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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130858
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/38 20060101AFI20240920BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20240920BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20240920BHJP
【ＦＩ】
F16C33/38
F16C19/36
H02K5/173 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2023040792
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】ＮＴＮ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健
(72)【発明者】
【氏名】石田 光
【テーマコード（参考）】
3J701
5H605
【Ｆターム（参考）】
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA34
3J701BA45
3J701BA49
3J701FA46
3J701FA60
3J701GA24
3J701XB01
3J701XB03
3J701XB26
5H605BB05
5H605CC04
5H605EB10
5H605EB28
(57)【要約】
【課題】二枚の環状体を係合爪により結合した保持器を備えた転がり軸受において、保持器としての機能を十分に発揮することができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受は、内外輪と、これら内外輪間に介在する複数の玉と、各玉を保持するポケットが形成された保持器とを備える。保持器は、軸方向に突出する係合爪１６により軸方向に重なり結合される二枚の環状体を有する。各環状体は、円周方向に一定の間隔で並びそれぞれがポケットの内壁面を構成する複数のポケット壁部と、円周方向に隣り合う前記ポケット壁部同士を連結する複数の結合板部とを有する。係合爪１６の周方向長さＬ１を、係合爪１６の径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下とした。一方の環状体における係合爪１６の、他方の環状体の係合孔１７に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下とした。
【選択図】図６
【解決手段】転がり軸受は、内外輪と、これら内外輪間に介在する複数の玉と、各玉を保持するポケットが形成された保持器とを備える。保持器は、軸方向に突出する係合爪１６により軸方向に重なり結合される二枚の環状体を有する。各環状体は、円周方向に一定の間隔で並びそれぞれがポケットの内壁面を構成する複数のポケット壁部と、円周方向に隣り合う前記ポケット壁部同士を連結する複数の結合板部とを有する。係合爪１６の周方向長さＬ１を、係合爪１６の径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下とした。一方の環状体における係合爪１６の、他方の環状体の係合孔１７に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下とした。
【選択図】図６
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外輪と、これら内外輪間に介在する複数の玉と、各玉を保持するポケットが形成された保持器とを備え、この保持器は、軸方向に突出する係合爪により前記軸方向に重なり結合される二枚の環状体を有する転がり軸受であって、
前記係合爪の周方向長さＬ１を、前記係合爪の径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下とした転がり軸受。
前記係合爪の周方向長さＬ１を、前記係合爪の径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下とした転がり軸受。
【請求項2】
請求項１に記載の転がり軸受において、一方の前記環状体における前記係合爪の、他方の前記環状体の係合孔に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下とした転がり軸受。
【請求項3】
請求項１または請求項２に記載の転がり軸受において、前記各環状体は、円周方向に一定の間隔で並びそれぞれが前記ポケットの内壁面を構成する複数のポケット壁部と、円周方向に隣り合う前記ポケット壁部同士を連結する複数の結合板部とを有し、前記二枚の環状体が前記各結合板部で互いに重なって結合された転がり軸受。
【請求項4】
請求項１または請求項２に記載の転がり軸受において、モータ用転がり軸受である転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二枚の環状体を軸方向に結合した保持器を備えた転がり軸受に関し、例えば、モータ用転がり軸受等において、保持器としての機能を発揮することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転がり軸受に組み込まれる保持器として、二枚の同形状の環状体を係合させた合成樹脂製保持器が提案されている（特許文献１）。この合成樹脂製保持器は、二枚の同形状の環状体を係合爪により接続し、保持器として機能させている。この合成樹脂製保持器では、係合爪の精度により、ボールを保持する保持器ポケットの形状が左右される。特に対となる係合孔の隙間および係合爪の位置関係等が、環状体を結合した後のポケット形状の誤差として生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第４３４０４１９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
係合爪の径方向長さに対する周方向長さの比である縦横比を検討したところ、以下のような保持器としての機能に課題が認められた。縦横比が低いいわゆる薄肉の係合爪は剛性が低く、縦横比が高過ぎる厚肉の係合爪は係合爪の挿入性等に課題があった。
【0005】
本発明の目的は、二枚の環状体を係合爪により結合した保持器を備えた転がり軸受において、保持器としての機能を十分に発揮することができる転がり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の転がり軸受は、内外輪と、これら内外輪間に介在する複数の玉と、各玉を保持するポケットが形成された保持器とを備え、この保持器は、軸方向に突出する係合爪により前記軸方向に重なり結合される二枚の環状体を有する転がり軸受であって、
前記係合爪の周方向長さＬ１を、前記係合爪の径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下とした。
前記係合爪の周方向長さＬ１を、前記係合爪の径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下とした。
【0007】
この構成によると、係合爪の周方向長さＬ１を径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下としたため、係合爪として所望の剛性を備えると共に、係合爪を対象とする係合孔に円滑に且つ確実に挿入した状態を維持することが可能となる。これにより保持器としての機能を十分に発揮することができる。
係合爪の周方向長さＬ１が径方向長さＬ２に対して４０％未満の場合、係合爪の剛性が不足し係合爪の強度上課題がある。係合爪の周方向長さＬ１が径方向長さＬ２に対して６０％を超える場合、係合爪自体の強度が過大となるため、係合爪の返し分倒れず係合爪の挿入性の課題を解決できない。
係合爪の周方向長さＬ１が径方向長さＬ２に対して４０％未満の場合、係合爪の剛性が不足し係合爪の強度上課題がある。係合爪の周方向長さＬ１が径方向長さＬ２に対して６０％を超える場合、係合爪自体の強度が過大となるため、係合爪の返し分倒れず係合爪の挿入性の課題を解決できない。
【0008】
一方の前記環状体における前記係合爪の、他方の前記環状体の係合孔に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下としてもよい。
係合爪の対となる係合孔の隙間および係合爪の位置関係等が、環状体を結合した後のポケット形状の誤差として生じる。このため、係合爪は係合孔に対しある程度の締め代をもっており、係合爪の係合時、また運転中に各々の環状体の位相が変化しないようにされている。しかし、締め代が大きくなると、例えば、合成樹脂製の保持器の係合部では、係合爪の係合時または運転時に係合爪に機能面での低下が生じる場合がある。
この構成によると、係合爪の係合孔に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下としたため、係合爪の強度を保持すると共にポケットの位相ずれを抑えることが可能となる。したがって、係合爪の係合時または運転時に係合爪に機能面の低下が生じることを未然に防止し得る。
係合爪の対となる係合孔の隙間および係合爪の位置関係等が、環状体を結合した後のポケット形状の誤差として生じる。このため、係合爪は係合孔に対しある程度の締め代をもっており、係合爪の係合時、また運転中に各々の環状体の位相が変化しないようにされている。しかし、締め代が大きくなると、例えば、合成樹脂製の保持器の係合部では、係合爪の係合時または運転時に係合爪に機能面での低下が生じる場合がある。
この構成によると、係合爪の係合孔に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下としたため、係合爪の強度を保持すると共にポケットの位相ずれを抑えることが可能となる。したがって、係合爪の係合時または運転時に係合爪に機能面の低下が生じることを未然に防止し得る。
【0009】
前記各環状体は、円周方向に一定の間隔で並びそれぞれが前記ポケットの内壁面を構成する複数のポケット壁部と、円周方向に隣り合う前記ポケット壁部同士を連結する複数の結合板部とを有し、前記二枚の環状体が前記各結合板部で互いに重なって結合されてもよい。この場合、内外輪の軌道面間に複数の玉を挿入した後、二枚の環状体を軸方向の両側から組み合わせてこの保持器を容易に組み立てることができる。
この保持器を樹脂製として二枚の環状体を同一形状とすると、一種類の成形用金型で前記二枚の環状体を成形できる。この場合、金型費用を抑えて保持器のコスト低減を図れると共に、組み合わせる二枚の環状体を分別する必要がなく環状体の管理も容易である。
この保持器を樹脂製として二枚の環状体を同一形状とすると、一種類の成形用金型で前記二枚の環状体を成形できる。この場合、金型費用を抑えて保持器のコスト低減を図れると共に、組み合わせる二枚の環状体を分別する必要がなく環状体の管理も容易である。
【0010】
転がり軸受はモータ用転がり軸受であってもよい。モータ用転がり軸受が、保持器としての機能を十分に発揮することができる場合、様々な用途、仕様のモータに転がり軸受を適用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の本発明の転がり軸受は、保持器が軸方向に突出する係合爪により結合される二枚の環状体を有し、係合爪の周方向長さＬ１を、係合爪の径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下とした。このため、保持器としての機能を十分に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第１の実施形態に係る転がり軸受の縦断面図である。
【図2】同転がり軸受の保持器の平面図である。
【図3】同保持器の一部分を示す断面図である。
【図4】同保持器における二枚の環状体の一部分を示す分解斜視図である。
【図5】同二枚の環状体より組み立てられた保持器の一部分を示す断面図である。
【図9】同転がり軸受をモータに適用したモータ用転がり軸受を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
［第１の実施形態］
本発明の実施形態に係る転がり軸受を図１ないし図８と共に説明する。
＜転がり軸受の概略構成＞
図１のように、この転がり軸受１は、深溝玉軸受であって、内輪２と、外輪３と、内外輪２，３の軌道面２ａ，３ａ間に介在する複数の転動体である玉５と、各玉５を保持する保持器６を備え、さらにシール４を備えている。内外輪２，３は、軸受鋼またはステンレス鋼等から成り、玉５は鋼球またはセラミックボールである。
本発明の実施形態に係る転がり軸受を図１ないし図８と共に説明する。
＜転がり軸受の概略構成＞
図１のように、この転がり軸受１は、深溝玉軸受であって、内輪２と、外輪３と、内外輪２，３の軌道面２ａ，３ａ間に介在する複数の転動体である玉５と、各玉５を保持する保持器６を備え、さらにシール４を備えている。内外輪２，３は、軸受鋼またはステンレス鋼等から成り、玉５は鋼球またはセラミックボールである。
【0014】
内輪２の外周と外輪３の内周間に環状空間が形成され、この環状空間の軸方向両端の開口がシール４，４により閉鎖されている。閉鎖された環状空間に潤滑用のグリースが封入されている。外輪３の内周面にシール取付溝７が形成され、内輪２の外周面に内輪シール溝８が形成されている。各シール４は、内輪シール溝８にリップが接触しない非接触シールである。シール４は、芯金４ａにゴム材４ｂをモールドしたものであり、シール４の外周縁が、外輪３のシール取付溝７に嵌め込まれて固定される。
【0015】
＜保持器について＞
図２の保持器６は、転動体案内形式であり、図３および図４のように、互いに軸方向に重なる二枚の合成樹脂製の環状体１０，１０で構成されている。図２のように、保持器６は、二枚の環状体１０，１０を結合した状態において、環状体１０，１０の各外径面が同径の円筒面を成し、環状体１０，１０の各内径面が同径の円筒面を成す。図３の各環状体１０は、合成樹脂を例えば射出成形して形成される。図５に示す二枚の環状体１０，１０は、互いに同一形状であり同一の金型で成形可能である。
図２の保持器６は、転動体案内形式であり、図３および図４のように、互いに軸方向に重なる二枚の合成樹脂製の環状体１０，１０で構成されている。図２のように、保持器６は、二枚の環状体１０，１０を結合した状態において、環状体１０，１０の各外径面が同径の円筒面を成し、環状体１０，１０の各内径面が同径の円筒面を成す。図３の各環状体１０は、合成樹脂を例えば射出成形して形成される。図５に示す二枚の環状体１０，１０は、互いに同一形状であり同一の金型で成形可能である。
【0016】
前記合成樹脂として、例えば、ポリアミド（ＰＡ）、ポリフェニレンサルファイド（ＰＰＳ）、ポリエーテルエーテルケトン（ＰＥＥＫ）等の熱可塑性樹脂が適用される。この保持器６に適用される樹脂には、強度を高めるために、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等の繊維が混合されている。
【0017】
各環状体１０は、複数の半円筒状のポケット壁部１３と、複数の結合板部１４とを有する。複数のポケット壁部１３は、円周方向に一定の間隔で並びそれぞれが玉５を保持するポケット１２の内壁面を構成する。複数の結合板部１４は、円周方向に隣合うポケット壁部１３同士を連結する。図４のように、二枚の環状体１０，１０は、各結合板部１４で互いに軸方向に重なって結合される。
【0018】
＜係合爪、鉤部＞
結合板部１４は、二枚の環状体１０，１０を結合したときに面接触する合わせ面１５を有する。結合板部１４における合わせ面１５の周方向中央付近には、軸方向に突出する断面角形の係合爪１６と、他方の環状体１０の係合爪１６が挿入される矩形孔状の係合孔１７とが形成されている。係合爪１６の先端１６ｂは、結合板部１４の平坦面１４ａよりも突出しない寸法関係としている。
結合板部１４は、二枚の環状体１０，１０を結合したときに面接触する合わせ面１５を有する。結合板部１４における合わせ面１５の周方向中央付近には、軸方向に突出する断面角形の係合爪１６と、他方の環状体１０の係合爪１６が挿入される矩形孔状の係合孔１７とが形成されている。係合爪１６の先端１６ｂは、結合板部１４の平坦面１４ａよりも突出しない寸法関係としている。
【0019】
図３および図５のように、係合爪１６の先端部には、係合爪１６の抜け止め用の返しとなる鉤部１９が形成されている。一方の環状体１０の鉤部１９は、他方の環状体１０の係合孔１７の内面に形成された段部１８に係合する。この係合により図５のように係合爪１６が係合孔１７から抜け止めされ、二枚の環状体１０，１０が互いに重なって結合される。
【0020】
＜面取り＞
図６は図２のVI部の部分拡大図であり、図７は図６のVII－VII線断面図、図８は図７のVIII－VIII線断面図である。図６のように、係合爪１６は平面視略矩形状であり、この係合爪１６の先端部には、周方向面取り２０，２０と径方向面取り２１，２１とが形成されている。具体的には、図７のように、周方向面取り２０，２０は、周方向両側に向かうに従って軸方向基端側Ａ１にそれぞれ傾斜する角面取りである。図８のように、径方向面取り２１，２１は、径方向両側に向かうに従って軸方向基端側Ａ１にそれぞれ傾斜する角面取りである。
図６は図２のVI部の部分拡大図であり、図７は図６のVII－VII線断面図、図８は図７のVIII－VIII線断面図である。図６のように、係合爪１６は平面視略矩形状であり、この係合爪１６の先端部には、周方向面取り２０，２０と径方向面取り２１，２１とが形成されている。具体的には、図７のように、周方向面取り２０，２０は、周方向両側に向かうに従って軸方向基端側Ａ１にそれぞれ傾斜する角面取りである。図８のように、径方向面取り２１，２１は、径方向両側に向かうに従って軸方向基端側Ａ１にそれぞれ傾斜する角面取りである。
【0021】
＜パラメータ＞
＜＜係合爪の縦横比＞＞
図６のように、係合爪１６の周方向長さＬ１を、係合爪１６の径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下としている。係合爪の周方向長さＬ１が径方向長さＬ２に対して４０％未満の場合、係合爪の剛性が不足し係合爪の強度上課題がある。係合爪の周方向長さＬ１が径方向長さＬ２に対して６０％を超える場合、係合爪自体の強度が過大となるため、係合爪の返し分倒れず係合爪の挿入性の課題を解決できない。
＜＜係合爪の縦横比＞＞
図６のように、係合爪１６の周方向長さＬ１を、係合爪１６の径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下としている。係合爪の周方向長さＬ１が径方向長さＬ２に対して４０％未満の場合、係合爪の剛性が不足し係合爪の強度上課題がある。係合爪の周方向長さＬ１が径方向長さＬ２に対して６０％を超える場合、係合爪自体の強度が過大となるため、係合爪の返し分倒れず係合爪の挿入性の課題を解決できない。
【0022】
＜＜締め代＞＞
一方の環状体１０（図５）における係合爪１６の、他方の環状体１０（図５）の係合孔１７に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下としている。具体的には、図６における左右方向である周方向Ａ２において、係合孔１７の周方向長さよりも係合爪１６の周方向長さ（爪横）Ｌ１が０以上０．１ｍｍ以下大きく設定されている。これと共に、図６における上下方向である径方向Ａ３において、係合孔１７の径方向長さよりも係合爪１６の径方向長さ（爪縦）Ｌ２が０以上０．１ｍｍ以下大きく設定されている。
一方の環状体１０（図５）における係合爪１６の、他方の環状体１０（図５）の係合孔１７に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下としている。具体的には、図６における左右方向である周方向Ａ２において、係合孔１７の周方向長さよりも係合爪１６の周方向長さ（爪横）Ｌ１が０以上０．１ｍｍ以下大きく設定されている。これと共に、図６における上下方向である径方向Ａ３において、係合孔１７の径方向長さよりも係合爪１６の径方向長さ（爪縦）Ｌ２が０以上０．１ｍｍ以下大きく設定されている。
【0023】
係合爪１６の対となる係合孔１７の隙間および係合爪１６の位置関係等が、環状体を結合した後のポケット形状の誤差として生じる。このため、係合爪１６は係合孔１７に対しある程度の締め代をもっており、係合爪１６の係合時、また運転中に各々の環状体の位相が変化しないようにされている。しかし、締め代が大きくなると、合成樹脂製の保持器の係合部では、係合爪１６の係合時または運転時に係合爪１６に機能面の低下が生じる場合がある。
本実施形態の保持器構成によると、係合爪１６の係合孔１７に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下としたため、係合爪１６の強度を保持すると共にポケット１２（図５）の位相ずれを抑えることが可能となる。
本実施形態の保持器構成によると、係合爪１６の係合孔１７に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下としたため、係合爪１６の強度を保持すると共にポケット１２（図５）の位相ずれを抑えることが可能となる。
【0024】
＜回転に関する機能＞
前述のパラメータを種々変更した保持器における係合爪１６を評価するため、これら保持器を組み込んだ転がり軸受の爪強度、挿入性について比較を行った。表１で、○は、実施可能且つ効果が良いことを表し、×は、効果が良くないことを表している。
前述のパラメータを種々変更した保持器における係合爪１６を評価するため、これら保持器を組み込んだ転がり軸受の爪強度、挿入性について比較を行った。表１で、○は、実施可能且つ効果が良いことを表し、×は、効果が良くないことを表している。
【0025】
＜評価結果＞
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
＜作用効果＞
以上説明した図１に示す転がり軸受１によると、図５のように、二枚の環状体１０，１０は、半球状のポケット１２が対向するように組み合わせられ、係合孔１７に対する係合爪１６の係合によって軸方向に重なって結合される。これにより保持器６が組み立てられる。
保持器６の組み立ては、図１に示す内外輪２，３間に複数の玉５を組み込む。その後内外輪２，３の軸方向両側から軸受空間内に図５の二枚の環状体１０，１０を配置して、係合孔１７に係合爪１６を挿入する。
以上説明した図１に示す転がり軸受１によると、図５のように、二枚の環状体１０，１０は、半球状のポケット１２が対向するように組み合わせられ、係合孔１７に対する係合爪１６の係合によって軸方向に重なって結合される。これにより保持器６が組み立てられる。
保持器６の組み立ては、図１に示す内外輪２，３間に複数の玉５を組み込む。その後内外輪２，３の軸方向両側から軸受空間内に図５の二枚の環状体１０，１０を配置して、係合孔１７に係合爪１６を挿入する。
【0028】
このように係合孔１７に対する係合爪１６の係合によって保持器６を組み立てることができる。このため、転がり軸受１の組み立てが容易であると共に、図５に示す係合孔１７と係合爪１６の係合によって環状体１０の外径方向の変形を防止し得る。このため、剛性の高い保持器６を得ることができ、高速回転用として使用することができる。
【0029】
保持器６を形成する二枚の環状体１０，１０は、同一形状であるため、一種類の成形用金型で保持器６を成形することができる。この場合、複数の成形用金型を用いて製作する保持器よりも製造コストを低減する保持器６を得ることができる。これと共に、異なる環状体を組み合わせて保持器を組み立てる場合に比べて、環状体１０の管理も容易である。
係合爪１６の先端１６ｂは、結合板部１４の平坦面１４ａよりも突出しない寸法関係としている。このため、保持器６の組立時、一方の環状体１０の平坦面１４ａを受け、他方の環状体１０の平坦面１４ａを押すことによって、保持器６を容易に組み立てることができる。
係合爪１６の先端１６ｂは、結合板部１４の平坦面１４ａよりも突出しない寸法関係としている。このため、保持器６の組立時、一方の環状体１０の平坦面１４ａを受け、他方の環状体１０の平坦面１４ａを押すことによって、保持器６を容易に組み立てることができる。
【0030】
図６のように、係合爪１６の周方向長さＬ１を径方向長さＬ２に対して４０％以上６０％以下としたため、係合爪１６として所望の剛性を備えると共に、係合爪１６を対象とする係合孔１７に円滑に且つ確実に挿入した状態を維持することが可能となる。これにより保持器としての機能を十分に発揮することができる。
係合爪１６の係合孔１７に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下としたため、係合爪１６の強度を保持すると共にポケット１２（図５）の位相ずれを抑えることが可能となる。したがって、係合爪１６の係合時または運転時に係合爪１６に機能面の低下等が生じることを未然に防止し得る。
係合爪１６の係合孔１７に対する締め代を０以上０．１ｍｍ以下としたため、係合爪１６の強度を保持すると共にポケット１２（図５）の位相ずれを抑えることが可能となる。したがって、係合爪１６の係合時または運転時に係合爪１６に機能面の低下等が生じることを未然に防止し得る。
【0031】
＜他の実施形態について＞
各環状体のポケット壁部は、半円筒状に限定されるものではなく、半球状であってもよい。
シールは、内輪シール溝にリップが接触する接触シールであってもよい。
シールは、鋼板のみから成るいわゆるシールド板であってもよい。
シールがない開放形の転がり軸受であってもよい。
転がり軸受をグリースではなく油で潤滑ですることも可能である。
各環状体を、例えば、３Ｄプリンタまたは機械加工により形成することも可能である。
いずれかの転がり軸受を工作機械、産業機械、車両等に適用することも可能である。
各環状体のポケット壁部は、半円筒状に限定されるものではなく、半球状であってもよい。
シールは、内輪シール溝にリップが接触する接触シールであってもよい。
シールは、鋼板のみから成るいわゆるシールド板であってもよい。
シールがない開放形の転がり軸受であってもよい。
転がり軸受をグリースではなく油で潤滑ですることも可能である。
各環状体を、例えば、３Ｄプリンタまたは機械加工により形成することも可能である。
いずれかの転がり軸受を工作機械、産業機械、車両等に適用することも可能である。
【0032】
＜モータへの適用例＞
図９のように、図９のように、実施形態の転がり軸受は、例えば、モータ５１用の転がり軸受５０，５０として用いられる。モータ用転がり軸受５０が、保持器としての機能を十分に発揮することができる場合、様々な用途、仕様のモータに転がり軸受を適用できる。
図９のように、図９のように、実施形態の転がり軸受は、例えば、モータ５１用の転がり軸受５０，５０として用いられる。モータ用転がり軸受５０が、保持器としての機能を十分に発揮することができる場合、様々な用途、仕様のモータに転がり軸受を適用できる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
１…転がり軸受、２…内輪、３…外輪、５…玉、１０…環状体、１２…ポケット、１３…ポケット壁部、１４…結合板部、１６…係合爪、１７…係合孔
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】