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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130859
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ヘッドレストロック装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/38 20060101AFI20240920BHJP
   B60N 2/818 20180101ALI20240920BHJP
   B60N 2/829 20180101ALI20240920BHJP
【FI】
A47C7/38
B60N2/818
B60N2/829
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040793
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 雅士
(72)【発明者】
【氏名】加納 勇毅
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DB04
3B084DB06
3B087DC06
(57)【要約】
【課題】ヘッドレスト本体の上下移動を適切にロックすることが可能なヘッドレストロック装置を提供すること。
【解決手段】ヘッドレストロック装置3Aは、ヘッドレストステー(ステー)20と、ステー20により支持されるヘッドレスト本体10に設けられてステー20の切欠き溝23との係合によりヘッドレスト本体10の上下移動をロックするロック機構30とを有する。ロック機構30が、幅方向の移動により切欠き溝23に対して係脱されるロックプレート31と、ロックプレート31を切欠き溝23との係合方向に付勢するロックばね32とを有する。ロックプレート31と切欠き溝23とが、互いにロックばね32の付勢方向に対して斜めを向く角度で面状に当接する合わせ面31A,23Aを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストロック装置であって、
ヘッドレスト本体を支持するヘッドレストステーと、
前記ヘッドレスト本体、又は前記ヘッドレストステーを支持するヘッドレストサポートのうちのどちらかを構成する支持体に設けられ、前記ヘッドレストステーに形成される切欠き溝との係合により前記ヘッドレストステーと前記支持体との間の高さ方向の相対移動をロックするロック機構と、を有し、
前記ロック機構が、前記支持体に対するヘッドレスト幅方向の移動により前記切欠き溝に対して係脱されるロックプレートと、該ロックプレートを前記支持体に対して前記ヘッドレスト幅方向のうちの前記切欠き溝と係合させる幅方向に付勢するロックばねと、を有し、
前記ロックプレートと前記切欠き溝とが、互いに前記ロックばねの付勢方向に対して前方又は後方に斜めを向く角度で面状に当接する合わせ面を有するヘッドレストロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドレストロック装置であって、
前記ロックばねが前記ロックプレートにばね力を作用させるばね力作用点の前後方向の位置が、前記ヘッドレストステーの前記切欠き溝を通る横断面の中心軸線を含む、該中心軸線より前記切欠き溝の前記合わせ面が向く側の領域に位置するヘッドレストロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載のヘッドレストロック装置であって、
前記ばね力作用点が位置する前記領域が、前記中心軸線と前記切欠き溝の前記合わせ面の向く側の先の端末との間とされるヘッドレストロック装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のヘッドレストロック装置であって、
前記ロック機構が設けられる前記支持体が、前記ヘッドレスト本体を構成する中空状の本体ケースとされ、
前記ロックプレートが、前記切欠き溝と係合するロック状態において、前記ロックばねのばね力により前記切欠き溝の前記合わせ面に沿って前記本体ケースのケース内面に前方又は後方から押し付けられるヘッドレストロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストロック装置に関する。詳しくは、ヘッドレスト本体の上下移動をロック可能なヘッドレストロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドレストパッドを備えるヘッドレスト本体と、ヘッドレスト本体を上下移動可能に支持するヘッドレストステーと、を備えるヘッドレストが開示されている。このヘッドレストは、ヘッドレスト本体のヘッドレストステーに対する上下移動をロック可能なロック装置を備える。ロック装置は、ヘッドレスト本体に設けられている。
【0003】
ロック装置は、ヘッドレストステーに形成された切欠き溝にロックプレートを側方からばね力で係合させることにより、ヘッドレスト本体の上下移動をロックする構成とされる。ロック装置は、ヘッドレスト本体の外側部に設けられた解除ボタンが押し込まれる操作により、ロックプレートが切欠き溝から外されてロックを解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10576860号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、ロックプレートと切欠き溝との合わせ面が、ロックプレートのばね力による付勢方向を向く構成とされる。そのため、ロックプレートがその前後のガイド面との間の隙間で傾いだ際に、ロックプレートの切欠き溝に対する掛かり代が浅くなるおそれがある。そこで、本発明は、ヘッドレスト本体の上下移動を適切にロックすることが可能なヘッドレストロック装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段として、本発明のヘッドレストロック装置は、次の手段をとる。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明は、ヘッドレストロック装置であって、ヘッドレスト本体を支持するヘッドレストステーと、前記ヘッドレスト本体、又は前記ヘッドレストステーを支持するヘッドレストサポートのうちのどちらかを構成する支持体に設けられ、前記ヘッドレストステーに形成される切欠き溝との係合により前記ヘッドレストステーと前記支持体との間の高さ方向の相対移動をロックするロック機構と、を有し、前記ロック機構が、前記支持体に対するヘッドレスト幅方向の移動により前記切欠き溝に対して係脱されるロックプレートと、該ロックプレートを前記支持体に対して前記ヘッドレスト幅方向のうちの前記切欠き溝と係合させる幅方向に付勢するロックばねと、を有し、前記ロックプレートと前記切欠き溝とが、互いに前記ロックばねの付勢方向に対して前方又は後方に斜めを向く角度で面状に当接する合わせ面を有するヘッドレストロック装置である。
【0008】
第1の発明によれば、ロックばねの付勢により、ロックプレートが常に切欠き溝の合わせ面が向く前方又は後方に傾けられるように押圧される。それにより、ロックプレートがロックばねにより前方と後方とにそれぞれ傾き得るように付勢される構成と比べて、ロックプレートの切欠き溝に対する掛かり代のばらつきを抑制することができる。その結果、ヘッドレスト本体の上下移動を適切にロックすることができる。
【0009】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記ロックばねが前記ロックプレートにばね力を作用させるばね力作用点の前後方向の位置が、前記ヘッドレストステーの前記切欠き溝を通る横断面の中心軸線を含む、該中心軸線より前記切欠き溝の前記合わせ面が向く側の領域に位置するヘッドレストロック装置である。
【0010】
第2の発明によれば、ロックばねの付勢により、ロックプレートをより適切に切欠き溝の合わせ面が向く前方又は後方に傾けられるように押圧することができる。
【0011】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、前記ばね力作用点が位置する前記領域が、前記中心軸線と前記切欠き溝の前記合わせ面の向く側の先の端末との間とされるヘッドレストロック装置である。
【0012】
第3の発明によれば、ロックプレートがロックばねの付勢により切欠き溝との当接から外れて飛び出すことを抑制することができる。よって、組み付け時に、ロックプレートを前方又は後方から押さえる押さえがなくても、ロックプレートをロックばねの付勢により切欠き溝に当接させた状態に保持することができる。
【0013】
本発明の第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記ロック機構が設けられる前記支持体が、前記ヘッドレスト本体を構成する中空状の本体ケースとされ、前記ロックプレートが、前記切欠き溝と係合するロック状態において、前記ロックばねのばね力により前記切欠き溝の前記合わせ面に沿って前記本体ケースのケース内面に前方又は後方から押し付けられるヘッドレストロック装置である。
【0014】
第4の発明によれば、ヘッドレスト本体の本体ケースの構成を利用して、ロックプレートを常に本体ケースとの前方又は後方からの当接を伴って切欠き溝と係合する構成とすることができる。それにより、ロックプレートを常に決まった建付けで切欠き溝に係合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係るヘッドレストロック装置の構成を表す斜視図である。
図2】ヘッドレストの正面図である。
図3】前ケースを後ケースから外した分解斜視図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5】解除ボタンの押し込みによるロックの解除状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
《第1の実施形態》
(ヘッドレストロック装置3Aの概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るヘッドレストロック装置3Aの構成について、図1図5を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、ヘッドレストロック装置3Aを備えるシート1の着座乗員から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図5のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0018】
図1図2に示すように、本実施形態に係るヘッドレストロック装置3Aは、自動車のフロア上に設置されるシート1のヘッドレスト3に適用されている。シート1は、着座乗員の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となる不図示のシートクッションと、頭凭れ部となるヘッドレスト3と、を備える。
【0019】
ヘッドレスト3は、シートバック2の上部に設けられた左右一対のヘッドレストサポート2Aに対して、上方から差し込まれて装着されている。ヘッドレスト3は、具体的には、着座乗員の頭部を後方から支持するヘッドレスト本体10と、ヘッドレスト本体10を上下移動可能に支持するヘッドレストステー20と、を有する。ヘッドレスト3は、ヘッドレストステー20が左右一対のヘッドレストサポート2Aに上方から差し込まれることで、シートバック2の上部に固定されている。
【0020】
また、ヘッドレスト3は、ヘッドレスト本体10のヘッドレストステー20に対する上下移動をロックすることが可能なヘッドレストロック装置3Aを有する。ヘッドレストロック装置3Aは、ヘッドレスト本体10に内蔵されたロック機構30と、ロック機構30の係合相手となるヘッドレストステー20と、によって構成されている。
【0021】
ロック機構30は、ヘッドレスト本体10を構成する中空状の本体ケース11の内部に設けられている。ここで、本体ケース11が本発明の「支持体」に相当する。ロック機構30は、ヘッドレストステー20の内側面に形成された切欠き溝23に対して、ロックプレート31をばね付勢力により内側から係合させることで、ヘッドレスト本体10の上下移動をロックする。
【0022】
ロック機構30は、上記のロック状態から、ヘッドレスト本体10の左側部にある解除ボタン12が使用者によって押し込まれることにより、ロック状態から解除される。具体的には、解除ボタン12が押し込まれることにより、ロックプレート31がばね付勢力に抗して切欠き溝23から押し外されて、ロック状態が解除される。それにより、ヘッドレスト本体10が、ヘッドレストステー20に対して上下移動可能となる。
【0023】
ヘッドレストステー20の切欠き溝23は、高さ方向の複数箇所に形成されている。それにより、ロック機構30は、ヘッドレスト本体10の上下移動によっていずれかの切欠き溝23と高さ方向の位置が合わされる複数の箇所において、ヘッドレスト本体10の上下移動をロックできるようになっている。
【0024】
その際、ロック機構30は、いずれの切欠き溝23と係合する時にも、常にロックばね32のばね付勢力によって切欠き溝23と一定の掛かり代で適切に係合できるようになっている。以下、ロック機構30の各部の具体的な構成について、ヘッドレスト3の基本構成と合わせて詳しく説明する。
【0025】
(各部の構成)
ヘッドレスト本体10は、樹脂製の本体ケース11と、本体ケース11の外周部を覆う図示しない発泡ウレタン製のヘッドレストパッドと、ヘッドレストパッドを覆う不図示のヘッドレストカバーと、を有する。図3図4に示すように、本体ケース11は、前ケース11Aと後ケース11Bとに前後に2分割された中空容器状の部材から成る。
【0026】
本体ケース11には、その前ケース11Aと後ケース11Bとの間に、正面視逆U字状を成すヘッドレストステー20の左右の下脚部21を除く上側の曲返し部分が挟み込み状に組み付けられている。詳しくは、本体ケース11には、その前ケース11Aと後ケース11Bとの間に、ヘッドレストステー20の左右の両下脚部21から前斜め上方に折れ曲がり状に延びる左右の上脚部22が挟み込み状に組み付けられている。
【0027】
それにより、本体ケース11は、ヘッドレストステー20に対して、左右の上脚部22に沿って上下方向に摺動可能となるように組み付けられている。上述したヘッドレストステー20の内側面に形成される複数の切欠き溝23は、左側の上脚部22の内側面(右側面)に沿って形成されている。
【0028】
ヘッドレストステー20は、1本の丸棒状の金属部材が正面視逆U字状を成す形に折り曲げられて形成されている。ヘッドレストステー20は、その左右の下脚部21が、図1図2で前述したシートバック2の上部にある左右一対のヘッドレストサポート2Aに上方から差し込まれて装着されている。
【0029】
具体的には、ヘッドレストステー20は、左右の下脚部21が各ヘッドレストサポート2Aに差し込まれることにより、左側の下脚部21の外側面に形成された係止溝21Aが、左側のヘッドレストサポート2Aの内部に設けられた不図示の係止部に係止されてロックされる。このヘッドレストサポート2Aによるヘッドレストステー20のロック状態は、左側のヘッドレストサポート2Aの頭部左側面に設けられた解除つまみ2Bが使用者により右側へと押し込まれることで解除される。
【0030】
図3図4に示すように、ロック機構30は、平板状のロックプレート31と、ロックプレート31を切欠き溝23と係合させる方向に付勢するロックばね32と、を有する。ロックプレート31とロックばね32とは、それぞれ、後ケース11Bに組み付けられている。
【0031】
具体的には、図4に示すように、後ケース11Bは、本体ケース11の組み立て時には、その前側が上向きとなるように不図示の治具にセットされる。そして後ケース11Bは、そのケース内面となる上面に、ヘッドレストステー20とロックプレート31とロックばね32とが組み付けられるようになっている。ヘッドレストステー20は、後ケース11Bの左右の各側部に沿って形成された、図示上向き(前となる側)に湾曲する各ステーガイドB1の間に、左右の上脚部22が嵌まり込むようにセットされる。
【0032】
それにより、ヘッドレストステー20は、その左右の上脚部22が、各ステーガイドB1によって後側とヘッドレスト幅方向(左右方向)の外側とからそれぞれ当てられた状態にセットされる。ロックプレート31は、後ケース11Bに対し、左側の上脚部22の右側の空いたスペースに図示上方(前となる側)から差し込まれるようにセットされる。
【0033】
より詳しくは、図3に示すように、ロックプレート31は、後ケース11Bのケース内面(前面)から突出する上下2箇所のリブB3の間に差し込まれる。それにより、ロックプレート31は、後ケース11Bに対して、各リブB3の間でヘッドレスト幅方向の移動は許容されるものの、上下方向の移動が規制された状態に組み付けられる。
【0034】
図4に示すように、ロックばね32は、圧縮ばねから成る。ロックばね32は、その一端(左端)がロックプレート31の右側部に形成された突出形状のばね掛突起31Bに通され、他端(右端)が後ケース11Bのケース内面(前面)から突出する立板状のばね座B2の左側面に当てられた状態にセットされる。ばね座B2は、後ケース11Bの左側のステーガイドB1から右側に離間した位置に形成されている。
【0035】
ばね座B2は、その左側面が、左側のステーガイドB1にセットされるヘッドレストステー20の左側の上脚部22とヘッドレスト幅方向(左右方向)に真っ直ぐ対面するように突出する板形状とされる。これらの組み付け後に、前ケース11Aが後ケース11Bに図示上方(前となる側)から蓋をするように組み付けられる。
【0036】
この前ケース11Aの組み付けにより、ヘッドレストステー20の左右の上脚部22が、前ケース11Aと後ケース11Bとの間に上述した摺動が可能なように押し挟まれる。更に、ロックプレート31が、後ケース11Bのケース内面となる前面と、前ケース11Aのケース内面となる後面と、の間に前後方向の僅かな隙間を有して挟まれた状態となる。
【0037】
それにより、ロックプレート31が、後ケース11Bの前面(ケース内面)と前ケース11Aの後面(ケース内面)との間で、これらの面に沿ってヘッドレスト幅方向に移動可能となるように前後側からガイドされる。ロックプレート31を前後側から挟み込む後ケース11Bの前面と前ケース11Aの後面とは、互いに平行な面とされる。ロックプレート31は、その後ケース11Bの前面と対向する後縁と、前ケース11Aの後面と対向する前縁と、が互いに平行を成す形状とされる。
【0038】
ロックプレート31は、そのヘッドレストステー20の左側の上脚部22と後ケース11Bのばね座B2との間に差し込まれる後部分の左側縁が、ロックばね32の付勢により上脚部22の切欠き溝23と係合する係合部とされる。このロックプレート31の左側縁と切欠き溝23の溝底とには、ロックプレート31の係合時に互いに面状に当接する合わせ面31A,23Aが形成されている。
【0039】
このうち、切欠き溝23の合わせ面23Aは、右斜め前方を向く形にカットされた平坦面から成る。切欠き溝23の合わせ面23Aは、上脚部22の横断面の中心軸線Cを前後に跨ぐように形成されている。切欠き溝23の合わせ面23Aは、その面直方向(法線方向)が右斜め前方を向く形状とされる。ロックプレート31の合わせ面31Aは、切欠き溝23の合わせ面23Aの向きに合わせて左斜め後方を向く形にカットされた平坦面から成る。ロックプレート31の合わせ面31Aは、ロックプレート31の後端位置まで形成されている。ロックプレート31の合わせ面31Aは、その面直方向(法線方向)が左斜め後方を向く形状とされる。
【0040】
ロックプレート31の合わせ面31Aは、ロックプレート31を後ケース11Bと前ケース11Aとの間でこれらのケース内面と平行に上脚部22に向かって左側へ移動させることで、切欠き溝23の合わせ面23Aと合致する(面状に当接する)形状とされる。すなわち、ロックプレート31の合わせ面31Aは、ロックプレート31が後ケース11Bと前ケース11Aとの間で前後に傾がない姿勢においては、切欠き溝23の合わせ面23Aと平行を成す形状とされる。
【0041】
ロックばね32は、ロックプレート31のばね掛突起31Bとばね座B2との間で、コイルの中心軸線がヘッドレスト幅方向に真っ直ぐ延びる向きに設けられている。ロックばね32は、そのばね座B2との当接点を支点にロックプレート31にばね力Fを作用させるばね力作用点Pの前後方向の位置が、切欠き溝23の合わせ面23Aにおける後側の端末E2と前側の端末E1との間の領域Aに位置するように設定されている。
【0042】
より詳しくは、ばね力作用点Pの前後方向の位置は、上脚部22の横断面の中心軸線Cより前側の位置に設定されている。このような位置にばね力作用点Pが設定されていることで、ロックばね32は、常に、ロックプレート31を上脚部22に対して中心軸線Cよりも前側の位置で左側に押圧する。それにより、ロックばね32は、ロックプレート31を上脚部22との当接に伴い切欠き溝23の合わせ面23Aが向く前方に傾けるように押圧する。
【0043】
したがって、ロックプレート31がロックばね32により前方と後方とにそれぞれ傾き得るように付勢される構成と比べて、ロックプレート31の切欠き溝23に対する掛かり代のばらつきを抑制することができる。その結果、ヘッドレスト本体10の上下移動を適切にロックすることができる。
【0044】
また、上記位置にばね力作用点Pが設定されていることで、ロックプレート31とロックばね32とを後ケース11Bに組み付けた際に、ロックプレート31をロックばね32のばね力Fにより上脚部22の切欠き溝23と係合させた状態に保持することが可能となる。それにより、ロックプレート31がロックばね32のばね力Fによって切欠き溝23との係合から外れて飛び出すことを防止することができる。
【0045】
上記の機序について詳しく説明すると、後ケース11Bには、その前面の左側のステーガイドB1の基端となる部分に、前方に凹湾曲面状に突出する凸面B4が形成されている。この凸面B4は、ロックプレート31とロックばね32とを図示上向きにした後ケース11Bに組み付けるべく、ロックプレート31を後ケース11Bに図示上方(前となる側)から差し込むことで、ロックプレート31の左後側の角部がロックばね32の付勢により右側から押し当てられ得る面とされる。
【0046】
ロックばね32により付勢されたロックプレート31が凸面B4に当てられると、ロックプレート31には、凸面B4との当接点からばね力作用点Pまでの距離r2に、ばね力Fを距離r2に直交する方向成分で表すF・cosθ2を乗じた大きさのモーメントM2が掛けられる。なお、角度θ2は、ばね力Fの作用方向と距離r2に直交する方向との成す角である。そして、ロックプレート31は、このモーメントM2を伴って、合わせ面31Aが切欠き溝23の右斜め前方に面直方向(法線方向)を向ける合わせ面23Aに面状に当てられる。
【0047】
それにより、切欠き溝23の合わせ面23Aには、その面中央に作用するばね力Fの反力によるモーメントM1が作用する。モーメントM1は、ロックプレート31の凸面B4との当接点からばね力Fの反力が作用する切欠き溝23の合わせ面23Aの面中央までの距離r1に、ばね力Fの反力を距離r1に直交する方向成分で表すF・cosθ1を乗じた大きさとして表される。なお、角度θ1は、ばね力Fの作用方向と距離r1に直交する方向との成す角である。
【0048】
このばね力FによるモーメントM1と反力によるモーメントM2とが釣り合うことで、ロックプレート31が切欠き溝23と係合した状態に保持される。しかし、ロックばね32のばね力作用点Pが切欠き溝23の合わせ面23Aの前側の端末E1を前方に越えた位置に設定されると、上述したモーメントM1,M2間の釣り合いがとれず、ロックプレート31が切欠き溝23との係合から外れて飛び出すこととなる。
【0049】
なお、ロックプレート31は、実際には、ロックばね32のばね力Fにより、合わせ面31Aが当接する切欠き溝23の合わせ面23Aに沿って前斜め左方へと摺動する。しかし、ロックプレート31は、切欠き溝23との合わせ面31A,23A同士の摺動摩擦抵抗力により、切欠き溝23との係合から外れる前の途中位置で摺動が止められるようになっている。
【0050】
上記ロックプレート31は、後ケース11Bに組み付けられた後、前ケース11Aが後ケース11Bに組み付けられることで、前ケース11Aのケース内面である後面により後方へと押し戻される。このような構成により、ロックプレート31は、ロックばね32のばね力Fにより合わせ面31Aが切欠き溝23の合わせ面23Aに当接するのに伴って、切欠き溝23の合わせ面23Aに沿って前ケース11Aの後面に押し付けられるようになっている。
【0051】
上記ロックプレート31が前ケース11Aの後面に押し付けられることで、ロックプレート31を常に決まった建付けで切欠き溝23と係合させることができる。ロックプレート31は、そのヘッドレストステー20の左側の上脚部22と後ケース11Bのばね座B2との間に差し込まれる後部分が、合わせ面31Aの斜めカットにより先細り形状とされている。そのため、ロックプレート31を上脚部22とばね座B2との間に差し込む際に、切欠き溝23の傾斜した合わせ面23Aとロックプレート31の傾斜した合わせ面31Aとのガイド形状によって、ロックプレート31をこれらの間に簡便に差し込むことが可能とされる。
【0052】
上記ロックプレート31が切欠き溝23と係合した状態は、図5に示すように、前ケース11Aの左側部に取り付く解除ボタン12が使用者によって右側へ押し込まれる操作によって解除される。解除ボタン12は、前ケース11Aの左側部に形成された凹部に対し、圧縮ばねから成る解除ばね12Aを介して弾性支持された状態に組み付けられている。
【0053】
解除ボタン12は、使用者により解除ばね12Aのばね付勢力に抗して右側へ押し込まれると、ロックプレート31の上脚部22の前側に張り出す前部分の左側縁を右方へと押圧する。それにより、ロックプレート31がロックばね32のばね力(図4参照)に抗して右方へと押し込まれ、切欠き溝23との係合状態(ロック状態)から外される。
【0054】
以上をまとめると、本実施形態に係るヘッドレストロック装置3Aは、次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0055】
すなわち、ヘッドレストロック装置(3A)は、ヘッドレスト本体(10)を支持するヘッドレストステー(20)と、ヘッドレスト本体(10)、又はヘッドレストステー(20)を支持するヘッドレストサポート(2A)のうちのどちらかを構成する支持体(11)に設けられ、ヘッドレストステー(20)に形成される切欠き溝(23)との係合によりヘッドレストステー(20)と支持体(11)との間の高さ方向の相対移動をロックするロック機構(30)と、を有する。
【0056】
ロック機構(30)が、支持体(11)に対するヘッドレスト幅方向の移動により切欠き溝(23)に対して係脱されるロックプレート(31)と、ロックプレート(31)を支持体(11)に対してヘッドレスト幅方向のうちの切欠き溝(23)と係合させる幅方向に付勢するロックばね(32)と、を有する。ロックプレート(31)と切欠き溝(23)とが、互いにロックばね(32)の付勢方向に対して前方又は後方に斜めを向く角度で面状に当接する合わせ面(31A,23A)を有する。
【0057】
上記構成によれば、ロックばね(32)の付勢により、ロックプレート(31)が常に切欠き溝(23)の合わせ面(23A)が向く前方又は後方に傾けられるように押圧される。それにより、ロックプレート(31)がロックばね(32)により前方と後方とにそれぞれ傾き得るように付勢される構成と比べて、ロックプレート(31)の切欠き溝(23)に対する掛かり代のばらつきを抑制することができる。その結果、ヘッドレスト本体(10)の上下移動を適切にロックすることができる。
【0058】
また、ロックばね(32)がロックプレート(31)にばね力(F)を作用させるばね力作用点(P)の前後方向の位置が、ヘッドレストステー(20)の切欠き溝(23)を通る横断面の中心軸線(C)を含む、中心軸線(C)より切欠き溝(23)の合わせ面(23A)が向く側の領域(A)に位置する。上記構成によれば、ロックばね(32)の付勢により、ロックプレート(31)をより適切に切欠き溝(23)の合わせ面(23A)が向く前方又は後方に傾けられるように押圧することができる。
【0059】
また、ばね力作用点(P)が位置する領域(A)が、上記の中心軸線(C)と切欠き溝(23)の合わせ面(23A)の向く側の先の端末(E1)との間とされる。上記構成によれば、ロックプレート(31)がロックばね(32)の付勢により切欠き溝(23)との当接から外れて飛び出すことを抑制することができる。よって、組み付け時に、ロックプレート(31)を前方又は後方から押さえる押さえがなくても、ロックプレート(31)をロックばね(32)の付勢により切欠き溝(23)に当接させた状態に保持することができる。
【0060】
また、ロック機構(30)が設けられる支持体(11)が、ヘッドレスト本体(10)を構成する中空状の本体ケース(11)とされる。ロックプレート(31)が、切欠き溝(23)と係合するロック状態において、ロックばね(32)のばね力(F)により切欠き溝(23)の合わせ面(23A)に沿って本体ケース(11)のケース内面に前方又は後方から押し付けられる。
【0061】
上記構成によれば、ヘッドレスト本体(10)の本体ケース(11)の構成を利用して、ロックプレート(31)を常に本体ケース(11)との前方又は後方からの当接を伴って切欠き溝(23)と係合する構成とすることができる。それにより、ロックプレート(31)を常に決まった建付けで切欠き溝(23)に係合させることができる。
【0062】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態の他、各種の形態で実施することができるものである。
【0063】
1.本発明のヘッドレストロック装置は、鉄道等の自動車以外の車両の他、航空機や船舶等の車両以外の乗物用に供されるシートに適用されるものであっても良い。また、ヘッドレストロック装置は、乗物の他、スポーツ施設や劇場、コンサート会場、イベント会場等の各種施設に設置されるシートやマッサージシート等の乗物以外のシートに適用されるものであっても良い。
【0064】
2.上記実施形態では、ロック機構が設けられる支持体は、ヘッドレスト本体の他、ヘッドレストステーを支持するヘッドレストサポートを構成するものであっても良い。具体的には、特開2017-052309号公報等の文献に開示されるような内部にロック機構を備えるヘッドレストサポートが挙げられる。
【0065】
3.ロックプレートを支持体に対して切欠き溝と係合させる幅方向に付勢するロックばねは、圧縮ばねの他、引張ばねやトーションばねであっても良い。ロックプレートと切欠き溝との当接面である各合わせ面は、切欠き溝の合わせ面が前方に斜めを向く角度とされるものの他、切欠き溝の合わせ面が後方に斜めを向く角度とされるものであっても良い。各合わせ面は、互いに面状に当接するものであれば良く、一方の面が他方の面に線当たりするように先細りとなっているものも含む。
【0066】
4.ロックばねがロックプレートにばね力を作用させるばね力作用点の前後方向の位置は、ヘッドレストステーの切欠き溝を通る横断面の中心軸線に対して、切欠き溝の合わせ面の向く側の先の端末よりも遠い位置に設定されていても構わない。そのような構成であっても、ロックプレートが本体ケースの組み付けに伴いケース内面と当接することで、ロックプレートの飛び出しを防止することは可能である。なお、ロックプレートは、飛び出す問題のない構成であれば、必ずしも切欠き溝との係合時において、本体ケースのケース内面に前方又は後方から当接するものでなくても良い。また、ロックばねが複数設定されている場合には、必ずしもその全てが上記位置に設定されていなくても良く、全体としてロックプレートに対して合わせ面同士を面当接させられるように付勢できるようになっていれば良い。
【符号の説明】
【0067】
1 シート
2 シートバック
2A ヘッドレストサポート
2B 解除つまみ
3 ヘッドレスト
3A ヘッドレストロック装置
10 ヘッドレスト本体
11 本体ケース(支持体)
11A 前ケース
11B 後ケース
B1 ステーガイド
B2 ばね座
B3 リブ
B4 凸面
12 解除ボタン
12A 解除ばね
20 ヘッドレストステー
21 下脚部
21A 係止溝
22 上脚部
23 切欠き溝
23A 合わせ面
30 ロック機構
31 ロックプレート
31A 合わせ面
31B ばね掛突起
32 ロックばね
A 領域
P ばね力作用点
C 中心軸線
E1 端末
E2 端末
F ばね力
θ1 角度
θ2 角度
r1 距離
r2 距離
M1 モーメント
M2 モーメント
図1
図2
図3
図4
図5