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特開2024-130869設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130869
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/367 20200101AFI20240920BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240920BHJP
【FI】
G06F30/367
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040814
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱名 建太郎
(72)【発明者】
【氏名】徳崎 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】陳 晨
【テーマコード(参考)】
5B146
5H770
【Fターム(参考)】
5B146AA21
5B146DC04
5B146GG24
5H770AA05
5H770BA01
5H770CA01
5H770DA22
5H770DA30
(57)【要約】
【課題】直流電源から電力供給路を介してインバータ回路と電動機を含む複数のサーボ装置と他システムとに直流電力を供給する直流電力供給システムにおいて、他システムへの電流の変動を抑制し、サーボ装置を小型化し得る直流電力供給システムの設計を可能とする。
【解決手段】インバータ回路及び電動機を備える複数のサーボ装置を含む第1システムと、直流電源からの直流電力を複数のサーボ装置に供給する電力供給路と、直流電力が供給される第2システムと、電力供給路に接続されるインダクタと、を含む直流電力供給システムの設計支援装置であって、電力供給路と複数のサーボ装置との接続構成情報と、サーボ装置の軸数情報と、直流電源とサーボ装置及び第2システムとを接続する配線情報と、サーボ装置の特性情報とを含む構成情報を取得し、構成情報に基づいて第2システムに流れる電流の変動を抑制し得るインダクタのインダクタンス値を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがインバータ回路及び電動機を備える複数のサーボ装置を含む第1システムと、
直流電源からの直流電力を複数の前記サーボ装置に供給する電力供給路と、
前記電力供給路に対して、前記第1システムと並列に接続され、前記直流電源からの直流電力が供給される第2システムと、
前記電力供給路に接続されるインダクタと、
を含む直流電力供給システムの設計を支援する設計支援装置であって、
前記電力供給路と複数の前記サーボ装置との接続構成に関する接続構成情報と、前記サーボ装置の軸数情報と、前記直流電源と前記複数のサーボ装置及び前記第2システムとを接続する配線に関する配線情報と、前記サーボ装置の特性に関する特性情報と、を含む構成情報を取得する取得手段と、
前記構成情報に基づいて、前記インダクタのインダクタンス値であって、前記第2システムに流れる電流の変動を抑制し得るインダクタンス値を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
前記第2システムは、それぞれがインバータ回路及び電動機を備える複数のサーボ装置を含むサブシステムを、前記電力供給路に、複数、並列に接続して構成されることを特徴とする請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記出力手段は、前記直流電力供給システムの回路モデルを用いて、前記インダクタンス値を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記出力手段は、前記第1システムの複数の前記サーボ装置のそれぞれに含まれる前記インバータ回路をモデル化した電流源モデルを用いて、前記インダクタンス値を出力することを特徴とする請求項3に記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記電流源モデルは、前記特性情報に基づいて決まる周波数の正弦波で表される電流を出力することを特徴とする請求項4に記載の設計支援装置。
【請求項6】
前記特性情報と、前記周波数とを関連付けたテーブルを備えることを特徴とする請求項5に記載の設計支援装置。
【請求項7】
前記電流源モデルは、矩形波であって、その基本波の周波数が、前記特性情報に基づいて決まる周波数と同一周波数である矩形波で表される電流を出力することを特徴とする請求項4に記載の設計支援装置。
【請求項8】
前記電流源モデルは、前記インバータ回路に発生するリップル電流の波形で表される電流を出力することを特徴とする請求項4に記載の設計支援装置。
【請求項9】
前記電流源モデルの動作パターンに関する情報の入力を受け付け、
前記出力手段は、入力された前記動作パターンに従って動作する前記電流源モデルを用いて、前記インダクタンス値を出力することを特徴とする請求項4に記載の設計支援装置。
【請求項10】
前記電流源モデルは、半導体素子で構成されるインバータ回路モデルと、モータ回路モデルと、インバータ制御回路モデルを含む過渡解析モデルであることを特徴とする請求項4に記載の設計支援装置。
【請求項11】
前記配線情報は、前記配線の種類及び長さを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の設計支援装置。
【請求項12】
異なる特性を有する前記インダクタに関する情報の入力を受け付け、
前記出力手段は、前記異なる特性を有する前記インダクタのうち、推奨されるインダクタを出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の設計支援装置。
【請求項13】
前記出力手段によって出力される前記インダクタンス値を最適化する最適化手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の設計支援装置。
【請求項14】
前記最適化手段は、前記第2システムに接続される前記配線に流れる電流の変動の抑制を評価する指標に基づいて、前記インダクタンス値を最適化することを特徴とする請求項13に記載の設計支援装置。
【請求項15】
それぞれがインバータ回路及び電動機を備える複数のサーボ装置を含む第1システムと、
直流電源からの直流電力を複数の前記サーボ装置に供給する電力供給路と、
前記電力供給路に対して、前記第1システムと並列に接続され、前記直流電源からの直流電力が供給される第2システムと、
前記電力供給路に接続されるインダクタと、
を含む直流電力供給システムの設計を支援する設計支援方法であって、
前記電力供給路と複数の前記サーボ装置との接続構成に関する接続構成情報と、前記サーボ装置の軸数情報と、前記直流電源と前記複数のサーボ装置及び前記第2システムとを接続する配線に関する配線情報と、前記サーボ装置の特性に関する特性情報と、を含む構成情報を取得するステップと、
前記構成情報に基づいて、前記インダクタのインダクタンス値であって、前記第2システムに流れる電流の変動を抑制し得るインダクタンス値を出力するステップと、
を備えたことを特徴とする設計支援方法。
【請求項16】
それぞれがインバータ回路及び電動機を備える複数のサーボ装置を含む第1システムと、
直流電源からの直流電力を複数の前記サーボ装置に供給する電力供給路と、
前記電力供給路に対して、前記第1システムと並列に接続され、前記直流電源からの直流電力が供給される第2システムと、
前記電力供給路に接続されるインダクタと、
を含む直流電力供給システムの設計を支援する設計支援プログラムであって、
前記電力供給路と複数の前記サーボ装置との接続構成に関する接続構成情報と、前記直流電源と、前記複数のサーボ装置及び前記第2システムとを接続する配線に関する配線情報と、前記サーボ装置の特性に関する特性情報と、を含む構成情報を取得するステップと、
前記構成情報に基づいて、前記インダクタのインダクタンス値であって、前記第2システムに流れる電流の変動を抑制し得るインダクタンス値を出力するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力供給システムの設計を支援する設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの電源から複数の負荷装置に電力が供給される給電システムとして、以下のシステムが知られている。
・複数の負荷装置間を電力ケーブルにてデイジーチェーン接続するとともに、当該複数の負荷装置のなかの1つの負荷装置と電源とを電力ケーブルにて接続したシステム(デイジーチェーン接続システム)。
・電源側から枝分かれするように複数の電力ケーブルを組み合わせた電力供給路にて電源と複数の負荷装置とを接続したシステム(ツリー接続システム)。
【0003】
特許文献1には、1つの直流電源から複数の直流機器に直流電力を供給するDC給電システムにおいて、直流機器への電力供給がオンオフされると、直流機器への印加電圧が急変して過渡状態の印加電圧に発振電圧やサージ電圧等の過渡電圧が発生することにより、直流電源から複数の直流機器へと直流電力を供給する直流供給線路に過渡電圧が重畳され電圧変動が発生し、直流供給線路に接続された他の直流機器の誤動作等が生じる可能性があるため、各直流機器にLPF(Low Pass Filter)を設ける技術が提案されている。
【0004】
しかしながら、このようにDC給電システムに接続された各直流機器にLPFを設けると直流機器が大型化するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-159654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、直流電源から、電力供給路を介して、インバータ回路と電動機を含む複数のサーボ装置と、他システムとに、直流電力を供給する直流電力供給システムにおいて、複数のサーボ装置から他システムに回り込む電流の変動を抑制し、サーボ装置を小型化し得る直流電力供給システムの設計を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、
それぞれがインバータ回路及び電動機を備える複数のサーボ装置を含む第1システムと、
直流電源からの直流電力を複数の前記サーボ装置に供給する電力供給路と、
前記電力供給路に対して、前記第1システムと並列に接続され、前記直流電源からの直流電力が供給される第2システムと、
前記電力供給路に接続されるインダクタと、
を含む直流電力供給システムの設計を支援する設計支援装置であって、
前記電力供給路と複数の前記サーボ装置との接続構成に関する接続構成情報と、前記サーボ装置の軸数情報と、前記直流電源と前記複数のサーボ装置及び前記第2システムとを接続する配線に関する配線情報と、前記サーボ装置の特性に関する特性情報と、を含む構
成情報を取得する取得手段と、
前記構成情報に基づいて、前記インダクタのインダクタンス値であって、前記第2システムに流れる電流の変動を抑制し得るインダクタンス値を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
これによれば、直流電力供給システムの構成情報に基づいて、インダクタのインダクタンス値であって、第2システムに流れる電流の変動を抑制し得るインダクタンス値を出力することができるので、直流電源から第1システム及び第2システムに直流電力を分配するための直流電力供給路に適切なインダクタンス値を有するインダクタを設けた直流電力供給システムを設計することができる。従って、直流電源に接続された複数のサーボ装置のそれぞれに、第1システムから第2システムに回り込む電流の変動を抑制するためのフィルタ装置等を設ける必要がなく、各サーボ装置を小型化することができる。
【0009】
また、本発明において、
前記第2システムは、それぞれがインバータ回路及び電動機を備える複数のサーボ装置を含むサブシステムを、前記電力供給路に、複数、並列に接続して構成されるようにしてもよい。
【0010】
また、本発明において、
前記出力手段は、前記直流電力供給システムの回路モデルを用いて、前記インダクタンス値を出力するようにしてもよい。
【0011】
このような、回路モデルを用いることにより、適切なインダクタンス値を簡易な処理で出力することができる。
【0012】
また、本発明において、
前記出力手段は、前記第1システムの複数の前記サーボ装置のそれぞれに含まれるインバータ回路をモデル化した電流源モデルを用いて、前記インダクタンス値を出力することを特徴とするようにしてもよい。
【0013】
このような、電流源モデルを用いることにより、適切なインダクタンス値を簡易な処理で出力することができる。
【0014】
また、本発明において、
前記電流源モデルは、前記特性情報に基づいて決まる周波数の正弦波で表される電流を出力するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明において、
前記特性情報と、前記周波数とを関連付けたテーブルを備えるようにしてもよい。
【0016】
前記電流源モデルは、矩形波であって、その基本波の周波数が、前記特性情報に基づいて決まる周波数と同一周波数である矩形波で表される電流を出力するようにしてもよい。
【0017】
前記電流源モデルは、前記インバータ回路に発生するリップル電流の波形で表される電流を出力するようにしてもよい。
【0018】
また、本発明において、
前記電流源モデルの動作パターンに関する情報の入力を受け付け、
前記出力手段は、入力された前記動作パターンに従って動作する前記電流源モデルを用いて、前記インダクタンス値を出力するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明において、
前記電流源モデルは、半導体素子で構成されるインバータ回路モデルと、モータ回路モデルと、インバータ制御回路モデルを含む過渡解析モデルであるようにしてもよい。
【0020】
また、本発明において、
前記配線情報は、前記配線の種類及び長さを含むようにしてもよい。
【0021】
また、本発明において、
異なる特性を有する前記インダクタに関する情報の入力を受け付け、
前記出力手段は、前記異なる特性を有する前記インダクタのうち、推奨されるインダクタを出力するようにしてもよい。
【0022】
このようにすれば、ユーザが直流電力供給システムの設計に用いたいインダクタの候補が複数ある場合にも、適切な支援が可能となる。
【0023】
本発明において、
前記出力手段によって出力される前記インダクタンス値を最適化する最適化手段を備えるようにしてもよい。
【0024】
このようにすれば、第2システムに流れる電流を抑制し得るインダクタンス値が限定できない場合でも、最適なインダクタンス値を出力することができる。
【0025】
また、本発明において、
前記最適化手段は、前記第2システムに接続される前記配線に流れる電流の変動の抑制を評価する指標に基づいて、前記インダクタンス値を最適化するようにしてもよい。
【0026】
このようにすれば、第2システムに流れる電流を抑制し得るインダクタンス値が限定できない場合でも、第2システムに接続される配線に流れる電流の変動の抑制を評価する指標に応じた映した最適なインダクタンス値を出力することができる。
【0027】
また、本発明は、
それぞれがインバータ回路及び電動機を備える複数のサーボ装置を含む第1システムと、
直流電源からの直流電力を複数の前記サーボ装置に供給する電力供給路と、
前記電力供給路に対して、前記第1システムと並列に接続され、前記直流電源からの直流電力が供給される第2システムと、
前記電力供給路に接続されるインダクタと、
を含む直流電力供給システムの設計を支援する設計支援方法であって、
前記電力供給路と複数の前記サーボ装置との接続構成に関する接続構成情報と、前記サーボ装置の軸数情報と、前記直流電源と前記複数のサーボ装置及び前記第2システムとを接続する配線に関する配線情報と、前記サーボ装置の特性に関する特性情報と、を含む構成情報を取得するステップと、
前記構成情報に基づいて、前記インダクタのインダクタンス値であって、前記第2システムに流れる電流の変動を抑制し得るインダクタンス値を出力するステップと、
を備えたことを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、
それぞれがインバータ回路及び電動機を備える複数のサーボ装置を含む第1システムと、
直流電源からの直流電力を複数の前記サーボ装置に供給する電力供給路と、
前記電力供給路に対して、前記第1システムと並列に接続され、前記直流電源からの直流電力が供給される第2システムと、
前記電力供給路に接続されるインダクタと、
を含む直流電力供給システムの設計を支援する設計支援プログラムであって、
前記電力供給路と複数の前記サーボ装置との接続構成に関する接続構成情報と、前記直流電源と、前記複数のサーボ装置及び前記第2システムとを接続する配線に関する配線情報と、前記サーボ装置の特性に関する特性情報と、を含む構成情報を取得するステップと、
前記構成情報に基づいて、前記インダクタのインダクタンス値であって、前記第2システムに流れる電流の変動を抑制し得るインダクタンス値を出力するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする設計支援プログラムとして構成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、直流電源から、電力供給路を介して、インバータ回路と電動機を含む複数台のサーボ装置と、他システムとに、直流電力を供給する直流電力供給システムにおいて、複数台のサーボ装置から他システムに回り込む電流の変動を抑制し、サーボ装置を小型化し得る直流電力供給システムの設計を可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施例に係る設計支援装置のブロック図である。
図2】本発明の実施例における直流給電システムの概略構成図である。
図3】本発明の実施例における設計支援処理を説明するフローチャートである。
図4】本発明の実施例にUI例を示す図である。
図5】本発明の実施例における回路モデルを示す図である。
図6】本発明の実施例における回路モデルを示す図である。
図7】本発明の実施例におけるリップル電流を示すグラフである。
図8】本発明の実施例におけるリップル電流源の出力を説明するグラフである。
図9】本発明の実施例におけるリップル電流源を説明する図である。
図10】本発明の実施例におけるパッシブL値とリップル抑制との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1に、本発明の実施例に係る設計支援装置10のブロック図を示す。設計支援装置10は、図2に示すような構成の直流給電システム1(サーボシステム)の設計、とりわけインダクタ60のインダクタンス値(以下では、パッシブL値という。)の設計を支援する装置である。
【0033】
直流給電システム1は、直流電源20から直流電力供給路30により、直流電力が、第1システム40及び第2システム50に分配供給される。そして、直流給電システム1では、直流電力供給路30にインダクタ60が直列に接続されている。
【0034】
直流給電システム1は、第1システム40として、サーボ装置40及びサーボ装置40を備える。サーボ装置41は、第1サーボドライバ40-1及び第1モータ40-2を含む。サーボ装置40は、第2サーボドライバ40-1、第2モータ40-2を含む。図2では、第1システム40を、2台のサーボ装置40及びサーボ装置40
から構成しているが、第1システム40を構成するサーボ装置の台数はこれに限定されず、適宜の複数台のサーボ装置を接続して第1システム40を構成してもよい。
【0035】
直流給電システム1は、さらに第2システム50を備える。第2システム50は、直流電源20から供給された直流電力の電圧を変換する片方向DC/DCコンバータ50-1と、片方向DC/DCコンバータ50-1から供給される直流電力によって駆動されるFAコンポーネント群50-2を含む。図2では、第2システム50を、片方向DC/DCコンバータ50-1と、FAコンポーネント群50-2から構成しているが、第2システム50の構成はこれに限られず、複数の片方向DC/DCコンバータ及びFAコンポーネント群が並列に接続して第2システム50を構成してもよい。また、第2システム50として、電力供給路30に、サーボドライバ及びモータを含むサーボ装置を複数台、適宜の構成で接続して構成されたサブシステムを、複数、並列に接続して構成してもよい。
【0036】
図3を参照して、設計支援処理部15が実行する設計支援処理について説明する。
ステップS1において、設計支援処理部15は、各サーボ装置40(1≦X≦N)に関する構成情報を取得する。構成情報には、設計対象システムの接続構成、軸数、並びに、サーボドライバ、モータ及び配線の種類が含まれる。
【0037】
図4は、設計対象システムの構成情報を取得するためにディスプレイ12に表示さえるUI70の例を示す。ユーザは、このUI70を用いて、サーボドライバ72-1の機種に関する情報、モータ72-2の機種に関する情報、サーボドライバ73-1の機種に関する情報、モータ73-2の機種に関する情報、サーボドライバ72-1とサーボドライバ73-1とを接続する配線75のインピーダンス(インダクタンス及び抵抗)、直流電力供給路74を第2システム(コンデンサ76)と接続する配線77のインピーダンス(インダクタンス及び抵抗)を入力する。
【0038】
ステップS2において、ステップS1において取得した設計対象システムの構成情報に基づいて、設計支援処理部15が、回路モデル80を生成する。
【0039】
図5に設計支援処理部15が生成する回路モデル80を示す。
直流電源81から、サーボドライバ1-モータ1回路82に、直流電力供給路84を通じて直流電力が供給される。サーボドライバ2-モータ2回路83は、サーボドライバ1-モータ1回路82に配線85によってデイジーチェーン接続されている。第2システム86は配線87によって直流電力供給路83に接続されている。また、回路モデル80では、直流電力供給路84の、配線87の接続点とサーボドライバ1-モータ1回路82との間に設計対象であるインダクタモデル88が直列に接続されている。
【0040】
ステップS3では、設計支援処理部15が、パッシブL値を設定する。すなわち、インダクタモデル88のインダクタンスを設定する。
ステップS4では、ステップS3において設定されたパッシブL値に基づいてリップ電流を計算する。具体的には、図5に示した、回路モデル80のサーボドライバモデル81-1及びサーボドライバモデル82-1として、種々の特性を有するリップル電流源を設定し、このようなリップル電流源を有する回路モデル80において、図6に示したように、電流計89を表記した部位における配線87の電流値を算出する。
【0041】
サーボドライバモデル81-1及びサーボドライバモデル82-1としては、種々の特性を有するリップル電流源を設定することができる。例えば、図8に示すように、リップル電流源として、リップル電流の周波数と実効値から決まる単一周波数の正弦波に従って電流が変化する電流源を設定してもよい。このとき、単一周波数は、リップル電流の高調波成分のうち最大の周波数とすることができる。
【0042】
ステップS5では、第2システム86に回り込むリップル電流を算出し、設計支援処理部15は、ステップS5において、算出されたリップル電流が抑制目標値をクリアしているかを判断する。
【0043】
パッシブL値が抑制目標値をクリアしている場合には、設計支援処理部15は、パッシブL値をディスプレイ12に表示(出力)する。
設定されたパッシブL値が抑制目標値をクリアしていない場合には、ステップS3に戻る。そして、パッシブL値を再設定し、リップル電流を算出し、抑制目標値をクリアしているかを判断するというステップS3~S5以降の処理を、パッシブL値が抑制目標値をクリアするまで繰り返す。
【0044】
このような、設計支援処理によれば、直流給電システム1において、第2システム50に生じるリップル電流を抑制するために適切なパッシブL値を算出することにより、直流給電システム1の設計を支援することができる。
【0045】
〔実施例1〕
以下に各図面(上記の適用例で一旦説明した図も含む)を順次参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている具体的構成は、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0046】
(設計支援装置の構成)
図1に、本発明の実施例に係る設計支援装置10のブロック図を示す。設計支援装置10は、図2に示すような構成の直流給電システム1(サーボシステム)の設計を支援する装置である。なお、図2では、直流給電システム1の各構成の接続を1本のケーブル(電力ケーブル)により接続しているように簡易的に図示しているが、実際にはそれぞれのケーブルは2本の回線を有する。そして、2本の回線によって、各構成間の電流(電力)の入出力が実現される。
【0047】
設計支援装置10は、例えば、PC(コンピュータ)やサーバなどの任意の情報処理装置である。設計支援装置10は、キーボードやマウスなどの入力装置11と、ディスプレイ12と、本体部13とを備える。ユーザは、入力装置11に対する操作を行うことによって、直流給電システム1の構成についての情報などを設定(入力)することができる。また、ディスプレイ12は、画像が表示できれば、液晶ディスプレイやプロジェクタなどの任意の表示装置であってよい。
【0048】
本体部13は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)、不揮発性記憶装置(ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなど)17などで構成されたユニットである。この本体部13の不揮発性記憶装置17には、設計支援プログラム16がインストールされている。CPUが設計支援プログラム16をRAM上に読み出して実行することで、本体部13は、UI処理部14および設計支援処理部15として動作する。
【0049】
(直流給電システムの構成について)
UI処理部14及び設計支援処理部15の機能を説明する前に、図2を参照して、設計支援装置10を用いて設計されるシステムである直流給電システム1について説明する。
【0050】
直流給電システム1は、直流電源20から直流電力供給路30により、直流電力が、第1システム40及び第2システム50に分配供給される。そして、直流給電システム1で
は、直流電力供給路30にインダクタ60が直列に接続されている。
直流給電システム1が備える直流電源20の構成は限定されないが、例えば、商用電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換して出力するAC/DCコンバータから構成することができる。
【0051】
また、直流給電システム1は、第1システム40として、サーボ装置40及びサーボ装置40を備える。ここでは、第1システム40として、2つのサーボ装置40及び40を含む例について説明するが、サーボ装置の数は限定されない。サーボ装置40は、第1サーボドライバ40-1、第1モータ40-2を含む。サーボ装置40は、第2サーボドライバ40-1、第2モータ40-2を含む。第1サーボドライバ40-1及び第2サーボドライバ40-1は、入力された直流電力から、第1モータ40-2及び第2モータ40-2がそれぞれ用いる周波数の交流の電力を生成することにより、第1モータ40-2及び第2モータ40-2をそれぞれ制御する。第1モータ40-2及び第2モータ40-2は、電力を力学的エネルギーに変換することにより、負荷機械をそれぞれ駆動する。ここでは、サーボ装置40とサーボ装置40は、デイジーチェーン接続されているが、サーボ装置の接続方法はこれに限られず、ツリー接続されていてもよい。直流給電システム1が本発明の直流電力供給システムに相当する。サーボ装置40及びサーボ装置40が本発明のインバータ回路に相当し、第1モータ40-2及び第2モータ40-2が本発明の電動機に相当する。
【0052】
直流給電システム1は、さらに第2システム50を備える。第2システム50の構成は限定されないが、ここでは、第2システム50は、直流電源20から供給された直流電力の電圧を変換する片方向DC/DCコンバータ50-1と、片方向DC/DCコンバータ50-1から供給される直流電力によって駆動されるFAコンポーネント群502を含む。FAコンポーネント群502は、生産現場において、生産工程を自動化するFA(Factory Automation)の制御システムを構成する種々のコンポーネントを含む。また、第2システム50として、電力供給路30に、サーボドライバ及びモータを含むサーボ装置を複数台、適宜の構成で接続して構成されたサブシステムを、複数、並列に接続して構成してもよい。
【0053】
以上のことを前提に、図1を参照して本実施例に係る設計支援装置10(UI処理部14及び設計支援処理部15)の機能を説明する。なお、以下の説明では、設計対象となっている直流給電システム1のことを設計対象システムと表示する。また、設計対象システム内のサーボ装置40の総数をN(≧2)と表記する。
【0054】
UI処理部14は、入力装置11に対するユーザ操作に応じて、構成情報及び仕様情報を取得するユニットである。このとき、UI処理部14は、ディスプレイ12の画面上に各種画面情報を表示させる。
【0055】
UI処理部14がユーザから取得する構成情報は、設計対象システムの接続構成、軸数、ドライバ種類、モータ種類、配線種類を含む。ここで、接続構成は、サーボ装置40の接続構成であり、デイジーチェーン接続、ツリー接続等を含む。軸数は、サーボドライバの軸数である。配線種類は、直流電源20と各サーボ装置40及び第2システム50を接続する配線の種類(長さ)である。具体的には、この配線種類の入力により、各配線のインダクタンス及び抵抗の情報を取得する。ドライバ種類は、サーボドライバ40-1の種類であり、DC電圧、単相/三相、定格容量を含む。具体的には、このドライバ種類の入力により、スイッチング周波数、サーボドライバのインピーダンス情報を取得する。また、モータ種類は、モータのDC電圧、定格容量、電極数、回転数、トルク等を含む。具体的には、このモータ種類とドライバ種類の入力により、SWリップル電流実効値の情報を取得する。ここでは、設計対象システムの接続構成が本発明の接続構成情報に相当
し、軸数が本発明の軸数情報に相当する。また、ドライバ種類及びモータ種類が本発明の特性情報に相当し、配線種類が本発明の配線情報に相当する。また、UI処理部14が本発明の取得手段に相当する。
なお、第2システム50に接続される配線のインダクタンス及び抵抗、総容量を、UI処理部14が取得するようにしてもよい。
【0056】
(設計支援処理について)
図3を参照して、設計支援処理部15が実行する設計支援処理について説明する。図3は、設計支援方法のフローチャートを示す。本実施例では、設計支援処理とは、直流給電システム1におけるインダクタ60のインダクタンス値(以下では、パッシブL値という。)の設計を支援する処理である。
【0057】
ステップS1において、設計支援処理部15は、各サーボ装置40(1≦X≦N)に関する構成情報を取得する。構成情報には、設計対象システムの接続構成、軸数、並びに、サーボドライバ、モータ及び配線の種類が含まれる。これらの構成情報は後述するUIを通じたユーザ入力によって取得してもよいし、不揮発性記憶装置17に予め記憶された構成情報を取得してもよい。
【0058】
図4に、UI処理部14によって生成され、ディスプレイ12に表示され、ユーザから入力装置11を用いた入力を通じて、設計対象システムの構成情報を取得するためのUI70の例を示す。ここでは、軸数が2、接続構成がデイジーチェーン接続であることを、別のUI等により設計支援処理部15が取得している。UI70に表示される設計対象システムでは、直流電源71が、直流電力供給路74によって、サーボ装置であるサーボドライバ72-1及びモータ72-2に接続されている。また、この設計対象システムは、サーボ装置であるサーボドライバ73-1及びモータ73-2を含み、サーボドライバ72-1とサーボドライバ73-1は配線75によりデイジーチェーン接続されている。また、この設計対象システムでは、第2システムがコンデンサ76で表現され、配線77によって、直流電力供給路74に接続されている。
【0059】
ユーザは、ディスプレイ12に表示された、サーボドライバ72-1に対応する矩形を指定することにより、サーボドライバ72-1の機種に関する情報を、サーボドライバ機種Aとして、入力することができる。また、ユーザは、ディスプレイ12に表示された、モータ72-2に対応する交流電源の電気記号を指定することにより、モータ72-2の機種に関する情報を、モータ機種Xとして、入力することができる。同様に、ユーザは、サーボドライバ73-1の機種に関する情報を、サーボドライバ機種Bとして、モータ73-2の機種に関する情報をモータ機種Yとして、入力することができる。また、サーボドライバ72-1とサーボドライバ73-1とを接続する配線75が配線1として指示されており、インピーダンスの電気記号75aを指定することにより、配線75のインピーダンス(インダクタンス及び抵抗)を配線種類Z3として、入力することができる。また、直流電力供給路74を第2システム(コンデンサ76)と接続する配線77が配線2として指示されており、インピーダンスの電気記号77aを指定することにより、配線77のインピーダンス(インダクタンス及び抵抗)を配線種類Z6として、入力することができる。Lと表示された矩形の記号は、設計支援処理によってその設計の対象となるインダクタ78を示している。後述するように、インダクタ78を指定することにより、インダクタの仕様、インダクタンス値を設定できるようにしてもよい。
【0060】
図3のフローチャートに戻って、設計支援処理の説明を続ける。
ステップS2において、ステップS1において取得した設計対象システムの構成情報に基づいて、設計支援処理部15が、回路モデル80を生成する。
【0061】
図5に設計支援処理部15が生成する回路モデル80を示す。
直流電源81から、サーボドライバ1-モータ1回路82に、直流電力供給路84を通じて直流電力が供給される。サーボドライバ2-モータ2回路83は、サーボドライバ1-モータ1回路82に配線85によってデイジーチェーン接続されている。第2システム86は配線87によって直流電力供給路83に接続されている。また、回路モデル80では、直流電力供給路84の、配線87の接続点とサーボドライバ1-モータ1回路82との間に設計対象であるインダクタモデル88が直列に接続されている。回路モデル80が本発明の回路モデルに相当する。
【0062】
サーボドライバ1-モータ1回路82は、ユーザが、サーボドライバ機種A及びモータ機種Xとして入力した情報に基づいて生成されたサーボドライバとこのサーボドライバによって制御されるモータをモデル化した回路である。同様に、サーボドライバ2-モータ2回路83は、ユーザが、サーボドライバ機種B及びモータ機種Yとして入力した情報に基づいて生成されたサーボドライバと、このサーボドライバによって制御されるモータをモデル化した回路である。また、第2システム86は、設計対象システムにおける第2システム50をモデル化した回路である。
【0063】
サーボドライバ1-モータ1回路82は、サーボドライバモデル82-1と、インピーダンスZ1と、インピーダンスZ2を含む。サーボドライバモデル82-1は、第1サーボドライバ40-1をモデル化したものであり、インピーダンスZ1は直流電力供給路84に直列に接続される配線のインピーダンスとしてサーボ装置40のインピーダンスを等価的に表現したものであり、インピーダンスZ2は、サーボドライバモデル82-1に並列に接続されるインピーダンスとしてサーボ装置40のインピーダンスを等価的に表現したものである。
【0064】
同様に、サーボドライバ2-モータ2回路83は、サーボドライバモデル83-1と、インピーダンスZ4と、インピーダンスZ5を含む。サーボドライバモデル83-1は、第2サーボドライバ40-1をモデル化したものであり、インピーダンスZ3は直流電力供給路84とサーボ装置40とを接続する配線85のインピーダンスを等価的に表現したものであり、インピーダンスZ4は、配線85に直列に接続されるインピーダンスとしてサーボ装置40のインピーダンスを等価的に表現したものであり、インピーダンスZ5は、サーボドライバモデル83-1に並列に接続されるインピーダンスとしてサーボ装置40のインピーダンスを等価的に表現したものである。
第2システム86には、直流電力供給路84に接続される配線87のインピーダンスを等価的に表現したインピーダンスZ6が含まれる。
【0065】
図3のフローチャートに戻る。
ステップS3では、設計支援処理部15が、パッシブL値を設定する。すなわち、インダクタモデル88のインダクタンスを設定する。パッシブL値としては、任意の値を設定できるが、ここでは、例えば、パッシブL値を30μHと設定する。
【0066】
ステップS4では、ステップS3において設定されたパッシブL値に基づいてリップ電流を計算する。具体的には、図5に示した、回路モデル80のサーボドライバモデル81-1及びサーボドライバモデル82-1として、種々の特性を有するリップル電流源を設定し、このようなリップル電流源を有する回路モデル80において、図6に示したように、電流計89を表記した部位における配線87の電流値を算出する。図7は、このようにして算出された電流値の例を示し、リップル電流源からの出力の変動により、第2システム50に回り込む電流値に変動が生じている。ここでは、リップル電流源が本発明の電流源モデルに相当する。
【0067】
サーボドライバモデル81-1及びサーボドライバモデル82-1としては、種々の特性を有するリップル電流源を設定することができる。例えば、リップル電流源として、電流が、商用電力系統の周波数の正弦波に従って変化する交流電流源を設定してもよい。また、図8に示すように、リップル電流源として、リップル電流の周波数と実効値から決まる単一周波数の正弦波に従って電流が変化する電流源を設定してもよい。このとき、単一周波数は、リップル電流の高調波成分のうち最大の周波数とすることができる。このようなリップル電流の周波数と実効値は、サーボドライバとモータとの組み合わせによって決まるので、ステップS1において構成情報として取得した、サーボドライバとモータの特性情報に基づいて決定することができる。また、不揮発性記憶装置17の所定領域に、サーボドライバとモータの特性情報とリップル電流源の周波数と実効値とを関連付けたテーブルを記憶しておき、このテーブルに基づいてリップル電流源の周波数と実効値を導出してもよい。また、図9(A)に示すように、リップル電流源として、矩形波であって、その基本波の周波数が、サーボドライバとモータの特性情報に基づいて決まる周波数と、同一周波数であるような矩形波を出力する電流源を設定してもよい。また、図9(B)に示すように、リップル電流源として、リップル電流の時間波形を出力する電流源を設定してもよい。また、リップル電流源として、図9(C)に示すようなサーボドライバに含まれるインバータの過渡解析モデルを設定してもよい。ここで、過渡解析モデルとは、例えば、半導体素子で構成されるインバータ回路モデルと、モータ回路モデルと、インバータ制御回路モデルを含んで構成される過渡解析モデルである。また、リップル電流源として、ユーザが入力した動作パターンに従って動作するモデルを設定してもよい。
【0068】
ステップS5では、上述のような、リップル電流源を設定し、他システムに回り込むリップル電流を算出し、設計支援処理部15は、ステップS5において、算出されたリップル電流が抑制目標値をクリアしているかを判断する。図10は、パッシブL値(μH)を横軸にとり、電流抑制率(%)を縦軸にとったグラフを示し、折れ線は、設計支援処理部15におけるシミュレーションによって得られた、パッシブL値を変化させた場合の、リップル電流の電流抑制率の変化を示す。図10では、リップル抑制目標値を一点鎖線で示している。ここでは、電流抑制率4.5%がリップル抑制目標値として設定されている。
例えば、上述のように、パッシブL値を30μHと設定した場合には、図10から分かるように、このときの電流抑制率は、リップル抑制目標値である4.5%以下である。
【0069】
このように、パッシブL値が抑制目標値をクリアしている場合には、ステップS6において、設計支援処理部15は、パッシブL値をディスプレイ12に表示(出力)する。ここでは、設計支援処理部15が本発明の出力手段に相当する。
一方、設定されたパッシブL値が抑制目標値をクリアしていない場合には、ステップS3に戻る。そして、パッシブL値を再設定し、リップル電流を算出し、抑制目標値をクリアしているかを判断するというステップS3~S5以降の処理を、パッシブL値が抑制目標値をクリアするまで繰り返す。
【0070】
このような、設計支援処理によれば、直流給電システム1において、他システムに生じるリップル電流を抑制するために適切なパッシブL値を算出することにより、直流給電システム1の設計を支援することができる。
【0071】
(変形例)
図3に示した設計支援処理では、ステップS3において設定したパッシブL値が抑制目標値をクリアしている場合には、そのパッシブL値を出力している。図10に示したように、特定の構成を有する直流給電システム1に対して、リップル抑制目標値をクリアできるパッシブL値がある範囲にわたって存在する場合には、出力されるパッシブL値をさらに最適化する処理を実行してもよい。具体的には、ステップS3において適宜に設定したパッシブL値に対して、ステップS5においてリップル抑制目標値をクリアした場合に、
ステップS6にただちに進んでパッシブL値を出力するのではなく、ステップS3に戻ってパッシブL値を再設定し、ステップS4、S5の処理を繰り返す。適宜の値だけ変化させてパッシブL値を設定し、リップル抑制目標値をクリアする複数のパッシブL値の中から最も小さいものを推奨値として、ステップS6においてディスプレイ12に表示(出力)する。例えば、図10に示すようにパッシブL値が変化する直流給電システム1において、リップル抑制目標値として4.5%が設定されている場合には、リップル抑制目標値をクリアするパッシブL値のうち最小の26μHを推奨値として出力する。このとき、設計支援処理部15が本発明の最適化手段に相当する。
【0072】
また、ステップS3において、パッシブL値を設定する際に、ユーザが入力装置11を用いて入力したパッシブL値を設定するようにしてもよい。ユーザが入力したパッシブL値が、リプル抑制目標値をクリアしている場合には、そのパッシブL値をディスプレイ12に表示することにより、ユーザが直流給電システム1の設計に用いようとするインダクタの適否の判断を支援することができる。ユーザに複数のパッシブL値を候補として入力させ、その候補の中からリップル抑制目標値をクリアするパッシブL値をディスプレイ12に表示する、又は、その候補の中から推奨値となるパッシブL値をディスプレイ12に表示するようにしてもよい。このとき、ユーザはパッシブL値を直接入力してもよいし、インダクタの製品名、型式、仕様等の適宜の情報を入力させ、設計支援処理部15が対応するパッシブL値に変換して処理を実行するようにしてもよい。このとき、設計支援処理部15は、抑制目標値をクリアするパッシブL値を出力するのではなく、このパッシブL値に対応するインダクタの製品名等を推奨インダクタとして出力する。また、UI処理部14が、パッシブL値、インダクタの製品名、型式、仕様等の選択肢を表示して、ユーザに選択させるUIを備えてもよい。
【0073】
また、リップル抑制目標値について、ユーザが入力装置11を用いて設定できるようにしてもよい。
【0074】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本開示の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<付記1>
それぞれがインバータ回路(40-1、40-1)及び電動機(40-2、40-2)を備える複数のサーボ装置(40、40)を含む第1システム(40)と、
直流電源(20)からの直流電力を複数の前記サーボ装置に供給する電力供給路(30)と、
前記電力供給路(30)に対して、前記第1システム(40)と並列に接続され、前記直流電源(20)からの直流電力が供給される第2システム(50)と、
前記電力供給路(30)に接続されるインダクタ(60)と、
を含む直流電力供給システム(1)の設計を支援する設計支援装置(10)であって、
前記電力供給路(30)と複数の前記サーボ装置(40、40)との接続構成に関する接続構成情報と、前記サーボ装置(40、40)の軸数情報と、前記直流電源(20)と前記複数のサーボ装置(40、40)及び前記第2システムとを接続する配線に関する配線情報と、前記サーボ装置(40、40)の特性に関する特性情報と、を含む構成情報を取得する取得手段(14)と、
前記構成情報に基づいて、前記インダクタ(60)のインダクタンス値であって、前記第2システム(50)に流れる電流の変動を抑制し得るインダクタンス値を出力する出力手段(15)と、
を備えたことを特徴とする設計支援装置(10)。
<付記2>
前記第2システム(50)は、それぞれがインバータ回路及び電動機を備える複数のサーボ装置を含むサブシステムを、前記電力供給路に、複数、並列に接続して構成されるこ
とを特徴とする付記1に記載の設計支援装置(10)。
<付記3>
前記出力手段(15)は、前記直流電力供給システム(1)の回路モデル(80)を用いて、前記インダクタンス値を出力することを特徴とする付記1又は2に記載の設計支援装置(10)。
<付記4>
前記出力手段(15)は、前記第1システムの複数の前記サーボ装置(40、40)のそれぞれに含まれる前記インバータ回路(40-1、40-1)をモデル化した電流源モデル(82-1、83-1)を用いて、前記インダクタンス値を出力することを特徴とする付記3に記載の設計支援装置(10)。
<付記5>
前記電流源モデル(82-1、83-1)は、前記特性情報に基づいて決まる周波数の正弦波で表される電流を出力することを特徴とする付記4に記載の設計支援装置(10)。
<付記6>
前記特性情報と、前記周波数とを関連付けたテーブルを備えることを特徴とする付記5に記載の設計支援装置(10)。
<付記7>
前記電流源モデル(82-1、83-1)は、矩形波であって、その基本波の周波数が、前記特性情報に基づいて決まる周波数と同一周波数である矩形波で表される電流を出力することを特徴とする付記4に記載の設計支援装置(10)。
<付記8>
前記電流源モデル(82-1、83-1)は、前記インバータ回路(40-1、40-1)に発生するリップル電流の波形で表される電流を出力することを特徴とする付記4に記載の設計支援装置(10)。
<付記9>
前記電流源モデル(82-1、83-1)の動作パターンに関する情報の入力を受け付け、
前記出力手段(15)は、入力された前記動作パターンに従って動作する前記電流源モデル(82-1、83-1)を用いて、前記インダクタンス値を出力することを特徴とする付記4に記載の設計支援装置(10)。
<付記10>
前記電流源モデル(82-1、83-1)は、半導体素子で構成されるインバータ回路モデルと、モータ回路モデルと、インバータ制御回路モデルを含む過渡解析モデルであることを特徴とする付記4に記載の設計支援装置(10)。
<付記11>
前記配線情報は、前記配線の種類及び長さを含むことを特徴とする付記1乃至10のいずれか1項に記載の設計支援装置(10)。
<付記12>
異なる特性を有する前記インダクタ(60)に関する情報の入力を受け付け、
前記出力手段(15)は、前記異なる特性を有する前記インダクタのうち、推奨されるインダクタ(60)を出力することを特徴とする付記1乃至11のいずれか1項に記載の設計支援装置(10)。
<付記13>
前記出力手段(15)によって出力される前記インダクタンス値を最適化する最適化手段(15)を備えることを特徴とする付記1乃至12のいずれか1項に記載の設計支援装置(10)。
<付記14>
前記最適化手段(15)は、前記第2システム(50)に接続される前記配線に流れる電流の変動の抑制を評価する指標に基づいて、前記インダクタンス値を最適化することを
特徴とする付記13に記載の設計支援装置(10)。
<付記15>
それぞれがインバータ回路(40-1、40-1)及び電動機(40-2、40-2)を備える複数のサーボ装置(40、40)を含む第1システム(40)と、
直流電源(20)からの直流電力を複数の前記サーボ装置(40、40)に供給する電力供給路(30)と、
前記電力供給路(30)に対して、前記第1システム(40)と並列に接続され、前記直流電源(20)からの直流電力が供給される第2システム(50)と、
前記電力供給路(30)に接続されるインダクタ(60)と、
を含む直流電力供給システム(1)の設計を支援する設計支援方法であって、
前記電力供給路と複数の前記サーボ装置との接続構成に関する接続構成情報と、前記サーボ装置の軸数情報と、前記直流電源と前記複数のサーボ装置及び前記第2システムとを接続する配線に関する配線情報と、前記サーボ装置の特性に関する特性情報と、を含む構成情報を取得するステップと、
前記構成情報に基づいて、前記インダクタ(60)のインダクタンス値であって、前記第2システムに流れる電流の変動を抑制し得るインダクタンス値を出力するステップと、を備えたことを特徴とする設計支援方法。
<付記16>
それぞれがインバータ回路(40-1、40-1)及び電動機(40-2、40-2)を備える複数のサーボ装置(40、40)を含む第1システム(40)と、
直流電源(20)からの直流電力を複数の前記サーボ装置(40、40)に供給する電力供給路(30)と、
前記電力供給路(30)に対して、前記第1システム(40)と並列に接続され、前記直流電源(20)からの直流電力が供給される第2システム(50)と、
前記電力供給路(30)に接続されるインダクタ(60)と、
を含む直流電力供給システム(1)の設計を支援する設計支援プログラム(16)であって、
前記電力供給路と複数の前記サーボ装置との接続構成に関する接続構成情報と、前記サーボ装置の軸数情報と、前記直流電源と前記複数のサーボ装置及び前記第2システムとを接続する配線に関する配線情報と、前記サーボ装置の特性に関する特性情報と、を含む構成情報を取得するステップと、
前記構成情報に基づいて、前記インダクタ(60)のインダクタンス値であって、前記第2システムに流れる電流の変動を抑制し得るインダクタンス値を出力するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする設計支援プログラム(16)。
【符号の説明】
【0075】
1・・・直流給電システム
10・・・設計支援装置
14・・・UI処理部
15・・・設計支援処理部
30・・・直流電力供給路
40・・・第1システム
40-1・・・第1サーボドライバ
40-2・・・第1モータ
40-1・・・第2サーボドライバ
40-2・・・第2モータ
50・・・第2システム
60・・・インダクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10