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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130805
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/075 20060101AFI20240920BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240920BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03H7/075 Z
H01F27/00 S
H01F17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040710
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】易 龍飛
【テーマコード(参考)】
5E070
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB07
5E070CB13
5E070CB17
5E070DB08
5J024AA01
5J024BA11
5J024BA18
5J024CA02
5J024CA03
5J024CA04
5J024CA09
5J024DA04
5J024DA25
5J024DA29
5J024DA31
5J024DA33
5J024DA34
5J024DA35
5J024EA01
5J024EA02
5J024EA03
5J024KA03
(57)【要約】
【課題】通過帯域に近い周波数領域に発生させた減衰極を、他の特性に影響を与えることなく制御する。
【解決手段】電子部品1は、共振器20と、積層された複数の誘電体層と、複数の導体とを含む積層体50とを備えている。複数の導体は、共振器20を構成するための導体層702と、減衰極を形成するための導体群とを含んでいる。導体層702は、第1の端部E1と、第2の端部E2とを有している。導体群は、第1の端部E1と第2の端部E2との間において導体層702に接続されると共に、インダクタL41を構成するためのインダクタ用導体と、キャパシタC41を構成するためのキャパシタ用導体とを含んでいる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の信号端子と、
第2の信号端子と、
回路構成上、前記第1の信号端子と前記第2の信号端子との間に設けられた共振器と、
前記第1の信号端子、前記第2の信号端子および前記共振器を一体化するための積層体であって、積層された複数の誘電体層と、複数の導体とを含む積層体とを備え、
前記複数の導体は、前記共振器を構成するための共振器用導体層と、前記第1の信号端子と前記第2の信号端子との間の通過減衰特性において減衰極を形成するための導体群とを含み、
前記共振器用導体層は、回路構成上前記第1の信号端子に最も近い第1の端部と、回路構成上前記第2の信号端子に最も近い第2の端部とを有し、
前記導体群は、前記第1の端部と前記第2の端部との間において前記共振器用導体層に接続されると共に、インダクタを構成するためのインダクタ用導体と、キャパシタを構成するためのキャパシタ用導体とを含むことを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記導体群は、回路構成上、前記第1の端部と前記第2の端部とを接続する経路とグランドとの間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記共振器は、直列に接続された第1の部分および第2の部分を含み、
前記導体群は、前記第1の部分と前記第2の部分との接続点に接続されていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記共振器用導体層は、前記第1の端部を含む第1の領域と、前記第2の端部を含む第2の領域と、前記共振器用導体層の長手方向において前記第1の領域と前記第2の領域との間に配置された中央領域とを含み、
前記導体群は、前記中央領域に接続されていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記インダクタ用導体は、前記キャパシタ用導体に電気的に接続されていると共に、回路構成上、前記第1の端部と前記第2の端部とを接続する経路と前記キャパシタ用導体との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記インダクタ用導体は、複数の導体層と、前記複数の導体層を直列に接続するための複数のスルーホールとを含み、
前記複数の導体層の各々は、前記複数のスルーホールが接続される接続部分と、線路部分とを含み、
前記複数の導体層は、前記複数の誘電体層の積層方向において隣接する2つの導体層を含み、
前記2つの導体層は、前記積層方向から見たときに、前記2つの導体層の一方の前記線路部分と前記2つの導体層の他方の前記線路部分とが互いに重ならないように配置されていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記2つの導体層の一方の前記線路部分と前記2つの導体層の他方の前記線路部分は、互いに対称な形状を有していることを特徴とする請求項6記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記複数の導体は、更に、前記共振器を構成するための2つのスルーホール列であって、それぞれ複数のスルーホールが直列に接続されることによって構成されたスルーホール列を含み、
前記2つのスルーホール列の各々の一端は、前記共振器用導体層に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記導体群は、前記複数の誘電体層の積層方向に直交する一方向から見て、前記2つのスルーホール列の間に配置されていることを特徴とする請求項8記載の積層型電子部品。
【請求項10】
更に、前記共振器を含むと共に回路構成上前記第1の信号端子と前記第2の信号端子との間に設けられたフィルタを備えたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記フィルタは、更に、少なくとも1つの他の共振器を含み、
前記複数の導体は、更に、前記少なくとも1つの他の共振器を構成するための少なくとも1つの他の共振器用導体層を含むことを特徴とする請求項10記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記少なくとも1つの他の共振器は、複数の他の共振器であり、
前記少なくとも1つの他の共振器用導体層は、複数の他の共振器用導体層であり、
前記複数の導体は、前記通過減衰特性において減衰極を形成するための少なくとも1つの他の導体群を含み、
前記少なくとも1つの他の導体群は、前記第1の端部と前記第2の端部との間において前記複数の他の共振器用導体層のうちの少なくとも1つに接続されると共に、それぞれ他のインダクタを構成するための他のインダクタ用導体と他のキャパシタを構成するための他のキャパシタ用導体とを含むことを特徴とする請求項11記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振器を含む積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置に用いられる電子部品の一つには、複数の共振器を備えたバンドパスフィルタがある。特に小型の通信装置に用いられるバンドパスフィルタには、小型化が求められる。小型化に適したバンドパスフィルタとしては、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含む積層体を用いたものが知られている。
【0003】
積層体を用いたバンドパスフィルタに用いられる共振器としては、例えば、特許文献1に開示されているように、導体層と複数のスルーホールとによって構成されたインダクタであって、複数の誘電体層の積層方向に直交する軸に巻回されたインダクタを含む共振器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/071191号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バンドパスフィルタには、通過帯域に近い周波数領域において、挿入損失が急峻に変化する特性が求められる場合がある。このような特性は、例えば、通過帯域に近い周波数領域に減衰極を発生させることで実現することができる。減衰極は、例えば、バンドパスフィルタを構成するインダクタの数やインダクタンスを調整したり、キャパシタの数やキャパシタンスを調整したりすることによって発生させることができる。しかし、この減衰極の周波数を制御しようとすると、通過帯域の特性や他の減衰極の周波数も変化してしまうため、所望の特性を実現することが難しかった。
【0006】
上記の問題は、バンドパスフィルタに限らず、所定の通過帯域を有する積層型電子部品全般に当てはまる。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、通過帯域に近い周波数領域に発生させた減衰極を、他の特性に影響を与えることなく制御することができる積層型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層型電子部品は、第1の信号端子と、第2の信号端子と、回路構成上、第1の信号端子と第2の信号端子との間に設けられた共振器と、第1の信号端子、第2の信号端子および共振器を一体化するための積層体であって、積層された複数の誘電体層と、複数の導体とを含む積層体とを備えている。複数の導体は、共振器を構成するための共振器用導体層と、第1の信号端子と第2の信号端子との間の通過減衰特性において減衰極を形成するための導体群とを含んでいる。共振器用導体層は、回路構成上第1の信号端子に最も近い第1の端部と、回路構成上第2の信号端子に最も近い第2の端部とを有している。導体群は、第1の端部と第2の端部との間において共振器用導体層に接続されると共に、インダクタを構成するためのインダクタ用導体と、キャパシタを構成するためのキャパシタ用導体とを含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層型電子部品では、第1の信号端子と第2の信号端子との間の通過減衰特性において減衰極を形成するための導体群が、第1の端部と第2の端部との間において共振器用導体層に接続されている。これにより、本発明によれば、通過帯域に近い周波数領域に発生させた減衰極を、他の特性に影響を与えることなく制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の回路構成を示す回路図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の外観を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における1層目ないし3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における4層目ないし6層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における7層目ないし9層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における10層目ないし14層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における15層目ないし18層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における19層目ないし21層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図9】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における22層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図10】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体の内部を示す斜視図である。
図11】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の特性の一例を示す特性図である。
図12】第1のシミュレーションの結果を示す特性図である。
図13】第2のシミュレーションの結果を示す特性図である。
図14】本発明の一実施の形態における共振器の変形例を示す特性図である。
図15】本発明の一実施の形態における共振回路の変形例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品(以下、単に電子部品と記す。)1の構成の概略について説明する。
【0012】
電子部品1は、第1の信号端子2と、第2の信号端子3と、回路構成上、第1の信号端子と第2の信号端子との間に設けられた共振器20と、共振器20に接続された共振回路40とを備えている。本実施の形態では特に、共振回路40は、回路構成上、共振器20とグランドとの間に設けられている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0013】
電子部品1は、更に、共振器10,30を備えている。共振器10,30は、回路構成上、第1の信号端子2と第2の信号端子3とを接続する経路とグランドとの間に設けられている。共振器10は、回路構成上、共振器20よりも第1の信号端子2により近い位置において上記の経路に接続されている。共振器30は、回路構成上、共振器20よりも第2の信号端子3により近い位置において上記の経路に接続されている。
【0014】
電子部品1は、更に、回路構成上、第1の信号端子2と第2の信号端子3との間に設けられた少なくとも1つのフィルタを備えている。本実施の形態では特に、電子部品1は、少なくとも1つのフィルタとして、共振器10を含む第1のハイパスフィルタ4と、共振器20を含むローパスフィルタ5と、共振器30を含む第2のハイパスフィルタ6とを備えている。第1のハイパスフィルタ4、ローパスフィルタ5および第2のハイパスフィルタ6は、第1の信号端子2から第2の信号端子3に向かって、この順に直列に接続されている。
【0015】
また、第1のハイパスフィルタ4、ローパスフィルタ5および第2のハイパスフィルタ6は、所定の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタを構成する。従って、電子部品1は、少なくとも1つのフィルタとして、共振器10,20,30を含むバンドパスフィルタを備えているとも言える。このバンドパスフィルタは、構成要素として、共振回路40を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0016】
次に、図1を参照して、電子部品1の回路構成の一例について説明する。電子部品1は、更に、インダクタL1,L2,L3を備えている。インダクタL1の一端は、第1の信号端子2に接続されている。
【0017】
第1のハイパスフィルタ4は、共振器10に加えて、インダクタL11,L12と、キャパシタC11,C12,C13,C14,C15,C16とを備えている。キャパシタC11の一端は、インダクタL1の他端に接続されている。キャパシタC12の一端は、キャパシタC11の他端に接続されている。キャパシタC13,C14の各一端は、キャパシタC11の一端に接続されている。キャパシタC13の他端は、キャパシタC12の他端に接続されている。キャパシタC14の他端は、グランドに接続されている。
【0018】
共振器10の一端は、キャパシタC11とキャパシタC12との接続点に接続されている。インダクタL11は、キャパシタC11の一端に接続されている。キャパシタC15の一端は、インダクタL11の他端に接続されている。キャパシタC15の他端は、共振器10の他端に接続されている。
【0019】
キャパシタC16の一端は、共振器10の一端に接続されている。インダクタL12の一端は、共振器10の他端に接続されている。キャパシタC16とインダクタL12の各他端は、インダクタL3の一端に接続されている。
【0020】
ローパスフィルタ5は、共振器20に加えて、インダクタL23と、キャパシタC21,C22,C23とを含んでいる。共振器20は、直列に接続された第1の部分21および第2の部分22を含んでいる。第1の部分21の一端は、第1のハイパスフィルタ4のキャパシタC12の他端に接続されている。第2の部分22の一端は、第1の部分21の他端に接続されている。
【0021】
キャパシタC21,C23の各一端は、共振器20の第1の部分21の一端に接続されている。キャパシタC22の一端とキャパシタC23の他端は、共振器20の第2の部分22の他端に接続されている。キャパシタC21,C22の各他端は、インダクタL23の一端に接続されている。インダクタL23の他端は、グランドに接続されている。
【0022】
第2のハイパスフィルタ6は、共振器30に加えて、インダクタL31,L32と、キャパシタC31,C32,C33,C34,C35,C36とを備えている。キャパシタC31の一端は、ローパスフィルタ5の共振器20の第2の部分22の他端に接続されている。キャパシタC32の一端は、キャパシタC31の他端に接続されている。キャパシタC33の一端は、キャパシタC31の一端に接続されている。キャパシタC33の他端とキャパシタC34の一端は、キャパシタC32の他端に接続されている。キャパシタC34の他端は、グランドに接続されている。
【0023】
共振器30の一端は、キャパシタC31とキャパシタC32との接続点に接続されている。インダクタL31は、キャパシタC32の他端に接続されている。キャパシタC35の一端は、インダクタL31の他端に接続されている。キャパシタC35の他端は、共振器30の他端に接続されている。
【0024】
インダクタL2の一端は、キャパシタC32の他端に接続されている。インダクタL2の他端は、第2の信号端子3に接続されている。
【0025】
キャパシタC36の一端は、共振器30の一端に接続されている。インダクタL32の一端は、共振器30の他端に接続されている。キャパシタC36とインダクタL32の各他端は、インダクタL3の一端に接続されている。
【0026】
インダクタL3の他端は、グランドに接続されている。
【0027】
共振回路40は、インダクタL41とキャパシタC41とを含んでいる。インダクタL41の一端は、ローパスフィルタ5の共振器20の第1の部分21と第2の部分22との接続点Pに接続されている。キャパシタC41の一端は、インダクタL41の他端に接続されている。キャパシタC41の他端は、グランドに接続されている。
【0028】
次に、図2を参照して、電子部品1のその他の構成について説明する。図2は、電子部品1の外観を示す斜視図である。
【0029】
電子部品1は、更に、積層された複数の誘電体層と、複数の導体(複数の導体層および複数のスルーホール)とを含む積層体50を備えている。第1の信号端子2、第2の信号端子3、共振器10,20,30および共振回路40は、積層体50に一体化されている。
【0030】
積層体50は、複数の誘電体層の積層方向Tの両端に位置する底面50Aおよび上面50Bと、底面50Aと上面50Bを接続する4つの側面50C~50Fとを有している。側面50C,50Dは互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C~50Fは、上面50Bおよび底面50Aに対して垂直になっている。
【0031】
ここで、図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、積層方向Tに平行な一方向を、Z方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。また、「積層方向Tから見たとき」という表現は、Z方向または-Z方向に離れた位置から対象物を見ることを意味する。
【0032】
図2に示したように、底面50Aは、積層体50における-Z方向の端に位置する。上面50Bは、積層体50におけるZ方向の端に位置する。側面50Cは、積層体50における-X方向の端に位置する。側面50Dは、積層体50におけるX方向の端に位置する。側面50Eは、積層体50における-Y方向の端に位置する。側面50Fは、積層体50におけるY方向の端に位置する。
【0033】
電子部品1は、更に、積層体50の底面50Aに設けられた電極111,112,113,114を備えている。電極111は、側面50Dよりも側面50Cにより近い位置において、Y方向に平行な方向に延在している。電極112は、側面50Cよりも側面50Dにより近い位置において、Y方向に平行な方向に延在している。電極113,114は、電極111と電極112との間に配置されている。電極113は、側面50Fよりも側面50Eにより近い位置に配置されている。電極114は、側面50Eよりも側面50Fにより近い位置に配置されている。
【0034】
電極111は第1の信号端子2に対応し、電極112は第2の信号端子3に対応している。従って、第1および第2の信号端子2,3は、積層体50の底面50Aに設けられている。電極113,114の各々は、グランドに接続される。
【0035】
次に、図3(a)ないし図9を参照して、積層体50を構成する複数の誘電体層および複数の導体の一例について説明する。この例では、積層体50は、積層された22層の誘電体層を有している。以下、この22層の誘電体層を、下から順に1層目ないし22層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし22層目の誘電体層を符号51~72で表す。
【0036】
図3(a)ないし図8(b)において、複数の円は複数のスルーホールを表している。誘電体層51~70の各々には、複数のスルーホールが形成されている。複数のスルーホールは、それぞれ、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填することによって形成される。複数のスルーホールの各々は、電極、導体層または他のスルーホールに接続されている。複数のスルーホールの各々と、電極、導体層または他のスルーホールとの接続関係については、1層目ないし21層目の誘電体層51~71が積層された状態における接続関係について説明している。
【0037】
図3(a)は、1層目の誘電体層51のパターン形成面を示している。誘電体層51のパターン形成面には、電極111~114が形成されている。また、誘電体層51には、電極113に接続されたスルーホール51T4と、電極111に接続されたスルーホール51T5と、電極112に接続されたスルーホール51T6と、電極114に接続されたスルーホール51T7,51T8が形成されている。
【0038】
図3(b)は、2層目の誘電体層52のパターン形成面を示している。誘電体層52のパターン形成面には、導体層521,522,523が形成されている。導体層521は、導体層521の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層522は、導体層522の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。スルーホール51T5は、導体層521の第1端の近傍部分に接続されている。スルーホール51T6は、導体層522の第1端の近傍部分に接続されている。
【0039】
また、誘電体層52には、スルーホール52T1b,52T3b,52T4,52T5,52T6が形成されている。スルーホール51T4,51T7,51T8,52T1b,52T3b,52T4は、導体層523に接続されている。スルーホール52T5は、導体層521の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール52T6は、導体層522の第2端の近傍部分に接続されている。
【0040】
図3(c)は、3層目の誘電体層53のパターン形成面を示している。誘電体層53のパターン形成面には、導体層531,532,533,534,535,536が形成されている。導体層531は、導体層531の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層532は、導体層532の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。スルーホール52T5は、導体層531の第1端の近傍部分に接続されている。スルーホール52T6は、導体層532の第1端の近傍部分に接続されている。
【0041】
また、誘電体層53には、2つのスルーホール53T1aと、2つのスルーホール53T3aと、スルーホール53T1b,53T2a,53T2b,53T3b,53T4,53T5,53T6とが形成されている。スルーホール52T1b,52T3b,52T4は、それぞれスルーホール53T1b,53T3b,53T4に接続されている。2つのスルーホール53T1aは、導体層533に接続されている。スルーホール53T2a,53T2bは、それぞれ、導体層534,535に接続されている。2つのスルーホール53T3aは、導体層536に接続されている。スルーホール53T5は、導体層531の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール53T6は、導体層532の第2端の近傍部分に接続されている。
【0042】
図4(a)は、4層目の誘電体層54のパターン形成面を示している。誘電体層54のパターン形成面には、導体層541,542,543,544が形成されている。スルーホール53T4は、導体層544に接続されている。
【0043】
また、誘電体層54には、2つのスルーホール54T1aと、2つのスルーホール54T3aと、スルーホール54T1b,54T2a,54T2b,54T3b,54T5,54T6とが形成されている。スルーホール53T1a,53T1b,53T2a,53T2b,53T3a,53T3bは、それぞれスルーホール54T1a,54T1b,54T2a,54T2b,54T3a,54T3bに接続されている。スルーホール53T5,54T5は、導体層541に接続されている。スルーホール53T6,54T6は、導体層542に接続されている。
【0044】
図4(b)は、5層目の誘電体層55のパターン形成面を示している。誘電体層55のパターン形成面には、導体層551,552,553,554,555が形成されている。また、誘電体層55には、2つのスルーホール55T1aと、2つのスルーホール55T1bと、2つのスルーホール55T3aと、2つのスルーホール55T3bと、スルーホール55T2a,55T2b,55T4,55T5,55T6とが形成されている。スルーホール54T1a,55T1aは、導体層551に接続されている。スルーホール54T1b,55T1bは、導体層554に接続されている。スルーホール54T3a,55T3aは、導体層552に接続されている。スルーホール54T3b,55T3bは、導体層555に接続されている。スルーホール54T2a,54T2b,54T5,54T6は、それぞれスルーホール55T2a,55T2b,55T5,55T6に接続されている。スルーホール55T4は、導体層553に接続されている。
【0045】
図4(c)は、6層目の誘電体層56のパターン形成面を示している。誘電体層56のパターン形成面には、導体層561,562が形成されている。また、誘電体層56には、2つのスルーホール56T1aと、2つのスルーホール56T1bと、2つのスルーホール56T3aと、2つのスルーホール56T3bと、スルーホール56T2a,56T2b,56T4,56T5,56T6とが形成されている。スルーホール55T1a,55T1b,55T3a,55T3b,55T4~55T6は、それぞれスルーホール56T1a,56T1b,56T3a,56T3b,56T4~56T6に接続されている。スルーホール55T2a,56T2aは、導体層561に接続されている。スルーホール55T2b,56T2bは、導体層562に接続されている。
【0046】
図5(a)は、7層目の誘電体層57のパターン形成面を示している。誘電体層57のパターン形成面には、導体層571が形成されている。また、誘電体層57には、2つのスルーホール57T1aと、2つのスルーホール57T1bと、2つのスルーホール57T3aと、2つのスルーホール57T3bと、スルーホール57T2a,57T2b,57T4,57T5,57T6とが形成されている。スルーホール56T1a,56T1b,56T2a,56T2b,56T3a,56T3b,56T4~56T6は、それぞれスルーホール57T1a,57T1b,57T2a,57T2b,57T3a,57T3b,57T4~57T6に接続されている。
【0047】
図5(b)は、8層目の誘電体層58のパターン形成面を示している。誘電体層58には、2つのスルーホール58T1aと、2つのスルーホール58T1bと、2つのスルーホール58T3aと、2つのスルーホール58T3bと、スルーホール58T2a,58T2b,58T4,58T5,58T6とが形成されている。スルーホール57T1a,57T1b,57T2a,57T2b,57T3a,57T3b,57T4~57T6は、それぞれスルーホール58T1a,58T1b,58T2a,58T2b,58T3a,58T3b,58T4~58T6に接続されている。
【0048】
図5(c)は、9層目の誘電体層59のパターン形成面を示している。誘電体層59のパターン形成面には、導体層591が形成されている。導体層591は、導体層591の長手方向の両端に位置する第1の接続部分および第2の接続部分と、第1の接続部分と第2の接続部分との間に位置する線路部分とを含んでいる。図5(c)では、第1の接続部分と線路部分との境界と、第2の接続部分と線路部分との境界を、それぞれ点線で示している。なお、これ以降の説明で使用する図5(c)と同様の図においても、第1の接続部分と線路部分との境界と、第2の接続部分と線路部分との境界については、図5(c)と同様の表し方を用いる。スルーホール58T4は、導体層591の第1の接続部分に接続されている。
【0049】
また、誘電体層59には、2つのスルーホール59T1aと、2つのスルーホール59T1bと、2つのスルーホール59T3aと、2つのスルーホール59T3bと、スルーホール59T2a,59T2b,59T4,59T5,59T6とが形成されている。スルーホール58T1a,58T1b,58T2a,58T2b,58T3a,58T3b,58T5,58T6は、それぞれスルーホール59T1a,59T1b,59T2a,59T2b,59T3a,59T3b,59T5,59T6に接続されている。スルーホール59T4は、導体層591の第2の接続部分に接続されている。
【0050】
図6(a)は、10層目および11層目の誘電体層60,61の各々のパターン形成面を示している。誘電体層60,61の各々には、2つのスルーホール60T1aと、2つのスルーホール60T1bと、2つのスルーホール60T3aと、2つのスルーホール60T3bと、スルーホール60T2a,60T2b,60T4,60T5,60T6とが形成されている。スルーホール59T1a,59T1b,59T2a,59T2b,59T3a,59T3b,59T4~59T6は、それぞれ、誘電体層60に形成されたスルーホール60T1a,60T1b,60T2a,60T2b,60T3a,60T3b,60T4~60T6に接続されている。また、誘電体層60,61では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0051】
図6(b)は、12層目の誘電体層62のパターン形成面を示している。誘電体層62のパターン形成面には、導体層621が形成されている。導体層621は、導体層621の長手方向の両端に位置する第1の接続部分および第2の接続部分と、第1の接続部分と第2の接続部分との間に位置する線路部分とを含んでいる。誘電体層61に形成されたスルーホール60T4は、導体層621の第1の接続部分に接続されている。
【0052】
また、誘電体層62には、2つのスルーホール62T1aと、2つのスルーホール62T1bと、2つのスルーホール62T3aと、2つのスルーホール62T3bと、スルーホール62T2a,62T2b,62T4,62T5,62T6とが形成されている。誘電体層61に形成されたスルーホール60T1a,60T1b,60T2a,60T2b,60T3a,60T3b,60T5,60T6は、それぞれスルーホール62T1a,62T1b,62T2a,62T2b,62T3a,62T3b,62T5,62T6に接続されている。スルーホール62T4は、導体層621の第2の接続部分に接続されている。
【0053】
図6(c)は、13層目および14層目の誘電体層63,64の各々のパターン形成面を示している。誘電体層63,64の各々には、2つのスルーホール63T1aと、2つのスルーホール63T1bと、2つのスルーホール63T3aと、2つのスルーホール63T3bと、スルーホール63T2a,63T2b,63T4,63T5,63T6とが形成されている。スルーホール62T1a,62T1b,62T2a,62T2b,62T3a,62T3b,62T4~62T6は、それぞれ、誘電体層63に形成されたスルーホール63T1a,63T1b,63T2a,63T2b,63T3a,63T3b,63T4~63T6に接続されている。また、誘電体層63,64では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0054】
図7(a)は、15層目の誘電体層65のパターン形成面を示している。誘電体層65のパターン形成面には、導体層651が形成されている。導体層651は、導体層651の長手方向の両端に位置する第1の接続部分および第2の接続部分と、第1の接続部分と第2の接続部分との間に位置する線路部分とを含んでいる。誘電体層64に形成されたスルーホール63T4は、導体層651の第1の接続部分に接続されている。
【0055】
また、誘電体層65には、2つのスルーホール65T1aと、2つのスルーホール65T1bと、2つのスルーホール65T3aと、2つのスルーホール65T3bと、スルーホール65T2a,65T2b,65T4,65T5,65T6とが形成されている。誘電体層64に形成されたスルーホール63T1a,63T1b,63T2a,63T2b,63T3a,63T3b,63T5,63T6は、それぞれスルーホール65T1a,65T1b,65T2a,65T2b,65T3a,65T3b,65T5,65T6に接続されている。スルーホール65T4は、導体層651の第2の接続部分に接続されている。
【0056】
図7(b)は、16層目および17層目の誘電体層66,67の各々のパターン形成面を示している。誘電体層66,67の各々には、2つのスルーホール66T1aと、2つのスルーホール66T1bと、2つのスルーホール66T3aと、2つのスルーホール66T3bと、スルーホール66T2a,66T2b,66T4,66T5,66T6とが形成されている。スルーホール65T1a,65T1b,65T2a,65T2b,65T3a,65T3b,65T4~65T6は、それぞれ、誘電体層66に形成されたスルーホール66T1a,66T1b,66T2a,66T2b,66T3a,66T3b,66T4~66T6に接続されている。また、誘電体層66,67では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0057】
図7(c)は、18層目の誘電体層68のパターン形成面を示している。誘電体層68のパターン形成面には、導体層681が形成されている。導体層681は、導体層681の長手方向の両端に位置する第1の接続部分および第2の接続部分と、第1の接続部分と第2の接続部分との間に位置する線路部分とを含んでいる。誘電体層67に形成されたスルーホール66T4は、導体層681の第1の接続部分に接続されている。
【0058】
また、誘電体層68には、2つのスルーホール68T1aと、2つのスルーホール68T1bと、2つのスルーホール68T3aと、2つのスルーホール68T3bと、スルーホール68T2a,68T2b,68T4,68T5,68T6とが形成されている。誘電体層67に形成されたスルーホール66T1a,66T1b,66T2a,66T2b,66T3a,66T3b,66T5,66T6は、それぞれスルーホール68T1a,68T1b,68T2a,68T2b,68T3a,68T3b,68T5,68T6に接続されている。スルーホール68T4は、導体層681の第2の接続部分に接続されている。
【0059】
図8(a)は、19層目の誘電体層69のパターン形成面を示している。誘電体層69のパターン形成面には、導体層691,692が形成されている。スルーホール68T5,68T6は、それぞれ導体層691,692に接続されている。
【0060】
また、誘電体層68には、2つのスルーホール69T1aと、2つのスルーホール69T1bと、2つのスルーホール69T3aと、2つのスルーホール69T3bと、スルーホール69T2a,69T2b,69T4とが形成されている。スルーホール68T1a,68T1b,68T2a,68T2b,68T3a,68T3b,68T4は、それぞれスルーホール69T1a,69T1b,69T2a,69T2b,69T3a,69T3b,69T4に接続されている。
【0061】
図8(b)は、20層目の誘電体層70のパターン形成面を示している。誘電体層70のパターン形成面には、導体層701,702,703が形成されている。導体層701は、導体層701の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層702は、導体層702の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層703は、導体層703の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。
【0062】
また、導体層702は、第1端を含む第1の部分702Aと、第2端を含むと共に第1の部分702Aに接続された第2の部分702Bとを含んでいる。図8(b)では、第1の部分702Aと第2の部分702Bとの境界を、点線で示している。
【0063】
また、誘電体層70には、2つのスルーホール70T1aと、2つのスルーホール70T1bと、2つのスルーホール70T3aと、2つのスルーホール70T3bと、スルーホール70T2a,70T2b,70T4とが形成されている。スルーホール69T1a,70T1aは、導体層701の第1端の近傍部分に接続されている。スルーホール69T1b,70T1bは、導体層701の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール69T2a,70T2aは、導体層702の第1端の近傍部分に接続されている。スルーホール69T2b,70T2bは、導体層702の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール69T3a,70T3aは、導体層703の第1端の近傍部分に接続されている。スルーホール69T3b,70T3bは、導体層703の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール69T4,70T4は、導体層702の第1の部分702Aと第2の部分702Bとの境界およびその近傍部分に接続されている。
【0064】
図8(c)は、21層目の誘電体層71のパターン形成面を示している。誘電体層71のパターン形成面には、導体層711,712,713が形成されている。導体層711は、導体層711の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層712は、導体層712の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層713は、導体層713の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。
【0065】
また、導体層712は、第1端を含む第1の部分712Aと、第2端を含むと共に第1の部分712Aに接続された第2の部分712Bとを含んでいる。図8(c)では、第1の部分712Aと第2の部分712Bとの境界を、点線で示している。
【0066】
2つのスルーホール70T1aは、導体層711の第1端の近傍部分に接続されている。2つのスルーホール70T1bは、導体層711の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール70T2aは、導体層712の第1端の近傍部分に接続されている。スルーホール70T2bは、導体層712の第2端の近傍部分に接続されている。2つのスルーホール70T3aは、導体層713の第1端の近傍部分に接続されている。2つのスルーホール70T3bは、導体層713の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール70T4は、導体層712の第1の部分712Aと第2の部分712Bとの境界およびその近傍部分に接続されている。
【0067】
図9は、22層目の誘電体層72のパターン形成面を示している。誘電体層72のパターン形成面には、マーク721が形成されている。
【0068】
図2に示した積層体50は、1層目の誘電体層51のパターン形成面が積層体50の底面50Aになり、22層目の誘電体層72のパターン形成面とは反対側の面が積層体50の上面50Bになるように、1層目ないし22層目の誘電体層51~72が積層されて構成される。
【0069】
図3(a)ないし図8(b)に示した複数のスルーホールの各々は、1層目ないし21層目の誘電体層51~71を積層したときに、積層方向Tにおいて重なる導体層または積層方向Tにおいて重なる他のスルーホールに接続されている。また、図3(a)ないし図8(b)に示した複数のスルーホールのうち、電極内または導体層内に位置するスルーホールは、その電極またはその導体層に接続されている。
【0070】
図10は、1層目ないし22層目の誘電体層51~72が積層されて構成された積層体50の内部を示している。図10に示したように、積層体50の内部では、図3(a)ないし図8(c)に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。なお、図10では、マーク721を省略している。
【0071】
以下、図1に示した電子部品1の回路の構成要素と、図3(a)ないし図8(c)に示した積層体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。始めに、インダクタL1,L2について説明する。インダクタL1は、導体層521,531と、スルーホール52T5とによって構成されている。インダクタL2は、導体層522,532と、スルーホール52T6とによって構成されている。
【0072】
次に、第1のハイパスフィルタ4の構成要素について説明する。共振器10は、導体層701,711と、スルーホール55T1a,55T1b,56T1a,56T1b,57T1a,57T1b,58T1a,58T1b,59T1a,59T1b,60T1a,60T1b,62T1a,62T1b,63T1a,63T1b,65T1a,65T1b,66T1a,66T1b,68T1a,68T1b,69T1a,69T1b,70T1a,70T1bとによって構成されている。
【0073】
インダクタL11は、スルーホール54T5,55T5,56T5,57T5,58T5,59T5,60T5,62T5,63T5,65T5,66T5,68T5によって構成されている。インダクタL12は、スルーホール52T1b,53T1b,54T1bによって構成されている。
【0074】
キャパシタC11は、導体層533,541,551と、これらの導体層の間の誘電体層53,54とによって構成されている。キャパシタC12は、導体層551,561と、これらの導体層の間の誘電体層55とによって構成されている。キャパシタC13は、導体層541,561と、これらの導体層の間の誘電体層54,55とによって構成されている。
【0075】
キャパシタC14は、導体層523,541と、これらの導体層の間の誘電体層52,53とによって構成されている。キャパシタC15は、導体層691,701と、これらの導体層の間の誘電体層69とによって構成されている。キャパシタC16は、導体層523,543,551と、これらの導体層の間の誘電体層52,53とによって構成されている。
【0076】
次に、ローパスフィルタ5の構成要素について説明する。共振器20は、導体層702,712と、スルーホール56T2a,56T2b,57T2a,57T2b,58T2a,58T2b,59T2a,59T2b,60T2a,60T2b,62T2a,62T2b,63T2a,63T2b,65T2a,65T2b,66T2a,66T2b,68T2a,68T2b,69T2a,69T2b,70T2a,70T2b,70T4とによって構成されている。
【0077】
インダクタL23は、主に電極113,114、導体層523およびスルーホール51T4,51T7,51T8に生じるインダクタンス成分に対応する。
【0078】
キャパシタC21は、導体層523,534と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。キャパシタC22は、導体層523,535と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。キャパシタC23は、導体層561,562,571と、これらの導体層の間の誘電体層56とによって構成されている。
【0079】
次に、第2のハイパスフィルタ6の構成要素について説明する。共振器30は、導体層703,713と、スルーホール55T3a,55T3b,56T3a,56T3b,57T3a,57T3b,58T3a,58T3b,59T3a,59T3b,60T3a,60T3b,62T3a,62T3b,63T3a,63T3b,65T3a,65T3b,66T3a,66T3b,68T3a,68T3b,69T3a,69T3b,70T3a,70T3bとによって構成されている。
【0080】
インダクタL31は、スルーホール54T6,55T6,56T6,57T6,58T6,59T6,60T6,62T6,63T6,65T6,66T6,68T6によって構成されている。インダクタL32は、スルーホール52T3b,53T3b,54T3bによって構成されている。
【0081】
キャパシタC31は、導体層552,562と、これらの導体層の間の誘電体層55とによって構成されている。キャパシタC32は、導体層536,542,552と、これらの導体層の間の誘電体層53,54とによって構成されている。キャパシタC33は、導体層542,562と、これらの導体層の間の誘電体層54,55とによって構成されている。
【0082】
キャパシタC34は、導体層523,542と、これらの導体層の間の誘電体層52,53とによって構成されている。キャパシタC35は、導体層692,703と、これらの導体層の間の誘電体層69とによって構成されている。キャパシタC16は、導体層523,543,552と、これらの導体層の間の誘電体層52,53とによって構成されている。
【0083】
次に、共振回路40の構成要素について説明する。インダクタL41は、導体層591,621,651,681と、スルーホール55T4,56T4,57T4,58T4,59T4,60T4,62T4,63T4,65T4,66T4,68T4,69T4とによって構成されている。
【0084】
キャパシタC41は、導体層544,553と、これらの導体層の間の誘電体層54とによって構成されている。
【0085】
次に、インダクタL3について説明する。インダクタL3は、主に電極113,114、導体層523およびスルーホール51T4,52T7,51T8に生じるインダクタンス成分に対応する。
【0086】
次に、図1ないし図10を参照して、本実施の形態に係る電子部品1の構造上の特徴について説明する。第1のハイパスフィルタ4の共振器10、ローパスフィルタ5の共振器20、および第2のハイパスフィルタ6の共振器30は、それぞれ、矩形状またはほぼ矩形状の巻線でもある。矩形状またはほぼ矩形状の巻線では、巻回数について、巻線を矩形とみなしたときに、矩形の1辺につき1/4回と数えてもよい。共振器10,20,30の各々の巻回数は、3/4回以上である。本実施の形態では、共振器10,20,30の各々は、積層方向Tに直交する軸の周りに3/4回巻回されている。
【0087】
ここで、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成された構造物を、スルーホール列と言う。共振器10は、2つのスルーホール列T1aと、2つのスルーホール列T1bと、2つのスルーホール列T1aの各々の一端と2つのスルーホール列T1bの各々の一端に電気的に接続された導体層701とを含んでいる。2つのスルーホール列T1aは、スルーホール55T1a,56T1a,57T1a,58T1a,59T1a,60T1a,62T1a,63T1a,65T1a,66T1a,68T1a,69T1aが直列に接続されることによって構成されている。2つのスルーホール列T1bは、スルーホール55T1b,56T1b,57T1b,58T1b,59T1b,60T1b,62T1b,63T1b,65T1b,66T1b,68T1b,69T1bが直列に接続されることによって構成されている。共振器10は、更に、導体層711と、導体層701と導体層711とを電気的に接続するスルーホール70T1a,70T1bとを含んでいる。
【0088】
共振器20は、スルーホール列T2aと、スルーホール列T2bと、スルーホール列T2aの一端とスルーホール列T2bの一端に電気的に接続された導体層702とを含んでいる。スルーホール列T2aは、スルーホール56T2a,57T2a,58T2a,59T2a,60T2a,62T2a,63T2a,65T2a,66T2a,68T2a,69T2aが直列に接続されることによって構成されている。スルーホール列T2bは、スルーホール56T2b,57T2b,58T2b,59T2b,60T2b,62T2b,63T2b,65T2b,66T2b,68T2b,69T2bが直列に接続されることによって構成されている。共振器20は、更に、導体層712と、導体層702と導体層712とを電気的に接続するスルーホール70T2a,70T2b,70T4とを含んでいる。
【0089】
共振器20の第1の部分21は、スルーホール列T2aと、導体層702の第1の部分702Aと、導体層712の第1の部分712Aとを含んでいる。共振器20の第2の部分22は、スルーホール列T2bと、導体層702の第2の部分702Bと、導体層712の第2の部分712Bとを含んでいる。
【0090】
共振器30は、2つのスルーホール列T3aと、2つのスルーホール列T3bと、2つのスルーホール列T3aの各々の一端と2つのスルーホール列T3bの各々の一端に電気的に接続された導体層703とを含んでいる。2つのスルーホール列T3aは、スルーホール55T3a,56T3a,57T3a,58T3a,59T3a,60T3a,62T3a,63T3a,65T3a,66T3a,68T3a,69T3aが直列に接続されることによって構成されている。2つのスルーホール列T3bは、スルーホール55T3b,56T3b,57T3b,58T3b,59T3b,60T3b,62T3b,63T3b,65T3b,66T3b,68T3b,69T3bが直列に接続されることによって構成されている。共振器30は、更に、導体層713と、導体層703と導体層713とを電気的に接続するスルーホール70T3a,70T3bとを含んでいる。
【0091】
積層体50の複数の導体は、共振器20を構成するための導体層702を含んでいる。積層体50の複数の導体は、更に、共振回路40を構成するための導体群を含んでいる。共振回路40は、第1の信号端子2と第2の信号端子3との間の通過減衰特性において減衰極を形成するための回路である。従って、導体群は、第1の信号端子2と第2の信号端子3との間の通過減衰特性において減衰極を形成するためのものである、とも言える。
【0092】
導体群は、インダクタを構成するためのインダクタ用導体と、キャパシタを構成するためのキャパシタ用導体とを含んでいる。本実施の形態では、導体群は、インダクタ用導体として、導体層591,621,651,681と、スルーホール55T4,56T4,57T4,58T4,59T4,60T4,62T4,63T4,65T4,66T4,68T4,69T4とを含んでいる。スルーホール55T4,56T4,57T4,58T4,59T4,60T4,62T4,63T4,65T4,66T4,68T4,69T4は、導体層591,621,651,681を直列に接続するためのものである。
【0093】
また、導体群は、キャパシタ用導体として、導体層544,553を含んでいる。インダクタ用導体であるスルーホール55T4は、キャパシタ用導体である導体層553に電気的に接続されている。
【0094】
図8(b)に示したように、導体層702は、回路構成上第1の信号端子2に最も近い第1の端部E1と、回路構成上第2の信号端子3に最も近い第2の端部E2とを有している。第1の端部E1は、具体的には、導体層702のうち、スルーホール69T2aが接する部分である。第2の端部E2は、具体的には、導体層702のうち、スルーホール69T2bが接する部分である。図1では、第1の端部E1に対応する回路図上の点を符号20aで表し、第2の端部E2に対応する回路図上の点を符号20bで表している。符号20cは、第1の端部E1(20a)と第2の端部E2(20b)とを接続する経路を示している。
【0095】
導体群は、第1の端部E1と第2の端部E2との間において導体層702に接続されている。本実施の形態では、導体群のうちのスルーホール69T4が、導体層702に接続されている。図8(b)に示したように、導体層702は、第1の端部E1を含む第1の領域702aと、第2の端部E2を含む第2の領域702bと、導体層702の長手方向において第1の領域702aと第2の領域702bとの間に配置された中央領域702cとを含んでいる。スルーホール69T4すなわち導体群は、中央領域702cに接続されている。
【0096】
第1の領域702aは、導体層702の第1の部分702Aの一部を含んでいる。第2の領域702bは、導体層702の第2の部分702Bの一部を含んでいる。中央領域702cは、第1の部分702Aの他の一部と第2の部分702Bの他の一部を含むと共に、第1の部分702Aと第2の部分702Bとの境界を含んでいる。第1の部分702Aと第2の部分702Bとの境界は、共振器20の第1の部分21と第2の部分との接続点P(図1参照)に対応する。本実施の形態では、スルーホール69T4は、第1の部分702Aと第2の部分702Bとの境界およびその近傍部分に接続されている。従って、本実施の形態では、導体群は、接続点Pに接続されている。
【0097】
なお、導体層702の第1の部分702Aと第2の部分702Bとの境界は、導体層702の長手方向の中央であってもよい。この場合、導体群は、導体層702の長手方向の中央に接続されている。
【0098】
本実施の形態では特に、導体層702は、ローパスフィルタ5の共振器20を構成するための導体層である。従って、導体群すなわち共振回路40は、ローパスフィルタ5の共振器20に接続されているとも言える。
【0099】
また、導体群は、共振器10,20,30によって囲まれた空間に配置されている。本実施の形態では特に、導体群は、積層方向Tに直交する一方向すなわちY方向から見て、共振器20のスルーホール列T2aとスルーホール列T2bとの間に配置されている。
【0100】
インダクタ用導体(導体層591,621,651,681およびスルーホール55T4,56T4,57T4,58T4,59T4,60T4,62T4,63T4,65T4,66T4,68T4,69T4)は、回路構成上、第1の端部E1(20a)と第2の端部E2(20b)とを接続する経路20cとキャパシタ用導体(導体層544,553)との間に設けられている。
【0101】
インダクタ用導体の導体層591,621,651,681の各々は、第1および第2の接続部分と、線路部分とを含んでいる。導体層591,621,651,681のうち、積層方向Tにおいて隣接する2つの導体層は、積層方向Tから見たときに、2つの導体層の一方の線路部分と2つの導体層の他方の線路部分とが互いに重ならないように配置されている。すなわち、図5(c)および図6(b)に示したように、導体層591,621は、積層方向Tから見たときに、導体層591の線路部分と導体層621の線路部分とが互いに重ならないように配置されている。また、図6(b)および図7(a)に示したように、導体層621,651は、積層方向Tから見たときに、導体層621の線路部分と導体層651の線路部分とが互いに重ならないように配置されている。また、図7(a)および図7(c)に示したように、導体層651,681は、積層方向Tから見たときに、導体層651の線路部分と導体層681の線路部分とが互いに重ならないように配置されている。
【0102】
また、導体層591,621,651,681のうち、積層方向Tにおいて隣接する2つの導体層の一方の線路部分と他方の線路部分は、互いに対称な形状を有している。すなわち、図5(c)および図6(b)に示したように、導体層591の線路部分と導体層621の線路部分は、積層方向Tから見たときに、互いに対称(面対称)な形状を有している。また、図6(b)および図7(a)に示したように、導体層621の線路部分と導体層651の線路部分は、積層方向Tから見たときに、互いに対称(面対称)な形状を有している。また、図7(a)および図7(c)に示したように、導体層651の線路部分と導体層681の線路部分は、積層方向Tから見たときに、互いに対称(面対称)な形状を有している。
【0103】
次に、本実施の形態に係る電子部品1の特性の一例を示す。図11は、電子部品1の通過減衰特性および反射減衰特性の一例を示している。図11において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、図11において、符号81を付した曲線は、電子部品1の通過減衰特性を示している。また、符号82を付した曲線は、第1の信号端子2における反射減衰特性を示している。図11に示したように、電子部品1は、通過帯域よりも低く通過帯域に近い周波数領域において、減衰量の絶対値すなわち挿入損失が急峻に変化する特性を有している。
【0104】
次に、本実施の形態に係る電子部品1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、導体層702に接続された導体群すなわち共振回路40は、図11に示したように、通過帯域よりも低く通過帯域に近い周波数領域に減衰極を発生させる。この減衰極の周波数は、共振回路40に含まれるインダクタL41とキャパシタC41の各々のパラメータを調整することによって制御することができる。本実施の形態によれば、他の特性にほとんど影響を与えることなく、減衰極の周波数を制御することが可能である。以下、この効果について、第1および第2のシミュレーションの結果を参照して説明する。
【0105】
第1のシミュレーションでは、共振回路40に含まれるインダクタL41とキャパシタC41の各々のパラメータを調整することによって、通過帯域よりも低く通過帯域に近い周波数領域において発生する減衰極の周波数を制御した。図12は、第1のシミュレーションの結果を示す特性図である。図12において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、図12において、符号83を付した曲線は、図11に示した特性よりも減衰極の周波数が低くなるようにパラメータを調整したときの電子部品1の通過減衰特性を示している。符号84を付した曲線は、図11に示した特性よりも減衰極の周波数が高くなるようにパラメータを調整したときの電子部品1の通過減衰特性を示している。
【0106】
図12から理解されるように、本実施の形態によれば、通過帯域の減衰量、通過帯域よりも低い周波数領域における他の減衰極の周波数、および通過帯域よりも高い周波数領域における他の減衰極の周波数をほとんど変えることなく、減衰極の周波数を制御することができる。
【0107】
第2のシミュレーションでは、通過帯域よりも低く通過帯域に近い周波数領域に減衰極が発生するように、共振回路40に含まれるインダクタL41とキャパシタC41の各々のパラメータを調整した。図13は、第2のシミュレーションの結果を示す特性図である。図13において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、図13において、符号85を付した曲線は、減衰極の周波数が相対的に低くなるようにパラメータを調整したときの電子部品1の通過減衰特性を示している。符号86を付した曲線は、減衰極の周波数が相対的に高くなるようにパラメータを調整したときの電子部品1の通過減衰特性を示している。
【0108】
図13から理解されるように、本実施の形態によれば、通過帯域の減衰量、通過帯域よりも低い周波数領域における他の減衰極の周波数および通過帯域よりも高い周波数領域における他の1つの減衰極の周波数をほとんど変えることなく、減衰極の周波数を制御することができる。
【0109】
以上説明したように、本実施の形態によれば、通過帯域に近い周波数領域に発生させた減衰極を、他の特性に影響を与えることなく制御することができる
【0110】
[変形例]
次に、本実施の形態における第1および第2の変形例について説明する。始めに、図14を参照して、第1の変形例について説明する。図14は、本実施の形態における共振器の変形例を示す説明図である。第1の変形例では、電子部品1は、共振器20の代わりに、共振器120を備えている。共振器120は、所定の線路長を有するように構成された分布定数線路である共振器用導体層によって構成されている。
【0111】
共振器120(共振器用導体層)は、回路構成上第1の信号端子2(図1参照)に最も近い第1の端部120aと、回路構成上第2の信号端子(図1参照)に最も近い第2の端部120bとを有している。第1の端部120aは、第1のポート102に接続されている。第2の端部120bは、第2のポート103に接続されている。
【0112】
共振回路40は、第1の端部120aと第2の端部120bとの間において共振器120(共振器用導体層)に接続されている。すなわち、共振回路40を構成するための導体群は、第1の端部120aと第2の端部120bとの間において共振器120(共振器用導体層)に接続されている。
【0113】
第1のポート102は、第1の信号端子2に直接接続されていてもよいし、他の回路(以下、第1の回路と言う。)を介して第1の信号端子2に接続されていてもよい。第1の回路は、共振器120と同様の構成の共振器を含んでいてもよい。この場合、第1の回路は、更に、共振器に接続されると共に、共振回路40と同様の構成の共振回路を含んでいてもよい。あるいは、第1の回路は、第1のハイパスフィルタ4と同様の構成を有していてもよい。
【0114】
第2のポート103は、第2の信号端子3に直接接続されていてもよいし、他の回路(以下、第2の回路と言う。)を介して第2の信号端子3に接続されていてもよい。第2の回路は、共振器120と同様の構成の共振器を含んでいてもよい。この場合、第2の回路は、更に、共振器に接続されると共に、共振回路40と同様の構成の共振回路を含んでいてもよい。あるいは、第2の回路は、第2のハイパスフィルタ6と同様の構成を有していてもよい。
【0115】
次に、図15を参照して、第2の変形例について説明する。図15は、本実施の形態における共振回路の変形例を示す説明図である。第2の変形例は、以下の点で第1の変形例と異なっている。第2の変形例では、電子部品1は、共振回路40の代わりに、共振回路140を備えている。共振回路140は、第1の端部120aと第2の端部120bとの間において共振器120(共振器用導体層)に接続されている。
【0116】
共振回路140は、インダクタL141とキャパシタC141とを含んでいる。キャパシタC141の一端は、共振器120(共振器用導体層)に接続されている。インダクタL141の一端は、キャパシタC141の他端に接続されている。インダクタL141の他端は、グランドに接続されている。
【0117】
積層体50の複数の導体は、共振回路140を構成するための導体群を含んでいる。導体群は、インダクタL141を構成するためのインダクタ用導体と、キャパシタC141を構成するためのキャパシタ用導体とを含んでいる。インダクタL141を構成するためのインダクタ用導体の構成は、基本的には、インダクタL41を構成するためのインダクタ用導体の構成と同じである。キャパシタC141を構成するためのキャパシタ用導体の構成は、基本的には、キャパシタC41を構成するためのキャパシタ用導体の構成と同じである。第2の変形例では、キャパシタ用導体に含まれる1つの導体層は、共振器120(共振器用導体層)に電気的に接続されている。また、キャパシタ用導体は、回路構成上、共振器120(共振器用導体層)とインダクタ用導体との間に設けられている。
【0118】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明の共振器20は、積層方向Tに直交する軸に巻回された共振器や、分布定数線路によって構成された共振器に限らず、積層方向Tに平行な軸に巻回された共振器であってもよい。
【0119】
また、第1のハイパスフィルタ4、ローパスフィルタ5および第2のハイパスフィルタ6の各々の構成は、任意である。
【0120】
また、インダクタ用導体は、導体層591,621,651,681に加えて、積層方向Tにおいて導体層591に隣接する第1の導体層を含んでいてもよい。第1の導体層は、積層方向Tから見て、導体層591と重なると共に、導体層591の平面形状と同じかほぼ同じ形状または導体層591の平面形状と相似するかほぼ相似する形状を有していてもよい。第1の導体層は、第1の導体層と導体層621との間に導体層591が配置される位置に配置されていてもよい。この場合、導体層591と第1の導体層との間隔は、導体層591と導体層621との間隔以下であってもよい。
【0121】
インダクタ用導体は、更に、積層方向Tにおいて導体層621に隣接する第2の導体層と、積層方向Tにおいて導体層651に隣接する第3の導体層と、積層方向Tにおいて導体層681に隣接する第4の導体層とを含んでいてもよい。導体層591と第1の導体層の組についての上記の説明は、導体層621と第2の導体層の組、導体層651と第3の導体層の組、および導体層681と第4の導体層の組にも当てはまる。
【0122】
以上説明したように、本発明の積層型電子部品は、第1の信号端子と、第2の信号端子と、回路構成上、第1の信号端子と第2の信号端子との間に設けられた共振器と、第1の信号端子、第2の信号端子および共振器を一体化するための積層体であって、積層された複数の誘電体層と、複数の導体とを含む積層体とを備えている。複数の導体は、共振器を構成するための共振器用導体層と、第1の信号端子と第2の信号端子との間の通過減衰特性において減衰極を形成するための導体群とを含んでいる。共振器用導体層は、回路構成上第1の信号端子に最も近い第1の端部と、回路構成上第2の信号端子に最も近い第2の端部とを有している。導体群は、第1の端部と第2の端部との間において共振器用導体層に接続されると共に、インダクタを構成するためのインダクタ用導体と、キャパシタを構成するためのキャパシタ用導体とを含んでいる。
【0123】
本発明の積層型電子部品において、導体群は、回路構成上、第1の端部と第2の端部とを接続する経路とグランドとの間に設けられていてもよい。
【0124】
また、本発明の積層型電子部品において、共振器は、直列に接続された第1の部分および第2の部分を含んでいてもよい。導体群は、第1の部分と第2の部分との接続点に接続されていてもよい。
【0125】
また、本発明の積層型電子部品において、共振器用導体層は、第1の端部を含む第1の領域と、第2の端部を含む第2の領域と、共振器用導体層の長手方向において第1の領域と第2の領域との間に配置された中央領域とを含んでいてもよい。導体群は、中央領域に接続されていてもよい。
【0126】
また、本発明の積層型電子部品において、インダクタ用導体は、キャパシタ用導体に電気的に接続されていると共に、回路構成上、第1の端部と第2の端部とを接続する経路とキャパシタ用導体との間に設けられていてもよい。
【0127】
また、本発明の積層型電子部品において、インダクタ用導体は、複数の導体層と、複数の導体層を直列に接続するための複数のスルーホールとを含んでいてもよい。複数の導体層の各々は、複数のスルーホールが接続される接続部分と、線路部分とを含んでいてもよい。複数の導体層は、複数の誘電体層の積層方向において隣接する2つの導体層を含んでいてもよい。2つの導体層は、積層方向から見たときに、2つの導体層の一方の線路部分と2つの導体層の他方の線路部分とが互いに重ならないように配置されていてもよい。2つの導体層の一方の線路部分と2つの導体層の他方の線路部分は、互いに対称な形状を有していてもよい。
【0128】
また、本発明の積層型電子部品において、複数の導体は、更に、共振器を構成するための2つのスルーホール列であって、それぞれ複数のスルーホールが直列に接続されることによって構成されたスルーホール列を含んでいてもよい。2つのスルーホール列の各々の一端は、共振器用導体層に電気的に接続されていてもよい。導体群は、複数の誘電体層の積層方向に直交する一方向から見て、2つのスルーホール列の間に配置されていてもよい。
【0129】
また、本発明の積層型電子部品は、更に、共振器を含むと共に回路構成上第1の信号端子と第2の信号端子との間に設けられたフィルタを備えていてもよい。フィルタは、更に、少なくとも1つの他の共振器を含んでいてもよい。複数の導体は、更に、少なくとも1つの他の共振器を構成するための少なくとも1つの他の共振器用導体層を含んでいてもよい。少なくとも1つの他の共振器は、複数の他の共振器であってもよい。少なくとも1つの他の共振器用導体層は、複数の他の共振器用導体層であってもよい。複数の導体は、通過減衰特性において減衰極を形成するための少なくとも1つの他の導体群を含んでいてもよい。少なくとも1つの他の導体群は、第1の端部と第2の端部との間において複数の他の共振器用導体層のうちの少なくとも1つに接続されると共に、それぞれ他のインダクタを構成するための他のインダクタ用導体と他のキャパシタを構成するための他のキャパシタ用導体とを含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0130】
1…電子部品、2…第1の信号端子、3…第2の信号端子、4…第1のハイパスフィルタ、5…ローパスフィルタ、6…第2のハイパスフィルタ、10…共振器、20…共振器、21…第1の部分、22…第2の部分、30…共振器、40…共振回路、50…積層体、50A…底面、50…上面、50C~50F…側面、51~72…誘電体層、C11~C16,C21~C23,C31~C36,C41…キャパシタ、L1~L3,L11,L12,L23,L31,L32,L41…インダクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15