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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130832
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電力変換装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040746
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ラクスマン マハルジャン
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730BB26
5H730BB27
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE05
5H730EE07
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FG10
5H730FG22
(57)【要約】
【課題】スイッチング損失の増大を抑制可能な電力変換装置の提供。
【解決手段】一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、フルブリッジ回路又はハーフブリッジ回路として動作する一次側ブリッジ回路と、ハーフブリッジ回路として動作する二次側ブリッジ回路と、前記一次側ブリッジ回路及び前記二次側ブリッジ回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路の直流電圧と前記二次側ブリッジ回路の直流電圧との比に応じて、前記一次側ブリッジ回路をフルブリッジ回路として動作させるかハーフブリッジ回路として動作させるか切り替える、電力変換装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
フルブリッジ回路又はハーフブリッジ回路として動作する一次側ブリッジ回路と、
ハーフブリッジ回路として動作する二次側ブリッジ回路と、
前記一次側ブリッジ回路及び前記二次側ブリッジ回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路の直流電圧と前記二次側ブリッジ回路の直流電圧との比に応じて、前記一次側ブリッジ回路をフルブリッジ回路として動作させるかハーフブリッジ回路として動作させるか切り替える、電力変換装置。
【請求項2】
前記一次側ブリッジ回路の直流電圧をE1、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧をE2とするとき、
前記制御装置は、E1/E2が所定値よりも小さい場合、前記一次側ブリッジ回路をフルブリッジ回路として動作させる、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御装置は、E1/E2が前記所定値以上の場合、前記一次側ブリッジ回路をハーフブリッジ回路として動作させる、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記一次側ブリッジ回路の直流電圧の最大変動幅は、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧の最大変動幅よりも大きい、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記一次側ブリッジ回路は、ハイサイドの第1アームとローサイドの第2アームとが直列に接続された第1レグと、ハイサイドの第3アームとローサイドの第4アームとが直列に接続された第2レグと、ハイサイドの第1キャパシタとローサイドの第2キャパシタとが直列に接続された第3レグとを有し、前記第1アームと前記第2アームとの第1接続点と前記第3アームと前記第4アームとの第2接続点とを接続する第1ブリッジ部分に前記一次巻線が設けられ、前記第1キャパシタと前記第2キャパシタとの第3接続点と前記第2接続点とを接続する第2ブリッジ部分にスイッチが設けられた、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路の直流電圧と前記二次側ブリッジ回路の直流電圧との比に応じて前記スイッチを制御することで、前記一次側ブリッジ回路をフルブリッジ回路として動作させるかハーフブリッジ回路として動作させるか切り替える、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記一次側ブリッジ回路の直流電圧をE1、前記二次側ブリッジ回路の直流電圧をE2とするとき、
前記制御装置は、E1/E2が所定値よりも小さい場合、前記スイッチをオフ状態とすることで、前記一次側ブリッジ回路をフルブリッジ回路として動作させる、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御装置は、E1/E2が前記所定値以上の場合、前記スイッチをオン状態とし、かつ、前記第2レグのスイッチングを止めることで、前記一次側ブリッジ回路をハーフブリッジ回路として動作させる、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記二次側ブリッジ回路は、ハイサイドの第5アームとローサイドの第6アームとが直列に接続された第4レグと、ハイサイドの第3キャパシタとローサイドの第4キャパシタとが直列に接続された第5レグとを有し、前記第5アームと前記第6アームとの第4接続点と前記第3キャパシタと前記第4キャパシタとの第5接続点とを接続する第3ブリッジ部分に前記二次巻線が設けられた、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路と前記二次側ブリッジ回路との間で電力が伝送されるように、前記一次側ブリッジ回路と前記二次側ブリッジ回路との間のスイッチングの位相差を制御する、請求項1から9のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
トランスと一次側ブリッジ回路と二次側ブリッジ回路とを備える電力変換装置の制御方法であって、
前記一次側ブリッジ回路の直流電圧と前記二次側ブリッジ回路の直流電圧との比に応じて、前記一次側ブリッジ回路をフルブリッジ回路として動作させるかハーフブリッジ回路として動作させるか切り替える、電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの単相ブリッジ回路が高周波絶縁トランスを介して接続されたDAB(Dual Active Bridge)と呼ばれる双方向絶縁型DC/DCコンバータが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このコンバータは、ブリッジ間の位相差を調整する電力制御を採用した場合には、スイッチング損失を低減可能なZVS(Zero-Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)を適用できるため、大電力用途に適している。
【0003】
また、ブリッジ間の位相差の制御に加えて、片側または両側の交流電圧のデューティ比を制御することで、低損失化を図る電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】R.W.A.A. De Doncker, D.M. Divan, and M.H. Kheraluwala,"A Three-Phase Soft-Switched High-Power-Density dc/dc Converter for High-Power Applications", IEEE Transactions on Industry Applications, Volume 27, Number 1, Pages 63-73, January/February 1991.
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6259009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、一次側ブリッジ回路の直流電圧と二次側ブリッジ回路の直流電圧との差によっては、スイッチング損失が増大する場合がある。
【0007】
本開示は、スイッチング損失の増大を抑制可能な電力変換装置及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様では、
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
フルブリッジ回路又はハーフブリッジ回路として動作する一次側ブリッジ回路と、
ハーフブリッジ回路として動作する二次側ブリッジ回路と、
前記一次側ブリッジ回路及び前記二次側ブリッジ回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記一次側ブリッジ回路の直流電圧と前記二次側ブリッジ回路の直流電圧との比に応じて、前記一次側ブリッジ回路をフルブリッジ回路として動作させるかハーフブリッジ回路として動作させるか切り替える、電力変換装置が提供される。
【0009】
本開示の第2態様では、
トランスと一次側ブリッジ回路と二次側ブリッジ回路とを備える電力変換装置の制御方法であって、
前記一次側ブリッジ回路の直流電圧と前記二次側ブリッジ回路の直流電圧との比に応じて、前記一次側ブリッジ回路をフルブリッジ回路として動作させるかハーフブリッジ回路として動作させるか切り替える、電力変換装置の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、スイッチング損失の増大を抑制可能な電力変換装置及びその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態の電力変換装置の一構成例を示す図である。
図2】制御装置の機能を例示するブロック図である。
図3】一次側ブリッジ回路をハーフブリッジ回路として動作させる場合を例示するタイミングチャートである。
図4】一次側ブリッジ回路をフルブリッジ回路として動作させる場合を例示するタイミングチャートである。
図5】一実施形態の電力変換装置の制御方法を例示するフローチャートである。
図6】一比較形態の電力変換装置の一構成例を示す図である。
図7】一比較形態の電力変換装置及びその制御方法による場合のシミュレーション動作波形の一例を示すタイミングチャートである。
図8】一実施形態の電力変換装置及びその制御方法による場合のシミュレーション動作波形の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、一実施形態の電力変換装置の一構成例を示す図である。図1に示す電力変換装置100は、トランス30の両側にブリッジ回路を備える双方向絶縁型DC/DCコンバータである。電力変換装置100は、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間で双方向に電力を供給できる。
【0014】
電力変換装置100は、トランス30と、一次側ブリッジ回路130と、二次側ブリッジ回路140と、制御装置150と、を備える。
【0015】
トランス30は、一次巻線31と二次巻線32とを有し、一次巻線31と二次巻線32とが磁気的に結合する変圧器である。一次巻線31および二次巻線32の巻線比は、適宜、設定される。本明細書においては、説明の便宜上、一次巻線31および二次巻線32の巻線比は1:1である場合について例示する。
【0016】
一次側ブリッジ回路130は、一次側直流端子(正側端子および負側端子)に接続され、一次側直流端子に接続される外部装置との間で電力を授受する。また、一次側ブリッジ回路130は、トランス30の一次側に接続され、トランス30の一次巻線31との間で電力を授受する。
【0017】
一次側ブリッジ回路130は、一次側の直流母線対P1,N1を有し、一次側直流端子の正側端子が正側の直流母線P1に、一次側直流端子の負側端子が負側の直流母線N1に接続される。一次側ブリッジ回路130は、トランス30の一次巻線31に一次側の直流母線対P1,N1によって印加される電圧の極性を切り替える。
【0018】
一次側ブリッジ回路130は、複数のレグ11,12を有するフルブリッジ回路を有する。
【0019】
一次側ブリッジ回路130は、例えば、ハイサイドのアームQ1とローサイドのアームQ2とが直列に接続されたレグ11と、ハイサイドのアームQ3とローサイドのアームQ4とが直列に接続されたレグ12とを有する。アームQ1は、第1アームの一例であり、アームQ2は、第2アームの一例であり、アームQ3は、第3アームの一例であり、アームQ4は、第4アームの一例である。レグ11は、第1レグの一例であり、レグ12は、第2レグの一例である。
【0020】
一次側ブリッジ回路130は、アームQ1とアームQ2との中間接続点a1と、アームQ3とアームQ4との中間接続点b1とを接続するブリッジ部分21に、トランス30の一次巻線31が設けられたフルブリッジ回路を有する。一次側ブリッジ回路130は、トランス30の一次巻線31に直列に接続されるリアクトルをブリッジ部分21に有してもよい。中間接続点a1は、第1接続点の一例である。中間接続点b1は、第2接続点の一例である。ブリッジ部分21は、第1ブリッジ部分の一例である。
【0021】
一次側ブリッジ回路130は、レグ13と、アームQ1~Q4と、を有する。
【0022】
レグ13は、一次側の直流母線対P1,N1の間に接続され、直流母線対P1,N1間の電圧(レグ13の両端電圧)を平滑化する。レグ13は、ハイサイドのキャパシタC1とローサイドのキャパシタC2とが直流母線対P1,N1の間に直列に接続された構成を含む。レグ13は、第3レグの一例である。キャパシタC1は、第1キャパシタの一例である。キャパシタC2は、第2キャパシタの一例である。
【0023】
一次側ブリッジ回路130は、キャパシタC1とキャパシタC2との中間接続点m1と、アームQ3とアームQ4との中間接続点b1とを接続するブリッジ部分22に、スイッチSW1が設けられている。中間接続点m1は、第3接続点の一例である。ブリッジ部分22は、第2ブリッジ部分の一例である。
【0024】
スイッチSW1は、スイッチ駆動部180によってオン状態又はオフ状態に駆動される素子又は回路であり、例えば、ブリッジ部分22を遮断するか否かを切り替えるトランジスタを含む。スイッチSW1は、オン状態になることでブリッジ部分22を導通可能とし、オフ状態になることでブリッジ部分22を非導通とする。スイッチSW1は、オン状態になることで、中間接続点m1と中間接続点b1との間において双方向の導通を可能とする双方向スイッチである。スイッチSW1の具体例として、RB-IGBT(Reverse Blocking Insulated Gate Bipolar Transistor)などが挙げられる。
【0025】
アームQ1~Q4は、一次側のスイッチング素子である。その具体例として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子が挙げられる。
【0026】
レグ11は、アームQ1とアームQ2とが直流母線対P1,N1の間に直列に接続された構成を含み、レグ12は、アームQ3とアームQ4とが直流母線対P1,N1の間に直列に接続された構成を含む。アームQ1~Q4は、それぞれ、第1主端子と、第2主端子と、制御端子とを有する。例えば、第1主端子は、ドレイン又はコレクタに対応し、第2主端子は、ソース又はエミッタに対応し、制御端子は、ゲートに対応する。アームQ1~Q4は、主端子間に逆接続されたダイオードを含んでよい。アームQ1~Q4がMOSFETの場合、このダイオードは寄生ダイオードであってもよい。図1は、還流ダイオードD1,D2,D3,D4を例示する。
【0027】
このような構成により、一次側ブリッジ回路130は、スイッチSW1がオフ状態において、アームQ1及びアームQ4がオン、アームQ2及びアームQ3がオフとなると、中間接続点a1を直流母線P1に電気的に接続し、中間接続点b1を直流母線N1に電気的に接続して、中間接続点a1と中間接続点b1の間の電圧V1を正電圧"E1"とする。E1は、直流母線対P1,N1の間の電圧値である。また、一次側ブリッジ回路130は、スイッチSW1がオフ状態において、アームQ1及びアームQ4がオフ、アームQ2及びアームQ3がオンとなると、中間接続点a1を直流母線N1に電気的に接続し、中間接続点b1を直流母線P1に電気的に接続して、電圧V1を負電圧"-E1"とする。このように、スイッチSW1がオフ状態のときには、一次側ブリッジ回路130は、トランス30の一次巻線31に一次側の直流母線対P1,N1によって印加される電圧の極性を切り替えるフルブリッジ回路として動作する。
【0028】
さらに、一次側ブリッジ回路130は、スイッチSW1がオフ状態において、アームQ1及びアームQ3がオン、アームQ2及びアームQ4がオフとなると、中間接続点a1及び中間接続点b1の両方を直流母線P1に電気的に接続して、電圧V1を実質的にゼロとする。又は、一次側ブリッジ回路130は、スイッチSW1がオフ状態において、アームQ1及びアームQ3がオフ、アームQ2及びアームQ4がオンとなると、中間接続点a1及び中間接続点b1の両方を直流母線N1に電気的に接続して、電圧V1を実質的にゼロとする。
【0029】
一方、一次側ブリッジ回路130は、スイッチSW1がオン状態、かつ、アームQ3及びアームQ4がオフ状態において、アームQ1がオン、アームQ2がオフとなると、中間接続点a1を直流母線P1に電気的に接続し、中間接続点b1を中間接続点m1に電気的に接続して、電圧V1を正電圧"E1/2"とする。つまり、電圧V1は、キャパシタC1の電圧(E1の半分)となる。また、一次側ブリッジ回路130は、スイッチSW1がオン状態、かつ、アームQ3及びアームQ4がオフ状態において、アームQ1がオフ、アームQ2がオンとなると、中間接続点a1を直流母線N1に電気的に接続し、中間接続点b1を中間接続点m1に電気的に接続して、電圧V1を負電圧"-E1/2"とする。つまり、電圧V1は、キャパシタC2の電圧(E1の半分)となる。このように、スイッチSW1がオン状態のときには、一次側ブリッジ回路130は、トランス30の一次巻線31に一次側の直流母線対P1,N1によって印加される電圧の極性を切り替えるハーフブリッジ回路として動作する。
【0030】
二次側ブリッジ回路140は、二次側直流端子(正側端子および負側端子)に接続され、二次側直流端子に接続される外部装置との間で電力を授受する。また、二次側ブリッジ回路140は、トランス30の二次側に接続され、トランス30の二次巻線32との間で電力を授受する。
【0031】
二次側ブリッジ回路140は、二次側の直流母線対P2,N2を有し、二次側直流端子の正側端子が正側の直流母線P2に、二次側直流端子の負側端子が負側の直流母線N2に接続される。二次側ブリッジ回路140は、トランス30の二次巻線32に二次側の直流母線対P2,N2によって印加される電圧の極性を切り替える。
【0032】
二次側ブリッジ回路140は、レグ14を有するハーフブリッジ回路を有する。
【0033】
二次側ブリッジ回路140は、例えば、ハイサイドのアームQ5とローサイドのアームQ6とが直列に接続されたレグ14を有する。アームQ5は、第5アームの一例であり、アームQ6は、第6アームの一例である。レグ14は、第4レグの一例である。
【0034】
二次側ブリッジ回路140は、レグ15と、アームQ5,Q6と、を有する。
【0035】
レグ15は、二次側の直流母線対P2,N2の間に接続され、直流母線対P2,N2間の電圧(レグ15の両端電圧)を平滑化する。レグ15は、ハイサイドのキャパシタC3とローサイドのキャパシタC4とが直流母線対P2,N2の間に直列に接続された構成を含む。レグ15は、第5レグの一例である。キャパシタC3は、第3キャパシタの一例である。キャパシタC4は、第4キャパシタの一例である。
【0036】
二次側ブリッジ回路140は、アームQ5とアームQ6との中間接続点a2と、キャパシタC3とキャパシタC4との中間接続点m2とを接続するブリッジ部分23に、トランス30の二次巻線32が設けられたハーフブリッジ回路を有する。二次側ブリッジ回路140は、トランス30の二次巻線32に直列に接続されるリアクトルをブリッジ部分23に有してもよい。中間接続点a2は、第4接続点の一例である。中間接続点m2は、第5接続点の一例である。ブリッジ部分23は、第3ブリッジ部分の一例である。
【0037】
アームQ5,Q6は、二次側のスイッチング素子である。その具体例として、アームQ1~Q4と同様、MOSFET、IGBTなどの半導体スイッチング素子が挙げられる。
【0038】
レグ14は、アームQ5とアームQ6とが直流母線対P2,N2の間に直列に接続された構成を含む。アームQ5,Q6は、アームQ1~Q4と同様、それぞれ、第1主端子と、第2主端子と、制御端子と、ダイオードと、を有する。図1は、還流ダイオードD5,D6を例示する。
【0039】
このような構成により、二次側ブリッジ回路140は、アームQ5がオン、アームQ6がオフとなると、中間接続点a2を直流母線P2に電気的に接続して、中間接続点a2と中間接続点m2の間の電圧V2を正電圧"E2/2"とする。つまり、電圧V2は、キャパシタC3の電圧(E2の半分)となる。E2は、直流母線対P2,N2の間の電圧値である。また、二次側ブリッジ回路140は、アームQ5がオフ、アームQ6がオンとなると、中間接続点a2を直流母線N2に電気的に接続して、電圧V2を負電圧"-E2/2"とする。つまり、電圧V2は、キャパシタC4の電圧(E2の半分)となる。このように、二次側ブリッジ回路140は、トランス30の二次巻線32に二次側の直流母線対P2,N2によって印加される電圧の極性を切り替えるハーフブリッジ回路として動作する。
【0040】
制御装置150は、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間で電力が伝送されるように、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間のスイッチングの位相差(以下、位相差δとも称する)を制御する。制御装置150は、電圧V1と電圧V2との位相差δを制御することによって、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間で伝送される電力を調整する。制御装置150は、一次側ブリッジ回路130のアームQ1~Q4の制御端子のオン又はオフを制御するための制御信号g1~g4と、二次側ブリッジ回路140のアームQ5,Q6の制御端子のオン又はオフを制御するための制御信号g5,g6とを出力する。制御装置150は、スイッチSW1のオン又はオフを制御するためのスイッチ信号s1を出力する。
【0041】
電力変換装置100は、一次側GDU160、二次側GDU170及びスイッチ駆動部180を備える。一次側GDU160は、制御信号g1~g4に従って、一次側ブリッジ回路130のアームQ1~Q4のオン又はオフのスイッチングを制御する一次側駆動回路である。二次側GDU170は、制御信号g5,g6に従って、二次側ブリッジ回路140のアームQ5,Q6のオン又はオフのスイッチングを制御する二次側駆動回路である。スイッチ駆動部180は、スイッチ信号s1に従って、スイッチSW1のオン又はオフのスイッチングを制御するスイッチ駆動回路である。
【0042】
制御装置150は、一次側ブリッジ回路130及び二次側ブリッジ回路140のそれぞれの直流電圧検出値、及び、片側のブリッジ回路(この例では、二次側ブリッジ回路140)の直流電流検出値を取得する。制御装置150は、これらの検出値と電流又は電力の指令値とに基づいて、ブリッジ間の伝送電力を制御するための制御信号g1~g6を生成してアームQ1~Q6を制御する。本実施形態では、制御装置150は、電圧検出値E1、電圧検出値E2及び電流検出値I2をセンサから取得し、これらの検出値と電流指令値I2*とに基づいて、ブリッジ間の伝送電力を制御するための制御信号g1~g6を生成してアームQ1~Q6を制御する。
【0043】
電圧検出値E1は、一次側ブリッジ回路130の直流電圧の検出値であり、より具体的には、直流母線対P1,N1の間の電圧E1の検出値である。電圧検出値E2は、二次側ブリッジ回路140の直流電圧の検出値であり、より具体的には、直流母線対P2,N2の間の電圧E2の検出値である。電流検出値I2は、二次側ブリッジ回路140の直流電流の検出値であり、より具体的には、直流母線P2に流れる電流I2の検出値である。電流指令値I2*は、二次側ブリッジ回路140の直流電流の指令値であり、より具体的には、直流母線P2に流れる電流I2の指令値である。指令値は、目標値とも称される。
【0044】
制御装置150は、一次側ブリッジ回路130の電圧検出値E1と二次側ブリッジ回路140の電圧検出値E2との比(以下、比Aとも称する)に応じて、一次側ブリッジ回路130をフルブリッジ回路として動作させるかハーフブリッジ回路として動作させるか切り替える。この例では、制御装置150は、比Aに応じてスイッチSW1を制御することで、一次側ブリッジ回路130をフルブリッジ回路として動作させるかハーフブリッジ回路として動作させるか切り替える。電圧検出値E1と電圧検出値E2との大小関係は、「E1<E2」「E1>E2」「E1=E2」のいずれの場合でもよい。
【0045】
制御装置150の機能は、メモリに記憶されたプログラムによって、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが動作することにより実現される。制御装置150の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
【0046】
図2は、制御装置の機能を例示するブロック図である。制御装置150は、例えば、電流制御部51、スイッチ制御部52および制御信号生成部53を有する。
【0047】
電流制御部51は、電流検出値I2及び電流指令値I2*に基づいて、一次側ブリッジ回路130と二次側ブリッジ回路140との間のスイッチングの位相差δを演算する。電流制御部51は、減算器54及びPI調節器55を含む。減算器54は、電流指令値I2*と電流検出値I2との差(電流差ΔI)を算出する。PI調節器55は、減算器54により算出された電流差ΔIが零に収束するような位相差δをPI制御又はPID制御により演算する(P:比例制御、I:積分制御、D:微分制御)。
【0048】
スイッチ制御部52は、電圧検出値E1及び電圧検出値E2に基づいて比Aを演算し、比Aの演算値に応じて、スイッチ信号s1及び選択信号fを生成する。スイッチ制御部52は、例えば、比A(=E1/E2)に応じて、スイッチSW1をオン状態又はオフ状態とするスイッチ信号s1を生成し、かつ、レグ12(アームQ3,Q4)のスイッチングを許可するか禁止するかを指定する選択信号fを生成する。電圧検出値E1と電圧検出値E2との大小関係は、「E1<E2」「E1>E2」「E1=E2」のいずれの場合でもよい。
【0049】
スイッチ制御部52は、例えば、E1/E2が所定値B以上の場合、一次側ブリッジ回路130をハーフブリッジ回路として動作させると判定する。スイッチ制御部52は、この場合、スイッチSW1をオン状態するスイッチ信号s1を生成するとともに、レグ12(アームQ3,Q4)のスイッチングを禁止する選択信号fを生成する。
【0050】
一方、スイッチ制御部52は、例えば、E1/E2が所定値Bよりも小さい場合、一次側ブリッジ回路130をフルブリッジ回路として動作させると判定する。スイッチ制御部52は、この場合、スイッチSW1をオフ状態するスイッチ信号s1を生成するとともに、レグ12(アームQ3,Q4)のスイッチングを許可する選択信号fを生成する。
【0051】
所定値Bは、一次側ブリッジ回路130の運転モードの切り替え判定用の閾値の一例である。所定値Bは、零よりも大きく1よりも小さな値である(0<B<1)。
【0052】
制御信号生成部53は、電流制御部51より出力される位相差δとスイッチ制御部52より出力される選択信号fに基づいて、制御信号g1~g6を生成する。制御信号生成部53は、レグ12のスイッチングが選択信号fにより禁止されているとき、電流制御部51より出力される位相差δが生じるように、アームQ3,Q4をオフ状態に固定し且つアームQ1,Q2,Q5,Q6をスイッチングさせる制御信号g1~g6を生成する。一方、制御信号生成部53は、レグ12のスイッチングが選択信号fにより許可されているとき、電流制御部51より出力される位相差δが生じるように、アームQ1~Q6をスイッチングさせる制御信号g1~g6を生成する。
【0053】
図3は、一次側ブリッジ回路をハーフブリッジ回路として動作させる場合を例示するタイミングチャートである。横軸のωtは、位相を表す。図3は、E1/E2が所定値B以上の条件において、一次側ブリッジ回路130から二次側ブリッジ回路140への電力伝送(電流指令値I2*は正)の場合を示している。ハイレベルは、オン状態を示し、ローレベルは、オフ状態を示す。
【0054】
スイッチ信号s1の論理レベルは、スイッチ制御部52によりハイレベルに固定されているので、スイッチSW1は、オン状態となっている。制御信号g3,g4の論理レベルは、制御信号生成部53によりローレベルに固定されているので、レグ12(アームQ3,Q4)は、スイッチング動作していない。レグ11(アームQ1,Q2)及びレグ14(アームQ5,Q6)は、パルス幅πを有する所定のデューティ比でスイッチング動作している。レグ12(アームQ3,Q4)は、スイッチング動作していないので、一次側ブリッジ回路130は、ハーフブリッジ回路として動作する。制御装置150は、ハーフブリッジ回路として動作する一次側ブリッジ回路130とハーフブリッジ回路として動作する二次側ブリッジ回路140のそれぞれの交流電圧間の位相差δを調整して、一次側から二次側への伝送電力を制御する。
【0055】
図4は、一次側ブリッジ回路をフルブリッジ回路として動作させる場合を例示するタイミングチャートである。横軸のωtは、位相を表す。図4は、E1/E2が所定値Bよりも小さい条件において、一次側ブリッジ回路130から二次側ブリッジ回路140への電力伝送(電流指令値I2*は正)の場合を示している。ハイレベルは、オン状態を示し、ローレベルは、オフ状態を示す。
【0056】
スイッチ信号s1の論理レベルは、スイッチ制御部52によりローレベルに固定されているので、スイッチSW1は、オフ状態となっている。制御信号g1~g6の論理レベルは、固定されていないので、レグ11(アームQ1,Q2)、レグ12(アームQ3,Q4)及びレグ14(アームQ5,Q6)は、パルス幅πを有する所定のデューティ比でスイッチング動作している。したがって、一次側ブリッジ回路130は、フルブリッジ回路として動作する。制御装置150は、フルブリッジ回路として動作する一次側ブリッジ回路130とハーフブリッジ回路として動作する二次側ブリッジ回路140のそれぞれの交流電圧間の位相差δを調整して、一次側から二次側への伝送電力を制御する。
【0057】
図5は、一実施形態の電力変換装置の制御方法を例示するフローチャートである。制御装置150は、E1/E2が所定値B以上か否かを判定する(ステップS10)。制御装置150は、E1/E2が所定値B以上とステップS10で判定した場合、一次側ブリッジ回路130をハーフブリッジ回路として動作させる(ステップS20)。ステップS20において、制御装置150は、スイッチ信号s1の論理レベルを、スイッチSW1がオンとなるレベル(この例では、ハイレベル)に固定し、かつ、制御信号g3,g4の論理レベルを、レグ12(アームQ3,Q4)のスイッチングが停止するレベル(この例では、ローレベル)に固定する。一方、制御装置150は、E1/E2が所定値B未満とステップS10で判定した場合、一次側ブリッジ回路130をフルブリッジ回路として動作させる(ステップS30)。ステップS30において、制御装置150は、スイッチ信号s1の論理レベルを、スイッチSW1がオフとなるレベル(この例では、ローレベル)に固定する。
【0058】
次に、本実施形態の電力変換装置と比較するため、一比較形態の電力変換装置について説明する。
【0059】
図6は、一比較形態の電力変換装置の一構成例を示す図である。一比較形態の電力変換装置200(図6)は、本実施形態の電力変換装置100(図1)と同様に、トランス30の両側にブリッジ回路を備える双方向絶縁型DC/DCコンバータである。電力変換装置200は、一次側ブリッジ回路130がハーフブリッジ回路のみで構成されている点で、電力変換装置100と相違し、それ以外の点は、電力変換装置100と同様である。
【0060】
図7は、一比較形態の電力変換装置200(図6)及びその制御方法による場合のシミュレーション動作波形の一例を示すタイミングチャートである。図8は、一実施形態の電力変換装置100(図1)及びその制御方法による場合のシミュレーション動作波形の一例を示すタイミングチャートである。図7及び図8は、E1<E2の場合を示す。横軸は、時間を表す。
【0061】
図7及び図8のシミュレーション条件は、
・E1=375[V],E2=750[V] (E1/E2=0.5)
・電力伝送方向:一次側から二次側への方向
・トランス30の巻線比は1:1
・所定値B=0.75
とした。すなわち、一実施形態の電力変換装置100の場合、一次側ブリッジ回路130は、E1/E2≧0.75の場合、ハーフブリッジ回路として動作し、E1/E2<0.75の場合、フルブリッジ回路として動作する。
【0062】
図7(一比較形態の電力変換装置200の場合)において、電圧V1は、一次側ブリッジ回路130における中間接続点a1と中間接続点m1との間の交流電圧を表す。電圧V2は、二次側ブリッジ回路140における中間接続点a2と中間接続点m2との間の交流電圧を表す。電流Iac1は、一次側ブリッジ回路130の交流電流(トランス30の一次巻線31に流れる電流)を示す。
【0063】
一比較形態の制御装置150は、ある周波数で一次側ブリッジ回路130をスイッチングすることで、電圧V1を正電圧および負電圧の間でスイッチングさせる。制御装置150は、アームQ1をオンとし且つアームQ2をオフとする制御信号g1,g2を一次側ブリッジ回路130に供給することにより、電圧V1を正電圧"E1/2"とすることができる。また、制御装置150は、アームQ1をオフとし且つアームQ2をオンとする制御信号g1,g2を一次側ブリッジ回路130に供給することにより、電圧V1を負電圧"-E1/2"とすることができる。
【0064】
一比較形態の制御装置150は、一次側ブリッジ回路130と同じ周波数で二次側ブリッジ回路140をスイッチングさせることで、電圧V2を正電圧および負電圧の間でスイッチングさせる。制御装置150は、アームQ5をオンとし且つアームQ6をオフとする制御信号g5,g6を二次側ブリッジ回路140に供給することにより、電圧V2を正電圧"E2/2"とすることができる。また、制御装置150は、アームQ5をオフとし且つアームQ6をオンとする制御信号g5,g6を二次側ブリッジ回路140に供給することにより、電圧V2を負電圧"-E2/2"とすることができる。
【0065】
制御装置150は、電圧V1のスイッチングと電圧V2のスイッチングとの間に位相差δを持たせる。
【0066】
図7において、電圧V1の極性と電圧V2の極性が不一致となる期間において、V1が正でV2が負の期間T1では、電流Iac1は増加し、V1が負でV2が正の期間T3では、電流Iac1は減少する。一方、電圧V1の極性と電圧V2の極性が一致する期間では、E1とE2の大小関係(V1とV2の大小関係)の違いによって、電流Iac1は、減少又は増加する。V1,V2が正の期間T2では、E1<E2(V1<V2)の場合(図7)は、電流Iac1は減少し、E1>E2(V1>V2)の場合(不図示)は、電流Iac1は増加する。V1,V2が負の期間T4では、E1<E2(-V1>-V2)の場合(図7)は、電流Iac1は増加し、E1>E2(-V1<-V2)の場合(不図示)は、電流Iac1は減少する。
【0067】
電圧V1の極性と電圧V2の極性が一致する期間T2の中間タイミングにおいて、電流Iac1の流れる向きが正から負に反転している。反転前の正の電流Iac1は、オン状態のアームQ1に流れていることを表し、反転後の負の電流Iac1は、オン状態のアームQ1に逆並列に接続される還流ダイオードD1に流れていることを表す。期間T2の終了時点でアームQ1がオフ及びアームQ2がオンとなると、アームQ2は、ハードターンオンスイッチングとなるので、スイッチング損失が増大する。
【0068】
電圧V1の極性と電圧V2の極性が一致する期間T4の中間タイミングにおいて、電流Iac1の流れる向きが負から正に反転している。反転前の負の電流Iac1は、オン状態のアームQ2に流れいていることを表し、反転後の正の電流Iac1は、オン状態のアームQ2に逆並列に接続される還流ダイオードD2に流れていることを表す。期間T4の終了時点でアームQ1がオン及びアームQ2がオフとなると、アームQ1は、ハードターンオンスイッチングとなるので、スイッチング損失が増大する。
【0069】
このように、図7では、高電圧側(二次側)はZVSを達成できているものの、低電圧側(一次側)はZVSを達成できずハードスイッチングになっていることがわかる。これは、E1/E2=0.5で、一次側ブリッジ回路130の直流電圧E1と二次側ブリッジ回路140の直流電圧E2との差が大きいためである。したがって、電力変換装置200(特に、一次側ブリッジ回路130)のスイッチング損失が増加する。
【0070】
一方、図8(一実施形態の電力変換装置100の場合)において、電圧V1は、一次側ブリッジ回路130における中間接続点a1と中間接続点b1との間の交流電圧を表す。電圧V2は、二次側ブリッジ回路140における中間接続点a2と中間接続点m2との間の交流電圧を表す。電流Iac1は、一次側ブリッジ回路130の交流電流(トランス30の一次巻線31に流れる電流)を示す。
【0071】
図8では、E1/E2(=0.5)は所定値B(=0.75)よりも小さいため、一実施形態の制御装置150は、一次側ブリッジ回路130をフルブリッジ回路として動作させる。
【0072】
一実施形態の制御装置150は、ある周波数で一次側ブリッジ回路130をスイッチングすることで、電圧V1を正電圧および負電圧の間でスイッチングさせる。制御装置150は、アームQ1及びアームQ4をオンとし且つアームQ2及びアームQ3をオフとする制御信号g1~g4を一次側ブリッジ回路130に供給することにより、電圧V1を正電圧"E1"とすることができる。また、制御装置150は、アームQ1及びアームQ4をオフとし且つアームQ2及びアームQ3をオンとする制御信号g1~g4を一次側ブリッジ回路130に供給することにより、電圧V1を負電圧"-E1"とすることができる。
【0073】
一実施形態の制御装置150は、一次側ブリッジ回路130と同じ周波数で二次側ブリッジ回路140をスイッチングさせることで、電圧V2を正電圧および負電圧の間でスイッチングさせる。制御装置150は、アームQ5をオンとし且つアームQ6をオフとする制御信号g5,g6を二次側ブリッジ回路140に供給することにより、電圧V2を正電圧"E2/2"とすることができる。また、制御装置150は、アームQ5をオフとし且つアームQ6をオンとする制御信号g5,g6を二次側ブリッジ回路140に供給することにより、電圧V2を負電圧"-E2/2"とすることができる。
【0074】
制御装置150は、電圧V1のスイッチングと電圧V2のスイッチングとの間に位相差δを持たせる。
【0075】
図8において、電圧V1の極性と電圧V2の極性が一致する期間T2,T4では、電圧V1と電圧V2との差が零に近づいている。このため、期間T2の中間タイミングにおいて、電流Iac1の流れる向きは正のまま反転していないし、期間T4の中間タイミングにおいて、電流Iac1の流れる向きは負のまま反転していない。
【0076】
期間T2における正の電流Iac1は、オン状態のアームQ1,Q4に流れていることを表し、期間T4における負の電流Iac1は、オン状態のアームQ2,Q3に流れていることを表す。期間T2の終了時点でアームQ1,Q4がオフになると、正の電流Iac1は、オフ状態のアームQ2,Q3それぞれに逆並列に接続される還流ダイオードD2,D3に流れる。そして、還流ダイオードD2,D3が導通している状態でアームQ2,Q3がオンになるとZVSが達成する。同様に、期間T4の終了時点でアームQ2,Q3がオフになると、負の電流Iac1は、オフ状態のアームQ1、Q4それぞれに逆並列に接続される還流ダイオードD1,D4に流れる。そして、還流ダイオードD1,D4が導通している状態でアームQ1,Q4がオンになるとZVSが達成する。このように、図8では、高圧側(二次側)および低圧側の両側は、ZVSを達成できていることがわかる。したがって、一実施形態の電力変換装置100は、一比較形態の電力変換装置200に比較して、スイッチング損失が低減する。
【0077】
また、図8は、図7に比べて、交流の電流Iac1のピーク値および無効電流(循環電流)成分が大幅に減少している。これにより、電力変換装置100の損失が更に低減し、電力変換装置100の電力変換効率が向上する。
【0078】
このように、本実施形態の電力変換装置100及びその制御方法によれば、スイッチング損失の増大を抑制することができる。
【0079】
また、一次側ブリッジ回路130の直流電圧E1の最大変動幅は、二次側ブリッジ回路140の直流電圧E2の最大変動幅よりも大きい場合、スイッチング損失の増大を抑制する効果が高まる。制御装置150は、E1とE2の比に応じて、直流電圧の変動幅が大きい方のブリッジ回路(この場合、一次側ブリッジ回路130)をハーフブリッジ回路として動作させるのかフルブリッジ回路として動作させるのか切り替える。したがって、変動幅が相対的に大きな直流電圧E1の値に応じて、ハーフブリッジ回路として動作させるのかフルブリッジ回路として動作させるのかを適切に選択可能となる。
【0080】
なお、ZVSとは、スイッチング素子の第1主端子と第2主端子との間の電圧が略零の状態(具体的には、スイッチング素子に並列に存在するダイオードに順方向電流が流れている状態)で当該スイッチングをオンさせることをいう。ハードスイッチングとは、スイッチング素子の第1主端子と第2主端子との間に略零でない電圧が印加されている状態(具体的には、スイッチング素子に並列に存在するダイオードに順方向電流が流れていない状態)で当該スイッチングをオンさせることをいう。
【0081】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0082】
例えば、二次側ブリッジ回路140を一次側ブリッジ回路とし、一次側ブリッジ回路130を二次側ブリッジ回路と定義してもよい。
【符号の説明】
【0083】
100 電力変換装置
11,12,13,14 レグ
21,22,23 ブリッジ部分
30 トランス
31 一次巻線
32 二次巻線
51 電流制御部
52 スイッチ制御部
53 制御信号生成部
130 一次側ブリッジ回路
140 二次側ブリッジ回路
150 制御装置
160 一次側GDU
170 二次側GDU
180 スイッチ駆動部
C1,C2 キャパシタ
D1~D8 還流ダイオード
Q1~Q8 アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8