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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130839
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ひび割れ測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240920BHJP
   E01C 23/01 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
E01C23/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040759
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 尚子
【テーマコード(参考)】
2D053
2G051
【Fターム(参考)】
2D053AA34
2D053FA02
2G051AA90
2G051AB03
2G051AC12
2G051AC16
2G051CA04
2G051DA17
(57)【要約】
【課題】ひび割れを好適に測定することができるひび割れ測定システムを提供する。
【解決手段】建物の床2に沿って移動可能な第一測定器10及び第二測定器20と、前記第一測定器10に設けられ、前記床2に対して噴霧を行う噴霧部13と、前記第二測定器20に設けられ、前噴霧部13による噴霧が行われた前記床2のひび割れを検出するひび割れ検出部22と、前記ひび割れ検出部22による検出結果を表示する表示部35と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の構造体に沿って移動可能な移動体と、
前記移動体に設けられ、前記構造体に対して噴霧を行う噴霧部と、
前記移動体に設けられ、前記噴霧部による噴霧が行われた前記構造体のひび割れを検出するひび割れ検出部と、
前記ひび割れ検出部による検出結果を表示する表示部と、
を具備するひび割れ測定システム。
【請求項2】
前記移動体には、
前記噴霧部が設けられる第一移動体と、
前記ひび割れ検出部が設けられる第二移動体と、が含まれる、
請求項1に記載のひび割れ測定システム。
【請求項3】
前記第一移動体に設けられ、前記噴霧部による噴霧が行われた前記構造体を乾燥可能な乾燥部を具備する、
請求項2に記載のひび割れ測定システム。
【請求項4】
前記第二移動体に設けられ、前記ひび割れに対して水を注入する注入部を具備する、
請求項3に記載のひび割れ測定システム。
【請求項5】
前記第二移動体に設けられ、前記第二移動体の位置情報を検出する位置検出部と、
前記第二移動体に設けられ、前記構造体を撮像する撮像部と、
前記構造体を示す図面情報が記憶された記憶部と、
前記位置検出部による検出結果と、前記撮像部による撮像結果と、前記ひび割れ検出部による検出結果と、前記記憶部の前記図面情報と、に基づいて、前記構造体における前記ひび割れの発生箇所を示すマップを作成するマップ作成部と、
を具備する、
請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載のひび割れ測定システム。
【請求項6】
前記ひび割れ検出部は、
前記構造体のうち、前記ひび割れと、前記ひび割れが形成されていない部分と、の色差により、前記ひび割れを検出する、
請求項1に記載のひび割れ測定システム。
【請求項7】
前記ひび割れ検出部は、
前記ひび割れが形成された部分の含水率に基づいて前記ひび割れを検出する、
請求項1に記載のひび割れ測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひび割れ測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物のひび割れを測定するシステムが知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、コンクリートの表面の撮影画像から、ひび割れと想定される部分を抽出して、コンクリート表面上のひび割れを特定するシステムが記載されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のシステムを用いた場合、コンクリートの表面の撮影画像においてひび割れが目立たず、当該ひび割れとそれ以外の部分との識別が困難な場合がある。このため、ひび割れを好適に測定可能なシステムが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6811217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、ひび割れを好適に測定可能なひび割れ測定システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物の構造体に沿って移動可能な移動体と、前記移動体に設けられ、前記構造体に対して噴霧を行う噴霧部と、前記移動体に設けられ、前記噴霧部による噴霧が行われた前記構造体のひび割れを検出するひび割れ検出部と、前記ひび割れ検出部による検出結果を表示する表示部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記移動体には、前記噴霧部が設けられる第一移動体と、前記ひび割れ検出部が設けられる第二移動体と、が含まれるものである。
【0010】
請求項3においては、前記第一移動体に設けられ、前記噴霧部による噴霧が行われた前記構造体を乾燥可能な乾燥部を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記第二移動体に設けられ、前記ひび割れに対して水を注入する注入部を具備するものである。
【0012】
請求項5においては、前記第二移動体に設けられ、前記第二移動体の位置情報を検出する位置検出部と、前記第二移動体に設けられ、前記構造体を撮像する撮像部と、前記構造体を示す図面情報が記憶された記憶部と、前記位置検出部による検出結果と、前記撮像部による撮像結果と、前記ひび割れ検出部による検出結果と、前記記憶部の前記図面情報と、に基づいて、前記構造体における前記ひび割れの発生箇所を示すマップを作成するマップ作成部と、を具備するものである。
【0013】
請求項6においては、前記ひび割れ検出部は、前記構造体のうち、前記ひび割れと、前記ひび割れが形成されていない部分と、の色差により、前記ひび割れを検出するものである。
【0014】
請求項7においては、前記ひび割れ検出部は、前記ひび割れが形成された部分の含水率に基づいて前記ひび割れを検出するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
本発明においては、ひび割れを好適に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係るひび割れ測定システムを模式的に示した側面図。
図2】ひび割れ測定システムを模式的に示したブロック図。
図3】(a)第一測定器を示した平面図。(b)第一測定器を示した底面図。
図4】(a)不規則なひび割れの発生箇所を表示するひび割れマップを示した模式図。(b)ひび割れマップにおけるひび割れを示した拡大図。
図5】規則的なひび割れの発生箇所を表示するひび割れマップを示した模式図。
図6】(a)第二実施形態に係る第二測定器を示した正面図。(b)第二実施形態に係る第二測定器を示した側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の第一実施形態に係るひび割れ測定システム1について説明する。また、以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
【0019】
ひび割れ測定システム1は、床2に発生したひび割れの測定を行うものである。まず、ひび割れ測定システム1の測定の対象となる床2について説明する。図4に示す床2は、コンクリート製の床(土間)である。床2は、例えばデッキプレート上にコンクリートを打設することで形成される。床2は、コンクリートの素地が露出するように形成される。本実施形態に係る床2としては、大型の倉庫等に使用される比較的広い床を想定している。なお床2を備える建物としては、倉庫等に限定されず、住宅や宿泊施設、商業施設等の種々の建物を採用可能である。
【0020】
期間の経過に伴い、床2の床面にはひび割れが発生する場合がある。以下では、床2に形成されたひび割れを「ひび割れ部A」と称し、床2のうちひび割れ部Aが形成されていない部分を「健全部B」と称して説明する(図4(b)を参照)。
【0021】
図4(a)に示すように、床2の床面には、ひび割れの発生を軽減するための目地3(例えばカッター目地等)が形成される。また、床2には、荷物等の載置物4が載置される。また、床2には、階段等のための開口が形成される場合がある。
【0022】
図1から図3までに示すひび割れ測定システム1は、ひび割れ部Aを認識し易くする処理を行った後に、ひび割れ部Aの検出を行うことで、床2におけるひび割れ部Aの発生箇所を示すひび割れマップを作成し、画面上(後述する表示部35)に表示させる。なお、ひび割れマップの詳細な説明は後述する。ひび割れ部Aの測定を行う者(測定者)は、上記ひび割れマップを参照することで、実際の床2に形成されたひび割れ部Aについて、詳細な測定を行うことができる。ひび割れ測定システム1は、第一測定器10、第二測定器20及び制御装置30を具備する。
【0023】
第一測定器10は、ひび割れ部Aを視認し易くする(顕在化させる)ものである。第一測定器10は、床2上を走行すると共に、床2に対して噴霧を行うことで、ひび割れ部Aを視認し易くする。第一測定器10は、走行体11、清掃部12、噴霧部13及び乾燥部14を具備する。
【0024】
走行体11は、床2上を走行するものである。走行体11は、略円盤形状に形成される。走行体11は、床2上を走行するための車輪や、車輪を駆動させるための駆動源、方向転換のための機構等を備える。また、走行体11は、走行の制御が可能な制御部や、インターネット等による外部の機器(後述する制御装置30等)との通信が可能な通信部等を有する。制御部による制御により、走行体11は、予め設定された経路を走行(自走)することができる。また、走行体11は、床2の載置物4や開口等を検出するセンサを有する。走行体11は、センサの検出結果に基づいて、載置物4等を回避して走行することができる。
【0025】
図1及び図3(b)に示す清掃部12は、床2の床面を清掃するための部分である。清掃部12は、走行体11の下面における前部に設けられる。清掃部12は、床2の床面のゴミや粉塵等を除去するためのブラシ等を備えている。清掃部12としては、床面のゴミ等を吸引する装置を採用してもよい。また、清掃部12としては、一般的な自走式の掃除機(ロボット掃除機)の清掃機構を採用可能である。
【0026】
噴霧部13は、床2の床面に対して噴霧を行う部分である。噴霧部13は、走行体11の下面において、清掃部12の後方に設けられる。噴霧部13は、適宜のタンク(不図示)に貯留された水を、床面に対して霧状に吹き付ける。上記タンクは、例えば走行体11に内蔵される。
【0027】
図1及び図3(a)に示す乾燥部14は、噴霧部13による噴霧が行われた床2を乾燥させる部分である。乾燥部14は、送風口14aから床面に向けて風(温風)を吹き出すことで、床2の乾燥を促す。乾燥部14は、走行体11において、清掃部12の後方に設けられる。本実施形態では、乾燥部14(送風口14a)を走行体11の上面における後端部に設けた例を示している。なお、乾燥部14の位置としては上述した例に限定されず、例えば走行体11の下面や後面に乾燥部14を設けるようにしてもよい。
【0028】
図1及び図2に示す第二測定器20は、第一測定器10により視認し易くされたひび割れ部Aの測定を行うものである。第二測定器20は、第一測定器10とは別体に形成される。第二測定器20は、第一測定器10に遅れて、第一測定器10と概ね同様な経路を走行して、ひび割れ部Aの測定を行う。第二測定器20は、走行体21、ひび割れ検出部22、注入部23、カメラ24及び位置検出部25を具備する。
【0029】
走行体21は、第一測定器10の走行体11と概ね同様に、床2上を走行するものである。走行体21の形状や、経路の走行のための機構は、走行体11と概ね同様であるので説明を省略する。
【0030】
ひび割れ検出部22は、ひび割れ部Aを検出する部分である。ひび割れ検出部22は、走行体21の下面に設けられる。本実施形態では、ひび割れ検出部22として、測定対象の色を判別可能なカラーセンサを採用している。カラーセンサは、ひび割れ部Aを含む床2に光を照射し、反射した光の値(例えばRGB値)に基づいて、ひび割れ部Aと健全部Bとの色差を検出する。上述のようなカラーセンサを採用した場合には、非接触でひび割れ部Aを検出することができる。
【0031】
注入部23は、ひび割れが疑われる場所に対して、水を注入可能な部分である。注入部23は、走行体21の下面において、ひび割れ検出部22よりも後方に設けられる。注入部23は、適宜のタンク(不図示)に貯留された水を、ひび割れ部Aに対して吐出する。上記タンクは、例えば走行体21に内蔵される。注入部23は、ひび割れ検出部22で検出されたひび割れ部Aの形状に沿って、タンクに貯留された水を注入する機構を備えている。
【0032】
カメラ24は、床2を撮像する部分である。カメラ24は、レンズが床2の床面に対して対向するように、走行体21に設けられる。カメラ24は、ひび割れ検出部22よりも後方に設けられる。
【0033】
位置検出部25は、第二測定器20の位置及び軌跡の情報(座標)を検出するための部分である。位置検出部25は、走行体21の上面に設けられる。位置検出部25としては、例えば、光(例えばレーザ光等)を用いた座標の検出が可能な測量機器のターゲット(プリズム等)を採用可能である。この場合、位置の検出は、所定の位置に設置された測量機器から位置検出部25に光を照射し、反射された光を測量機器が取得することで行われる。なお、位置検出部25としては上述のようなターゲットに限定されず、GPSやビーコンを用いたもの等、位置の検出が可能な種々の機器を採用可能である。
【0034】
図2に示す制御装置30は、各種の情報の処理が可能なものである。制御装置30としては、一般的なパーソナルコンピュータやサーバ等を用いることができる。制御装置30は、制御部31、記憶部32、通信部33、入力部34及び表示部35を具備する。
【0035】
制御部31は、記憶部32に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部31は、CPUにより構成される。
【0036】
記憶部32は、各種のプログラムや取得された各種の情報が記憶されるものである。記憶部32は、HDD、RAM、ROM等により構成される。記憶部32には、床2を有する建物の平面図データが記憶される。
【0037】
通信部33は、外部の機器との通信が可能なものである。通信部33は、例えばインターネット等の各種の通信手段を介して、第一測定器10や第二測定器20等との情報のやりとりを行うことができる。
【0038】
入力部34は、各種の情報を入力するためのものである。入力部34は、キーボード、マウス等により構成される。
【0039】
表示部35は、各種の情報を表示するものである。表示部35は、例えば液晶ディスプレイ等により構成される。
【0040】
制御装置30は、ひび割れ検出部22の検出結果、カメラ24による撮像結果(画像デー)、及び位置検出部25による位置情報を、通信部33により受信することができる。
【0041】
以下では、ひび割れ測定システム1により、床2のひび割れの測定を行う様子について説明する。なお以下では主として、図4(a)に示すようにひび割れ部Aが不規則に形成された(各ひび割れ部Aの形成のパターンが互いに異なる)床2に対して測定を行う例を説明する。
【0042】
ひび割れ測定システム1による測定行う際には、測定者は、制御装置30に建物の平面図データや、第一測定器10及び第二測定器20の走行経路、第一測定器10及び第二測定器20の走行のタイミングの情報を入力する。上記各情報の入力は、入力部34を用いて行うことができる。制御装置30は、通信部33により上記走行経路を第一測定器10及び第二測定器20へ送信する。
【0043】
まず、制御装置30は、設定されたタイミングで第一測定器10を走行させる。第一測定器10は、設定された走行経路を走行しながら、清掃部12により床2上のゴミ等を除去する。これにより、床2上のゴミ等によりひび割れ部Aが隠れて、第二測定器20による測定に支障が出るようなことを抑制することができる。
【0044】
また、第一測定器10は、噴霧部13により床2に対する噴霧を行う。これにより、ひび割れ部Aを認識し易くすることができる。すなわち、ひび割れ部Aを含む床2に対して噴霧を行った直後は、噴霧された部分の全体が濡れて色が濃くなる。噴霧後に所定期間が経過した際には、床面のうち健全部Bは早く乾くことで色が薄くなる一方、ひび割れ部A(及びその周辺)は乾きが遅れ色が濃いままとなる。このように、ひび割れ部A及び健全部Bに色差が生じることで、ひび割れ部Aを認識し易くすることができる。また、本実施形態によれば、乾燥部14により床2の乾燥を促すことで、床2の健全部Bを早期に乾燥させることができる。
【0045】
次に、制御装置30は、設定されたタイミングで第二測定器20を走行させる。第二測定器20は、第一測定器10の後を追うように走行することで、ひび割れ部Aの測定を行う。第二測定器20を走行させるタイミングは、第一測定器10による床2への噴霧後、健全部Bがある程度乾燥し、ひび割れ部A及び健全部Bに色差が生じたときが望ましい。例えば、第二測定器20を走行させるタイミングとしては、第一測定器10よりも20分程度遅れたタイミングを採用可能である。なお、第二測定器20を走行させるタイミングとしては上述したものに限定されず、建物内の温湿度や乾燥部14の性能等を考慮して適宜設定可能である。
【0046】
第二測定器20は、走行しながら床2をカメラ24により撮像する。また第二測定器20は、ひび割れ検出部22により、ひび割れ部Aと健全部Bとの色差を検出することで、ひび割れ部Aの形成が疑われる箇所をピックアップする探索を行うことができる。ひび割れ検出部22によりひび割れ部Aを検出した場合、第二測定器20は、注入部23を動作させて、ひび割れ部Aに水を注入することができる。これにより、ひび割れ部Aを更に認識し易くすることができる。
【0047】
また、第二測定器20は、注入部23により水が注入され、認識し易くされたひび割れ部Aを、ひび割れ検出部22により検出することで、ひび割れ部Aの特定を行う。この際には、第二測定器20が全てのひび割れ部Aについて一通り探索及び注水を行った後に、上記探索等の走行経路と同じ経路で第二測定器20を走行させて、2周目でひび割れ検出部22によるひび割れ部Aの特定を行う態様を採用可能である。また上記態様に代えて、必要に応じてひび割れ部Aが形成された箇所で第二測定器20を往復させることで、探索及び注水を1回行うごとに、ひび割れ検出部22によるひび割れ部Aの特定を行う態様も採用可能である。
【0048】
制御装置30は、ひび割れ検出部22の検出結果、カメラ24による撮像結果、及び位置検出部25による位置情報を取得すると共に、各情報を用いて、建物の平面図上にひび割れ部Aの発生箇所を示すひび割れマップ(図4(a)を参照)を作成し、表示部35に表示させる。
【0049】
この際に制御装置30は、カメラ24の撮像範囲(画角)と、位置検出部25により検出した位置情報と、に基づいて、カメラ24による撮像結果の位置を特定する。なお、制御装置30には、カメラ24の撮像範囲や、カメラ24のレンズと床2までの距離、カメラ24と位置検出部25との位置関係等、撮像結果の位置の特定に用いられる情報が予め記憶されている。
【0050】
制御装置30は、カメラ24による複数の撮像結果を、建物の平面図上に貼り付ける(重ねる)ことで、ひび割れマップを作成する。また制御装置30は、上記撮像結果に含まれるひび割れ部Aの画像を抽出すると共に、ひび割れ部Aの画像のトレースを行う。具体的には、制御装置30は、抽出したひび割れ部Aの形状と同一な形状のトレース画像を生成し、撮像結果に含まれるひび割れ部Aの画像に重ねて表示する。制御装置30は、ひび割れ検出部22の検出結果を用いて、トレースの対象となるひび割れ部Aの画像を判断することができる。
【0051】
また、第二測定器20は、床2を走行しているうちに走行の軌跡が重なることで、重複した撮像結果を取得する場合がある。図4(a)では、一点鎖線で示す第二測定器20の走行の軌跡が重なることで、円Cで囲った範囲のひび割れ部Aの撮像結果が重複した例を示している。この場合、制御装置30は、カメラ24による撮像結果及び位置検出部25による位置情報に基づいて重複して撮像された範囲を認識し、ひび割れマップにおいて撮像結果を二重に表示しないように補正する処理を実行可能である。
【0052】
また、制御装置30は、ひび割れ部Aだけでなく、第二測定器20の撮像結果や、走行軌跡等に基づいて、床2における目地3や載置物4、開口についても記録することができる。制御装置30は、上記目地3や載置物4、開口をひび割れマップに表示することができる。
【0053】
上述した処理を行うことで、ひび割れ測定システム1による床2のひび割れの測定が完了する。測定者は、作成されたひび割れマップに基づいて、実際のひび割れ部Aの幅寸法(ひび割れ幅)の測定を行う。上記測定は、クラックスケール等の器具を用いて行われる。この際に測定者は、ひび割れマップを参照することで、上記マップに表示されたひび割れ部Aに対して、測定者による器具を用いたひび割れ幅の測定を行うか否かの事前判断を行うことができる。
【0054】
測定者は入力部34を用いて、ひび割れ部Aのひび割れ幅の測定結果をひび割れマップ上に入力することができる。図4(b)は、ひび割れ部Aのひび割れ幅の測定結果の入力例を示すものである。上記測定結果としては、例えばひび割れ部Aの両端部と途中部(中央部)のひび割れ幅が入力される。
【0055】
本実施形態に係るひび割れ測定システム1によれば、第一測定器10及び第二測定器20を自走させることで、ひび割れマップを自動的に作成することができ、ひび割れ部Aの測定の手間を軽減することができる。
【0056】
また、ひび割れ測定システム1によれば、図5に示すように、例えば載置物4が置かれたことで隠れたひび割れ部Aの位置及び形状を予測して、ひび割れマップ上に表示することができる。なお、図5では、ひび割れ部Aが規則的に形成された例を示している。ここで、ひび割れ部Aが規則的に形成されるというのは、例えば梁に沿ってひび割れ部Aが形成されたり、ある一点を中心として放射状に広がるようにひび割れ部Aが形成される場合等、各ひび割れ部Aがあるパターンで形成されることを指す。
【0057】
この場合、制御装置30は、ひび割れ部Aのパターンを学習すると共に、学習結果に基づいて載置物4で隠れたひび割れ部Aを推定し、補完したひび割れマップを作成する。制御装置30は、建物の梁等の構成や、ひび割れ部Aの位置や形状等のデータを用いて上記学習を行うことができる。上記ひび割れ部Aのパターンの学習は、機械学習によって行うことができる。機械学習としては、決定木やニューラルネットワーク等の種々の方法を採用可能である。
【0058】
図5に示す例のように各ひび割れ部Aが規則的な形状である程、ひび割れ部Aの予測の精度は向上する。なお、図4(a)に示す例のように各ひび割れ部Aが不規則に形成されている場合であっても、ひび割れ部Aの予測は可能である。
【0059】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0060】
以下では、図6を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。なお、以下の第二実施形態の説明では、第一実施形態との相違点について説明し、共通する構成については、適宜説明を省略する。
【0061】
第二実施形態に係るひび割れ測定システム1Aは、第二測定器20Aの構成が、第一実施形態に係る第二測定器20とは異なる。第二測定器20Aは、自走式ではなく、測定者の力により床2を走行する。
【0062】
第二測定器20Aの主たる構造体である本体部21Aは、測定者の手により押されることで、床2を走行するものである。図6に示すように、本体部21Aは、下端部に車輪が設けられた左右一対の杖状の部材を、上下の水平材により連結したことで形成される。
【0063】
本体部21Aには、ひび割れ検出部22、カメラ24及び位置検出部25が取り付けられる。図例では、カメラ24を下側の水平材に取り付けている。カメラ24は、本体部21Aの姿勢に関わらず、レンズが常時下方を向くように取り付けられる。また、カメラ24の前部には、ひび割れ検出部22が設けられ、カメラ24の上部には、位置検出部25が設けられる。なお、上述した例では、注入部23は設けていないが、本体部21Aに注入部23を設けるようにしてもよい。
【0064】
ひび割れ測定システム1Aを用いたひび割れ部Aの測定を行う場合、測定者は、第二測定器20Aを押すことで、第一測定器10により清掃、噴霧及び乾燥が行われた床2に第二測定器20Aを走行させる。これにより、第一実施形態と概ね同様に、制御装置30は、ひび割れ検出部22の検出結果、カメラ24による撮像結果、及び位置検出部25による位置情報を取得すると共に、各情報を用いて、ひび割れマップを作成することができる。
【0065】
以上、ひび割れ測定システム1、1Aについて説明した。ここで、上記各実施形態では、ひび割れ検出部22として、カラーセンサを採用した例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、ひび割れ検出部22として、ひび割れ部Aの含水率を検出する含水率計を採用可能である。この場合、含水率計は、床2に接触するように配置される。上記構成によっても、含水率計の検出結果を用いて、ひび割れ部Aの検出を行うことができる。
【0066】
以上のように、本発明の一実施形態に係るひび割れ測定システム1、1Aは、
建物の構造体(床2)に沿って移動可能な移動体(第一測定器10、第二測定器20、20A)と、
前記移動体(第一測定器10)に設けられ、前記床2に対して噴霧を行う噴霧部13と、
前記移動体(第二測定器20、20A)に設けられ、前記噴霧部13による噴霧が行われた前記床2のひび割れを検出するひび割れ検出部22と、
前記ひび割れ検出部22による検出結果を表示する表示部35と、
を具備するものである。
【0067】
このような構成により、ひび割れを好適に測定することができる。すなわち、噴霧部13により床2に対する噴霧を行うことで、ひび割れ部A及び健全部Bに色差(又は含水率の差)を形成することができる。これにより、ひび割れ部Aを、ひび割れ検出部22による検出し易くすることができる。
【0068】
また、前記移動体には、
前記噴霧部13が設けられる第一移動体(第一測定器10)と、
前記ひび割れ検出部22が設けられる第二移動体(第二測定器20、20A)と、が含まれるものである。
【0069】
このような構成により、第一測定器10による噴霧後、適切なタイミングで第一測定器10の後を追うように第二測定器20、20Aを走行させることができ、効率的にひび割れの検出を行うことができる。
【0070】
また、ひび割れ測定システム1、1Aは、
前記第一測定器10に設けられ、前記噴霧部13による噴霧が行われた前記床2を乾燥可能な乾燥部14を具備するものである。
【0071】
このような構成により、より効率的にひび割れの検出を行うことができる。すなわち、前記噴霧部13による噴霧後、乾燥部14により、ひび割れが形成されていない部分(健全部B)の乾燥を促すことで、ひび割れ検出部22による検出に適した状態を早期に実現することができる。
【0072】
また、ひび割れ測定システム1、1Aは、
前記第二測定器20、20Aに設けられ、前記ひび割れに対して水を注入する注入部23を具備するものである。
【0073】
このような構成により、ひび割れ検出部22による検出を更に行い易くすることができる。
【0074】
また、ひび割れ測定システム1、1Aは、
前記第二測定器20に設けられ、前記第二測定器20、20Aの位置情報を検出する位置検出部25と、
前記第二測定器20、20Aに設けられ、前記床2を撮像する撮像部(カメラ24)と、
前記床2を示す図面情報が記憶された記憶部32と、
前記位置検出部25による検出結果と、前記カメラ24による撮像結果と、前記ひび割れ検出部22による検出結果と、前記記憶部32の前記図面情報と、に基づいて、前記床2における前記ひび割れの発生箇所を示すマップ(ひび割れマップ)を作成するマップ作成部(制御部31)と、
を具備するものである。
【0075】
このような構成により、床2におけるひび割れの発生箇所をひび割れマップに示すことで、測定者によるひび割れマップの測定を行い易くすることができる。
【0076】
また、前記ひび割れ検出部22は、
前記床2のうち、前記ひび割れ(ひび割れ部A)と、前記ひび割れ部Aが形成されていない部分(健全部B)と、の色差により、前記ひび割れを検出するものである。
【0077】
このような構成により、カラーセンサを用いて、ひび割れ部A及び健全部Bの色差に基づいてひび割れを検出することができる。
【0078】
また、前記ひび割れ検出部22は、
前記ひび割れが形成された部分(ひび割れ部A)の含水率に基づいて前記ひび割れ部Aを検出するものである。
【0079】
このような構成により、含水率計を用いて、ひび割れ部Aの含水率に基づいてひび割れを検出することができる。
【0080】
なお、本実施形態に係る床2は、本発明に係る構造物の一形態である。
また、本実施形態に係る第一測定器10は、本発明に係る第一移動体の一形態である。
また、本実施形態に係る第二測定器20は、本発明に係る第二移動体の一形態である。
また、本実施形態に係るカメラ24は、本発明に係る撮像部の一形態である。
また、本実施形態に係る制御部31は、本発明に係るマップ作成部の一形態である。
【0081】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、ひび割れ測定システム1、1Aを構成する各部の形状や位置等は、上述したものに限定されず、適宜変更可能である。また、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0082】
例えば、上記各実施形態では、制御装置30を、パーソナルコンピュータやサーバ等の制御装置とした例を示したが、このような構成に限定されない。例えば、制御装置30を、タブレットやスマートフォン等の端末としてもよい。
【0083】
また、上記各実施形態では、第一測定器10に清掃部12及び乾燥部14を設けた例を示したが、このような構成に限定されない。例えば、上記各部の一部又は全部を設けないようにしてもよい。
【0084】
また、上記各実施形態では、第二測定器20に注入部23を設けた例を示したが、このような構成に限定されない。例えば、注入部23を設けないようにしてもよい。
【0085】
また、上記各実施形態では、移動体を、第一測定器10及び第二測定器20、20Aの2つの機器(互いに別体の機器)により構成した例を示したが、このような構成に限定されない。例えば、移動体を1つの機器により構成してもよい。すなわち、噴霧部13やひび割れ検出部22等の各部を1つの機器に搭載してもよい。この場合は、まず床2の略全体に噴霧部13による噴霧を行うように移動体を走行させ、次に(2周目に)、ひび割れ検出部22によるひび割れの検出を行うように、同一の移動体を走行させるようにしてもよい。
【0086】
また、上記各実施形態では、測定の対象となる構造物として、床2を採用した例を示したが、構造物としては床2に限定されない。例えば、構造物としてスラブ(一般にカッター目地を設けない)を採用してもよく、また、構造物として壁を採用してもよい。この場合は、移動体(第一測定器10、第二測定器20)を壁の高さ方向及び幅方向に沿って移動させる機構を設けるようにしてもよい。なお、構造物としては、柱や梁等も採用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 ひび割れ測定システム
10 第一測定器
20 第二測定器
30 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6