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特開2024-130855磁気信号ノイズ測定装置、方法、記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130855
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】磁気信号ノイズ測定装置、方法、記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/025 20060101AFI20240920BHJP
   G01R 33/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01R33/025
G01R33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040785
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】緒方 祐史
(72)【発明者】
【氏名】柳田 朋則
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA03
2G017AA08
2G017AB02
2G017AC02
2G017BA15
(57)【要約】
【課題】磁気ノイズを分離する。
【解決手段】磁気信号ノイズ測定装置1が、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階以上のテンソルとして測定する磁気測定部12と、磁気測定部12の測定結果をテンソル分解するテンソル分解部14と、テンソル分解部14の分解結果を、磁気信号を表すものと、磁気ノイズを表すものとに分別する信号ノイズ分別部16とを備える。磁気測定部12が、磁気センサ12aを互いに直交する第一方向Yおよび第二方向Zに並べた2次元センサアレイである。磁気測定部12を、第一方向Yおよび第二方向Zに直交する第三方向Xに移動させながら測定を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階以上のテンソルとして測定する磁気測定部と、
前記磁気測定部の測定結果をテンソル分解するテンソル分解部と、
前記テンソル分解部の分解結果を、前記磁気信号を表すものと、前記磁気ノイズを表すものとに分別する信号ノイズ分別部と、
を備えた磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記磁気測定部が、磁気センサを互いに直交する第一方向および第二方向に並べた2次元センサアレイである磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記テンソルが3階以上のテンソルであって、
前記磁気測定部を、前記第一方向および前記第二方向に直交する第三方向に移動させながら測定を行う磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記磁気測定部が、磁気センサを互いに直交する第一方向および第二方向のいずれかに配置した1次元センサアレイである磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項5】
請求項2または4に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記テンソルが3階以上のテンソルであって、
前記磁気測定部を、前記第一方向または前記第二方向を回転軸として回転させながら測定を行う磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記磁気測定部が、磁気センサを所定の平面上に並べ、かつ互いに一点で交差する3以上の交差方向に並べたものである磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記テンソルが3階以上のテンソルであって、
前記磁気測定部を、前記平面と直交する方向に移動させながら測定を行う磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記磁気測定部が、1個の磁気センサである磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項9】
請求項1に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記磁気測定部が、磁気センサを互いに直交する第一方向、第二方向および第三方向に並べた3次元センサアレイである磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項10】
請求項1に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記磁気測定部が、複数の磁気センサを曲面上に配置したものである磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項11】
請求項1に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記テンソルが、
3階以上のテンソルであって、
空間における位置、または、前記位置および時間に対応付けられた前記磁気信号および前記磁気ノイズの測定結果である、
磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項12】
請求項1に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記テンソル分解部の分解結果が3個以上存在し、
前記分解結果のうちの複数のものが、互いに磁気の勾配の方向が異なる前記磁気ノイズを表すものである磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項13】
請求項1に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記磁気ノイズおよび前記磁気信号が一定の値をとる磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項14】
請求項1に記載の磁気信号ノイズ測定装置であって、
前記磁気ノイズおよび前記磁気信号が時間の経過とともに変化する磁気信号ノイズ測定装置。
【請求項15】
磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階以上のテンソルとして測定する磁気測定部を備えた磁気信号ノイズ測定装置を用いた磁気信号ノイズ測定方法であって、
前記磁気測定部の測定結果をテンソル分解するテンソル分解工程と、
前記テンソル分解工程の分解結果を、前記磁気信号を表すものと、前記磁気ノイズを表すものとに分別する信号ノイズ分別工程と、
を備えた磁気信号ノイズ測定方法。
【請求項16】
磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階以上のテンソルとして測定する磁気測定部を備えた磁気信号ノイズ測定装置を用いた磁気信号ノイズ測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記磁気信号ノイズ測定処理が、
前記磁気測定部の測定結果をテンソル分解するテンソル分解工程と、
前記テンソル分解工程の分解結果を、前記磁気信号を表すものと、前記磁気ノイズを表すものとに分別する信号ノイズ分別工程と、
を備えた記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ノイズの分離に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気信号源の位置の推定などに利用するために、磁気信号源が発する磁気信号を磁気センサで取得することがある。ところで、磁気信号源が静止した強磁性体であることが考えられる。また、環境磁気ノイズの一種である地磁気はほぼ直流である。このため、磁気信号源が発する磁気と、地磁気とを分離することが難しい。
【0003】
なお、磁気信号源が交流の磁気信号を発し、かつ、磁気信号と同じ周波数の交流の磁気ノイズ(例えば、商用電源(周波数は50Hzまたは60Hz))があるという場合も同様に、磁気ノイズの分離が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2012/133185号
【特許文献2】特表2022-508506号
【特許文献3】特表2022-521499号
【特許文献4】特開2020-12851号公報
【特許文献5】特開2007-139449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、磁気ノイズの分離を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階以上のテンソルとして測定する磁気測定部と、前記磁気測定部の測定結果をテンソル分解するテンソル分解部と、前記テンソル分解部の分解結果を、前記磁気信号を表すものと、前記磁気ノイズを表すものとに分別する信号ノイズ分別部とを備えるように構成される。
【0007】
上記のように構成された磁気信号ノイズ測定装置によれば、磁気測定部が、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階以上のテンソルとして測定する。テンソル分解部が、前記磁気測定部の測定結果をテンソル分解する。信号ノイズ分別部が、前記テンソル分解部の分解結果を、前記磁気信号を表すものと、前記磁気ノイズを表すものとに分別する。
【0008】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記磁気測定部が、磁気センサを互いに直交する第一方向および第二方向に並べた2次元センサアレイであるようにしてもよい。
【0009】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記テンソルが3階以上のテンソルであって、前記磁気測定部を、前記第一方向および前記第二方向に直交する第三方向に移動させながら測定を行うようにしてもよい。
【0010】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記磁気測定部が、磁気センサを互いに直交する第一方向および第二方向のいずれかに配置した1次元センサアレイであるようにしてもよい。
【0011】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記テンソルが3階以上のテンソルであって、前記磁気測定部を、前記第一方向または前記第二方向を回転軸として回転させながら測定を行うようにしてもよい。
【0012】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記磁気測定部が、磁気センサを所定の平面上に並べ、かつ互いに一点で交差する3以上の交差方向に並べたものであるようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記テンソルが3階以上のテンソルであって、前記磁気測定部を、前記平面と直交する方向に移動させながら測定を行うようにしてもよい。
【0014】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記磁気測定部が、1個の磁気センサであるようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記磁気測定部が、磁気センサを互いに直交する第一方向、第二方向および第三方向に並べた3次元センサアレイであるようにしてもよい。
【0016】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記磁気測定部が、複数の磁気センサを曲面上に配置したものであるようにしてもよい。
【0017】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記テンソルが、3階以上のテンソルであって、空間における位置、または、前記位置および時間に対応付けられた前記磁気信号および前記磁気ノイズの測定結果であるようにしてもよい。
【0018】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記テンソル分解部の分解結果が3個以上存在し、前記分解結果のうちの複数のものが、互いに磁気の勾配の方向が異なる前記磁気ノイズを表すものであるようにしてもよい。
【0019】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記磁気ノイズおよび前記磁気信号が一定の値をとるようにしてもよい。
【0020】
なお、本発明にかかる磁気信号ノイズ測定装置は、前記磁気ノイズおよび前記磁気信号が時間の経過とともに変化するようにしてもよい。
【0021】
本発明は、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階以上のテンソルとして測定する磁気測定部を備えた磁気信号ノイズ測定装置を用いた磁気信号ノイズ測定方法であって、前記磁気測定部の測定結果をテンソル分解するテンソル分解工程と、前記テンソル分解工程の分解結果を、前記磁気信号を表すものと、前記磁気ノイズを表すものとに分別する信号ノイズ分別工程とを備えた磁気信号ノイズ測定方法である。
【0022】
本発明は、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階以上のテンソルとして測定する磁気測定部を備えた磁気信号ノイズ測定装置を用いた磁気信号ノイズ測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記磁気信号ノイズ測定処理が、前記磁気測定部の測定結果をテンソル分解するテンソル分解工程と、前記テンソル分解工程の分解結果を、前記磁気信号を表すものと、前記磁気ノイズを表すものとに分別する信号ノイズ分別工程とを備えた記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図2】第一の実施形態にかかる磁気測定部12の平面図である。
図3】第一の実施形態にかかる磁気測定部12の移動態様を示す側面図である。
図4】第一の実施形態の変形例1にかかる磁気測定部12の平面図である。
図5】第一の実施形態の変形例3にかかる磁気測定部12の正面図(図5(a))、平面図(図5(b))である。
図6】第二の実施形態にかかる磁気測定部12の移動態様を示す側面図である。
図7】第三の実施形態にかかる磁気測定部12の平面図である。
図8】第四の実施形態にかかる磁気測定部12の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0025】
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1の構成を示す機能ブロック図である。第一の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1は、磁気測定部12、テンソル分解部14、信号ノイズ分別部16を備える。
【0026】
磁気測定部12は、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを3階以上のテンソルとして測定する(2階のテンソルとして測定してもよいが、詳細は後述する)。なお、磁気ノイズおよび磁気信号は一定の値をとる。磁気ノイズは、例えば、地磁気である。また、磁気信号源は1個であっても、2個以上であってもよい。
【0027】
図2は、第一の実施形態にかかる磁気測定部12の平面図である。第一の実施形態にかかる磁気測定部12は、磁気センサ12a、基板12bを有する。磁気センサ12aは、基板12bに配置されている。磁気測定部12は、磁気センサ12aを互いに直交する第一方向Yおよび第二方向Zに並べた2次元センサアレイである。なお、磁気センサ12aは第一方向Yにも第二方向Zにも等しい間隔で配置されている。すなわち、(1)磁気センサ12aは第一方向Yに等しい間隔で配置されている、(2)磁気センサ12aは第二方向Zに等しい間隔で配置されている、(3)(1)に記載の間隔は、(2)に記載の間隔と等しい。
【0028】
なお、本発明の実施形態では、磁気センサ12aの感磁方向は、第二方向Z(上下方向)であるものとして説明する。ただし、磁気センサ12aの感磁方向は、2軸方向でも3軸方向でもよい。
【0029】
第一の実施形態では、磁気測定部12を、第三方向Xに移動させながら測定を行う。ただし、第三方向Xは、第一方向Yおよび第二方向Zに直交する方向である。
【0030】
図3は、第一の実施形態にかかる磁気測定部12の移動態様を示す側面図である。磁気測定部12の基板12bを、基板の位置12b-1、基板の位置12b-2、基板の位置12b-3、基板の位置12b-4、基板の位置12b-5というように、第三方向Xに平行移動させる。基板の位置12b-1~12b-5どうしの間隔も、磁気センサ12aの第一方向Y(および第二方向Z)の間隔と等しい。
【0031】
上記のようにして、磁気測定部12は、5×5×5(空間における位置)に対応付けられた3階のテンソルとして、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを測定する。ただし、5×5×5は、一例であって、各軸方向にサイズが等しくなくてもよく、例えば5×8×10といった各軸方向にサイズが異なるテンソルデータでも構わない。
【0032】
なお、磁気測定部12は、空間における位置および時間に対応付けられた3階以上のテンソルとして、磁気ノイズと磁気信号とを測定するようにしてもよい。例えば、空間における位置(X、YおよびZ座標)(3階)と、時間(1階)と対応付けられた4(=3+1)階テンソルとして、磁気ノイズと磁気信号とを測定するようにしてもよい。例えば、空間における位置(XおよびY座標)(2階)と、時間(1階)と対応付けられた3(=2+1)階テンソルとして、磁気ノイズと磁気信号とを測定するようにしてもよい。
【0033】
テンソル分解部14は、磁気測定部12の測定結果をテンソル分解する。テンソル分解の方法は、周知であり、例えば、CP分解、Tucker分解またはブロックターム分解が考えられる。なお、テンソル分解の分解結果は2個であってもよいし、3個以上存在しても構わない。
【0034】
信号ノイズ分別部16は、テンソル分解部14の分解結果を、磁気信号を表すものと、磁気ノイズを表すものとに分別する。
【0035】
テンソル分解の分解結果が2個の場合は、磁気信号を表す分解結果が1個、磁気ノイズを表す分解結果が1個である。
【0036】
テンソル分解の分解結果が3個の場合は、例えば、分解結果のうちの1個が磁気信号を表すものであり、残りの2個が磁気ノイズを表すものであり、そのうちのある1個は磁気の勾配の方向がX方向、そのうちの別の1個は磁気の勾配の方向がZ方向である。
【0037】
次に、第一の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1の動作を説明する。ただし、以下に説明する動作は、磁気測定部12の測定結果が空間における位置(X、YおよびZ座標)に対応づけられた3階のテンソルとして得られ、テンソル分解がCP分解であって、その分解結果が2個であるものと仮定した場合のものである。
【0038】
磁気測定部12の測定結果は、以下の式(1)のように表される。
【0039】
【数1】

CP分解は、以下の式(2)を解くことであるといえる。
【0040】
【数2】

磁気測定部12の測定結果(式(1))はテンソル分解部14に与えられ、テンソル分解部14によって式(2)が解かれ、テンソル分解される。
【0041】
ここで、X方向、Y方向およびZ方向のベクトルをまとめた行列Ax、Ay、Azを以下の式(3)、式(4)および式(5)のように定義する。
【0042】
【数3】

AxおよびAyを各列のノルムが1になるようにランダムな値で初期化したのちに、以下の式(6)~式(12)を収束するまで繰り返し計算することで、式(2)を解く(すなわち、Ax、Ay、Azを求める)ことが可能となる。なお、式中の矢印は右の値を左に代入することを意味する。
【0043】
【数4】
【0044】
【数5】
【0045】
【数6】
【0046】
【数7】
最終的に求まったAx, Ay, Azおよびλsと式(1)を用いることでテンソル分解することが可能となる。すなわち、磁気測定部12の測定結果(3階テンソル)は、以下の式(13)(式(1)を変形したもの)のように表されるところ、
【0047】
【数8】
磁気測定部12の測定結果(3階テンソル)が、式(13)の右辺の第一項(+の左側の項)と、式(13)の右辺の第二項(+の右側の項)とに分解できる。
【0048】
信号ノイズ分別部16は、テンソル分解部14の分解結果(式(13)の右辺の第一項および第二項)を、磁気信号を表すものと、磁気ノイズを表すものとに分別する。式(13)の右辺の第一項および第二項のうちの一方が磁気信号を表すものであり、他方が磁気ノイズを表すものである。磁気ノイズが地磁気である場合、磁気ノイズによる磁場は、磁場が測定される空間全体で検出される。一方、磁気信号は、磁気信号源が1個の場合、磁気信号による磁場は、その磁気信号源の近傍でのみ検出される。このような観点から、テンソル分解部14の分解結果の分別が可能である。
【0049】
第一の実施形態によれば、磁気ノイズの分離が可能である。
【0050】
ただし、磁気測定部12は、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階のテンソルとして測定してもよい。この場合は、磁気測定部12を、第三方向Xに移動させる必要は無く、YZ面の磁場を測定することになる(または、空間における位置(あるZ座標における1階テンソル(1×5)またはあるY座標における1階テンソル(5×1))と、時間(1階)と対応付けられた2(=1+1)階テンソルとして測定する)。
【0051】
なお、第一の実施形態には色々な変形例が考えられる。
【0052】
<変形例1>
図4は、第一の実施形態の変形例1にかかる磁気測定部12の平面図である。図4(a)は、磁気センサ12aがY方向に5個配置されたものの平面図である。図4(b)は、磁気センサ12aがY方向に2個配置されたものの平面図である。
【0053】
変形例1においては、磁気測定部12が磁気センサ12aを第一方向Yに配置(第二方向Zに配置も可)した1次元センサアレイである。磁気測定部12が、上記のような1次元センサアレイであっても、第一の実施形態と同様な効果を奏する。
【0054】
ただし、図4(a)に示す磁気測定部12は、Z方向に4回移動させることで、5×5(Y×Z)の座標の示す位置の磁場を測定できる。その後、X方向に移動させ、さらにZ方向に4回移動させる。この移動を繰り返して、5×5×5のテンソルを取得できる。
【0055】
また、図4(b)に示す磁気測定部12は、Y方向への移動を繰り返して、5×1(Y×Z)の座標の示す位置の磁場を測定できる。さらにZ方向に移動させては、Y方向への移動を繰り返す。この移動を繰り返して、5×5(Y×Z)の座標の示す位置の磁場を測定できる。その後、X方向に移動させ、上記のY方向およびZ方向の移動を繰り返して、5×5×5のテンソルを取得できる。
【0056】
なお、磁気測定部12が、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階のテンソルとして測定する場合は、磁気測定部12を、第三方向Xに移動させる必要は無く、YZ面の磁場を測定することになる(または、空間における位置(Z座標)(1階)と、時間(1階)と対応付けられた2(=1+1)階テンソルとして測定する)。
【0057】
<変形例2>
第一の実施形態の変形例2は、磁気測定部12が1個の磁気センサであるものである。磁気測定部12が1個の磁気センサであっても、この1個の磁気センサを、5×5×5(または5×5)の座標に移動させれば、5×5×5(または5×5)のテンソルを取得できるので、第一の実施形態と同様な効果を奏する。なお、この1個の磁気センサを、5×1の座標に移動し、その測定結果を、さらに時間に対応づけて、2階テンソルを取得してもよい。
【0058】
<変形例3>
図5は、第一の実施形態の変形例3にかかる磁気測定部12の正面図(図5(a))、平面図(図5(b))である。
【0059】
変形例3においては、磁気測定部12が、磁気センサ12aを互いに直交する第一方向Y、第二方向Zおよび第三方向Xに並べた3次元センサアレイである。図5の例では、磁気センサ12aが5×5×5に並べられている。これにより、磁気測定部12を移動させることなく、5×5×5(または5×5)のテンソルを取得できるので、第一の実施形態と同様な効果を奏する。なお、5×1の座標に位置する磁気センサ12aの測定結果を、さらに時間に対応づけて、2階テンソルを取得してもよい。
【0060】
なお、変形例3においては、磁気センサ12aが3次元センサアレイであれば、5×5×5でなくてもよく、例えば10×10×10または2×2×2でもよい。ただし、磁気センサ12aが2×2×2の配置の場合は、第一方向Y、第二方向Zおよび第三方向Xへの移動を繰り返して、5×5×5のテンソルを取得する。また、磁気センサ12aが2×2×2の配置の場合は、第一方向Yおよび第二方向Zへの移動を繰り返すと、ある一つの磁気センサ12aの測定結果が、5×5のテンソルとなる。また、磁気センサ12aの第一方向Yまたは第二方向Zへの移動を繰り返すと、ある一つの磁気センサ12aの測定結果が、あるZ座標における1階テンソル(1×5)またはあるY座標における1階テンソル(5×1)となる。その測定結果を、さらに時間に対応づけて、2階テンソルを取得してもよい。
【0061】
<変形例4>
第一の実施形態の変形例4は、磁気ノイズおよび磁気信号が時間の経過とともに変化するものである。例えば、磁気ノイズが、商用交流電源から発生するものである。
【0062】
第二の実施形態
第二の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1は、磁気測定部12の移動方向(Z軸回りに回転移動)が、第一の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1とは異なる。
【0063】
第二の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1は、磁気測定部12、テンソル分解部14、信号ノイズ分別部16を備える。第二の実施形態にかかるテンソル分解部14、信号ノイズ分別部16は、第一の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0064】
図6は、第二の実施形態にかかる磁気測定部12の移動態様を示す側面図である。第二の実施形態においては、磁気測定部12の基板12b(図2および図4(a)のどちらでもよい)を、基板の位置12b-1、基板の位置12b-2、基板の位置12b-3、基板の位置12b-4、基板の位置12b-1というように、第二方向Zを回転軸として回転させながら、磁気測定部12による測定を行う。ただし、基板12bを、第一方向Yを回転軸として回転させてもよい。
【0065】
なお、図6においては、基板12bを、反時計回りに90度の間隔で回転させているが、時計回りに回転させてもよいし、角度の間隔を変更(例えば、10度間隔、36度間隔、45度間隔などに)してもよい。
【0066】
また、図6においては、基板12bの回転軸側の辺が、回転軸(第一方向Y)と離れているが、回転軸と一致していてもよい。
【0067】
さらに、図6においては、基板12bを360度回転させて元の位置(基板の位置12b-1)に戻しているが、360度未満の回転でもよい。例えば、基板12bを、基板の位置12b-1から基板の位置12b-2まで回転させて停止させてもよいし(90度の回転)、120度回転させてもよい。
【0068】
第二の実施形態によれば、第一の実施形態と同様に、磁気ノイズの分離が可能である。
【0069】
なお、第二の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1は、柱状構造物の検査に有効である。柱状構造物(例えば、電柱、標識、配管等)の周囲を、基板12bを回転させながら計測することで、磁性体の位置推定を行うことができ、破断や腐食等の検知に有効である。
【0070】
ただし、磁気測定部12は、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階のテンソルとして測定してもよい。この場合は、磁気測定部12を、回転させる必要は無く、YZ面の磁場を測定することになる。
【0071】
第三の実施形態
第三の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1は、磁気測定部12における磁気センサの配置態様(放射状)が、第一の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1とは異なる。
【0072】
第三の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1は、磁気測定部12、テンソル分解部14、信号ノイズ分別部16を備える。第三の実施形態にかかるテンソル分解部14、信号ノイズ分別部16は、第一の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0073】
図7は、第三の実施形態にかかる磁気測定部12の平面図である。磁気測定部12は、磁気センサ12a、基板12bを有する。磁気センサ12aは、基板12bに配置されている。磁気センサ12aは所定の平面(図7における紙面)上に並べられており、かつ互いに一点0で交差する3以上の交差方向D1、D2、D3、D4およびD5に並べられたものである。なお、交差方向D1、D2、D3、D4およびD5は、72度間隔で並べられている。また、交差方向は、3以上であれば、5方向に限らず、任意である。
【0074】
第三の実施形態では、磁気測定部12を、第二方向Z(所定の平面(図7における紙面)と直交する方向)に移動させながら測定を行う。
【0075】
第三の実施形態によれば、第一の実施形態と同様に、磁気ノイズの分離が可能である。
【0076】
なお、第三の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1は、円管(例えば、上下水道管)内部の探査に有効である。
【0077】
ただし、磁気測定部12は、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階のテンソルとして測定してもよい。この場合は、磁気測定部12を、第二方向Zに移動させる必要は無く、rθ面の磁場を測定することになる(ただし、rは一点0からの距離、θは、交差方向と、所定の平面における任意の方向とのなす角度)。
【0078】
第四の実施形態
第四の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1は、磁気測定部12における磁気センサの配置態様(曲面上)が、第一の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1とは異なる。
【0079】
第四の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1は、磁気測定部12、テンソル分解部14、信号ノイズ分別部16を備える。第四の実施形態にかかるテンソル分解部14、信号ノイズ分別部16は、第一の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0080】
図8は、第四の実施形態にかかる磁気測定部12の斜視図である。第四の実施形態にかかる磁気測定部12は、基板12bを、基板の位置12b-1から基板の位置12b-2まで移動させながら測定行うものである。なお、基板12bは曲面であり、基板12b上の位置は、(θ、φ、r)といった座標で表すことができる。図8における曲面(基板12b)上の格子(4×7)の各々に、複数の磁気センサ12aの各々(図示省略)が配置される。
【0081】
なお、曲面(基板12b)の形状は、図8に示す形状に限定されず、例えば、半球面または球面でもよい。
【0082】
第四の実施形態によれば、第一の実施形態と同様に、磁気ノイズの分離が可能である。
【0083】
なお、第四の実施形態にかかる磁気信号ノイズ測定装置1は、脳磁図測定のようなヘルメット形状での磁場計測に応用できる。
【0084】
ただし、磁気測定部12は、磁気ノイズと、磁気信号源が出力する磁気信号とを2階のテンソルとして測定してもよい。この場合は、磁気測定部12を移動させる必要は無く、θφ面の磁場を測定することになる(ただし、θおよびφは、ある曲面において互いに直交する曲線の方向である)。
【0085】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(USBメモリ、CD-ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えばテンソル分解部14および信号ノイズ分別部16を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0086】
1 磁気信号ノイズ測定装置
12 磁気測定部
12a 磁気センサ
12b 基板
12b-1、12b-2、12b-3、12b-4、12b-5 基板の位置
14 テンソル分解部
16 信号ノイズ分別部
Y 第一方向
Z 第二方向
X 第三方向
D1、D2、D3、D4、D5 交差方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8