(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130811
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電圧供給装置および発電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02H 7/00 20060101AFI20240920BHJP
H02H 7/12 20060101ALI20240920BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20240920BHJP
【FI】
H02H7/00 G
H02H7/12 D
B64D27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040719
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】野口 健二
【テーマコード(参考)】
5G053
【Fターム(参考)】
5G053AA09
5G053BA04
5G053CA01
5G053CA04
5G053EB01
5G053EB05
5G053FA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電圧供給装置の大型化を抑制することができる電圧供給装置および発電制御方法を提供する。
【解決手段】発電部32が発電した直流電圧を負荷36に供給する電圧供給装置28であって、平滑コンデンサ38の電圧である第1電圧V1と、バッテリ34の電圧である第2電圧V2とを取得する電圧取得部180と、第1電圧と第2電圧との差を演算する演算部170及び第1電圧と第2電圧との差が所定閾値Vth以上である場合、平滑コンデンサが過電圧の状態であると判定する判定部172を有する判定回路120と、前記平滑コンデンサが過電圧の状態であると判定されると、前記発電部を制御して前記発電部による発電を抑制または停止させる発電制御部144を有する制御装置100と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部が発電した直流電圧を負荷に供給する電圧供給装置であって、
前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサに対して前記負荷と並列に接続されたバッテリと、
前記平滑コンデンサの電圧である第1電圧と、前記バッテリの電圧である第2電圧とを取得する電圧取得部と、
前記第1電圧と前記第2電圧との差を演算する演算部と、
前記差が所定閾値以上である場合、前記平滑コンデンサが過電圧の状態であると判定する判定部と、
前記平滑コンデンサが前記過電圧の状態であると判定されると、前記発電部を制御して前記発電部による発電を抑制または停止させる発電制御部と、
を備える、電圧供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電圧供給装置であって、
前記平滑コンデンサと前記バッテリとの間に配置され、前記平滑コンデンサと前記バッテリとの接続を遮断可能な接続遮断部をさらに備える、電圧供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電圧供給装置であって、
前記発電部が発電を開始する前に、前記平滑コンデンサと前記バッテリとの間のスイッチング素子を制御して、前記平滑コンデンサと前記バッテリとを接続させる始動制御部をさらに備える、電圧供給装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電圧供給装置であって、
前記所定閾値は、前記平滑コンデンサと前記バッテリとの間の電圧降下量と、所定の変動割合とに基づいて予め決定される、電圧供給装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電圧供給装置であって、
前記平滑コンデンサの電圧の高周波成分を除去するローパスフィルタをさらに備え、
前記電圧取得部は、前記高周波成分が除去された前記平滑コンデンサの電圧を前記第1電圧として取得する、電圧供給装置。
【請求項6】
発電部が発電した直流電圧を負荷に供給する電圧供給装置の発電制御方法であって、
前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサの電圧である第1電圧と、前記平滑コンデンサに対して前記負荷と並列に接続されたバッテリの電圧である第2電圧とを取得する電圧取得ステップと、
前記第1電圧と前記第2電圧との差を演算する演算ステップと、
前記差が所定閾値以上である場合、前記平滑コンデンサが過電圧の状態であると判定する判定ステップと、
前記平滑コンデンサが前記過電圧の状態であると判定されると、前記発電部を制御して前記発電部による発電を抑制または停止させる発電制御ステップと、
を備える、発電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧供給装置および発電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電力変換装置が開示されている。その電力変換装置に用いられている平滑コンデンサの端子間電圧を検出するため、電圧センサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示によれば、平滑コンデンサが過電圧になったことを検出するため、平滑コンデンサの端子間電圧を監視する必要がある。検出誤差を考慮した場合、平滑コンデンサが大容量化することにより、電圧供給装置が大型化するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、発電部が発電した直流電圧を負荷に供給する電圧供給装置であって、前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサに対して前記負荷と並列に接続されたバッテリと、前記平滑コンデンサの電圧である第1電圧と、前記バッテリの電圧である第2電圧とを取得する電圧取得部と、前記第1電圧と前記第2電圧との差を演算する演算部と、前記差が所定閾値以上である場合、前記平滑コンデンサが過電圧の状態であると判定する判定部と、前記平滑コンデンサが前記過電圧の状態であると判定されると、前記発電部を制御して前記発電部による発電を抑制または停止させる発電制御部と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様は、発電部が発電した直流電圧を負荷に供給する電圧供給装置の発電制御方法であって、前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサの電圧である第1電圧と、前記平滑コンデンサに対して前記負荷と並列に接続されたバッテリの電圧である第2電圧とを取得する電圧取得ステップと、前記第1電圧と前記第2電圧との差を演算する演算ステップと、前記差が所定閾値以上である場合、前記平滑コンデンサが過電圧の状態であると判定する判定ステップと、前記平滑コンデンサが前記過電圧の状態であると判定されると、前記発電部を制御して前記発電部による発電を抑制または停止させる発電制御ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電圧供給装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、航空機が有する電圧供給装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態による発電制御方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、発電制御方法に係る処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、過電圧判定に伴う発電制御の所要時間の変化を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施の形態による電圧供給装置およびその発電制御方法について、図面を用いて説明する。本実施の形態の説明では、電圧供給装置を有する移動体として航空機の例を用いるが、これに限定されない。
図1は、航空機10の模式図である。航空機10は、電動垂直離着陸機(eVTOL)である。航空機10は、機体12を有する。機体12には、コックピット、キャビン等が設けられる。
【0011】
航空機10は、タンデム翼機である。航空機10は、翼14を有する。翼14は、前翼14aおよび後翼14bを含む。後翼14bは、後退翼である。航空機10が前方に移動する場合に、前翼14aおよび後翼14bの各々において揚力が発生する。前翼14aおよび後翼14bには、ブーム16Lおよびブーム16Rが取り付けられる。
【0012】
ブーム16Lは、機体12の中心線AXに沿って前後方向に延びる。ブーム16Lは、機体12の中心線AXに対して左方に配置される。ブーム16Rは、中心線AXに沿って前後方向に延びる。ブーム16Rは、中心線AXに対して右方に配置される。ブーム16Lおよびブーム16Rは、機体12を間にはさんで左右方向に互いに離間して配置される。ブーム16Lおよびブーム16Rを区別しない場合には、単にブーム16と呼ぶ場合がある。
【0013】
航空機10は、複数のロータ18Vを有する。
図1においては、複数のロータ18Vとして、4つのロータ18V1、18V2、18V3、18V4が例示されている。各ロータ18Vは、1つまたは複数のモータ20Vにより駆動される。
図1においては、各ロータ18Vが1つのモータ20Vにより駆動される例が示されている。ロータ18V1に対して、モータ20V1が設けられる。ロータ18V2に対して、モータ20V2が設けられる。ロータ18V3に対して、モータ20V3が設けられる。ロータ18V4に対して、モータ20V4が設けられる。
【0014】
ロータ18Vがモータ20Vに駆動されることにより、主に垂直方向に推力が発生する。ロータ18Vの回転数と、ロータ18Vのブレードのピッチ角度とが調整されることにより、推力が制御される。各ロータ18Vにおける推力が制御されることにより、機体12に対して主に上方に推進力が発生する。各ロータ18Vは、主に、垂直離陸時、垂直離陸から巡航への移行時、巡航から垂直着陸への移行時、垂直着陸時、空中停止時等において使用される。
【0015】
2つのロータ18V1、18V3は、ブーム16Lに取り付けられる。これに対応して、モータ20V1、20V3もまた、ブーム16Lに取り付けられる。残り2つのロータ18V2、18V4は、ブーム16Rに取り付けられる。これに対応して、モータ20V2、20V4もまた、ブーム16Rに取り付けられる。
【0016】
航空機10は、複数のロータ18Cを有する。
図1においては、複数のロータ18Cとして、2つのロータ18C1、18C2が例示されている。各ロータ18Cは、1つまたは複数のモータ20Cにより駆動される。
図1においては、各ロータ18Cが1つのモータ20Cにより駆動される例が示されている。ロータ18C1に対して、モータ20C1が設けられる。ロータ18C2に対して、モータ20C2が設けられる。
【0017】
機体12の側面には、マウント26(マウント26Lおよびマウント26R)が取り付けられる。マウント26Lは、機体12の左側面から左方に向かって延びる。マウント26Rは、機体12の右側面から右方に向かって延びる。ロータ18C1は、モータ20C1とともに、マウント26Lに取り付けられる。ロータ18C2は、モータ20C2とともに、マウント26Rに取り付けられる。なお、各ロータ18Cは、機体12の、後翼14bよりも後方に取り付けられてもよい。
【0018】
ロータ18Cがモータ20Cに駆動されることにより、主に水平方向に推力が発生する。ロータ18Cの回転数と、ロータ18Cのブレードのピッチ角度とが調整されることにより、推力が制御される。各ロータ18Cにおける推力が制御されることにより、機体12に対して主に前方に推進力が発生する。各ロータ18Cは、主に、垂直離陸から巡航への移行時、巡航時、巡航から垂直着陸への移行時等において使用される。
【0019】
図2は、航空機10が有する電圧供給装置28の構成を示す模式図である。航空機10は、ハイブリッド航空機である。したがって、航空機10は、1つまたは複数の発電部32と、1つまたは複数のバッテリ34とを有する。
図2には、1つの発電部32が例示されている。1つの発電部32に対し、1つの電圧供給装置28が設けられる。
【0020】
1つの電圧供給装置28に、1つまたは複数のバッテリ34が含まれる。
図2には、1つの電圧供給装置28が2つのバッテリ34を含む例が示されている。本実施の形態による電圧供給装置28は、発電部32が発電した直流電圧、またはバッテリ34からの直流電圧を、複数のモータ20(上述したモータ20C、20V)等の負荷36に供給する。また、発電部32が発電した直流電圧は、バッテリ34の充電にも用いられ得る。電圧供給装置28は、平滑コンデンサ38と、バッテリ34と、後述するコンタクタ等の回路素子とを有する。
【0021】
電圧供給装置28は、さらに、発電部32に接続される電圧供給ラインMLと、電圧供給ラインMLから分岐した複数の電圧供給ラインPLとを有する。複数の電圧供給ラインPLの各々が、各負荷36に接続される。
図2に示す例では、2つの電圧供給ラインPLが示されている。電圧供給ラインMLは、正極の配線MLPと、負極の配線MLNとを含む。各電圧供給ラインPLは、正極の配線PLPと、負極の配線PLNとを含む。
【0022】
1つの発電部32に対し、1つの平滑コンデンサ38が設けられる。平滑コンデンサ38の正極端子および負極端子は、電圧供給ラインMLの正極の配線MLPおよび負極の配線MLNに、それぞれ接続される。平滑コンデンサ38は、発電部32が発電した直流電圧を平滑化する。平滑化された直流電圧は、電圧供給ラインMLおよび各電圧供給ラインPLを介して、各負荷36または各バッテリ34に供給され得る。
【0023】
1つの電圧供給ラインPLに、1つのバッテリ34が接続される。1つの電圧供給ラインPLに複数のバッテリ34が接続されてもよい。各バッテリ34の正極端子および負極端子は、電圧供給ラインPLの正極の配線PLPおよび負極の配線PLNに、それぞれ接続される。各バッテリ34からの直流電圧は、電圧供給ラインPLにより、負荷36に供給され得る。また、後述するように、内燃機関44の始動時に、バッテリ34からの直流電圧は、電圧供給ラインPLにより、発電部32に供給され得る。
【0024】
航空機10は、発電部32と、電圧供給装置28と、負荷36とを有する。発電部32は、内燃機関44と、発電機46と、コンバータ48とを含む。内燃機関44は、例えばガスタービンである。発電機46は、内燃機関44から得られる動力で発電する。コンバータ48は、発電機46からの交流電圧を直流電圧に変換する。
【0025】
負荷36は、複数のロータ18(上述したロータ18C、18V)と、複数のモータ20と、複数のインバータ56とを含む。各インバータ56は、平滑コンデンサ38またはバッテリ34からの直流電圧を交流電圧に変換する。各モータ20は、各インバータ56から得られる交流電圧により、各ロータ18を駆動する。負荷36は、コンバータ58をさらに含んでもよい。コンバータ58は、平滑コンデンサ38またはバッテリ34からの直流電圧を降圧し、冷却装置(不図示)等に出力する。
【0026】
電圧供給ラインMLは、共有バス62により、複数の電圧供給ラインPLに分岐する。
図2に示す例では、共有バス62により、各バッテリ34が、平滑コンデンサ38に対して各負荷36と並列に接続されている。
【0027】
接続遮断部64が、平滑コンデンサ38と共有バス62との間の、電圧供給ラインML上に配置される。接続遮断部64は、コンタクタ64a、64bを有する。コンタクタ64aは、電圧供給ラインMLの正極の配線MLPに設けられる。コンタクタ64bは、電圧供給ラインMLの負極の配線MLNに設けられる。
【0028】
コンタクタ64a、64bがオンになると、平滑コンデンサ38と、負荷36またはバッテリ34とが接続され得る。その場合、負荷36またはバッテリ34に直流電圧が供給され得る。コンタクタ64a、64bがオフになると、平滑コンデンサ38と、負荷36およびバッテリ34との接続は遮断され得る。その場合、負荷36およびバッテリ34への直流電圧の供給は遮断され得る。なお、接続遮断部64は、コンタクタ64a、64bのうちの一方のみを有してもよい。
【0029】
1つの電圧供給ラインPLに、1つの接続遮断部66が配置される。
図2には、2つの接続遮断部66が示されている。各接続遮断部66は、共有バス62と各負荷36および各バッテリ34との間に配置される。接続遮断部66は、コンタクタ66a、66bを有する。コンタクタ66aは、電圧供給ラインPLの正極の配線PLPに設けられる。コンタクタ66bは、電圧供給ラインPLの負極の配線PLNに設けられる。
【0030】
コンタクタ66a、66bがオンになると、平滑コンデンサ38と、負荷36またはバッテリ34とが接続され得る。その場合、負荷36またはバッテリ34に直流電圧が供給され得る。コンタクタ66a、66bがオフになると、平滑コンデンサ38と、負荷36およびバッテリ34との接続は遮断され得る。その場合、負荷36およびバッテリ34への直流電圧の供給は遮断され得る。なお、接続遮断部66は、コンタクタ66a、66bのうちの一方のみを有してもよい。
【0031】
各バッテリ34は、接続遮断部72を介して負荷36に直流電圧を供給し得る。
図2には、2つの接続遮断部72が示されている。各接続遮断部72は、各バッテリ34と各電圧供給ラインPLとの間に配置される。接続遮断部72は、コンタクタ72a、72bと、プリチャージ回路72cとを有する。
【0032】
コンタクタ72aは、接続遮断部72の正極の配線72pに設けられる。コンタクタ72bは、接続遮断部72の負極の配線72nに設けられる。コンタクタ72a、72bがオンになると、バッテリ34から負荷36へ直流電圧が供給され得る。また、発電部32の始動時にコンタクタ72a、72bがオンになると、後述するように、バッテリ34から平滑コンデンサ38へ直流電圧が供給され得る。
【0033】
プリチャージ回路72cは、コンタクタ72bと並列に設けられる。プリチャージ回路72cは、互いに直列に接続されたコンタクタ72dおよび抵抗72eを有する。なお、接続遮断部72は、コンタクタ72bとプリチャージ回路72cのみを有してもよい。また、プリチャージ回路72cは、コンタクタ72aと並列に設けられてもよい。この場合、接続遮断部72は、コンタクタ72aとプリチャージ回路72cのみを有してもよい。
【0034】
電圧供給装置28は、複数のダイオード80を有する。複数のダイオード80の各々は、接続遮断部66と、各負荷36および各バッテリ34との間の、各電圧供給ラインPL上に配置される。ダイオード80は、平滑コンデンサ38から負荷36またはバッテリ34への直流電圧の供給を許容する。また、ダイオード80は、複数のバッテリ34の間で、複数の接続遮断部66を介して電流が流れることを防止する。
【0035】
電圧供給装置28は、複数のスイッチング素子82を有する。スイッチング素子82は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。複数のスイッチング素子82の各々は、各バッテリ34に対して、各電圧供給ラインPL上でダイオード80と並列に接続される。
【0036】
スイッチング素子82がオンになることにより、平滑コンデンサ38とバッテリ34とが接続される。発電部32が発電を開始する前に、スイッチング素子82がオンになることにより、平滑コンデンサ38とバッテリ34とが電気的に接続され得る。そのため、バッテリ34から平滑コンデンサ38への電力供給が可能になる。発電部32の始動時に、発電機46は、内燃機関44を始動させるための始動装置として機能する。発電機46は、平滑コンデンサ38に供給された電力を用いて、内燃機関44を始動させる。
【0037】
上述したように、電圧供給装置28は、平滑コンデンサ38と、負荷36およびバッテリ34との接続を遮断可能な接続遮断部64、66を有する。発電部32が発電している間に、接続遮断部64、66のうちの少なくとも一部が、意図せずオフになった場合を想定する。その場合、平滑コンデンサ38と、負荷36およびバッテリ34との接続が遮断されるため、平滑コンデンサ38が過電圧の状態になる可能性がある。また、接続遮断部64、66の周辺に不図示のヒューズが配置され、ヒューズが溶断した場合も同様である。
【0038】
平滑コンデンサ38が過電圧の状態になった場合、発電部32による発電を早期に抑制または停止させる必要がある。平滑コンデンサ38が過電圧の状態であるか否かを判定するため、従来、平滑コンデンサ38の端子間電圧が監視されている。航空機10に搭載される発電部32が発電中における平滑コンデンサ38の端子間電圧は高電圧であり、例えば1000Vである。
【0039】
平滑コンデンサ38の過電圧判定の閾値として、端子間電圧1000[V]に対して例えば誤差割合1%が考慮され、閾値1010[V]が用いられる。誤差割合1%に対応する誤差分が比較的大きな値である10[V]になるため、その分、過電圧判定の所要時間が遅延する。したがって、発電部32の発電を早期に抑制または停止させることができず、平滑コンデンサ38が故障するおそれがある。
【0040】
また、平滑コンデンサ38の容量に10[V]分の余裕を見込む必要があるため、平滑コンデンサ38の大容量化に伴い、電圧供給装置28が大型化するおそれがある。
【0041】
図3は、本実施の形態による発電制御方法を説明するための図である。
図3に示すように、本実施の形態による電圧供給装置28は、制御装置100と、1つまたは複数のバッテリ制御装置110と、判定回路120とを、さらに有する。制御装置100は、演算部130と、記憶部132とを有する。演算部130は、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを含む。すなわち、演算部130は、処理回路(processing circuitry)を含む。
【0042】
記憶部132は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリとを含む。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして用いられる。不揮発性メモリは、プロセッサが実行するプログラムと、その他必要なデータとを記憶する。
【0043】
演算部130は、始動制御部140と、遮断制御部142と、発電制御部144とを有する。演算部130が記憶部132に保存されたプログラムを実行することにより、始動制御部140と、遮断制御部142と、発電制御部144とが実現される。始動制御部140と、遮断制御部142と、発電制御部144とのうちの少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、或いはディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。
【0044】
始動制御部140は、発電部32が発電を開始する前に、バッテリ制御装置110を制御して、接続遮断部72のコンタクタ72a、72bと、スイッチング素子82とを、いずれもオンにさせる。また、始動制御部140は、接続遮断部64のコンタクタ64a、64bと、接続遮断部66のコンタクタ66a、66bとを、いずれもオンにさせる。これにより、バッテリ34から平滑コンデンサ38へ電力が供給される。
【0045】
始動制御部140は、発電機46を始動装置として制御し、平滑コンデンサ38に供給された電力を用いて発電機46を回転させて内燃機関44を始動させる。発電部32の停止中に平滑コンデンサ38は放電してもよいため、平滑コンデンサ38を長寿命化することができる。内燃機関44の始動が完了した場合、始動制御部140は、バッテリ制御装置110を制御して、スイッチング素子82をオフにさせる。
【0046】
図2に示す例では、2つの電圧供給ラインPLが示されている。発電部32が発電中、これら2つの電圧供給ラインPLのうち、いずれか一方の電圧供給ラインPLで異常が生じた場合を想定する。その場合、その異常が他方の正常な電圧供給ラインPLへ影響することを防止するために、異常が生じた電圧供給ラインPLを切り離す必要がある。
【0047】
そのため、
図3に示す遮断制御部142は、異常が生じた電圧供給ラインPLに対応する接続遮断部66のコンタクタ66a、66bをオフにする。これにより、正常な電圧供給ラインPLを保護することができる。なお、電圧供給ラインPLの異常から平滑コンデンサ38を保護するために、遮断制御部142は、接続遮断部64のコンタクタ64a、64bをオフにしてもよい。
【0048】
判定回路120により、平滑コンデンサ38が過電圧の状態であると判定された場合、発電制御部144は、発電部32を制御して発電部32による発電を抑制または停止させる。
【0049】
上述したように、電圧供給装置28は、1つまたは複数のバッテリ制御装置110を有する。1つのバッテリ34に対し、1つのバッテリ制御装置110が設けられる。バッテリ制御装置110は、演算部150と、記憶部152とを有する。演算部150は、CPUまたはGPU等のプロセッサを含む。すなわち、演算部150は、処理回路を含む。
【0050】
記憶部152は、RAM等の揮発性メモリと、ROMまたはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリとを含む。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして用いられる。不揮発性メモリは、プロセッサが実行するプログラムと、その他必要なデータとを記憶する。
【0051】
演算部150は、接続制御部160を有する。演算部150が記憶部152に保存されたプログラムを実行することにより、接続制御部160が実現される。接続制御部160は、ASICまたはFPGA等の集積回路、或いはディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。
【0052】
接続制御部160は、制御装置100の始動制御部140による制御にしたがって、接続遮断部72のコンタクタ72a、72bと、スイッチング素子82とを、オンにさせる。内燃機関44の始動が完了した場合、接続制御部160は、始動制御部140による制御にしたがって、スイッチング素子82をオフにさせる。
【0053】
図3に示す判定回路120は、集積回路等の電子回路であり、演算部170と、判定部172とを有する。演算部170は、後述する電圧取得部180から出力された第1電圧V1と第2電圧V2との差を演算し、その差に対応する電圧V3(V3=V1-V2)を判定部172へ出力する。第1電圧V1は、平滑コンデンサ38の電圧である。第2電圧V2は、バッテリ34の電圧である。
【0054】
第1電圧V1と第2電圧V2との差に対応する電圧V3は、平滑コンデンサ38とバッテリ34との間の回路素子に起因する電圧降下に対応する。電圧V3は、例えば5[V]であり、高電圧になる平滑コンデンサ38の端子間電圧(例えば1000[V])よりも極めて低い。
【0055】
判定部172には、電圧V3と、不図示の定電圧ダイオード等から得られる電圧とが入力する。定電圧ダイオード等から判定部172に入力する電圧の値は、平滑コンデンサ38の過電圧判定用の所定閾値Vthに対応する。判定部172は、電圧V3が所定閾値Vth以上である場合、平滑コンデンサ38が過電圧の状態であると判定する。判定部172は、過電圧判定結果を示す信号を、制御装置100の発電制御部144へ出力する。
【0056】
所定閾値Vthの設定値は、平滑コンデンサ38とバッテリ34との間の電圧降下量と、所定の変動割合とに基づいて予め決定される。平滑コンデンサ38とバッテリ34との間の電圧降下量は、第1電圧V1と第2電圧V2との差に対応する電圧V3に対応する。電圧V3が上述した極めて低い5[V]である場合、例えば誤差割合1%が考慮され、所定閾値Vthは5.05[V]に設定される。
【0057】
所定閾値Vthの設定に考慮される誤差割合1%に対応する誤差分は、極めて小さな値である0.05[V]である。そのため、本実施の形態によると、上述した平滑コンデンサ38の端子間電圧が監視される場合よりも、過電圧判定の所要時間が短縮される。また、上述したように平滑コンデンサ38の大容量化を回避できるため、電圧供給装置28の大型化を抑制できる。
【0058】
図3に示す電圧取得部180は、集積回路等の電子回路で実現される。ただし、電圧取得部180は、CPUまたはGPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現されてもよい。電圧取得部180は、第1電圧V1取得用の分圧回路190と、ローパスフィルタ192と、第2電圧V2取得用の分圧回路200とを有する。
【0059】
分圧回路190は、平滑コンデンサ38の端子間電圧に応じた電圧を出力する。平滑コンデンサ38は発電部32に接続されているため、分圧回路190から出力された電圧には高周波ノイズが発生する可能性がある。ローパスフィルタ192は、その高周波ノイズを除去する。これにより、精度の高い第1電圧V1が得られる。こうして第1電圧V1が電圧取得部180により取得される。
【0060】
分圧回路200は、バッテリ34の端子間電圧に応じた電圧を出力する。こうして第2電圧V2が電圧取得部180により取得される。電圧取得部180により取得された第1電圧V1および第2電圧V2が、上述した判定回路120に入力することにより、平滑コンデンサ38の過電圧判定が行われる。
【0061】
図4は、発電制御方法に係る処理手順を示すフローチャートである。本処理手順は、例えば電圧取得部180と、判定回路120と、制御装置100が有する演算部130とにより、繰り返し行われる。本処理手順が開始されると、ステップS1で、電圧取得部180は、平滑コンデンサ38の第1電圧V1と、バッテリ34の第2電圧V2とを取得する。ステップS2で、判定回路120の演算部170は、ステップS1で取得された第1電圧V1と第2電圧V2との差を演算する。
【0062】
ステップS3で、判定回路120の判定部172は、ステップS2で演算された差が所定閾値Vth以上であるか否かに基づいて、平滑コンデンサ38が過電圧の状態であるか否かを判定する。ステップS3でYESとなった場合、本処理手順はステップS4へ進む。ステップS3でNOとなった場合、本処理手順は終了する。
【0063】
ステップS4で、発電制御部144は、発電部32を制御して発電部32による発電を抑制または停止させる。ステップS4の処理が完了すると、本処理手順は終了する。
【0064】
図5は、過電圧判定に伴う発電制御の所要時間の変化を例示する図である。上述したように、本実施の形態のように電圧降下分が監視される場合、従来のように平滑コンデンサ38の端子間電圧が監視される場合よりも、過電圧判定の所要時間が短縮される。実験によると、発電部32が発電している間に接続遮断部64または66がオフになってから、発電部32による発電を抑制または停止するまでの所要時間は、約60%短い。
【0065】
[変形例]
上記実施の形態は、以下のように変形されてもよい。
【0066】
上記実施の形態における電圧取得部180および判定回路120は、いずれも集積回路等の電子回路である。しかし、電圧取得部180と、判定回路120の演算部170と、判定部172とが、例えば1つのコンピュータに実装されてもよい。その場合、電圧取得部180と、判定回路120の演算部170と、判定部172とは、コンピュータのCPUまたはGPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現される。電圧取得部180は、第1電圧V1を検出する電圧センサから第1電圧V1を取得し、第2電圧V2を検出する電圧センサから第2電圧V2を取得する。
【0067】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下の付記を開示する。
【0068】
(付記1)発電部(32)が発電した直流電圧を負荷(36)に供給する電圧供給装置(28)であって、前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサ(38)と、前記平滑コンデンサに対して前記負荷と並列に接続されたバッテリ(34)と、前記平滑コンデンサの電圧である第1電圧(V1)と、前記バッテリの電圧である第2電圧(V2)とを取得する電圧取得部(180)と、前記第1電圧と前記第2電圧との差を演算する演算部(170)と、前記差が所定閾値(Vth)以上である場合、前記平滑コンデンサが過電圧の状態であると判定する判定部(172)と、前記平滑コンデンサが前記過電圧の状態であると判定されると、前記発電部を制御して前記発電部による発電を抑制または停止させる発電制御部(144)と、を備える。これにより、電圧供給装置の大型化を抑制することができる。
【0069】
(付記2)付記1に記載の電圧供給装置であって、前記平滑コンデンサと前記バッテリとの間に配置され、前記平滑コンデンサと前記バッテリとの接続を遮断可能な接続遮断部(64、66)をさらに備えてもよい。これにより、正常な電圧供給ラインまたは平滑コンデンサを保護することができる。
【0070】
(付記3)付記1に記載の電圧供給装置であって、前記発電部が発電を開始する前に、前記平滑コンデンサと前記バッテリとの間のスイッチング素子(82)を制御して、前記平滑コンデンサと前記バッテリとを接続させる始動制御部(140)をさらに備えてもよい。これにより、発電部の停止中に平滑コンデンサは放電してもよいため、平滑コンデンサを長寿命化することができる。
【0071】
(付記4)付記1に記載の電圧供給装置であって、前記所定閾値は、前記平滑コンデンサと前記バッテリとの間の電圧降下量と、所定の変動割合とに基づいて予め決定されてもよい。これにより、過電圧判定の所要時間が短縮される。
【0072】
(付記5)付記1~4のいずれかに記載の電圧供給装置であって、前記平滑コンデンサの電圧の高周波成分を除去するローパスフィルタ(192)をさらに備え、前記電圧取得部は、前記高周波成分が除去された前記平滑コンデンサの電圧を前記第1電圧として取得してもよい。これにより、精度の高い第1電圧が得られる。
【0073】
(付記6)発電部が発電した直流電圧を負荷に供給する電圧供給装置の発電制御方法であって、前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサの電圧である第1電圧と、前記平滑コンデンサに対して前記負荷と並列に接続されたバッテリの電圧である第2電圧とを取得する電圧取得ステップと、前記第1電圧と前記第2電圧との差を演算する演算ステップと、前記差が所定閾値以上である場合、前記平滑コンデンサが過電圧の状態であると判定する判定ステップと、前記平滑コンデンサが前記過電圧の状態であると判定されると、前記発電部を制御して前記発電部による発電を抑制または停止させる発電制御ステップと、を備える。これにより、電圧供給装置の大型化を抑制することができる。
【0074】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0075】
10…航空機 12…機体
14…翼 16…ブーム
18…ロータ 20…モータ
26…マウント 28…電圧供給装置
32…発電部 34…バッテリ
36…負荷 38…平滑コンデンサ
44…内燃機関 46…発電機
48、58…コンバータ 56…インバータ
62…共有バス 64、66、72…接続遮断部
80…ダイオード 82…スイッチング素子
100…制御装置 110…バッテリ制御装置
120…判定回路 130、150、170…演算部
132、152…記憶部 140…始動制御部
142…遮断制御部 144…発電制御部
160…接続制御部 172…判定部
180…電圧取得部 190、200…分圧回路
192…ローパスフィルタ