(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130822
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】プレート式熱交換器および水素ガス冷却システム
(51)【国際特許分類】
F28F 9/00 20060101AFI20240920BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20240920BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20240920BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F28F9/00 D
F28F3/08 301Z
F28D9/00
F17C13/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040733
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】久保田 敦
(72)【発明者】
【氏名】中根 孝浩
【テーマコード(参考)】
3E172
3L103
【Fターム(参考)】
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BD03
3E172EA02
3E172EA13
3E172EA23
3E172EA35
3E172EA48
3E172KA03
3E172KA19
3L103AA31
3L103BB50
3L103CC01
3L103CC27
3L103DD13
3L103DD15
3L103DD52
3L103DD55
(57)【要約】
【課題】ブラインの漏出を招くことなく、プレート式熱交換器が水素ガスを好適に冷却可能な温度であるか否かを速やかに検出可能とする。
【解決手段】水素ガスの通過が可能な第1の流体通過用溝が形成された第1の溝形成領域を有する水素ガスプレート43と、冷却用流体の通過が可能な第2の流体通過用溝が形成された第2の溝形成領域を有する水素ガスプレート42とを少なくとも含む複数のプレート41~44が予め規定された積層順序で積層されて一体化された積層体40を備え、第1の流体通過用溝を通過する水素ガスと第2の流体通過用溝を通過する冷却用流体との熱交換によって水素ガスを冷却可能に構成された水素ガス冷却用熱交換器20であって、積層体40を構成する各プレート41~44の積層方向において積層体40の表面から凹まされて、積層体40の温度を検出可能な熱電対45を挿入可能に構成された凹部Mが積層体40に形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスの通過が可能な第1の流体通過用溝が形成された第1の溝形成領域を有する第1の板体と、冷却用流体の通過が可能な第2の流体通過用溝が形成された第2の溝形成領域を有する第2の板体とを少なくとも含む複数の板体が予め規定された積層順序で積層されて一体化された積層体を備え、前記第1の流体通過用溝を通過する前記水素ガスと前記第2の流体通過用溝を通過する前記冷却用流体との熱交換によって当該水素ガスを冷却可能に構成されたプレート式熱交換器であって、
前記積層体を構成する前記各板体の積層方向において当該積層体の表面から凹まされて、当該積層体の温度を検出可能な温度検出体を挿入可能に構成された挿入用凹部が当該積層体に形成されているプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記挿入用凹部は、前記第1の板体における前記第1の溝形成領域と前記第2の板体における前記第2の溝形成領域とが前記積層方向において重なる部位に形成されている請求項1記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
水素ガスの通過が可能な第1の流体通過用溝が形成された第1の溝形成領域を有する第1の板体と、冷却用流体の通過が可能な第2の流体通過用溝が形成された第2の溝形成領域を有する第2の板体とを少なくとも含む複数の板体が予め規定された積層順序で積層されて一体化された積層体を備え、前記第1の流体通過用溝を通過する前記水素ガスと前記第2の流体通過用溝を通過する前記冷却用流体との熱交換によって当該水素ガスを冷却可能に構成されたプレート式熱交換器であって、
前記積層体を構成する前記各板体の板面方向において当該積層体の表面から凹まされて、当該積層体の温度を検出可能な温度検出体を挿入可能に構成された挿入用凹部が当該積層体に形成されているプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記挿入用凹部は、少なくとも前記各板体の積層方向における中央部に積層された当該各板体の外縁部に形成された切欠きが当該積層方向において連通させられて構成されている請求項3記載のプレート式熱交換器。
【請求項5】
前記挿入用凹部に前記温度検出体が挿入されて前記積層体と一体化されている請求項1または3記載のプレート式熱交換器。
【請求項6】
請求項1または3記載のプレート式熱交換器と、
前記冷却用流体を冷却する冷却処理、および冷却した当該冷却用流体を前記プレート式熱交換器に供給する供給処理を実行する低温流体供給装置とを備え、
前記低温流体供給装置は、前記温度検出体を介して前記プレート式熱交換器の温度を検出し、検出した温度に基づき、前記冷却処理における前記冷却用流体の冷却温度を変更する第1の処理、および前記供給処理における当該冷却用流体の供給量を変更する第2の処理の少なくとも一方を実行する処理部を備えている水素ガス冷却システム。
【請求項7】
請求項1または3記載のプレート式熱交換器と、
前記冷却用流体を冷却する冷却処理、および冷却した当該冷却用流体を前記プレート式熱交換器に供給する供給処理を実行する低温流体供給装置とを備え、
前記低温流体供給装置は、前記温度検出体を介して前記プレート式熱交換器の温度を検出し、検出した温度を、前記水素ガスの供給源、および当該供給源から給気対象に当該水素ガスを給気する給気装置の少なくとも一方に報知する温度報知処理を実行する処理部を備えている水素ガス冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却用流体との熱交換によって水素ガスを冷却可能に構成されたプレート式熱交換器、およびそのようなプレート式熱交換器を備えて構成された水素ガス冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献には、水素自動車(水素ガスを燃料とする車両)に水素ガスを充填可能な水素ステーションが開示されている。
【0003】
この水素ステーションは、水素製造装置によって製造された水素ガスを貯蔵する貯蔵タンクと、貯蔵タンクから供給された水素ガスを圧縮して高圧化する圧縮機と、圧縮機によって高圧化された水素ガスを貯蔵する蓄圧器と、蓄圧器に貯蔵された高圧の水素ガスを取り出して水素自動車の燃料タンク(ガスタンク)に充填する水素充填装置(燃料充填装置)とを備えている。また、水素充填装置は、蓄圧器から燃料タンクに向かって移動させられる水素ガスをブラインとの熱交換によって冷却するプレート式の熱交換器を備えている。この熱交換器は、ブラインの流路を形成する溝が形成された金属板や、水素ガスの流路を形成する溝が形成された金属板などの複数の金属板を備え、これらの金属板が予め規定された順序で積層されて一体化された積層体を備えて構成されている。
【0004】
この水素ステーションでは、水素製造装置によって製造されて貯蔵タンクに貯蔵された水素ガスが圧縮機によって圧縮されて蓄圧器に貯蔵されている。また、水素自動車に対する給気時には、蓄圧器に貯蔵された水素ガスが、圧縮機によって加えられた圧力を利用して水素充填装置を通過させられて燃料タンクに充填される。この場合、蓄圧器から水素自動車(燃料タンク)に向かって移動する水素ガスは、減圧に伴うジュール・トムソン効果によって温度上昇するが、この水素ステーションでは、水素充填装置に配設された熱交換器を通過させられる際にブラインとの熱交換によって水素ガスが冷却される。これにより、この水素ステーションでは、過剰に高温の水素ガスが水素自動車に給気される事態が回避されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-105760号公報(第7-12頁、第1-12図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示の水素ステーションなどでは、営業終了時や、設備の保守・メンテナンス時などに設備を停止させることがあり、その際には、ブラインの冷却や、熱交換器に対するブラインの供給が停止するため、熱交換器の温度が水素ガスの冷却に適した温度よりも上昇した状態となる。また、水素自動車に水素ガスを充填する水素充填装置については、給気作業位置の近傍に設置する必要があり、水素充填装置(熱交換器)に供給するブラインを冷却する冷却装置については、水素自動車の移動の妨げとなることのないように給気作業位置から離れた場所に設置する必要があることから、冷却装置と熱交換器とが離間して設置された状態となっており、冷却装置において冷却した低温のブラインが熱交換器に到達するまでにある程度の時間を要する状態となっている。
【0007】
したがって、この種の水素ステーションでは、設備の動作開始直後(ブラインの冷却および熱交換器への供給を開始した直後)には、水素充填装置内の熱交換器において水素ガスを好適な温度まで冷却するのが困難となっている。このため、この種の水素ステーションのなかには、熱交換器に温度センサを配設すると共に、水素充填装置が、温度センサからのセンサ信号に基づいて特定される熱交換器の温度が十分に低下するまで水素自動車等への水素ガスの充填を制限する構成が採用されたものが存在する。
【0008】
ここで、この種の水素ステーションにおいて使用される熱交換器のなかには、温度センサを取り付けるための取付け部が設けられていないもの(例えば、上記特許文献に開示の熱交換器)が数多く存在する。したがって、そのような熱交換器の温度を検出するには、熱交換器の表面に温度センサを取り付けて、その表面温度を検出することとなる。しかしながら、この種の熱交換器では、引火性が高い高圧の水素ガスの漏出を確実に回避するために、積層体(金属板を積層して一体化させた部位)の剛性を十分に高くする必要がある。このため、ブラインや水素ガスの流路が積層体の内側部位(すなわち、熱交換器の表面から離れた位置)に形成されており、低温のブラインが供給されたときに熱交換器の表面温度がブラインと同程度の温度まで低下するまでにある程度の時間を要することとなる。
【0009】
したがって、冷却装置からの低温のブラインが水素充填装置に到達して熱交換器におけるブラインの流路の近傍が水素ガスを好適に冷却可能な程度まで十分に温度低下したとしても、熱交換器(積層体)の表面温度がそのような温度まで低下するまで水素ガスの充填が許容されないため、この種の水素ガスステーションでは、設備の動作開始直後に水素ガスの給気を迅速に開始するのが困難となっている現状がある。
【0010】
また、この種の水素ステーションでは、外気温が高い夏期と、外気温が低い冬期とでは、冷却装置から水素充填装置に同じ温度のブラインを供給したとしても、熱交換器に到達したブラインの温度が相違する状態となることがある。また、例えば、連続して大量の水素ガスを給気したときには、熱交換器の温度が過剰に上昇し、水素ガスを好適に冷却するのが困難な状態となるおそれがある。また、水素ガスの給気が行われない状態、すなわち、水素ガスの冷却が行われない状態が長時間に亘って継続したときには、冷却装置から継続的にブラインが供給されることで熱交換器が過冷却され、結露や霜付きなどを招くおそれもある。
【0011】
したがって、出願人は、周囲の温度や運用状態の影響を受けることなく水素ガスを好適に冷却可能な状態を維持するために、熱交換器の温度に応じて冷却装置から水素充填装置(熱交換器)へのブラインの供給量や、供給するブラインの温度を調整する構成の採用を試みた。しかしながら、前述のように、上記特許文献に開示の水素ステーションにおける熱交換器と同様の構成を採用したときには、供給されているブラインの温度と熱交換器の表面温度とが同程度となるまでに時間を要するため、表面に配設された温度センサを介して検出した温度に応じてブラインの供給量や温度を調整しても、過冷却や冷却不足を十分に回避することができず、水素ガスを好適に冷却可能な状態を維持するのが困難であることが判った。
【0012】
一方、例えば、特開2017-067437号公報には、高温流体の流路が設けられた複数の高温流路層と低温流体の流路が設けられた複数の低温流路層とが交互に積層されて形成された流路層積層体(以下、単に「積層体」ともいう)を備えたマイクロ流路熱交換器(プレート式の熱交換器:以下、単に「熱交換器」ともいう)が開示されている。この熱交換器では、高温流体および低温流体のいずれか一方の流体に対して感知点が接するように温度センサが積層体に取り付けられている。したがって、前述の特許文献に開示の水素ステーションにおいて、この熱交換器を水素充填装置に配設してブラインの温度を直接検出することにより、水素ガスを好適に冷却可能な温度となっているか否かを直ちに検出することが可能となる。
【0013】
しかしながら、上記の熱交換器では、高温流路層や低温流路層を構成するプレートの積層方向で温度センサを積層体に差し込んで感知点を流路内に突出させる構成が採用されている。この場合、上記の文献には具体的な開示が存在しないが、温度センサと積層体との間には、流路内を通過させられるブラインの漏出を回避するための封止材が配設されているものと推定される。ここで、積層体を構成する各プレートと、温度センサとでは、構成素材や形状などの相違により、熱膨張率が互いに相違する。したがって、上記の封止材としては、温度センサと積層体との間に生じる隙間が変動することを考慮して、弾性を有する素材で形成したものを採用する必要がある。このため、上記の熱交換器を長期に亘って使用したときには、封止材の弾性力が低下してブラインの漏出を招くおそれがあるため、これを回避するために、封止材を定期的に交換する必要があり、水素ステーションの運用コストが高騰することとなる。
【0014】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、ブラインの漏出を招くことなく、水素ガスを好適に冷却可能な温度であるか否かを速やかに検出させ得るプレート式熱交換器、およびそのようなプレート式熱交換器を備えた水素ガス冷却システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成すべく、請求項1記載のプレート式熱交換器は、水素ガスの通過が可能な第1の流体通過用溝が形成された第1の溝形成領域を有する第1の板体と、冷却用流体の通過が可能な第2の流体通過用溝が形成された第2の溝形成領域を有する第2の板体とを少なくとも含む複数の板体が予め規定された積層順序で積層されて一体化された積層体を備え、前記第1の流体通過用溝を通過する前記水素ガスと前記第2の流体通過用溝を通過する前記冷却用流体との熱交換によって当該水素ガスを冷却可能に構成されたプレート式熱交換器であって、前記積層体を構成する前記各板体の積層方向において当該積層体の表面から凹まされて、当該積層体の温度を検出可能な温度検出体を挿入可能に構成された挿入用凹部が当該積層体に形成されている。
【0016】
また、請求項2記載のプレート式熱交換器は、請求項1記載のプレート式熱交換器において、前記挿入用凹部は、前記第1の板体における前記第1の溝形成領域と前記第2の板体における前記第2の溝形成領域とが前記積層方向において重なる部位に形成されている。
【0017】
また、請求項3記載のプレート式熱交換器は、水素ガスの通過が可能な第1の流体通過用溝が形成された第1の溝形成領域を有する第1の板体と、冷却用流体の通過が可能な第2の流体通過用溝が形成された第2の溝形成領域を有する第2の板体とを少なくとも含む複数の板体が予め規定された積層順序で積層されて一体化された積層体を備え、前記第1の流体通過用溝を通過する前記水素ガスと前記第2の流体通過用溝を通過する前記冷却用流体との熱交換によって当該水素ガスを冷却可能に構成されたプレート式熱交換器であって、前記積層体を構成する前記各板体の板面方向において当該積層体の表面から凹まされて、当該積層体の温度を検出可能な温度検出体を挿入可能に構成された挿入用凹部が当該積層体に形成されている。
【0018】
また、請求項4記載のプレート式熱交換器は、請求項3記載のプレート式熱交換器において、前記挿入用凹部は、少なくとも前記各板体の積層方向における中央部に積層された当該各板体の外縁部に形成された切欠きが当該積層方向において連通させられて構成されている。
【0019】
また、請求項5記載のプレート式熱交換器は、請求項1または3記載のプレート式熱交換器において、前記挿入用凹部に前記温度検出体が挿入されて前記積層体と一体化されている。
【0020】
また、請求項6記載の水素ガス冷却システムは、請求項1または3記載のプレート式熱交換器と、前記冷却用流体を冷却する冷却処理、および冷却した当該冷却用流体を前記プレート式熱交換器に供給する供給処理を実行する低温流体供給装置とを備え、前記低温流体供給装置は、前記温度検出体を介して前記プレート式熱交換器の温度を検出し、検出した温度に基づき、前記冷却処理における前記冷却用流体の冷却温度を変更する第1の処理、および前記供給処理における当該冷却用流体の供給量を変更する第2の処理の少なくとも一方を実行する処理部を備えている。
【0021】
また、請求項7記載の水素ガス冷却システムは、請求項1または3記載のプレート式熱交換器と、前記冷却用流体を冷却する冷却処理、および冷却した当該冷却用流体を前記プレート式熱交換器に供給する供給処理を実行する低温流体供給装置とを備え、前記低温流体供給装置は、前記温度検出体を介して前記プレート式熱交換器の温度を検出し、検出した温度を、前記水素ガスの供給源、および当該供給源から給気対象に当該水素ガスを給気する給気装置の少なくとも一方に報知する温度報知処理を実行する処理部を備えている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載のプレート式熱交換器では、第1の板体における第1の溝形成領域に形成された第1の流体通過用溝を通過する水素ガスと、第2の板体における第1の溝形成領域に形成された第2の流体通過用溝を通過する冷却用流体との熱交換によって水素ガスを冷却可能に構成された積層体を備えると共に、積層体を構成する各板体の積層方向において積層体の表面から凹まされて、積層体の温度を検出可能な温度検出体を挿入可能に構成された挿入用凹部が積層体に形成されている。
【0023】
したがって、請求項1記載のプレート式熱交換器によれば、低温流体供給装置から供給される低温の冷却用流体が第2の溝形成領域内の流路を通過させられたときに、プレート式熱交換器の表面よりも挿入用凹部内の方が冷却用流体の流路に近い分だけ、挿入用凹部内の温度検出体を介してプレート式熱交換器の温度低下を短時間で検出することができる。これにより、冷却用流体との熱交換によって水素ガスを好適に冷却可能な温度までプレート式熱交換器が温度低下したときに、これを短時間で検出することができる。また、プレート式熱交換器の温度に応じて低温流体供給装置の動作状態を変更する構成を採用したときに、冷却用流体の過冷却や供給過多に起因してプレート式熱交換器が過冷却状態となったり、冷却用流体の冷却不足や供給不足に起因してプレート式熱交換器の温度が水素ガスを好適に冷却するのが困難な温度に上昇したりする事態を回避することができる。さらに、流路内の冷却用流体に温度検出体が直接接触する構成ではなく、冷却用流体の流路に対して非貫通の挿入用凹部内に温度検出体を配設することで、熱膨張や熱収縮等に起因して温度検出体の取付け部位から冷却用流体の流路内の冷却用流体が流出する事態を回避することができる。
【0024】
また、請求項2記載のプレート式熱交換器では、挿入用凹部が、第1の板体における第1の溝形成領域と第2の板体における第2の溝形成領域とが積層方向において重なる部位に形成されている。したがって、請求項2記載のプレート式熱交換器によれば、冷却用流体と水素ガスとの熱交換が行われる部位の近傍に温度検出体を配置することができるため、プレート式熱交換器が水素ガスを好適に冷却可能な温度となったか否かを適格に検出することができる。
【0025】
また、請求項3記載のプレート式熱交換器では、第1の板体における第1の溝形成領域に形成された第1の流体通過用溝を通過する水素ガスと、第2の板体における第1の溝形成領域に形成された第2の流体通過用溝を通過する冷却用流体との熱交換によって水素ガスを冷却可能に構成された積層体を備えると共に、積層体を構成する各板体の板面方向において積層体の表面から凹まされて、積層体の温度を検出可能な温度検出体を挿入可能に構成された挿入用凹部が積層体に形成されている。
【0026】
したがって、請求項3記載のプレート式熱交換器によれば、低温流体供給装置から供給される低温の冷却用流体が第2の溝形成領域内の流路を通過させられたときに、プレート式熱交換器の表面よりも挿入用凹部内の方が冷却用流体の流路に近い分だけ、挿入用凹部内の温度検出体を介してプレート式熱交換器の温度低下を短時間で検出することができる。これにより、冷却用流体との熱交換によって水素ガスを好適に冷却可能な温度までプレート式熱交換器が温度低下したときに、これを短時間で検出することができる。また、プレート式熱交換器の温度に応じて低温流体供給装置の動作状態を変更する構成を採用したときに、冷却用流体の過冷却や供給過多に起因してプレート式熱交換器が過冷却状態となったり、冷却用流体の冷却不足や供給不足に起因してプレート式熱交換器の温度が水素ガスを好適に冷却するのが困難な温度に上昇したりする事態を好適回避することができる。さらに、流路内の冷却用流体に温度検出体が直接接触する構成ではなく、冷却用流体の流路に対して非貫通の挿入用凹部内に温度検出体を配設することで、熱膨張や熱収縮等に起因して温度検出体の取付け部位から冷却用流体の流路内の冷却用流体が流出する事態を回避することができる。
【0027】
また、請求項4記載のプレート式熱交換器では、挿入用凹部が、少なくとも各板体の積層方向における中央部に積層された各板体の外縁部に形成された切欠きが積層方向において連通させられて構成されている。したがって、請求項4記載のプレート式熱交換器によれば、例えば、各板体の積層および一体化によって積層体を形成した後に研削加工によって形成した挿入用凹部を備えた構成と比較して、第1の板体および第2の板体の製作時に切欠きを予め形成しておくことで、この板体を積層することで挿入用凹部が形成されるため、切削屑や切削油が積層体に付着することがなく、切削屑や切削油を除去する工程が不要となることから、プレート式熱交換器の製造コストを十分に低減することができる。また、各板体の積層に際して、切欠きが積層方向において連通するように第1の板体および第2の板体を積層することで、両板体の向きを誤って積層する事態を回避できるため、不良品が製造される事態を回避することができる。
【0028】
また、請求項5記載のプレート式熱交換器では、挿入用凹部に温度検出体が挿入されて積層体と一体化されている。したがって、請求項5記載のプレート式熱交換器によれば、温度検出体を介して冷却用流体の供給による温度変化を短時間で検出可能なプレート式熱交換器を提供することができる。
【0029】
また、請求項6記載の水素ガス冷却システムでは、冷却用流体を冷却する冷却処理、および冷却した冷却用流体をプレート式熱交換器に供給する供給処理を実行する低温流体供給装置が、温度検出体を介してプレート式熱交換器の温度を検出し、検出した温度に基づき、冷却処理における冷却用流体の冷却温度を変更する第1の処理、および供給処理における冷却用流体の供給量を変更する第2の処理の少なくとも一方を実行する処理部を備えている。
【0030】
したがって、請求項6記載の水素ガス冷却システムによれば、プレート式熱交換器における冷却用流体の流路の近傍が水素ガスの好適な冷却が可能な温度まで低下している状態において過剰に低温の冷却用流体、或いは過剰に多量の冷却用流体が低温流体供給装置からプレート式熱交換器に供給されてプレート式熱交換器が過冷却状態となるのを回避することができる。これにより、水素ガス冷却システムの運用コストを十分に低減することができる。
【0031】
また、請求項7記載の水素ガス冷却システムでは、冷却用流体を冷却する冷却処理、および冷却した冷却用流体をプレート式熱交換器に供給する供給処理を実行する低温流体供給装置が、温度検出体を介してプレート式熱交換器の温度を検出し、検出した温度を、水素ガスの供給源、および供給源から給気対象に水素ガスを給気する給気装置の少なくとも一方に報知する温度報知処理を実行する処理部を備えている。
【0032】
したがって、請求項7記載の水素ガス冷却システムによれば、プレート式熱交換器における冷却用流体の流路の近傍が水素ガスの好適な冷却が可能な温度まで低下したことを短時間で検出することができるため、プレート式熱交換器の温度が水素ガスを好適に冷却可能な温度に低下するまで水素ガスの給気が規制される構成が採用されているときに、冷却用流体の冷却および供給の開始後に水素ガスの給気を迅速に開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施の形態に係る水素ガス給気システム100の構成を示す構成図である。
【
図2】水素ガス給気システム100におけるディスペンサー1に配設された水素ガス冷却用熱交換器20の外観斜視図である。
【
図3】水素ガス冷却用熱交換器20の断面図である。
【
図4】水素ガス冷却用熱交換器20におけるブラインプレート42の平面図である。
【
図5】水素ガス冷却用熱交換器20における水素ガスプレート43の平面図である。
【
図6】水素ガス冷却用熱交換器20におけるベースプレート41、ブラインプレート42、水素ガスプレート43およびベースプレート44の積層状態について説明するための説明図である。
【
図7】他の実施の形態に係る水素ガス冷却用熱交換器20Aの外観斜視図である。
【
図8】水素ガス冷却用熱交換器20Aにおけるブラインプレート42aの平面図である。
【
図9】水素ガス冷却用熱交換器20Aにおける水素ガスプレート43aの平面図である。
【
図10】水素ガス冷却用熱交換器20Aにおけるベースプレート41、ブラインプレート42a、水素ガスプレート43aおよびベースプレート44aの積層状態について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して、プレート式熱交換器および水素ガス冷却システムの実施の形態について説明する。
【0035】
図1に示す水素ガス給気システム100は、前述の特許文献における水素ステーション(水素ステーションの設備)に対応するものであって、水素ガス燃料電池自動車などの給気対象Xbに対して、燃料としての水素ガスを給気することができるように構成されている。
【0036】
この水素ガス給気システム100は、一例として、水素ガス供給源Xaから供給される水素ガスを給気対象Xbに給気するディスペンサー1と、給気対象Xbに給気する水素ガスを冷却するための低温のブライン(「冷却用流体」の一例)をディスペンサー1に供給するブライン供給装置2とを備えている。この場合、水素ガス供給源Xaは、「供給源」の一例であって、天然ガスを改質して水素ガスを生成する水素ガス生成装置、または、別所で製造されて水素ガス給気システム100の設置場所に搬送された水素ガスを貯蔵可能な貯蔵タンクを備えている(いずれも図示せず)。
【0037】
一方、ディスペンサー1は、「給気装置」の一例であって、制御弁11、操作部12、処理部13および水素ガス冷却用熱交換器20を備えて構成されている。制御弁11は、処理部13の制御に従い、給気対象Xbに対する給気時に水素ガス供給源Xaから供給される水素ガスの流量を調整する。操作部12は、給気開始/停止などを指示する操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部13に出力する。処理部13は、操作部12のスイッチ操作、および後述するようにブライン供給装置2の処理部33から出力される温度データDtに基づいて水素ガス冷却用熱交換器20の温度を特定し、特定した温度に応じて制御弁11を制御して水素ガスの供給開始/停止や供給量(流量)を調整させる。
【0038】
水素ガス冷却用熱交換器20は、「プレート式熱交換器」の一例であって、ブライン供給装置2から供給される低温のブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却することができるように構成されている。この場合、本例の水素ガス給気システム100では、水素ガス冷却装置の構成要素の1つとして水素ガス冷却用熱交換器20がディスペンサー1内に設置されているが、このような構成に代えて、水素ガス供給源Xaからディスペンサー1に供給される水素ガスを冷却可能に「ディスペンサー」とは別個の構成要素として水素ガス冷却用熱交換器20を配設したり、ディスペンサー1を通過して給気対象Xbに給気される水素ガスを冷却可能に「ディスペンサー」とは別個の構成要素として水素ガス冷却用熱交換器20を配設したりすることもできる。
【0039】
この水素ガス冷却用熱交換器20は、
図2,3に示すように、積層体40、熱電対45および充填剤46などを備えて構成されている。なお、この水素ガス冷却用熱交換器20は、積層体40にブライン配管や水素ガス配管を接続するための接続具などを備えているが、水素ガス冷却用熱交換器20の構成に関する理解を容易とするために、それらについての図示および詳細な説明を省略する。
【0040】
積層体40は、「積層体」の一例であって、ブライン供給装置2から供給されるブラインの通過が可能な流路を構成するブラインプレート42と、水素ガス供給源Xaから供給される水素ガスの通過が可能な流路を構成する水素ガスプレート43とが一対のベースプレート41,44の間に交互に積層されて(「予め規定された積層順序」の一例)各プレート41~44の接合面同士が拡散接合によって接合されて一体化されている。この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器20における積層体40では、一例として、各プレート41~44がそれぞれ「板体」に相当し、これらの外形および大きさが互いに等しくなるように平面視矩形状にそれぞれ形成されている。なお、実際の水素ガス冷却用熱交換器20では、放熱および吸熱を回避するために、積層体40が断熱材で覆われたり、断熱用のケーシング内に収容されたりしているが、これら断熱材やケーシング等の図示および説明を省略する。
【0041】
ベースプレート41は、ステンレススチール等の金属板によってそれぞれ平面視方形状に形成されている。この場合、ベースプレート41は、ブラインプレート42や水素ガスプレート43よりも厚く、かつベースプレート44と同程度の厚みに形成されている。なお、本明細書において参照する各
図2,3,7では、「プレート式熱交換器」の構成に関する理解を容易とするために、プレート42,43の厚みを実際の厚みよりも厚く図示している。
【0042】
ブラインプレート42は、「第2の板体」の一例であって、ステンレススチール等の金属板によってそれぞれ平面視方形状に形成されている。このブラインプレート42には、
図4に示すように、溝形成領域A2(「第2の溝形成領域」の一例:同図における右下がりの斜線で塗り潰された領域)が規定されて、ブラインの通過が可能な「第2の流体通過用溝」が形成されている。また、このブラインプレート42には、ブライン供給装置2から供給されるブラインを「第2の流体通過用溝」に流入させるための貫通孔H2i、「第2の流体通過用溝」を通過させられたブラインを排出するための貫通孔H2o、および、後述するように水素ガスプレート43に設けられた貫通孔H3i,H3oに連通させられる貫通孔H2p,H2pが設けられている。
【0043】
水素ガスプレート43は、「第1の板体」の一例であって、上記のブラインプレート42と同様にステンレススチール等の金属板によってそれぞれ平面視方形状に形成されている。この水素ガスプレート43には、
図5に示すように、溝形成領域A3(「第1の溝形成領域」の一例:同図における左下がりの斜線で塗り潰された領域)が規定されて、水素ガスの通過が可能な「第1の流体通過用溝」が形成されている。また、この水素ガスプレート43には、水素ガス供給源Xaから供給される水素ガスを「第1の流体通過用溝」に流入させるための貫通孔H3i、「第1の流体通過用溝」を通過させられた水素ガスを排出するための貫通孔H3o、およびブラインプレート42の貫通孔H2i,H2oに連通させられる貫通孔H3p,H3pが設けられている。
【0044】
ベースプレート44は、その外形および大きさや厚みがベースプレート41と同様となるように金属板で平面視方形状に形成されている。これにより、各プレート41~44の積層方向における端部に位置するベースプレート41,44が十分な厚みに形成されている本例の積層体40では、その物理的強度(水素ガスやブラインの内圧が加わったときや、外力が加わったときの耐変形能力)が十分に高くなっている。
【0045】
このベースプレート44には、
図2,6に示すように、ブラインプレート42の貫通孔H2iおよび水素ガスプレート43における一方の貫通孔H3pに連通させられる貫通孔H4ai、ブラインプレート42の貫通孔H2oおよび水素ガスプレート43における他方の貫通孔H3pに連通させられる貫通孔H4ao、ブラインプレート42における一方の貫通孔H2pおよび水素ガスプレート43の貫通孔H3iに連通させられる貫通孔H4bi、並びに、ブラインプレート42における他方の貫通孔H2pおよび水素ガスプレート43の貫通孔H3oに連通させられる貫通孔H4boが形成されている。
【0046】
この場合、本例の水素ガス給気システム100(ディスペンサー1)では、積層体40のベースプレート44に形成された貫通孔H4aiがブラインの流入口として機能して、ブライン供給装置2において冷却されたブラインを水素ガス冷却用熱交換器20に供給するための配管が貫通孔H4aiに接続されている。また、貫通孔H4aoがブラインの排出口として機能して、水素ガス冷却用熱交換器20における水素ガスとの熱交換によって温度上昇したブラインをブライン供給装置2に液送するための配管が貫通孔H4aoに接続されている。また、貫通孔H4biが水素ガスの流入口として機能して、水素ガス供給源Xaから供給される水素ガスを水素ガス冷却用熱交換器20に導入するための配管が貫通孔H4biに接続されている。また、貫通孔H4boが水素ガスの排出口として機能して、水素ガス冷却用熱交換器20におけるブラインとの熱交換によって冷却された水素ガスを給気対象Xbに供給するための配管が貫通孔H4boに接続されている。
【0047】
また、
図3に示すように、このベースプレート44における積層体40の表面を構成する一面(ブラインプレート42や水素ガスプレート43が存在する側の裏面)の中央部には、凹部M(厚み方向において非貫通の穴)が形成されている。この場合、凹部Mは、「温度検出体を挿入可能に構成された挿入用凹部」の一例であって、積層体40を構成する各プレート41~44の積層方向において積層体40の表面(ベースプレート44の表面)から凹まされている。この凹部Mは、
図6に示すように、各プレート41~44の積層方向に沿って積層体40を見たときに、ブラインプレート42の溝形成領域A2と水素ガスプレート43の溝形成領域A3とが重なる領域A23の中央部に形成されている。
【0048】
この場合、
図4,5に示すように、本例の水素ガス冷却用熱交換器20では、ブラインプレート42の溝形成領域A2に設けられた「第2の流体通過用溝」内を貫通孔H2iから貫通孔H2oに向かってブラインが通過させられる方向(ブラインの流動方向:
図4に白抜きの矢印で示す方向)と、水素ガスプレート43の溝形成領域A3に設けられた「第1の流体通過用溝」内を貫通孔H3iから貫通孔H3oに向かって水素ガスが通過させられる方向(水素ガスの流動方向:
図5に白抜きの矢印で示す方向)とが逆向きとなるように各プレート41~44が積層されている(ブラインと水素ガスとが対向流となる構成の採用)。また、上記の凹部Mは、溝形成領域A2内の「第2の流体通過用溝」(ブラインの流路)における流路長方向の中央部と、溝形成領域A3内の「第1の流体通過用溝」(水素ガスの流路)における流路長方向の中央部とが各プレート41~44の積層方向において重なる部位に形成されている。
【0049】
熱電対45は、「積層体の温度を検出可能な温度検出体」の一例であって、
図3に示すように、積層体40の温度を検出可能に積層体40の凹部Mに挿入された状態で充填剤46によって積層体40に固定されている。この熱電対45は、信号線45a(
図1~3参照)を介してブライン供給装置2における後述の処理部33に接続されている。なお、本例では、熱電対45、およびこれを積層体40に固定するための充填剤46を水素ガス冷却用熱交換器20の構成要素として備えた例(「温度検出体」、およびこれを「積層体」に固定するための「固定部材」を備えて「プレート式熱交換器」を構成した例)について説明するが、「温度検出体」や「固定部材」については、「プレート式熱交換器」の構成要素とせずに、別途用意した「温度検出体」を任意の「固定部材」によって「積層体」の「挿入用凹部」に挿入して固定する構成を採用することもできる。
【0050】
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器20では、各プレート41~44の積層方向に沿って積層体40を見たときに、貫通孔H4ai(流入口)から貫通孔H4ao(排出口)に向かって流動させられるブラインと、貫通孔H4bi(流入口)から貫通孔H4bo(排出口)に向かって流動させられる水素ガスとが対向流となるように各貫通孔H4ai,H4ao,H4bi,H4boの位置が規定されている。また、本例の水素ガス冷却用熱交換器20では、各プレート41~44の積層方向に沿って積層体40を見たときに、ブラインの流路における流路長方向の中央部と、水素ガスの流路における流路長方向の中央部とが重なる部位に凹部Mが形成されて熱電対45が配設されている。したがって、水素ガス冷却用熱交換器20では、後述するように、ブライン供給装置2からのブラインの供給が開始されて水素ガス冷却用熱交換器20の温度が徐々に低下させられるときや、ブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却するときに、水素ガス冷却用熱交換器20の平均的な温度を熱電対45に検出させることが可能となっている。
【0051】
ブライン供給装置2は、「低温流体供給装置」の一例であって、
図1に示すように、ブライン冷却部31、ブラインポンプ32および処理部33を備えている。なお、ブライン供給装置2には、水素ガス冷却用熱交換器20から回収したブラインを一時的に貯留するブラインタンクなどを備えているが、水素ガス給気システム100の構成についての理解を容易とするために、それらについての図示および詳細な説明を省略する。
【0052】
ブライン冷却部31は、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を備え、処理部33の制御に従ってフロン(冷媒)との熱交換によってブラインを冷却する。ブラインポンプ32は、処理部33の制御に従い、ブライン冷却部31によって冷却されたブラインをディスペンサー1(水素ガス冷却用熱交換器20)に向けて液送する。この場合、本例の水素ガス給気システム100では、ブラインポンプ32がブライン冷却部31から水素ガス冷却用熱交換器20にブラインを液送することによって水素ガス冷却用熱交換器20からブライン冷却部31にブラインが液送されるようにブラインの循環路が形成されている。
【0053】
処理部33は、「処理部」の一例であって、ブライン供給装置2を総括的に制御する。具体的には、処理部33は、ブライン冷却部31(蒸発器)においてブラインを冷却する処理(「冷却処理」の一例)の実行時に圧縮機を制御してブラインの冷却に必要かつ十分な量の冷媒を圧縮させると共に、膨張弁を制御してブラインの冷却に必要かつ十分な量の冷媒を蒸発器に供給させる。また、処理部33は、ブライン冷却部31によるブラインの冷却処理と並行してブラインポンプ32を制御することにより、ブライン供給装置2から水素ガス冷却用熱交換器20にブラインを供給する処理(ブライン冷却部31と水素ガス冷却用熱交換器20との間でブラインを循環させる処理:「供給処理」の一例)を実行する。
【0054】
また、処理部33は、熱電対45を介して水素ガス冷却用熱交換器20の温度を検出し、検出した温度に基づき、上記の「冷却処理」におけるブラインの冷却温度を変更する処理(「第1の処理」の一例)、および上記の「供給処理」におけるブラインの供給量を変更する処理(「第2の処理」の一例)を実行する。さらに、処理部33は、熱電対45を介して検出した水素ガス冷却用熱交換器20の温度を特定可能な温度データDtを生成し、生成した温度データDtをディスペンサー1の処理部13報知する処理(「温度報知処理」の一例)を実行する。
【0055】
なお、この水素ガス給気システム100の例では、上記のブライン供給装置2、およびディスペンサー1に配設されている水素ガス冷却用熱交換器20と、これらを相互に接続する配管とで「水素ガス冷却システム」が構成されている。
【0056】
次に、上記の水素ガス給気システム100によって給気対象Xbに水素ガスを給気する際の各部の動作例について説明する。
【0057】
この水素ガス給気システム100では、設備の稼働時には、ブライン供給装置2における「冷却処理」および「供給処理」が実行されることで、ブライン供給装置2、および水素ガス冷却用熱交換器20内やブライン循環路内のブラインの温度が低温となっている。しかしながら、前述したように、営業終了時や、設備の保守・メンテナンス時などに設備が停止させられたときには、「冷却処理」や「供給処理」が実行されない状態となることで、ブライン供給装置2、および水素ガス冷却用熱交換器20内やブライン循環路内のブラインの温度が徐々に上昇する。したがって、営業開始時や保守・メンテナンスの終了時に設備を再稼働させた直後、または設置完了後の最初の稼働時には、水素ガス冷却用熱交換器20の温度が、水素ガスを好適な温度まで冷却可能な温度よりも高い温度となっている。
【0058】
そこで、本例の水素ガス給気システム100では、前述したように、ブライン供給装置2の処理部33が、水素ガス冷却用熱交換器20に固定されている熱電対45を介して水素ガス冷却用熱交換器20の温度を特定し、特定した温度に応じて、「冷却処理」におけるブラインの冷却温度(ブライン冷却部31によるブラインの目標冷却温度)や、「供給処理」におけるブラインの供給量(ブラインポンプ32によるブラインの液送量)を調整する処理を実行すると共に、温度データDtを生成してディスペンサー1の処理部13に送信する(特定した温度を報知する)処理を実行する。
【0059】
具体的には、この水素ガス給気システム100では、停止状態から稼働状態に移行させられたときに、処理部33がブライン冷却部31を制御して「冷却処理」を開始させると共に、ブラインポンプ32を制御して「供給処理」を開始させる。また、処理部33は、熱電対45を介して水素ガス冷却用熱交換器20の温度を特定して温度データDtを生成し、生成した温度データDtをディスペンサー1の処理部13に出力する(「温度報知処理」の一例)。
【0060】
この際に、熱電対45を介して特定される水素ガス冷却用熱交換器20の温度は、水素ガスを好適に冷却可能な温度よりも高い温度となっている。したがって、ディスペンサー1の処理部13は、この時点(稼働開始直後)に給気対象Xbに対する給気を行うよう操作部12が操作された場合であっても、ディスペンサー1(処理部33)から出力された温度データDtに基づいて特定される水素ガス冷却用熱交換器20の温度が予め規定された温度(水素ガスを好適に冷却可能な温度)に低下するまで、制御弁11を制御して水素ガス供給源Xaから給気対象Xbへの給気を規制する。これにより、水素ガスを好適に冷却するのが困難な状態のディスペンサー1(水素ガス冷却用熱交換器20)を水素ガスが通過させられて水素ガス供給源Xaに対して過剰に高温の水素ガスが給気される事態が確実に回避される。
【0061】
また、ブライン供給装置2の処理部33は、ディスペンサー1(処理部13)に対する温度データDtの出力の処理を継続して繰り返し実行すると共に、特定した水素ガス冷却用熱交換器20の温度と、水素ガス冷却用熱交換器20に供給すべきブラインの目標温度(水素ガス冷却用熱交換器20において水素ガスを好適に冷却可能なブラインの温度)との差に応じて、ブライン冷却部31の稼働率(圧縮機の回転数や膨張弁の開度)を制御すると共に(「第1の処理」の一例)、ブラインポンプ32の稼働率(モータの回転数)を制御する(「第2の処理」の一例)。
【0062】
具体的には、処理部33は、特定した温度と目標温度との差が大きいとき(すなわち、水素ガス冷却用熱交換器20の温度が高いとき)には、水素ガス冷却用熱交換器20において水素ガスを好適に冷却可能となるまでの時間を短縮するために、ブライン冷却部31およびブラインポンプ32の稼働率をそれぞれ上昇させる。これにより、ブライン冷却部31や3ブライン供給装置2の稼働率を変更させない構成と比較して、水素ガス冷却用熱交換器20の温度を短時間で低下させることができる。
【0063】
また、処理部33は、特定した温度と目標温度との差が小さいとき(すなわち、水素ガス冷却用熱交換器20の温度がある程度低いとき)には、ブライン冷却部31およびブラインポンプ32の稼働率をそれぞれ低下させる。これにより、ブライン冷却部31や3ブライン供給装置2の稼働率を変更させない構成と比較して、水素ガス冷却用熱交換器20が過剰に温度低下する事態(水素ガスの冷却に不必要な過冷却状態となる事態)を回避できると共に、ブライン冷却部31やブラインポンプ32の消費電力量を十分に低減することができる。
【0064】
ここで、水素ガス給気システム100の停止時に水素ガス冷却用熱交換器20が温度上昇した状態において上記のようにブライン供給装置2から低温のブラインが水素ガス冷却用熱交換器20に供給されたときに、ブラインプレート42における「第2の流体通過用溝」(ブラインの流路)の近傍は、供給されたブラインとの熱交換によって比較的短時間で温度低下させられる。しかしながら、「第2の流体通過用溝」から大きく離れている「積層体40の表面部位」については、「第2の流体通過用溝」から「表面部位」に向かってブラインの冷熱が徐々に伝熱して温度低下させられるため、その温度が、水素ガスの冷却に適した温度に低下するまでに長い時間を要することとなる。このため、積層体40の表面部位の温度を検出して各部の動作を制御する構成を採用したときには、「第2の流体通過用溝」の近傍に位置している「第1の流体通過用溝」(水素ガスの流路)が十分に温度低下して水素ガスを好適に冷却可能な状態となっているにも拘わらず、表面部位の温度が十分に低下するまで、ブライン冷却部31やブラインポンプ32の稼働率を向上させた状態が維持されると共に、水素ガスの給気が規制された状態が維持されることとなる。
【0065】
これに対して、本例の水素ガス給気システム100(水素ガス冷却用熱交換器20)では、ベースプレート41に形成した凹部M内に熱電対45が固定されている。したがって、凹部M内の方が積層体40の表面部位よりも「第2の流体通過用溝」に近い分だけ、低温のブラインの供給が開始されてから、熱電対45を介して検出される水素ガス冷却用熱交換器20の温度が「水素ガスを好適に冷却可能な温度」まで低下したと特定されるまでに要する時間が短縮される。このため、ブライン冷却部31やブラインポンプ32の稼働率を向上させた状態を維持したり、水素ガスの給気を規制した状態を維持したりする時間を短時間とすることが可能となっている。
【0066】
一方、ディスペンサー1では、処理部13がブライン供給装置2(処理部33)から逐次出力される温度データDtに基づいて特定される水素ガス冷却用熱交換器20の温度が、上記の予め規定された温度まで低下したときに、水素ガス冷却用熱交換器20において水素ガスを好適に冷却可能な状態になったと判別し、水素ガス供給源Xaから給気対象Xbへの給気の規制を解除する。したがって、操作部12の操作によって給気対象Xbに対する水素ガスの給気の開始を指示されたときに、処理部13は、制御弁11を制御して水素ガス供給源Xaから給気対象Xbに向かって水素ガスを流動させる。この際には、制御弁11を通過した水素ガスが水素ガス冷却用熱交換器20においてブラインとの熱交換によって冷却された後に給気対象Xbに給気される。これにより、過剰に高温の水素ガスが給気対象Xbに給気される事態が確実に回避される。
【0067】
ここで、給気対象Xbに対する水素ガスの給気を長時間に亘って継続したとき(一例として、給気対象Xbの燃料タンク(ガスタンク)が大きいとき)などには、水素ガス冷却用熱交換器20において水素ガスを連続して冷却することで、水素ガス冷却用熱交換器20の温度が徐々に上昇する。このため、水素ガスの給気(すなわち、水素ガス冷却用熱交換器20における水素ガスの冷却)をさらに継続するときに、好適な温度まで冷却するのが困難となるおそれが生じる。したがって、処理部33は、熱電対45を介して特定した水素ガス冷却用熱交換器20の温度が予め規定された温度を超えて上昇したときに、一例として、ブラインポンプ32の稼働率を上昇させることにより、ブライン供給装置2から水素ガス冷却用熱交換器20へのブラインの供給量を増加させる。これにより、水素ガス冷却用熱交換器20において水素ガスを好適に冷却可能な状態が維持される。
【0068】
この後、給気対象Xbに対する給気を完了するときには、処理部13が制御弁11を制御して水素ガス供給源Xaから給気対象Xbへの移動を停止させる。この際には、水素ガス冷却用熱交換器20における水素ガスとの熱交換が行われない状態においてブライン供給装置2から低温のブラインが供給されることにより、水素ガス冷却用熱交換器20の温度が徐々に低下する。したがって、処理部33は、ブライン冷却部31やブラインポンプ32の稼働率を待機稼働時(給気対象Xbに対する給気を行わない可動状態)に対応付けられた稼働率まで低下させると共に、熱電対45を介して特定される水素ガス冷却用熱交換器20の温度が、水素ガスの冷却を直ちに開始することができる程度の温度を超えて高温とならないように、ブライン冷却部31やブラインポンプ32の稼働率を逐次変化させる。これにより、給気対象Xbに対する水素ガスの給気を再び開始するときには、水素ガス冷却用熱交換器20において水素ガスを好適に冷却可能な状態が維持されているため、直ちに給気を開始することができる。
【0069】
このように、この水素ガス冷却用熱交換器20では、水素ガスプレート43における溝形成領域A3に形成された「第1の流体通過用溝」を通過する水素ガスと、ブラインプレート42における溝形成領域A2に形成された「第2の流体通過用溝」を通過するブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却可能に構成された積層体40を備えると共に、積層体40を構成する各プレート41~44の積層方向において積層体40の表面から凹まされて、積層体40の温度を検出可能な熱電対45を挿入可能に構成された凹部Mが積層体40に形成されている。
【0070】
したがって、この水素ガス冷却用熱交換器20によれば、ブライン供給装置2から供給される低温のブラインが溝形成領域A2内のブライン流路を通過させられたときに、水素ガス冷却用熱交換器20の表面よりも凹部M内の方がブライン流路に近い分だけ、凹部M内の熱電対45を介して水素ガス冷却用熱交換器20の温度低下を短時間で検出することができる。これにより、ブラインとの熱交換によって水素ガスを好適に冷却可能な温度まで水素ガス冷却用熱交換器20が温度低下したときに、これを短時間で検出することができる。また、水素ガス冷却用熱交換器20の温度に応じてブライン供給装置2の動作状態を変更する構成を採用したときに、ブラインの過冷却や供給過多に起因して水素ガス冷却用熱交換器20が過冷却状態となったり、ブラインの冷却不足や供給不足に起因して水素ガス冷却用熱交換器20の温度が水素ガスを好適に冷却するのが困難な温度に上昇したりする事態を回避することができる。さらに、ブライン流路内のブラインに熱電対45が直接接触する構成ではなく、ブライン流路に対して非貫通の凹部M内に熱電対45を配設することで、熱膨張や熱収縮等に起因して熱電対45の取付け部位からブライン流路内のブラインが流出する事態を回避することができる。
【0071】
また、この水素ガス冷却用熱交換器20では、凹部Mが、水素ガスプレート43における溝形成領域A3とブラインプレート42における溝形成領域A2とが積層方向において重なる部位(領域A23)に形成されている。したがって、この水素ガス冷却用熱交換器20によれば、ブラインと水素ガスとの熱交換が行われる部位の近傍に熱電対45を配置することができるため、水素ガス冷却用熱交換器20が水素ガスを好適に冷却可能な温度となったか否かを適格に検出することができる。
【0072】
また、この水素ガス冷却用熱交換器20では、凹部Mに熱電対45が挿入されて充填剤46によって積層体40と一体化されている。したがって、この水素ガス冷却用熱交換器20によれば、熱電対45を介してブラインの供給による温度変化を短時間で検出可能な水素ガス冷却用熱交換器20を提供することができる。
【0073】
また、この「水素ガス冷却システム」では、ブラインを冷却する「冷却処理」、および冷却したブラインを水素ガス冷却用熱交換器20に供給する「供給処理」を実行するブライン供給装置2が、熱電対45を介して水素ガス冷却用熱交換器20の温度を検出し、検出した温度に基づき、「冷却処理」におけるブラインの冷却温度を変更する「第1の処理」、および「供給処理」におけるブラインの供給量を変更する「第2の処理」の少なくとも一方を実行する処理部33を備えている。
【0074】
したがって、この「水素ガス冷却システム」によれば、水素ガス冷却用熱交換器20におけるブライン流路の近傍が水素ガスの好適な冷却が可能な温度まで低下している状態において過剰に低温のブライン、或いは過剰に多量のブラインがブライン供給装置2から水素ガス冷却用熱交換器20に供給されて水素ガス冷却用熱交換器20が過冷却状態となるのを回避することができる。これにより、水素ガス給気システム100の運用コストを十分に低減することができる。
【0075】
また、この「水素ガス冷却システム」では、ブラインを冷却する「冷却処理」、および冷却したブラインを水素ガス冷却用熱交換器20に供給する「供給処理」を実行するブライン供給装置2が、熱電対45を介して水素ガス冷却用熱交換器20の温度を検出し、検出した温度を、水素ガスの水素ガス供給源Xa、および水素ガス供給源Xaから給気対象Xbに水素ガスを給気するディスペンサー1の少なくとも一方(本例では、ディスペンサー1のみ)に報知する「温度報知処理」を実行する処理部33を備えている。
【0076】
したがって、この「水素ガス冷却システム」によれば、水素ガス冷却用熱交換器20におけるブライン流路の近傍が水素ガスの好適な冷却が可能な温度まで低下したことを短時間で検出することができるため、水素ガス冷却用熱交換器20の温度が水素ガスを好適に冷却可能な温度に低下するまで水素ガスの給気が規制される構成が採用されているときに、ブラインの冷却および供給の開始後に水素ガスの給気を迅速に開始させることができる。
【0077】
次に、「プレート式熱交換器」の他の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0078】
なお、前述の水素ガス冷却用熱交換器20の構成要素と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、水素ガス給気システム100における水素ガス冷却用熱交換器20以外の構成要素については、水素ガス冷却用熱交換器20を備えて構成した上記の例と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0079】
図7に示す水素ガス冷却用熱交換器20Aは、「プレート式熱交換器」の他の一例であって、ブライン供給装置2から供給される低温のブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却することができるように構成されている。この水素ガス冷却用熱交換器20Aは、水素ガス冷却用熱交換器20における積層体40に代えて積層体40aを備えて構成されている。
【0080】
積層体40aは、「積層体」の他の一例であって、ブライン供給装置2から供給されるブラインの通過が可能な流路を構成するブラインプレート42aと、水素ガス供給源Xaから供給される水素ガスの通過が可能な流路を構成する水素ガスプレート43aとが一対のベースプレート41,44aの間に交互に積層されて(「予め規定された積層順序」の他の一例)各プレート41,42a,43a,44aの接合面同士が拡散接合によって接合されて一体化されている。この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器20Aにおける積層体40aでは、一例として、各プレート41,42a,43a,44aがそれぞれ「板体」に相当し、これらの外形および大きさが互いに等しくなるように平面視矩形状にそれぞれ形成されている。
【0081】
ブラインプレート42aは、「第2の板体」の他の一例であって、
図8に示すように、「切欠き」の一例である切欠きN2が形成されている点を除き、水素ガス冷却用熱交換器20における積層体40を構成するブラインプレート42と同様に構成されている。また、水素ガスプレート43aは、「第1の板体」の他の一例であって、
図9に示すように、「切欠き」の他の一例である切欠きN3が形成されている点を除き、水素ガス冷却用熱交換器20における積層体40を構成する水素ガスプレート43と同様に構成されている。さらに、ベースプレート44aは、凹部Mが形成されていない点を除き、水素ガス冷却用熱交換器20における積層体40を構成するベースプレート44と同様に構成されている。
【0082】
この水素ガス冷却用熱交換器20A(積層体40a)では、
図7,10に示すように、各プレート41,42a,43a,44aの積層方向における中央部に積層された各ブラインプレート42aの外縁部に形成された切欠きN2、および水素ガスプレート43aの外縁部に形成された切欠きN3が、積層方向において連通させられて「温度検出体を挿入可能に構成された挿入用凹部」の他の一例である凹部Nが形成されている。また、
図10に示すように、この水素ガス冷却用熱交換器20A(積層体40a)では、積層体40aに形成された凹部N内に熱電対45が挿入されて充填剤46によって積層体40aと一体化されている。
【0083】
したがって、この水素ガス冷却用熱交換器20Aを備えた水素ガス給気システム100では、凹部N内の方が積層体40aの表面部位よりも「第2の流体通過用溝」に近い分だけ、低温のブラインの供給が開始されてから、熱電対45を介して検出される水素ガス冷却用熱交換器20の温度が「水素ガスを好適に冷却可能な温度」まで低下したと特定されるまでに要する時間が短縮されるため、前述の水素ガス冷却用熱交換器20を備えた構成と同様にして、ブライン冷却部31やブラインポンプ32の稼働率を向上させた状態を維持したり、水素ガスの給気を規制した状態を維持したりする時間を短時間とすることが可能となっている。
【0084】
この場合、この水素ガス冷却用熱交換器20Aでは、各プレート41,42a~44aの積層方向に沿って積層体40を見たときに、プレート42a,43aにおける切欠きN2,N3が、ベースプレート44の貫通孔H4ai,H4bi(流入口)に連通させられる貫通孔H2i,H3iよりも、ベースプレート44の貫通孔H4ao,H4bo(排出口)に連通させられる貫通孔H2o,H3oに近い一辺にそれぞれ形成されている。このため、この切欠きN2,N3がプレート42a,43aの積層方向において連通させられることで形成された凹部Nは、貫通孔H4ai,H4bi(流入口)よりも貫通孔H4ao,H4bo(排出口)に近い位置に存在している。
【0085】
したがって、この凹部N内に熱電対45が配設されている本例の水素ガス冷却用熱交換器20Aでは、ブライン供給装置2からのブラインの供給が開始されて水素ガス冷却用熱交換器20Aの温度が徐々に低下させられるときに、熱電対45を介して検出される温度に基づき、ブラインや水素ガスの流路における下流側においても水素ガスを十分に冷却可能な温度まで水素ガス冷却用熱交換器20Aが温度低下したか否かを確実に特定することが可能となっている。また、この水素ガス冷却用熱交換器20Aでは、ブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却するときに、熱電対45を介して検出される温度に基づき、貫通孔H4bo(排出口)から排出される水素ガスが十分に冷却されているか否かを確実に特定することが可能となっている。
【0086】
このように、この水素ガス冷却用熱交換器20Aでは、水素ガスプレート43aにおける溝形成領域A3に形成された「第1の流体通過用溝」を通過する水素ガスと、ブラインプレート42aにおける溝形成領域A2に形成された「第2の流体通過用溝」を通過するブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却可能に構成された積層体40aを備えると共に、積層体40aを構成する各プレート41,42a,43a,44aの板面方向において積層体40aの表面から凹まされて、積層体40aの温度を検出可能な熱電対45を挿入可能に構成された凹部Nが積層体40aに形成されている。
【0087】
したがって、この水素ガス冷却用熱交換器20Aによれば、ブライン供給装置2から供給される低温のブラインが溝形成領域A2内のブライン流路を通過させられたときに、水素ガス冷却用熱交換器20Aの表面よりも凹部N内の方がブライン流路に近い分だけ、凹部N内の熱電対45を介して水素ガス冷却用熱交換器20Aの温度低下を短時間で検出することができる。これにより、ブラインとの熱交換によって水素ガスを好適に冷却可能な温度まで水素ガス冷却用熱交換器20Aが温度低下したときに、これを短時間で検出することができる。また、水素ガス冷却用熱交換器20Aの温度に応じてブライン供給装置2の動作状態を変更する構成を採用したときに、ブラインの過冷却や供給過多に起因して水素ガス冷却用熱交換器20Aが過冷却状態となったり、ブラインの冷却不足や供給不足に起因して水素ガス冷却用熱交換器20Aの温度が水素ガスを好適に冷却するのが困難な温度に上昇したりする事態を好適回避することができる。さらに、ブライン流路内のブラインに熱電対45が直接接触する構成ではなく、ブライン流路に対して非貫通の凹部M内に熱電対45を配設することで、熱膨張や熱収縮等に起因して熱電対45の取付け部位からブライン流路内のブラインが流出する事態を回避することができる。
【0088】
また、この水素ガス冷却用熱交換器20Aでは、凹部Nが、少なくとも各プレート41,42a,43a,44aの積層方向における中央部に積層された各プレート42a,43aの外縁部に形成された切欠きN2,N3が積層方向において連通させられて構成されている。したがって、この水素ガス冷却用熱交換器20Aによれば、例えば、各プレート41,42a,43a,44aの積層および一体化(本例では、拡散接合)によって積層体40aを形成した後に研削加工によって形成した「挿入用凹部」を備えた構成と比較して、プレート42a,43aの製作時に切欠きN2,N3を予め形成しておくことで、このプレート42,43を積層することで凹部Nが形成されるため、切削屑や切削油が積層体40aに付着することがなく、切削屑や切削油を除去する工程が不要となることから、水素ガス冷却用熱交換器20Aの製造コストを十分に低減することができる。また、各プレート41,42a,43a,44aの積層に際して、切欠きN2,N3が積層方向において連通するようにプレート42a,43aを積層することで、プレート42a,43aの向きを誤って積層する事態を回避できるため、不良品が製造される事態を回避することができる。
【0089】
また、この水素ガス冷却用熱交換器20Aでは、凹部Nに熱電対45が挿入されて積層体40aと一体化されている。したがって、この水素ガス冷却用熱交換器20Aによれば、熱電対45を介してブラインの供給による温度変化を短時間で検出可能な水素ガス冷却用熱交換器20Aを提供することができる。
【0090】
なお、「プレート式熱交換器」や「水素ガス冷却システム」の構成は、上記の水素ガス給気システム100の構成の例に限定されない。
【0091】
例えば、積層体40の積層方向における表面を構成するベースプレート44に、その厚み方向においてベースプレート44を非貫通の凹部Mを形成して熱電対45を挿入した構成を例に挙げて説明したが、各「板体」の積層方向において「第1の板体」や「第2の板体」に達する深さの「挿入用凹部」を形成して「温度検出体」を挿入することもできる(図示せず)。このような構成を採用するときには、「第1の板体」に形成された「第1の流体通過用溝」や「第2の板体」に形成された「第2の流体通過用溝」が、「挿入用凹部」を構成する「孔」に連通することのないように、この「孔」の形成位置を避けて「第1の流体通過用溝」や「第2の流体通過用溝」を形成することにより、「水素ガス」や「冷却用流体」が「挿入用凹部」から漏出する事態を回避することができる。
【0092】
また、「積層体を構成する各板体の板面方向において積層体の表面から凹まされて温度検出体を挿入可能に構成された挿入用凹部」についても、板面方向における中央部に達する「切欠き」を「板体」に形成し、そような「切欠き」が積層方向において連通させられて形成された「挿入用凹部」に「温度検出体」を挿入することもできる(図示せず)。このような構成を採用するときにも、「第1の板体」に形成された「第1の流体通過用溝」や「第2の板体」に形成された「第2の流体通過用溝」が、「挿入用凹部」を構成する「切欠き」に連通することのないように、この「切欠き」の形成位置を避けて「第1の流体通過用溝」や「第2の流体通過用溝」を形成することにより、「水素ガス」や「冷却用流体」が「挿入用凹部」から漏出する事態を回避することができる。
【0093】
さらに、ブラインの流入口となる貫通孔H4ai、ブラインの排出口となる貫通孔H4ao、水素ガスの流入口となる貫通孔H4bi、および水素ガスの排出口となる貫通孔H4boのすべてを、一対のベースプレート41,44の一方(本例では、ベースプレート44)に形成した例について説明したが、ブラインの流入口を一対のベースプレート一方に形成し、かつブラインの排出口を一対のベースプレート他方に形成したり、水素ガスの流入口を一対のベースプレート一方に形成し、かつ水素ガスの排出口を一対のベースプレート他方に形成したりすることができる(図示せず)。この場合、ブラインの流入口と水素ガスの排出口とを同じベースプレートに形成すると共に、水素ガスの流入口とブラインの排出口とを同じベースプレートに形成することにより、ブラインと水素ガスとが各「板体」の積層方向において対向流となるようにそれぞれ通過させることができるため、ブラインとの熱交換による水素ガスの冷却効率を向上させることが可能となる。
【0094】
また、ブラインの流路および水素ガスの流路の中央部に凹部Mを形成して熱電対45を配設した水素ガス冷却用熱交換器20や、ブラインの流路および水素ガスの流路の下流側に凹部Nを形成して熱電対45を配設した水素ガス冷却用熱交換器20Aの構成を例に挙げて説明したが、「挿入用凹部」の形成位置(「温度検出体」の配設位置)はこの例に限定されない。
【0095】
例えば、「冷却用流体」の流路における上流側(「冷却用流体」の流入口の近傍)に「挿入用凹部」を形成して「温度検出体」を配設することにより、「温度検出体」によって検出される温度に基づき、「低温流体供給装置」から供給されて「プレート式熱交換器」に到達した「冷却用流体」の温度を特定することができ、これにより、「水素ガス」を好適に冷却可能な温度であるか否かを確実に特定することが可能となる。また、「冷却用流体」の流路における下流側(「冷却用流体」の排出口の近傍)に「挿入用凹部」を形成して「温度検出体」を配設することにより、「温度検出体」によって検出される温度に基づき、「水素ガス」との熱交換を完了した「低温流体」の温度を特定することができ、これにより、「水素ガス」を好適な温度まで十分に冷却することができているか否かを確実に特定することが可能となる。
【0096】
また、「水素ガス」の流路における上流側(「水素ガス」の流入口の近傍)に「挿入用凹部」を形成して「温度検出体」を配設することにより、「温度検出体」によって検出される温度に基づき、冷却すべき「水素ガス」の温度を特定することができ、これにより、「低温流体供給装置」から供給される「冷却用流体」との熱交換によって「水素ガス」を好適に冷却可能であるか否かを確実に特定することが可能となる。また、「水素ガス」の流路における下流側(「水素ガス」の排出口の近傍)に「挿入用凹部」を形成して「温度検出体」を配設することにより、「温度検出体」によって検出される温度に基づき、冷却された「水素ガス」の温度を特定することができ、これにより、「水素ガス」を好適な温度まで十分に冷却することができているか否かを確実に特定することが可能となる。
【0097】
また、ブライン供給装置2の処理部33が熱電対45を介して特定した水素ガス冷却用熱交換器20,20Aの温度をディスペンサー1の処理部13に報知する(処理部13に温度データDtを出力する)構成を例に挙げて説明したが、ディスペンサー1の処理部13に代えて(または、処理部13に加えて)、特定した水素ガス冷却用熱交換器20,20Aの温度を水素ガス供給源Xaに報知する(水素ガス供給源Xaに温度データDtを出力する)処理を「温度報知処理」として実行する構成を採用することもできる。また、「温度報知処理」を実行しない構成を採用することもできる。
【0098】
また、処理部33が「第1処理」および「第2処理」の双方を実行する構成を例に挙げて説明したが、「第1処理」および「第2処理」のいずれか一方だけを実行する構成や、「第1処理」および「第2処理」の双方を実行しない構成を採用することもできる。加えて、「第1の板体」および「第2の板体」が直接接するように積層されて積層体40,40aが形成された水素ガス冷却用熱交換器20,20Aの構成を例に挙げて説明したが、「第1の板体」と「第2の板体」との間に「仕切板」等の「任意の機能を有する板体」を挟み込んで「積層体」を構成することもできる(図示せず)。
【符号の説明】
【0099】
100 水素ガス給気システム
1 ディスペンサー
2 ブライン供給装置
11 制御弁
12 操作部
13,33 処理部
20,20A 水素ガス冷却用熱交換器
31 ブライン冷却部
32 ブラインポンプ
40,40a 積層体
41,44,44a ベースプレート
42,42a ブラインプレート
43,43a 水素ガスプレート
45 熱電対
45a 信号線
46 充填剤
A2,A3 溝形成領域
A23 領域
Dt 温度データ
H2i,H2o,H2p,H3i,H3o,H3p 貫通孔
H4ai,H4bi 導入口
H4ao,H4bo 吐出口
M,N 凹部
N2,N3 切欠き
Xa 水素ガス供給源
Xb 給気対象