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特開2024-130829合成繊維用処理剤含有組成物、合成繊維用第1処理剤含有組成物、合成繊維用第2処理剤含有組成物、合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法、合成繊維の処理方法、及び合成繊維
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130829
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤含有組成物、合成繊維用第1処理剤含有組成物、合成繊維用第2処理剤含有組成物、合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法、合成繊維の処理方法、及び合成繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 13/463 20060101AFI20240920BHJP
D06M 13/292 20060101ALI20240920BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20240920BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20240920BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
D06M13/463
D06M13/292
D06M15/53
D06M13/17
D06M101:32
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040743
(22)【出願日】2023-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕子
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA14
4L033BA39
4L033BA86
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】合成繊維用処理剤含有組成物の安定性を向上できるとともに、合成繊維用処理剤が付与された繊維のカード通過性を向上できる合成繊維用処理剤含有組成物等を提供する。
【解決手段】本発明の合成繊維用処理剤含有組成物は、成分(A)として有機リン酸エステルと、所定の第四級アンモニウムとの塩、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)として脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物等、並びに成分(C)として有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種を含有する合成繊維用処理剤と、大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒(S)とを含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを特徴とする合成繊維用処理剤含有組成物。
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【化1】
(一般式(1)において、
R
1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R
2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
1O)
q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
2O)
r-Hで示される基、
A
1O,A
2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【化2】
(一般式(2)において、
R
3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R
4,R
5,R
6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【請求項2】
前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)が、有機リン酸エステルと、前記一般式(1)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、
前記一般式(1)において、R1が炭素数4以上12以下のアルキル基、又は炭素数4以上12以下のアルケニル基である請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項3】
前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)が、有機リン酸エステルと、前記一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、
前記一般式(2)において、R3が炭素数3以上11以下のアルキル基、又は炭素数3以上11以下のアルケニル基である請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項4】
前記合成繊維用処理剤の全質量を100質量部とすると、前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)を5質量部以上25質量部以下、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を10質量部以上65質量部以下、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を30質量部以上75質量部以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項5】
前記合成繊維用処理剤の全質量100質量部に対して、前記溶媒(S)を18質量部以上233質量部以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項6】
前記溶媒(S)が、下記のアルコール(D)を含むものである請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
アルコール(D):炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール。
【請求項7】
前記合成繊維用処理剤の全質量100質量部に対して、前記アルコール(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する請求項6に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項8】
前記合成繊維が、ポリエステル繊維である請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項9】
前記合成繊維が、紡績糸製造用の短繊維である請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項10】
下記の合成繊維用第1処理剤含有組成物と、下記の合成繊維用第2処理剤含有組成物とをセットで含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
合成繊維用第1処理剤含有組成物:前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、前記溶媒(S)とを含むもの。
合成繊維用第2処理剤含有組成物:前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、前記溶媒(S)とを含むもの。
【請求項11】
使用時に下記の合成繊維用第2処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は該合成繊維用第2処理剤含有組成物と別剤として構成される合成繊維用第1処理剤含有組成物であって、下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを特徴とする合成繊維用第1処理剤含有組成物。
合成繊維用第2処理剤含有組成物:下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むもの。
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【化3】
(一般式(1)において、
R
1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R
2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
1O)
q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
2O)
r-Hで示される基、
A
1O,A
2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【化4】
(一般式(2)において、
R
3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R
4,R
5,R
6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【請求項12】
使用時に下記の合成繊維用第1処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は該合成繊維用第1処理剤含有組成物と別剤として構成される合成繊維用第2処理剤含有組成物であって、下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを特徴とする合成繊維用第2処理剤含有組成物。
合成繊維用第1処理剤含有組成物:下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むもの。
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【化5】
(一般式(1)において、
R
1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R
2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
1O)
q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
2O)
r-Hで示される基、
A
1O,A
2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【化6】
(一般式(2)において、
R
3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R
4,R
5,R
6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【請求項13】
溶媒に、請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤含有組成物、又は請求項11に記載の合成繊維用第1処理剤含有組成物及び請求項12に記載の合成繊維用第2処理剤含有組成物、を添加し、不揮発分濃度を0.1質量%以上5質量%以下にすることを特徴とする合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法。
【請求項14】
溶媒に、請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤含有組成物、又は請求項11に記載の合成繊維用第1処理剤含有組成物及び請求項12に記載の合成繊維用第2処理剤含有組成物、を添加し得られた合成繊維用処理剤の希釈液を合成繊維に付与することを特徴とする合成繊維の処理方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤含有組成物、合成繊維用第1処理剤含有組成物、合成繊維用第2処理剤含有組成物、合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法、合成繊維の処理方法、及び合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程や仕上げ工程において、繊維の摩擦を低減させる観点から、繊維の表面に繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1~3に開示の繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、アルキル基の炭素数が18~20であるアルキルリン酸エステルのカリウム塩、アルキルアミン類にエチレンオキシド付加した化合物のリン酸中和物を含有するポリエステル繊維用紡績油剤について開示する。
【0003】
特許文献2は、所定の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩、及び炭素数18以上のアルキル基を有する飽和アルキルリン酸エステルアルカリ金属塩を含有する合成繊維に適用される帯電防止剤について開示する。
【0004】
特許文献3は、所定のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなるA成分、所定の第4級アンモニウムホスフェート塩からなるB成分、所定のポリオルガノシロキサンからなるC成分を含有する繊維処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-224867号公報
【特許文献2】特開昭61-289182号公報
【特許文献3】特開2001-159078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、合成繊維用処理剤は、溶媒と混合し、合成繊維用処理剤含有組成物の形態とした際の安定性が求められている。また、特に合成繊維用処理剤が付与された合成繊維の高速条件でのカード工程の通過性の向上も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、所定の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及び溶媒(S)を配合した合成繊維用処理剤含有組成物の構成が好適であることを見出した。
【0008】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の合成繊維用処理剤含有組成物では、下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを要旨とする。
【0009】
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【0010】
【0011】
(一般式(1)において、
R1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A1O)q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A2O)r-Hで示される基、
A1O,A2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【0012】
【0013】
(一般式(2)において、
R3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R4,R5,R6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
【0014】
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【0015】
態様2は、態様1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)が、有機リン酸エステルと、前記一般式(1)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、前記一般式(1)において、R1が炭素数4以上12以下のアルキル基、又は炭素数4以上12以下のアルケニル基である。
【0016】
態様3は、態様1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)が、有機リン酸エステルと、前記一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、前記一般式(2)において、R3が炭素数3以上11以下のアルキル基、又は炭素数3以上11以下のアルケニル基である。
【0017】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記合成繊維用処理剤の全質量を100質量部とすると、前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)を5質量部以上25質量部以下、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を10質量部以上65質量部以下、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を30質量部以上75質量部以下の割合で含有する。
【0018】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記合成繊維用処理剤の全質量100質量部に対して、前記溶媒(S)を18質量部以上233質量部以下の割合で含有する。
【0019】
態様6は、態様1~5のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記溶媒(S)が、下記のアルコール(D)を含むものである。
アルコール(D):炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール。
【0020】
態様7は、態様6に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記合成繊維用処理剤の全質量100質量部に対して、前記アルコール(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する。
【0021】
態様8は、態様1~7のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記合成繊維が、ポリエステル繊維である。
態様9は、態様1~8のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記合成繊維が、紡績糸製造用の短繊維である。
【0022】
態様10は、態様1~9のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、下記の合成繊維用第1処理剤含有組成物と、下記の合成繊維用第2処理剤含有組成物とをセットで含む。
【0023】
合成繊維用第1処理剤含有組成物:前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、前記溶媒(S)とを含むもの。
【0024】
合成繊維用第2処理剤含有組成物:前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、前記溶媒(S)とを含むもの。
態様11の合成繊維用第1処理剤含有組成物では、使用時に下記の合成繊維用第2処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は該合成繊維用第2処理剤含有組成物と別剤として構成される合成繊維用第1処理剤含有組成物であって、下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを要旨とする。
【0025】
合成繊維用第2処理剤含有組成物:下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むもの。
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【0026】
【0027】
(一般式(1)において、
R1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A1O)q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A2O)r-Hで示される基、
A1O,A2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【0028】
【0029】
(一般式(2)において、
R3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R4,R5,R6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
【0030】
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【0031】
態様12の合成繊維用第2処理剤含有組成物では、使用時に下記の合成繊維用第1処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は該合成繊維用第1処理剤含有組成物と別剤として構成される合成繊維用第2処理剤含有組成物であって、下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを要旨とする。
【0032】
合成繊維用第1処理剤含有組成物:下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むもの。
【0033】
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【0034】
【0035】
(一般式(1)において、
R1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A1O)q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A2O)r-Hで示される基、
A1O,A2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【0036】
【0037】
(一般式(2)において、
R3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R4,R5,R6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
【0038】
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【0039】
態様13の合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法では、溶媒に、態様1~10のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物、又は態様11に記載の合成繊維用第1処理剤含有組成物及び態様12に記載の合成繊維用第2処理剤含有組成物、を添加し、不揮発分濃度を0.1質量%以上5質量%以下にすることを要旨とする。
【0040】
態様14の合成繊維の処理方法では、溶媒に、態様1~10のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物、又は態様11に記載の合成繊維用第1処理剤含有組成物及び態様12に記載の合成繊維用第2処理剤含有組成物、を添加し得られた合成繊維用処理剤の希釈液を合成繊維に付与することを要旨とする。
【0041】
態様15の合成繊維では、態様1~10のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、合成繊維用処理剤含有組成物の安定性を向上できるとともに、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のカード通過性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
<第1実施形態>
本発明に係る合成繊維用処理剤含有組成物(以下、単に処理剤含有組成物という。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0044】
本実施形態の処理剤含有組成物は、下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤(以下、単に処理剤という。)と、下記の溶媒(S)とを含有する。
【0045】
(成分(A):有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩)
本実施形態の処理剤含有組成物に供される成分(A)は、有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩である。処理剤中に成分(A)が含有されることにより、処理剤含有組成物の安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維の制電性を向上できる。
【0046】
成分(A)を構成する有機リン酸エステルとしては、有機ヒドロキシ化合物と無水リン酸とを反応させて得られる化合物が好ましい。有機ヒドロキシ化合物としては、有機リン酸エステルの原料となり得る1価アルコール、多価アルコール等が挙げられる。
【0047】
1価アルコールの具体例としては、例えば、(1)ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、2-デシルテトラデカノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、オレイルアルコール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。これらの有機ヒドロキシ化合物の中で、炭素数4以上22以下の有機ヒドロキシ化合物が好ましく、炭素数4以上18以下の有機ヒドロキシ化合物がより好ましい。
【0048】
多価アルコールとしては、例えば二価の脂肪族アルコールであるジオール化合物、三又は四価の脂肪族アルコール等が挙げられる。
ジオール化合物の具体例としては、例えば1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体等が挙げられる。
【0049】
三又は四価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、エリスリトール、1,2,3-ペンタトリオール、1,2,4-ペンタトリオール等が挙げられる。
【0050】
成分(A)の原料である無水リン酸は、五酸化二リンである。有機ヒドロキシ化合物と無水リン酸との反応は、公知の方法、例えば所定温度に加熱処理等を行うことにより実施できる。
【0051】
有機リン酸エステルは、(ポリ)アルキレンオキサイド構造が付加されているものであってもよい。
(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは1モル以上40モル以下、さらに好ましくは2モル以上30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0052】
上記の反応により得られる有機リン酸エステルは、例えば下記の一般式(3)~一般式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
(一般式(3)~(5)において、
R7:それぞれ炭素数4以上22以下のアルキル基、又は炭素数4以上22以下のアルケニル基を示す。
【0057】
A3,A4:それぞれエチレン基又はプロピレン基を示す。
(OA3)l,(OA4)m:それぞれオキシエチレンの繰り返し構造からなる化学種、オキシプロピレンの繰り返し構造からなる化学種、又はオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とからなるランダムの繰り返し構造からなる化学種若しくはブロックの繰り返し構造からなる化学種を示す。
【0058】
l,m:それぞれ0以上20以下の整数を示す。
Z:それぞれ-O-基又は-OH基を示す。
なお、1つの化合物中に複数のR7がある場合、R7は同一であっても、異なっていてもよい。
【0059】
本発明の効果の向上の観点から、上記一般式(3)~一般式(5)において、R7は、炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基が好ましい。
【0060】
有機リン酸エステルとして、上記の一般式(3)~一般式(5)で示される化合物が適用される場合、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。また、有機リン酸エステルとして、上記の一般式(3)~一般式(5)で示される化合物を全て含むことが好ましい。
【0061】
成分(A)を構成する第四級アンモニウムは、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される。
【0062】
【0063】
(一般式(1)において、
R1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基を示す。
【0064】
R2:炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は-(A1O)q-Hで示される基を示す。
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は-(A2O)r-Hで示される基を示す。
【0065】
A1O,A2O:それぞれ炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)を示す。
【0066】
q,r:それぞれ2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)を示す。)
【0067】
【0068】
(一般式(2)において、
R3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基を示す。
【0069】
R4,R5,R6:それぞれ炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。
n:2又は3の整数を示す。)
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)は、有機リン酸エステルと、前記一般式(1)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、前記一般式(1)において、R1が炭素数4以上12以下のアルキル基、又は炭素数4以上12以下のアルケニル基であるものが好ましい。かかる化合物の場合、処理剤の希釈液の濡れ性を向上させる。
【0070】
また、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)は、有機リン酸エステルと、前記一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、前記一般式(2)において、R3が炭素数3以上11以下のアルキル基、又は炭素数3以上11以下のアルケニル基であるものが好ましい。かかる化合物の場合、処理剤の希釈液の濡れ性を向上させる。
【0071】
成分(A)の具体例としては、例えばオクチルリン酸エステル・トリメチルオクチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレン(以下、POEという)ラウリルリン酸エステル・トリメチルオクチルアンモニウム塩、ブチルリン酸エステル・トリエチルオクチルアンモニウム塩、ステアリルリン酸エステル・トリエチルオクチルアンモニウム塩、オクチルリン酸エステル・トリメチルラウリルアンモニウム塩、POEオクチルリン酸エステル・トリエチルオクチルアミドプロピルアンモニウム塩、POEステアリルリン酸エステル・トリエチルオクチルアミドプロピルアンモニウム塩、オクチルリン酸エステル・トリメチルステアリルアンモニウム塩、ステアリルリン酸エステル・トリメチルステアリルアンモニウム塩、POE/ポリオキシプロピレン(以下、POPという)ブロック-オクチルリン酸エステル・トリエチルステアリルアミドプロピルアンモニウム塩、POE/POPランダム-ステアリルリン酸エステル・トリエチルステアリルアミドプロピルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0072】
これらの成分(A)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。なお、処理剤中には、反応しなかった第四級アンモニウムイオンが含まれることを妨げるものではない。
【0073】
処理剤の全質量を100質量部とすると、成分(A)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。かかる含有割合が2質量部以上の場合、処理剤が付与された繊維の制電性をより向上できる。かかる成分(A)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。かかる含有割合が30質量部以下の場合、処理剤が付与された繊維のカード通過性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0074】
(成分(B):(ポリ)オキシアルキレン誘導体)
本実施形態の処理剤含有組成物に供される成分(B)は、脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つである。処理剤中に成分(B)が含有されることにより、処理剤の希釈液の濡れ性を向上できる。また、処理剤含有組成物の安定性を向上できる。
【0075】
成分(B)の原料として用いられる脂肪族アルコールとしては、1価脂肪族アルコールであっても、多価アルコールであってもよい。また、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、直鎖脂肪族アルコールであっても、分岐脂肪族アルコールであってもよい。脂肪族アルコールの具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソトリアコンタノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの中で、炭素数8以上22以下の脂肪族アルコールが好ましい。
【0076】
成分(B)の原料として用いられる脂肪酸の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)レシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(6)ひまし油脂肪酸、ごま油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、菜種油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、豚脂脂肪酸、牛脂脂肪酸等の動物・植物油由来の脂肪酸等が挙げられる。これらの中で、炭素数8以上22以下の脂肪酸が好ましい。
【0077】
成分(B)の原料として用いられる有機アミンとしては、アルキル基、アルケニル基等の炭化水素基を有する脂肪族アミンが挙げられる。有機アミンは、一級アミン、二級アミン、三級アミンのいずれであってもよい。また、脂肪族アミンを構成する炭化水素基としては、直鎖であっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、有機アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物は、必要により酸で中和処理したものを使用してもよい。これらの中で、炭素数8以上22以下の有機アミンが好ましい。
【0078】
成分(B)の原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは1モル以上40モル以下、さらに好ましくは2モル以上30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。複数種類のアルキレンオキサイドが用いられる場合、ブロック付加物であってもランダム付加物であってもよい。
【0079】
成分(B)の具体例としては、例えば1-オクタノールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、1-ドデカノールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ステアリルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、オレイルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ベヘニルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、グリセリンに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ドデカン酸に対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、テトラデカン酸に対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ドデシルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ステアリルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。
【0080】
これらの成分(B)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤の全質量を100質量部とすると、成分(B)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。かかる含有割合が5質量部以上の場合、処理剤の希釈液の濡れ性をより向上できる。かかる成分(B)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは70質量部以下、より好ましくは65質量部以下である。かかる含有割合が70質量部以下の場合、処理剤が付与された繊維のカード通過性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0081】
(成分(C):有機リン酸エステル化合物)
本実施形態の処理剤含有組成物に供される成分(C)は、有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種である。処理剤中に成分(C)が含有されることにより、処理剤が付与された繊維のカード通過性を向上できる。
【0082】
成分(C)を構成する有機リン酸エステルとしては、有機ヒドロキシ化合物と無水リン酸とを反応させて得られる化合物が好ましい。具体的には、上記成分(A)欄で列挙したものを採用できる。成分(C)を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。
【0083】
成分(C)の具体例としては、例えばオクタデシルリン酸エステルカリウム塩、ヘキサデシルリン酸エステルカリウム塩、テトラデシルリン酸エステルカリウム塩、ドデシルリン酸エステルカリウム塩、POEヘキサデシルリン酸エステルカリウム塩、オクチルリン酸エステルカリウム塩、ブチルリン酸エステルカリウム塩等が挙げられる。
【0084】
成分(C)としては、本発明の効果に優れる観点から炭素数12以上22以下の、アルキル基又はアルケニル基を有する有機リン酸エステルが好ましい。
成分(C)の酸価は適宜設定される。酸価は10 KOHmg/g以上200 KOHmg/g以下が好ましい。
【0085】
これらの成分(C)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤の全質量を100質量部とすると、成分(C)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。かかる含有割合が25質量部以上の場合、処理剤が付与された繊維のカード通過性をより向上できる。かかる成分(C)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下である。かかる含有割合が80質量部以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0086】
(溶媒(S):溶媒)
本実施形態の処理剤含有組成物に供される溶媒(S)は、大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール(D)、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。脂肪族アルコール(D)の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール等が挙げられる。これらの溶媒は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0087】
これらの中で、処理剤含有組成物の安定性及び処理剤の希釈液の濡れ性をより向上できる優れる観点から脂肪族アルコール(D)が含まれるものが好ましい。
処理剤含有組成物において、前記処理剤の全質量100質量部に対して、溶媒(S)を好ましくは18質量部以上233質量部以下、より好ましくは20質量部以上230質量部以下の割合で含有する。かかる範囲に規定することより、処理剤含有組成物の安定性をより向上できる。また、処理剤含有組成物をさらに溶媒で希釈する際の均質性、操作性を向上できる。
【0088】
処理剤の全質量100質量部に対して、成分(D)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。かかる含有割合が0.01質量部以上の場合、処理剤の希釈液の濡れ性をより向上できる。かかる成分(D)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。かかる含有割合が15質量部以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0089】
(保存形態)
処理剤含有組成物は、下記の合成繊維用第1処理剤含有組成物(以下、「第1処理剤含有組成物」という)と、下記の合成繊維用第2処理剤含有組成物(以下、「第2処理剤含有組成物」という)とを含むセットとして構成されてもよい。処理剤含有組成物は、保存時又は流通時等において第1処理剤含有組成物と、第1処理剤含有組成物とは別剤として構成される第2処理剤含有組成物とから構成されている。処理剤含有組成物は、使用時に第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とが混合された混合物が調製される。
【0090】
第1処理剤含有組成物は、上述した有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤(以下、「第1処理剤」という)と、上述した溶媒(S)とを含んでいる。第1処理剤含有組成物に用いられる溶媒(S)は、製剤安定性をより向上できる観点から上述したアルコール(D)を含むことが好ましい。第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を30質量部以上100質量部未満で含有することが好ましい。
【0091】
第2処理剤含有組成物は、上述した有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤(以下、「第2処理剤」という)と、溶媒(S)とを含んでいる。第2処理剤含有組成物中において、第2処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、第2処理剤を20質量部以上70質量部以下で含有することが好ましい。
【0092】
上記第1実施形態の処理剤含有組成物の効果について説明する。
(1-1)上記第1実施形態の処理剤含有組成物では、上述した成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有する。したがって、処理剤含有組成物の安定性を向上できるとともに、処理剤が付与された繊維のカード通過性を向上できる。紡績工程の1つであるカード工程は、特に高速条件になるとウェブ斑が発生したり、ウェブが切れたりする問題が生じやすい。カード通過性の向上により、糸品質を向上できる。
【0093】
また、処理剤の希釈液の濡れ性を向上できる。そのため、特に原綿の製造においてトウシートの延伸工程で用いられる延伸工程用処理剤として適用される場合、繊維に均一に付着できるため、トウを均一な厚さで薄く広げることができる。また、繊維間摩擦を低減させることにより、単繊維切れを低減できる。それにより、生産性、品質性を向上できる。
【0094】
また、処理剤が付与された繊維の制電性を向上できる。特に繊維が短繊維の場合、紡績性を向上できる。近年、紡績工程の高速化が進んでいる。紡績工程が高速化すると、電気が起きやすくなる。特に、希釈液としてエマルション作成時にイオン交換水でなく硬水が使用されると、静電気が発生しやすい傾向がある。静電気は、スライバー延伸時の不均一さにつながる。硬水を使用した場合であっても電気特性の向上できる。また、良好なドラフト性により、良好な紡績糸が得られる。
【0095】
(1-2)上記第1実施形態の処理剤含有組成物では、保存時又は流通時等において、上述した成分(A)、成分(B)、及び溶媒(S)を含有する第1処理剤含有組成物と、上述した成分(C)及び溶媒(S)を含有する第2処理剤含有組成物とを含むセットとして構成されてもよい。かかる構成により、保存時又は流通時等において、処理剤の製剤安定性、特に保存安定性をより向上できる。
【0096】
<第2実施形態>
次に、本発明の第1処理剤含有組成物を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0097】
本実施形態の第1処理剤含有組成物では、上述した有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)及び上述した(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する第1処理剤と、上述した溶媒(S)とを含んでいる。第1処理剤含有組成物は、使用時に下記の第2処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は該第2処理剤含有組成物と別剤として構成される。つまり、使用時に第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とが混合された処理剤含有組成物としての混合物が調製される。合成繊維用第2処理剤含有組成物は、上述した有機リン酸エステル化合物(C)を含有する第2処理剤と、上述した溶媒(S)とを含んでいる。成分(A)~成分(C)、及び溶媒(S)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。第1処理剤含有組成物に用いられる溶媒(S)は、好ましくは上述したアルコール(D)を含んでいる。
【0098】
第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を30質量部以上100質量部未満で含有することが好ましい。かかる構成により、使用時に溶媒で希釈する際又は第2処理剤含有組成物と混合する際、混合性を向上できるとともに、組成物の安定性をより向上できる。
【0099】
上記第2実施形態の第1処理剤含有組成物の効果について説明する。上記第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)第2実施形態の第1処理剤含有組成物では、上述した成分(A)及び成分(B)を含有する第1処理剤と、溶媒(S)とを含み、使用時以外は上述した成分(C)を含有する第2処理剤と、溶媒(S)とを含む第2処理剤含有組成物と別剤として構成される。第1処理剤含有組成物は、使用時に第2処理剤含有組成物と併用され、第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とが混合された処理剤含有組成物としての混合物が調製される。したがって、保存時又は流通時等において、第1処理剤含有組成物の製剤安定性、特に保存安定性をより向上できる。また、第2処理剤含有組成物との混合比率を調整することにより、得られる処理剤含有組成物の成分を調整できる。また、第1処理剤含有組成物のみを第2処理剤含有組成物とは別剤として流通できる。
【0100】
<第3実施形態>
次に、本発明の第2処理剤含有組成物を具体化した第3実施形態を説明する。以下、第1,2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0101】
本実施形態の第2処理剤含有組成物では、上述した成分(C)を含有する第2処理剤と、上述した溶媒(S)とを含んでいる。第2処理剤含有組成物は、使用時に下記の第1処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は第1処理剤含有組成物と別剤として構成される。つまり、使用時に第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とが混合された処理剤含有組成物としての混合物が調製される。合成繊維用第1処理剤含有組成物は、上述した有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)と(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する第1処理剤と、上述した溶媒(S)とを含んでいる。成分(A)~成分(C)、及び溶媒(S)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
【0102】
第2処理剤含有組成物中において、第2処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、第2処理剤を20質量部以上70質量部以下で含有することが好ましい。かかる構成により、使用時に溶媒で希釈する際又は第1処理剤含有組成物と混合する際、混合性を向上できるとともに、組成物の安定性をより向上できる。
【0103】
上記第3実施形態の第2処理剤含有組成物の効果について説明する。第3実施形態では、第1,2実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)第3実施形態の第2処理剤含有組成物では、上述した成分(C)を含有する第2処理剤と、上述した溶媒(S)とを含み、使用時以外は上述した成分(A)及び成分(B)を含有する第1処理剤と、溶媒(S)とを含む第1処理剤含有組成物と別剤として構成される。第2処理剤含有組成物は、使用時に第1処理剤含有組成物と併用され、第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とが混合された処理剤含有組成物としての混合物が調製される。したがって、保存時又は流通時等において、第2処理剤含有組成物の製剤安定性、特に保存安定性をより向上できる。また、第1処理剤含有組成物との混合比率を調整することにより、得られる処理剤含有組成物の成分を調整できる。また、第2処理剤含有組成物のみを第1処理剤含有組成物とは別剤として流通できる。
【0104】
<第4実施形態>
本発明に係る合成繊維の処理方法及びそれにより得られた合成繊維を具体化した第4実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維の処理方法は、溶媒と処理剤含有組成物とを含む処理剤の希釈液を合成繊維に付与する方法である。より具体的には、処理剤の希釈液を、例えば短繊維製造工程の紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。処理剤の希釈液の調製方法は、特に制限されないが、例えば下記の処理剤の希釈液の調製方法を採用できる。
【0105】
処理剤の希釈液は、溶媒に、第1実施形態の処理剤含有組成物、又は第2実施形態の第1処理剤含有組成物及び第3実施形態の第2処理剤含有組成物、を添加し、不揮発分濃度を0.1質量%以上5質量%以下に調製することにより得られる。なお、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0106】
溶媒としては、第1実施形態欄の溶媒(S)が採用される。処理剤の希釈液の安定性をより向上できる観点から、最初に溶媒に第3実施形態の第2処理剤含有組成物を添加し、次に第2実施形態の第1処理剤含有組成物を添加する調製方法が好ましい。なお、処理剤含有組成物又は希釈液の調製には、ホモミキサーやホモジナイザー等を用いた公知の機械的乳化方法が適用してもよい。
【0107】
第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とを併用する形態は、第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な紡糸延伸性を得るための処理剤、処理剤含有組成物、又は希釈液を調製することが容易になる。それにより安定した繊維製造が可能となる。
【0108】
第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=1/9~9/1であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。繊維の処理方法は、上記のように得られた希釈液を、短繊維製造工程の紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。
【0109】
(合成繊維)
合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。これらの中で、本発明の効能の発揮に優れる観点からポリエステル繊維に適用されることが好ましい。
【0110】
(繊維の用途)
繊維の用途は、特に限定されず、例えば短繊維、紡績糸、不織布等が挙げられる。短繊維及び長繊維のいずれの繊維用途としても適用できるが、短繊維に適用されることが好ましい。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましい。また、短繊維は、紡績糸製造用のものであることが好ましい。
【0111】
(処理剤の付着処理)
処理剤の希釈液を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、溶媒を含まない処理剤として合成繊維に対して0.1質量%以上2質量%以下となるように付着させることが好ましく、0.3質量%以上1.2質量%以下となるように付着させることがより好ましい。
【0112】
処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えば処理剤含有組成物又は処理剤の希釈液を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。また、希釈液が付与された合成繊維は、公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。乾燥処理により水等の溶媒が揮発され、処理剤中に含有される成分が付着している合成繊維が得られる。
【0113】
上記第4実施形態の合成繊維の処理方法又は合成繊維の効果について説明する。
(4-1)第4実施形態の合成繊維の処理方法によって得られた合成繊維では、上述した成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有する処理剤が付着している。そのため、合成繊維のカード通過性、及び制電性を向上できる。
【0114】
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・処理剤、処理剤含有組成物、又は希釈液は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤等の品質保持のための安定化剤や制電剤、平滑剤、上記以外の界面活性剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の通常処理剤に用いられる成分を含有してもよい。なお、溶媒以外の通常処理剤等に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から処理剤中において10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【実施例0115】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、質量部を部と、また質量%は%とも表記する。
【0116】
試験区分1(処理剤含有組成物の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)としてオクチルリン酸エステル・トリメチルオクチルアンモニウム塩(A-1)15部(%)、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)として1-オクタノール1モルに対してエチレンオキサイドを4モル付加させた化合物(B-1)25部(%)、有機リン酸エステル化合物(C)としてオクタデシルリン酸エステル及びそのカリウム塩の混合物(C-1)60部(%)からなる処理剤と、溶媒(S)としてメタノール(D-1)を処理剤100部に対して1部及び水を処理剤100部に対して149部が秤量して容器に加えられた。そして、撹拌して均一に混合して実施例1の処理剤40%の処理剤含有組成物を調製した。
【0117】
(実施例2~42、比較例1~5)
実施例2~42、比較例1~5の処理剤含有組成物は、実施例1の処理剤含有組成物と同様の方法にて、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及び溶媒(S)を表1,2に示した割合で含むように調製した。
【0118】
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)の種類と含有量、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)の種類と含有量、有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量、アルコール(D)の種類と含有量、水の含有量が、表1,2の「有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)」欄、「(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)」欄、「有機リン酸エステル化合物(C)」欄、「アルコール(D)」欄、「水」欄にそれぞれ示される。
【0119】
【0120】
【0121】
表1,2に記載する有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及びアルコール(D)の詳細は以下のとおりである。
【0122】
(有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A))
以下の表3に示される化合物(A-1)~化合物(A-11)を使用した。有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)は、有機リン酸エステルが上述した一般式(3),一般式(4),一般式(5)で示される化合物のもの(以下、それぞれA1,A2,A3という)を適用した。有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)を構成する第四級アンモニウムは、上述した一般式(1)で示される化合物、又は一般式(2)で示される化合物を適用した。
【0123】
なお、比較例に相当する化合物として、ステアリルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩(rA-1)を使用した。
有機リン酸エステルの構成、及び第四級アンモニウムの構成を、表3の「有機リン酸エステル」欄、及び「第四級アンモニウム」欄にそれぞれ示す。
【0124】
また、原料として使用した有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)について、P核NMR測定を行った。P核NMR測定によって、前記A1,A2,A3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、A1,A2,A3に帰属されるP核NMR積分比率を求めた。
【0125】
まず、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)に対して、アルカリ過中和前処理を行った。前処理を行った試料に対して、31P-NMRを測定して、A1,A2,A3に帰属される各P核積分値を求めた。P核積分値は、31P-NMR(VALIAN社製の商品名;MERCURY plus NMR Spectrometor System、300MHz)の測定値を用いた。測定溶媒には重水を用いた。下記数式(1)、数式(2)、及び数式(3)に基づき、A1,A2,A3に帰属されるP核NMRの積分比率(%)を求めた。結果を表3の「(A1)/(A2)/(A3)のP核NMR積分比率」欄に示す。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
rA-1:ステアリルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩
((ポリ)オキシアルキレン誘導体(B))
B-1:1-オクタノール1モルに対してエチレンオキサイドを4モル付加させた化合物(炭素数8:原料の脂肪族アルコールの炭素数を示す(以下、同じ)。)
B-2:1-オクタノール1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(炭素数8)
B-3:1-ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(炭素数10)
B-4:ステアリルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物(炭素数18)
B-5:オレイルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを8モル付加させた化合物(炭素数18)
B-6:ベヘニルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物(炭素数22)
B-7:オレイルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを2モル付加させた後プロピレンオキサイドを6モル付加させた化合物(炭素数18)
B-8:ステアリルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを5モルとプロピレンオキサイド3モルをランダム付加させた化合物(炭素数18)
B-9:グリセリン1モルに対してエチレンオキサイドを10モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた化合物(炭素数3)
B-10:ドデカン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(炭素数12:原料の脂肪酸の炭素数を示す(以下、同じ)。)
B-11:テトラデカン酸1モルに対してエチレンオキサイドを15モル付加させた化合物(炭素数14)
B-12:ドデシルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを12モル付加させた化合物(炭素数12:原料の有機アミンの炭素数を示す(以下、同じ)。)
B-13:ドデシルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物と燐酸の塩(炭素数12)
B-14:ステアリルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物(炭素数18)
rB-1:グリセリンモノオクタナート
(有機リン酸エステル化合物(C))
以下の表4に示される化合物(C-1)~化合物(C-7)を使用した。有機リン酸エステル化合物(C)は、有機リン酸エステルが上述した一般式(3),一般式(4),一般式(5)で示される化合物のもの(以下、それぞれC1,C2,C3という)を適用した。
【0131】
有機リン酸エステル化合物の種類、有機リン酸エステルを構成するアルキル基の炭素数を、表4の「有機リン酸エステル化合物(C)」欄、「炭素数」欄にそれぞれ示す。
また、原料として使用した有機リン酸エステル化合物(C)について、P核NMR測定を行った。P核NMR測定によって、前記C1,C2,C3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、C1,C2,C3に帰属されるP核NMR積分比率を求めた。
【0132】
P核NMR測定は、「有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)」欄の記載と同様の方法にて行った。下記数式(4)、数式(5)、及び数式(6)に基づき、C1,C2,C3に帰属されるP核NMRの積分比率(%)を求めた。結果を表4の「(C1)/(C2)/(C3)のP核NMR積分比率」欄に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
また、有機リン酸エステル化合物(C)の酸価を測定した。酸価の測定方法は、以下に示す通りである。
有機リン酸エステル化合物(C)をエタノール/キシレン=1/2(容量比)の混合溶媒に溶解させ、電位差測定法により、0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液で滴定し、下記の数7から算出した。結果を表4の「酸価」欄に示す。
【0137】
【0138】
数7において、
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液のファクター
S:有機リン酸エステル化合物(C)採取量(g)
R:変曲点までの0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液の使用量(mL)
【0139】
【0140】
(アルコール(D))
D-1:メタノール
D-2:エタノール
D-3:プロパノール
D-4:ブタノール
試験区分2(処理剤の希釈液の調整方法)
試験区分1にて調製した各例の処理剤含有組成物を、約50℃に加温したイオン交換水に撹拌下で加え、完全に溶解させ、処理剤の5%希釈液を調製した。
【0141】
試験区分3(濡れ性の評価)
試験区分2で得られた処理剤の5%希釈液を室温のイオン交換水に撹拌下で加え、0.5%希釈液を調製した。処理剤の付与されていないポリエチレンテレフタレート製の短繊維で作製された不織布を用意した。その不織布に各処理剤の0.5%希釈液を5μL滴下し、完全に浸透するまでの時間を記録した。試験結果を表1,2の「濡れ性」欄に示す。
【0142】
・濡れ性の評価基準
◎(良好):浸透時間が140秒未満
○(可):浸透時間が140秒以上170秒未満
×(不良):浸透時間が170秒以上
試験区分4(カード通過性の評価)
試験区分2で得られた処理剤の5%希釈液を室温のイオン交換水に撹拌下で加え、処理剤の0.3%希釈液を調整した。処理剤の0.3%希釈液を、製綿工程で得られた繊度1.3×10-4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのセミダルのポリエステルステープル繊維に、処理剤としての付着量が0.15%となるようにスプレー給油法で付着させた。次に80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×65%RHの雰囲気下に一夜調湿して、処理剤を付着させた処理済みポリエステルステープル繊維の原綿を得た。このようにして得られた処理済みポリエステルステープル繊維の原綿30gを用いてミニチュアカード機(竹内製作所社製)を通過させて繊維ウェブを作製した。原綿がすべてカード機に入ってから20秒経過した時点での紡出量、繊維ウェブのネップ、及び風綿の発生状況に基づいて以下の基準で評価した。試験結果を表1,2の「カード通過性」欄に示す。
【0143】
・カード通過性の評価基準
◎(良好):カード通過量が98%以上、さらにネップ及び風綿がほとんど発生せず、良好な繊維ウェブが得られる場合
○(可):カード通過量が95%以上98%未満、さらにネップ又は風綿が若干見られるが、均質な繊維ウェブが得られる場合
×(不良):カード通過量が95%未満、又は製造時は風綿が見られ、繊維ウェブにネップが多く見られる場合
試験区分5(制電性の評価)
試験区分2で得られた処理剤の5%希釈液を室温下で硬水(市販のミネラルウォーター:硬度約300mg/L)に撹拌下で加え、処理剤の0.3%希釈液(硬水)を調製した。処理剤の0.3%希釈液(硬水)を製綿工程で得られた繊度1.3×10-4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのセミダルのポリエステルステープル繊維に、処理剤としての付着量が0.15%となるようにスプレー給油法で付着させた。次に80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×40%RHの雰囲気下に一夜調湿して、処理剤を付着させた処理済みポリエステルステープル繊維の原綿を得た。このようにして得られた処理済みポリエステルステープル繊維の原綿30gを用いてミニチュアカード機(竹内製作所社製)を通過させて繊維ウェブを作製した。紡出されたカードウェブの静電気を測定し、制電性を以下の基準で評価した。試験結果を表1,2の「制電性」欄に示す。
【0144】
・制電性の評価基準
◎(良好):発生静電気の電圧が0.1kV未満
○(可):発生静電気の電圧が0.1kV以上0.5kV未満
×(不良):発生静電気の電圧が0.5kV以上
試験区分6(製剤安定性の評価)
試験区分1で得られた各例の処理剤含有組成物を40℃にて1日~1月保管した。調整直後、1日経過後、1カ月経過後の外観を観察し、下記の基準に従って評価した。なお、処理剤含有組成物の粘度は以下の方法で観察した。処理剤含有組成物をポリプロピレン製透明容器(蓋つき、容量250mL)に150mL入れ90度傾けた時の流れる様子を観察し、下記の基準に従って評価した。試験結果を表1,2の「製剤安定性」欄に示す。
【0145】
・製剤安定性の評価基準
3点(良好):1日経過後及び1カ月経過後において、製剤調製直後のもの(STD)と比較して外観に変化がなく、容器を傾けた時に流れる様子に変化が見られない場合
2点(可):1日経過後では製剤調製直後のもの(STD)と比較して外観に変化がなく、また容器を傾けた時に流れる様子に変化が見られない場合であって、且つ1カ月経過後においては、わずかな分離が見られる場合、又は容器を傾けた時に流れる様子が製剤調製直後のもの(STD)と比較して遅くなっている場合
1点(不可):1日経過後において、わずかに分離が見られる場合、又は容器を傾けた時に流れる様子が製剤調製直後のもの(STD)と比較して遅くなっている場合
試験区分7(第1処理剤含有組成物の調製)
(第1処理剤含有組成物(I-1))
表5に示されるように、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)としてオクチルリン酸エステル・トリメチルオクチルアンモニウム塩(A-1)37.5部(%)、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)として1-オクタノール1モルに対してエチレンオキサイドを4モル付加させた化合物(B-1)62.5部(%)からなる第1処理剤と、溶媒(S)としてメタノール(D-1)を第1処理剤100部に対して2.5部及び水を第1処理剤100部に対して22.5部が秤量して容器に加えられた。そして、撹拌して均一に混合して第1処理剤80%の第1処理剤含有組成物(I-1)を調製した。
【0146】
(第1処理剤含有組成物(I-2)~(I-8))
第1処理剤含有組成物(I-2)~(I-8)は、第1処理剤含有組成物(I-1)と同様の方法にて、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、及び溶媒(S)を表5に示した割合で含むように調製した。なお、第1処理剤含有組成物(I-8)は、オクチルリン酸エステル・トリメチルオクチルアンモニウム塩(A-1)100質量部からなる第1処理剤として構成される。
【0147】
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)の種類と含有量、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)の種類と含有量、アルコール(D)の種類と含有量、水の含有量が、表5の「有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)」欄、「(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)」欄、「アルコール(D)」欄、「水」欄にそれぞれ示される。また、上記のように得られた各第1処理剤含有組成物について、試験区分6と同様の方法にて、製剤安定性を評価した。試験結果を表5の「製剤安定性」欄に示す。
【0148】
【0149】
試験区分8(第2処理剤含有組物の調製)
(第2処理剤含有組成物(II-1))
表6に示されるように、有機リン酸エステル化合物(C)としてオクタデシルリン酸エステルカリウム及びその塩の混合物(C-1)100部(%)からなる第2処理剤と、溶媒(S)として水を第2処理剤100部に対して150部を秤量して容器に加えた。そして、撹拌して均一に混合して第2処理剤40%の第2処理剤含有組成物(II-1)を調製した。
【0150】
(第2処理剤含有組成物(II-2)~(II-8))
第2処理剤含有組成物(II-2)~(II-8)は、有機リン酸エステル化合物(C)及び溶媒(S)を表6に示した割合で含むように調製した。有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量、及び溶媒(S)の種類と含有量を、表6の「有機リン酸エステル化合物(C)」欄、溶媒「(S)」欄にそれぞれに示す。また、上記のように得られた各第2処理剤含有組成物について、試験区分6と同様の方法にて、製剤安定性を評価した。試験結果を表6の「製剤安定性」欄に示す。
【0151】
【0152】
試験区分9(第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物から処理剤の希釈液の調製)
(実施例43)
試験区分8において調製した第2処理剤含有組成物(II-1)82部(%)を、約80℃に加温した所定量の半量のイオン交換水に撹拌下で加え、完全に溶解させる。溶解後、試験区分7において調製した第1処理剤含有組成物(I-1)18部(%)を撹拌下で加えて完全に溶解させる。溶解後、加温を止め、約25℃の残り半量のイオン交換水を一気に加えて均一になるまで撹拌することにより、実施例43の処理剤の希釈液を調製した。
【0153】
(実施例44~49、比較例6)
実施例44~49、比較例6の処理剤の希釈液は、実施例43の処理剤の希釈液と同様の方法にて、第1処理剤含有組成物及び第2処理剤含有組成物を表7に示した割合で含むように調製した。
【0154】
第1処理剤含有組成物の種類と含有量、第2処理剤含有組成物の種類と含有量を、表7の「第1処理剤含有組成物」欄、「第2処理剤含有組成物」欄にそれぞれ示す。
得られた各例の処理剤の希釈液を用いて、実施例1と同様の方法にて濡れ性、カード通過性について評価した。結果を表7の「濡れ性」欄、「カード通過性」欄にそれぞれ示す。
【0155】
【0156】
表1,7の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤含有組成物は、安定性を向上できる。また処理剤の希釈液の濡れ性を向上できる。また処理剤が付与された合成繊維は、カード通過性、及び制電性を向上できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを特徴とする合成繊維用処理剤含有組成物。
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):
炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【化1】
(一般式(1)において、
R
1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R
2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
1O)
q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
2O)
r-Hで示される基、
A
1O,A
2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【化2】
(一般式(2)において、
R
3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R
4,R
5,R
6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【請求項2】
前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)が、炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、前記一般式(1)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、
前記一般式(1)において、R1が炭素数4以上12以下のアルキル基、又は炭素数4以上12以下のアルケニル基である請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項3】
前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)が、炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、前記一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、
前記一般式(2)において、R3が炭素数3以上11以下のアルキル基、又は炭素数3以上11以下のアルケニル基である請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項4】
前記合成繊維用処理剤の全質量を100質量部とすると、前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)を5質量部以上25質量部以下、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を10質量部以上65質量部以下、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を30質量部以上75質量部以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項5】
前記合成繊維用処理剤の全質量100質量部に対して、前記溶媒(S)を18質量部以上233質量部以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項6】
前記溶媒(S)が、下記のアルコール(D)を含むものである請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
アルコール(D):炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール。
【請求項7】
前記合成繊維用処理剤の全質量100質量部に対して、前記アルコール(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する請求項6に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項8】
前記合成繊維が、ポリエステル繊維である請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項9】
前記合成繊維が、紡績糸製造用の短繊維である請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項10】
下記の合成繊維用第1処理剤含有組成物と、下記の合成繊維用第2処理剤含有組成物とをセットで含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物。
合成繊維用第1処理剤含有組成物:前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、前記溶媒(S)とを含むもの。
合成繊維用第2処理剤含有組成物:前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、前記溶媒(S)とを含むもの。
【請求項11】
使用時に下記の合成繊維用第2処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は該合成繊維用第2処理剤含有組成物と別剤として構成される合成繊維用第1処理剤含有組成物であって、下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを特徴とする合成繊維用第1処理剤含有組成物。
合成繊維用第2処理剤含有組成物:下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むもの。
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):
炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【化3】
(一般式(1)において、
R
1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R
2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
1O)
q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
2O)
r-Hで示される基、
A
1O,A
2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【化4】
(一般式(2)において、
R
3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R
4,R
5,R
6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【請求項12】
使用時に下記の合成繊維用第1処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は該合成繊維用第1処理剤含有組成物と別剤として構成される合成繊維用第2処理剤含有組成物であって、下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを特徴とする合成繊維用第2処理剤含有組成物。
合成繊維用第1処理剤含有組成物:下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むもの。
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):
炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【化5】
(一般式(1)において、
R
1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R
2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
1O)
q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A
2O)
r-Hで示される基、
A
1O,A
2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【化6】
(一般式(2)において、
R
3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R
4,R
5,R
6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【請求項13】
溶媒に、請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤含有組成物、又は請求項11に記載の合成繊維用第1処理剤含有組成物及び請求項12に記載の合成繊維用第2処理剤含有組成物、を添加し、不揮発分濃度を0.1質量%以上5質量%以下にすることを特徴とする合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法。
【請求項14】
溶媒に、請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤含有組成物、又は請求項11に記載の合成繊維用第1処理剤含有組成物及び請求項12に記載の合成繊維用第2処理剤含有組成物、を添加し得られた合成繊維用処理剤の希釈液を合成繊維に付与することを特徴とする合成繊維の処理方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする合成繊維。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤含有組成物、合成繊維用第1処理剤含有組成物、合成繊維用第2処理剤含有組成物、合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法、合成繊維の処理方法、及び合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程や仕上げ工程において、繊維の摩擦を低減させる観点から、繊維の表面に繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1~3に開示の繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、アルキル基の炭素数が18~20であるアルキルリン酸エステルのカリウム塩、アルキルアミン類にエチレンオキシド付加した化合物のリン酸中和物を含有するポリエステル繊維用紡績油剤について開示する。
【0003】
特許文献2は、所定の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩、及び炭素数18以上のアルキル基を有する飽和アルキルリン酸エステルアルカリ金属塩を含有する合成繊維に適用される帯電防止剤について開示する。
【0004】
特許文献3は、所定のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなるA成分、所定の第4級アンモニウムホスフェート塩からなるB成分、所定のポリオルガノシロキサンからなるC成分を含有する繊維処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-224867号公報
【特許文献2】特開昭61-289182号公報
【特許文献3】特開2001-159078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、合成繊維用処理剤は、溶媒と混合し、合成繊維用処理剤含有組成物の形態とした際の安定性が求められている。また、特に合成繊維用処理剤が付与された合成繊維の高速条件でのカード工程の通過性の向上も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、所定の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及び溶媒(S)を配合した合成繊維用処理剤含有組成物の構成が好適であることを見出した。
【0008】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の合成繊維用処理剤含有組成物では、下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを要旨とする。
【0009】
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【0010】
【0011】
(一般式(1)において、
R1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A1O)q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A2O)r-Hで示される基、
A1O,A2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【0012】
【0013】
(一般式(2)において、
R3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R4,R5,R6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
【0014】
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【0015】
態様2は、態様1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)が、炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、前記一般式(1)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、前記一般式(1)において、R1が炭素数4以上12以下のアルキル基、又は炭素数4以上12以下のアルケニル基である。
【0016】
態様3は、態様1に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)が、炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、前記一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、前記一般式(2)において、R3が炭素数3以上11以下のアルキル基、又は炭素数3以上11以下のアルケニル基である。
【0017】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記合成繊維用処理剤の全質量を100質量部とすると、前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)を5質量部以上25質量部以下、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を10質量部以上65質量部以下、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を30質量部以上75質量部以下の割合で含有する。
【0018】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記合成繊維用処理剤の全質量100質量部に対して、前記溶媒(S)を18質量部以上233質量部以下の割合で含有する。
【0019】
態様6は、態様1~5のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記溶媒(S)が、下記のアルコール(D)を含むものである。
アルコール(D):炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール。
【0020】
態様7は、態様6に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記合成繊維用処理剤の全質量100質量部に対して、前記アルコール(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する。
【0021】
態様8は、態様1~7のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記合成繊維が、ポリエステル繊維である。
態様9は、態様1~8のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、前記合成繊維が、紡績糸製造用の短繊維である。
【0022】
態様10は、態様1~9のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物において、下記の合成繊維用第1処理剤含有組成物と、下記の合成繊維用第2処理剤含有組成物とをセットで含む。
【0023】
合成繊維用第1処理剤含有組成物:前記有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、前記溶媒(S)とを含むもの。
【0024】
合成繊維用第2処理剤含有組成物:前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、前記溶媒(S)とを含むもの。
態様11の合成繊維用第1処理剤含有組成物では、使用時に下記の合成繊維用第2処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は該合成繊維用第2処理剤含有組成物と別剤として構成される合成繊維用第1処理剤含有組成物であって、下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを要旨とする。
【0025】
合成繊維用第2処理剤含有組成物:下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むもの。
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【0026】
【0027】
(一般式(1)において、
R1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A1O)q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A2O)r-Hで示される基、
A1O,A2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【0028】
【0029】
(一般式(2)において、
R3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R4,R5,R6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
【0030】
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【0031】
態様12の合成繊維用第2処理剤含有組成物では、使用時に下記の合成繊維用第1処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は該合成繊維用第1処理剤含有組成物と別剤として構成される合成繊維用第2処理剤含有組成物であって、下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを要旨とする。
【0032】
合成繊維用第1処理剤含有組成物:下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むもの。
【0033】
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A):炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩。
【0034】
【0035】
(一般式(1)において、
R1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基、
R2:炭素数1以上3以下のアルキル基、
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A1O)q-Hで示される基、
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は -(A2O)r-Hで示される基、
A1O,A2O:炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)、
q,r:2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)。)
【0036】
【0037】
(一般式(2)において、
R3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基、
R4,R5,R6:炭素数1以上3以下のアルキル基、
n:2又は3の整数。)
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B):脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つ。
【0038】
有機リン酸エステル化合物(C):有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種。
溶媒(S):大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒。
【0039】
態様13の合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法では、溶媒に、態様1~10のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物、又は態様11に記載の合成繊維用第1処理剤含有組成物及び態様12に記載の合成繊維用第2処理剤含有組成物、を添加し、不揮発分濃度を0.1質量%以上5質量%以下にすることを要旨とする。
【0040】
態様14の合成繊維の処理方法では、溶媒に、態様1~10のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤含有組成物、又は態様11に記載の合成繊維用第1処理剤含有組成物及び態様12に記載の合成繊維用第2処理剤含有組成物、を添加し得られた合成繊維用処理剤の希釈液を合成繊維に付与することを要旨とする。
【0041】
態様15の合成繊維では、態様1~10のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、合成繊維用処理剤含有組成物の安定性を向上できるとともに、合成繊維用処理剤が付与された合成繊維のカード通過性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
<第1実施形態>
本発明に係る合成繊維用処理剤含有組成物(以下、単に処理剤含有組成物という。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0044】
本実施形態の処理剤含有組成物は、下記の有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤(以下、単に処理剤という。)と、下記の溶媒(S)とを含有する。
【0045】
(成分(A):有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩)
成分(A)は、有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩が例示される。処理剤中に成分(A)が含有されることにより、処理剤含有組成物の安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維の制電性を向上できる。本発明においては、炭素数4以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルケニル基を有する有機リン酸エステルと、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩が適用される。以下、かかる構成以外は、参考例とする。
【0046】
成分(A)を構成する有機リン酸エステルとしては、有機ヒドロキシ化合物と無水リン酸とを反応させて得られる化合物が好ましい。有機ヒドロキシ化合物としては、有機リン酸エステルの原料となり得る1価アルコール、多価アルコール等が挙げられる。
【0047】
1価アルコールの具体例としては、例えば、(1)ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、2-デシルテトラデカノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、オレイルアルコール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。これらの有機ヒドロキシ化合物の中で、炭素数4以上22以下の有機ヒドロキシ化合物が好ましく、炭素数4以上18以下の有機ヒドロキシ化合物がより好ましい。
【0048】
多価アルコールとしては、例えば二価の脂肪族アルコールであるジオール化合物、三又は四価の脂肪族アルコール等が挙げられる。
ジオール化合物の具体例としては、例えば1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体等が挙げられる。
【0049】
三又は四価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えばジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、エリスリトール、1,2,3-ペンタトリオール、1,2,4-ペンタトリオール等が挙げられる。
【0050】
成分(A)の原料である無水リン酸は、五酸化二リンである。有機ヒドロキシ化合物と無水リン酸との反応は、公知の方法、例えば所定温度に加熱処理等を行うことにより実施できる。
【0051】
有機リン酸エステルは、(ポリ)アルキレンオキサイド構造が付加されているものであってもよい。
(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは1モル以上40モル以下、さらに好ましくは2モル以上30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0052】
上記の反応により得られる有機リン酸エステルは、例えば下記の一般式(3)~一般式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
(一般式(3)~(5)において、
R7:それぞれ炭素数4以上22以下のアルキル基、又は炭素数4以上22以下のアルケニル基を示す。
【0057】
A3,A4:それぞれエチレン基又はプロピレン基を示す。
(OA3)l,(OA4)m:それぞれオキシエチレンの繰り返し構造からなる化学種、オキシプロピレンの繰り返し構造からなる化学種、又はオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とからなるランダムの繰り返し構造からなる化学種若しくはブロックの繰り返し構造からなる化学種を示す。
【0058】
l,m:それぞれ0以上20以下の整数を示す。
Z:それぞれ-O-基又は-OH基を示す。
なお、1つの化合物中に複数のR7がある場合、R7は同一であっても、異なっていてもよい。
【0059】
本発明の効果の向上の観点から、上記一般式(3)~一般式(5)において、R7は、炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基が好ましい。
【0060】
有機リン酸エステルとして、上記の一般式(3)~一般式(5)で示される化合物が適用される場合、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。また、有機リン酸エステルとして、上記の一般式(3)~一般式(5)で示される化合物を全て含むことが好ましい。
【0061】
成分(A)を構成する第四級アンモニウムは、下記の一般式(1)又は下記の一般式(2)で示される。
【0062】
【0063】
(一般式(1)において、
R1:炭素数4以上18以下のアルキル基、又は炭素数4以上18以下のアルケニル基を示す。
【0064】
R2:炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。
X:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は-(A1O)q-Hで示される基を示す。
Y:炭素数1以上3以下のアルキル基、又は-(A2O)r-Hで示される基を示す。
【0065】
A1O,A2O:それぞれ炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)を示す。
【0066】
q,r:それぞれ2以上40以下の整数(ただし、q+r=4以上42以下を満たすもの)を示す。)
【0067】
【0068】
(一般式(2)において、
R3:炭素数3以上17以下のアルキル基、又は炭素数3以上17以下のアルケニル基を示す。
【0069】
R4,R5,R6:それぞれ炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。
n:2又は3の整数を示す。)
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)は、有機リン酸エステルと、前記一般式(1)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、前記一般式(1)において、R1が炭素数4以上12以下のアルキル基、又は炭素数4以上12以下のアルケニル基であるものが好ましい。かかる化合物の場合、処理剤の希釈液の濡れ性を向上させる。
【0070】
また、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)は、有機リン酸エステルと、前記一般式(2)で示される第四級アンモニウムとの塩であり、前記一般式(2)において、R3が炭素数3以上11以下のアルキル基、又は炭素数3以上11以下のアルケニル基であるものが好ましい。かかる化合物の場合、処理剤の希釈液の濡れ性を向上させる。
【0071】
成分(A)の具体例としては、例えばオクチルリン酸エステル・トリメチルオクチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレン(以下、POEという)ラウリルリン酸エステル・トリメチルオクチルアンモニウム塩、ブチルリン酸エステル・トリエチルオクチルアンモニウム塩、ステアリルリン酸エステル・トリエチルオクチルアンモニウム塩、オクチルリン酸エステル・トリメチルラウリルアンモニウム塩、POEオクチルリン酸エステル・トリエチルオクチルアミドプロピルアンモニウム塩、POEステアリルリン酸エステル・トリエチルオクチルアミドプロピルアンモニウム塩、オクチルリン酸エステル・トリメチルステアリルアンモニウム塩、ステアリルリン酸エステル・トリメチルステアリルアンモニウム塩、POE/ポリオキシプロピレン(以下、POPという)ブロック-オクチルリン酸エステル・トリエチルステアリルアミドプロピルアンモニウム塩、POE/POPランダム-ステアリルリン酸エステル・トリエチルステアリルアミドプロピルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0072】
これらの成分(A)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。なお、処理剤中には、反応しなかった第四級アンモニウムイオンが含まれることを妨げるものではない。
【0073】
処理剤の全質量を100質量部とすると、成分(A)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。かかる含有割合が2質量部以上の場合、処理剤が付与された繊維の制電性をより向上できる。かかる成分(A)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。かかる含有割合が30質量部以下の場合、処理剤が付与された繊維のカード通過性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0074】
(成分(B):(ポリ)オキシアルキレン誘導体)
本実施形態の処理剤含有組成物に供される成分(B)は、脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸に炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物、及び有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物から選ばれる少なくとも1つである。処理剤中に成分(B)が含有されることにより、処理剤の希釈液の濡れ性を向上できる。また、処理剤含有組成物の安定性を向上できる。
【0075】
成分(B)の原料として用いられる脂肪族アルコールとしては、1価脂肪族アルコールであっても、多価アルコールであってもよい。また、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、直鎖脂肪族アルコールであっても、分岐脂肪族アルコールであってもよい。脂肪族アルコールの具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソトリアコンタノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの中で、炭素数8以上22以下の脂肪族アルコールが好ましい。
【0076】
成分(B)の原料として用いられる脂肪酸の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)レシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(6)ひまし油脂肪酸、ごま油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、菜種油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、豚脂脂肪酸、牛脂脂肪酸等の動物・植物油由来の脂肪酸等が挙げられる。これらの中で、炭素数8以上22以下の脂肪酸が好ましい。
【0077】
成分(B)の原料として用いられる有機アミンとしては、アルキル基、アルケニル基等の炭化水素基を有する脂肪族アミンが挙げられる。有機アミンは、一級アミン、二級アミン、三級アミンのいずれであってもよい。また、脂肪族アミンを構成する炭化水素基としては、直鎖であっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、有機アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。有機アミンに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加させた化合物は、必要により酸で中和処理したものを使用してもよい。これらの中で、炭素数8以上22以下の有機アミンが好ましい。
【0078】
成分(B)の原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは1モル以上40モル以下、さらに好ましくは2モル以上30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。複数種類のアルキレンオキサイドが用いられる場合、ブロック付加物であってもランダム付加物であってもよい。
【0079】
成分(B)の具体例としては、例えば1-オクタノールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、1-ドデカノールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ステアリルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、オレイルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ベヘニルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、グリセリンに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ドデカン酸に対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、テトラデカン酸に対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ドデシルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ステアリルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。
【0080】
これらの成分(B)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤の全質量を100質量部とすると、成分(B)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。かかる含有割合が5質量部以上の場合、処理剤の希釈液の濡れ性をより向上できる。かかる成分(B)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは70質量部以下、より好ましくは65質量部以下である。かかる含有割合が70質量部以下の場合、処理剤が付与された繊維のカード通過性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0081】
(成分(C):有機リン酸エステル化合物)
本実施形態の処理剤含有組成物に供される成分(C)は、有機リン酸エステル、及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種である。処理剤中に成分(C)が含有されることにより、処理剤が付与された繊維のカード通過性を向上できる。
【0082】
成分(C)を構成する有機リン酸エステルとしては、有機ヒドロキシ化合物と無水リン酸とを反応させて得られる化合物が好ましい。具体的には、上記成分(A)欄で列挙したものを採用できる。成分(C)を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。
【0083】
成分(C)の具体例としては、例えばオクタデシルリン酸エステルカリウム塩、ヘキサデシルリン酸エステルカリウム塩、テトラデシルリン酸エステルカリウム塩、ドデシルリン酸エステルカリウム塩、POEヘキサデシルリン酸エステルカリウム塩、オクチルリン酸エステルカリウム塩、ブチルリン酸エステルカリウム塩等が挙げられる。
【0084】
成分(C)としては、本発明の効果に優れる観点から炭素数12以上22以下の、アルキル基又はアルケニル基を有する有機リン酸エステルが好ましい。
成分(C)の酸価は適宜設定される。酸価は10 KOHmg/g以上200 KOHmg/g以下が好ましい。
【0085】
これらの成分(C)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤の全質量を100質量部とすると、成分(C)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。かかる含有割合が25質量部以上の場合、処理剤が付与された繊維のカード通過性をより向上できる。かかる成分(C)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下である。かかる含有割合が80質量部以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0086】
(溶媒(S):溶媒)
本実施形態の処理剤含有組成物に供される溶媒(S)は、大気圧下における沸点が120℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール(D)、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。脂肪族アルコール(D)の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール等が挙げられる。これらの溶媒は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0087】
これらの中で、処理剤含有組成物の安定性及び処理剤の希釈液の濡れ性をより向上できる優れる観点から脂肪族アルコール(D)が含まれるものが好ましい。
処理剤含有組成物において、前記処理剤の全質量100質量部に対して、溶媒(S)を好ましくは18質量部以上233質量部以下、より好ましくは20質量部以上230質量部以下の割合で含有する。かかる範囲に規定することより、処理剤含有組成物の安定性をより向上できる。また、処理剤含有組成物をさらに溶媒で希釈する際の均質性、操作性を向上できる。
【0088】
処理剤の全質量100質量部に対して、成分(D)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。かかる含有割合が0.01質量部以上の場合、処理剤の希釈液の濡れ性をより向上できる。かかる成分(D)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。かかる含有割合が15質量部以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0089】
(保存形態)
処理剤含有組成物は、下記の合成繊維用第1処理剤含有組成物(以下、「第1処理剤含有組成物」という)と、下記の合成繊維用第2処理剤含有組成物(以下、「第2処理剤含有組成物」という)とを含むセットとして構成されてもよい。処理剤含有組成物は、保存時又は流通時等において第1処理剤含有組成物と、第1処理剤含有組成物とは別剤として構成される第2処理剤含有組成物とから構成されている。処理剤含有組成物は、使用時に第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とが混合された混合物が調製される。
【0090】
第1処理剤含有組成物は、上述した有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、及び(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する合成繊維用第1処理剤(以下、「第1処理剤」という)と、上述した溶媒(S)とを含んでいる。第1処理剤含有組成物に用いられる溶媒(S)は、製剤安定性をより向上できる観点から上述したアルコール(D)を含むことが好ましい。第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を30質量部以上100質量部未満で含有することが好ましい。
【0091】
第2処理剤含有組成物は、上述した有機リン酸エステル化合物(C)を含有する合成繊維用第2処理剤(以下、「第2処理剤」という)と、溶媒(S)とを含んでいる。第2処理剤含有組成物中において、第2処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、第2処理剤を20質量部以上70質量部以下で含有することが好ましい。
【0092】
上記第1実施形態の処理剤含有組成物の効果について説明する。
(1-1)上記第1実施形態の処理剤含有組成物では、上述した成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有する。したがって、処理剤含有組成物の安定性を向上できるとともに、処理剤が付与された繊維のカード通過性を向上できる。紡績工程の1つであるカード工程は、特に高速条件になるとウェブ斑が発生したり、ウェブが切れたりする問題が生じやすい。カード通過性の向上により、糸品質を向上できる。
【0093】
また、処理剤の希釈液の濡れ性を向上できる。そのため、特に原綿の製造においてトウシートの延伸工程で用いられる延伸工程用処理剤として適用される場合、繊維に均一に付着できるため、トウを均一な厚さで薄く広げることができる。また、繊維間摩擦を低減させることにより、単繊維切れを低減できる。それにより、生産性、品質性を向上できる。
【0094】
また、処理剤が付与された繊維の制電性を向上できる。特に繊維が短繊維の場合、紡績性を向上できる。近年、紡績工程の高速化が進んでいる。紡績工程が高速化すると、電気が起きやすくなる。特に、希釈液としてエマルション作成時にイオン交換水でなく硬水が使用されると、静電気が発生しやすい傾向がある。静電気は、スライバー延伸時の不均一さにつながる。硬水を使用した場合であっても電気特性の向上できる。また、良好なドラフト性により、良好な紡績糸が得られる。
【0095】
(1-2)上記第1実施形態の処理剤含有組成物では、保存時又は流通時等において、上述した成分(A)、成分(B)、及び溶媒(S)を含有する第1処理剤含有組成物と、上述した成分(C)及び溶媒(S)を含有する第2処理剤含有組成物とを含むセットとして構成されてもよい。かかる構成により、保存時又は流通時等において、処理剤の製剤安定性、特に保存安定性をより向上できる。
【0096】
<第2実施形態>
次に、本発明の第1処理剤含有組成物を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0097】
本実施形態の第1処理剤含有組成物では、上述した有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)及び上述した(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する第1処理剤と、上述した溶媒(S)とを含んでいる。第1処理剤含有組成物は、使用時に下記の第2処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は該第2処理剤含有組成物と別剤として構成される。つまり、使用時に第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とが混合された処理剤含有組成物としての混合物が調製される。合成繊維用第2処理剤含有組成物は、上述した有機リン酸エステル化合物(C)を含有する第2処理剤と、上述した溶媒(S)とを含んでいる。成分(A)~成分(C)、及び溶媒(S)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。第1処理剤含有組成物に用いられる溶媒(S)は、好ましくは上述したアルコール(D)を含んでいる。
【0098】
第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を30質量部以上100質量部未満で含有することが好ましい。かかる構成により、使用時に溶媒で希釈する際又は第2処理剤含有組成物と混合する際、混合性を向上できるとともに、組成物の安定性をより向上できる。
【0099】
上記第2実施形態の第1処理剤含有組成物の効果について説明する。上記第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)第2実施形態の第1処理剤含有組成物では、上述した成分(A)及び成分(B)を含有する第1処理剤と、溶媒(S)とを含み、使用時以外は上述した成分(C)を含有する第2処理剤と、溶媒(S)とを含む第2処理剤含有組成物と別剤として構成される。第1処理剤含有組成物は、使用時に第2処理剤含有組成物と併用され、第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とが混合された処理剤含有組成物としての混合物が調製される。したがって、保存時又は流通時等において、第1処理剤含有組成物の製剤安定性、特に保存安定性をより向上できる。また、第2処理剤含有組成物との混合比率を調整することにより、得られる処理剤含有組成物の成分を調整できる。また、第1処理剤含有組成物のみを第2処理剤含有組成物とは別剤として流通できる。
【0100】
<第3実施形態>
次に、本発明の第2処理剤含有組成物を具体化した第3実施形態を説明する。以下、第1,2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0101】
本実施形態の第2処理剤含有組成物では、上述した成分(C)を含有する第2処理剤と、上述した溶媒(S)とを含んでいる。第2処理剤含有組成物は、使用時に下記の第1処理剤含有組成物と併用され、使用時以外は第1処理剤含有組成物と別剤として構成される。つまり、使用時に第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とが混合された処理剤含有組成物としての混合物が調製される。合成繊維用第1処理剤含有組成物は、上述した有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)と(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)を含有する第1処理剤と、上述した溶媒(S)とを含んでいる。成分(A)~成分(C)、及び溶媒(S)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
【0102】
第2処理剤含有組成物中において、第2処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、第2処理剤を20質量部以上70質量部以下で含有することが好ましい。かかる構成により、使用時に溶媒で希釈する際又は第1処理剤含有組成物と混合する際、混合性を向上できるとともに、組成物の安定性をより向上できる。
【0103】
上記第3実施形態の第2処理剤含有組成物の効果について説明する。第3実施形態では、第1,2実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)第3実施形態の第2処理剤含有組成物では、上述した成分(C)を含有する第2処理剤と、上述した溶媒(S)とを含み、使用時以外は上述した成分(A)及び成分(B)を含有する第1処理剤と、溶媒(S)とを含む第1処理剤含有組成物と別剤として構成される。第2処理剤含有組成物は、使用時に第1処理剤含有組成物と併用され、第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とが混合された処理剤含有組成物としての混合物が調製される。したがって、保存時又は流通時等において、第2処理剤含有組成物の製剤安定性、特に保存安定性をより向上できる。また、第1処理剤含有組成物との混合比率を調整することにより、得られる処理剤含有組成物の成分を調整できる。また、第2処理剤含有組成物のみを第1処理剤含有組成物とは別剤として流通できる。
【0104】
<第4実施形態>
本発明に係る合成繊維の処理方法及びそれにより得られた合成繊維を具体化した第4実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維の処理方法は、溶媒と処理剤含有組成物とを含む処理剤の希釈液を合成繊維に付与する方法である。より具体的には、処理剤の希釈液を、例えば短繊維製造工程の紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。処理剤の希釈液の調製方法は、特に制限されないが、例えば下記の処理剤の希釈液の調製方法を採用できる。
【0105】
処理剤の希釈液は、溶媒に、第1実施形態の処理剤含有組成物、又は第2実施形態の第1処理剤含有組成物及び第3実施形態の第2処理剤含有組成物、を添加し、不揮発分濃度を0.1質量%以上5質量%以下に調製することにより得られる。なお、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0106】
溶媒としては、第1実施形態欄の溶媒(S)が採用される。処理剤の希釈液の安定性をより向上できる観点から、最初に溶媒に第3実施形態の第2処理剤含有組成物を添加し、次に第2実施形態の第1処理剤含有組成物を添加する調製方法が好ましい。なお、処理剤含有組成物又は希釈液の調製には、ホモミキサーやホモジナイザー等を用いた公知の機械的乳化方法が適用してもよい。
【0107】
第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物とを併用する形態は、第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な紡糸延伸性を得るための処理剤、処理剤含有組成物、又は希釈液を調製することが容易になる。それにより安定した繊維製造が可能となる。
【0108】
第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=1/9~9/1であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。繊維の処理方法は、上記のように得られた希釈液を、短繊維製造工程の紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。
【0109】
(合成繊維)
合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。これらの中で、本発明の効能の発揮に優れる観点からポリエステル繊維に適用されることが好ましい。
【0110】
(繊維の用途)
繊維の用途は、特に限定されず、例えば短繊維、紡績糸、不織布等が挙げられる。短繊維及び長繊維のいずれの繊維用途としても適用できるが、短繊維に適用されることが好ましい。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましい。また、短繊維は、紡績糸製造用のものであることが好ましい。
【0111】
(処理剤の付着処理)
処理剤の希釈液を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、溶媒を含まない処理剤として合成繊維に対して0.1質量%以上2質量%以下となるように付着させることが好ましく、0.3質量%以上1.2質量%以下となるように付着させることがより好ましい。
【0112】
処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えば処理剤含有組成物又は処理剤の希釈液を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。また、希釈液が付与された合成繊維は、公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。乾燥処理により水等の溶媒が揮発され、処理剤中に含有される成分が付着している合成繊維が得られる。
【0113】
上記第4実施形態の合成繊維の処理方法又は合成繊維の効果について説明する。
(4-1)第4実施形態の合成繊維の処理方法によって得られた合成繊維では、上述した成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有する処理剤が付着している。そのため、合成繊維のカード通過性、及び制電性を向上できる。
【0114】
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・処理剤、処理剤含有組成物、又は希釈液は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤等の品質保持のための安定化剤や制電剤、平滑剤、上記以外の界面活性剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の通常処理剤に用いられる成分を含有してもよい。なお、溶媒以外の通常処理剤等に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から処理剤中において10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【実施例0115】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、質量部を部と、また質量%は%とも表記する。
【0116】
試験区分1(処理剤含有組成物の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)としてオクチルリン酸エステル・トリメチルオクチルアンモニウム塩(A-1)15部(%)、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)として1-オクタノール1モルに対してエチレンオキサイドを4モル付加させた化合物(B-1)25部(%)、有機リン酸エステル化合物(C)としてオクタデシルリン酸エステル及びそのカリウム塩の混合物(C-1)60部(%)からなる処理剤と、溶媒(S)としてメタノール(D-1)を処理剤100部に対して1部及び水を処理剤100部に対して149部が秤量して容器に加えられた。そして、撹拌して均一に混合して実施例1の処理剤40%の処理剤含有組成物を調製した。
【0117】
(実施例2~42、比較例1~5)
実施例2~42、比較例1~5の処理剤含有組成物は、実施例1の処理剤含有組成物と同様の方法にて、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及び溶媒(S)を表1,2に示した割合で含むように調製した。
【0118】
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)の種類と含有量、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)の種類と含有量、有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量、アルコール(D)の種類と含有量、水の含有量が、表1,2の「有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)」欄、「(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)」欄、「有機リン酸エステル化合物(C)」欄、「アルコール(D)」欄、「水」欄にそれぞれ示される。
【0119】
【0120】
【0121】
表1,2に記載する有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及びアルコール(D)の詳細は以下のとおりである。
【0122】
(有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A))
以下の表3に示される化合物(A-1)~化合物(A-11)を使用した。有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)は、有機リン酸エステルが上述した一般式(3),一般式(4),一般式(5)で示される化合物のもの(以下、それぞれA1,A2,A3という)を適用した。有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)を構成する第四級アンモニウムは、上述した一般式(1)で示される化合物、又は一般式(2)で示される化合物を適用した。
【0123】
なお、比較例に相当する化合物として、ステアリルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩(rA-1)を使用した。
有機リン酸エステルの構成、及び第四級アンモニウムの構成を、表3の「有機リン酸エステル」欄、及び「第四級アンモニウム」欄にそれぞれ示す。
【0124】
また、原料として使用した有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)について、P核NMR測定を行った。P核NMR測定によって、前記A1,A2,A3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、A1,A2,A3に帰属されるP核NMR積分比率を求めた。
【0125】
まず、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)に対して、アルカリ過中和前処理を行った。前処理を行った試料に対して、31P-NMRを測定して、A1,A2,A3に帰属される各P核積分値を求めた。P核積分値は、31P-NMR(VALIAN社製の商品名;MERCURY plus NMR Spectrometor System、300MHz)の測定値を用いた。測定溶媒には重水を用いた。下記数式(1)、数式(2)、及び数式(3)に基づき、A1,A2,A3に帰属されるP核NMRの積分比率(%)を求めた。結果を表3の「(A1)/(A2)/(A3)のP核NMR積分比率」欄に示す。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
rA-1:ステアリルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩
((ポリ)オキシアルキレン誘導体(B))
B-1:1-オクタノール1モルに対してエチレンオキサイドを4モル付加させた化合物(炭素数8:原料の脂肪族アルコールの炭素数を示す(以下、同じ)。)
B-2:1-オクタノール1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(炭素数8)
B-3:1-ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(炭素数10)
B-4:ステアリルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物(炭素数18)
B-5:オレイルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを8モル付加させた化合物(炭素数18)
B-6:ベヘニルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物(炭素数22)
B-7:オレイルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを2モル付加させた後プロピレンオキサイドを6モル付加させた化合物(炭素数18)
B-8:ステアリルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを5モルとプロピレンオキサイド3モルをランダム付加させた化合物(炭素数18)
B-9:グリセリン1モルに対してエチレンオキサイドを10モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた化合物(炭素数3)
B-10:ドデカン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(炭素数12:原料の脂肪酸の炭素数を示す(以下、同じ)。)
B-11:テトラデカン酸1モルに対してエチレンオキサイドを15モル付加させた化合物(炭素数14)
B-12:ドデシルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを12モル付加させた化合物(炭素数12:原料の有機アミンの炭素数を示す(以下、同じ)。)
B-13:ドデシルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物と燐酸の塩(炭素数12)
B-14:ステアリルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物(炭素数18)
rB-1:グリセリンモノオクタナート
(有機リン酸エステル化合物(C))
以下の表4に示される化合物(C-1)~化合物(C-7)を使用した。有機リン酸エステル化合物(C)は、有機リン酸エステルが上述した一般式(3),一般式(4),一般式(5)で示される化合物のもの(以下、それぞれC1,C2,C3という)を適用した。
【0131】
有機リン酸エステル化合物の種類、有機リン酸エステルを構成するアルキル基の炭素数を、表4の「有機リン酸エステル化合物(C)」欄、「炭素数」欄にそれぞれ示す。
また、原料として使用した有機リン酸エステル化合物(C)について、P核NMR測定を行った。P核NMR測定によって、前記C1,C2,C3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、C1,C2,C3に帰属されるP核NMR積分比率を求めた。
【0132】
P核NMR測定は、「有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)」欄の記載と同様の方法にて行った。下記数式(4)、数式(5)、及び数式(6)に基づき、C1,C2,C3に帰属されるP核NMRの積分比率(%)を求めた。結果を表4の「(C1)/(C2)/(C3)のP核NMR積分比率」欄に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
また、有機リン酸エステル化合物(C)の酸価を測定した。酸価の測定方法は、以下に示す通りである。
有機リン酸エステル化合物(C)をエタノール/キシレン=1/2(容量比)の混合溶媒に溶解させ、電位差測定法により、0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液で滴定し、下記の数7から算出した。結果を表4の「酸価」欄に示す。
【0137】
【0138】
数7において、
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液のファクター
S:有機リン酸エステル化合物(C)採取量(g)
R:変曲点までの0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液の使用量(mL)
【0139】
【0140】
(アルコール(D))
D-1:メタノール
D-2:エタノール
D-3:プロパノール
D-4:ブタノール
試験区分2(処理剤の希釈液の調整方法)
試験区分1にて調製した各例の処理剤含有組成物を、約50℃に加温したイオン交換水に撹拌下で加え、完全に溶解させ、処理剤の5%希釈液を調製した。
【0141】
試験区分3(濡れ性の評価)
試験区分2で得られた処理剤の5%希釈液を室温のイオン交換水に撹拌下で加え、0.5%希釈液を調製した。処理剤の付与されていないポリエチレンテレフタレート製の短繊維で作製された不織布を用意した。その不織布に各処理剤の0.5%希釈液を5μL滴下し、完全に浸透するまでの時間を記録した。試験結果を表1,2の「濡れ性」欄に示す。
【0142】
・濡れ性の評価基準
◎(良好):浸透時間が140秒未満
○(可):浸透時間が140秒以上170秒未満
×(不良):浸透時間が170秒以上
試験区分4(カード通過性の評価)
試験区分2で得られた処理剤の5%希釈液を室温のイオン交換水に撹拌下で加え、処理剤の0.3%希釈液を調整した。処理剤の0.3%希釈液を、製綿工程で得られた繊度1.3×10-4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのセミダルのポリエステルステープル繊維に、処理剤としての付着量が0.15%となるようにスプレー給油法で付着させた。次に80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×65%RHの雰囲気下に一夜調湿して、処理剤を付着させた処理済みポリエステルステープル繊維の原綿を得た。このようにして得られた処理済みポリエステルステープル繊維の原綿30gを用いてミニチュアカード機(竹内製作所社製)を通過させて繊維ウェブを作製した。原綿がすべてカード機に入ってから20秒経過した時点での紡出量、繊維ウェブのネップ、及び風綿の発生状況に基づいて以下の基準で評価した。試験結果を表1,2の「カード通過性」欄に示す。
【0143】
・カード通過性の評価基準
◎(良好):カード通過量が98%以上、さらにネップ及び風綿がほとんど発生せず、良好な繊維ウェブが得られる場合
○(可):カード通過量が95%以上98%未満、さらにネップ又は風綿が若干見られるが、均質な繊維ウェブが得られる場合
×(不良):カード通過量が95%未満、又は製造時は風綿が見られ、繊維ウェブにネップが多く見られる場合
試験区分5(制電性の評価)
試験区分2で得られた処理剤の5%希釈液を室温下で硬水(市販のミネラルウォーター:硬度約300mg/L)に撹拌下で加え、処理剤の0.3%希釈液(硬水)を調製した。処理剤の0.3%希釈液(硬水)を製綿工程で得られた繊度1.3×10-4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのセミダルのポリエステルステープル繊維に、処理剤としての付着量が0.15%となるようにスプレー給油法で付着させた。次に80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×40%RHの雰囲気下に一夜調湿して、処理剤を付着させた処理済みポリエステルステープル繊維の原綿を得た。このようにして得られた処理済みポリエステルステープル繊維の原綿30gを用いてミニチュアカード機(竹内製作所社製)を通過させて繊維ウェブを作製した。紡出されたカードウェブの静電気を測定し、制電性を以下の基準で評価した。試験結果を表1,2の「制電性」欄に示す。
【0144】
・制電性の評価基準
◎(良好):発生静電気の電圧が0.1kV未満
○(可):発生静電気の電圧が0.1kV以上0.5kV未満
×(不良):発生静電気の電圧が0.5kV以上
試験区分6(製剤安定性の評価)
試験区分1で得られた各例の処理剤含有組成物を40℃にて1日~1月保管した。調整直後、1日経過後、1カ月経過後の外観を観察し、下記の基準に従って評価した。なお、処理剤含有組成物の粘度は以下の方法で観察した。処理剤含有組成物をポリプロピレン製透明容器(蓋つき、容量250mL)に150mL入れ90度傾けた時の流れる様子を観察し、下記の基準に従って評価した。試験結果を表1,2の「製剤安定性」欄に示す。
【0145】
・製剤安定性の評価基準
3点(良好):1日経過後及び1カ月経過後において、製剤調製直後のもの(STD)と比較して外観に変化がなく、容器を傾けた時に流れる様子に変化が見られない場合
2点(可):1日経過後では製剤調製直後のもの(STD)と比較して外観に変化がなく、また容器を傾けた時に流れる様子に変化が見られない場合であって、且つ1カ月経過後においては、わずかな分離が見られる場合、又は容器を傾けた時に流れる様子が製剤調製直後のもの(STD)と比較して遅くなっている場合
1点(不可):1日経過後において、わずかに分離が見られる場合、又は容器を傾けた時に流れる様子が製剤調製直後のもの(STD)と比較して遅くなっている場合
試験区分7(第1処理剤含有組成物の調製)
(第1処理剤含有組成物(I-1))
表5に示されるように、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)としてオクチルリン酸エステル・トリメチルオクチルアンモニウム塩(A-1)37.5部(%)、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)として1-オクタノール1モルに対してエチレンオキサイドを4モル付加させた化合物(B-1)62.5部(%)からなる第1処理剤と、溶媒(S)としてメタノール(D-1)を第1処理剤100部に対して2.5部及び水を第1処理剤100部に対して22.5部が秤量して容器に加えられた。そして、撹拌して均一に混合して第1処理剤80%の第1処理剤含有組成物(I-1)を調製した。
【0146】
(第1処理剤含有組成物(I-2)~(I-8))
第1処理剤含有組成物(I-2)~(I-8)は、第1処理剤含有組成物(I-1)と同様の方法にて、有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)、及び溶媒(S)を表5に示した割合で含むように調製した。なお、第1処理剤含有組成物(I-8)は、オクチルリン酸エステル・トリメチルオクチルアンモニウム塩(A-1)100質量部からなる第1処理剤として構成される。
【0147】
有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)の種類と含有量、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)の種類と含有量、アルコール(D)の種類と含有量、水の含有量が、表5の「有機リン酸エステル第四級アンモニウム塩(A)」欄、「(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B)」欄、「アルコール(D)」欄、「水」欄にそれぞれ示される。また、上記のように得られた各第1処理剤含有組成物について、試験区分6と同様の方法にて、製剤安定性を評価した。試験結果を表5の「製剤安定性」欄に示す。
【0148】
【0149】
試験区分8(第2処理剤含有組物の調製)
(第2処理剤含有組成物(II-1))
表6に示されるように、有機リン酸エステル化合物(C)としてオクタデシルリン酸エステルカリウム及びその塩の混合物(C-1)100部(%)からなる第2処理剤と、溶媒(S)として水を第2処理剤100部に対して150部を秤量して容器に加えた。そして、撹拌して均一に混合して第2処理剤40%の第2処理剤含有組成物(II-1)を調製した。
【0150】
(第2処理剤含有組成物(II-2)~(II-8))
第2処理剤含有組成物(II-2)~(II-8)は、有機リン酸エステル化合物(C)及び溶媒(S)を表6に示した割合で含むように調製した。有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量、及び溶媒(S)の種類と含有量を、表6の「有機リン酸エステル化合物(C)」欄、溶媒「(S)」欄にそれぞれに示す。また、上記のように得られた各第2処理剤含有組成物について、試験区分6と同様の方法にて、製剤安定性を評価した。試験結果を表6の「製剤安定性」欄に示す。
【0151】
【0152】
試験区分9(第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物から処理剤の希釈液の調製)
(実施例43)
試験区分8において調製した第2処理剤含有組成物(II-1)82部(%)を、約80℃に加温した所定量の半量のイオン交換水に撹拌下で加え、完全に溶解させる。溶解後、試験区分7において調製した第1処理剤含有組成物(I-1)18部(%)を撹拌下で加えて完全に溶解させる。溶解後、加温を止め、約25℃の残り半量のイオン交換水を一気に加えて均一になるまで撹拌することにより、実施例43の処理剤の希釈液を調製した。
【0153】
(実施例44~49、比較例6)
実施例44~49、比較例6の処理剤の希釈液は、実施例43の処理剤の希釈液と同様の方法にて、第1処理剤含有組成物及び第2処理剤含有組成物を表7に示した割合で含むように調製した。
【0154】
第1処理剤含有組成物の種類と含有量、第2処理剤含有組成物の種類と含有量を、表7の「第1処理剤含有組成物」欄、「第2処理剤含有組成物」欄にそれぞれ示す。
得られた各例の処理剤の希釈液を用いて、実施例1と同様の方法にて濡れ性、カード通過性について評価した。結果を表7の「濡れ性」欄、「カード通過性」欄にそれぞれ示す。
【0155】
【0156】
表1,7の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤含有組成物は、安定性を向上できる。また処理剤の希釈液の濡れ性を向上できる。また処理剤が付与された合成繊維は、カード通過性、及び制電性を向上できる。