(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130836
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】コイル部品の製造方法、コイル部品、及び中間生成物
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20240920BHJP
H01F 17/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01F41/04 B
H01F41/04 C
H01F17/06 A
H01F17/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040754
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】千頭和 周平
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FF01
5E070AA01
5E070AB02
5E070BA15
5E070CA01
5E070CA15
5E070CC10
(57)【要約】
【課題】必要な巻数を確保しつつ、小型化を達成することができるコイル部品の製造方法、コイル部品、及び中間生成物を提供する。
【解決手段】コイル部品の製造方法は、複数の分割コアが連結されて成る円環状のコアと、コアの回りに円環状に巻き付けられて、コアの延在方向に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る巻線部と、を備えるコイル部品の製造方法であって、巻線部を積層造形により形成する巻線形成工程と、巻線部に分割コアを挿通するコア挿通工程と、複数の分割コアを連結してコアを形成するコア連結工程と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割コアが連結されて成る円環状のコアと、前記コアの回りに円環状に巻き付けられて、前記コアの延在方向に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る巻線部と、を備えるコイル部品の製造方法であって、
前記巻線部を積層造形により形成する巻線形成工程と、
前記巻線部に前記分割コアを挿通するコア挿通工程と、
複数の前記分割コアを連結して前記コアを形成するコア連結工程と、
を含むコイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記巻線形成工程では、前記巻線部の複数の巻線を架橋する架橋部を形成し、
前記コア連結工程の後に、前記架橋部を除去する架橋部除去工程をさらに含む、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
複数の分割コアが連結されて成る円環状のコアと、
前記コアの回りに円環状に巻き付けられて、前記コアの延在方向に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る巻線部と、
を備えるコイル部品。
【請求項4】
複数の分割コアが連結されて成る円環状のコアと、前記コアの回りに円環状に巻き付けられて、前記コアの延在方向に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る巻線部と、を備えるコイル部品を形成する過程で生成される中間生成物であって、
前記コアと、
前記巻線部と、
前記巻線部の複数の巻線を架橋する架橋部と、を備える中間生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品の製造方法、コイル部品、及び中間生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コアに巻回された第1及び第2の巻線と、コアに巻回され第1の巻線と第2の巻線との線間距離を規定するダミーの巻線とを備えるコイル部品が開示されている。このようなコイル部品では、第1の巻線と第2の巻線との間にダミーの巻線をセパレータとして介在させることにより、両者の線間距離を常に一定に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高電圧の電源用コモンモードコイルでは、巻線間の絶縁性が必要となるため、キャンセル巻きが主流であるが、キャンセル巻きでは、漏れ磁束が大きくなってしまう。一方で、バイファイラ巻きでは、キャンセル巻きと比べて漏れ磁束を小さくできるが、高電圧のコモンモードコイルでバイファイラ巻きを実現する場合、絶縁距離が必要な箇所が多くセパレータの数が増え、巻数が小さくなり、コイル部品が大型化してしまう。
また、高電圧に対応させるためには、巻線を太くする必要がある。巻線を太くすると、コアに巻線を巻き付けることが難しくなり、巻数がより一層小さくなり、コイル部品がより一層大型化する。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、必要な巻数を確保しつつ、小型化を達成することができるコイル部品の製造方法、コイル部品、及び中間生成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るコイル部品の製造方法は、複数の分割コアが連結されて成る円環状のコアと、前記コアの回りに円環状に巻き付けられて、前記コアの延在方向に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る巻線部と、を備えるコイル部品の製造方法であって、前記巻線部を積層造形により形成する巻線形成工程と、前記巻線部に前記分割コアを挿通するコア挿通工程と、複数の前記分割コアを連結して前記コアを形成するコア連結工程と、を含む。
【0007】
本開示に係るコイル部品は、複数の分割コアが連結されて成る円環状のコアと、前記コアの回りに円環状に巻き付けられて、前記コアの延在方向に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る巻線部と、を備える。
【0008】
本開示に係る中間生成物は、複数の分割コアが連結されて成る円環状のコアと、前記コアの回りに円環状に巻き付けられて、前記コアの延在方向に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る巻線部と、を備えるコイル部品を形成する過程で生成される中間生成物であって、前記コアと、前記巻線部と、前記巻線部の複数の巻線を架橋する架橋部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示のコイル部品の製造方法、コイル部品、及び中間生成物によれば、必要な巻数を確保しつつ、小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係るコイル部品の全体構成図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るコアを説明する図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る製造装置の全体構成図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るコイル部品の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施形態に係る巻線形成工程の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施形態に係る第1形成工程を説明するため、形成途中の第1巻線及び第2巻線を上方から見たイメージ図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る第1形成工程を説明するため、形成途中の第1巻線及び第2巻線を上下方向に垂直な側方から見たイメージ図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る第2形成工程を説明するため、形成途中の第1巻線及び第2巻線を上方から見たイメージ図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る第2形成工程を説明するため、形成途中の第1巻線及び第2巻線を上下方向に垂直な側方から見たイメージ図である。
【
図11】本開示の実施形態に係る第3形成工程を説明するため、第1巻線及び第2巻線を上方から見たイメージ図である。
【
図12】本開示の実施形態に係る第3形成工程を説明するため、第1巻線及び第2巻線を上下方向に垂直な側方から見たイメージ図である。
【
図13】本開示の実施形態に係るコア挿通工程を説明するため、中間生成物を軸線方向から見たイメージ図である。
【
図14】本開示の実施形態に係るコア挿通工程を説明するため、中間生成物を軸線方向に垂直な側方から見たイメージ図である。
【
図15】本開示の変形例に係るコイル部品の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図16】本開示の変形例に係る第1形成工程を説明するため、形成途中の第1巻線及び第2巻線を上方から見たイメージ図である。
【
図17】本開示の変形例に係る第3形成工程を説明するため、形成途中の第1巻線及び第2巻線を上方から見たイメージ図である。
【
図18】本開示の変形例に係るコア挿通工程を説明するため、中間生成物を軸線方向から見たイメージ図である。
【
図19】本開示の実施形態に係るコンピュータの構成を示すハードウェア構成図である。
【
図20】本開示のその他の実施形態に係る巻線形成工程における、巻線部を上方から見たイメージ図である。
【
図21】本開示のその他の実施形態に係るコア挿通工程における、中間生成物を上方から見たイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係るコイル部品100の製造方法、コイル部品100、及び中間生成物101について、
図1から
図14を参照して説明する。
図1に示すように、コイル部品100は、コイルケーシング10と、コア20と、固定ブラケット30と、巻線部40と、樹脂部1とを備える。
【0012】
(コイルケーシング)
コイルケーシング10は、内部にコア20と巻線部40とを収容するための収容空間11を内部に有した筐体である。筐体は、収容空間11を外部に開放する開口部12を有する。コイルケーシング10は、例えばコイル部品100を冷却する冷却ケーシング4に載置されている。この冷却ケーシング4内には、コイル部品100と熱交換を行う冷媒Fが流れている。また、開口部12の縁部12aの一部には、縁部12aから開口部12の開放方向外側に向けて延びる支持部13が設けられている。支持部13は、後述するコア20を製造工程において支持する部材であるが、この支持部13は、設けられていなくてもよい。
【0013】
(コア)
コア20は、コイルケーシング10内に収容されている。コア20は、円環状に形成されている。
以下では、コア20の中心軸線を軸線Oと称する。さらに、この軸線Oについて、軸線O中心とした仮想円Cに沿う周方向を単に「周方向」と称し、この仮想円Cについての「径方向」と称して説明する。
図2に示すように、コア20は、2つの分割コア21を有する。コア20は、これら2つの分割コア21が連結されて成る。分割コア21は、コア本体22と、コア連結部23とを備える。
【0014】
(分割コア)
2つの分割コア21は、同形状に形成されている。各分割コア21は、コア本体22と、コア連結部23とを有する。コア本体22は、仮想円Cの回りに、仮想円Cに沿う半円弧状に形成されている。仮想円Cとコア本体22の内周面22aと離間距離は、仮想円Cとコア本体22の外周面22bとの離間距離と等しくなっている。コア連結部23は、コア本体22の周方向一方側の端部に設けられている。コア連結部23は、コア本体22から径方向外側に向けて突出している。
2つの分割コア21は、周方向他方側の端部21aを連結され、この端部21aを通り軸線Oに平行な仮想軸線を中心として回動可能とされている。2つの分割コア21同士は重ね合わされた状態で、固定ブラケット30によって固定されている。
【0015】
(固定ブラケット)
固定ブラケット30は、ブラケット本体31と、爪部32とを有する。
ブラケット本体31は、平板状に形成されている。ブラケット本体31の縁部31aの一部は、コイルケーシング10の支持部13に固定されている。爪部32は、ブラケット本体31の一面に2つ形成されている。固定ブラケット30は、2つの爪部32によって重ね合わされた2つのコア連結部23を挟み込むことによって2つの分割コア21を連結して固定する。
【0016】
(巻線部)
巻線部40は、コア20の回りに円環状に巻き付けられて、コア20の延在方向(周方向)に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る。本実施形態では、巻線部40が2線(P,N)の場合を例に本開示の構成を説明する。巻線部40を構成する2本の巻線のうち、一方を第1巻線41と称し、他方を第2巻線42と称する。第1巻線41及び第2巻線42のいずれか一方がP線であり、他方がN線である。これら第1巻線41及び第2巻線42の巻き方には、バイファイラ巻きが用いられている。また、第1巻線41及び第2巻線42は、例えば銅等の同一の金属材料により形成されている。第1巻線41の両端部41aと、第2巻線42の両端部42aは、ともに端子台2にボルト3によって固定されている。
以下では、隣り合う巻線間の離間距離(本実施形態では、第1巻線41と第2巻線42との離間距離)を巻線間距離L1と称し、巻線部40の周方向の間隔を巻線部間隔L2と称する。巻線間距離L1及び巻線部間隔L2は、ともに、軸線O方向視で仮想円Cに沿う寸法である。この時、巻線間距離L1は、巻線部間隔L2よりも小さく、複数の巻線間の絶縁(本実施形態では、第1巻線41と第2巻線42とのP-N間の絶縁)を確保できる距離となっている。具体的には、通常100V毎に1mmの巻線間距離L1が必要となる。
【0017】
第1巻線41及び第2巻線42とは、ともに、コア20のうちコア連結部23とは反対側に巻き付けられている。第1巻線41及び第2巻線42は、2つの分割コア21を跨るように巻き付けられている。また、第1巻線41のうち少なくとも両端部41aは、厚さ方向が軸線O方向と一致する平板状に形成されている。同様に、第2巻線42のうち少なくとも両端部42aは、厚さ方向が軸線O方向と一致する平板状に形成されている。
【0018】
上述した巻線部40とコア20とは、コイルケーシング10の収容空間11内に収容されている。収容空間11内の巻線部40とコア20が配置されている以外のスペースには、樹脂ポッティングにより形成された樹脂部1が充填されている。樹脂部1は、コイル部品100と冷却ケーシング4との熱交換を促進させる。
【0019】
(製造方法の手順)
続いて、コイル部品100の製造方法の手順について説明する。
コイル部品100の製造には、例えば
図3に示す製造装置50を用いる。
【0020】
(製造装置)
製造装置50は、例えばAM(Additive Manufacturing)の積層造形技術により、上述したコイル部品100の巻線部40を形成する。本実施形態の製造装置50は、パウダーヘッド方式で巻線部40を形成する。
製造装置50は、ステージ51と、粉体供給装置52と、レーザ装置53と、除去機器54と、制御装置60とを備える。
以下では、ステージ51が水平方向に延在している場合を例に説明する。ステージ51は、上下方向D1及び上下方向D1に垂直な水平方向に移動可能に構成されている。
【0021】
粉体供給装置52は、第1巻線41と第2巻線42の材料となる粉体Pを、ステージ51上に供給する装置である。粉体Pは、例えば銅等の金属粉末である。
レーザ装置53は、ステージ51上の粉体PにレーザLを照射する。ステージ51上の粉体Pは、レーザLが照射されることにより、第1巻線41と第2巻線42の一部となる。
除去機器54は、凝固した粉体Pのうち不要な部分等を除去するための機器である。
【0022】
制御装置60は、製造装置50を構成する各種装置及び機器を制御する。
図4に示すように、制御装置60は、ステージ移動部61と、粉体供給部62と、照射部63と、除去部64とを有する。
ステージ移動部61は、ステージ51を上下方向D1及び水平方向に移動させる。
粉体供給部62は、粉体供給装置52を制御し、ステージ51上に粉体Pを供給する。
照射部63は、レーザ装置53を制御し、ステージ51上の粉体PにレーザLを照射させる。
除去部64は、除去機器54を制御し、凝固した粉体Pのうち不要な部分等を除去する。
【0023】
上述した製造装置50を用いて、コイル部品100を製造する。
図5に示すように、本実施形態のコイル部品100の製造方法は、巻線形成工程S1と、コア挿通工程S2と、コア連結工程S3と、巻線固定工程S4と、樹脂充填工程S5とを含む。まずは、巻線形成工程S1が行われる。
【0024】
(巻線形成工程)
巻線形成工程S1では、第1巻線41及び第2巻線42から成る巻線部40を積層造形により形成する。
図6に示すように、巻線形成工程S1は、第1形成工程S11と、第2形成工程S12と、第3形成工程S13とを含む。
【0025】
図7、
図8に示すように、第1形成工程S11では、まず、ステージ移動部61が、ステージ51を制御してステージ51の上下方向D1及び水平方向位置を調整する。その後、粉体供給部62が粉体供給装置52を制御してステージ51上に粉体Pを敷設して供給する。続いて、照射部63がレーザ装置53を制御してステージ51上の粉体PにレーザLを照射する。すると、粉体Pが凝固して、ステージ51上に第1巻線41と下部41bと、第2巻線42の下部42bとが形成される。
【0026】
なお、コイル部品100の製造方法の手順において、便宜上、ステージ51が水平方向に延在し、第1巻線41及び第2巻線42がステージ51から上方に向かって積層造形される場合を例に説明しているが、これに限られない。ステージ51は、水平面に対して傾斜していてもよいし、上下方向に延在してもよい。また、第1巻線41と第2巻線42とが積層造形される方向は、ステージ51の表面の延在方向に対して交差する方向であればよい。
第1形成工程S11の後には、第2形成工程S12が行われる。
【0027】
図9、
図10に示すように、第2形成工程S12では、まず、ステージ移動部61が、ステージ51を制御してステージ51の上下方向D1及び水平方向位置を調整する。その後、粉体供給部62が粉体供給装置52を制御してステージ51上に粉体Pを敷設して供給する。続いて、照射部63がレーザ装置53を制御してステージ51上の粉体PにレーザLを照射する。すると、粉体Pが凝固して、ステージ51上に第1巻線41と側部41cと、第2巻線42の側部42cとが形成される。第1巻線41の側部41cは、第1巻線41の下部41bから上方に延びた部分であり、第2巻線42の側部42cは、第2巻線42の下部42bから上方に延びた部分である。また、第2形成工程S12では、第1巻線41の側部42c及び第2巻線42の側部42cの形成と同時に、第1巻線41の側部42cと第2巻線42の側部42cを支持するサポート45を形成する。このサポート45により巻線間距離L1及び巻線部間隔L2が維持される。なお、サポート45の形成は、第1巻線41の側部41c及び第2巻線42の側部42cの形成の前に行われてもよい。
第2形成工程S12の後には、第3形成工程S13が行われる。
【0028】
図11、
図12に示すように、第3形成工程S13では、まず、ステージ移動部61が、ステージ51を制御してステージ51の上下方向D1及び水平方向位置を調整する。その後、粉体供給部62が粉体供給装置52を制御してステージ51上に粉体Pを敷設して供給する。続いて、照射部63がレーザ装置53を制御してステージ51上の粉体PにレーザLを照射する。すると、粉体Pが凝固して、ステージ51上に第1巻線41と上部42dと、第2巻線42の上部42dとが形成される。第1巻線41の上部41dは、第1巻線41の側部41cの上端から水平方向に延在した部分であり、第2巻線42の上部42dは、第2巻線42の側部42cの上端から水平方向に延在した部分である。また、第3形成工程S13では、第2形成工程S12と同様にサポート45が形成される。
第3形成工程S13の後には、除去部64が除去機器54を制御して凝固した粉体Pのうち、第1巻線41及び第2巻線42の不要な部分を除去する。なお、除去機器54及び制御装置60の除去部64の機能は、必ずしも設けられていなくてもよい。以上の手順で巻線形成工程S1が完了する。巻線形成工程S1の後には、コア挿通工程S2が行われる。
【0029】
(コア挿通工程)
コア挿通工程S2では、第1巻線41及び第2巻線42から成る巻線部40に分割コア21を挿通する。
コア挿通工程S2の後には、コア連結工程S3が行われる。
(コア連結工程)
コア連結工程S3では、複数の分割コア21を連結してコア20を形成する。
これにより、
図13、
図14に示すような、コイル部品100の製造過程における中間生成物101が形成される。中間生成物101は、コア20と、巻線部40とを備える。
コア連結工程S3の後には、巻線固定工程S4が行われる。
【0030】
(巻線固定工程)
巻線固定工程S4では、コア20及び巻線部40をコイルケーシング10内に配置する。続いて、
図1に示すように、固定ブラケット30をコイルケーシング10に固定する。その後、第1巻線41の端部41a及び第2巻線42の端部42aをコイルケーシング10外に引き出して、ボルト3によって端子台2に固定する。なお、第1巻線41の端部41aと、第2巻線42の端部42aとには、それぞれ、締結用のボルト3を挿通するための挿通孔41e,42eがそれぞれ必要となる。これら、第1巻線41の挿通孔41eと、第2巻線42の挿通孔42eは、巻線形成工程S1で積層造形時に成形してもよく、巻線形成工程S1の後に機械加工により形成してもよい。
巻線固定工程S4の後には、樹脂充填工程S5が行われる。
【0031】
(樹脂充填工程)
樹脂充填工程S5では、コイルケーシング10内に樹脂ポッティングを行い、樹脂部1を形成する。これにより、コア20及び巻線部40がコイルケーシング10に固定され、
図1に示すコイル部品100が製造される。
以上の手順を経て、コイル部品100の製造が完了する。
【0032】
(作用効果)
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
【0033】
本実施形態では、コイル部品100の製造方法は、第1巻線41及び第2巻線42から成る巻線部40を積層造形により形成する巻線形成工程S1と、巻線部40に分割コア21を挿通するコア挿通工程S2と、複数の分割コア21を連結してコア20を形成するコア連結工程S3と、を含む。
【0034】
本実施形態によれば、積層造形により、第1巻線41と第2巻線42を予めコイル状に形成する。このため、第1巻線41と第2巻線42をコア20に直接巻き付けてコイル部品100を製造する場合と比較して、第1巻線41と第2巻線42との離間距離(巻線間距離L1)を一定に維持することができる。よって、第1巻線41と第2巻線42とを高精度な寸法で成形し、巻線間距離L1を均一化することが可能となる。これにより、第1巻線41と第2巻線42とを絶縁させるために必要な離間距離を確保しつつ、第1巻線41と第2巻線42との離間距離が不必要に増大することを抑制することができる。
よって、必要な巻数を確保しつつ、小型化を達成することができる。
また、本実施形態のようにバイファイラ巻きで第1巻線41及び第2巻線42を形成することができるので、キャンセル巻きで形成する場合と比較して漏れ磁束を低減することができる。さらに、第1巻線41と第2巻線42との絶縁を確保するセパレータを必要としないため、セパレータの分、巻数が少なくなることがない。
また、本実施形態では、樹脂ポッティングにより形成された樹脂部1がセパレータとしても機能するので、第1巻線41と第2巻線42との巻線間距離L1をより一層小さくすることができるので、第1巻線41と第2巻線42の巻数を増大させつつ、コイル部品100をより一層小型化することができる。
【0035】
続いて、
図15から
図18を参照して変形例について説明する。
図15に示すように、本変形例のコイル部品100の製造方法は、架橋部除去工程S6をさらに含む。
【0036】
本変形例では、巻線形成工程S1で、巻線部40の複数の巻線を架橋する架橋部44(
図16から
図18参照)を形成する。本変形例では、架橋部44は第1巻線41と第2巻線42とを架橋している。架橋部44は、第1巻線41と第2巻線42との同時に、粉体PにレーザLを照射して積層造形により形成される。
【0037】
より詳細には、
図16に示すように、第1形成工程S11で、第1巻線41の下部41bと第2巻線42の下部42bとを接続する架橋部44を形成する。第1形成工程S11で形成される架橋部44は、例えば第1巻線41及び第2巻線42の一方側の端部41a,42a(巻き初め側の端部41a,42a)に設けられる。
【0038】
さらに、
図17に示すように、第3形成工程S13で、第1巻線41の上部41dと第2巻線42の上部42dとを接続する架橋部44を形成する。第3形成工程S13で形成される架橋部44は、例えば第1巻線41及び第2巻線42の他方側の端部41a,42a(巻き終わり側の端部41a,42a)に設けられる。
【0039】
その後、コア挿通工程S2、コア連結工程S3が行われ、
図18に示すような中間生成物101が製造される。本変形例の中間生成物101は、コア20と、巻線部40とに加えて、第1巻線41と第2巻線42とを架橋する架橋部44を備える。
さらにその後、巻線固定工程S4が行われ、樹脂充填工程S5の前に、架橋部除去工程S6が行われる。
架橋部除去工程S6では、除去部64が除去装置を制御して架橋部44を除去する。
その後、樹脂充填工程S5が行われる。以上の手順を経て、コイル部品100の製造が完了する。
【0040】
本変形例では、巻線形成工程S1では、第1巻線41と第2巻線42とを架橋する架橋部44を形成し、コア連結工程S3の後に、架橋部44を除去する架橋部除去工程S6をさらに含んでいる。
【0041】
これにより、分割コア21を連結するまで、架橋部44が第1巻線41と第2巻線42との離間距離(巻線間距離L1)を維持することができる。
このため、巻線形成工程S1において、サポート45が不要となり、粉体Pを節約し、コストを低減することができる。なお、巻線形成工程S1において、サポート45と架橋部44の両方を形成してもよい。
【0042】
なお、本変形例では、第1巻線41の端部41aと、第2巻線42の端部42aに架橋部44が設けられている場合について説明したが、これに限られない。架橋部44は、第1巻線41と第2巻線42とを接続する物であれば、形成箇所は適宜変更可能である。例えば、第1巻線41の内周側と第2巻線42の内周側とを接続する周方向に延びた円弧状の第1の架橋部44と、第1巻線41の外周側と第2巻線42の外周側とを接続する周方向に延びた円弧状の第2の架橋部44とが設けられてもよい。
【0043】
(ハードウェア構成)
上記の実施形態及び変形例の制御装置60は、
図19に示すコンピュータ1100に実装される。
図19は、各実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ1100は、プロセッサ1110と、メインメモリ1120と、ストレージ1130と、インタフェース1140とを備える。
【0044】
そして、制御装置60の上記各機能部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ1110は、プログラムに従って、記憶領域をメインメモリ1120に確保する。
【0045】
プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。また、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0046】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1140または通信回線を介してコンピュータ1100に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。ストレージ1130は、一時的でない有形の記憶媒体であってもよい。
【0047】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0048】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態ではコア20は2つの分割コア21が連結されて成るとしたが、これに限るものではない。1つのコア20を形成する分割コア21の個数は、適宜変更可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、複数の分割コア21が、固定ブラケット30によって固定されているとしたが、これに限るものではない。複数の分割コア21は、樹脂によって固定されてもよく、コイルケーシング10内に充填される樹脂部1によってまとめて固定されてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、製造装置50がパウダーヘッド方式で巻線部40を形成する場合について説明したが、これに限るものではない。製造装置50は、デポジション方式で巻線部40を形成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、巻線部40が2線の場合について説明したが、これに限られない。例えば、巻線部40を3線としてもよい。
この場合、巻線形成工程S1では、
図20に示される3本の巻線(第1巻線41、第2巻線42、第3巻線43)がAM等の積層造形技術によって形成される。これにより、これら3本の巻線を、並列に巻き付けた所謂トリファイラ巻きの形状に形成することができる。第1巻線41及び第2巻線42と同様に、第3巻線43の両端部43aは、挿通孔43eにボルト3を挿通して端子台2に固定される。例えば、第1巻線41、第2巻線42、第3巻線43は、それぞれ3相交流の経路となり、インバータ出力のU相、V相、W相に接続される。巻線形成工程S1の後には、
図21に示すように、コア挿通工程S2が行われ、3本の巻線にコア20が挿通される。コア連結工程S3以降の工程は、上述したコイル部品100の製造方法と同様の手順で進行する。
【0052】
<付記>
各実施形態に記載のコイル部品100の製造方法、コイル部品100、及び中間生成物101は、例えば以下のように把握される。
【0053】
(1)第1の態様に係るコイル部品100の製造方法は、複数の分割コア21が連結されて成る円環状のコア20と、前記コア20の回りに円環状に巻き付けられて、前記コア20の延在方向に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る巻線部40と、を備えるコイル部品100の製造方法であって、前記巻線部40を積層造形により形成する巻線形成工程S1と、前記巻線部40に前記分割コア21を挿通するコア挿通工程S2と、複数の前記分割コア21を連結して前記コア20を形成するコア連結工程S3と、を含む。
例えば巻線部40が2線の場合、巻線部40を構成する複数の巻線は、第1巻線41、第2巻線42となる。また、例えば巻線部40が3線の場合、巻線部40を構成する複数の巻線は、第1巻線41、第2巻線42、第3巻線43となる。
【0054】
本態様によれば、積層造形により、複数の巻線を予めコイル状に形成する。このため、巻線をコア20に直接巻き付けてコイル部品100を製造する場合と比較して、複数の巻線間の離間距離(例えば、第1巻線41と第2巻線42との巻線間距離L1)を一定に維持することができる。これにより、複数の巻線を絶縁させるために必要な離間距離を確保しつつ、複数の巻線の離間距離が不必要に増大することを抑制することができる。
【0055】
(2)第2の態様のコイル部品の製造方法は、第1の態様のコイル部品100の製造方法であって、前記巻線形成工程S1では、前記巻線部40の複数の巻線を架橋する架橋部44を形成し、前記コア連結工程S3の後に、前記架橋部44を除去する架橋部除去工程S6をさらに含んでもよい。
【0056】
これにより、分割コア21を連結するまで、架橋部44が複数の巻線間の離間距離(例えば、第1巻線41と第2巻線42との巻線間距離L1)を維持することができる。
【0057】
(3)第3の態様のコイル部品100は、複数の分割コア21が連結されて成る円環状のコア20と、前記コア20の回りに円環状に巻き付けられて、前記コア20の延在方向に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る巻線部40と、を備える。
【0058】
(4)第4の態様の中間生成物101は、複数の分割コア21が連結されて成る円環状のコア20と、前記コア20の回りに円環状に巻き付けられて、前記コア20の延在方向に所定の距離をあけて接近配置された複数の巻線から成る巻線部40と、を備えるコイル部品100を形成する過程で生成される中間生成物101であって、前記コア20と、前記巻線部40と、前記巻線部40の複数の巻線を架橋する架橋部44と、を備える。
【符号の説明】
【0059】
1…樹脂部 2…端子台 3…ボルト 4…冷却ケーシング 10…コイルケーシング 11…収容空間 12…開口部 12a…縁部 13…支持部 20…コア 21…分割コア 21a…端部 22…コア本体 22a…内周面 22b…外周面 23…コア連結部 30…固定ブラケット 31…ブラケット本体 31a…縁部 32…爪部 40…巻線部 41…第1巻線 41a…端部 41b…下部 41c…側部 41d…上部 41e…挿通孔 42…第2巻線 42a…端部 42b…下部 42c…側部 42d…上部 43…第3巻線 43a…端部 43e…挿通孔 44…架橋部 45…サポート 50…製造装置 51…ステージ 52…粉体供給装置 53…レーザ装置 54…除去機器 60…制御装置 61…ステージ移動部 62…粉体供給部 63…照射部 64…除去部 100…コイル部品 101…中間生成物 1100…コンピュータ 1110…プロセッサ 1120…メインメモリ 1130…ストレージ 1140…インタフェース C…仮想円 D1…上下方向 F…冷媒 L…レーザ L1…巻線間距離 L2…巻線部間隔 O…軸線 P…粉体 S1…巻線形成工程 S11…第1形成工程 S12…第2形成工程 S13…第3形成工程 S2…コア挿通工程 S3…コア連結工程 S4…巻線固定工程 S5…樹脂充填工程 S6…架橋部除去工程