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特開2024-130802診断システム、診断装置、診断方法、及び診断プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130802
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】診断システム、診断装置、診断方法、及び診断プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240920BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240920BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040707
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】相馬 宏司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 守道
(72)【発明者】
【氏名】水島 謙二
(72)【発明者】
【氏名】西出 聡
(72)【発明者】
【氏名】早坂 賢太
【テーマコード(参考)】
2G024
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2G024AD08
2G024BA11
2G024CA13
2G024CA16
2G024CA17
2G024CA18
2G024FA06
2G024FA11
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】一律の基準で改善余地の評価が困難である場合でも改善余地を評価することを課題とする。
【解決手段】製品の生産に関わる改善余地を評価する診断システム900は、診断装置100と、評価の依頼元が操作する第1の端末装置200と、評価者が操作する第2の端末装置300を備える。診断装置100は、評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる前記生産に関わるデータとを第1の端末装置200から取得する取得部110と、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、診断装置100が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する判定部111と、判定部111による判定の結果が否定判定である場合に、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を第2の端末装置300に変更する変更部112とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の生産に関わる改善余地を評価する診断システムであって、
診断装置と、
前記診断装置に通信ネットワークを通じて接続する第1の端末装置であって、前記評価の依頼元が操作する、第1の端末装置と、
前記診断装置に通信ネットワークを通じて接続する第2の端末装置であって、前記評価を行う評価者が操作する、第2の端末装置と、を備え、
前記診断装置は、
前記評価の対象を指定する第1の指定情報と、前記評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、前記評価項目の評価に用いられる前記生産に関わるデータとを前記第1の端末装置から取得する取得部と、
前記第1の指定情報、前記第2の指定情報、及び前記データに基づいて、前記診断装置が前記評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果が否定判定である場合に、前記評価項目の評価を依頼する信号の出力先を前記第2の端末装置に変更する変更部と、
を備える、診断システム。
【請求項2】
製品の生産に関わる改善余地を評価する診断システムであって、
前記評価の対象を指定する第1の指定情報と、前記評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、前記評価項目の評価に用いられる前記生産に関わるデータとを取得する取得部と、
前記第1の指定情報、前記第2の指定情報、及び前記データに基づいて、前記診断システムが前記評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果に応じて、前記評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更する変更部と、
前記判定の結果が肯定判定である場合に、前記変更部から前記信号を受信し、前記第1の指定情報、前記第2の指定情報、及び前記データに基づいて、前記評価項目の評価を行う評価部と、
前記判定の結果が否定判定である場合に、前記変更部から前記信号を受信し、前記第1の指定情報、前記第2の指定情報、及び前記データに基づいて、前記評価項目の評価を行うことを評価者に依頼する通知を出力する通知部と、
を備える診断システム。
【請求項3】
請求項2に記載の診断システムであって、
前記評価部による前記評価項目の評価により算出された改善余地が閾値未満である場合に、前記通知部は、前記第1の指定情報、前記第2の指定情報、及び前記データに基づいて、前記評価項目の評価を行うことを評価者に依頼する通知を出力する、診断システム。
【請求項4】
請求項2に記載の診断システムであって、
前記判定結果が否定判定である場合に、前記通知部は、前記第1の指定情報、前記第2の指定情報、及び前記データを前記通知とともに出力する、診断システム。
【請求項5】
請求項2に記載の診断システムであって、
前記通知部は、前記評価部による前記評価項目の評価により算出された改善余地の値を前記評価の依頼元宛に出力する、診断システム。
【請求項6】
請求項2に記載の診断システムであって、
前記通知部は、前記評価部による前記評価項目の評価により算出された改善余地の値を前記評価者宛に出力する、診断システム。
【請求項7】
製品の生産に関わる改善余地を評価する診断装置であって、
前記評価の対象を指定する第1の指定情報と、前記評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、前記評価項目の評価に用いられる前記生産に関わるデータとを取得する取得部と、
前記第1の指定情報、前記第2の指定情報、及び前記データに基づいて、前記診断装置が前記評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果に応じて、前記評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更する変更部と、
を備える診断装置。
【請求項8】
製品の生産に関わる改善余地を評価する診断装置により実行される診断方法であって、
前記評価の対象を指定する第1の指定情報と、前記評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、前記評価項目の評価に用いられる前記生産に関わるデータとを取得するステップと、
前記第1の指定情報、前記第2の指定情報、及び前記データに基づいて、前記診断装置が前記評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定するステップと、
前記判定の結果に応じて、前記評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更するステップと、
を含む、診断方法。
【請求項9】
製品の生産に関わる改善余地を評価する診断装置に、
前記評価の対象を指定する第1の指定情報と、前記評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、前記評価項目の評価に用いられる前記生産に関わるデータとを取得するステップと、
前記第1の指定情報、前記第2の指定情報、及び前記データに基づいて、前記診断装置が前記評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定するステップと、
前記判定の結果に応じて、前記評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更するステップと、
を実行させる診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断システム、診断装置、診断方法、及び診断プログラムに関わる。
【背景技術】
【0002】
産業界では、様々な観点から製品の生産に関わる改善を試みる運用が行われている。例えば、生産現場では、生産に関連したエネルギーの流れを把握することで、どこに無駄があるのかを明らかにして省エネルギー活動を進めることが求められている。省エネルギーの改善箇所の絞り込みを行なうためには、工程及び装置毎に省エネルギー効果のポテンシャルを評価し、ポテンシャルの高い工程及び装置を省エネルギー活動の対象として選定することが効果的である。このような状況に鑑み、特許文献1は、プロセスブロックについての省エネルギーポテンシャル評価を一律の基準で客観的に行なう評価システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-91068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、工程又は装置によっては、省エネルギーポテンシャル評価を一律の基準で行うことができない場合があり、この場合には、専門知識を有する評価者による省エネルギーポテンシャル評価を行うのが望ましい。その一方で、省エネルギーポテンシャル評価を一律の基準で行うことができる場合には、専門知識を有する評価者の負担を軽減する観点から、評価システムよる評価を行うのが望ましい。このようなニーズは、省エネルギーポテンシャル評価に限らず、例えば、生産現場の生産性の改善余地の評価、設備異常の改善余地の評価、製品の品質向上の改善余地の評価などの製品の生産に関わるあらゆる改善評価にも存在する。
【0005】
そこで、本発明は、このようなニーズに応えるために、一律の基準で改善余地の評価が困難である場合でも改善余地を評価することのできる診断システム、診断装置、診断方法、及び診断プログラムを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に関わる診断システムは、製品の生産に関わる改善余地を評価する診断システムであって、診断装置と、診断装置に通信ネットワークを通じて接続する第1の端末装置であって、評価の依頼元が操作する、第1の端末装置と、診断装置に通信ネットワークを通じて接続する第2の端末装置であって、評価を行う評価者が操作する、第2の端末装置と、を備える。診断装置は、評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとを第1の端末装置から取得する取得部と、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、診断装置が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する判定部と、判定部による判定の結果が否定判定である場合に、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を第2の端末装置に変更する変更部とを備える。このような構成によれば、診断装置による評価項目の評価が困難である場合でも、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を第2の端末装置に変更することにより、評価者による評価項目の評価を行うことができる。
【0007】
本発明に関わる診断システムは、製品の生産に関わる改善余地を評価する診断システムであって、評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとを取得する取得部と、第1の指定情報、第2の指定情報及びデータに基づいて、診断システムが評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する判定部と、判定部による判定の結果に応じて、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更する変更部と、判定の結果が肯定判定である場合に、評価項目の評価を依頼する信号を変更部から受信し、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、評価項目の評価を行う評価部と、判定の結果が否定判定である場合に、評価項目の評価を依頼する信号を変更部から受信し、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、評価項目の評価を行うことを評価者に依頼する通知を出力する通知部とを備える。このような構成によれば、診断システムによる評価項目の評価が可能である場合には、診断装置による評価項目の評価が行われるため、一律の基準での評価が可能となるとともに、評価者の負担軽減に資することができる。診断装置による評価項目の評価が可能でない場合には、評価者による評価項目の評価が行われるため、評価者の専門知識を有効活用することができる。
【0008】
評価部による評価項目の評価により算出された改善余地が閾値未満である場合に、通知部は、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、評価項目の評価を行うことを評価者に依頼する通知を出力してもよい。これにより、評価者の専門知識を有効活用し、製品の改善に関わる改善策を評価者から提案してもらうことができる。
【0009】
判定結果が否定判定である場合に、通知部は、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータを通知とともに出力してもよい。これにより、評価者は、評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとに基づいて評価項目の評価を行うことができる。
【0010】
通知部は、評価部による評価項目の評価により算出された改善余地の値を評価の依頼元宛に出力してもよい。これにより、評価の依頼元は、改善余地の値を確認し、製品の生産に関わる改善に役立てることができる。
【0011】
通知部は、評価部による評価項目の評価により算出された改善余地の値を評価者宛に出力してもよい。これにより、評価者の専門知識を有効活用し、製品の改善に関わる改善策を評価者から提案してもらうことができる。
【0012】
本発明に関わる診断装置は、製品の生産に関わる改善余地を評価する診断装置であって、評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとを取得する取得部と、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、診断装置が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する判定部と、判定部による判定の結果に応じて、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更する変更部とを備える。このような構成によれば、診断装置による評価項目の評価が困難である場合でも、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更することにより、評価項目の評価を行うことができる。
【0013】
本発明に関わる診断方法は、製品の生産に関わる改善余地を評価する診断装置により実行される診断方法であって、評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとを取得するステップと、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、診断装置が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定するステップと、判定の結果に応じて、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更するステップと、を含む。このような方法によれば、診断装置による評価項目の評価が困難である場合でも、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更することにより、評価項目の評価を行うことができる。
【0014】
本発明に関わる診断プログラムは、製品の生産に関わる改善余地を評価する診断装置に、評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとを取得するステップと、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、診断装置が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定するステップと、判定の結果に応じて、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更するステップとを実行させる。このような方法によれば、診断装置による評価項目の評価が困難である場合でも、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更することにより、評価項目の評価を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、診断装置による評価項目の評価が困難である場合でも、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更することにより、評価項目の評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に関わる診断装置の構成の一例を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に関わる診断装置の機能の一例を示す説明図である。
図3】本発明の実施形態に関わる診断方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に関わる評価項目のメニューの一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に関わる評価項目のメニューの一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に関わる評価対象の稼働データ及びエネルギーデータの一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に関わる評価対象の稼働データ及びエネルギーデータの一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に関わる異常度の計算結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一側面に関わる実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更又は改良され得るととともに、本発明には、その等価物も含まれる。なお、同一符号は、同一の構成要素を示すものとし、重複する説明は省略する。
【0018】
[適用例]
図1は本発明の実施形態に関わる診断システム900の構成の一例を示す説明図である。診断システム900は、診断装置100と、ユーザ201が操作する端末装置200と、評価者301が操作する端末装置300とを備えてもよい。診断装置100は、通信ネットワーク400を通じて、ユーザ201の端末装置200と、評価者301の端末装置300とに接続されている。診断装置100は、製品の生産に関わる改善余地(例えば、エネルギー削減余地、生産現場の生産性の改善余地、設備異常の改善余地、又は製品の品質向上の改善余地)を評価するクラウドサービスを、通信ネットワーク400を通じて、ユーザ201に提供してもよい。評価者301は、例えば製品の生産に関わる改善余地を算出するための専門知識を有する者でもよい。
【0019】
診断装置100は、例えば、記憶装置101、主記憶装置102、演算処理装置103、及び通信インタフェース104を備えるコンピュータでもよい。
【0020】
記憶装置101は、例えば、ディスク媒体(例えば、磁気記録媒体又は光磁気記録媒体)又は不揮発性半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体でもよい。主記憶装置103は、例えば、揮発性半導体メモリでもよい。演算処理装置103は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサを含んでもよい。通信インタフェース104は、所定の通信プロトコルに基づいて無線又は有線の通信ネットワーク400を通じてデータ通信を行う通信モジュールでもよい。
【0021】
記憶装置101は、診断装置100の各種の処理(例えば、後述する取得部110、判定部111、変更部112、評価部113、及び通知部114による処理)を実行するための診断プログラム105を格納している。演算処理装置103は、記憶装置101に格納されている診断プログラム105を読みだしてこれを主記憶装置102に展開して実行することにより、診断装置100の各種の処理を実行する。
【0022】
なお、端末装置200,300は、例えば、パーソナルコンピュータ又は携帯端末などの通信機能を備えた汎用のコンピュータでもよい。
【0023】
図2は本発明の実施形態に関わる診断装置100の機能の一例を示すブロック図である。診断装置100のハードウェア資源と診断プログラム105との協働により、取得部110、判定部111、変更部112、評価部113、及び通知部114としての機能が実現される。
【0024】
取得部110は、評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとを、通信ネットワーク400を通じて、端末装置300から取得する。
【0025】
評価の対象は、生産現場の装置(例えば、切削加工機、洗浄機、印刷機など)でもよく、或いは作業者でもよい。「印刷機」とは、例えば、表面実装などの実装工程で用いられる印刷機を意味する(以下、同様とする)。評価項目は、例えば、エネルギー削減余地、生産現場の生産性の改善余地、設備異常の改善余地、又は製品の品質向上の改善余地でもよい。生産現場の生産性の改善余地は、装置に関わる生産性の改善余地でもよく、或いは作業者に関わる生産性の改善余地でもよい。評価項目の評価に用いられるデータの種類は、評価項目毎に異なってもよい。例えば、評価項目がエネルギー削減余地である場合、評価項目の評価に用いられるデータは、評価対象の稼働状況を示す稼働データ、及び評価対象の消費電力を示すエネルギーデータでもよい。評価項目が装置に関わる生産性の改善余地である場合、評価項目の評価に用いられるデータは、例えば、サイクルタイム、タクトタイム、又はリードタイムでもよい。評価項目が作業者に関わる生産性の改善余地である場合、評価項目の評価に用いられるデータは、例えば、各作業ラインのサイクルタイム及び組み合わせ表でもよい。評価項目が設備異常の改善余地である場合、評価項目の評価に用いられるデータは、設備の稼働状況を示す測定データ(例えば、温度、電流、電圧、流量、速度、振動など)及び設備の異常発生記録でもよい。評価項目が製品の品質向上の改善余地である場合、評価項目の評価に用いられるデータは、製品の計測値(例えば、寸法、形状、色など)及びその検査結果(例えば、良品と不良品とを区別する検査結果)でもよい。
【0026】
判定部111は、第1の指定情報、第2の指定情報、及び評価項目の評価に用いられるデータに基づいて、診断装置100が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する。判定部111は、例えば、ユーザ201により指定された評価項目を評価するロジックを診断装置100が備えている場合には、肯定判定の判定結果を出力し、ユーザ201により指定された評価項目を評価するロジックを診断装置100が備えていない場合には、否定判定の判定結果を出力してもよい。このロジックは、例えば、評価項目を評価する計算処理を行うアルゴリズムでもよい。
【0027】
変更部112は、判定部111による判定の結果に応じて、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更する。例えば、判定部111による判定の結果が肯定判定である場合には、変更部112は、評価項目の評価を依頼する信号を評価部113に出力する。一方、判定部111による判定の結果が否定判定である場合には、変更部112は、評価項目の評価を依頼する信号を通知部114に出力する。
【0028】
評価部113は、評価項目の評価を依頼する信号を変更部112から受信すると、第1の指定情報、第2の指定情報、及び評価項目の評価に用いられるデータに基づいて、評価項目の評価を行う。評価部113は、ユーザ201により指定された評価項目を評価するロジックを備えている。
【0029】
通知部114は、評価項目の評価を依頼する信号を変更部112から受信すると、第1の指定情報、第2の指定情報、及び評価項目の評価に用いられるデータに基づいて、評価項目の評価を行うことを評価者301に依頼する通知を出力する。評価者301は、例えば、製品の生産に関わる改善余地を算出するための専門知識を有しており、第1の指定情報、第2の指定情報、及び評価項目の評価に用いられるデータに基づいて評価項目の評価を行うことができる。
【0030】
このように、診断装置100による評価項目の評価が困難である場合に、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を通知114に変更して、評価項目の評価を評価者301に依頼することにより、評価者301による評価項目の評価が可能になる。
【0031】
なお、診断装置100の機能(例えば、取得部110、判定部111、変更部112、評価部113、又は通知部114の機能)の全部又は一部を専用回路(例えば、ASIC(application specific integrated circuit)又はFPGA(field-programmable gate array)など)を用いて実現してもよい。
【0032】
図3は本発明の実施形態に関わる診断方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0033】
ユーザ201は、診断装置100が提供するクラウドサービスにログインする(ステップ501)。
【0034】
診断装置100は、評価項目のメニューを表示する(ステップ502)。
【0035】
図4は、ステップ502で表示される評価項目のメニュー600の一例を示す。メニュー600は、例えば、エネルギー削減余地を診断する項目601、生産現場の生産性の改善余地を診断する項目602、設備異常の改善余地を診断する項目603、及び製品の品質向上の改善余地を診断する項目604を含んでもよい。
【0036】
ユーザ201は、評価項目のメニュー600の中から何れか一つの評価項目を選択する(ステップ503)。
【0037】
診断装置100は、ステップ503で選択された評価項目の評価に要する各種情報のメニュー700を表示する(ステップ504)。
【0038】
図5は、ステップ504で表示されるメニュー700の一例を示す。ユーザ201が、評価項目のメニュー600の中から、エネルギー削減余地を診断する項目601を選択した場合、エネルギー削減余地の診断に要する各種情報のメニュー700は、例えば、評価対象の工程情報701、評価対象の種別702、及びアップロードデータ703を含んでもよい。評価対象の工程情報701は、例えば、ジョブショップ工程711、及びフローショップ工程712を含んでもよい。評価対象の種別702は、例えば、掘削加工機721、洗浄機722、印刷機723、及びその他724を含んでもよい。アップロードデータ703は、例えば、評価対象の稼働状況を示す稼働データ731、及び評価対象の消費電力を示すエネルギーデータ732を含んでもよい。
【0039】
ユーザ201は、メニュー700の表示に従って、評価項目の評価に要する各種情報を入力する(ステップ505)。例えば、ユーザ201は、評価対象の工程情報701について、ジョブショップ工程711及びフローショップ工程712のうち、評価対象の工程に該当する工程を選択し、評価対象の種別702について、掘削加工機721、洗浄機722、印刷機723、及びその他724のうち、評価対象の種別に該当するものを選択することができる。また、例えば、ユーザ201は、評価対象の稼働状況を示す稼働データ731、及び評価対象の消費電力を示すエネルギーデータ732を診断装置100に送信(アップロード)することができる。
【0040】
診断装置100は、ステップ505で入力された各種情報に基づいて評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する(ステップ506)。
【0041】
診断装置100が評価項目の評価をすることが可能である場合、すなわち、ステップ506の判定結果が肯定判定である場合には(ステップ506;YES)、診断装置100は、ステップ505で入力された各種情報に基づいて評価項目の評価を行う(ステップ507)。
【0042】
診断装置100が評価項目の評価をすることが可能でない場合、すなわち、ステップ506の判定結果が否定判定である場合には(ステップ506;NO)、診断装置100は、ステップ505で入力された各種情報に基づいて評価項目の評価を行うことを評価者301に依頼する通知を端末装置300に出力する(ステップ509)。この処理は、例えば、ステップ505で入力された各種情報を、評価を依頼する通知とともに、端末装置300に出力してもよい。
【0043】
診断装置100は、ステップ507で行われた評価により算出された改善余地が閾値以上であるか否かを判定する(ステップ508)。
【0044】
算出された改善余地が閾値以上でない場合には(ステップ508;NO)、診断装置100は、ステップ505で入力された各種情報に基づいて評価項目の評価を行うことを評価者301に依頼する通知を端末装置300に出力する(ステップ509)。
【0045】
評価者301は、ステップ509で診断装置100から端末装置300に出力された通知を確認すると、ステップ505で入力された各種情報に基づいて評価項目の評価を行い、その評価結果を診断装置100に送信する(ステップ510)。
【0046】
ステップ507で行われた評価により算出された改善余地が閾値以上である場合(ステップ508;YES)、又はステップ510で評価者301による評価項目の評価が行われた場合には、診断装置100は、ステップ507又はステップ510で行われた評価により算出された改善余地の値を、評価の依頼元であるユーザ201宛(例えば、端末装置200宛)に出力する(ステップ511)。
【0047】
ユーザ201は、ステップ511で診断装置100から端末装置200に出力された改善余地の値を確認する(ステップ512)。これにより、ユーザ201は、製品の生産に関わる改善の方針を検討することができる。
【0048】
なお、図3には図示されていないが、診断装置100は、ステップ507で行われた評価により算出された改善余地の値を評価者301宛(例えば、端末装置300宛)に出力してもよい。この処理により、評価者301は、ユーザ201が指定した評価項目について製品の生産に関わる改善の提案をすることができる。
【0049】
図6は、掘削加工機を評価対象として、エネルギー削減余地の評価項目の評価に用いられる稼働データ731及びエネルギーデータ732の一例を示す。稼働データ731は、掘削加工機が稼働している期間及び稼働していない期間を示す。エネルギーデータ732は、掘削加工機の消費電力を示す。診断装置100は、掘削加工機が稼働していない期間における掘削加工機の消費電力を、エネルギー削減余地の値(改善余地の値)として算出することができる。
【0050】
図7は、印刷機を評価対象として、エネルギー削減余地の評価項目の評価に用いられる稼働データ731及びエネルギーデータ732の一例を示す。稼働データ731は、印刷機が稼働している期間及び稼働していない期間を示す。エネルギーデータ732は、印刷機の消費電力を示す。診断装置100は、印刷機が稼働していない期間における印刷機の消費電力から、印刷機の立ち上げに要する電力を差し引いた電力を、エネルギー削減余地の値(改善余地の値)として算出することができる。
【0051】
次に、設備異常の改善余地を評価項目とする例について説明する。評価項目が設備異常の改善余地である場合、評価項目の評価に用いられるデータとして、設備の稼働状況を示す測定データ(例えば、温度、電流、電圧、流量、速度、振動など)及び設備の異常発生記録を用いることができる。
【0052】
診断装置100は、例えば、多変量統計的プロセスの解析方法を用いて、設備の稼働状況を示す測定データ(例えば、温度、電流、電圧、流量、速度、又は振動など)を分析し、設備の異常度を計算する。診断装置100は、設備の異常発生記録と異常度とを比較し、設備の異常発生時より以前の段階で閾値以上の異常度を有する事象が発生している場合には、その事象を異常の予兆として検出する。診断装置100は、異常の予兆として検出された事象の異常度が高い程、設備異常の改善余地が高いものとして設備異常の改善余地を算出してもよい。また、診断装置100は、異常の予兆として検出された事象の数が多い程、設備異常の改善余地が高いものとして設備異常の改善余地を算出してもよい。
【0053】
図8は、リフロー炉を評価対象として、多変量統計的プロセスに基づく異常度を計算した結果の一例を示す。図8の横軸は、時間を示し、縦軸は、異常度を示す。この例では、閾値以上の異常度は、黒丸で示されており、閾値未満の異常度は、白丸で示されている。診断装置100は、リフロー炉の異常度とリフロー炉の異常発生記録とを比較し、閾値以上の異常度が発生したときの事象と異常発生記録に記録されている異常との時間的前後関係から、どの事象がどの異常の予兆であるかを特定する。この例では、符号801は、真空漏れの予兆として検出された異常度を示す。符号802は、流量異常の予兆として検出された異常度を示す。符号803は、ポンプ異常の予兆として検出された異常度を示す。符号804は、エア処理異常の予兆として検出された異常度を示す。符号805は、温度上昇異常の予兆として検出された異常度を示す。診断装置100は、異常の予兆として検出された事象の異常度又は異常の予兆として検出された事象の数に応じて、設備異常の改善余地を算出することができる。
【0054】
次に、生産現場の生産性の改善余地を評価項目とする例について説明する。評価項目が装置に関わる生産性の改善余地である場合、評価項目の評価に用いられるデータとして、例えば、サイクルタイム、タクトタイム、又はリードタイムを用いることができる。診断装置100は、例えば、サイクルタイムの一番長い装置の稼働率を基に、生産現場の生産性の改善余地を算出することができる。また、診断装置100は、装置の停止時間の減少又は停止回数の減少による単位時間あたりの製品の生産数の増加を、生産現場の生産性の改善余地として算出することができる。また、評価項目が作業者に関わる生産性の改善余地である場合、評価項目の評価に用いられるデータとして、例えば、各作業ラインのサイクルタイム及び組み合わせ表を用いることができる。診断装置100は、各作業ラインのサイクルタイム及び組み合わせ表を基に、各作業者の分担の見直しを行い、単位時間あたりの製品の生産数の増加を、生産現場の生産性の改善余地として算出することができる。
【0055】
次に、製品の品質向上の改善余地を評価項目とする例について説明する。評価項目が製品の品質向上の改善余地である場合、評価項目の評価に用いられるデータとして、例えば、製品の計測値(例えば、寸法、形状、色など)及びその検査結果(例えば、良品と不良品とを区別する検査結果)を用いることができる。診断装置100は、例えば、製品の計測値及びその検査結果を用いて、タグチメソッド(パラメータ設計法)によるシミュレーションにより、製品の改善の度合いを算出することができる。
【0056】
本発明の実施形態によれば、診断装置100による評価項目の評価が可能である場合には、診断装置100による評価項目の評価が行われ、診断装置100による評価項目の評価が可能でない場合には、評価者による評価項目の評価が行われるため、一律の基準で改善余地の評価が困難である場合でも改善余地の評価が可能になる。
【0057】
上述の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載され得るが、以下には限定されない。
(付記1)
製品の生産に関わる改善余地を評価する診断システム900であって、
診断装置100と、
診断装置100に通信ネットワーク400を通じて接続する第1の端末装置200であって、評価の依頼元が操作する、第1の端末装置200と、
診断装置100に通信ネットワーク400を通じて接続する第2の端末装置300であって、評価を行う評価者が操作する、第2の端末装置300と、を備え、
診断装置100は、
評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる前記生産に関わるデータとを第1の端末装置200から取得する取得部110と、
第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、診断装置100が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する判定部111と、
判定部111による判定の結果が否定判定である場合に、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を第2の端末装置300に変更する変更部112と、
を備える、診断システム900。
(付記2)
製品の生産に関わる改善余地を評価する診断システム900であって、
評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとを取得する取得部110と、
第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、診断装置100が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する判定部111と、
判定部111による判定の結果に応じて、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更する変更部112と、
判定の結果が肯定判定である場合に、変更部112から信号を受信し、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、評価項目の評価を行う評価部113と、
判定の結果が否定判定である場合に、変更部112から信号を受信し、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、評価項目の評価を行うことを評価者に依頼する通知を出力する通知部114と、
を備える診断システム900。
(付記3)
付記2に記載の診断システム900であって、
評価部113による評価項目の評価により算出された改善余地が閾値未満である場合に、通知部114は、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、評価項目の評価を行うことを評価者に依頼する通知を出力する、診断システム900。
(付記4)
付記2に記載の診断システム900であって、
判定結果が否定判定である場合に、通知部114は、第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータを前記通知とともに出力する、診断システム900。
(付記5)
付記2に記載の診断システム900であって、
通知部114は、評価部113による評価項目の評価により算出された改善余地の値を評価の依頼元宛に出力する、診断システム900。
(付記6)
付記2に記載の診断システム900であって、
通知部114は、評価部113による評価項目の評価により算出された改善余地の値を評価者宛に出力する、診断システム900。
(付記7)
製品の生産に関わる改善余地を評価する診断装置100であって、
評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとを取得する取得部110と、
第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、診断装置100が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定する判定部111と、
判定部111による判定の結果に応じて、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更する変更部112と、
を備える診断装置。
(付記8)
製品の生産に関わる改善余地を評価する診断装置100により実行される診断方法であって、
評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとを取得するステップと、
第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、診断装置100が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定するステップと、
判定の結果に応じて、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更するステップと、
を含む、診断方法。
(付記9)
製品の生産に関わる改善余地を評価する診断装置100に、
評価の対象を指定する第1の指定情報と、評価の対象の評価項目を指定する第2の指定情報と、評価項目の評価に用いられる生産に関わるデータとを取得するステップと、
第1の指定情報、第2の指定情報、及びデータに基づいて、診断装置100が評価項目の評価をすることが可能であるか否かを判定するステップと、
判定の結果に応じて、評価項目の評価を依頼する信号の出力先を変更するステップと、
を実行させる診断プログラム105。
【符号の説明】
【0058】
100…診断装置 101…記憶装置 102…主記憶装置 103…演算処理装置 104…通信インタフェース 105…診断プログラム 110…取得部 111…判断部 112…変更部 113…評価部 114…通知部 200…端末装置 201…ユーザ 300…端末装置 301…評価者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8