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特開2024-130837センサーモジュールの故障診断方法及びセンサーモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130837
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】センサーモジュールの故障診断方法及びセンサーモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01P 21/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040755
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 郁哉
(57)【要約】
【課題】同じ検出軸回りの角速度を検出する2つのセンサー素子のいずれが故障しているかを効率よく診断することが可能なセンサーモジュールの故障診断方法を提供すること。
【解決手段】第1軸回りの角速度を検出する第1センサー素子の出力信号に基づく第1角速度信号に含まれる第1角速度と、前記第1軸回りの角速度を検出する第2センサー素子の出力信号に基づく第2角速度信号に含まれる第2角速度とを比較し、比較結果が第1規格を満たす場合は前記第1センサー素子及び前記第2センサー素子が正常であると診断する第1診断工程と、前記比較結果が第1規格を満たさない場合に、前記第1角速度信号又は前記第2角速度信号と、第2軸方向の加速度を検出する第3センサー素子の出力信号に基づく加速度信号とを用いて、前記第1センサー素子の故障診断を行う第2診断工程と、を含む、センサーモジュールの故障診断方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸回りの角速度を検出して第1検出信号を出力する第1センサー素子と、前記第1軸回りの角速度を検出して第2検出信号を出力する第2センサー素子と、前記第1軸と交差する第2軸方向の加速度を検出して第3検出信号を出力する第3センサー素子と、を備えるセンサーモジュールの故障診断方法であって、
前記第1検出信号に基づく第1角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第1角速度と、前記第2検出信号に基づく第2角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第2角速度とを比較し、比較結果が第1規格を満たす場合は前記第1センサー素子及び前記第2センサー素子が正常であると診断する第1診断工程と、
前記比較結果が第1規格を満たさない場合に、前記第1角速度信号又は前記第2角速度信号と、前記第3検出信号に基づく加速度信号とを用いて、前記第1センサー素子の故障診断を行う第2診断工程と、
を含む、センサーモジュールの故障診断方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1センサー素子は、前記第2センサー素子よりも検出精度が高い、センサーモジュールの故障診断方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第2診断工程は、
前記第1角速度又は第2角速度と、前記加速度信号に含まれる前記第2軸方向の加速度との比を算出する工程と、
前記比が第2規格を満たすか否かにより、前記第1センサー素子の故障診断を行う工程と、
を含む、センサーモジュールの故障診断方法。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記第2診断工程は、
前記第1軸及び前記第2軸と交差する第3軸方向の速度を取得する工程と、
前記第1角速度又は第2角速度と、前記第3軸方向の速度とを用いて、前記第2軸回りの角速度と前記第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの前記第2軸方向の向心加速度を算出する工程と、
前記加速度信号に含まれる前記第2軸方向の加速度と、前記第2軸方向の向心加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、前記第1センサー素子の故障診断を行う工程と、
を含む、センサーモジュールの故障診断方法。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記第2診断工程は、
前記センサーモジュールが前記第1軸回りの回転運動をしたときの回転中心を原点とする前記第2軸方向の位置を取得する工程と、
前記第1角速度又は第2角速度と、前記第2軸方向の位置とを用いて、前記第2軸回りの角速度と、前記第1軸及び前記第2軸と交差する第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの前記第2軸方向の向心加速度を算出する工程と、
前記加速度信号に含まれる前記第2軸方向の加速度と、前記第2軸方向の向心加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、前記第1センサー素子の故障診断を行う工程と、
を含む、センサーモジュールの故障診断方法。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記第2診断工程は、
前記センサーモジュールが前記第1軸回りの回転運動をしたときの回転中心を原点とする、前記第1軸及び前記第2軸と交差する第3軸方向の位置を取得する工程と、
前記第1角速度又は第2角速度と、前記第3軸方向の位置とを用いて、前記第2軸回りの角速度と前記第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの前記第2軸方向のオイラー加速度を算出する工程と、
前記加速度信号に含まれる前記第2軸方向の加速度と、前記第2軸方向のオイラー加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、前記第1センサー素子の故障診断を行う工程と、
を含む、センサーモジュールの故障診断方法。
【請求項7】
請求項1又は2において、
前記第2診断工程は、
前記センサーモジュールが前記第1軸回りの回転運動をしたときの回転中心を原点とする、前記第1軸及び前記第2軸と交差する第3軸方向の位置を取得する工程と、
前記第1角速度又は第2角速度と、前記第3軸方向の位置とを用いて、前記第2軸回りの角速度と前記第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの前記第2軸方向のコリオリ加速度を算出する工程と、
前記加速度信号に含まれる前記第2軸方向の加速度と、前記第2軸方向のコリオリ加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、前記第1センサー素子の故障診断を行う工程と、
を含む、センサーモジュールの故障診断方法。
【請求項8】
第1軸回りの角速度を検出して第1検出信号を出力する第1センサー素子と、
前記第1軸回りの角速度を検出して第2検出信号を出力する第2センサー素子と、
前記第1軸と交差する第2軸方向の加速度を検出して第3検出信号を出力する第3センサー素子と、
故障診断回路と、
を備え、
前記故障診断回路は、
前記第1検出信号に基づく第1角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第1角速度と前記第2検出信号に基づく第2角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第2角速度とを比較し、比較結果が第1規格を満たす場合は前記第1センサー素子及び前記第2センサー素子が正常であると診断し、
前記比較結果が第1規格を満たさない場合に、前記第1角速度信号又は前記第2角速度信号と、前記第3検出信号に基づく加速度信号とを用いて、前記第1センサー素子の故障診断を行う、センサーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーモジュールの故障診断方法及びセンサーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の慣性力センサーが検出した慣性力に基づいて車両の運動状態を制御する第1の車両運動制御ユニットと、第1の車両運動制御ユニットとは異なる車両の運動状態を制御する第2の車両運動制御ユニットと、第1の慣性力センサーと同一の慣性力を検出する第2の慣性力センサーに接続されるとともに、第1及び第2の車両運動制御ユニットと双方向通信可能に接続された中央ユニットとを含み、第1の車両運動制御ユニット及び中央ユニットの少なくとも一方は、第1及び第2の慣性力センサーが検出した慣性力を相互比較し、比較結果に基づいて故障を診断する故障診断部を含む、車両の制御装置が記載されている。特許文献1に記載の制御装置によれば、慣性力センサーを冗長化して、電源やMPUの故障に対する信頼性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-247053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の制御装置では、第1の慣性力センサーと第2の慣性力センサーのいずれかが故障していることは判断できるが、どちらの慣性力センサーが故障しているかを判断するのが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るセンサーモジュールの故障診断方法は、
第1軸回りの角速度を検出して第1検出信号を出力する第1センサー素子と、前記第1軸回りの角速度を検出して第2検出信号を出力する第2センサー素子と、前記第1軸と交差する第2軸方向の加速度を検出して第3検出信号を出力する第3センサー素子と、を備えるセンサーモジュールの故障診断方法であって、
前記第1検出信号に基づく第1角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第1角速度と、前記第2検出信号に基づく第2角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第2角速度とを比較し、比較結果が第1規格を満たす場合は前記第1センサー素子及び前記第2センサー素子が正常であると診断する第1診断工程と、
前記比較結果が第1規格を満たさない場合に、前記第1角速度信号又は前記第2角速度信号と、前記第3検出信号に基づく加速度信号とを用いて、前記第1センサー素子の故障診断を行う第2診断工程と、
を含む。
【0006】
本発明に係るセンサーモジュールの一態様は、
第1軸回りの角速度を検出して第1検出信号を出力する第1センサー素子と、
前記第1軸回りの角速度を検出して第2検出信号を出力する第2センサー素子と、
前記第1軸と交差する第2軸方向の加速度を検出して第3検出信号を出力する第3センサー素子と、
故障診断回路と、
を備え、
前記故障診断回路は、
前記第1検出信号に基づく第1角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第1角速度と前記第2検出信号に基づく第2角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第2角速度とを比較し、比較結果が第1規格を満たす場合は前記第1センサー素子及び前記第2センサー素子が正常であると診断し、
前記比較結果が第1規格を満たさない場合に、前記第1角速度信号又は前記第2角速度信号と、前記第3検出信号に基づく加速度信号とを用いて、前記第1センサー素子の故障診断を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の故障診断方法を実現するためのシステムの構成例を示す図。
図2】本実施形態の故障診断方法の手順の一例を示すフローチャート図。
図3】第1実施形態における第2診断工程の手順の一例を示すフローチャート図。
図4】センサーモジュール及び故障診断装置の具体例の構成を示す図。
図5】センサーモジュールのX軸、Y軸及びZ軸の説明図。
図6】実測から得られた角速度Ωと角速度Gとの関係を示す図。
図7】回転角速度ベクトルω、位置ベクトルr及び向心加速度ベクトルacenの関係を示す図。
図8】回転角速度ベクトルω、位置ベクトルr及びオイラー加速度ベクトルaeulの関係を示す図。
図9】回転角速度ベクトルω、位置ベクトルr及びコリオリ加速度ベクトルacolの関係を示す図。
図10】実測により得られた角速度Ωの時系列データを示す図。
図11】実測により得られた加速度Aの時系列データを示す図。
図12】実測から得られた角速度Ωと加速度Aとの関係を示す図。
図13】シミュレーションにより得られた角速度Ω及び角速度Gとの関係を示す図。
図14】シミュレーションにより得られた加速度Aと角速度Ωとの関係を示す図。
図15】第2実施形態における第2診断工程の手順の一例を示すフローチャート図。
図16】シミュレーションにより得られた加速度Aと向心加速度VΩとの関係を示す図。
図17】第3実施形態における第2診断工程の手順の一例を示すフローチャート図。
図18】シミュレーションにより得られた加速度Aと向心加速度-rΩ との関係を示す図。
図19】第4実施形態における第2診断工程の手順の一例を示すフローチャート図。
図20】第5実施形態における第2診断工程の手順の一例を示すフローチャート図。
図21】本実施形態のセンサーモジュールの機能的な構成例を示す図。
図22】本実施形態のセンサーモジュールの具体的な構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.センサーモジュールの故障診断方法
1-1.第1実施形態
1-1-1.故障診断方法の説明
図1は、本実施形態の故障診断方法を実現するためのシステムの構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の故障診断方法の対象となるセンサーモジュール1は、第1センサー素子11と、第2センサー素子12と、第3センサー素子13とを含む。
【0010】
第1センサー素子11は、第1軸回りの角速度を検出して第1検出信号を出力する。第2センサー素子12は、第1軸回りの角速度を検出して第2検出信号を出力する。すなわち、第1センサー素子11と第2センサー素子12とは、ともに第1軸回りの角速度を検出するが、第1センサー素子11は、第2センサー素子12よりも検出精度が高くてもよい。「検出精度が高い」とは、例えば、検出信号に含まれるノイズが小さく、バイアスの安定性が高いことを意味する。
【0011】
第3センサー素子13は、第1軸と交差する第2軸方向の加速度を検出して第3検出信号を出力する。第1軸と第2軸とは互いに直交してもよい。なお、「第1軸と第2軸とが直交する」とは、第1軸と第2軸とのなす角が厳密に90°である場合のみならず、センサーモジュール1の製造誤差に起因して第1軸と第2軸とのなす角が90°に対して誤差を有する場合も含まれる。
【0012】
例えば、第1軸は、第1センサー素子11及び第2センサー素子12が実装される回路基板の面に垂直な方向の軸であり、第2軸は、当該回路基板の面に平行な軸であってもよい。例えば、センサーモジュール1は、第1軸が設置面に垂直な方向となり、第2軸が設置面に平行となるように、設置される。
【0013】
故障診断装置2は、センサーモジュール1に接続され、本実施形態の故障診断方法によりセンサーモジュール1の故障診断を行う。なお、本実施形態の故障診断方法では、第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13のうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いことを前提としている。
【0014】
図2は、本実施形態の故障診断方法の手順の一例を示すフローチャート図である。例えば、故障診断装置2は、不図示のプログラムを実行することにより、図2の手順に従って各工程の処理を行ってもよい。図2に示すように、本実施形態の故障診断方法は、第1診断工程S10と、第2診断工程S20とを含む。図2では、第1診断工程S10は、工程S11と、工程S12と、工程S13とを含む。
【0015】
まず、工程S11において、故障診断装置2は、第1センサー素子11から出力される第1検出信号に基づく第1角速度信号に含まれる第1軸回りの角速度である第1角速度と、第2センサー素子12から出力される第2検出信号に基づく第2角速度信号に含まれる第1軸回りの角速度である第2角速度とを比較する。第1角速度信号は、第1検出信号そのものであってもよいし、第1検出信号に対して所定の信号処理が施された信号であってもよい。同様に、第2角速度信号は、第2検出信号そのものであってもよいし、第2検出信号に対して所定の信号処理が施された信号であってもよい。
【0016】
当該所定の信号処理は、例えば、A/D変換処理、補正処理、フィルター処理等を含んでもよい。センサーモジュール1が、第1検出信号及び第2検出信号に所定の信号処理を行って第1角速度信号及び第2角速度信号を生成し、故障診断装置2が、センサーモジュール1から第1角速度信号及び第2角速度信号を取得してもよい。あるいは、故障診断装置2が、センサーモジュール1から第1検出信号及び第2検出信号を取得し、第1検出信号及び第2検出信号に所定の信号処理を行って第1角速度信号及び第2角速度信号を生成してもよい。あるいは、センサーモジュール1が、第1検出信号及び第2検出信号に所定の信号処理の一部を行って第1中間信号及び第2中間信号を生成し、故障診断装置2が、
センサーモジュール1から第1中間信号及び第2中間信号を取得し、第1中間信号及び第2中間信号に所定の信号処理の他の一部を行って第1角速度信号及び第2角速度信号を生成してもよい。
【0017】
例えば、故障診断装置2は、第1角速度と第2角速度との差分や比を算出することによって、第1角速度と第2角速度とを比較してもよい。
【0018】
次に、工程S12において、故障診断装置2は、工程S11の比較結果が第1規格を満たすか否かを判定し、比較結果が第1規格を満たす場合は、工程S13において、第1センサー素子11及び前記第2センサー素子12が正常であると診断する。例えば、故障診断装置2は、工程S11において第1角速度と第2角速度との差分を算出する場合、第1規格は、0を含む所定の範囲であってもよい。また、例えば、故障診断装置2は、工程S11において第1角速度と第2角速度との比を算出する場合、第1規格は、1を含む所定の範囲であってもよい。
【0019】
工程S12において、工程S11の比較結果が第1規格を満たさない場合、第2診断工程S20において、故障診断装置2は、第1角速度信号又は第2角速度信号と、第3センサー素子13から出力される第3検出信号に基づく加速度信号とを用いて、第1センサー素子11の故障診断を行う。加速度信号は、第3検出信号そのものであってもよいし、第3検出信号に対して所定の信号処理が施された信号であってもよい。当該所定の信号処理は、例えば、A/D変換処理、補正処理、フィルター処理等を含んでもよい。センサーモジュール1が、第3検出信号に所定の信号処理を行って加速度信号を生成し、故障診断装置2が、センサーモジュール1から加速度信号を取得してもよい。あるいは、故障診断装置2が、センサーモジュール1から第3検出信号を取得し、第3検出信号に所定の信号処理を行って加速度信号を生成してもよい。あるいは、センサーモジュール1が、第3検出信号に所定の信号処理の一部を行って第3中間信号を生成し、故障診断装置2が、センサーモジュール1から第3中間信号を取得し、第3中間信号に所定の信号処理の他の一部を行って加速度信号を生成してもよい。
【0020】
そして、故障診断装置2は、工程S30において故障診断を終了するまで、工程S11,S12,S13,S20の処理を繰り返し行う。
【0021】
図3は、第1実施形態における、図2の第2診断工程S20の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0022】
図3に示すように、工程S21において、故障診断装置2は、第1角速度又は第2角速度と、第3検出信号に基づく加速度信号に含まれる第2軸方向の加速度との比を算出する。
【0023】
そして、工程S22において、故障診断装置2は、工程S21で算出した第1角速度又は第2角速度と加速度との比が第2規格を満たすか否かにより、第1センサー素子11の故障診断を行う。故障診断装置2は、ノイズの影響を低減させるために、第1角速度又は第2角速度と加速度との比として、所定期間における当該比の平均値を算出してもよい。例えば、故障診断装置2は、第1角速度と加速度との比が第2規格を満たす場合は第1センサー素子11が正常であると診断し、第1角速度と加速度との比が第2規格を満たさない場合は第1センサー素子11が故障していると診断してもよい。あるいは、故障診断装置2は、第2角速度と加速度との比が第2規格を満たす場合は第1センサー素子11が故障していると診断し、第2角速度と加速度との比が第2規格を満たさない場合は第1センサー素子11が正常であると診断してもよい。
【0024】
例えば、第2規格は、所定の基準値を含む所定の範囲であってもよい。例えば、故障診断装置2あるいは他の装置が、実測やシミュレーションにより、第1センサー素子11と第3センサー素子13がともに正常である場合に想定される第1角速度と加速度との比の値を基準値としてあらかじめ算出しておいてもよい。あるいは、故障診断装置2あるいは他の装置が、実測やシミュレーションにより、第2センサー素子12と第3センサー素子13がともに正常である場合に想定される第2角速度と加速度との比の値を基準値としてあらかじめ算出しておいてもよい。
【0025】
なお、第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13のうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いので、工程S22において、故障診断装置2は、第1センサー素子11が故障している場合は第2センサー素子12が正常であると診断し、第1センサー素子11が正常である場合は第2センサー素子12が故障していると診断する。
【0026】
以下、センサーモジュール1及び故障診断装置2の具体例を挙げて、第1実施形態の故障診断方法について詳細に説明する。
【0027】
1-1-2.センサーモジュール及び故障診断装置の具体例
図4は、センサーモジュール1及び故障診断装置2の具体例の構成を示す図である。図4の例では、センサーモジュール1は、角速度センサー10と、6Dofセンサー20と、処理装置30とを備える。Dofは、Degrees Of Freedomの略である。なお、センサーモジュール1は、図4の構成要素の一部を省略又は変更し、あるいは、他の構成要素を付加した構成としてもよい。角速度センサー10、6Dofセンサー20及び処理装置30は、不図示の筐体に収容されている。
【0028】
センサーモジュール1には、X軸、Y軸及びZ軸による3軸座標系が定義される。角速度センサー10は、Z軸回りの角速度を検出する。また、6Dofセンサー20は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3軸回りの角速度及びX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の加速度を検出する。すなわち、角速度センサー10の検出軸の方向がセンサーモジュール1のZ軸の方向であり、6Dofセンサー20の3つの検出軸の方向が、センサーモジュール1のX軸、Y軸及びZ軸の方向である。例えば、角速度センサー10と6Dofセンサー20とは同じ回路基板に実装され、当該回路基板の面に垂直な方向の軸がZ軸であり、当該回路基板の面に平行な2つ軸がX軸及びY軸である。
【0029】
以下の説明では、センサーモジュール1が自動車に搭載される場合を想定する。図5に示すように、センサーモジュール1は、X軸が自動車5の進行方向に沿い、Y軸が自動車5の進行方向と直交する右方向に沿い、Z軸が自動車5が走行する平面に垂直な下方向に沿うように、自動車5に設置される。
【0030】
図4に示すように、角速度センサー10は、センサー素子11Z、検出回路15及びインターフェース回路16を含む。
【0031】
センサー素子11Zは、Z軸を検出軸として角速度を検出し、検出信号SS1Zを出力するセンサー素子である。センサー素子11Zは、例えば、水晶を材料とし、振動する物体に加わるコリオリの力から角速度を高精度に検出する。
【0032】
検出回路15は、センサー素子11Zから出力される検出信号SS1Zを所定の周期で取得し、増幅処理やフィルター処理等の所定の処理を行ってZ軸回りの角速度に応じた電圧のアナログ信号を生成し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して検出データSD1Zを生成する。
【0033】
インターフェース回路16は、処理装置30に対して所定の通信規格のインターフェース処理を行う。例えば、所定の通信規格は、SPIであってもよいし、ICであってもよい。SPIはSerial Peripheral Interfaceの略であり、ICはInter-Integrated Circuitの略である。例えば、インターフェース回路16は、処理装置30からの読み出しコマンドに応じて、検出回路15から出力される検出データSD1Zを取得し、取得した検出データSD1Zをシリアルデータに変換し、処理装置30に出力する。
【0034】
図4に示すように、6Dofセンサー20は、センサー素子12X,12Y,12Z,13X,13Y,13Z、検出回路25及びインターフェース回路26を含む。
【0035】
センサー素子12Xは、X軸を検出軸として角速度を検出し、検出信号SS2Xを出力するセンサー素子である。センサー素子12Yは、Y軸を検出軸として角速度を検出し、検出信号SS2Yを出力するセンサー素子である。センサー素子12Zは、Z軸を検出軸として角速度を検出し、検出信号SS2Zを出力するセンサー素子である。
【0036】
センサー素子13Xは、X軸を検出軸として加速度を検出し、検出信号SS3Xを出力するセンサー素子である。センサー素子13Yは、Y軸を検出軸として加速度を検出し、検出信号SS3Yを出力するセンサー素子である。センサー素子13Zは、Z軸を検出軸として加速度を検出し、検出信号SS3Zを出力するセンサー素子である。センサー素子12X,12Y,12Z,13X,13Y,13Zは、例えば、セラミックやシリコン等を材料とするセンサー素子である。
【0037】
検出回路25は、センサー素子12Xから出力される検出信号SS2Xを所定の周期で取得し、増幅処理やフィルター処理等の所定の処理を行ってX軸回りの角速度に応じた電圧のアナログ信号を生成し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して検出データSD2Xを生成する。また、検出回路25は、センサー素子12Yから出力される検出信号SS2Yを所定の周期で取得し、増幅処理やフィルター処理等の所定の処理を行ってY軸回りの角速度に応じた電圧のアナログ信号を生成し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して検出データSD2Yを生成する。また、検出回路25は、センサー素子12Zから出力される検出信号SS2Zを所定の周期で取得し、増幅処理やフィルター処理等の所定の処理を行ってZ軸回りの角速度に応じた電圧のアナログ信号を生成し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して検出データSD2Zを生成する。
【0038】
さらに、検出回路25は、センサー素子13Xから出力される検出信号SS3Xを所定の周期で取得し、増幅処理やフィルター処理等の所定の処理を行ってX軸方向の加速度に応じた電圧のアナログ信号を生成し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して検出データSD3Xを生成する。また、検出回路25は、センサー素子13Yから出力される検出信号SS3Yを所定の周期で取得し、増幅処理やフィルター処理等の所定の処理を行ってY軸方向の加速度に応じた電圧のアナログ信号を生成し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して検出データSD3Yを生成する。また、検出回路25は、センサー素子13Zから出力される検出信号SS3Zを所定の周期で取得し、増幅処理やフィルター処理等の所定の処理を行ってZ軸方向の加速度に応じた電圧のアナログ信号を生成し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して検出データSD3Zを生成する。
【0039】
インターフェース回路26は、処理装置30に対して所定の通信規格のインターフェース処理を行う。例えば、所定の通信規格は、SPIであってもよいし、ICであってもよい。例えば、インターフェース回路26は、処理装置30からの読み出しコマンドに応じて、検出回路15から出力される検出データSD2X,SD2Y,SD2Z,SD3X,SD3Y,SD3Zを取得し、取得した検出データSD2X,SD2Y,SD2Z,S
D3X,SD3Y,SD3Zをそれぞれシリアルデータに変換し、処理装置30に出力する。
【0040】
本実施形態では、角速度センサー10は、6Dofセンサー20と比較して検出精度の高いセンサーである。逆に、6Dofセンサー20は、角速度センサー10と比較して検出精度は低いが、比較的安価なセンサーである。例えば、角速度センサー10は、水晶を材料とするセンサー素子11Zを有する高精度なセンサーであり、6Dofセンサー20は、シリコン基板をMEMS技術で加工した静電容量型のセンサーであってもよい。MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略である。
【0041】
処理装置30は、所定の周期で、検出データの読み出しコマンドを角速度センサー10に出力し、角速度センサー10から出力される検出データSD1Zを取得する。また、処理装置30は、所定の周期で、検出データの読み出しコマンドを6Dofセンサー20に出力し、6Dofセンサー20から出力される検出データSD2X,SD2Y,SD2Z,SD3X,SD3Y,SD3Zを取得する。そして、処理装置30は、取得した各検出データに対して、各種の演算を実行する。
【0042】
例えば、処理装置30は、各検出データに対して、温度補正演算、感度補正演算、オフセット補正演算、アラインメント補正演算、ダウンサンプリング演算等を行ってもよい。さらに、処理装置30は、各種の演算を行った後の検出データSD1Z,SD2X,SD2Y,SD3X,SD3Y,SD3Zに基づいて、センサーモジュール1の姿勢、速度、角度等を算出する演算を行ってもよい。姿勢は、ロール、ピッチ、ヨーで表現されてもよいし、オイラー角やクォータニオンで表現されてもよい。オイラー角は、図5に示すように、ロール角φ、ピッチ角θ及びヨー角ψの3つの回転角によって定義される。すなわち、ロール角φは、自動車5の進行方向に沿うX軸を回転軸とする回転角である。また、ピッチ角θは、自動車5の進行方向と直交する右方向に沿うY軸を回転軸とする回転角である。また、ヨー角ψは、自動車5が走行する平面に垂直な下方向に沿うZ軸を回転軸とする回転角である。
【0043】
また、処理装置30は、ホストデバイス3との間で、所定の通信規格のインターフェース処理を行う。例えば、所定の通信規格は、SPIであってもよいし、ICであってもよい。処理装置30は、ホストデバイス3からの読み出しコマンドに応じて、各種の演算後の検出データSD1Z,SD2X,SD2Y,SD2Z,SD3X,SD3Y,SD3Zや、姿勢、速度、角度等のデータをホストデバイス3に送信する。ホストデバイス3は、処理装置30から各種のデータを受信し、例えば、自動車5の走行制御等の処理を行う。自動車5の走行制御では、ロール角φ、ピッチ角θ及びヨー角ψのうちヨー角ψが最も重要である。そのため、センサーモジュール1は、ヨー角ψを高精度に算出するために、6Dofセンサー20に加えて、Z軸回りの角速度を高精度に検出する角速度センサー10を備えている。
【0044】
また、処理装置30は、故障診断装置2との間で、所定の通信規格のインターフェース処理を行う。例えば、所定の通信規格は、SPIであってもよいし、ICであってもよい。処理装置30は、故障診断装置2からの読み出しコマンドに応じて、検出データSD1Z,SD2X,SD2Y,SD2Z,SD3X,SD3Y,SD3Zの少なくとも一部や、ロール角φ及びピッチ角θのデータを故障診断装置2に送信する。故障診断装置2は、処理装置30から取得した各種のデータを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。
【0045】
ここで、自動車5がZ軸を回転軸とする回転運動をしたとき、Z軸回りの角速度ωが発生する。この角速度ωは、角速度センサー10のセンサー素子11Zと6Dofセン
サー20のセンサー素子12Zによって検出される。したがって、センサー素子11Z,12Zがともに正常であれば、センサー素子11Zが検出するZ軸回りの角速度Ωと、センサー素子12Zが検出するZ軸回りの角速度Gとはほぼ一致することになる。図6に、実測から得られた角速度Ωと角速度Gとの関係を示す。図6に示すように、センサー素子11Z,12Zがともに正常であれば、角速度Ωと角速度Gとの関係を示す近似直線の傾きは1になる。そこで、故障診断装置2は、まず、角速度Ωと角速度Gとを比較して、センサー素子11Zの故障診断を行う。
【0046】
一方、自動車5に働く加速度ベクトルaは、式(1)のように、XYZ座標系の種々の加速度ベクトルが合成されたものである。式(1)において、aは重力加速度ベクトルであり、atraは並進運動に伴う加速度ベクトルである。式(1)の右辺の第3項以降は回転運動に伴う加速度ベクトルである。acenは向心加速度ベクトルであり、aeulはオイラー加速度ベクトルであり、acolはコリオリ加速度ベクトルである。
【0047】
【数1】
【0048】
回転運動に伴う加速度ベクトルである向心加速度ベクトルacen、オイラー加速度ベクトルaeul及びコリオリ加速度ベクトルacolは、回転角速度ベクトルωと相関がある。向心加速度ベクトルacenは、回転角速度ベクトルωと、並進速度ベクトルv又は回転中心を原点Oとする位置ベクトルrとを用いて、式(2)で表現される。向心加速度ベクトルacenは、自動車5の回転運動により並進運動の方向が変わる際に回転中心方向に働く加速度であり、これにより発生する慣性力が遠心力である。図7に、自動車5がZ軸回りの回転運動をしたときの、回転角速度ベクトルω、位置ベクトルr及び向心加速度ベクトルacenの関係を示す。
【0049】
【数2】
【0050】
オイラー加速度ベクトルaeulは、回転角速度ベクトルωの微分と位置ベクトルrとを用いて、式(3)で表現される。オイラー加速度ベクトルaeulは、回転角速度ベクトルωの時間変化、すなわち、角加速度ベクトルにより回転運動の接線方向に働く加速度ベクトルである。図8に、自動車5がZ軸回りの回転運動をしたときの、回転角速度ベクトルω、位置ベクトルr及びオイラー加速度ベクトルaeulの関係を示す。
【0051】
【数3】
【0052】
コリオリ加速度ベクトルacolは、回転角速度ベクトルωと位置ベクトルrの微分とを用いて、式(4)で表現される。コリオリ加速度ベクトルacolは、回転運動中に回転中心を原点Oとする位置ベクトルrの変化により自動車5の移動方向と垂直な向きに働く加速度ベクトルであり、これにより発生する慣性力がコリオリ力である。図9に、自動車5がZ軸回りの回転運動をしたときの、回転角速度ベクトルω、位置ベクトルr及びコリオリ加速度ベクトルacolの関係を示す。
【0053】
【数4】
【0054】
式(2)、式(3)及び式(4)より、向心加速度ベクトルacen、オイラー加速度ベクトルaeul及びコリオリ加速度ベクトルacolは、いずれも回転角速度ベクトルωと相関があり、故障診断装置2は、この相関を利用してセンサー素子11Zの故障診断を行うことができる。
【0055】
自動車5の運動がZ軸回りの回転運動のみの場合、式(1)において、並進運動に伴う加速度ベクトルatraは無視できる。すなわち、自動車5の運動がZ軸回りの回転運動のみの場合、6Dofセンサー20が検出する3軸加速度ベクトルA=(A,A,A)に含まれる並進運動に伴う加速度ベクトルatraはゼロとみなすことができる。一方、重力加速度ベクトルaは無視できないので、3軸加速度ベクトルAから重力加速度ベクトルaを分離する必要がある。
【0056】
重力加速度ベクトルaは、重力加速度g、ロール角φ、ピッチ角θ及びヨー角ψを用いて、式(5)で表される。式(5)より、自動車5の傾きに応じて、X軸とY軸にも重力加速度gに由来する加速度が生じる。したがって、3軸加速度ベクトルA=(A,A,A)から重力加速度ベクトルa=(-gsinθ,gsinφcosθ,gcosφcosθ)を減算することにより、重力加速度ベクトルaが分離される。
【0057】
【数5】
【0058】
回転角速度ベクトルω=(ω,ω,ω)及び並進速度ベクトルv=(v,v,v)を用いて、式(2)に示した向心加速度ベクトルacenを展開すると、式(6)が得られる。
【0059】
【数6】
【0060】
式(2)より、回転角速度ベクトルω=(ω,ω,ω)及び位置ベクトルr=(r,r,r)を用いて、並進速度ベクトルvを展開すると、式(7)が得られる。
【0061】
【数7】
【0062】
また、式(6)及び式(7)より、向心加速度ベクトルacenは、式(8)のように
も表現される。
【0063】
【数8】
【0064】
回転角速度ベクトルω=(ω,ω,ω)及び位置ベクトルr=(r,r,r)を用いて、式(3)に示したオイラー加速度ベクトルaeulを展開すると、式(9)が得られる。
【0065】
【数9】
【0066】
回転角速度ベクトルω=(ω,ω,ω)及び位置ベクトルr=(r,r,r)を用いて、式(4)に示したコリオリ加速度ベクトルacolを展開すると、式(10)が得られる。
【0067】
【数10】
【0068】
ここで、Z軸回りの角速度ω以外の運動入力がない理想条件を考えると、ω=ω=0,v=v=0,r=r=0とみなすことができる。したがって、式(6)及び式(8)より、式(11)が得られる。
【0069】
【数11】
【0070】
また、式(9)より、式(12)が得られる。
【0071】
【数12】
【0072】
また、式(10)より、式(13)が得られる。
【0073】
【数13】
【0074】
式(11)、式(12)及び(式13)より、理想条件において自動車5に働く加速度ベクトルaは、式(14)のようになる。
【0075】
【数14】
【0076】
式(11)及び式(14)より、Y軸方向の加速度aである向心加速度はZ軸回りの角速度ωと相関がある。すなわち、角速度センサー10のセンサー素子11Z及び6Dofセンサー20のセンサー素子13Yがともに正常であれば、センサー素子11Zが検出するZ軸回りの角速度Ωと、センサー素子13Yが検出するY軸方向の加速度Aとの間には相関があると考えられる。図10に、実測により得られた角速度Ωの時系列データを示す。また、図11に、実測により、図10と同じタイミングで得られた加速度Aの時系列データを示す。図10図11とを比較すると、角速度Ωと加速度Aとの間に相関が見られる。図12に、実測から得られた角速度Ωと加速度Aとの関係を示す。図12に示すように、ほとんどの点が破線で示す楕円内に位置しており、角速度Ωと加速度Aとの間に相関があることが確認される。
【0077】
そこで、故障診断装置2は、角速度Ωと角速度Gとが一致しない場合、次に、角速度Ωと加速度Aとを比較して、センサー素子11Zの故障診断を行う。
【0078】
図4に示すように、故障診断装置2は、故障診断回路100、インターフェース回路101、制御回路102、ローパスフィルター103及び重力加速度分離回路104を含む。
【0079】
インターフェース回路101は、処理装置30とのインターフェース処理を行う回路である。例えば、インターフェース回路101は、処理装置30との間で、マスターとして所定の通信規格のインターフェース処理を行う。例えば、所定の通信規格は、SPIであってもよいし、ICであってもよい。
【0080】
制御回路102は、処理装置30との通信を制御する。本実施形態では、制御回路102は、自動車5が右折や左折のために回転運動を行う期間において、処理装置30から、インターフェース回路101を介して、検出データSD1Z,SD2Z,SD3Y、ロール角φ及びピッチ角θを取得する。制御回路102は、不図示の装置からZ軸回りの回転を示す信号を取得して自動車5が回転運動を行う期間を特定してもよいし、処理装置30から、所定の周期で、Z軸回りの角速度のデータである検出データSD1Z,SD2Zを取得し、検出データSD1Z,SD2Zの少なくとも一方に基づいて自動車5が回転運動を行う期間を特定してもよい。
【0081】
ローパスフィルター103は、制御回路102から検出データSD1Z,SD2Z,SD3Yを取得し、高周波のノイズ成分を低減させるためにローパスフィルター処理を行う。ローパスフィルター処理された後の検出データSD1Zは、第1角速度データG1Zと
して故障診断回路100に入力される。第1角速度データG1Zには、センサー素子11Zが検出したZ軸回りの角速度に基づく角速度Ωが含まれている。また、ローパスフィルター処理された後の検出データSD2Zは、第2角速度データG2Zとして故障診断回路100に入力される。第2角速度データG2Zには、センサー素子12Zが検出したZ軸回りの角速度に基づく角速度Gが含まれている。
【0082】
重力加速度分離回路104は、ローパスフィルター処理された後の検出データSD3Yから重力加速度成分を分離する。具体的には、重力加速度分離回路104は、ロール角φ及びピッチ角θを用いて、重力加速度ベクトルaのY軸方向の重力加速度成分であるgsinφcosθを算出し、ローパスフィルター処理された後の検出データSD3Yに含まれるY軸方向の加速度から、gsinφcosθを減算する。重力加速度分離回路104が重力加速度成分を分離した後の検出データSD3Yは、加速度データA3Yとして故障診断回路100に入力される。加速度データA3Yには、センサー素子13Yが検出したY軸方向の加速度に基づく加速度Aが含まれている。
【0083】
故障診断回路100は、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Yを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。具体的には、故障診断回路100は、図2及び図3の手順に従って、センサー素子11Zの故障診断を行う。ここで、センサー素子11Z,12Z,13Yが、それぞれ、図1の第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13に相当し、検出信号SS1Z,SS2Z,SS3Yが、それぞれ、図2の第1検出信号、第2検出信号及び第3検出信号に相当する。また、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Yが、それぞれ、図2の第1角速度信号、第2角速度信号及び加速度信号に相当し、Z軸及びY軸が、それぞれ、図2及び図3の第1軸及び第2軸に相当する。また、第1角速度データG1Zに含まれるZ軸回りの角速度Ω、第2角速度データG2Zに含まれるZ軸回りの角速度G及び加速度データA3Yに含まれるY軸方向の加速度Aが、それぞれ、図2及び図3の第1角速度、第2角速度及び第2軸方向の加速度に相当する。
【0084】
まず、図2の工程S11において、故障診断回路100は、第1角速度データG1Zに含まれる角速度Ωと、第2角速度データG2Zに含まれる角速度Gとを比較する。
【0085】
次に、工程S12において、故障診断回路100は、工程S11の比較結果が第1規格を満たすか否かを判定し、比較結果が第1規格を満たす場合は、工程S13において、センサー素子11Z及びセンサー素子12Zが正常であると診断する。
【0086】
本願発明者は、センサー素子12Zが正常であり、かつ、センサー素子11Zが正常である場合と故障している場合において、自動車5が右折したときに検出される角速度Ω及び角速度Gをシミュレーションにより算出し、所定の閾値を超えた角速度Ωと角速度Gとの関係を導出した。図13に、当該シミュレーションにより得られた、角速度Ω及び角速度Gとの関係を示す。図13において、丸印は、センサー素子11Zが正常である場合の角速度Ωと角速度Gとの関係を示し、三角印は、センサー素子11Zが故障している場合の角速度Ωと角速度Gとの関係を示す。図13に示すように、センサー素子11Zが正常である場合は、角速度Ωと角速度Gとがほぼ一致するため、角速度Ωと角速度Gとの関係を示す近似直線の傾き、すなわち角速度Ωと角速度Gとの比はほぼ1である。これに対して、センサー素子11Zが故障している場合は、角速度Ωと角速度Gとの比がほぼ1ではない。
【0087】
したがって、工程S12において、例えば、故障診断回路100は、1を含む所定の範囲を第1規格とし、角速度Ωと角速度Gとの比が第1規格を満たすか否かを判定してもよい。
【0088】
工程S12において、工程S11の比較結果が第1規格を満たさない場合、第2診断工程S20において、故障診断回路100は、第1角速度データG1Z又は第2角速度データと、加速度データA3Yとを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。
【0089】
具体的には、図3の工程S21において、故障診断回路100は、角速度Ω又は角速度Gと、加速度データA3Yに含まれる加速度Aとの比を算出する。そして、工程S22において、故障診断回路100は、工程S21で算出した角速度Ω又は角速度Gと加速度Aとの比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障診断を行う。故障診断回路100は、ノイズ等の影響を低減させるために、角速度Ω又は角速度Gと加速度Aとの比として、所定期間における当該比の平均値を算出してもよい。例えば、故障診断回路100は、角速度Ωと加速度Aとの比が第2規格を満たす場合はセンサー素子11Zが正常であると診断し、角速度Ωと加速度Aとの比が第2規格を満たさない場合はセンサー素子11Zが故障していると診断してもよい。あるいは、故障診断回路100は、角速度Gと加速度Aとの比が第2規格を満たす場合は、センサー素子12Zが正常であるため、センサー素子11Zが故障していると診断し、角速度Gと加速度Aとの比が第2規格を満たさない場合は、センサー素子12Zが故障しているため、センサー素子11Zが正常であると診断してもよい。
【0090】
本願発明者は、センサー素子13Yが正常であり、かつ、センサー素子11Zが正常である場合と故障している場合において、自動車5が右折したときに検出される加速度A及び角速度Ωをシミュレーションにより算出し、所定の閾値を超えた加速度Aと角速度Ωとの関係を導出した。図14に、当該シミュレーションにより得られた、加速度Aと角速度Ωとの関係を示す。図14において、丸印は、センサー素子11Zが正常である場合の加速度Aと角速度Ωとの関係を示し、三角印は、センサー素子11Zが故障している場合の加速度Aと角速度Ωとの関係を示す。図14に示すように、センサー素子11Zが正常である場合と故障している場合とでは、いずれも加速度Aと角速度Ωとに相関が見られるが、加速度Aと角速度Ωとの関係を示す近似直線の傾き、すなわち加速度Aと角速度Ωとの比が異なる。
【0091】
したがって、工程S22において、例えば、故障診断回路100は、センサー素子11Zとセンサー素子13Yがともに正常である場合に想定される加速度Aと角速度Ωとの比の値を基準値として、当該基準値を含む所定の範囲を第2規格とし、加速度Aと角速度Ωとの比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障を診断してもよい。あるいは、故障診断回路100は、センサー素子12Zとセンサー素子13Yがともに正常である場合に想定される加速度Aと角速度Gとの比の値を基準値として、当該基準値を含む所定の範囲を第2規格とし、加速度Aと角速度Gとの比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障を診断してもよい。
【0092】
なお、センサー素子11Z、センサー素子12Z及びセンサー素子13Yのうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いので、工程S22において、故障診断回路100は、センサー素子11Zが故障している場合はセンサー素子12Zが正常であると診断し、センサー素子11Zが正常である場合はセンサー素子12Zが故障していると診断する。
【0093】
そして、故障診断回路100は、図2の工程S30において故障診断を終了するまで、工程S11,S12,S13,S21,S22の処理を繰り返し行う。
【0094】
制御回路102は、故障診断回路100による診断結果を、インターフェース回路101を介して、処理装置30に送信する。処理装置30は、当該診断結果を内蔵する不図示
のメモリーに記憶する。処理装置30は、当該診断結果が、センサー素子11Zが故障していることを示している場合は、検出データSD1Zに対して各種の演算を行わなくてもよいし、検出データSD1Zに代えて検出データSD2Zを用いて、センサーモジュール1の姿勢、速度、角度等を算出する演算を行ってもよい。また、ホストデバイス3は、処理装置30から当該診断結果を読み出し、当該診断結果が、センサー素子11Zが故障していることを示している場合は、センサー素子11Zの交換が必要であることをユーザーに通知してもよい。
【0095】
1-1-3.作用効果
以上に説明したように、第1実施形態の故障診断方法では、センサー素子11Z、センサー素子12Z及びセンサー素子13Yの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いことを前提として、故障診断装置2は、第1診断工程S10において、センサー素子11Z及びセンサー素子12Zが正常であるか、センサー素子11Z又はセンサー素子12Zが故障しているかを診断することができる。また、故障診断装置2は、第1診断工程S10においてセンサー素子11Z又はセンサー素子12Zが故障していると診断した場合、上記の前提より、センサー素子13Yは正常であるので、第2診断工程S20において、第1角速度データG1Z又は第2角速度データG2Zと加速度データA3Yとを用いて、センサー素子11Zが故障しているか否かを診断することができる。そして、故障診断装置2が、第2診断工程S20において、センサー素子11Zが正常であると診断した場合はセンサー素子12Zが故障していることになり、センサー素子11Zが故障していると診断した場合はセンサー素子12Zが正常であることになる。
【0096】
さらに、第1実施形態の故障診断方法では、センサー素子11Zとセンサー素子12ZがともにZ軸回りの角速度を検出するので、第1角速度データG1Zと第2角速度データG2Zとの差が小さく、故障診断装置2は、第1診断工程S10において、センサー素子11Z及びセンサー素子12Zが正常であるか、センサー素子11Z又はセンサー素子12Zが故障しているかを容易かつ正確に診断することができる。そして、故障診断装置2は、第1診断工程S10においてセンサー素子11Z及びセンサー素子12Zが正常であると診断した場合は、第2診断工程S20を行う必要はない。
【0097】
したがって、第1実施形態の故障診断方法によれば、故障診断装置2は、ともにZ軸回りの角速度を検出するセンサー素子11Z及びセンサー素子12Zのいずれが故障しているかを効率よく診断することができる。
【0098】
また、第1実施形態の故障診断方法によれば、センサー素子11Zが正常であるか故障しているかを診断することができるので、例えば、センサーモジュール1又はホストデバイス3が、センサー素子11Zが正常である場合は、検出精度の高いセンサー素子11Zから出力される検出信号SS1Zを用いて必要な演算を高精度に行い、センサー素子11Zが故障している場合は、センサー素子12Zから出力される検出信号SS2Zを用いて必要な演算を継続することができる。
【0099】
例えば、ホストデバイス3は、角速度センサー10のセンサー素子11Zが故障した場合、自動車5の自動運転制御を停止させるようなフェールセーフや、角速度センサー10が検出するZ軸周りの加速度に代えて6Dofセンサー20が検出するZ軸周りの角速度を用いて自動車5の位置推定を行うようなフェールソフトなど、システムの堅牢性に寄与するフォールトトレラント設計が可能となる。
【0100】
また、ホストデバイス3が自動車5の走行を高精度に制御するために、センサーモジュール1は、自動車5の位置や姿勢の算出に必要な3軸角速度及び3軸加速度を検出する6Dofセンサー20と、高精度な走行制御に特に重要なヨー角ψの算出に必要な検出精度
の高い角速度センサー10とを備えている。すなわち、角速度センサー10及び6Dofセンサー20は、いずれも故障診断に専用のセンサーではなく、第1実施形態の故障診断方法によれば、本来必要なセンサーを故障診断に兼用することができるので、低コスト化を実現しやすい。
【0101】
1-2.第2実施形態
以下、第2実施形態のセンサーモジュールの故障診断方法について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0102】
第2実施形態の故障診断方法を実現するためのシステムの構成例は、図1と同様であるため、その図示及び説明を省略する。また、第2実施形態の故障診断方法の全体的な手順を示すフローチャート図は、図2と同様であるため、その図示及び説明を省略する。ただし、第2実施形態では、図2の第2診断工程S20の手順が第1実施形態と異なる。
【0103】
図15は、第2実施形態における、図2の第2診断工程S20の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0104】
図15に示すように、工程S121において、故障診断装置2は、第1軸及び第2軸と交差する第3軸方向の速度を取得する。第1軸と第2軸と第3軸とは互いに直交してもよい。なお、「第1軸と第2軸と第3軸とが直交する」とは、第1軸と第2軸とのなす角、第2軸と第3軸とのなす角及び第3軸と第1軸とのなす角が、すべて厳密に90°である場合のみならず、センサーモジュール1の製造誤差に起因して、第1軸と第2軸とのなす角、第2軸と第3軸とのなす角及び第3軸と第1軸とのなす角が、90°に対して誤差を有する場合も含まれる。例えば、第1軸は、センサーモジュール1の設置面に直交する軸であり、第2軸及び第3軸は、センサーモジュール1の設置面に平行な軸であってもよい。
【0105】
例えば、故障診断装置2は、車輪速センサー、GNSSドップラー等の装置から、第3軸方向の速度を取得してもよい。GNSSは、Global Navigation Satellite Systemの略である。あるいは、センサーモジュール1が、第3軸方向の速度を検出する速度センサーを備え、故障診断装置2は、センサーモジュール1から、速度センサーが検出する第3軸方向の速度を取得してもよい。また、例えば、センサーモジュール1が、第3軸方向の加速度を検出する加速度センサーを備え、故障診断装置2は、センサーモジュール1から、加速度センサーが検出する第3軸方向の加速度を取得し、当該第3軸方向の加速度を積分して第3軸方向の速度を算出してもよい。
【0106】
次に、工程S122において、故障診断装置2は、第1角速度又は第2角速度と、工程S121で取得した第3軸方向の加速度とを用いて、第2軸回りの角速度と第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの第2軸方向の向心加速度を算出する。故障診断装置2は、第1角速度と第3軸方向の加速度とを用いて第2軸方向の向心加速度を算出してもよいし、第2角速度と第3軸方向の加速度とを用いて第2軸方向の向心加速度を算出してもよい。
【0107】
そして、工程S123において、故障診断装置2は、第3センサー素子13から出力される第3検出信号に基づく加速度信号に含まれる第2軸方向の加速度と、工程S122で算出した第2軸方向の向心加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、第1センサー素子11の故障診断を行う。例えば、故障診断装置2は、工程S122において第1角速度と第3軸方向の加速度とを用いて第2軸方向の向心加速度を算出した場合、第2軸方向の加速度と第2軸方向の向心加速度との比較結果が第2規格を満たす場合は第1センサー素子11が正常であると診断し、第2軸方向の加速度と第2軸方向の向心
加速度との比較結果が第2規格を満たさない場合は第1センサー素子11が故障していると診断してもよい。あるいは、故障診断装置2は、工程S122において第2角速度と第3軸方向の加速度とを用いて第2軸方向の向心加速度を算出した場合、第2軸方向の加速度と第2軸方向の向心加速度との比較結果が第2規格を満たす場合は第1センサー素子11が故障していると診断し、第2角速度と第2軸方向の向心加速度との比較結果が第2規格を満たさない場合は第1センサー素子11が正常であると診断してもよい。
【0108】
例えば、故障診断装置2は、工程S123において、第2軸方向の加速度と第2軸方向の向心加速度との差分を算出する場合、第2規格は、0を含む所定の範囲であってもよい。また、例えば、故障診断装置2は、工程S123において、第2軸方向の加速度と第2軸方向の向心加速度との比を算出する場合、第2規格は、1を含む所定の範囲であってもよい。
【0109】
なお、第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13のうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いので、工程S123において、故障診断装置2は、第1センサー素子11が故障している場合は第2センサー素子12が正常であると診断し、第1センサー素子11が正常である場合は第2センサー素子12が故障していると診断する。
【0110】
以下、センサーモジュール1及び故障診断装置2の具体例として、第1実施形態において図4に示した構成例を挙げて、第2実施形態の故障診断方法について詳細に説明する。センサーモジュール1の構成及び機能は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。また、故障診断装置2において、インターフェース回路101、制御回路102、ローパスフィルター103及び重力加速度分離回路104の機能は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0111】
第2実施形態では、故障診断回路100は、図2及び図15の手順に従って、センサー素子11Zの故障診断を行う。ここで、センサー素子11Z,12Z,13Yが、それぞれ、図1の第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13に相当し、検出信号SS1Z,SS2Z,SS3Yが、それぞれ、図2の第1検出信号、第2検出信号及び第3検出信号に相当する。また、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Yが、それぞれ、図2の第1角速度信号、第2角速度信号及び加速度信号に相当し、Z軸、Y軸及びX軸が、それぞれ、図2及び図15の第1軸、第2軸及び第3軸に相当する。また、第1角速度データG1Zに含まれるZ軸回りの角速度Ω、第2角速度データG2Zに含まれるZ軸回りの角速度G及び加速度データA3Yに含まれるY軸方向の加速度Aが、それぞれ、図2及び図15の第1角速度、第2角速度及び第2軸方向の加速度に相当する。
【0112】
まず、故障診断回路100は、第1実施形態と同様、図2の工程S11、工程S12及び工程S13を順に行う。
【0113】
工程S12において、工程S11の比較結果が第1規格を満たさない場合、第2診断工程S20において、故障診断回路100は、加速度データA3Yを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。
【0114】
具体的には、まず、図15の工程S121において、故障診断回路100は、X軸方向の速度Vを取得する。故障診断装置2は、車輪速センサー、GNSSドップラー等の装置から、X軸方向の速度Vを取得してもよい。あるいは、センサーモジュール1が、X軸方向の速度Vを検出する速度センサーを備え、故障診断回路100は、センサーモジュール1から、速度センサーが検出するX軸方向の速度Vを取得してもよい。また、例
えば、制御回路102が、インターフェース回路101を介して、センサーモジュール1からX軸方向の加速度Aを含む検出データSD2Xを取得して故障診断回路100に出力し、故障診断回路100が検出データSD2Xに含まれるX軸方向の加速度Aを積分してX軸方向の速度Vを算出してもよい。
【0115】
次に、工程S122において、故障診断回路100は、角速度Ω又は角速度Gと、工程S121で取得したX軸方向の速度Vとを用いて、Y軸回りの角速度ωとX軸回りの角速度ωとをゼロとしたときのY軸方向の向心加速度を算出する。具体的には、故障診断回路100は、角速度Ωと速度Vとを用いて、前出の式(11)に示した向心加速度ベクトルacenのY軸成分に対応するY軸方向の向心加速度VΩを算出する。あるいは、故障診断回路100は、角速度Gと速度Vとを用いてY軸方向の向心加速度Vを算出する。
【0116】
そして、工程S123において、故障診断回路100は、加速度データA3Yに含まれるY軸方向の加速度Aと、工程S122で算出したY軸方向の向心加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障診断を行う。例えば、故障診断回路100は、工程S122においてY軸方向の向心加速度VΩを算出した場合、加速度Aと向心加速度VΩとの比較結果が第2規格を満たす場合はセンサー素子11Zが正常であると診断し、加速度Aと向心加速度VΩとの比較結果が第2規格を満たさない場合はセンサー素子11Zが故障していると診断してもよい。あるいは、故障診断回路100は、工程S122においてY軸方向の向心加速度Vを算出した場合、加速度Aと向心加速度Vとの比較結果が第2規格を満たす場合はセンサー素子11Zが故障していると診断し、加速度Aと向心加速度Vとの比較結果が第2規格を満たさない場合はセンサー素子11Zが正常であると診断してもよい。
【0117】
本願発明者は、センサー素子13Yが正常であり、かつ、センサー素子11Zが正常である場合と故障している場合において、自動車5が右折したときに検出される加速度A及び向心加速度VΩをシミュレーションにより算出し、所定の閾値を超えた加速度Aと向心加速度VΩとの関係を導出した。図16に、当該シミュレーションにより得られた、加速度Aと向心加速度VΩとの関係を示す。図16において、丸印は、センサー素子11Zが正常である場合の加速度Aと向心加速度VΩとの関係を示し、三角印は、センサー素子11Zが故障している場合の加速度Aと向心加速度VΩとの関係を示す。図16に示すように、センサー素子11Zが正常である場合は、加速度Aと向心加速度VΩとがほぼ一致するため、加速度Aと向心加速度VΩとの関係を示す近似直線の傾き、すなわち加速度Aと向心加速度VΩとの比はほぼ1である。これに対して、センサー素子11Zが故障している場合は、加速度Aと向心加速度VΩとの比がほぼ1ではない。
【0118】
したがって、工程S123において、例えば、故障診断回路100は、1を含む所定の範囲を第2規格とし、加速度Aと向心加速度VΩとの比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障を診断してもよい。あるいは、故障診断回路100は、1を含む所定の範囲を第2規格とし、加速度Aと向心加速度Vとの比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障を診断してもよい。
【0119】
なお、センサー素子11Z、センサー素子12Z及びセンサー素子13Yのうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いので、工程S123において、故障診断回路100は、センサー素子11Zが故障している場合はセンサー素子12Zが正常であると診断し、センサー素子11Zが正常である場合はセンサー素子12Zが故障していると診断する。
【0120】
そして、故障診断回路100は、図2の工程S30において故障診断を終了するまで、工程S11,S12,S13,S121,S122,S123の処理を繰り返し行う。
【0121】
以上に説明した第2実施形態の故障診断方法によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0122】
1-3.第3実施形態
以下、第3実施形態のセンサーモジュールの故障診断方法について、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態又は第2実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態及び第2実施形態と異なる内容について説明する。
【0123】
第3実施形態の故障診断方法を実現するためのシステムの構成例は、図1と同様であるため、その図示及び説明を省略する。また、第3実施形態の故障診断方法の全体的な手順を示すフローチャート図は、図2と同様であるため、その図示及び説明を省略する。ただし、第3実施形態では、図2の第2診断工程S20の手順が第1実施形態と異なる。
【0124】
図17は、第3実施形態における、図2の第2診断工程S20の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0125】
図17に示すように、工程S221において、故障診断装置2は、センサーモジュール1が第1軸回りの回転運動をしたときの回転中心を原点とする第2軸方向の位置を取得する。第2軸方向の位置は、回転中心からセンサーモジュール1までの距離とも言える。例えば、故障診断装置2は、GNSSから得られる位置情報や地図データと、LiDARやカメラなどの外界センサーとによるマップマッチングなどにより、第2軸方向の位置を取得することができる。LiDARは、Light Detection And Rangingの略である。また、故障診断装置2は、車輪速センサーから得られる左右車輪速を用いて、第2軸方向の位置を算出することもできる。
【0126】
次に、工程S222において、故障診断装置2は、第1角速度又は第2角速度と、工程S221で取得した第2軸方向の位置とを用いて、第2軸回りの角速度と、第1軸及び前記第2軸と交差する第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの第2軸方向の向心加速度を算出する。第1軸と第2軸と第3軸とは互いに直交してもよい。なお、「第1軸と第2軸と第3軸とが直交する」とは、第1軸と第2軸とのなす角、第2軸と第3軸とのなす角及び第3軸と第1軸とのなす角が、すべて厳密に90°である場合のみならず、センサーモジュール1の製造誤差に起因して、第1軸と第2軸とのなす角、第2軸と第3軸とのなす角及び第3軸と第1軸とのなす角が、90°に対して誤差を有する場合も含まれる。例えば、第1軸は、センサーモジュール1の設置面に直交する軸であり、第2軸及び第3軸は、センサーモジュール1の設置面に平行な軸であってもよい。
【0127】
故障診断装置2は、第1角速度と第2軸方向の位置とを用いて第2軸方向の向心加速度を算出してもよいし、第2角速度と第2軸方向の位置とを用いて第2軸方向の向心加速度を算出してもよい。
【0128】
そして、工程S223において、故障診断装置2は、第3センサー素子13から出力される第3検出信号に基づく加速度信号に含まれる第2軸方向の加速度と、工程S222で算出した第2軸方向の向心加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、第1センサー素子11の故障診断を行う。例えば、故障診断装置2は、工程S222において第1角速度と第2軸方向の位置とを用いて第2軸方向の向心加速度を算出した場合、第2軸方向の加速度と第2軸方向の向心加速度との比較結果が第2規格を満たす場合は
第1センサー素子11が正常であると診断し、第2軸方向の加速度と第2軸方向の向心加速度との比較結果が第2規格を満たさない場合は第1センサー素子11が故障していると診断してもよい。あるいは、故障診断装置2は、工程S222において第2角速度と第2軸方向の位置とを用いて第2軸方向の向心加速度を算出した場合、第2軸方向の加速度と第2軸方向の向心加速度との比較結果が第2規格を満たす場合は第1センサー素子11が故障していると診断し、第2角速度と第2軸方向の向心加速度との比較結果が第2規格を満たさない場合は第1センサー素子11が正常であると診断してもよい。
【0129】
例えば、故障診断装置2は、工程S223において、第2軸方向の加速度と第2軸方向の向心加速度との差分を算出する場合、第2規格は、0を含む所定の範囲であってもよい。また、例えば、故障診断装置2は、工程S223において、第2軸方向の加速度と第2軸方向の向心加速度との比を算出する場合、第2規格は、1を含む所定の範囲であってもよい。
【0130】
なお、第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13のうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いので、工程S223において、故障診断装置2は、第1センサー素子11が故障している場合は第2センサー素子12が正常であると診断し、第1センサー素子11が正常である場合は第2センサー素子12が故障していると診断する。
【0131】
以下、センサーモジュール1及び故障診断装置2の具体例として、第1実施形態において図4に示した構成例を挙げて、第3実施形態の故障診断方法について詳細に説明する。センサーモジュール1の構成及び機能は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。また、故障診断装置2において、インターフェース回路101、制御回路102、ローパスフィルター103及び重力加速度分離回路104の機能は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0132】
第3実施形態では、故障診断回路100は、図2及び図17の手順に従って、センサー素子11Zの故障診断を行う。ここで、センサー素子11Z,12Z,13Yが、それぞれ、図1の第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13に相当し、検出信号SS1Z,SS2Z,SS3Yが、それぞれ、図2の第1検出信号、第2検出信号及び第3検出信号に相当する。また、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Yが、それぞれ、図2の第1角速度信号、第2角速度信号及び加速度信号に相当し、Z軸、Y軸及びX軸が、それぞれ、図2及び図17の第1軸、第2軸及び第3軸に相当する。また、第1角速度データG1Zに含まれるZ軸回りの角速度Ω、第2角速度データG2Zに含まれるZ軸回りの角速度G及び加速度データA3Yに含まれるY軸方向の加速度Aが、それぞれ、図2及び図17の第1角速度、第2角速度及び第2軸方向の加速度に相当する。
【0133】
まず、故障診断回路100は、第1実施形態と同様、図2の工程S11、工程S12及び工程S13を順に行う。
【0134】
工程S12において、工程S11の比較結果が第1規格を満たさない場合、第2診断工程S20において、故障診断回路100は、加速度データA3Yを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。
【0135】
具体的には、まず、図17の工程S221において、故障診断回路100は、Y軸方向の位置rを取得する。故障診断回路100は、GNSSから得られる位置情報や地図データと、LiDARやカメラなどの外界センサーとによるマップマッチングなどにより、Y軸方向の位置rを取得することができる。また、故障診断回路100は、車輪速セン
サーから得られる左右車輪速を用いて、Y軸方向の位置rを算出することもできる。
【0136】
次に、工程S222において、故障診断回路100は、角速度Ω又は角速度Gと、工程S221で取得したY軸方向の位置rとを用いて、Y軸回りの角速度ωとX軸回りの角速度ωとをゼロとしたときのY軸方向の向心加速度を算出する。具体的には、故障診断回路100は、角速度Ωと位置rとを用いて、前出の式(11)に示した向心加速度ベクトルacenのY軸成分に対応するY軸方向の向心加速度-rΩ を算出する。あるいは、故障診断回路100は、角速度Gと位置rとを用いてY軸方向の向心加速度-r を算出する。
【0137】
そして、工程S223において、故障診断回路100は、加速度データA3Yに含まれるY軸方向の加速度Aと、工程S222で算出したY軸方向の向心加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障診断を行う。例えば、故障診断装置2は、工程S222においてY軸方向の向心加速度-rΩ を算出した場合、加速度Aと向心加速度VΩとの比較結果が第2規格を満たす場合はセンサー素子11Zが正常であると診断し、加速度Aと向心加速度VΩとの比較結果が第2規格を満たさない場合はセンサー素子11Zが故障していると診断してもよい。あるいは、故障診断回路100は、工程S222においてY軸方向の向心加速度-r を算出した場合、加速度Aと向心加速度Vとの比較結果が第2規格を満たす場合はセンサー素子11Zが故障していると診断し、加速度Aと向心加速度Vとの比較結果が第2規格を満たさない場合はセンサー素子11Zが正常であると診断してもよい。
【0138】
本願発明者は、センサー素子13Yが正常であり、かつ、センサー素子11Zが正常である場合と故障している場合において、自動車5が右折したときに検出される加速度A及び向心加速度-rΩ をシミュレーションにより算出し、所定の閾値を超えた加速度Aと向心加速度-rΩ との関係を導出した。図18に、当該シミュレーションにより得られた、加速度Aと向心加速度-rΩ との関係を示す。図18において、丸印は、センサー素子11Zが正常である場合の加速度Aと向心加速度-rΩ との関係を示し、三角印は、センサー素子11Zが故障している場合の加速度Aと向心加速度-rΩ との関係を示す。図18に示すように、センサー素子11Zが正常である場合は、加速度Aと向心加速度-rΩ とがほぼ一致するため、加速度Aと向心加速度-rΩ との関係を示す近似直線の傾き、すなわち加速度Aと向心加速度-rΩ との比はほぼ1である。これに対して、センサー素子11Zが故障している場合は、加速度Aと向心加速度-rΩ との比がほぼ1ではない。
【0139】
したがって、工程S223において、例えば、故障診断回路100は、1を含む所定の範囲を第2規格とし、加速度Aと向心加速度-rΩ との比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障を診断してもよい。あるいは、故障診断回路100は、1を含む所定の範囲を第2規格とし、加速度Aと向心加速度-r との比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障を診断してもよい。
【0140】
なお、センサー素子11Z、センサー素子12Z及びセンサー素子13Yのうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いので、工程S223において、故障診断回路100は、センサー素子11Zが故障している場合はセンサー素子12Zが正常であると診断し、センサー素子11Zが正常である場合はセンサー素子12Zが故障していると診断する。
【0141】
そして、故障診断回路100は、図2の工程S30において故障診断を終了するまで、工程S11,S12,S13,S221,S222,S223の処理を繰り返し行う。
【0142】
以上に説明した第3実施形態の故障診断方法によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0143】
1-4.第4実施形態
以下、第4実施形態のセンサーモジュールの故障診断方法について、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態~第3実施形態のいずれとも異なる内容について説明する。
【0144】
第4実施形態の故障診断方法を実現するためのシステムの構成例は、図1と同様であるため、その図示及び説明を省略する。また、第4実施形態の故障診断方法の全体的な手順を示すフローチャート図は、図2と同様であるため、その図示及び説明を省略する。ただし、第4実施形態では、図2の第2診断工程S20の手順が第1実施形態と異なる。
【0145】
図19は、第4実施形態における、図2の第2診断工程S20の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0146】
図19に示すように、工程S321において、故障診断装置2は、センサーモジュール1が第1軸回りの回転運動をしたときの回転中心を原点とする、第1軸及び第2軸と交差する第3軸方向の位置を取得する。第1軸と第2軸と第3軸とは互いに直交してもよい。なお、「第1軸と第2軸と第3軸とが直交する」とは、第1軸と第2軸とのなす角、第2軸と第3軸とのなす角及び第3軸と第1軸とのなす角が、すべて厳密に90°である場合のみならず、センサーモジュール1の製造誤差に起因して、第1軸と第2軸とのなす角、第2軸と第3軸とのなす角及び第3軸と第1軸とのなす角が、90°に対して誤差を有する場合も含まれる。例えば、第1軸は、センサーモジュール1の設置面に直交する軸であり、第2軸及び第3軸は、センサーモジュール1の設置面に平行な軸であってもよい。
【0147】
第2軸方向の位置は、回転中心からセンサーモジュール1までの距離とも言える。例えば、故障診断装置2は、GNSSから得られる位置情報や地図データと、LiDARやカメラなどの外界センサーとによるマップマッチングなどにより、第2軸方向の位置を取得することができる。また、故障診断装置2は、車輪速センサーから得られる左右車輪速を用いて、第2軸方向の位置を算出することもできる。
【0148】
次に、工程S322において、故障診断装置2は、第1角速度又は第2角速度と、工程S321で取得した第3軸方向の位置とを用いて、第2軸回りの角速度と第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの第2軸方向のオイラー加速度を算出する。故障診断装置2は、第1角速度と第3軸方向の位置とを用いて第2軸方向のオイラー加速度を算出してもよいし、第2角速度と第3軸方向の位置とを用いて第2軸方向のオイラー加速度を算出してもよい。
【0149】
そして、工程S323において、故障診断装置2は、第3センサー素子13から出力される第3検出信号に基づく加速度信号に含まれる第2軸方向の加速度と、工程S322で算出した第2軸方向のオイラー加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、第1センサー素子11の故障診断を行う。例えば、故障診断装置2は、工程S322において第1角速度と第3軸方向の位置とを用いて第2軸方向のオイラー加速度を算出した場合、第2軸方向の加速度と第2軸方向のオイラー加速度との比較結果が第2規格を満たす場合は第1センサー素子11が正常であると診断し、第2軸方向の加速度と第2軸方向のオイラー加速度との比較結果が第2規格を満たさない場合は第1センサー素子11が故障していると診断してもよい。あるいは、故障診断装置2は、工程S322において
第2角速度と第3軸方向の位置とを用いて第2軸方向のオイラー加速度を算出した場合、第2軸方向の加速度と第2軸方向のオイラー加速度との比較結果が第2規格を満たす場合は第1センサー素子11が故障していると診断し、第2角速度と第2軸方向のオイラー加速度との比較結果が第2規格を満たさない場合は第1センサー素子11が正常であると診断してもよい。
【0150】
例えば、故障診断装置2は、工程S323において、第2軸方向の加速度と第2軸方向のオイラー加速度との差分を算出する場合、第2規格は、0を含む所定の範囲であってもよい。また、例えば、故障診断装置2は、工程S323において、第2軸方向の加速度と第2軸方向のオイラー加速度との比を算出する場合、第2規格は、1を含む所定の範囲であってもよい。
【0151】
なお、第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13のうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いので、工程S323において、故障診断装置2は、第1センサー素子11が故障している場合は第2センサー素子12が正常であると診断し、第1センサー素子11が正常である場合は第2センサー素子12が故障していると診断する。
【0152】
以下、センサーモジュール1及び故障診断装置2の具体例として、第1実施形態において図4に示した構成例を挙げて、第4実施形態の故障診断方法について詳細に説明する。センサーモジュール1の構成及び機能は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。また、故障診断装置2において、インターフェース回路101の機能は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0153】
第4実施形態では、制御回路102は、自動車5が右折や左折のために回転運動を行う期間において、処理装置30から、インターフェース回路101を介して、検出データSD1Z,SD2Z,SD3X及びピッチ角θを取得する。
【0154】
ローパスフィルター103は、制御回路102から検出データSD1Z,SD2Z,SD3Xを取得し、高周波のノイズ成分を低減させるためにローパスフィルター処理を行う。ローパスフィルター処理された後の検出データSD1Zは、第1角速度データG1Zとして故障診断回路100に入力される。第1角速度データG1Zには、センサー素子11Zが検出したZ軸回りの角速度に基づく角速度Ωが含まれている。また、ローパスフィルター処理された後の検出データSD2Zは、第2角速度データG2Zとして故障診断回路100に入力される。第2角速度データG2Zには、センサー素子12Zが検出したZ軸回りの角速度に基づく角速度Gが含まれている。
【0155】
重力加速度分離回路104は、ローパスフィルター処理された後の検出データSD3Xから重力加速度成分を分離する。具体的には、重力加速度分離回路104は、ピッチ角θを用いて、重力加速度ベクトルaのX軸方向の重力加速度成分である-gsinθを算出し、ローパスフィルター処理された後の検出データSD3Xに含まれるX軸方向の加速度から、-gsinθを減算する。重力加速度分離回路104が重力加速度成分を分離した後の検出データSD3Xは、加速度データA3Xとして故障診断回路100に入力される。加速度データA3Xには、センサー素子13Xが検出したX軸方向の加速度に基づく加速度Aが含まれている。
【0156】
故障診断回路100は、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Xを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。具体的には、故障診断回路100は、図2及び図19の手順に従って、センサー素子11Zの故障診断を行う。ここで、センサー素子11Z,12Z,13Xが、それぞれ、図1の第1センサー素子11
、第2センサー素子12及び第3センサー素子13に相当し、検出信号SS1Z,SS2Z,SS3Xが、それぞれ、図2の第1検出信号、第2検出信号及び第3検出信号に相当する。また、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Xが、それぞれ、図2の第1角速度信号、第2角速度信号及び加速度信号に相当し、Z軸、X軸及びY軸が、それぞれ、図2及び図19の第1軸、第2軸及び第3軸に相当する。また、第1角速度データG1Zに含まれるZ軸回りの角速度Ω、第2角速度データG2Zに含まれるZ軸回りの角速度G及び加速度データA3Xに含まれるX軸方向の加速度Aが、それぞれ、図2及び図19の第1角速度、第2角速度及び第2軸方向の加速度に相当する。
【0157】
まず、故障診断回路100は、第1実施形態と同様、図2の工程S11、工程S12及び工程S13を順に行う。
【0158】
工程S12において、工程S11の比較結果が第1規格を満たさない場合、第2診断工程S20において、故障診断回路100は、加速度データA3Xを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。
【0159】
具体的には、まず、図19の工程S321において、故障診断回路100は、Y軸方向の位置rを取得する。故障診断回路100は、GNSSから得られる位置情報や地図データと、LiDARやカメラなどの外界センサーとによるマップマッチングなどにより、Y軸方向の位置rを取得することができる。また、故障診断回路100は、車輪速センサーから得られる左右車輪速を用いて、Y軸方向の位置rを算出することもできる。
【0160】
次に、工程S322において、故障診断回路100は、角速度Ω又は角速度Gと、工程S321で取得したY軸方向の位置rとを用いて、X軸回りの角速度ωとY軸回りの角速度ωとをゼロとしたときのX軸方向のオイラー加速度を算出する。具体的には、故障診断回路100は、角速度Ωと位置rとを用いて、前出の式(12)に示したオイラー加速度ベクトルaeulのX軸成分に対応するX軸方向のオイラー加速度-rΩ’を算出する。なお、Ω’はΩの微分を表す。あるいは、故障診断回路100は、角速度Gと位置rとを用いてX軸方向のオイラー加速度-r’を算出する。なお、G’はGの微分を表す。
【0161】
そして、工程S323において、故障診断回路100は、加速度データA3Xに含まれるX軸方向の加速度Aと、工程S322で算出したX軸方向のオイラー加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障診断を行う。例えば、故障診断装置2は、工程S322においてX軸方向のオイラー加速度-rΩ’を算出した場合、加速度Aとオイラー加速度-rΩ’との比較結果が第2規格を満たす場合はセンサー素子11Zが正常であると診断し、加速度Aとオイラー加速度-rΩ’との比較結果が第2規格を満たさない場合はセンサー素子11Zが故障していると診断してもよい。あるいは、故障診断回路100は、工程S322においてX軸方向のオイラー加速度-r’を算出した場合、加速度Aとオイラー加速度-r’との比較結果が第2規格を満たす場合はセンサー素子11Zが故障していると診断し、加速度Aとオイラー加速度-r’との比較結果が第2規格を満たさない場合はセンサー素子11Zが正常であると診断してもよい。
【0162】
工程S323において、例えば、故障診断回路100は、1を含む所定の範囲を第2規格とし、加速度Aとオイラー加速度-rΩ’との比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障を診断してもよい。あるいは、故障診断回路100は、1を含む所定の範囲を第2規格とし、加速度Aとオイラー加速度-r’との比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障を診断してもよい。
【0163】
なお、センサー素子11Z、センサー素子12Z及びセンサー素子13Xのうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いので、工程S323において、故障診断回路100は、センサー素子11Zが故障している場合はセンサー素子12Zが正常であると診断し、センサー素子11Zが正常である場合はセンサー素子12Zが故障していると診断する。
【0164】
そして、故障診断回路100は、図2の工程S30において故障診断を終了するまで、工程S11,S12,S13,S321,S322,S323の処理を繰り返し行う。
【0165】
以上に説明した第4実施形態の故障診断方法によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0166】
以上に説明した第4実施形態の故障診断方法によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0167】
1-5.第5実施形態
以下、第5実施形態のセンサーモジュールの故障診断方法について、第1実施形態~第4実施形態のいずれかと同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態~第4実施形態のいずれかと重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態~第4実施形態のいずれとも異なる内容について説明する。
【0168】
第5実施形態の故障診断方法を実現するためのシステムの構成例は、図1と同様であるため、その図示及び説明を省略する。また、第5実施形態の故障診断方法の全体的な手順を示すフローチャート図は、図2と同様であるため、その図示及び説明を省略する。ただし、第5実施形態では、図2の第2診断工程S20の手順が第1実施形態と異なる。
【0169】
図20は、第5実施形態における、図2の第2診断工程S20の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0170】
図20に示すように、工程S421において、故障診断装置2は、センサーモジュール1が第1軸回りの回転運動をしたときの回転中心を原点とする、第1軸及び第2軸と交差する第3軸方向の位置を取得する。第1軸と第2軸と第3軸とは互いに直交してもよい。なお、「第1軸と第2軸と第3軸とが直交する」とは、第1軸と第2軸とのなす角、第2軸と第3軸とのなす角及び第3軸と第1軸とのなす角が、すべて厳密に90°である場合のみならず、センサーモジュール1の製造誤差に起因して、第1軸と第2軸とのなす角、第2軸と第3軸とのなす角及び第3軸と第1軸とのなす角が、90°に対して誤差を有する場合も含まれる。例えば、第1軸は、センサーモジュール1の設置面に直交する軸であり、第2軸及び第3軸は、センサーモジュール1の設置面に平行な軸であってもよい。
【0171】
第2軸方向の位置は、回転中心からセンサーモジュール1までの距離とも言える。例えば、故障診断装置2は、GNSSから得られる位置情報や地図データと、LiDARやカメラなどの外界センサーとによるマップマッチングなどにより、第2軸方向の位置を取得することができる。また、故障診断装置2は、車輪速センサーから得られる左右車輪速を用いて、第2軸方向の位置を算出することもできる。
【0172】
次に、工程S422において、故障診断装置2は、第1角速度又は第2角速度と、工程S421で取得した第3軸方向の位置とを用いて、第2軸回りの角速度と第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの第2軸方向のコリオリ加速度を算出する。故障診断装置2は、第1角速度と第3軸方向の位置とを用いて第2軸方向のコリオリ加速度を算出してもよい
し、第2角速度と第3軸方向の位置とを用いて第2軸方向のコリオリ加速度を算出してもよい。
【0173】
そして、工程S423において、故障診断装置2は、第3センサー素子13から出力される第3検出信号に基づく加速度信号に含まれる第2軸方向の加速度と、工程S422で算出した第2軸方向のコリオリ加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、第1センサー素子11の故障診断を行う。例えば、故障診断装置2は、工程S422において第1角速度と第3軸方向の位置とを用いて第2軸方向のコリオリ加速度を算出した場合、第2軸方向の加速度と第2軸方向のコリオリ加速度との比較結果が第2規格を満たす場合は第1センサー素子11が正常であると診断し、第2軸方向の加速度と第2軸方向のコリオリ加速度との比較結果が第2規格を満たさない場合は第1センサー素子11が故障していると診断してもよい。あるいは、故障診断装置2は、工程S422において第2角速度と第3軸方向の位置とを用いて第2軸方向のコリオリ加速度を算出した場合、第2軸方向の加速度と第2軸方向のコリオリ加速度との比較結果が第2規格を満たす場合は第1センサー素子11が故障していると診断し、第2角速度と第2軸方向のコリオリ加速度との比較結果が第2規格を満たさない場合は第1センサー素子11が正常であると診断してもよい。
【0174】
例えば、故障診断装置2は、工程S423において、第2軸方向の加速度と第2軸方向のコリオリ加速度との差分を算出する場合、第2規格は、0を含む所定の範囲であってもよい。また、例えば、故障診断装置2は、工程S423において、第2軸方向の加速度と第2軸方向のコリオリ加速度との比を算出する場合、第2規格は、1を含む所定の範囲であってもよい。
【0175】
なお、第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13のうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いので、工程S423において、故障診断装置2は、第1センサー素子11が故障している場合は第2センサー素子12が正常であると診断し、第1センサー素子11が正常である場合は第2センサー素子12が故障していると診断する。
【0176】
以下、センサーモジュール1及び故障診断装置2の具体例として、第1実施形態において図4に示した構成例を挙げて、第5実施形態の故障診断方法について詳細に説明する。センサーモジュール1の構成及び機能は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。また、故障診断装置2において、インターフェース回路101、制御回路102、ローパスフィルター103及び重力加速度分離回路104の機能は、第4実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0177】
第5実施形態では、故障診断回路100は、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Xを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。具体的には、故障診断回路100は、図2及び図20の手順に従って、センサー素子11Zの故障診断を行う。ここで、センサー素子11Z,12Z,13Xが、それぞれ、図1の第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13に相当し、検出信号SS1Z,SS2Z,SS3Xが、それぞれ、図2の第1検出信号、第2検出信号及び第3検出信号に相当する。また、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Xが、それぞれ、図2の第1角速度信号、第2角速度信号及び加速度信号に相当し、Z軸、X軸及びY軸が、それぞれ、図2及び図20の第1軸、第2軸及び第3軸に相当する。また、第1角速度データG1Zに含まれるZ軸回りの角速度Ω、第2角速度データG2Zに含まれるZ軸回りの角速度G及び加速度データA3Xに含まれるX軸方向の加速度Aが、それぞれ、図2及び図20の第1角速度、第2角速度及び第2軸方向の加速度に相当する。
【0178】
まず、故障診断回路100は、第1実施形態と同様、図2の工程S11、工程S12及び工程S13を順に行う。
【0179】
工程S12において、工程S11の比較結果が第1規格を満たさない場合、第2診断工程S20において、故障診断回路100は、加速度データA3Xを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。
【0180】
具体的には、まず、図20の工程S421において、故障診断回路100は、Y軸方向の位置rを取得する。故障診断回路100は、GNSSから得られる位置情報や地図データと、LiDARやカメラなどの外界センサーとによるマップマッチングなどにより、Y軸方向の位置rを取得することができる。また、故障診断回路100は、車輪速センサーから得られる左右車輪速を用いて、Y軸方向の位置rを算出することもできる。
【0181】
次に、工程S422において、故障診断回路100は、角速度Ω又は角速度Gと、工程S421で取得したY軸方向の位置rとを用いて、X軸回りの角速度ωとY軸回りの角速度ωとをゼロとしたときのX軸方向のコリオリ加速度を算出する。具体的には、故障診断回路100は、角速度Ωと位置rとを用いて、前出の式(13)に示したコリオリ加速度ベクトルacolのX軸成分に対応するX軸方向のコリオリ加速度-2r’Ωを算出する。なお、r’はrの微分を表す。あるいは、故障診断回路100は、角速度Gと位置rとを用いてX軸方向のコリオリ加速度-2r’Gを算出する。
【0182】
そして、工程S423において、故障診断回路100は、加速度データA3Xに含まれるX軸方向の加速度Aと、工程S422で算出したX軸方向のコリオリ加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障診断を行う。例えば、故障診断装置2は、工程S422においてX軸方向のコリオリ加速度-2r’Ωを算出した場合、加速度Aとコリオリ加速度-2r’Ωとの比較結果が第2規格を満たす場合はセンサー素子11Zが正常であると診断し、加速度Aとコリオリ加速度-2r’Ωとの比較結果が第2規格を満たさない場合はセンサー素子11Zが故障していると診断してもよい。あるいは、故障診断回路100は、工程S422においてX軸方向のコリオリ加速度-2r’Gを算出した場合、加速度Aとコリオリ加速度-2r’Gとの比較結果が第2規格を満たす場合はセンサー素子11Zが故障していると診断し、加速度Aとコリオリ加速度-2r’Gとの比較結果が第2規格を満たさない場合はセンサー素子11Zが正常であると診断してもよい。
【0183】
工程S423において、例えば、故障診断回路100は、1を含む所定の範囲を第2規格とし、加速度Aとコリオリ加速度-2r’Ωとの比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障を診断してもよい。あるいは、故障診断回路100は、1を含む所定の範囲を第2規格とし、加速度Aとコリオリ加速度-2r’Gとの比が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障を診断してもよい。
【0184】
なお、センサー素子11Z、センサー素子12Z及びセンサー素子13Xのうちの2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いので、工程S423において、故障診断回路100は、センサー素子11Zが故障している場合はセンサー素子12Zが正常であると診断し、センサー素子11Zが正常である場合はセンサー素子12Zが故障していると診断する。
【0185】
そして、故障診断回路100は、図2の工程S30において故障診断を終了するまで、工程S11,S12,S13,S421,S422,S423の処理を繰り返し行う。
【0186】
以上に説明した第5実施形態の故障診断方法によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0187】
2.センサーモジュール
図21は、本実施形態のセンサーモジュールの機能的な構成例を示す図である。図21に示すように、本実施形態のセンサーモジュール200は、第1センサー素子11と、第2センサー素子12と、第3センサー素子13と、故障診断回路100とを含む。
【0188】
第1センサー素子11は、第1軸回りの角速度を検出して第1検出信号SS1を出力する。第2センサー素子12は、第1軸回りの角速度を検出して第2検出信号SS2を出力する。すなわち、第1センサー素子11と第2センサー素子12とは、ともに第1軸回りの角速度を検出するが、第1センサー素子11は、第2センサー素子12よりも検出精度が高くてもよい。
【0189】
第3センサー素子13は、第1軸と交差する第2軸方向の加速度を検出して第3検出信号SS3を出力する。第1軸と第2軸とは互いに直交してもよい。例えば、第1軸は、センサーモジュール1の設置面に直交する軸であり、第2軸は、センサーモジュール1の設置面に平行な軸であってもよい。
【0190】
故障診断回路100は、センサーモジュール1に接続され、前述の第1実施形態~第5実施形態のいずれかの故障診断方法により、第1センサー素子11の故障診断を行う。具体的には、故障診断回路100は、第1検出信号SS1に基づく第1角速度信号G1に含まれる第1軸回りの角速度である第1角速度と第2検出信号SS2に基づく第2角速度信号G2に含まれる第1軸回りの角速度である第2角速度とを比較し、比較結果が第1規格を満たす場合は第1センサー素子11が正常であると診断する。また、故障診断回路100は、第1角速度と第2角速度との比較結果が第1規格を満たさない場合に、第3検出信号SS3に基づく加速度信号A3を用いて、第1センサー素子11の故障診断を行う。
【0191】
図22は、センサーモジュール200の具体的な構成例を示す図である。図22において、図4と同じ構成要素には同じ符号が付されている。図22の例では、センサーモジュール200は、角速度センサー10と、6Dofセンサー20と、処理装置30と、故障診断装置40と、を備える。なお、センサーモジュール200は、図22の構成要素の一部を省略又は変更し、あるいは、他の構成要素を付加した構成としてもよい。角速度センサー10、6Dofセンサー20、処理装置30及び故障診断装置40は、不図示の筐体に収容されている。角速度センサー10、6Dofセンサー20及び処理装置30の構成及び機能は、図4で説明した通りであるため、その説明を省略する。
【0192】
図22に示すように、故障診断装置40は、故障診断回路100、インターフェース回路101、制御回路102、ローパスフィルター103及び重力加速度分離回路104を含む。インターフェース回路101、制御回路102、ローパスフィルター103及び重力加速度分離回路104の機能は、図4で説明した通りであるため、その説明を省略する。
【0193】
故障診断回路100は、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Yを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。具体的には、故障診断回路100は、検出信号SS1Zに基づく第1角速度データG1Zに含まれるZ軸回りの角速度Ωと検出信号SS2Zに基づく第2角速度データG2Zに含まれるZ軸回りの角速度Gとを比較し、比較結果が第1規格を満たす場合はセンサー素子11Zが正常であると診断する。また、故障診断回路100は、角速度Ωと角速度Gとの比較結果が第1
規格を満たさない場合に、検出信号SS3Yに基づく加速度データA3Yを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行う。なお、図22において、センサー素子11Z,12Z,13Xが、それぞれ、図21の第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13に相当し、検出信号SS1Z,SS2Z,SS3Yが、それぞれ、図21の第1検出信号SS1、第2検出信号SS2及び第3検出信号SS3に相当する。また、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Yが、それぞれ、図21の第1角速度信号G1、第2角速度信号G2及び加速度信号A3に相当し、Z軸、Y軸及びX軸が、それぞれ、第1軸、第2軸及び第3軸に相当する。また、第1角速度データG1Zに含まれるZ軸回りの角速度Ω、第2角速度データG2Zに含まれるZ軸回りの角速度G及び加速度データA3Yに含まれるY軸方向の加速度Aが、それぞれ、第1角速度、第2角速度及び第2軸方向の加速度に相当する。
【0194】
故障診断回路100は、図2及び図3図15又は図17の手順に従って、センサー素子11Zの故障診断を行う。これらの手順については、前述の通りであるので、その説明を省略する。
【0195】
センサーモジュール200のその他の構成及び機能は、図4に示したセンサーモジュール1と同様であるため、その説明を省略する。
【0196】
なお、センサーモジュール200においても、第4実施形態及び第5実施形態で説明した通り、故障診断回路100は、第1角速度データG1Z、第2角速度データG2Z及び加速度データA3Xを用いて、センサー素子11Zの故障診断を行ってもよい。具体的には、故障診断回路100は、図2及び図19又は図20の手順に従って、センサー素子11Zの故障診断を行ってもよい。これらの手順については、前述の通りであるので、その説明を省略する。
【0197】
以上に説明した本実施形態のセンサーモジュール200によれば、上記の第1実施形態~第5実施形態の故障診断方法と同様の効果が得られる。
【0198】
3.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0199】
例えば、上記の各実施形態では、センサーモジュール1が自動車5に搭載される例を挙げたが、センサーモジュール1は自動車以外の移動体に搭載されてもよい。移動体としては、例えば、自動車の他、ジェット機やヘリコプター等の航空機、船舶、ロケット、人工衛星、鉄道車両等が挙げられる。
【0200】
また、第2診断工程S20の具体的な手順は、図3図15図17図19又は図20の手順に限られない。例えば、故障診断装置2、故障診断装置40又は故障診断回路100は、図12に示した楕円の範囲内を第2規格として、角速度Ω又は角速度Gと加速度Aとの分布が第2規格を満たすか否かにより、センサー素子11Zの故障診断を行ってもよい。また、例えば、故障診断装置2、故障診断装置40又は故障診断回路100は、角速度Ω又は角速度Gと加速度Aとをカルマンフィルターに入力して、センサー素子11Zの故障診断を行ってもよい。
【0201】
例えば、上記の各実施形態では、センサーモジュール1又はセンサーモジュール200は、角速度センサー10と6Dofセンサー20とを備えるが、これらに代えて他のセンサーを備えてもよい。例えば、センサーモジュール1又はセンサーモジュール200は、ともにZ軸の角速度を検出する2つの角速度センサーと3軸加速度センサーとを備えても
よいし、2つの6Dofセンサーを備えてもよい。
【0202】
また、上記の各実施形態では、処理装置30がセンサーモジュール1の姿勢、速度、角度等を演算する例を挙げたが、ホストデバイス3がセンサーモジュール1の姿勢、速度、角度等を演算してもよい。
【0203】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0204】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0205】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0206】
センサーモジュールの故障診断方法は、
第1軸回りの角速度を検出して第1検出信号を出力する第1センサー素子と、前記第1軸回りの角速度を検出して第2検出信号を出力する第2センサー素子と、前記第1軸と交差する第2軸方向の加速度を検出して第3検出信号を出力する第3センサー素子と、を備えるセンサーモジュールの故障診断方法であって、
前記第1検出信号に基づく第1角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第1角速度と、前記第2検出信号に基づく第2角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第2角速度とを比較し、比較結果が第1規格を満たす場合は前記第1センサー素子及び前記第2センサー素子が正常であると診断する第1診断工程と、
前記比較結果が第1規格を満たさない場合に、前記第1角速度信号又は前記第2角速度信号と、前記第3検出信号に基づく加速度信号とを用いて、前記第1センサー素子の故障診断を行う第2診断工程と、
を含む。
【0207】
この故障診断方法では、第1センサー素子、第2センサー素子及び第3センサー素子の2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いことを前提として、故障診断装置は、第1診断工程において、第1センサー素子及び第2センサー素子が正常であるか、第1センサー素子又は第2センサー素子が故障しているかを診断することができる。また、故障診断装置は、第1診断工程において第1センサー素子又は第2センサー素子が故障していると診断した場合、上記の前提より、第3センサー素子は正常であるので、第2診断工程において、第1角速度信号又は第2角速度信号と加速度信号とを用いて、第1センサー素子が故障しているか否かを診断することができる。そして、故障診断装置が、第2診断工程において、第1センサー素子が正常であると診断した場合は第2センサー素子が故障していることになり、第1センサー素子が故障していると診断した場合は第2センサー素子が正常であることになる。さらに、この故障診断方法では、第1センサー素子と第2センサー素子がともに第1軸回りの角速度を検出するので、第1角速度信号と第2角速度信号との差が小さく、故障診断装置は、第1診断工程において、第1センサー素子及び第2センサー素子が正常であるか、第1センサー素子又は第2センサー素子が故障しているかを容易かつ正確に診断することができる。そして、故障診断装置は、第1診断工程において第1センサー素子及び第2センサー素子が正常であると診断した場合は、第2診断工程を行う必要はない。したがって、この故障診断方法によれば、故障診断装置は、ともに第1軸回りの角速度を検出する第1センサー素子及び第2センサー素子のいずれが故障しているか
を効率よく診断することができる。
【0208】
前記センサーモジュールの故障診断方法において、
前記第1センサー素子は、前記第2センサー素子よりも検出精度が高くてもよい。
【0209】
この故障診断方法によれば、第1センサー素子が正常であるか故障しているかを診断することができる。したがって、例えば、センサーモジュール又はセンサーモジュールと接続されるホストデバイスが、第1センサー素子が正常である場合は、検出精度の高い第1センサー素子から出力される第1検出信号を用いて必要な演算を高精度に行い、第1センサー素子が故障している場合は、第2センサー素子から出力される第2検出信号を用いて必要な演算を継続することができる。
【0210】
前記センサーモジュールの故障診断方法において、
前記第2診断工程は、
前記第1角速度又は第2角速度と、前記加速度信号に含まれる前記第2軸方向の加速度との比を算出する工程と、
前記比が第2規格を満たすか否かにより、前記第1センサー素子の故障診断を行う工程と、
を含んでもよい。
【0211】
前記センサーモジュールの故障診断方法において、
前記第2診断工程は、
前記第1軸及び前記第2軸と交差する第3軸方向の速度を取得する工程と、
前記第1角速度又は第2角速度と、前記第3軸方向の速度とを用いて、前記第2軸回りの角速度と前記第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの前記第2軸方向の向心加速度を算出する工程と、
前記加速度信号に含まれる前記第2軸方向の加速度と、前記第2軸方向の向心加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、前記第1センサー素子の故障診断を行う工程と、
を含んでもよい。
【0212】
前記センサーモジュールの故障診断方法において、
前記第2診断工程は、
前記センサーモジュールが前記第1軸回りの回転運動をしたときの回転中心を原点とする前記第2軸方向の位置を取得する工程と、
前記第1角速度又は第2角速度と、前記第2軸方向の位置とを用いて、前記第2軸回りの角速度と、前記第1軸及び前記第2軸と交差する第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの前記第2軸方向の向心加速度を算出する工程と、
前記加速度信号に含まれる前記第2軸方向の加速度と、前記第2軸方向の向心加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、前記第1センサー素子の故障診断を行う工程と、
を含んでもよい。
【0213】
前記センサーモジュールの故障診断方法において、
前記第2診断工程は、
前記センサーモジュールが前記第1軸回りの回転運動をしたときの回転中心を原点とする、前記第1軸及び前記第2軸と交差する第3軸方向の位置を取得する工程と、
前記第1角速度又は第2角速度と、前記第3軸方向の位置とを用いて、前記第2軸回りの角速度と前記第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの前記第2軸方向のオイラー加速度を算出する工程と、
前記加速度信号に含まれる前記第2軸方向の加速度と、前記第2軸方向のオイラー加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、前記第1センサー素子の故障診断を行う工程と、
を含んでもよい。
【0214】
前記センサーモジュールの故障診断方法において、
前記第2診断工程は、
前記センサーモジュールが前記第1軸回りの回転運動をしたときの回転中心を原点とする、前記第1軸及び前記第2軸と交差する第3軸方向の位置を取得する工程と、
前記第1角速度又は第2角速度と、前記第3軸方向の位置とを用いて、前記第2軸回りの角速度と前記第3軸回りの角速度とをゼロとしたときの前記第2軸方向のコリオリ加速度を算出する工程と、
前記加速度信号に含まれる前記第2軸方向の加速度と、前記第2軸方向のコリオリ加速度とを比較し、比較結果が第2規格を満たすか否かにより、前記第1センサー素子の故障診断を行う工程と、
を含んでもよい。
【0215】
センサーモジュールの一態様は、
第1軸回りの角速度を検出して第1検出信号を出力する第1センサー素子と、
前記第1軸回りの角速度を検出して第2検出信号を出力する第2センサー素子と、
前記第1軸と交差する第2軸方向の加速度を検出して第3検出信号を出力する第3センサー素子と、
故障診断回路と、
を備え、
前記故障診断回路は、
前記第1検出信号に基づく第1角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第1角速度と前記第2検出信号に基づく第2角速度信号に含まれる前記第1軸回りの角速度である第2角速度とを比較し、比較結果が第1規格を満たす場合は前記第1センサー素子及び前記第2センサー素子が正常であると診断し、
前記比較結果が第1規格を満たさない場合に、前記第1角速度信号又は前記第2角速度信号と、前記第3検出信号に基づく加速度信号とを用いて、前記第1センサー素子の故障診断を行う。
【0216】
このセンサーモジュールでは、第1センサー素子、第2センサー素子及び第3センサー素子の2つ以上が同時に故障する可能性は極めて低いことを前提として、故障診断回路は、第1センサー素子及び第2センサー素子が正常であるか、第1センサー素子又は第2センサー素子が故障しているかを診断することができる。また、故障診断回路は、第1センサー素子又は第2センサー素子が故障していると診断した場合、上記の前提より、第3センサー素子は正常であるので、第1角速度信号又は第2角速度信号と加速度信号とを用いて、第1センサー素子が故障しているか否かを診断することができる。そして、故障診断回路が、第1センサー素子が正常であると診断した場合は第2センサー素子が故障していることになり、第1センサー素子が故障していると診断した場合は第2センサー素子が正常であることになる。さらに、このセンサーモジュールでは、第1センサー素子と第2センサー素子がともに第1軸回りの角速度を検出するので、第1角速度信号と第2角速度信号との差が小さく、故障診断回路は、第1センサー素子及び第2センサー素子が正常であるか、第1センサー素子又は第2センサー素子が故障しているかを容易かつ正確に診断することができる。そして、故障診断回路は、第1センサー素子及び第2センサー素子が正常であると診断した場合は、第3検出信号に基づく加速度信号とを用いて第1センサー素子の故障診断を行う必要はない。したがって、このセンサーモジュールによれば、故障診断回路は、ともに第1軸回りの角速度を検出する第1センサー素子及び第2センサー素子
のいずれが故障しているかを効率よく診断することができる。
【符号の説明】
【0217】
1…センサーモジュール、2…故障診断装置、3…ホストデバイス、5…自動車、10…角速度センサー、11…第1センサー素子、11Z…センサー素子、12…第2センサー素子、12X,12Y,12Z…センサー素子、13…第3センサー素子、13X,13Y,13Z…センサー素子、15…検出回路、16…インターフェース回路、20…6Dofセンサー、25…検出回路、26…インターフェース回路、30…処理装置、40…故障診断装置、100…故障診断回路、101…インターフェース回路、102…制御回路、103…ローパスフィルター、104…重力加速度分離回路、200…センサーモジュール
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