31)と、前記リングギヤ軸部(30)と前記リングギヤ本体部(31)との間を連結するリングギヤフランジ部(32)とを有し、
前記遊星キャリヤ(27)は、前記複数の遊星ギヤ(26)を自転可能に支持する複数の遊星軸(36)と、前記複数の遊星軸(36)の軸方向端部を支持するキャリヤフランジ部(37)とを有し、
前記キャリヤフランジ部(37)は、前記リングギヤフランジ部(32)と軸方向に対向するように前記遊星ギヤ(26)に対して前記リングギヤフランジ部(32)の側に配置され、
前記ストッパ(17)は、前記リングギヤフランジ部(32)に設けられ、
前記ストッパ受け部(18)は、前記キャリヤフランジ部(37)に設けられている請求項3に記載のステアリングストッパ装置。
【請求項5】
前記リングギヤ(25)は回転しないように固定して設けられ、
前記サンギヤ(24)が、前記入力側回転部材であり、
前記遊星キャリヤ(27)が、前記出力側回転部材である請求項2に記載のステアリングストッパ装置。
【請求項6】
前記サンギヤ(24)は、前記外歯を外周にもつサンギヤ本体部(41)と、前記ステアリングホイール(2)の回転を前記サンギヤ本体部(41)に伝達するサンギヤ軸部(42)とを有し、
前記遊星キャリヤ(27)は、前記複数の遊星ギヤ(26)を自転可能に支持する複数の遊星軸(36)と、前記複数の遊星軸(36)の軸方向端部を支持するキャリヤフランジ部(37)とを有し、
前記キャリヤフランジ部(37)は、前記遊星ギヤ(26)に対して前記サンギヤ軸部(42)の側に配置され、
前記ストッパ(17)は、前記サンギヤ軸部(42)に設けられ、
前記ストッパ受け部(18)は、前記キャリヤフランジ部(37)に設けられている請求項5に記載のステアリングストッパ装置。
【請求項7】
前記遊星キャリヤ(27)は回転しないように固定して設けられ、
前記サンギヤ(24)が、前記入力側回転部材であり、
前記リングギヤ(25)が、前記出力側回転部材である請求項2に記載のステアリングストッパ装置。
【請求項8】
前記減速機構(16)は、前記回転中心から偏心した位置を中心とする円筒状の外周をもつ偏心軸部(50)と、前記偏心軸部(50)の外周に装着された転がり軸受(51)と、前記転がり軸受(51)を囲むように前記転がり軸受(51)の径方向外側に設けられ、一定の周方向ピッチで並ぶ複数のカム溝(56)を内周にもつカム外輪(52)と、前記転がり軸受(51)の外周と前記カム外輪(52)の内周との間に配置される複数のローラ(53)と、前記複数のローラ(53)をそれぞれ径方向に移動可能に収容する複数のポケット(57)が周方向に等間隔に形成されたローラ保持器(54)とを有するローラ減速機構である請求項1に記載のステアリングストッパ装置。
【請求項9】
前記カム外輪(52)は回転しないように固定して設けられ、
前記偏心軸部(50)が、前記入力側回転部材であり、
前記ローラ保持器(54)が、前記出力側回転部材である請求項8に記載のステアリングストッパ装置。
【請求項10】
前記減速機構(16)は、前記回転中心から偏心した位置を中心とする円筒状の外周をもつ偏心軸部(60)と、前記偏心軸部(60)の外周に転がり軸受(61)を介して支持される偏心板部(62)と、前記偏心板部(62)と軸方向に対向して配置され、前記回転中心を中心に回転可能に支持される非偏心板部(63)と、前記偏心板部(62)の前記非偏心板部(63)との軸方向の対向面に形成された環状の第1カム溝(64)と、前記非偏心板部(63)の前記偏心板部(62)との軸方向の対向面に形成された環状の第2カム溝(65)と、前記第1カム溝(64)と前記第2カム溝(65)とに転がり接触するように前記偏心板部(62)と前記非偏心板部(63)の軸方向の対向面間に一定の周方向ピッチで組み込まれた複数のボール(66)とを有するボール減速機構であり、
前記偏心軸部(60)が、前記入力側回転部材であり、
前記非偏心板部(63)が、前記出力側回転部材である請求項1に記載のステアリングストッパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリングホイールの回転角度を規制するステアリングストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者によるステアリングホイールの回転操作に応じて、車両の転舵輪の向きを変化させるステアリング装置として、ステアバイワイヤ方式のものが知られている(例えば、特許文献1)。ステアバイワイヤ方式のステアリング装置は、ステアリングホイールの操作量を検知する操舵センサと、ステアリングホイールに対して機械的に切り離して設けられた転舵アクチュエータとを有し、その転舵アクチュエータが、操舵センサで検知されるステアリングホイールの操作量に応じて作動し、左右一対の転舵輪の向きを変化させる。
【0003】
このステアバイワイヤ方式のステアリング装置は、運転者によるステアリングホイールの操作量をいったん電気信号に変換し、その電気信号に基づいて転舵アクチュエータの動作を制御するので、例えば、ステアリングホイールを操作したときの転舵輪の向きの変化量を車両の走行速度に応じて調整するといったように、車両の走行速度に応じてステアリングホイールの操作量と転舵アクチュエータの動作量の対応関係を最適化することが可能であり、車両の走行安定性や運動性能の向上を可能とするものとして期待されている。
【0004】
ところで、特許文献1のステアリング装置には、ステアリングホイールが、予め設定された角度範囲を超えて回転操作されるのを防止するため、ステアリングストッパ装置が組み込まれている。特許文献1のステアリングストッパ装置は、ステアリングホイールに接続されたステアリングシャフトの外周の周方向の1箇所に外周突起を設けるとともに、ステアリングシャフトを回転可能に収容する筒状のステアリングコラムの内周の周方向の1箇所に内周突起を設け、ステアリングシャフトの外周突起をステアリングコラムの内周の内周突起で周方向に受け止めることで、ステアリングホイールの回転角度を規制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-172202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のステアリングストッパ装置は、ステアリングシャフトの外周に設けた外周突起を、ステアリングコラムの内周に設けた内周突起で周方向に受け止める構成なので、ステアリングホイールの回転が規制される角度位置を、中立位置から180°未満の角度位置にしか設定することができない。
【0007】
そこで、本願の発明者らは、ステアリングホイールの回転を中立位置から180°以上の角度位置で規制できるようにするため、ステアリングホイールと一体に回転するステアリングシャフトに減速機を接続することを検討した。具体的には、ステアリングシャフトに減速機の入力軸を接続し、その減速機の出力軸にストッパを設け、減速機のハウジングに、ストッパを周方向に受け止めるストッパ受け部を設けることを検討した。
【0008】
このようにすると、ステアリングシャフトを回転させたときの減速機の出力軸の回転角度は、ステアリングシャフトの回転角度よりも小さいので、ステアリングホイールの回転を中立位置から180°以上の角度位置で規制することが可能となる。
【0009】
しかしながら、減速機の出力軸に設けたストッパを、減速機のハウジングに設けたストッパ受け部で受け止めるようにした場合、減速機のハウジングの強度が不足するおそれがある。
【0010】
すなわち、減速機の入力軸に回転トルクを入力すると、減速機の出力軸からは、減速機の減速により増大した回転トルク(具体的には、入力軸に入力される回転トルクに、減速機の減速比を乗じた大きさの回転トルク)が出力される。そのため、減速機の出力軸にストッパを設け、減速機のハウジングにストッパ受け部を設けたのでは、ストッパをストッパ受け部で周方向に受け止めたときに、減速機のハウジングのストッパ受け部の部分に大きな荷重がかかることとなる。一方、減速機のハウジングは、一般にプレス材やダイカスト材などで成形され、大きな荷重がかかることは想定されていない。そのため、減速機の出力軸にストッパを設け、減速機のハウジングにストッパ受け部を設けたのでは、減速機のハウジングの強度が不足するおそれがあるという問題に発明者らは着目した。
【0011】
また、減速機の出力軸にストッパを設け、減速機のハウジングにストッパ受け部を設けたのでは、ストッパ受け部を設ける分、減速機のハウジングが大型化するという問題もある。
【0012】
この発明が解決しようとする課題は、高い強度を必要とせず、コンパクトなステアリングストッパ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成のステアリングストッパ装置を提供する。
[構成1]
ステアリングホイールの回転が入力される入力側回転部材と、
前記入力側回転部材の回転中心を中心に回転可能に支持される出力側回転部材と、
前記入力側回転部材の回転を減速して前記出力側回転部材に伝達する減速機構と、
前記入力側回転部材と一体に回転するように前記入力側回転部材に設けられたストッパと、
前記ストッパと同一円周上に位置し、前記出力側回転部材と一体に回転するように前記出力側回転部材に設けられたストッパ受け部と、を有し、
前記入力側回転部材と一体に回転する前記ストッパを、前記出力側回転部材と一体に回転する前記ストッパ受け部で周方向に受け止めることで前記ステアリングホイールの回転角度を規制するステアリングストッパ装置。
【0014】
この構成を採用すると、入力側回転部材と一体に回転するストッパが、出力側回転部材と一体に回転するストッパ受け部で周方向に受け止められて、入力側回転部材と出力側回転部材のそれ以上の相対回転が阻止されたときに、入力側回転部材に入力される回転トルクがそのままの大きさでストッパおよびストッパ受け部に作用することとなり、減速機構の減速により増大した回転トルク(具体的には、入力側回転部材に入力される回転トルクに、減速機構の減速比を乗じた大きさの回転トルク)がストッパおよびストッパ受け部に作用するのを回避することができる。そのため、ストッパおよびストッパ受け部にかかる荷重を低く抑えることができ、高い強度を必要としない。また、ストッパとストッパ受け部が、減速機構の内部(入力側回転部材と出力側回転部材)にあるので、コンパクトである。
【0015】
[構成2]
前記減速機構は、サンギヤと、前記サンギヤを囲む環状に形成された内歯のリングギヤと、前記リングギヤの内周と前記サンギヤの外周との間に周方向に間隔をおいて配置され、前記リングギヤと前記サンギヤに同時に噛み合う複数の遊星ギヤと、前記複数の遊星ギヤを自転可能に支持する遊星キャリヤとを有する遊星歯車減速機構である構成1に記載のステアリングストッパ装置。
【0016】
この構成を採用すると、減速機構として遊星歯車減速機構を採用しているので、特にコンパクトなステアリングストッパ装置を得ることができる。
【0017】
[構成3]
前記サンギヤは回転しないように固定して設けられ、
前記リングギヤが、前記入力側回転部材であり、
前記遊星キャリヤが、前記出力側回転部材である構成2に記載のステアリングストッパ装置。
【0018】
この構成を採用すると、入力側回転部材の回転方向と出力側回転部材の回転方向とが同じ方向となるので、ステアリングホイールの回転を中立位置から180°以上の角度位置で規制することができる。しかも、入力側回転部材としてのリングギヤと、出力側回転部材としての遊星キャリヤの速度差が小さい(減速比が2未満となる)ので、ステアリングホイールの回転が規制される角度位置を、特に大きく設定することが可能である。
【0019】
[構成4]
前記リングギヤは、前記ステアリングホイールの回転が入力されるリングギヤ軸部と、内歯を内周にもつ環状のリングギヤ本体部と、前記リングギヤ軸部と前記リングギヤ本体部との間を連結するリングギヤフランジ部とを有し、
前記遊星キャリヤは、前記複数の遊星ギヤを自転可能に支持する複数の遊星軸と、前記複数の遊星軸の軸方向端部を支持するキャリヤフランジ部とを有し、
前記キャリヤフランジ部は、前記リングギヤフランジ部と軸方向に対向するように前記遊星ギヤに対して前記リングギヤフランジ部の側に配置され、
前記ストッパは、前記リングギヤフランジ部に設けられ、
前記ストッパ受け部は、前記キャリヤフランジ部に設けられている構成3に記載のステアリングストッパ装置。
【0020】
この構成を採用すると、遊星キャリヤのキャリヤフランジ部が、リングギヤフランジ部と軸方向に対向するように遊星ギヤに対してリングギヤフランジ部の側に配置され、そのキャリヤフランジ部とリングギヤフランジ部に、それぞれストッパ受け部とストッパが設けられているので、軸方向にコンパクトである。
【0021】
[構成5]
前記リングギヤは回転しないように固定して設けられ、
前記サンギヤが、前記入力側回転部材であり、
前記遊星キャリヤが、前記出力側回転部材である構成2に記載のステアリングストッパ装置。
【0022】
この構成を採用すると、入力側回転部材の回転方向と出力側回転部材の回転方向とが同じ方向となるので、ステアリングホイールの回転を中立位置から180°以上の角度位置で規制することができる。
【0023】
[構成6]
前記サンギヤは、前記外歯を外周にもつサンギヤ本体部と、前記ステアリングホイールの回転を前記サンギヤ本体部に伝達するサンギヤ軸部とを有し、
前記遊星キャリヤは、前記複数の遊星ギヤを自転可能に支持する複数の遊星軸と、前記複数の遊星軸の軸方向端部を支持するキャリヤフランジ部とを有し、
前記キャリヤフランジ部は、前記遊星ギヤに対して前記サンギヤ軸部の側に配置され、
前記ストッパは、前記サンギヤ軸部に設けられ、
前記ストッパ受け部は、前記キャリヤフランジ部に設けられている構成5に記載のステアリングストッパ装置。
【0024】
この構成を採用すると、遊星キャリヤのキャリヤフランジ部が、遊星ギヤに対してサンギヤ軸部の側に配置され、そのキャリヤフランジ部とサンギヤ軸部に、それぞれストッパ受け部とストッパが設けられているので、軸方向にコンパクトである。
【0025】
[構成7]
前記遊星キャリヤは回転しないように固定して設けられ、
前記サンギヤが、前記入力側回転部材であり、
前記リングギヤが、前記出力側回転部材である構成2に記載のステアリングストッパ装置。
【0026】
[構成8]
前記減速機構は、前記回転中心から偏心した位置を中心とする円筒状の外周をもつ偏心軸部と、前記偏心軸部の外周に装着された転がり軸受と、前記転がり軸受を囲むように前記転がり軸受の径方向外側に設けられ、一定の周方向ピッチで並ぶ複数のカム溝を内周にもつカム外輪と、前記転がり軸受の外周と前記カム外輪の内周との間に配置される複数のローラと、前記複数のローラをそれぞれ径方向に移動可能に収容する複数のポケットが周方向に等間隔に形成されたローラ保持器とを有するローラ減速機構である構成1に記載のステアリングストッパ装置。
【0027】
この構成を採用すると、減速機構としてローラ減速機構を採用しているので、特にコンパクトなステアリングストッパ装置を得ることができる。
【0028】
[構成9]
前記カム外輪は回転しないように固定して設けられ、
前記偏心軸部が、前記入力側回転部材であり、
前記ローラ保持器が、前記出力側回転部材である構成8に記載のステアリングストッパ装置。
【0029】
[構成10]
前記減速機構は、前記回転中心から偏心した位置を中心とする円筒状の外周をもつ偏心軸部と、前記偏心軸部の外周に転がり軸受を介して支持される偏心板部と、前記偏心板部と軸方向に対向して配置され、前記回転中心を中心に回転可能に支持される非偏心板部と、前記偏心板部の前記非偏心板部との軸方向の対向面に形成された環状の第1カム溝と、前記非偏心板部の前記偏心板部との軸方向の対向面に形成された環状の第2カム溝と、前記第1カム溝と前記第2カム溝とに転がり接触するように前記偏心板部と前記非偏心板部の軸方向の対向面間に一定の周方向ピッチで組み込まれた複数のボールとを有するボール減速機構であり、
前記偏心軸部が、前記入力側回転部材であり、
前記非偏心板部が、前記出力側回転部材である構成1に記載のステアリングストッパ装置。
【0030】
この構成を採用すると、減速機構としてボール減速機構を採用しているので、特にコンパクトなステアリングストッパ装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明のステアリングストッパ装置は、入力側回転部材と一体に回転するストッパが、出力側回転部材と一体に回転するストッパ受け部で周方向に受け止められて、入力側回転部材と出力側回転部材のそれ以上の相対回転が阻止されたときに、入力側回転部材に入力される回転トルクがそのままの大きさでストッパおよびストッパ受け部に作用することとなり、減速機構の減速により増大した回転トルク(具体的には、入力側回転部材に入力される回転トルクに、減速機構の減速比を乗じた大きさの回転トルク)がストッパおよびストッパ受け部に作用するのを回避することができる。そのため、ストッパおよびストッパ受け部にかかる荷重を低く抑えることができ、高い強度を必要としない。また、ストッパとストッパ受け部が、減速機構の内部(入力側回転部材と出力側回転部材)にあるので、コンパクトである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】この発明の第1実施形態にかかるステアリングストッパ装置を使用したステアリング装置を模式的に示す図
図2図1に示すステアリングストッパ装置の断面図
図3図2のIII-III線に沿った断面図
図4図2のIV-IV線に沿った断面図
図5図3に示すストッパとストッパ受け部とが相対回転する状態を示す図
図6図3に示すストッパがストッパ受け部で受け止められた状態を示す図
図7】この発明の第2実施形態を図2に対応して示す図
図8図7のVIII-VIII線に沿った断面図
図9図8のストッパおよびストッパ受け部の近傍の拡大図
図10図9に示すストッパとストッパ受け部とが相対回転する状態を示す図
図11図9に示すストッパがストッパ受け部で受け止められた状態を示す図
図12】この発明の第3実施形態を図2に対応して示す図
図13図12のXIII-XIII線に沿った断面図
図14図13に示すストッパとストッパ受け部とが相対回転する状態を示す図
図15図13に示すストッパがストッパ受け部で受け止められた状態を示す図
図16】この発明の第4実施形態を図2に対応して示す図
図17図16のXVII-XVII線に沿った断面図
図18図16のXVIII-XVIII線に沿った断面図
図19図18に示すストッパとストッパ受け部とが相対回転する状態を示す図
図20図18に示すストッパがストッパ受け部で受け止められた状態を示す図
図21】この発明の第5実施形態を図2に対応して示す図
図22図21のXXII-XXII線に沿った断面図
図23図21のXXIII-XXIII線に沿った断面図
図24図23に示すストッパとストッパ受け部とが相対回転する状態を示す図
図25図23に示すストッパがストッパ受け部で受け止められた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に、この発明の第1実施形態にかかるステアリングストッパ装置1を組み込んだステアリング装置を示す。このステアリング装置は、運転者によるステアリングホイール2の操作量を電気信号に変換し、その電気信号に基づいて転舵アクチュエータ3を制御することで、左右一対の転舵輪4の向きを変化させるステアバイワイヤ方式の車両用ステアリング装置である。
【0034】
このステアリング装置は、運転者により操舵されるステアリングホイール2と、ステアリングホイール2に連結されたステアリングシャフト5と、ステアリングホイール2の操作量を検知する操舵センサ6と、ステアリングホイール2に操舵反力を与える反力モータ7と、ステアリングホイール2の回転角度を規制するステアリングストッパ装置1と、ステアリングホイール2に対して機械的に切り離して設けられた転舵アクチュエータ3と、制御部8とを有する。
【0035】
ステアリングシャフト5は、ステアリングホイール2を操舵したときに、ステアリングホイール2と一体に回転するようにステアリングホイール2に連結されている。操舵センサ6は、ステアリングシャフト5に取り付けられている。操舵センサ6としては、例えば、ステアリングホイール2の操舵角を検知する操舵角センサ、運転者によってステアリングホイール2に入力される操舵トルクを検知する操舵トルクセンサなどが挙げられる。
【0036】
反力モータ7は、通電により回転トルクを発生する電動モータである。反力モータ7は、ステアリングシャフト5の端部に連結されている。反力モータ7は、回転トルクをステアリングシャフト5に入力することで、そのステアリングシャフト5を介してステアリングホイール2に操舵反力を付与する。
【0037】
転舵アクチュエータ3は、転舵軸9と、転舵軸ハウジング10と、転舵軸9を車両の左右方向に移動させる転舵モータ11と、転舵軸9の位置を検知する転舵センサ12とを有する。転舵軸9は、車両の左右方向に移動可能に転舵軸ハウジング10で支持されている。転舵軸ハウジング10は、転舵軸9の左右両端が転舵軸ハウジング10から突出した状態となるように転舵軸9の中央部を収容している。
【0038】
転舵モータ11および転舵センサ12は、転舵軸ハウジング10に取り付けられている。転舵モータ11と転舵軸9の間には、転舵モータ11が出力する回転を転舵軸9の直線運動に変換する運動変換機構(図示せず)が組み込まれている。転舵軸9の左右両端は、タイロッド13を介して左右一対の転舵輪4に連結され、転舵軸9が軸方向に移動するとこれに連動して左右一対の転舵輪4の向きが変化するようになっている。
【0039】
制御部8は、操舵センサ6で検知されるステアリングホイール2の操作量と、外部センサ72で検知される車両の走行状況(車速等)とに応じて転舵モータ11を作動させ、左右一対の転舵輪4の向きを変化させる制御を行なう。また、このとき、制御部8は、ステアリングホイール2の操作量と車両の走行状況とに応じた大きさの操舵反力が発生するように反力モータ7を作動させる制御を行なう。
【0040】
図2に示すように、反力モータ7は、モータケース14と、モータケース14からステアリングホイール2(図1参照)の側とは反対側(図では右側)に突出するモータシャフト15とを有する。モータシャフト15は、モータケース14の内部に組み込まれた図示しない転がり軸受で回転可能に支持されている。また、モータシャフト15は、ステアリングシャフト5(図1参照)と一体回転するようにステアリングシャフト5に連結されている。モータケース14は、ステアリングシャフト5(図1参照)の回転時にも回転しないように車体(図示せず)に固定されている。
【0041】
ステアリングストッパ装置1は、モータシャフト15を介してステアリングホイール2の回転が入力される減速機構16と、減速機構16の内部に設けられたストッパ17およびストッパ受け部18と、減速機構16を収容するハウジング19とを有する。ハウジング19は、筒部20と、筒部20のモータケース14の側(図では左側)の端に形成された外向きのフランジ部21と、筒部20のモータケース14の側とは反対側(図では右側)の端に形成された底部22とを有する。フランジ部21は、ボルト23でモータケース14に固定されている。
【0042】
減速機構16は、サンギヤ24と、サンギヤ24を囲む環状に形成された内歯のリングギヤ25と、リングギヤ25とサンギヤ24に同時に噛み合う複数の遊星ギヤ26と、複数の遊星ギヤ26を自転可能に支持する遊星キャリヤ27とを有する遊星歯車減速機構である。この実施形態では、サンギヤ24が回転しないように固定して設けられ、リングギヤ25の回転が減速して遊星キャリヤ27に伝達するように構成されている。つまり、リングギヤ25が、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が入力される入力側回転部材であり、遊星キャリヤ27が、減速機構16の出力側回転部材である。
【0043】
サンギヤ24は、ハウジング19の底部22に固定して設けたサンギヤ固定軸28の外周に嵌合している。サンギヤ24とサンギヤ固定軸28の嵌合は、サンギヤ24の回転を阻止する回り止め嵌合(キー溝嵌合、スプライン嵌合、締め代をもった嵌合など)とされている。
【0044】
図4に示すように、リングギヤ25の内周とサンギヤ24の外周との間には、周方向に間隔をおいて複数の遊星ギヤ26が配置されている。リングギヤ25の内周には、遊星ギヤ26に噛み合う複数の内歯29が周方向に一定ピッチで形成されている。遊星ギヤ26は、リングギヤ25とサンギヤ24に同時に噛み合っている。
【0045】
図2に示すように、リングギヤ25は、サンギヤ24に対して反力モータ7の側(図では左側)に配置されたリングギヤ軸部30と、内歯29を内周にもつ環状のリングギヤ本体部31と、リングギヤ軸部30とリングギヤ本体部31との間を連結するリングギヤフランジ部32とを有する。リングギヤ軸部30は、反力モータ7のモータシャフト15に連結され、そのモータシャフト15を介してステアリングホイール2(図1参照)の回転がリングギヤ軸部30に入力されるようになっている。リングギヤ25の内歯29の歯数は、サンギヤ24の外周の歯数の1.5倍以上3.0倍以下に設定されている。
【0046】
図では、リングギヤフランジ部32とは別体に形成したリングギヤ本体部31を、リングギヤフランジ部32の外周に形成した二面幅部33(図3参照)に嵌合して固定しているが、リングギヤ本体部31をスプライン嵌合やボルト等でリングギヤフランジ部32に固定するようにしてもよく、リングギヤ本体部31をリングギヤフランジ部32と一体に形成してもよい。
【0047】
ハウジング19の反力モータ7の側(図では左側)の端部内周には、リングギヤフランジ部32を軸方向に支持するスラスト軸受34と、リングギヤ25およびスラスト軸受34をハウジング19から抜け止めする止め輪35とが装着されている。リングギヤ25および遊星ギヤ26の反力モータ7の側とは反対側(図では右側)の端面は、ハウジング19の底部22と対向し、ハウジング19の底部22に接触することで軸方向に位置決めされている。リングギヤ25および遊星ギヤ26は、ハウジング19の底部22との摺動性を確保するため、焼結金属で形成されている。
【0048】
遊星キャリヤ27は、複数の遊星ギヤ26を各遊星ギヤ26の中心まわりに自転可能に支持する複数の遊星軸36と、複数の遊星軸36の軸方向端部を支持するキャリヤフランジ部37とを有する。キャリヤフランジ部37は、リングギヤフランジ部32の内周に装着した転がり軸受38で、リングギヤ25の回転中心を中心に回転可能に支持されている。遊星軸36は、キャリヤフランジ部37と一体に回転(公転)するようにキャリヤフランジ部37に固定されている。キャリヤフランジ部37は、リングギヤフランジ部32と軸方向に対向するように遊星ギヤ26に対してリングギヤフランジ部32の側(図では左側)に配置されている。サンギヤ固定軸28には、キャリヤフランジ部37の回転中心がサンギヤ24の中心と一致するように、キャリヤフランジ部37を回転可能に支持する転がり軸受39が装着されている。
【0049】
図3に示すように、リングギヤフランジ部32のキャリヤフランジ部37との対向面には、ストッパ17が設けられている。ストッパ17は、リングギヤ25に回転が入力されたときにリングギヤ25と一体に回転するように設けられた突起である。図では、ストッパ17は、リングギヤフランジ部32と一体に形成したものを示したが、リングギヤフランジ部32とは別体に形成したストッパ17(ピンやねじ部材等)をリングギヤフランジ部32に固定するようにしてもよい。
【0050】
また、図2図3に示すように、キャリヤフランジ部37のリングギヤフランジ部32との対向面には、ストッパ受け部18が設けられている。ストッパ受け部18は、遊星キャリヤ27に回転が入力されたときに遊星キャリヤ27と一体に回転し、かつ、ストッパ17と同一円周上に位置する(つまりストッパ17を周方向移動させたときのストッパ17の軌跡と重なる部分を有する)ように配置された突起である。図では、キャリヤフランジ部37とは別体に形成したストッパ受け部18(キー部材)を、キャリヤフランジ部37に形成した凹部に嵌合しているが、ストッパ受け部18は、キャリヤフランジ部37と一体に形成してもよい。
【0051】
図2に示すステアリングストッパ装置1は、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が、モータシャフト15を介してリングギヤ25に入力されると、その回転が減速されて遊星キャリヤ27に伝達する。このとき、図3に示すストッパ17がリングギヤ25と一体に回転するとともに、ストッパ受け部18も遊星キャリヤ27と一体に回転し、図5に示すように、ストッパ17がストッパ受け部18を追いかける形となる。そして、図6に示すように、ストッパ17がストッパ受け部18に追いつくと、ストッパ17がストッパ受け部18で周方向に受け止められることで、リングギヤ25が遊星キャリヤ27に対してそれ以上は相対回転することができなくなり、その結果、ステアリングホイール2(図1参照)の回転角度が規制される。
【0052】
減速機構16の減速比が1.5の場合を例に挙げて説明すると、図5に示すように、入力側回転部材としてのリングギヤ25を中立位置から60°回転させたとき、そのリングギヤ25と一体にストッパ17は60°回転し、ストッパ受け部18は40°(=60°/1.5)回転する。このとき、ストッパ17とストッパ受け部18の角度差は、当初の180°から20°分減少し、160°となる。さらにリングギヤ25を回転させ、リングギヤ25が中立位置から540°回転したとき、図6に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18の角度差が無くなり、ストッパ17がストッパ受け部18で周方向に受け止められることで、リングギヤ25と遊星キャリヤ27のそれ以上の相対回転が阻止され、その結果、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が阻止される。
【0053】
このステアリングストッパ装置1は、図6に示すように、リングギヤ25と一体に回転するストッパ17が、遊星キャリヤ27と一体に回転するストッパ受け部18で周方向に受け止められて、リングギヤ25と遊星キャリヤ27のそれ以上の相対回転が阻止されたときに、図2に示すリングギヤ25に入力される回転トルクがそのままの大きさでストッパ17およびストッパ受け部18に作用することとなり、減速機構16の減速により増大した回転トルク(具体的には、リングギヤ25に入力される回転トルクに、減速機構16の減速比を乗じた大きさの回転トルク)がストッパ17およびストッパ受け部18に作用するのを回避することができる。そのため、ストッパ17およびストッパ受け部18にかかる荷重を低く抑えることができ、高い強度を必要としない。
【0054】
また、このステアリングストッパ装置1は、図2に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18を、比較的強度の低いハウジング19ではなく、減速機構16を構成する比較的強度の高い部材(リングギヤ25と遊星キャリヤ27)に設けているので、特に強度不足の問題が生じにくくなっている。
【0055】
また、このステアリングストッパ装置1は、サンギヤ24を回転しないように固定して設け、リングギヤ25を減速機構16の入力側回転部材とし、遊星キャリヤ27を減速機構16の出力側回転部材とする遊星歯車減速機構(いわゆるソーラ型の遊星歯車減速機構)を使用しているので、入力側回転部材としてのリングギヤ25の回転方向と、出力側回転部材としての遊星キャリヤ27の回転方向とが同じ方向となる。そのため、ステアリングホイール2の回転を中立位置から180°以上の角度位置で規制することができる。しかも、ソーラ型の遊星歯車減速機構は、入力側回転部材としてのリングギヤ25と、出力側回転部材としての遊星キャリヤ27の速度差が小さい(減速比が2未満)ので、ステアリングホイール2の回転が規制される角度位置を、特に大きく設定することが可能である。なお、中立位置は、図1に示す転舵輪4が左右いずれにも向かずに直進方向を向くときのステアリングホイール2の角度位置である。
【0056】
また、このステアリングストッパ装置1は、図2に示すように、減速機構16として遊星歯車減速機構を採用しているので、特にコンパクトなステアリングストッパ装置を得ることが可能となっている。
【0057】
また、このステアリングストッパ装置1は、ストッパ17とストッパ受け部18が、減速機構16のハウジング19ではなく、減速機構16の内部(リングギヤ25と遊星キャリヤ27)にあるので、ハウジング19を大型化する必要がなく、コンパクトである。
【0058】
また、このステアリングストッパ装置1は、遊星キャリヤ27のキャリヤフランジ部37が、リングギヤフランジ部32と軸方向に対向するように遊星ギヤ26に対してリングギヤフランジ部32の側に配置され、そのキャリヤフランジ部37とリングギヤフランジ部32に、それぞれストッパ受け部18とストッパ17が設けられているので、軸方向にコンパクトである。
【0059】
図7図11に、この発明の第2実施形態を示す。第1実施形態に対応する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図7に示すように、減速機構16は、サンギヤ24と、サンギヤ24を囲む環状に形成された内歯のリングギヤ25と、リングギヤ25とサンギヤ24に同時に噛み合う複数の遊星ギヤ26と、複数の遊星ギヤ26を自転可能に支持する遊星キャリヤ27とを有する遊星歯車減速機構である。この実施形態では、リングギヤ25が回転しないように固定して設けられ、サンギヤ24の回転が減速して遊星キャリヤ27に伝達するように構成されている。つまり、サンギヤ24が、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が入力される入力側回転部材であり、遊星キャリヤ27が、減速機構の出力側回転部材である。
【0061】
図8に示すように、リングギヤ25は、ハウジング19の筒部20の内周に嵌合して固定されている。リングギヤ25とハウジング19の嵌合面間には、リングギヤ25の回転を阻止するキー部材40が装着されている。
【0062】
図7に示すように、サンギヤ24は、外歯を外周にもつサンギヤ本体部41と、サンギヤ本体部41に対して反力モータ7の側(図では左側)に配置されたサンギヤ軸部42とを有する。サンギヤ軸部42は、反力モータ7のモータシャフト15に連結され、そのモータシャフト15を介してステアリングホイール2(図1参照)の回転がサンギヤ軸部42に入力されるようになっている。リングギヤ25の内歯29の歯数は、サンギヤ24の外周の歯数の1.5倍以上3.0倍以下に設定されている。図では、サンギヤ軸部42とサンギヤ本体部41を一体に形成しているが、サンギヤ軸部42とは別体に形成したサンギヤ本体部41を、サンギヤ軸部42の外周に嵌合して固定するようにしてもよい。ハウジング19の底部22には、サンギヤ24を回転可能に支持する転がり軸受43が装着されている。
【0063】
遊星キャリヤ27は、複数の遊星ギヤ26を各遊星ギヤ26の中心まわりに自転可能に支持する複数の遊星軸36と、複数の遊星軸36の軸方向端部を支持するキャリヤフランジ部37とを有する。キャリヤフランジ部37は、サンギヤ軸部42の外周を囲むように遊星ギヤ26に対してサンギヤ軸部42の側に配置されている。また、キャリヤフランジ部37は、サンギヤ軸部42の外周に装着した転がり軸受44で、サンギヤ24の回転中心を中心に、サンギヤ軸部42に対して回転可能に支持されている。
【0064】
図9に示すように、サンギヤ軸部42の外周のキャリヤフランジ部37との対向部分には、ストッパ17が設けられている。ストッパ17は、サンギヤ24に回転が入力されたときにサンギヤ24と一体に回転するように設けられた突起である。図では、サンギヤ軸部42とは別体に形成したストッパ17(キー部材)をサンギヤ軸部42に形成した凹部に嵌合したが、ストッパ17は、サンギヤ軸部42と一体に形成してもよい。
【0065】
また、キャリヤフランジ部37の内周のサンギヤ軸部42との対向部分には、ストッパ受け部18が設けられている。ストッパ受け部18は、遊星キャリヤ27に回転が入力されたときに遊星キャリヤ27と一体に回転し、かつ、ストッパ17と同一円周上に位置する(つまりストッパ17を周方向移動させたときのストッパ17の軌跡と重なる部分を有する)ように配置された突起である。図では、ストッパ受け部18は、キャリヤフランジ部37と一体に形成したものを示したが、キャリヤフランジ部37とは別体に形成したストッパ受け部18(ピンやねじ部材等)をキャリヤフランジ部37に固定するようにしてもよい。
【0066】
図7に示すステアリングストッパ装置1は、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が、モータシャフト15を介してサンギヤ24に入力されると、その回転が減速されて遊星キャリヤ27に伝達する。このとき、図9に示すストッパ17がサンギヤ24と一体に回転するとともに、ストッパ受け部18も遊星キャリヤ27と一体に回転し、図10に示すように、ストッパ17がストッパ受け部18を追いかける形となる。そして、図11に示すように、ストッパ17がストッパ受け部18に追いつくと、ストッパ17がストッパ受け部18で周方向に受け止められることで、サンギヤ24が遊星キャリヤ27に対してそれ以上は相対回転することができなくなり、その結果、ステアリングホイール2(図1参照)の回転角度が規制される。
【0067】
減速機構16の減速比が2の場合を例に挙げて説明すると、図10に示すように、入力側回転部材としてのサンギヤ24を中立位置から60°回転させたとき、そのサンギヤ24と一体にストッパ17は60°回転し、ストッパ受け部18は30°(=60°/2)回転する。このとき、ストッパ17とストッパ受け部18の角度差は、当初の180°から30°分減少し、150°となる。さらにサンギヤ24を回転させ、サンギヤ24が中立位置から360°回転したとき、図11に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18の角度差が無くなり、ストッパ17がストッパ受け部18で周方向に受け止められることで、サンギヤ24と遊星キャリヤ27のそれ以上の相対回転が阻止され、その結果、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が阻止される。
【0068】
このステアリングストッパ装置1は、図11に示すように、サンギヤ24と一体に回転するストッパ17が、遊星キャリヤ27と一体に回転するストッパ受け部18で周方向に受け止められて、サンギヤ24と遊星キャリヤ27のそれ以上の相対回転が阻止されたときに、図7に示すサンギヤ24に入力される回転トルクがそのままの大きさでストッパ17およびストッパ受け部18に作用することとなり、減速機構16の減速により増大した回転トルク(具体的には、サンギヤ24に入力される回転トルクに、減速機構16の減速比を乗じた大きさの回転トルク)がストッパ17およびストッパ受け部18に作用するのを回避することができる。そのため、ストッパ17およびストッパ受け部18にかかる荷重を低く抑えることができ、高い強度を必要としない。
【0069】
また、このステアリングストッパ装置1は、図7に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18を、比較的強度の低いハウジング19ではなく、減速機構16を構成する比較的強度の高い部材(サンギヤ24と遊星キャリヤ27)に設けているので、特に強度不足の問題が生じにくくなっている。
【0070】
また、このステアリングストッパ装置1は、リングギヤ25を回転しないように固定して設け、サンギヤ24を減速機構16の入力側回転部材とし、遊星キャリヤ27を減速機構16の出力側回転部材とする遊星歯車減速機構(いわゆるプラネタリ型の遊星歯車減速機構)を使用しているので、入力側回転部材としてのサンギヤ24の回転方向と、出力側回転部材としての遊星キャリヤ27の回転方向とが同じ方向となる。そのため、ステアリングホイール2の回転を中立位置から180°以上の角度位置で規制することができる。また、プラネタリ型の遊星歯車減速機構は、入力側回転部材としてのサンギヤ24と、出力側回転部材としての遊星キャリヤ27の減速比が2以上なので、ステアリングホイール2の回転が規制される角度位置を、360°以下に設定することができる。
【0071】
また、このステアリングストッパ装置1は、図7に示すように、減速機構16として遊星歯車減速機構を採用しているので、特にコンパクトなステアリングストッパ装置を得ることが可能となっている。
【0072】
また、このステアリングストッパ装置1は、ストッパ17とストッパ受け部18が、減速機構16のハウジング19ではなく、減速機構16の内部(サンギヤ24と遊星キャリヤ27)にあるので、ハウジング19を大型化する必要がなく、コンパクトである。
【0073】
また、このステアリングストッパ装置1は、遊星キャリヤ27のキャリヤフランジ部37が、遊星ギヤ26に対してサンギヤ軸部42の側に配置され、そのキャリヤフランジ部37とサンギヤ軸部42に、それぞれストッパ受け部18とストッパ17が設けられているので、軸方向にコンパクトである。
【0074】
図12図15に、この発明の第3実施形態を示す。第1実施形態、第2実施形態に対応する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
図12に示すように、減速機構16は、サンギヤ24と、サンギヤ24を囲む環状に形成された内歯のリングギヤ25と、リングギヤ25とサンギヤ24に同時に噛み合う複数の遊星ギヤ26と、複数の遊星ギヤ26を自転可能に支持する遊星キャリヤ27とを有する遊星歯車減速機構である。この実施形態では、遊星キャリヤ27が回転しないように固定して設けられ、サンギヤ24の回転が減速してリングギヤ25に伝達するように構成されている。つまり、サンギヤ24が、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が入力される入力側回転部材であり、リングギヤ25が、減速機構16の出力側回転部材である。
【0076】
遊星キャリヤ27の遊星軸36は、ハウジング19の底部22に固定されている。この遊星軸36の固定により、キャリヤフランジ部37は、サンギヤ24を中心に回転(公転)しないように固定されている。
【0077】
リングギヤ25は、サンギヤ軸部42の外周に装着した転がり軸受45で、サンギヤ24の回転中心を中心に、サンギヤ軸部42に対して回転可能に支持されている。キャリヤフランジ部37の内周には、サンギヤ軸部42を回転可能に支持する転がり軸受46が装着されている。
【0078】
図13に示すように、サンギヤ軸部42の外周のリングギヤ軸部30との対向部分には、ストッパ17が設けられている。ストッパ17は、サンギヤ24に回転が入力されたときにサンギヤ24と一体に回転するように設けられた突起である。また、リングギヤ軸部30の内周のサンギヤ軸部42との対向部分には、ストッパ受け部18が設けられている。ストッパ受け部18は、リングギヤ25に回転が入力されたときにリングギヤ25と一体に回転し、かつ、ストッパ17と同一円周上に位置する(つまりストッパ17を周方向移動させたときのストッパ17の軌跡と重なる部分を有する)ように配置された突起である。
【0079】
図13に示すステアリングストッパ装置1は、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が、モータシャフト15を介してサンギヤ24に入力されると、その回転が減速されてリングギヤ25に伝達する。このとき、図13に示すストッパ17がサンギヤ24と一体に回転するとともに、ストッパ受け部18もリングギヤ25と一体に回転し、図14に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18とが互いに近づく向きに移動する。そして、図15に示すように、ストッパ17がストッパ受け部18で周方向に受け止められると、サンギヤ24がリングギヤ25に対してそれ以上は相対回転することができなくなり、その結果、ステアリングホイール2(図1参照)の回転角度が規制される。
【0080】
減速機構16の減速比が2の場合を例に挙げて説明すると、図14に示すように、入力側回転部材としてのサンギヤ24を中立位置から60°回転させたとき、そのサンギヤ24と一体にストッパ17は60°回転し、ストッパ受け部18は、ストッパ17の移動方向とは逆向きに30°(=60°/2)回転する。このとき、ストッパ17とストッパ受け部18の角度差は、当初の180°から90°分減少し、90°となる。さらにサンギヤ24を回転させ、サンギヤ24が中立位置から120°回転したとき、図15に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18の角度差が無くなり、ストッパ17がストッパ受け部18で周方向に受け止められることで、サンギヤ24とリングギヤ25のそれ以上の相対回転が阻止され、その結果、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が阻止される。
【0081】
このステアリングストッパ装置1は、図15に示すように、サンギヤ24と一体に回転するストッパ17が、リングギヤ25と一体に回転するストッパ受け部18で周方向に受け止められて、サンギヤ24とリングギヤ25のそれ以上の相対回転が阻止されたときに、図12に示すサンギヤ24に入力される回転トルクがそのままの大きさでストッパ17およびストッパ受け部18に作用することとなり、減速機構16の減速により増大した回転トルク(具体的には、サンギヤ24に入力される回転トルクに、減速機構16の減速比を乗じた大きさの回転トルク)がストッパ17およびストッパ受け部18に作用するのを回避することができる。そのため、ストッパ17およびストッパ受け部18にかかる荷重を低く抑えることができ、高い強度を必要としない。
【0082】
また、このステアリングストッパ装置1は、図12に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18を、比較的強度の低いハウジング19ではなく、減速機構16を構成する比較的強度の高い部材(サンギヤ24とリングギヤ25)に設けているので、特に強度不足の問題が生じにくくなっている。
【0083】
また、このステアリングストッパ装置1は、図12に示すように、減速機構16として遊星歯車減速機構を採用しているので、特にコンパクトなステアリングストッパ装置を得ることが可能となっている。
【0084】
また、このステアリングストッパ装置1は、ストッパ17とストッパ受け部18が、減速機構16のハウジング19ではなく、減速機構16の内部(サンギヤ24とリングギヤ25)にあるので、ハウジング19を大型化する必要がなく、コンパクトである。
【0085】
また、このステアリングストッパ装置1は、リングギヤ25のリングギヤ軸部30が、遊星ギヤ26に対してサンギヤ軸部42の側に配置され、そのリングギヤ軸部30とサンギヤ軸部42に、それぞれストッパ受け部18とストッパ17が設けられているので、軸方向にコンパクトである。
【0086】
図16図20に、この発明の第4実施形態を示す。第1実施形態に対応する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0087】
図16に示すように、減速機構16は、モータシャフト15に接続して設けられる偏心軸部50と、偏心軸部50の外周に装着された転がり軸受51と、転がり軸受51を囲むように転がり軸受51の径方向外側に設けられたカム外輪52と、転がり軸受51の外周とカム外輪52の内周との間に配置される複数のローラ53と、その複数のローラ53を保持するローラ保持器54とを有するローラ減速機構である。ここで、カム外輪52は回転しないように固定して設けられ、偏心軸部50の回転が減速してローラ保持器54に伝達するように構成されている。つまり、偏心軸部50が、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が入力される入力側回転部材であり、ローラ保持器54が、減速機構16の出力側回転部材である。
【0088】
偏心軸部50は、回転中心から偏心した位置を中心とする円筒状の外周をもつ部分である。偏心軸部50は、反力モータ7のモータシャフト15に連結され、そのモータシャフト15を介してステアリングホイール2(図1参照)の回転が偏心軸部50に入力されるようになっている。図では、偏心軸部50をモータシャフト15と一体に形成しているが、両者を別体に形成してもよい。
【0089】
転がり軸受51は、玉軸受である。転がり軸受51の外周は、偏心軸部50の外周の円筒面の中心を中心とする円筒面である。カム外輪52は、ハウジング19の筒部20の内周に嵌合して固定されている。カム外輪52とハウジング19の嵌合面間には、カム外輪52の回転を阻止するキー部材が装着されている。
【0090】
図17に示すように、カム外輪52の内周には、一定の周方向ピッチで並ぶ複数のカム溝56が形成されている。複数のローラ53は、転がり軸受51の外周とカム外輪52の内周との間に、周方向に等間隔に配置されている。各ローラ53は、カム溝56の内面と転がり軸受51の外周とに接触している。ローラ53の個数は、カム溝56の数よりも少なく設定され、これにより、各ローラ53のカム溝56に対する位相が周方向に向かって次第に変化し、一周して元の位相に戻るようになっている。ローラ保持器54には、複数のローラ53をそれぞれ径方向に移動可能に収容する複数のポケット57が周方向に等間隔に形成されている。
【0091】
図16に示すように、ハウジング19の底部22には、ローラ保持器54を回転可能に支持する転がり軸受58が装着されている。また、ローラ保持器54は、偏心軸部50の内周に装着した転がり軸受59で、偏心軸部50の回転中心を中心に、偏心軸部50に対して回転可能に支持されている。
【0092】
偏心軸部50には、ストッパ17が設けられている。ストッパ17は、偏心軸部50に回転が入力されたときに偏心軸部50と一体に回転するように設けられた突起である。また、ローラ保持器54には、ストッパ受け部18が設けられている。ストッパ受け部18は、ローラ保持器54に回転が入力されたときにローラ保持器54と一体に回転し、かつ、ストッパ17と同一円周上に位置する(つまりストッパ17を周方向移動させたときのストッパ17の軌跡と重なる部分を有する)ように配置された突起である。
【0093】
この減速機構16は、モータシャフト15と一体に偏心軸部50が偏心回転すると、図17に示す各ローラ53が、位相をずらして順にカム外輪52の内周のカム溝56に押し込まれ、そのカム溝56の内面に沿って周方向に移動する。そして、そのローラ53の周方向移動がローラ保持器54で取り出され、ローラ保持器54が回転する。
【0094】
図16に示すステアリングストッパ装置1は、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が、モータシャフト15を介して偏心軸部50に入力されると、その回転が減速されてローラ保持器54に伝達する。このとき、ストッパ17が偏心軸部50と一体に回転するとともに、ストッパ受け部18もローラ保持器54と一体に回転し、図18図19に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18とが互いに近づく向きに移動する。そして、図20に示すように、ストッパ17がストッパ受け部18で周方向に受け止められると、偏心軸部50がローラ保持器54に対してそれ以上は相対回転することができなくなり、その結果、ステアリングホイール2(図1参照)の回転角度が規制される。
【0095】
このステアリングストッパ装置1は、図20に示すように、偏心軸部50と一体に回転するストッパ17が、ローラ保持器54と一体に回転するストッパ受け部18で周方向に受け止められて、偏心軸部50とローラ保持器54のそれ以上の相対回転が阻止されたときに、図16に示す偏心軸部50に入力される回転トルクがそのままの大きさでストッパ17およびストッパ受け部18に作用することとなり、減速機構16の減速により増大した回転トルク(具体的には、偏心軸部50に入力される回転トルクに、減速機構16の減速比を乗じた大きさの回転トルク)がストッパ17およびストッパ受け部18に作用するのを回避することができる。そのため、ストッパ17およびストッパ受け部18にかかる荷重を低く抑えることができ、高い強度を必要としない。
【0096】
また、このステアリングストッパ装置1は、図16に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18を、比較的強度の低いハウジング19ではなく、減速機構16を構成する比較的強度の高い部材(偏心軸部50とローラ保持器54)に設けているので、特に強度不足の問題が生じにくくなっている。
【0097】
また、このステアリングストッパ装置1は、図16に示すように、減速機構16としてローラ減速機構を採用しているので、特にコンパクトなステアリングストッパ装置を得ることが可能となっている。
【0098】
また、このステアリングストッパ装置1は、ストッパ17とストッパ受け部18が、減速機構16のハウジング19ではなく、減速機構16の内部(偏心軸部50とローラ保持器54)にあるので、ハウジング19を大型化する必要がなく、コンパクトである。
【0099】
図21図25に、この発明の第5実施形態を示す。第1実施形態に対応する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0100】
図21に示すように、減速機構16は、モータシャフト15に接続して設けられる偏心軸部60と、偏心軸部60の外周に転がり軸受61を介して支持される偏心板部62と、偏心板部62と軸方向に対向して配置される非偏心板部63と、偏心板部62の非偏心板部63との軸方向の対向面に形成された環状の第1カム溝64と、非偏心板部63の偏心板部62との軸方向の対向面に形成された環状の第2カム溝65と、第1カム溝64と第2カム溝65とに転がり接触するように偏心板部62と非偏心板部63の軸方向の対向面間に組み込まれた複数のボール66とを有するボール減速機構である。この減速機構は、偏心軸部60の回転が減速して非偏心板部63に伝達するように構成されている。つまり、偏心軸部60が、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が入力される入力側回転部材であり、非偏心板部63が、減速機構16の出力側回転部材である。
【0101】
偏心軸部60は、回転中心から偏心した位置を中心とする円筒状の外周をもつ部分である。偏心軸部60は、反力モータ7のモータシャフト15に連結され、そのモータシャフト15を介してステアリングホイール2(図1参照)の回転が偏心軸部60に入力されるようになっている。第1カム溝64は、偏心軸部60の外周の円筒面の中心を中心に真円状に延びる円環溝である。
【0102】
図22に示すように、第2カム溝65は、周方向に向かって径方向に変位する波形が繰り返される形状を有する。複数のボール66は、一定の周方向ピッチで組み込まれている。ボール66の個数は、第2カム溝65の波形の個数よりも1つ多く設定され、これにより、各ボール66の第2カム溝65に対する位相が周方向に向かって次第に変化し、一周して元の位相に戻るようになっている。
【0103】
図21に示すように、偏心板部62と非偏心板部63の軸方向に対向面間には、複数のボール66を保持するボール保持板67が設けられている。ボール保持板67には、複数のボール66をそれぞれ径方向に移動可能に収容する長穴形状のポケット68が周方向に等間隔に形成されている。ボール保持板67は、回転しないようにハウジング19に固定されている。
【0104】
ハウジング19の筒部20には、偏心軸部60を回転可能に支持する転がり軸受69と、非偏心板部63を回転可能に支持する転がり軸受70とが軸方向に間隔をおいて装着されている。また、非偏心板部63は、非偏心板部63の内周に装着した転がり軸受71で、偏心軸部60の回転中心を中心に、偏心軸部60に対して回転可能に支持されている。
【0105】
偏心軸部60には、ストッパ17が設けられている。ストッパ17は、偏心軸部60に回転が入力されたときに偏心軸部60と一体に回転するように設けられた突起である。また、非偏心板部63には、ストッパ受け部18が設けられている。ストッパ受け部18は、非偏心板部63に回転が入力されたときに非偏心板部63と一体に回転し、かつ、ストッパ17と同一円周上に位置する(つまりストッパ17を周方向移動させたときのストッパ17の軌跡と重なる部分を有する)ように配置された突起である。
【0106】
この減速機構16は、モータシャフト15と一体に偏心軸部60が偏心回転すると、図22に示す各ボール66が、ボール保持板67のポケット68内で、位相をずらして順に径方向に移動する。そして、そのボール66と第2カム溝65の係合により非偏心板部63が周方向に移動し、その周方向移動が繰り返されることで非偏心板部63が回転する。
【0107】
図21に示すステアリングストッパ装置1は、ステアリングホイール2(図1参照)の回転が、モータシャフト15を介して偏心軸部60に入力されると、その回転が減速されて非偏心板部63に伝達する。このとき、ストッパ17が偏心軸部60と一体に回転するとともに、ストッパ受け部18も非偏心板部63と一体に回転し、図23図24に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18とが互いに近づく向きに移動する。そして、図25に示すように、ストッパ17がストッパ受け部18で周方向に受け止められると、偏心軸部60が非偏心板部63に対してそれ以上は相対回転することができなくなり、その結果、ステアリングホイール2(図1参照)の回転角度が規制される。
【0108】
このステアリングストッパ装置1は、図25に示すように、偏心軸部60と一体に回転するストッパ17が、非偏心板部63と一体に回転するストッパ受け部18で周方向に受け止められて、偏心軸部60と非偏心板部63のそれ以上の相対回転が阻止されたときに、図21に示す偏心軸部60に入力される回転トルクがそのままの大きさでストッパ17およびストッパ受け部18に作用することとなり、減速機構16の減速により増大した回転トルク(具体的には、偏心軸部60に入力される回転トルクに、減速機構16の減速比を乗じた大きさの回転トルク)がストッパ17およびストッパ受け部18に作用するのを回避することができる。そのため、ストッパ17およびストッパ受け部18にかかる荷重を低く抑えることができ、高い強度を必要としない。
【0109】
また、このステアリングストッパ装置1は、図21に示すように、ストッパ17とストッパ受け部18を、比較的強度の低いハウジング19ではなく、減速機構16を構成する比較的強度の高い部材(偏心軸部60と非偏心板部63)に設けているので、特に強度不足の問題が生じにくくなっている。
【0110】
また、このステアリングストッパ装置1は、図21に示すように、減速機構16としてボール減速機構を採用しているので、特にコンパクトなステアリングストッパ装置を得ることが可能となっている。
【0111】
また、このステアリングストッパ装置1は、ストッパ17とストッパ受け部18が、減速機構16のハウジング19ではなく、減速機構16の内部(偏心軸部60と非偏心板部63)にあるので、ハウジング19を大型化する必要がなく、コンパクトである。
【0112】
また、上記各実施形態では、この発明にかかるステアリング装置の一例として、図1に示すように、車両の左右一対の転舵輪4を操舵対象とする車両用ステアリング装置を例に挙げて説明したが、この発明は、車両に限らず、船舶、建設機械、農業機械、全地形対応車、多用途四輪車など、ステアリングホイール2の回転量に応じて転舵アクチュエータ3を作動させて操舵対象の向きを変化させる他の乗り物にも同様に適用することが可能である。
【0113】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0114】
1 ステアリングストッパ装置
2 ステアリングホイール
16 減速機構
17 ストッパ
18 ストッパ受け部
24 サンギヤ
25 リングギヤ
26 遊星ギヤ
27 遊星キャリヤ
29 内歯
30 リングギヤ軸部
31 リングギヤ本体部
32 リングギヤフランジ部
36 遊星軸
37 キャリヤフランジ部
41 サンギヤ本体部
42 サンギヤ軸部
50 偏心軸部
51 転がり軸受
52 カム外輪
53 ローラ
54 ローラ保持器
56 カム溝
57 ポケット
60 偏心軸部
61 転がり軸受
62 偏心板部
63 非偏心板部
64 第1カム溝
65 第2カム溝
66 ボール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25