IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-作業機用空調装置 図1
  • 特開-作業機用空調装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130831
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】作業機用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20240920BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60H1/32 611B
B60H1/22 611D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040745
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今泉 敏之
(72)【発明者】
【氏名】野村 佑大
(72)【発明者】
【氏名】田部井 久幸
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA09
3L211BA32
3L211DA50
3L211EA36
3L211EA90
3L211GA49
3L211GA99
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で、エネルギー効率を向上する作業機用空調装置を提供すること。
【解決手段】制御装置は、加熱された熱媒体が空調用熱媒体循環路21a、21bを循環する暖房運転と、冷媒-熱媒体熱交換器35で吸熱された熱媒体が車載機器用熱媒体循環路21a、21cを循環する車載機器冷却運転と、を選択的に実行可能に構成され、制御装置は、暖房運転を要求する暖房要求と車載機器冷却運転を要求する車載機器冷却要求とを受けた場合、暖房運転と車載機器冷却運転を交互に切り替える併用運転を実行するように構成されている作業機用空調装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を循環させる熱媒体循環装置と、HVAC内に設けられ車室内に供給する空気を加熱する放熱器と、車載機器を温調する車載機器温調部と、熱媒体加熱装置とを有した熱媒体回路と、
冷媒と前記熱媒体回路を流れる熱媒体とを熱交換させて熱媒体を冷却する冷媒-熱媒体熱交換器を有した冷媒回路と、
制御装置と、
を備えた作業機用空調装置であって、
前記熱媒体回路は、前記熱媒体循環装置が設置された第1熱媒体流路と、前記放熱器が設置された第2熱媒体流路と、前記車載機器温調部および前記冷媒-熱媒体熱交換器が設置された第3熱媒体流路とを備え、
前記第1熱媒体流路および前記第2熱媒体流路は、空調用熱媒体循環路を形成し、
前記第1熱媒体流路および前記第3熱媒体流路は、車載機器用熱媒体循環路を形成し、
前記制御装置は、前記熱媒体加熱装置によって加熱された熱媒体が前記空調用熱媒体循環路を循環する暖房運転と、前記冷媒-熱媒体熱交換器で吸熱された熱媒体が前記車載機器用熱媒体循環路を循環する車載機器冷却運転と、を選択的に実行可能に構成され、
前記制御装置は、前記暖房運転を要求する暖房要求と前記車載機器冷却運転を要求する車載機器冷却要求とを受けた場合、前記暖房運転と前記車載機器冷却運転を交互に切り替える併用運転を実行するように構成されていることを特徴とする作業機用空調装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記作業機用空調装置の起動時において、前記暖房要求および前記車載機器冷却要求を受けている場合、前記車載機器冷却運転から開始させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機用空調装置。
【請求項3】
前記熱媒体回路は、前記熱媒体加熱装置として、前記第1熱媒体流路に設置された第1の熱媒体加熱装置と、前記第2熱媒体流路に設置された第2の熱媒体加熱装置とを備え、
前記制御装置は、前記併用運転における前記暖房運転時に、前記第1の熱媒体加熱装置による熱媒体の加熱を行うことなく、前記第2の熱媒体加熱装置による熱媒体の加熱を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機用空調装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記併用運転における前記車載機器冷却運転時に、前記第2の熱媒体加熱装置による熱媒体の加熱を行うように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の作業機用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンやショベル等の作業機に搭載される作業機用空調装置として、作業機の車室内の暖房のために車室内に供給する空気を加熱するための放熱器とバッテリ等の車載機器を温調するための車載機器温調部とを有した熱媒体回路と、熱媒体を冷却する冷媒-熱媒体熱交換器を有した冷媒回路とを備えた作業機用空調装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-245457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述したような作業機用空調装置においては、エネルギー効率の観点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、エネルギー効率を向上する作業機用空調装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱媒体を循環させる熱媒体循環装置と、HVAC内に設けられ車室内に供給する空気を加熱する放熱器と、車載機器を温調する車載機器温調部と、熱媒体加熱装置とを有した熱媒体回路と、冷媒と前記熱媒体回路を流れる熱媒体とを熱交換させて熱媒体を冷却する冷媒-熱媒体熱交換器を有した冷媒回路と、制御装置と、を備えた作業機用空調装置であって、前記熱媒体回路は、前記熱媒体循環装置が設置された第1熱媒体流路と、前記放熱器が設置された第2熱媒体流路と、前記車載機器温調部および前記冷媒-熱媒体熱交換器が設置された第3熱媒体流路とを備え、前記第1熱媒体流路および前記第2熱媒体流路は、空調用熱媒体循環路を形成し、前記第1熱媒体流路および前記第3熱媒体流路は、車載機器用熱媒体循環路を形成し、前記制御装置は、前記熱媒体加熱装置によって加熱された熱媒体が前記空調用熱媒体循環路を循環する暖房運転と、前記冷媒-熱媒体熱交換器で吸熱された熱媒体が前記車載機器用熱媒体循環路を循環する車載機器冷却運転と、を選択的に実行可能に構成され、前記制御装置は、前記暖房運転を要求する暖房要求と前記車載機器冷却運転を要求する車載機器冷却要求とを受けた場合、前記暖房運転と前記車載機器冷却運転を交互に切り替える併用運転を実行するように構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、簡素な構成で、エネルギー効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る作業機用空調装置の構成を示す説明図。
図2】制御装置による制御の概略を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態に係る作業機用空調装置10について、図面に基づいて説明する。
なお、本明細書で使用する「上流」「下流」の用語は、熱媒体または冷媒の流れ方向における上流または下流を意味する。
【0010】
まず、作業機用空調装置10は、ラフテレーンクレーン、油圧ショベル、ホイルローダ、ブルドーザ、トラクタ、コンバイン、フォークリフト、クローラクレーン、トラッククレーン、モータグレーダ、掘削作業車、等の作業機に搭載され、作業機の車室内の空調(暖房・冷房)を行うとともに、作業機に搭載されたバッテリ等の車載機器12の温調(冷却・加熱)を行うものであり、図1に示すように、クーラント(水)等の熱媒体を用いた熱媒体回路20と、ハイドロフルオロオレフィン等の冷媒を用いた冷媒回路30と、作業機用空調装置10の各部を制御する制御装置(図示しない)とを備えている。
【0011】
以下に、熱媒体回路20の具体的構成について、図面に基づいて説明する。
【0012】
まず、熱媒体回路20は、図1に示すように、熱媒体回路20の各部を接続する熱媒体流路21a、21b、21cと、熱媒体を圧送するポンプとして構成された熱媒体循環装置22と、作業機の車室内に供給する空気を加熱する放熱器23と、車載機器12を温調(温度調節)する車載機器温調部24と、熱媒体を貯留可能な熱媒体タンク25と、熱媒体の流れを制御するための流路切替手段26と、熱媒体の流量を測定する流量計27と、熱媒体の温度を測定する温度センサ28と、熱媒体を加熱する第1の熱媒体加熱装置29aおよび第2の熱媒体加熱装置29bとを備えている。
【0013】
熱媒体流路21a、21b、21cは、配管等から成り、図1に示すように、熱媒体循環装置22が設置(接続)された第1熱媒体流路21aと、放熱器23が設置された第2熱媒体流路21bと、車載機器温調部24が設置された第3熱媒体流路21cとを含んでいる。
第1熱媒体流路21aおよび第2熱媒体流路21bは、互いに接続され、放熱器23に熱媒体を循環させる空調用熱媒体循環路21a、21bを形成する。
第1熱媒体流路21aおよび第3熱媒体流路21cは、互いに接続され、車載機器温調部24に熱媒体を循環させる車載機器用熱媒体循環路21a、21cを形成する。
【0014】
放熱器23は、車室内空気を通気循環させるためのHVAC(Heating,Ventilation,and Air Conditioning)11内に設けられ、放熱器23に供給された熱媒体の熱を利用して、作業機の車室内に供給する空気を加熱するものである。
【0015】
車載機器温調部24は、バッテリ等の発熱機器等から成る車載機器12を温調(温度調節)するものであり、具体的には、車載機器12の温度状況に応じて、熱媒体と車載機器12とを熱交換させて車載機器12を冷却または加熱するように構成されている。
【0016】
流路切替手段26は、第1熱媒体流路21aを流れる熱媒体を、第2熱媒体流路21bまたは第3熱媒体流路21cの少なくとも一方に流すように、熱媒体の流れを制御するものである。
本実施形態では、流路切替手段26は、図1に示すように、第2熱媒体流路21b(における第2の熱媒体加熱装置29bよりも上流側)に設置された電磁弁から成るバルブ26aと、第3熱媒体流路21c(における車載機器温調部24および後述する冷媒-熱媒体熱交換器35よりも上流側)に設置された電磁弁から成るバルブ26bとから構成されている。
なお、流路切替手段26の具体的態様は、上記のバルブ26a、26bを利用したものに限定されず、上述したように熱媒体の流れを制御可能なものであれば、如何なるものでもよい。
【0017】
流量計27は、熱媒体の流量を測定するものであり、本実施形態では、図1に示すように、第2熱媒体流路21bにおける第2の熱媒体加熱装置29bの下流側かつ放熱器23の上流側と、第3熱媒体流路21cにおける車載機器温調部24および後述する冷媒-熱媒体熱交換器35の上流側とに、それぞれ設置されている。
【0018】
温度センサ28は、熱媒体の温度を測定するものであり、本実施形態では、図1に示すように、第2熱媒体流路21bにおける第2の熱媒体加熱装置29bの下流側と、第3熱媒体流路21cにおける後述する冷媒-熱媒体熱交換器35の上流側および車載機器温調部24の上流側および下流側とに、それぞれ設置されている。
【0019】
第1の熱媒体加熱装置29aは、熱媒体を加熱するヒータとして構成され、第1熱媒体流路21aにおける熱媒体循環装置22の下流側に設置されている。
第2の熱媒体加熱装置29bは、熱媒体を加熱するヒータとして構成され、第2熱媒体流路21bにおける放熱器23の上流側に設置されている。
【0020】
次に、冷媒回路30の具体的構成について、図面に基づいて説明する。
【0021】
まず、冷媒回路30は、図1に示すように、冷媒回路30の各部を接続する冷媒流路31a、31b、31cと、冷媒を圧縮して冷媒を高圧・高温状態にする圧縮機32と、圧縮機32によって圧縮された冷媒を放熱する冷媒放熱器33と、冷媒放熱器33によって放熱された冷媒を減圧する膨張装置34と、膨張装置34によって減圧された冷媒と熱媒体回路20(の第3熱媒体流路21c)を流れる熱媒体とを熱交換させる冷媒-熱媒体熱交換器35と、冷媒によって作業機の車室内に供給する空気を冷却する冷却器36と、冷媒の圧力を測定する圧力センサ37と、冷媒の流れを制御する冷媒用バルブ38と、圧力スイッチ39とを備えている。
【0022】
冷媒流路31a、31b、31cは、配管等から成り、図1に示すように、圧縮機32および冷媒放熱器33が設置(接続)された第1冷媒流路31aと、膨張装置34および冷媒-熱媒体熱交換器35が設置された第2冷媒流路31bと、冷却器36が設置された第3冷媒流路31cとを含んでいる。
第1冷媒流路31aおよび第2冷媒流路31bは、互いに接続され、冷媒-熱媒体熱交換器35に冷媒を循環させる車載機器用冷媒循環路31a、31bを形成する。
第1冷媒流路31aおよび第3冷媒流路31cは、互いに接続され、冷却器36に冷媒を循環させる空調用冷媒循環路31a、31cを形成する。
【0023】
冷媒放熱器33は、図1に示すように、圧縮機32の下流側に設置され、高圧・高温状態の冷媒と外気との間で熱交換を行わせ、外気に冷媒の熱を放熱する凝縮器(コンデンサ)として構成されている。
【0024】
膨張装置34は、冷媒放熱器33から供給された冷媒を減圧膨張させるものであり、本実施形態では電子式温度膨張弁(EXV)として構成されている。
【0025】
冷媒-熱媒体熱交換器35は、図1に示すように、冷媒回路30の膨張装置34の下流側かつ熱媒体回路20の第3熱媒体流路21cにおける車載機器温調部24の上流側に設置され、膨張装置34から供給された低温状態の冷媒によって、熱媒体回路20(の第3熱媒体流路21c)を流れる熱媒体を冷却する(すなわち、冷媒と熱媒体とを熱交換させる)ものである。
【0026】
冷却器36は、HVAC11内に設けられ、冷媒に吸熱させて、作業機の車室内に供給する空気を冷却するエバポレータとして構成されている。この冷却器36の上流側には、冷媒放熱器33から供給された冷媒を減圧膨張させる膨張装置(図示しない)が設置されている。
【0027】
圧力センサ37は、図1に示すように、圧縮機32の上流側に設置され、冷媒の圧力を測定するものである。
【0028】
冷媒用バルブ38は、冷媒の流れをオンオフするものであり、第3冷媒流路31cにおいて、冷媒放熱器33と冷却器36との間に設置されている。
【0029】
制御装置は、作業機用空調装置10の各部に接続され、作業機用空調装置10の各部の動作を制御するものである。本実施形態では、制御装置(図示しない)はPLC(プログラマブルロジックコントローラ)から構成されるが、制御装置(図示しない)の具体的態様は、上記各部の動作を制御可能なものであれば、如何なるものでもよい。
【0030】
次に、本実施形態における作業機用空調装置10の動作について、以下に説明する。
【0031】
まず、本実施形態では、作業機用空調装置10の動作モードとして、図2に示すように、車載機器12の温度が所定の適正範囲(例えば、10℃~40℃)内にあり、作業機の車室内の空調を調整する空調システム(HVAC11)が起動している場合の動作モードA、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも高温であり、空調システムが起動している場合の動作モードB、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも高温であり、空調システムが停止している場合の動作モードC、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも低温であり、空調システムが起動している場合の動作モードD、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも低温であり、空調システムが停止している場合の動作モードE、が設けられている。
【0032】
なお、作業機用空調装置10の動作モードの選択については、車載機器12から受信した車載機器12の温度情報、および、空調システムの起動・停止情報(起動しているか停止しているかの情報)を基に、制御装置によって判断される。
また、後述する各動作モードにおける各部の起動・停止や動作については、制御装置によって制御される。
【0033】
以下に、各動作モードA~Eの動作状態について説明する。
【0034】
まず、動作モードAでは、車載機器12の温度が所定の適正範囲内にあるため、車載機器12の温調を行う必要が無く、また、空調システムが起動している。
そのため、動作モードAでは、構成要素11、22、24、29a、29b、32、33、35のうち、車載機器温調部24、冷媒-熱媒体熱交換器35以外については、起動している。
【0035】
具体的に説明すると、まず、動作モードAでは、車載機器12の温調を行う必要が無いため、車載機器12を温調する車載機器温調部24と、冷媒と熱媒体との間の熱交換によって熱媒体を吸熱(冷却)する冷媒-熱媒体熱交換器35とについて、停止しており、また、(バルブ26aを開けて)バルブ26bを閉じるようになっている。
【0036】
また、動作モードAでは、空調システムが起動しているため、暖房運転のための、HVAC11、放熱器23、熱媒体循環装置22、第1の熱媒体加熱装置29a、第2の熱媒体加熱装置29bが起動しており、また、冷房運転のための、HVAC11、圧縮機32、冷媒放熱器33、冷却器36が起動している。
【0037】
ここで、暖房運転は、熱媒体加熱装置(動作モードAでは、熱媒体加熱装置29a、29b)によって加熱された熱媒体を空調用熱媒体循環路21a、21bで循環させて、HVAC11内の放熱器23によって作業機の車室内に供給する空気を加熱する運転のことであり、また、冷房運転は、冷媒を空調用冷媒循環路31a、31cで循環させて、HVAC11内の冷却器36によって作業機の車室内に供給する空気を冷却する運転のことである。
【0038】
また、動作モードAでは、暖房運転における目標温度まで熱媒体の温度を上げるにあたって、第1の熱媒体加熱装置29aに加えて第2の熱媒体加熱装置29bを利用して熱媒体を加熱しており、これにより、第1の熱媒体加熱装置29aに対する性能要求(加熱性能に関する要求)を低く抑えることができる。
【0039】
次に、動作モードBについては、以下の通りである。
【0040】
まず、動作モードBでは、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも高温であることから、車載機器12を冷却する必要があり、また、空調システムが起動している。
そのため、動作モードBでは、構成要素11、22、24、29a、29b、32、33、35のうち、第1の熱媒体加熱装置29a以外については、起動している。
【0041】
具体的に説明すると、まず、動作モードBでは、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも高温であることから、制御装置が、車載機器冷却運転を要求する車載機器冷却要求を受けた状態となっている。
ここで、車載機器冷却運転は、冷媒-熱媒体熱交換器35で吸熱(冷却)された熱媒体を車載機器用熱媒体循環路21a、21cで循環させて、車載機器温調部24によって車載機器12を冷却する運転のことである。
そのため、動作モードBでは、車載機器冷却運転のための、熱媒体循環装置22、車載機器温調部24、圧縮機32、冷媒放熱器33、冷媒-熱媒体熱交換器35が起動している。
【0042】
また、動作モードBでは、空調システムが起動しているため、暖房運転のための、HVAC11、放熱器23、熱媒体循環装置22、第2の熱媒体加熱装置29bが起動しており、また、冷房運転のための、HVAC11、圧縮機32、冷媒放熱器33、冷却器36が起動している。
【0043】
ここで、制御装置は、暖房運転と車載機器冷却運転とを選択的(択一的)に実行可能に構成され、(操作パネル等を通じて使用者等による暖房運転の要求を受け付けることで発生する)暖房運転を要求する暖房要求と、車載機器冷却運転を要求する車載機器冷却要求とを受けた場合、第2熱媒体流路21bに設置されたバルブ26aを開けるとともに第3熱媒体流路21cに設置されたバルブ26bを閉じた状態で実施する(言い換えると、空調用熱媒体循環路21a、21bでのみで熱媒体を循環させる)暖房運転と、バルブ26aを閉じるとともにバルブ26bを開けた状態で実施する(言い換えると、車載機器用熱媒体循環路21a、21cのみで熱媒体を循環させる)車載機器冷却運転と、を交互に切り替える併用運転を実行するように構成されている。
これにより、暖房運転および車載機器冷却運転を同じ熱媒体回路20で実施することで熱媒体循環装置22等の部品点数を抑えつつ、同じ熱媒体回路20で同時に暖房要求および車載機器冷却要求を受けた場合において、熱媒体の合流時の熱ロスを抑えることができる。
すなわち、第2の熱媒体加熱装置29bによって加熱された熱媒体が空調用熱媒体循環路21a、21bを循環する暖房運転時には、バルブ26bを閉じて、第3熱媒体流路21c内の熱媒体が加熱されることを抑制するとともに、冷媒-熱媒体熱交換器35によって冷却された熱媒体が車載機器用熱媒体循環路21a、21cを循環する車載機器冷却運転時には、バルブ26aを閉じて、第2熱媒体流路21b内の熱媒体が冷却されることを抑制することが可能であるため、熱ロスを抑えることができる。
また、暖房運転時に、第3熱媒体流路21c内の熱媒体が加熱されることを抑制することで、(循環することなく)第3熱媒体流路21c内に貯留された熱媒体によって車載機器12の温調を行うとともに、車載機器冷却運転時に、第2熱媒体流路21b内の貯留された熱媒体が冷却されることを抑制することで、(循環することなく)第2熱媒体流路21b内に貯留された熱媒体によって放熱器23の温調を行うこともできる。
【0044】
ここで、動作モードBでは、暖房運転に必要とされる目標温度にまで熱媒体の温度を上げるにあたって、第2の熱媒体加熱装置29bのみを用いて熱媒体を加熱しており、すなわち、制御装置が、併用運転における暖房運転時に、第1の熱媒体加熱装置29aによる熱媒体の加熱を行うことなく、第2の熱媒体加熱装置29bによる熱媒体の加熱を行うように構成されている。これにより、車載機器冷却運転に切り替えた時に、第1の熱媒体加熱装置29aの残熱によって第1熱媒体流路21a内の熱媒体が加熱されてしまうことを回避でき、熱ロスを抑えることができる。
【0045】
なお、上記の併用運転における、暖房運転と車載機器冷却運転を交互に切り替えるタイミング(すなわち、各運転の動作時間)等については、実施形態に応じて任意に設定すればよい。
【0046】
また、制御装置が、作業機用空調装置10の起動時(すなわち、使用者の操作等によって作業機用空調装置10が起動された時)において、暖房要求および車載機器冷却要求の両方を受けている場合、車載機器冷却運転から開始させるように構成するのが好ましい。
すなわち、暖房運転時における熱媒体加熱装置(本実施形態では、第2の熱媒体加熱装置29b)の駆動などにより、バッテリ等の車載機器12の電力を放電させると車載機器12は発熱する。そして、車載機器12が所定の管理温度範囲(例えば25℃±5℃等)を超えた場合、車載機器12の劣化や性能低下等に繋がるため、車載機器12の温調から開始することで、暖房運転から開始した場合に比べて車載機器12の劣化を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、動作モードB(併用運転時)における暖房運転の実行時にも、冷媒-熱媒体熱交換器35による第3熱媒体流路21c内の熱媒体の冷却が行われるようになっているが、動作モードB(併用運転時)における暖房運転の実行時には、冷媒-熱媒体熱交換器35による第3熱媒体流路21c内の熱媒体の冷却を一時的に停止するようにしてもよい。
また、同様に、本実施形態では、動作モードB(併用運転時)における車載機器冷却運転の実行時にも、第2の熱媒体加熱装置29bによる熱媒体の加熱が行われるようになっているが、動作モードB(併用運転時)における車載機器冷却運転の実行時には、第2の熱媒体加熱装置29bによる第2熱媒体流路21b内の熱媒体の加熱を一時的に停止するようにしてもよい。
【0048】
なお、動作モードBにおいて、制御装置が、(操作パネル等を通じて使用者等による冷房運転の要求を受け付けることで発生する)冷房運転を要求する冷房要求を受けている場合、バルブ26aを閉じてバルブ26bを開ける(言い換えると、車載機器用熱媒体循環路21a、21cのみで熱媒体を循環させる)ようになっている。
【0049】
次に、動作モードCについては、以下の通りである。
【0050】
まず、動作モードCでは、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも高温であることから、車載機器12を冷却する必要があり、また、空調システムが停止している。
そのため、動作モードCでは、構成要素11、22、24、29a、29b、32、33、35のうち、HVAC11、第1の熱媒体加熱装置29a、第2の熱媒体加熱装置29b以外については、起動している。
【0051】
具体的に説明すると、まず、動作モードCでは、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも高温であることから、制御装置が、車載機器冷却運転を要求する車載機器冷却要求を受けた状態となっている。
そのため、動作モードCでは、車載機器冷却運転のための、熱媒体循環装置22、車載機器温調部24、圧縮機32、冷媒放熱器33、冷媒-熱媒体熱交換器35が起動している。
【0052】
また、動作モードCにおいては、空調システムが停止していることから、空調システムに関連した構成要素については停止しており、また、(バルブ26bを開けて)バルブ26aを閉じるようになっている。
【0053】
次に、動作モードDについては、以下の通りである。
【0054】
まず、動作モードDでは、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも低温であることから、車載機器12を加熱する必要があり、また、空調システムが起動している。
そのため、動作モードDでは、構成要素11、22、24、29a、29b、32、33、35のうち、冷媒-熱媒体熱交換器35以外については、起動している。
【0055】
具体的に説明すると、まず、動作モードDでは、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも低温であることから、制御装置が、車載機器加熱運転を要求する車載機器加熱要求を受けた状態となっている。
ここで、車載機器加熱運転は、第1の熱媒体加熱装置29aで加熱された熱媒体を車載機器用熱媒体循環路21a、21cで循環させて、車載機器温調部24によって車載機器12を加熱する運転のことである。
そのため、動作モードDでは、車載機器加熱運転のための、熱媒体循環装置22、車載機器温調部24、第1の熱媒体加熱装置29aが起動している。
【0056】
なお、本実施形態では、動作モードDにおいて、制御装置が、冷房運転を要求する冷房要求を受け付けた場合、(バルブ26bを開けて)バルブ26aを閉じる(言い換えると、車載機器用熱媒体循環路21a、21cのみで熱媒体を循環させる)ようになっている。
また、動作モードDにおいて、制御装置が暖房要求を受けている場合には、バルブ26a、26bの両方を開け(言い換えると、空調用熱媒体循環路21a、21bおよび車載機器用熱媒体循環路21a、21cで熱媒体を循環させ)、暖房運転および車載機器加熱運転を同時に実行するようになっている。
【0057】
また、動作モードDでは、空調システムが起動しているため、暖房運転のための、HVAC11、放熱器23、熱媒体循環装置22、第1の熱媒体加熱装置29a、第2の熱媒体加熱装置29bが起動しており、また、冷房運転のための、HVAC11、圧縮機32、冷媒放熱器33、冷却器36が起動している。
【0058】
ここで、動作モードDでは、暖房運転時に、暖房運転に必要とされる目標温度にまで熱媒体の温度を上げるにあたって、第1の熱媒体加熱装置29aおよび第2の熱媒体加熱装置29bを用いて熱媒体を加熱している。
これにより、低外気時のような放熱器23(空調用熱媒体循環路21a、21b)に流れる熱媒体の目標温度(暖房時の目標温度)が高く、車載機器温調部24(車載機器用熱媒体循環路21a、21c)に流れる熱媒体の目標温度との温度差が大きい状況であっても、第1の熱媒体加熱装置29aで不足する暖房能力を第2の熱媒体加熱装置29bによって補うことが可能であるため、熱媒体加熱装置29a、29bに対する性能要求(加熱性能に関する要求)を低く抑えつつ、車載機器12の温調(車載機器加熱運転)と暖房運転の両立を図ることができる。
【0059】
次に、動作モードEについては、以下の通りである。
【0060】
まず、動作モードEでは、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも低温であることから、車載機器12を加熱する必要があり、また、空調システムが停止している。
そのため、動作モードEでは、構成要素11、22、24、29a、29b、32、33、35のうち、熱媒体循環装置22、車載機器温調部24、第1の熱媒体加熱装置29aについて、起動している。
【0061】
具体的に説明すると、まず、動作モードEでは、車載機器12の温度が所定の適正範囲よりも低温であることから、制御装置が、車載機器加熱運転を要求する車載機器加熱要求を受けた状態となっている。
そのため、動作モードEでは、車載機器加熱運転のための、熱媒体循環装置22、車載機器温調部24、第1の熱媒体加熱装置29aが起動している。
【0062】
また、動作モードEにおいては、空調システムが停止していることから、空調システムに関連した構成要素については停止しており、(バルブ26bを開けて)バルブ26aを閉じるようになっている。
【0063】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記または下記の実施形態や変形例の各構成を任意に組み合わせて作業機用空調装置10を構成する等、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 ・・・ 作業機用空調装置
11 ・・・ HVAC
12 ・・・ 車載機器
20 ・・・ 熱媒体回路
21a ・・・ 第1熱媒体流路
21b ・・・ 第2熱媒体流路
21c ・・・ 第3熱媒体流路
22 ・・・ 熱媒体循環装置
23 ・・・ 放熱器
24 ・・・ 車載機器温調部
25 ・・・ 熱媒体タンク
26 ・・・ 流路切替手段
26a ・・・ バルブ
26b ・・・ バルブ
27 ・・・ 流量計
28 ・・・ 温度センサ
29a ・・・ 第1の熱媒体加熱装置
29b ・・・ 第2の熱媒体加熱装置
30 ・・・ 冷媒回路
31a ・・・ 第1冷媒流路
31b ・・・ 第2冷媒流路
31c ・・・ 第3冷媒流路
32 ・・・ 圧縮機
33 ・・・ 冷媒放熱器
34 ・・・ 膨張装置
35 ・・・ 冷媒-熱媒体熱交換器
36 ・・・ 冷却器
37 ・・・ 圧力センサ
38 ・・・ 冷媒用バルブ
39 ・・・ 圧力スイッチ
図1
図2