(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130765
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】固定構造、及び、固定方法
(51)【国際特許分類】
F16B 1/04 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F16B1/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040665
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】田邊 勇典
(57)【要約】
【課題】例えば、被固定物の周囲に部品や配管等が込み入っており、従来の止め輪では、取り付け、取り外し(すなわち、被固定物の固定、固定解除)が困難な作業環境であっても、容易に被固定物の固定及び固定解除ができ、作業性(作業効率)を向上することが可能な固定構造を提供する。
【解決手段】固定構造1では、第1ピストン21を収容部10aに突出させ、複数の第2ピストン22、及び、第3ピストン23をハウジング10内に退出させた初期状態とし、その後、被固定物30をハウジング10の収容部10aに収容して、被固定物30の底面で第1ピストン21を押し、第1ピストン21をハウジング10内に退出させることで、複数の第2ピストン22を突出させ、被固定物30の頂面と当接させて被固定物30を係止し、被固定物30の軸方向の移動を規制する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定物の軸方向への移動を規制する固定構造であって、
前記被固定物を回動可能に収容する収容部が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの軸方向に移動自在に、前記ハウジングの内底面に配設され、液圧により前記収容部に突出し、又は、前記収容部から前記ハウジング内に退出する第1ピストンと、
前記ハウジングの径方向に移動自在に、前記ハウジングの内側面に配設され、液圧により前記収容部に突出し、又は、前記収容部から前記ハウジング内に退出する複数の第2ピストンと、
前記ハウジングの径方向に移動自在に、前記ハウジングの内側面に配設され、液圧により前記収容部に突出し、又は、前記収容部から前記ハウジング内に退出する第3ピストンと、
前記ハウジング内に形成され、前記第1ピストン、複数の前記第2ピストン、及び、前記第3ピストンそれぞれの受圧面を相互に連通し、内部が液体によって満たされた液路と、を備え、
前記被固定物は、側面から底面にかけて、固定を解除する際に突出する前記第3ピストンが進入可能な凹部が形成されており、
前記第1ピストンの容積は、複数の前記第2ピストンの容積の総和と等しく、かつ、前記第3ピストンの容積と等しく設定されており、
前記被固定物が前記収容部に収容されていない初期状態では、前記第1ピストンが前記収容部に突出され、前記第2ピストン及び前記第3ピストンが前記ハウジング内に退出されており、
複数の前記第2ピストンそれぞれは、前記収容部に前記被固定物が収容されて、前記第1ピストンが前記ハウジング内に退出されることにより、前記収容部に突出し、前記被固定物の頂面と当接して前記被固定物を係止することを特徴とする固定構造。
【請求項2】
複数の前記第2ピストンそれぞれは、突出時に前記被固定物と当接する先端部の下面が平らに形成されており、
複数の前記第2ピストンは、前記ハウジングの収容部の側面の周方向に沿って、等間隔に、4個配設されていることを特徴とする請求項1に記載の固定構造。
【請求項3】
前記第2ピストンを退出させた状態において前記第1ピストンを退出させる際に、前記液路の液圧の上昇に応じて前記液路の体積を増大させるアキュムレータをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の固定構造。
【請求項4】
請求項1に記載の固定構造を用いた固定方法であって、
前記第1ピストンを前記収容部に突出させ、複数の前記第2ピストン、及び、前記第3ピストンを前記ハウジング内に退出させた初期状態とする初期化ステップと、
前記初期化ステップの後、前記被固定物を前記ハウジングの収容部に収容して、該被固定物の底面で前記第1ピストンを押し、該第1ピストンを前記ハウジング内に退出させることで、複数の前記第2ピストンを突出させ、前記被固定物の頂面と当接させて該被固定物を係止する固定ステップと、を備えることを特徴とする固定方法。
【請求項5】
複数の前記第2ピストンにより係止されている前記被固定物を回転して、前記被固定物の凹部を前記第3ピストンの突出位置に合わせる位置合わせステップと、
前記位置合わせステップの後、前記第2ピストンを前記ハウジング内に退出させて、前記第3ピストンを前記被固定物の凹部に突出させ、前記被固定物の固定を解除する固定解除ステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定物の軸方向への移動を規制する固定構造、及び、該固定構造を用いた固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被固定物(保持部品)の軸方向への移動を規制(禁止)するために、すなわち、軸方向への抜け落ちを防止するために、止め輪(サークリップ)が広く用いられている。止め輪は、例えば、有端のリング状(略C字状)に形成された本体部と、該本体部の両端に径方向に突設された耳部とを備えて構成されている。また、耳部には、貫通孔(治具用孔)が形成されている。
【0003】
止め輪は、例えば、軸の外周面又は穴の内側面に、軸方向と直交する方向(周方向)に形成された止め輪溝に嵌めて(嵌着されて)用いられる。止め輪は、サークリッププライヤ等の治具(工具)を用いて拡径又は縮径することにより、止め輪溝に取り付け、又は、止め輪溝から取り外される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、止め輪の周囲に部品や配管等が込み入っており(密集しており)、治具用孔にサークリッププライヤの先端(爪)を差し込んで、拡径又は縮径しずらい場合、すなわち、従来の止め輪では、取り付け、取り外しが困難な作業環境の場合、止め輪の取り付け又は取り外しの作業性(作業効率)が低下する。そのため、例えば、被固定物の周囲に部品や配管等が込み入っており、従来の止め輪では、取り付け、取り外し(すなわち、被固定物の固定、固定解除)が困難な作業環境であっても、容易に被固定物の固定、及び、固定解除ができ、作業性を向上することのできる固定構造が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、例えば、被固定物の周囲に部品や配管等が込み入っており、従来の止め輪では、取り付け、取り外し(すなわち、被固定物の固定、固定解除)が困難な作業環境であっても、容易に被固定物の固定、及び、固定解除ができ、作業性(作業効率)を向上することが可能な固定構造、及び、該固定構造を用いた固定方法を提供することを目的とする。なお、ここで、本明細書中において、「固定」とは、軸方向への移動を規制(禁止)することをいい、軸回りの回動は許容(許可)するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る固定構造は、被固定物の軸方向への移動を規制する固定構造であって、被固定物を回動可能に収容する収容部が形成されたハウジングと、ハウジングの軸方向に移動自在に、ハウジングの内底面に配設され、液圧により収容部に突出し、又は、収容部からハウジング内に退出する第1ピストンと、ハウジングの径方向に移動自在に、ハウジングの内側面に配設され、液圧により収容部に突出し、又は、収容部からハウジング内に退出する複数の第2ピストンと、ハウジングの径方向に移動自在に、ハウジングの内側面に配設され、液圧により収容部に突出し、又は、収容部からハウジング内に退出する第3ピストンと、ハウジング内に形成され、第1ピストン、複数の第2ピストン、及び、第3ピストンそれぞれの受圧面を相互に連通し、内部が液体によって満たされた液路とを備え、被固定物には、側面から底面にかけて、固定を解除する際に突出する第3ピストンが進入可能な凹部が形成されており、第1ピストンの容積は、複数の第2ピストンの容積の総和と等しく、かつ、第3ピストンの容積と等しく設定されており、被固定物が収容部に収容されていない初期状態では、第1ピストンが収容部に突出され、第2ピストン及び第3ピストンがハウジング内に退出されており、複数の第2ピストンそれぞれは、収容部に被固定物が収容されて、第1ピストンがハウジング内に退出されることにより、収容部に突出し、被固定物の頂面と当接して被固定物を係止することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る固定構造によれば、第1ピストンを収容部に突出させ、複数の第2ピストン、及び、第3ピストンをハウジング内に退出させた初期状態とし、その後、被固定物をハウジングの収容部に収容して、該被固定物の底面で第1ピストンを押し、第1ピストンをハウジング内に退出させることで、複数の第2ピストンを突出させ、被固定物の頂面と当接させて該被固定物を係止し、該被固定物の軸方向の移動を規制することができる。
【0009】
一方、複数の第2ピストンにより係止されている被固定物を回転して、被固定物の凹部を第3ピストンの突出位置に合わせ(すなわち第3ピストンを突出可能とし)、その後、第2ピストンをハウジング内に退出させて、第3ピストンを被固定物の凹部に突出させることにより、被固定物の固定を解除することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、被固定物の周囲に部品や配管等が込み入っており、従来の止め輪では、取り付け、取り外し(すなわち、被固定物の固定、固定解除)が困難な作業環境であっても、容易に被固定物の固定、及び、固定解除ができ、作業性(作業効率)を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る固定構造を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る固定構造を用いた被固定物の固定方法を説明するための図である。
【
図4】実施形態に係る固定構造を用いた被固定物の固定解除方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、特に区別する必要がある場合を除いて、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0013】
まず、
図1及び
図2を併せて用いて、実施形態に係る固定構造1の構成について説明する。
図1は、固定構造1を示す平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。
【0014】
固定構造1は、被固定物(保持部品)30を固定する、すなわち、被固定物30の軸方向への移動を規制(禁止)する構造である。
【0015】
特に、固定構造1は、例えば、被固定物30の周囲に部品や配管等が込み入っており(密集しており)、従来の止め輪では、取り付け、取り外し(すなわち、被固定物30の固定、固定解除(分解))が困難な作業環境であっても、容易に被固定物30の固定、及び、固定解除(分解)ができ、作業性(作業効率)を向上する機能を有している。
【0016】
そのため、固定構造1は、主として、被固定物30が収容される収容部10aと、液体で満たされた液路(液体回路)12とが形成されるとともに、液路12の液圧により可動する(すなわち、ハウジング10内から収容部10aに突出、収容部10aからハウジング10内に退出する)第1ピストン21、第2ピストン22、第3ピストン23が設けられたハウジング10を備えている。
【0017】
ハウジング(ケース)10は、例えば、鉄やアルミニウム等の金属などからなり、有底円筒状等に形成されている。ハウジング10には、被固定物30を回動可能に収容する収容部10aが形成されている。収容部10aは、例えば、円柱状にくり抜かれている。なお、被固定物30が回転できれば、収容部10aは、円柱状ではなく、例えば角柱状等にくり抜かれていてもよい。
【0018】
第1ピストン21は、ハウジング10(被固定物30)の軸方向に移動自在(摺動自在)に、ハウジング10の内底面(収容部10aの底面)の略中心部に配設される。第1ピストン21は、受圧面(背面)にかかる液圧により収容部10aに突出(進出)し、又は、収容部10aからハウジング10内に退出(収納)する。第1ピストン21は、例えば、鉄やアルミニウム等の金属やエンジニアリングプラスチックなどからなり、円柱状又は有底円筒状等に形成される。なお、第1ピストン21は、角柱状等に形成されてもよい。
【0019】
複数の第2ピストン22は、ハウジング10(被固定物30)の径方向に移動自在(摺動自在)に、ハウジング10の内側面(収容部10aの側面)に配設される。複数の第2ピストン22は、受圧面(背面)にかかる液圧により収容部10aに突出(進出)し、又は、収容部10aからハウジング10内に退出(収納)する。
【0020】
複数の第2ピストン22は、例えば、鉄やアルミニウム等の金属やエンジニアリングプラスチックなどからなり、円柱状又は有底円筒状等に形成される。ここで、被固定物30を安定して固定(係止)するため、複数の第2ピストン22それぞれは、突出時に被固定物30と当接する先端部の下面が平らに形成されている(すなわち断面が略半円形や矩形等に形成されている)ことが好ましい。なお、その場合も、シール性の観点から基端部は円柱状等に形成されていることが好ましい。
【0021】
また、被固定物30を安定して固定(係止)するため、複数の第2ピストン22は、ハウジング10の収容部10aの周方向に沿って、等間隔(90°毎)に、4個配設されていることが好ましい。なお、第2ピストン22の数は4個に限られることなく、3個以上であればよい。また、第2ピストン22は、例えば、被固定物30の直径が10cm程度の場合、突出量を1cm程度とすることが好ましい。
【0022】
第3ピストン23は、ハウジング10(被固定物30)の径方向に移動自在(摺動自在)に、ハウジング10の内側面に配設される。なお、本実施形態では、第3ピストン23を、ハウジング10の内側面から内底面にかけて配設した。第3ピストン23は、受圧面(背面)にかかる液圧により収容部10aに突出(進出)し、又は、収容部10aからハウジング10内に退出(収納)する。
【0023】
第3ピストン23は、例えば、鉄やアルミニウム等の金属やエンジニアリングプラスチックなどからなり、円柱状又は有底円筒状等に形成される。なお、第3ピストン23は、角柱状等に形成されてもよく、また、その数は複数であってもよい。
【0024】
上述した第1ピストン21、複数の第2ピストン22、及び、第3ピストン23それぞれには、突出した際に抜け落ちてしまうことを防止するため、基端部に、例えば、フランジや突起等の抜け止めが設けられている。
【0025】
液路(液体回路)12は、ハウジング10の内部に形成される。液路12は、第1ピストン21、複数の第2ピストン22、及び、第3ピストン23それぞれの受圧面(背面)を相互に連通する。液路12は、内部が液体によって満たされている。液体としては、例えば、オイル等を好適に用いることができる。
【0026】
液路12は、第1~第3ピストン21~23とハウジング10(液路12)との間に介装されるOリング14(シール部材)により液密に封止(シール)されている。Oリング14は、断面が円形に形成された環状の部材であり、弾性を有し、かつ、耐油性、耐温性等に優れたゴム素材などから形成されている。Oリング14は、第1~第3ピストン21~23の外周面とハウジング10(液路12)との間から液体(オイル)が漏れないように液密に保持する。
【0027】
また、液路12には、被固定物30を収容部10aに収容する際、すなわち、第2ピストン22を退出させた状態において第1ピストン21を退出させる際に、液路12の液圧の上昇に応じて、例えば、ばねが圧縮されてピストンが後退し、又は、ブラダ内の窒素ガスが圧縮されて体積が減少し、液路12の体積を増大させるアキュムレータ16を備えていることが好ましい。ただし、液体を第1ピストン21の容積分圧縮可能な場合にはアキュムレータ16を省略してもよい。
【0028】
被固定物30は、例えば円柱状等に形成されている。被固定物30としては、例えば、オイルポンプ等が挙げられる。被固定物30は、回動可能に収容部10aに収容される(すなわち、収容部10aに収容された状態で回動可能である)。
【0029】
被固定物30には、側面から底面にかけて、固定を解除する際に第3ピストン23が突出可能となるように、第3ピストン23が突出したときに進入可能な凹部(切り欠き)30aが形成されている。また、被固定物30の頂面(天面)には、回転を容易にするため、例えば、一対の突起(取っ手)、又は、一対の孔等が形成されていることが好ましい。また、被固定物30には、固定解除時以外(分解時以外)のときに回転してしまうことを防止するため、例えば、軸方向に貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔にシャフトやボルト等を差し込む構成としてもよい。
【0030】
第1ピストン21の容積は、複数の(すべての)第2ピストン22の容積の総和と等しく設定されている。また、第1ピストン21の容積は、第3ピストン23の容積と等しく設定されている。
【0031】
被固定物30が収容部10aに収容されていない初期状態では、第1ピストン21がハウジング10から収容部10aに突出されるとともに、複数の第2ピストン22及び第3ピストン23がハウジング10内に退出(収納)されている。換言すると、初期状態において第1ピストン21がハウジング10から突出した状態になり、かつ、第2ピストン22、第3ピストン23がハウジング10内に収納された状態になるように、液路12内の液体量が調整されている。
【0032】
そして、収容部10aに被固定物30が収容されて、第1ピストン21がハウジング10内に退出(収納)されることにより、複数の第2ピストン22それぞれが、収容部10aに突出し、被固定物30の頂面(天面)と当接して被固定物30を係止する(すなわち、軸方向の移動を規制する)。
【0033】
次に、
図3及び
図4を併せて参照しつつ、固定構造1を用いた被固定物30の固定方法、及び、固定解除(分解)方法についてより詳細に説明する。
図3は、固定構造1を用いた被固定物30の固定方法を説明するための図である。
図4は、固定構造1を用いた被固定物30の固定解除(分解)方法を説明するための図である。
【0034】
被固定物30をハウジング10に固定する際には、まず、第1ピストン21をハウジング10から収容部10aに突出させ、複数の第2ピストン22、及び、第3ピストン23をハウジング10内に退出(収納)させた初期状態とする(初期化ステップ)。
【0035】
次に、被固定物30をハウジング10の収容部10aに収容して、該被固定物30の底面で第1ピストン21を押し、第1ピストン21をハウジング10内に退出(収納)させることで、その液体の体積分(すなわち、第1ピストン21の退出に伴って液路12に押し出される液体の体積分)、複数の第2ピストン22を収容部10aに突出させ、被固定物30の頂面(天面)と当接させて被固定物30を係止する(すなわち、被固定物30の軸方向の移動を規制)する(固定ステップ)。このようにして、被固定物30がハウジング10に固定される(すなわち、軸方向の移動が規制される)。
【0036】
一方、固定されている被固定物30の固定を解除する(分解する)際には、まず、複数の第2ピストン22により係止されている(軸方向の移動が規制されている)被固定物30を回転して、被固定物30の凹部30aを第3ピストン23の突出位置に合わせる(位置合わせステップ)。これにより、第3ピストン23が突出可能となる。
【0037】
その後(位置合わせ後)、すべての第2ピストン22をハウジング10内に退出させて、その液体の体積分、第3ピストン23を被固定物30の凹部30aに突出させ、被固定物30の固定を解除する(固定解除ステップ)。その後、被固定物30を収容部10aから取り出す。
【0038】
また、その後、複数の第2ピストン22の突出を押さえつつ、第3ピストン23をハウジング10内に退出(収納)させて、その液体の体積分、第1ピストン21をハウジング10内から収容部10aに突出させ、初期状態に戻す(初期化ステップ)。
【0039】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、第1ピストン21を収容部10aに突出させるとともに、複数の第2ピストン22及び第3ピストン23をハウジング10内に退出させた初期状態とし、その後、被固定物30をハウジング10の収容部10aに収容して、該被固定物30の底面で第1ピストン21を押し、該第1ピストン21をハウジング10内に退出させることで、複数の第2ピストン22を突出させ、被固定物30の頂面と当接させて該被固定物30を係止し、該被固定物30の軸方向の移動を規制することができる。
【0040】
また、複数の第2ピストン22により係止されている被固定物30を回転して、被固定物30の凹部30aを第3ピストン23の突出位置に合わせ(すなわち第3ピストン23を突出可能とし)、その後、第2ピストン22をハウジング10内に退出させて、第3ピストン23を被固定物30の凹部30aに突出させることにより、被固定物30の固定を解除することができる。
【0041】
その結果、例えば、被固定物30の周囲に部品や配管等が込み入っており(密集しており)、従来の止め輪では、取り付け、取り外し(すなわち、被固定物30の固定、固定解除(分解))が困難な作業環境であっても、容易に被固定物30の固定、及び、固定解除(分解)ができ、作業性(作業効率)を向上することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態によれば、突出時に被固定物30と当接する第2ピストン22の先端部の下面が平らに形成されており、また、複数の第2ピストン22が、ハウジング10の収容部10aの側面の周方向に沿って、等間隔に、4個配設されている。そのため、被固定物30を安定して固定(係止)することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、第2ピストン22を退出させた状態において第1ピストン21を退出させる際に、液路12の液圧の上昇に応じて液路12の体積を増大させるアキュムレータ16をさらに備えている。そのため、より弱い力で被固定物30を収容部10aに収納することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、ハウジング10の外形は任意の形状とすることができ、上記実施形態には限られない。また、第1ピストン21の配置はハウジング10の内底面の中心でなくてもよい。さらに、第3ピストン23は、ハウジング10(被固定物30)の軸方向に移動自在にハウジング10の内底面(収容部10aの底面)に配設してもよい。
【0045】
また、液体を第1ピストン21の体積分圧縮可能な場合には、アキュムレータ16を省略してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 固定構造
10 ハウジング(ケース)
10a 収容部
12 液路(油路)
14 Oリング
16 アキュムレータ
21 第1ピストン
22 第2ピストン
23 第3ピストン
30 被固定物(保持部品)
30a 凹部(切り欠き)