(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130820
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】パワーユニットの制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
F02N 11/08 20060101AFI20240920BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20240920BHJP
B64D 41/00 20060101ALI20240920BHJP
F02N 15/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F02N11/08 L
B64D27/24
B64D41/00
F02N15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040730
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のバッテリを搭載する移動体において、バッテリ間の電流によるバッテリ等の劣化および損傷を防止する。
【解決手段】内燃機関を始動するモータに接続され、互いに並列に接続された複数のバッテリを有し、複数の前記バッテリの電力を前記モータ以外の電気負荷に供給するパワーユニットの制御装置42であって、複数の前記バッテリの各々の電力残量を検出する検出部110と、複数の前記バッテリの電力残量を比較する比較部154と、前記内燃機関の始動時には、前記パワーユニットを制御して、電力残量が大きい順に複数の前記バッテリから前記モータへの電力供給を開始する始動制御部170と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を始動するモータに接続され、互いに並列に接続された複数のバッテリを有し、複数の前記バッテリの電力を前記モータ以外の電気負荷に供給するパワーユニットの制御装置であって、
複数の前記バッテリの各々の電力残量を検出する検出部と、
複数の前記バッテリの電力残量を比較する比較部と、
前記内燃機関の始動時には、前記パワーユニットを制御して、電力残量が大きい順に複数の前記バッテリから前記モータへの電力供給を開始する始動制御部と、
を備える、パワーユニットの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーユニットの制御装置であって、
複数の前記バッテリは、第1バッテリと、前記第1バッテリの次に電力残量が大きい第2バッテリとを含み、
前記始動制御部が前記第1バッテリから前記モータへの前記電力供給を開始した後に、前記第1バッテリの電力残量と、前記第2バッテリの電力残量との差が第1所定量以下になった場合、前記始動制御部は、前記第2バッテリから前記モータへの前記電力供給を開始する、パワーユニットの制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパワーユニットの制御装置であって、
複数の前記バッテリのうち、最大の電力残量を有するバッテリと、最小の電力残量を有するバッテリとの間における電力残量の差が第2所定量以下である場合、前記始動制御部は、複数の前記バッテリのすべてから前記モータへの前記電力供給を開始する、パワーユニットの制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のパワーユニットの制御装置であって、
前記モータは、前記内燃機関が始動した後は、複数の前記バッテリまたは前記電気負荷の電力源になる発電機として機能する、パワーユニットの制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のパワーユニットの制御装置であって、
前記パワーユニットは、
複数の前記バッテリの各々に対応するバッテリと前記モータとの間に配置され、前記モータから前記バッテリまたは前記電気負荷への電力供給を許容するダイオードと、
前記バッテリに対して前記ダイオードと並列に接続されるとともに、前記始動制御部から第1制御信号が入力する制御入力端子を有し、前記バッテリから前記モータへの電力供給を、前記第1制御信号に応じて許可する第1スイッチング素子と、
前記始動制御部と前記制御入力端子との間の電気的接続を、第2制御信号に応じて許可する第2スイッチング素子と、
を備え、
前記始動制御部は、前記第1スイッチング素子へ前記第1制御信号を出力し、前記第2スイッチング素子へ前記第2制御信号を出力することにより、複数の前記バッテリの各々から前記モータへの電力供給を開始する、パワーユニットの制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパワーユニットの制御装置であって、
前記始動制御部は、
前記第1制御信号を前記第1スイッチング素子へ出力する第1制御部と、
前記第2制御信号を前記第2スイッチング素子へ出力する第2制御部と、
前記第1制御部を制御して、前記第1制御部に前記第1制御信号を前記第1スイッチング素子へ出力させるとともに、前記第2制御部を制御して、前記第2制御部に前記第2制御信号を前記第2スイッチング素子へ出力させる第3制御部とを有し、
前記第1制御部と前記第2制御部と前記第3制御部とは別体で設けられる、パワーユニットの制御装置。
【請求項7】
内燃機関を始動するモータに接続され、互いに並列に接続された複数のバッテリを有し、複数の前記バッテリの電力を前記モータ以外の電気負荷に供給するパワーユニットの制御方法であって、
複数の前記バッテリの各々の電力残量を検出する検出ステップと、
複数の前記バッテリの電力残量を比較する比較ステップと、
前記内燃機関の始動時には、前記パワーユニットを制御して、電力残量が大きい順に複数の前記バッテリから前記モータへの電力供給を開始する始動制御ステップと、
を備える、パワーユニットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニットの制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのより多くの人々のアクセスを確保可能にするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池を搭載するモビリティにおける充給電に関する研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、エンジン始動システムが開示されている。そのエンジン始動システムは、鉛バッテリとリチウムイオンバッテリの劣化を抑えながらエンジンを作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のバッテリを搭載する移動体において、バッテリ間の電流によるバッテリ等の劣化および損傷を防止する技術が待望されている。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とし、延いてはエネルギーの効率化に寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、内燃機関を始動するモータに接続され、互いに並列に接続された複数のバッテリを有し、複数の前記バッテリの電力を前記モータ以外の電気負荷に供給するパワーユニットの制御装置であって、複数の前記バッテリの各々の電力残量を検出する検出部と、複数の前記バッテリの電力残量を比較する比較部と、前記内燃機関の始動時には、前記パワーユニットを制御して、電力残量が大きい順に複数の前記バッテリから前記モータへの電力供給を開始する始動制御部と、を備える。
【0008】
本発明の第2の態様は、内燃機関を始動するモータに接続され、互いに並列に接続された複数のバッテリを有し、複数の前記バッテリの電力を前記モータ以外の電気負荷に供給するパワーユニットの制御方法であって、複数の前記バッテリの各々の電力残量を検出する検出ステップと、複数の前記バッテリの電力残量を比較する比較ステップと、前記内燃機関の始動時には、前記パワーユニットを制御して、電力残量が大きい順に複数の前記バッテリから前記モータへの電力供給を開始する始動制御ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリ間の電流によるバッテリ等の劣化および損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、航空機が有するパワーユニットおよびその制御装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、パワーユニットの制御装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、各バッテリからモータへの電力供給条件を示す図である。
【
図5】
図5は、複数のバッテリの電力残量変化の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、複数のバッテリの電力残量変化の別例を示す図である。
【
図7】
図7は、パワーユニットの制御方法に係る処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施の形態によるパワーユニットの制御装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態の説明では、パワーユニットの制御装置を有する移動体として航空機の例を用いるが、これに限定されない。
図1は、航空機10の模式図である。航空機10は、電動垂直離着陸機(eVTOL)である。航空機10は、機体12を有する。機体12には、コックピット、キャビン等が設けられる。
【0012】
航空機10は、タンデム翼機である。航空機10は、翼14を有する。翼14は、前翼14aおよび後翼14bを含む。後翼14bは、後退翼である。航空機10が前方に移動する場合に、前翼14aおよび後翼14bの各々において揚力が発生する。前翼14aおよび後翼14bには、ブーム16Lおよびブーム16Rが取り付けられる。
【0013】
ブーム16Lは、機体12の中心線AXに沿って前後方向に延びる。ブーム16Lは、機体12の中心線AXに対して左方に配置される。ブーム16Rは、中心線AXに沿って前後方向に延びる。ブーム16Rは、中心線AXに対して右方に配置される。ブーム16Lおよびブーム16Rは、機体12を間にはさんで左右方向に互いに離間して配置される。ブーム16Lおよびブーム16Rを区別しない場合には、単にブーム16と呼ぶ場合がある。
【0014】
航空機10は、複数のロータ18Vを有する。
図1においては、複数のロータ18Vとして、8つのロータ18V1、18V2、18V3、18V4、18V5、18V6、18V7、18V8が例示されている。各ロータ18Vは、1つまたは複数のモータ20Vにより駆動される。
図1においては、各ロータ18Vが1つのモータ20Vにより駆動される例が示されている。
【0015】
ロータ18V1に対して、モータ20V1が設けられる。ロータ18V2に対して、モータ20V2が設けられる。ロータ18V3に対して、モータ20V3が設けられる。ロータ18V4に対して、モータ20V4が設けられる。ロータ18V5に対して、モータ20V5が設けられる。ロータ18V6に対して、モータ20V6が設けられる。ロータ18V7に対して、モータ20V7が設けられる。ロータ18V8に対して、モータ20V8が設けられる。
【0016】
ロータ18Vがモータ20Vに駆動されることにより、主に垂直方向に推力が発生する。ロータ18Vの回転数と、ロータ18Vのブレードのピッチ角度とが調整されることにより、推力が制御される。各ロータ18Vにおける推力が制御されることにより、機体12に対して主に上方に推進力が発生する。各ロータ18Vは、主に、垂直離陸時、垂直離陸から巡航への移行時、巡航から垂直着陸への移行時、垂直着陸時、空中停止時等において使用される。
【0017】
4つのロータ18V1、18V3、18V5、18V7は、ブーム16Lに取り付けられる。これに対応して、モータ20V1、20V3、20V5、20V7もまた、ブーム16Lに取り付けられる。残り4つのロータ18V2、18V4、18V6、18V8は、ブーム16Rに取り付けられる。これに対応して、モータ20V2、20V4、20V6、20V8もまた、ブーム16Rに取り付けられる。
【0018】
航空機10は、複数のロータ18Cを有する。
図1においては、複数のロータ18Cとして、2つのロータ18C1、18C2が例示されている。各ロータ18Cは、1つまたは複数のモータ20Cにより駆動される。
図1においては、各ロータ18Cが2つのモータ20Cにより駆動される例が示されている。ロータ18C1に対して、モータ20C1_1、20C1_2が設けられる。ロータ18C2に対して、モータ20C2_1、20C2_2が設けられる。
【0019】
機体12の側面には、マウント26(マウント26Lおよびマウント26R)が取り付けられる。マウント26Lは、機体12の左側面から左方に向かって延びる。マウント26Rは、機体12の右側面から右方に向かって延びる。ロータ18C1は、モータ20C1_1、20C1_2とともに、マウント26Lに取り付けられる。ロータ18C2は、モータ20C2_1、20C2_2とともに、マウント26Rに取り付けられる。なお、各ロータ18Cは、機体12の、後翼14bよりも後方に取り付けられてもよい。
【0020】
ロータ18Cがモータ20Cに駆動されることにより、主に水平方向に推力が発生する。ロータ18Cの回転数と、ロータ18Cのブレードのピッチ角度とが調整されることにより、推力が制御される。各ロータ18Cにおける推力が制御されることにより、機体12に対して主に前方に推進力が発生する。各ロータ18Cは、主に、垂直離陸から巡航への移行時、巡航時、巡航から垂直着陸への移行時等において使用される。
【0021】
航空機10は、上述した複数のモータ20Vおよび複数のモータ20C等の電気負荷の電力源として、発電機を有する。本実施の形態においては、後述する内燃機関から得られる動力で発電する別のモータが発電機として機能する。航空機10は、ハイブリッド航空機である。そのため、航空機10は、後述するように、さらにバッテリを有する。発電機として機能するモータにより発電された電力が、要求される電力に対して不足する場合、バッテリの電力も電気負荷に供給される。
【0022】
図2は、航空機10が有するパワーユニット40およびその制御装置42の構成を示す模式図である。制御装置42は、パワーユニット40を制御して、電気負荷44への電力供給を許可または禁止する。
【0023】
パワーユニット40は、内燃機関60と、モータ62と、コンバータ64とを備える。
図2に示す例において、パワーユニット40は、1セットの内燃機関60と、モータ62と、コンバータ64とを有する。しかし、パワーユニット40は、複数セットの内燃機関60と、モータ62と、コンバータ64とを有してもよい。また、パワーユニット40が、内燃機関60と、モータ62と、コンバータ64とを備えない場合、内燃機関60と、モータ62と、コンバータ64とが、パワーユニット40とは別に設けられてもよい。
【0024】
内燃機関60は、例えばガスタービンである。モータ62は、内燃機関60から得られる動力で発電する。コンバータ64は、モータ62の発電により得られた交流電力を直流電力に変換する。モータ62が発電し、コンバータ64により変換された電力は、電気負荷44へ供給される。また、その電力の一部は、パワーユニット40内の、後述する複数のバッテリ70の充電にも用いられ得る。
【0025】
なお、内燃機関60の始動時には、モータ62が内燃機関60を始動する。すなわち、内燃機関60が始動した後は、内燃機関60を始動するモータ62が、複数のバッテリ70または電気負荷44の電力源になる発電機として機能する。したがって、内燃機関60を始動するモータ62を発電機と別に設ける必要がないので、航空機10等の移動体を小型化および軽量化することができる。
【0026】
パワーユニット40は、モータ62に接続される電力供給ラインMLと、電力供給ラインMLから分岐した複数の電力供給ラインPLとを有する。複数の電力供給ラインPLの各々が、複数の電気負荷44の各々に接続される。
図2に示す例では、4つの電力供給ラインPLA、PLB、PLC、PLDの各々が、4つの電気負荷44A、44B、44C、44Dの各々に接続される。なお、
図2において、グランド線の図示は省略されている。
【0027】
パワーユニット40は、電力供給ラインML上にコンタクタCMを有する。コンタクタCMがオンになると、各電力供給ラインPL上での電力伝送が行われ得る。コンタクタCMがオフになると、いずれの電力供給ラインPL上においても電力伝送が行われない。
【0028】
パワーユニット40は、互いに並列に接続された複数のバッテリ70を有する。この複数のバッテリ70の各々は、各電力供給ラインPLを介してコンバータ64に接続されている。各バッテリ70は、例えばリチウムイオン電池である。各バッテリ70は、コンバータ64を介してモータ62に接続される。
【0029】
上述したように、モータ62の発電により得られた電力が不足する場合、複数のバッテリ70のうちの少なくとも一部が有する電力が、電気負荷44に供給され得る。それ以外の場合、モータ62の発電により得られた電力により、各バッテリ70は充電され得る。なお、内燃機関60の始動時には、各バッテリ70は、内燃機関60を始動するモータ62への電力供給を行う。
【0030】
パワーユニット40は、バッテリ70とモータ62との間で、各電力供給ラインPL上に配置されるダイオード72を有する。ダイオード72は、モータ62からバッテリ70または電気負荷44への電力供給を許容し、バッテリ70または電気負荷44からモータ62への電力供給を禁止する。
【0031】
パワーユニット40は、各電力供給ラインPLと各バッテリ70との間に配置されるコンタクタCBを有する。各コンタクタCBは、各バッテリ70を各電力供給ラインPLに接続し得るとともに、その接続を遮断し得る。モータ62の発電により得られた電力が電気負荷44の要求電力に対して不足する場合であって、且つコンタクタCBがオンの場合、そのコンタクタCBに接続されたバッテリ70の電力が電気負荷44に供給され得る。
【0032】
モータ62の発電により得られた電力が電気負荷44の要求電力より大きい場合であって、且つコンタクタCBがオンの場合、モータ62の発電により得られた電力により、そのコンタクタCBに接続されたバッテリ70が充電され得る。
【0033】
パワーユニット40は、ダイオード72とモータ62との間で、各電力供給ラインPL上に配置されるコンタクタCLを有する。コンタクタCLがオンになると、そのコンタクタCLが配置された電力供給ラインPL上での電力伝送が行われ得る。コンタクタCLがオフになると、そのコンタクタCLが配置された電力供給ラインPL上での電力伝送が行われない。
【0034】
パワーユニット40は、各バッテリ70に対して各電力供給ラインPL上で各ダイオード72と並列に接続される第1スイッチング素子74を有する。第1スイッチング素子74は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。第1スイッチング素子74に入力する後述の第1制御信号に応じて、第1スイッチング素子74はオンまたはオフになる。
【0035】
第1スイッチング素子74は、例えば内燃機関60の始動時にオンになることにより、バッテリ70からモータ62への電力供給を許可する。第1スイッチング素子74がオンになり、且つコンタクタCBがオンになると、そのコンタクタCBに接続されたバッテリ70の電力が、モータ62へ供給され得る。第1スイッチング素子74は、オフになることにより、バッテリ70からモータ62への電力供給を禁止する。
【0036】
上述したように、パワーユニット40は、複数のバッテリ70を有する。複数のバッテリ70それぞれの電力残量は必ずしも等しいとは限らない。例えば雷またはノイズの発生により、第1スイッチング素子74がオンになる誤作動が発生する場合が考えられる。第1スイッチング素子74が誤作動した場合には、電力残量が大きいバッテリ70から、電力残量が小さいバッテリ70へ、電流が流れる可能性がある。本実施の形態は、第1スイッチング素子74の誤作動によりバッテリ70間に電流が流れることを防止するために、以下の構成を採用した。
【0037】
制御装置42は、複数のバッテリ制御装置80と、電源回路制御装置82と、主制御装置84とを有する。複数のバッテリ制御装置80の各々は、各電力供給ラインPLに接続される各バッテリ70を制御する。具体的な制御として、各バッテリ制御装置80は、各バッテリ70の電力残量を検出するとともに、各バッテリ70の充放電制御を行う。各バッテリ制御装置80は、各バッテリ70の電力残量として、各バッテリ70のSOC(State Of Charge)、または各バッテリ70の電圧を検出してもよい。
【0038】
また、各バッテリ制御装置80は、上述した各コンタクタCBを制御して、各コンタクタCBをオンまたはオフにする。各バッテリ制御装置80は、各コンタクタCBを制御することで、バッテリ70の充放電を制御する。さらに、バッテリ制御装置80は、例えば内燃機関60の始動時に、第1スイッチング素子74へ第1制御信号を出力する。
【0039】
パワーユニット40は、第2スイッチング素子76を有する。第2スイッチング素子76は、例えばリレーである。各バッテリ制御装置80と各第1スイッチング素子74との間に、第2スイッチング素子76が設けられる。これにより、各バッテリ制御装置80から出力された第1制御信号は、各第2スイッチング素子76を介して各第1スイッチング素子74の制御入力端子に入力される。第2スイッチング素子76は、例えば内燃機関60の始動時にオンになることにより、第1スイッチング素子74へ第1制御信号が入力し得る。
【0040】
電源回路制御装置82は、上述したコンタクタCMを制御して、コンタクタCMをオンまたはオフにする。また、電源回路制御装置82は、上述した各コンタクタCLを制御して、各コンタクタCLをオンまたはオフにする。さらに、電源回路制御装置82は、例えば内燃機関60の始動時に、第2スイッチング素子76へ第2制御信号を出力する。第2スイッチング素子76は、電源回路制御装置82と第1スイッチング素子74の制御入力端子との間の電気的接続を、第2制御信号に応じて許可する。
【0041】
第2制御信号は、例えば不図示のコイルに流れる電流である。第2制御信号に応じたコイルの磁力により、各第2スイッチング素子76がオンまたはオフになる。第2スイッチング素子76がオンになると、電源回路制御装置82と第1スイッチング素子74の制御入力端子との間が電気的に接続される。したがって、第2スイッチング素子76がオンの場合のみ、バッテリ制御装置80から出力された第1制御信号が第1スイッチング素子74の制御入力端子に入力され得る。その場合、バッテリ70からモータ62への電力供給が許可され得る。
【0042】
第2スイッチング素子76がオフになると、電源回路制御装置82と第1スイッチング素子74の制御入力端子との間の電気的接続が遮断される。したがって、第2スイッチング素子76がオフになることにより、バッテリ制御装置80から第1スイッチング素子74への第1制御信号の入力が禁止され得る。その場合、バッテリ70からモータ62への電力供給が禁止される。
【0043】
主制御装置84は、複数のバッテリ制御装置80から複数のバッテリ70の電力残量を取得する。主制御装置84は、取得した複数のバッテリ70の電力残量に基づいて、各バッテリ制御装置80および電源回路制御装置82を制御して、コンタクタCM、各コンタクタCLおよび各コンタクタCBを、それぞれオンまたはオフにする。これにより、モータ62により発電された電力が、各バッテリ70および/または各電気負荷44に供給され得る。
【0044】
また、主制御装置84は、例えば内燃機関60の始動時に、バッテリ制御装置80を制御して、バッテリ制御装置80に第1制御信号を第1スイッチング素子74へ出力させる。それとともに、主制御装置84は、電源回路制御装置82に第2制御信号を第2スイッチング素子76へ出力させる。
【0045】
このように、第2スイッチング素子76が設けられることで、第1スイッチング素子74の誤作動を防止することができる。つまり、電源回路制御装置82が第2スイッチング素子76をオンにしない限り、第1スイッチング素子74に第1制御信号が入力されないので、第1スイッチング素子74の誤作動を防止することができる。
【0046】
複数の電気負荷44の各々は、各電力供給ラインPLに接続される。各電気負荷44は、複数のロータ18と、複数のモータ20と、複数のインバータ90とを有する。
図2においては、説明を簡単にするため、各電気負荷44は1つのロータ18を有するように示されている。しかし実際には、各電気負荷44が有する複数のロータ18は、上述した2つのロータ18Vと1つのロータ18Cとを含む。
【0047】
例えば、電力供給ラインPLAに接続された電気負荷44Aは、
図1に示す2つのロータ18V1、18V8と、1つのロータ18C1と、2つのモータ20V1、20V8と、1つのモータ20C1_1とを含む。電力供給ラインPLBに接続された電気負荷44Bは、
図1に示す2つのロータ18V4、18V5と、1つのロータ18C2と、2つのモータ20V4、20V5と、1つのモータ20C2_1とを含む。
【0048】
電力供給ラインPLCに接続された電気負荷44Cは、
図1に示す2つのロータ18V2、18V7と、1つのロータ18C1と、2つのモータ20V2、20V7と、1つのモータ20C1_2とを含む。電力供給ラインPLDに接続された電気負荷44Dは、
図1に示す2つのロータ18V3、18V6と、1つのロータ18C2と、2つのモータ20V3、20V6と、1つのモータ20C2_2とを含む。
【0049】
各電気負荷44が有する複数のモータ20の各々は、各ロータ18を駆動する。各電気負荷44が有する複数のインバータ90の各々は、直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を各モータ20に供給する。各インバータ90が変換する電力は、モータ62により発電され、且つコンバータ64により変換されることにより供給された電力、および/または各バッテリ70から供給された電力である。このようにして供給された電力を用いて、各モータ20は各ロータ18を駆動する。
【0050】
図3は、パワーユニット40の制御装置42の構成を模式的に示すブロック図である。上述したように、制御装置42は、複数のバッテリ制御装置80と、電源回路制御装置82と、主制御装置84とを有する。バッテリ制御装置80は、記憶部100と、演算部102とを有する。演算部102は、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを含む。すなわち、演算部102は、処理回路(processing circuitry)を含む。
【0051】
記憶部100は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリとを含む。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして用いられる。不揮発性メモリは、プロセッサが実行するプログラムと、その他必要なデータとを記憶する。
【0052】
演算部102は、検出部110と、充放電制御部112と、第1制御部118とを有する。演算部102が記憶部100に保存されたプログラムを実行することにより、検出部110と、充放電制御部112と、第1制御部118とが実現される。検出部110と、充放電制御部112と、第1制御部118とのうちの少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、或いはディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。
【0053】
検出部110は、バッテリ制御装置80が制御するバッテリ70の電力残量を、いずれも不図示の電圧センサおよび/または電流センサから得られる情報を用いて検出する。検出部110は、主制御装置84からの指示に応じて、検出したバッテリ70の電力残量を主制御装置84へ通知する。充放電制御部112は、コンタクタCBを制御することにより、バッテリ70への充電およびバッテリ70からの放電を制御する。第1制御部118は、主制御装置84からの指示に応じて、第1スイッチング素子74へ第1制御信号を出力する。
【0054】
電源回路制御装置82は、記憶部120と、演算部122とを有する。演算部122は、CPUまたはGPU等のプロセッサを含む。すなわち、演算部122は、処理回路を含む。記憶部120は、RAM等の揮発性メモリと、ROMまたはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリとを含む。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして用いられる。不揮発性メモリは、プロセッサが実行するプログラムと、その他必要なデータとを記憶する。
【0055】
演算部122は、接続/遮断制御部130と、第2制御部138とを有する。演算部122が記憶部120に保存されたプログラムを実行することにより、接続/遮断制御部130と、第2制御部138とが実現される。接続/遮断制御部130と、第2制御部138とのうちの少なくとも一部は、ASICまたはFPGA等の集積回路、或いはディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。
【0056】
接続/遮断制御部130は、コンタクタCMおよび各コンタクタCLのオンおよびオフを制御することにより、モータ62から各バッテリ70および/または各電気負荷44への電力供給を制御する。また、内燃機関60の始動時には、接続/遮断制御部130は、コンタクタCMおよび各コンタクタCLを制御することにより、コンタクタCMおよび各コンタクタCLを制御することにより、各バッテリ70からモータ62への電力供給を制御する。第2制御部138は、主制御装置84からの指示に応じて、第2スイッチング素子76へ第2制御信号を出力する。
【0057】
主制御装置84は、記憶部140と、演算部142とを有する。演算部142は、CPUまたはGPU等のプロセッサを含む。すなわち、演算部142は、処理回路を含む。記憶部140は、RAM等の揮発性メモリと、ROMまたはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリとを含む。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして用いられる。不揮発性メモリは、プロセッサが実行するプログラムと、その他必要なデータとを記憶する。
【0058】
演算部142は、取得部150と、電力供給制御部152と、比較部154と、決定部156と、第3制御部158とを有する。演算部142が記憶部140に保存されたプログラムを実行することにより、取得部150と、電力供給制御部152と、比較部154と、決定部156と、第3制御部158とが実現される。取得部150と、電力供給制御部152と、比較部154と、決定部156と、第3制御部158とのうちの少なくとも一部は、ASICまたはFPGA等の集積回路、或いはディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。
【0059】
取得部150は、複数のバッテリ制御装置80から複数のバッテリ70の電力残量を取得する。電力供給制御部152は、各バッテリ制御装置80を制御して、各バッテリ70の充放電制御を行う。電力供給制御部152は、さらに、電源回路制御装置82を制御して、モータ62から各バッテリ70および/または各電気負荷44への電力供給と、各バッテリ70からモータ62への電力供給とを制御する。
【0060】
比較部154は、取得部150により取得された複数のバッテリ70の電力残量を比較する。決定部156は、複数のバッテリ70の序列を、電力残量が大きい順に決定する。最大の電力残量を有するバッテリ70が序列最上位のバッテリ70である。最小の電力残量を有するバッテリ70が序列最下位のバッテリ70である。
図2に示す例では、4つのバッテリ70A、70B、70C、70Dの序列が、電力残量が大きい順に、第1位(最上位)から第4位(最下位)まで決定される。
【0061】
第3制御部158は、例えば内燃機関60の始動時に、決定部156により決定された複数のバッテリ70の序列に基づいて、モータ62への電力供給を行うバッテリ70を決定する。第3制御部158は、決定したそのバッテリ70を制御するバッテリ制御装置80の第1制御部118を制御して、第1制御部118に第1制御信号を第1スイッチング素子74へ出力させる。
【0062】
それとともに、第3制御部158は、第2制御部138を制御して、第2制御部138に第2制御信号を第2スイッチング素子76へ出力させる。第2制御信号が入力される第2スイッチング素子76は、上述のとおり決定したバッテリ70を制御するバッテリ制御装置80と、第1制御信号が入力される第1スイッチング素子74との間に配置されている。第3制御部158は、さらにコンバータ64を制御し、モータ62に、バッテリ70から供給された電力を用いて内燃機関60を始動させる。
【0063】
各バッテリ制御装置80の第1制御部118と、電源回路制御装置82の第2制御部138と、主制御装置84の第3制御部158とは、始動制御部170を構成する。すなわち、第1制御部118と第2制御部138と第3制御部158とは別体で設けられる。したがって、内燃機関60の始動時における、パワーユニット40の制御負荷を分散させることができる。
【0064】
始動制御部170は、内燃機関60の始動時には、パワーユニット40を制御して、電力残量が大きい順に複数のバッテリ70からモータ62への電力供給を開始する。始動制御部170は、バッテリ70からモータ62への電力供給を許可する場合、第1スイッチング素子74をオンにするとともに、第2スイッチング素子76をオンにする。この場合、第3制御部158は、第1制御部118を制御して第1スイッチング素子74をオンにするとともに、第2制御部138を制御して第2スイッチング素子76をオンにする。
【0065】
始動制御部170は、バッテリ70からモータ62への電力供給を禁止する場合、第1スイッチング素子74をオフにするとともに、第2スイッチング素子76をオフにする。この場合、第3制御部158は、第1制御部118を制御して第1スイッチング素子74をオフにするとともに、第2制御部138を制御して第2スイッチング素子76をオフにする。
【0066】
上述したように、例えば雷またはノイズの発生により、第1スイッチング素子74がオフからオンになる誤作動が発生する場合が考えられる。同様に、第2スイッチング素子76がオフからオンになる誤作動が発生する場合が考えられる。
【0067】
図4は、各バッテリ70からモータ62への電力供給条件を示す図である。第1スイッチング素子74に入力する第1制御信号がオフの場合、第2スイッチング素子76に入力する第2制御信号にかかわらず、バッテリ70からモータ62への電力供給は不可能である。したがって、第2スイッチング素子76がオフからオンになる誤作動が発生した場合に、電力残量が大きいバッテリ70から、電力残量が小さいバッテリ70へ、電流が流れる可能性は、抑えられる。
【0068】
第1スイッチング素子74に入力する第1制御信号がオンであって、且つ第2スイッチング素子76に入力する第2制御信号がオフである場合、バッテリ70からモータ62への電力供給は不可能である。したがって、第1スイッチング素子74がオフからオンになる誤作動が発生した場合に、電力残量が大きいバッテリ70から、電力残量が小さいバッテリ70へ、電流が流れる可能性は、抑えられる。
【0069】
バッテリ70間における電力残量の差が大きい場合、過大な電流が流れたバッテリ70および電力供給ラインPL上の回路素子が劣化または損傷するおそれがある。第2スイッチング素子76が設けられることにより、第1スイッチング素子74がオンになる誤作動が発生した場合であっても、バッテリ70等の劣化および損傷を防止できる。
【0070】
第1スイッチング素子74に入力する第1制御信号がオンであって、且つ第2スイッチング素子76に入力する第2制御信号がオンである場合、バッテリ70からモータ62への電力供給は可能である。これは、始動制御部170により、バッテリ70からモータ62への電力供給が許可された場合の制御に対応する。その場合、コンタクタCMと、当該第1スイッチング素子74が配置された電力供給ラインPL上のコンタクタCLとが、接続/遮断制御部130により、オンにされている。また、当該バッテリ70が接続されているコンタクタCBが、充放電制御部112により、オンにされている。
【0071】
内燃機関60の始動時には、1つまたは複数のバッテリ70からモータ62への電力供給が行われる。上述したように、第3制御部158は、決定部156により決定された複数のバッテリ70の序列に基づいて、モータ62への電力供給を行うバッテリ70を決定する。
図5を用いて、その具体例を説明する。
図5は、複数のバッテリ70の電力残量変化の一例を示す図である。
【0072】
図5には、
図2に示したバッテリ70A、70B、70C、70Dの電力残量PA(T)、PB(T)、PC(T)、PD(T)が、内燃機関60の始動開始時からの経過時間Tに応じてそれぞれ変化する様子が、例示されている。決定部156により決定された複数のバッテリ70の序列が、電力残量が大きい順に、バッテリ70A、70B、70C、70Dと決定されたとする。すなわち、内燃機関60の始動開始時の経過時間T=0において、電力残量PA(0)>PB(0)>PC(0)>PD(0)という関係が成り立つ。
【0073】
第3制御部158は、最大の電力残量を有するバッテリ70を、第1バッテリとして決定する。第1バッテリが決定されると、第3制御部158は、第1バッテリとして決定されたバッテリ70からモータ62への電力供給を開始する。
図5に示す例では、経過時間T=0において、第3制御部158は、最大の電力残量PA(0)を有するバッテリ70Aを、第1バッテリとして決定する。第3制御部158は、バッテリ70Aからモータ62への電力供給を開始する。
【0074】
また、第3制御部158は、第1バッテリの次に大きい電力残量を有するバッテリ70を、第2バッテリとして決定する。経過時間T=0において、第3制御部158は、バッテリ70Aの次に大きい電力残量PB(0)を有するバッテリ70Bを、第2バッテリとして決定する。
【0075】
その後、減少した第1バッテリ(バッテリ70A)の電力残量と、略変化しない第2バッテリ(バッテリ70B)の電力残量との差ΔPN(T)が第1所定量以下になった場合、第3制御部158は、第2バッテリ(バッテリ70B)を第1バッテリとして決定し、第1バッテリとして決定されたバッテリ70からモータ62への電力供給も開始する。
【0076】
図5に示す例では、経過時間TがT1に至るまで、バッテリ70Aの電力残量PA(T)が減少し、バッテリ70Aの電力残量PA(T)と、バッテリ70Bの電力残量PB(T)との差ΔPN(T)が、小さくなっていく。経過時間T=T1において、バッテリ70Aの電力残量PA(T1)と、バッテリ70Bの電力残量PB(T1)との差ΔPN(T1)が、第1所定量PV1に達する。なお、バッテリ70Bの電力残量PB(T1)=PB(0)であるから、差ΔPN(T1)は、ΔPN(T1)=PA(T1)-PB(0)で表される。
【0077】
差ΔPN(T1)が第1所定量PV1以下の場合、第3制御部158は、バッテリ70Bを第1バッテリとして決定する。第3制御部158は、バッテリ70Bからモータ62への電力供給を開始する。なお、バッテリ70Aからモータ62への電力供給は、停止されずに続けられる。また、第3制御部158は、第1バッテリの次に大きい電力残量を有するバッテリ70を、第2バッテリとして決定する。経過時間T=T1において、第3制御部158は、バッテリ70Bの次に大きい電力残量PC(T1)=PC(0)を有するバッテリ70Cを、第2バッテリとして決定する。
【0078】
その後、減少した第1バッテリ(バッテリ70B)の電力残量と、略変化しない第2バッテリ(バッテリ70C)の電力残量との差ΔPN(T)が第1所定量PV1以下になった場合、第3制御部158は、第2バッテリ(バッテリ70C)を第1バッテリとして決定し、第1バッテリとして決定されたバッテリ70からモータ62への電力供給を開始する。
【0079】
図5に示す例では、経過時間TがT1からT2に至るまで、バッテリ70A、70Bの電力残量PA(T)、PB(T)が減少し、バッテリ70Bの電力残量PB(T)と、バッテリ70Cの電力残量PC(T)との差ΔPN(T)が、小さくなっていく。経過時間T=T2において、バッテリ70Bの電力残量PB(T2)と、バッテリ70Cの電力残量PC(T2)との差ΔPN(T2)が、第1所定量PV1に達する。なお、バッテリ70Cの電力残量PC(T2)=PC(0)であるから、差ΔPN(T2)は、ΔPN(T2)=PB(T2)-PC(0)で表される。
【0080】
差ΔPN(T2)が第1所定量PV1以下の場合、第3制御部158は、バッテリ70Cを第1バッテリとして決定する。第3制御部158は、バッテリ70Cからモータ62への電力供給を開始する。なお、バッテリ70A、70Bからモータ62への電力供給は、停止されずに続けられる。また、第3制御部158は、第1バッテリの次に大きい電力残量を有するバッテリ70を、第2バッテリとして決定する。経過時間T=T2において、第3制御部158は、バッテリ70Cの次に大きい電力残量PD(T2)=PD(0)を有するバッテリ70Dを、第2バッテリとして決定する。
【0081】
その後、減少した第1バッテリ(バッテリ70C)の電力残量と、略変化しない第2バッテリ(バッテリ70D)の電力残量との差ΔPN(T)が第1所定量PV1以下になった場合、第3制御部158は、第2バッテリ(バッテリ70D)を第1バッテリとして決定し、第1バッテリとして決定されたバッテリ70からモータ62への電力供給を開始する。
【0082】
図5に示す例では、経過時間TがT2からT3に至るまで、バッテリ70A、70B、70Cの電力残量PA(T)、PB(T)、PC(T)が減少し、バッテリ70Cの電力残量PC(T)と、バッテリ70Dの電力残量PD(T)との差ΔPN(T)が、小さくなっていく。経過時間T=T3において、バッテリ70Cの電力残量PC(T3)と、バッテリ70Dの電力残量PD(T3)との差ΔPN(T3)が、第1所定量PV1に達する。なお、バッテリ70Dの電力残量PD(T3)=PD(0)であるから、差ΔPN(T3)は、ΔPN(T3)=PC(T3)-PD(0)で表される。
【0083】
差ΔPN(T3)が第1所定量PV1以下の場合、第3制御部158は、バッテリ70Dを第1バッテリとして決定する。第3制御部158は、バッテリ70Dからモータ62への電力供給を開始する。なお、バッテリ70A、70B、70Cからモータ62への電力供給は、停止されずに続けられる。
【0084】
このようにして、複数のバッテリ70の電力残量を平滑化することができる。内燃機関60の始動が完了した後、第1スイッチング素子74および第2スイッチング素子76の誤作動により、バッテリ70間に電流が流れた場合であっても、電流の大きさを抑えることができる。すなわち、バッテリ70間の電流によるバッテリ70等の劣化および損傷を防止することができる。したがって、複数のバッテリ70からモータ62への電力供給を、より安全に行うことができる。
【0085】
内燃機関60の始動が完了すると、始動制御部170は、バッテリ70からモータ62への電力供給を禁止する。すなわち、第3制御部158は、第1制御部118を制御して第1スイッチング素子74をオフにするとともに、第2制御部138を制御して第2スイッチング素子76をオフにする。
【0086】
内燃機関60の始動時に、複数のバッテリ70の電力残量の平滑化が略達成されている場合、電力残量が大きい順に複数のバッテリ70からモータ62への電力供給が開始される必要性は低い。その場合、複数のバッテリ70の電力残量変化を
図5とは異ならせる始動制御が行われてもよい。
図6は、複数のバッテリ70の電力残量変化の別例を示す図である。
【0087】
図6には、
図2に示したバッテリ70A、70B、70C、70Dの電力残量PA(T)、PB(T)、PC(T)、PD(T)が、内燃機関60の始動開始時からの経過時間Tに応じてそれぞれ変化する様子が、例示されている。決定部156により決定された複数のバッテリ70の序列が、電力残量が大きい順に、バッテリ70A、70B、70C、70Dと決定されたとする。すなわち、内燃機関60の始動開始時の経過時間T=0において、電力残量PA(0)>PB(0)>PC(0)>PD(0)という関係が成り立つ。
【0088】
第3制御部158は、最大の電力残量を有するバッテリ70と、最小の電力残量を有するバッテリ70との間における電力残量の差ΔPMを算出する。
図6に示す例では、経過時間T=0において、差ΔPMは、バッテリ70Aの電力残量PA(0)と、バッテリ70Dの電力残量PD(0)との差に等しい。すなわち、差ΔPMは、ΔPM=PA(0)-PD(0)で表される。
【0089】
差ΔPMが第2所定量PV2以下である場合、第3制御部158は、複数のバッテリ70A、70B、70C、70Dのすべてからモータ62への電力供給を開始する。その場合、始動制御が簡便になるため、始動制御部170の処理負荷が低減される。
【0090】
内燃機関60の始動が完了すると、始動制御部170は、バッテリ70からモータ62への電力供給を禁止する。すなわち、第3制御部158は、第1制御部118を制御して第1スイッチング素子74をオフにするとともに、第2制御部138を制御して第2スイッチング素子76をオフにする。
【0091】
図7は、パワーユニット40の制御方法に係る処理手順を示すフローチャートである。本処理手順は、例えば主制御装置84が有する演算部142により行われる。ユーザから内燃機関60の始動が指示されると、本処理手順が開始される。ステップS1で、取得部150は、複数のバッテリ制御装置80に複数のバッテリ70の電力残量を通知するよう、指示する。各バッテリ制御装置80の検出部110は、検出した各バッテリ70の電力残量を、取得部150に通知する。
【0092】
ステップS2で、比較部154は、取得部150により取得された複数のバッテリ70の電力残量を比較する。ステップS3で、決定部156は、複数のバッテリ70の序列を、電力残量が大きい順に決定する。ステップS4で、第3制御部158は、最大の電力残量と最小の電力残量との差ΔPMが第2所定量PV2以下であるか否かを判定する。ステップS4でYESとなった場合、本処理手順はステップS31へ進む。ステップS4でNOとなった場合、本処理手順はステップS5へ進む。
【0093】
ステップS5で、第3制御部158は、最大の電力残量を有するバッテリ70を、第1バッテリとして決定する。ステップS6で、第3制御部158は、第1バッテリからモータ62への電力供給を開始する。ステップS7で、第3制御部158は、複数のバッテリ70のすべてからモータ62への電力供給が開始済みであるか否かを判定する。ステップS7でYESとなった場合、本処理手順は終了する。ステップS7でNOとなった場合、本処理手順はステップS8へ進む。
【0094】
ステップS8で、第3制御部158は、第1バッテリの次に大きい電力残量を有するバッテリ70を、第2バッテリとして決定する。ステップS9で、第3制御部158は、第1バッテリの電力残量と第2バッテリの電力残量との差ΔPN(T)が第1所定量PV1以下になったか否かを判定する。ステップS9でYESとなった場合、本処理手順はステップS10へ進む。ステップS9でNOとなった場合、本処理手順はステップS9の処理を繰り返す。
【0095】
ステップS10で、第3制御部158は、第2バッテリを第1バッテリとして決定する。ステップS10の処理が完了すると、本処理手順はステップS6へ戻る。
【0096】
上述したように、ステップS4でYESとなった場合、本処理手順はステップS31へ進む。ステップS31で、第3制御部158は、複数のバッテリ70のすべてからモータ62への電力供給を開始する。ステップS31の処理が完了すると、本処理手順は終了する。
【0097】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態から把握しうる発明について、以下の付記を開示する。
【0098】
(付記1)内燃機関(60)を始動するモータ(62)に接続され、互いに並列に接続された複数のバッテリ(70)を有し、複数の前記バッテリの電力を前記モータ以外の電気負荷(44)に供給するパワーユニット(40)の制御装置(42)であって、複数の前記バッテリの各々の電力残量(PA、PB、PC、PD)を検出する検出部(110)と、複数の前記バッテリの電力残量を比較する比較部(154)と、前記内燃機関の始動時には、前記パワーユニットを制御して、電力残量が大きい順に複数の前記バッテリから前記モータへの電力供給を開始する始動制御部(170)と、を備える。これにより、複数のバッテリの電力残量を平滑化することができる。そのため、バッテリ間の電流によるバッテリ等の劣化および損傷を防止することができる。
【0099】
(付記2)付記1に記載のパワーユニットの制御装置であって、複数の前記バッテリは、第1バッテリと、前記第1バッテリの次に電力残量が大きい第2バッテリとを含み、前記始動制御部が前記第1バッテリから前記モータへの前記電力供給を開始した後に、前記第1バッテリの電力残量と、前記第2バッテリの電力残量との差(ΔPN)が第1所定量(PV1)以下になった場合、前記始動制御部は、前記第2バッテリから前記モータへの前記電力供給を開始してもよい。これにより、複数のバッテリからモータへの電力供給を、より安全に行うことができる。
【0100】
(付記3)付記1または2に記載のパワーユニットの制御装置であって、複数の前記バッテリのうち、最大の電力残量を有するバッテリと、最小の電力残量を有するバッテリとの間における電力残量の差(ΔPM)が第2所定量(PV2)以下である場合、前記始動制御部は、複数の前記バッテリのすべてから前記モータへの前記電力供給を開始してもよい。これにより、始動制御部170の処理負荷が低減される。
【0101】
(付記4)付記1に記載のパワーユニットの制御装置であって、前記モータは、前記内燃機関が始動した後は、複数の前記バッテリまたは前記電気負荷の電力源になる発電機として機能してもよい。これにより、移動体を小型化および軽量化することができる。
【0102】
(付記5)付記4に記載のパワーユニットの制御装置であって、前記パワーユニットは、複数の前記バッテリの各々に対応するバッテリと前記モータとの間に配置され、前記モータから前記バッテリまたは前記電気負荷への電力供給を許容するダイオード(72)と、前記バッテリに対して前記ダイオードと並列に接続されるとともに、前記始動制御部から第1制御信号が入力する制御入力端子を有し、前記バッテリから前記モータへの電力供給を、前記第1制御信号に応じて許可する第1スイッチング素子(74)と、前記始動制御部と前記制御入力端子との間の電気的接続を、第2制御信号に応じて許可する第2スイッチング素子(76)と、を備え、前記始動制御部は、前記第1スイッチング素子へ前記第1制御信号を出力し、前記第2スイッチング素子へ前記第2制御信号を出力することにより、複数の前記バッテリの各々から前記モータへの電力供給を開始してもよい。これにより、バッテリ等の劣化および損傷を防止することができる。
【0103】
(付記6)付記5に記載のパワーユニットの制御装置であって、前記始動制御部は、前記第1制御信号を前記第1スイッチング素子へ出力する第1制御部(118)と、前記第2制御信号を前記第2スイッチング素子へ出力する第2制御部(138)と、前記第1制御部を制御して、前記第1制御部に前記第1制御信号を前記第1スイッチング素子へ出力させるとともに、前記第2制御部を制御して、前記第2制御部に前記第2制御信号を前記第2スイッチング素子へ出力させる第3制御部(158)とを有し、前記第1制御部と前記第2制御部と前記第3制御部とは別体で設けられてもよい。これにより、内燃機関の始動時における、パワーユニットの制御負荷を分散させることができる。
【0104】
(付記7)内燃機関を始動するモータに接続され、互いに並列に接続された複数のバッテリを有し、複数の前記バッテリの電力を前記モータ以外の電気負荷に供給するパワーユニットの制御方法であって、複数の前記バッテリの各々の電力残量を検出する検出ステップと、複数の前記バッテリの電力残量を比較する比較ステップと、前記内燃機関の始動時には、前記パワーユニットを制御して、電力残量が大きい順に複数の前記バッテリから前記モータへの電力供給を開始する始動制御ステップと、を備える。これにより、複数のバッテリの電力残量を平滑化することができる。そのため、バッテリ間の電流によるバッテリ等の劣化および損傷を防止することができる。
【0105】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0106】
10…航空機 12…機体
14…翼 16…ブーム
18…ロータ 20、62…モータ
26…マウント 40…パワーユニット
42…制御装置 44…電気負荷
60…内燃機関 64…コンバータ
70…バッテリ 72…ダイオード
74…第1スイッチング素子 76…第2スイッチング素子
80…バッテリ制御装置 82…電源回路制御装置
84…主制御装置 90…インバータ
100、120、140…記憶部 102、122、142…演算部
110…検出部 112…充放電制御部
118…第1制御部 130…接続/遮断制御部
138…第2制御部 150…取得部
152…電力供給制御部 154…比較部
156…決定部 158…第3制御部
170…始動制御部