(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130870
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】評価方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/00 20060101AFI20240920BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01J1/00 G
G01J1/42 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040815
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 洋邦
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 克典
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA02
2G065AA13
2G065AB09
2G065AB28
2G065BA01
2G065BB25
2G065BC13
2G065DA05
(57)【要約】
【課題】不快グレアの評価精度を高めることができる評価方法を提供する。
【解決手段】評価方法は、発光部を有する照明器具で照明される照明環境における不快グレアを評価する。評価方法は、照明環境を観測する位置および照明器具に関する情報を受け付ける。評価方法は、受け付けた情報に基づいて、発光部の輝度を示す光源輝度Lと、背景の輝度を示す背景輝度L
bと、発光部の大きさを示す立体角ωと、位置指数Pと、メラノプシン細胞の刺激量Melと、S錐体の刺激量Sとをそれぞれ計算する。評価方法は、計算した光源輝度L、背景輝度L
b、立体角ω、位置指数P、刺激量Melおよび刺激量Sに基づいて、不快グレアの評価値Gを出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を有する照明器具で照明される照明環境における不快グレアを評価する評価方法であって、
前記照明環境を観測する位置および前記照明器具に関する情報を受け付け、
受け付けた前記情報に基づいて、前記発光部の輝度を示す光源輝度Lと、背景の輝度を示す背景輝度Lbと、前記発光部の大きさを示す立体角ωと、位置指数Pと、メラノプシン細胞の刺激量Melと、S錐体の刺激量Sとをそれぞれ計算し、
計算した前記光源輝度L、前記背景輝度Lb、前記立体角ω、前記位置指数P、前記刺激量Melおよび前記刺激量Sに基づいて、前記不快グレアの評価値Gを出力する
評価方法。
【請求項2】
前記評価値Gは、α,β,γを任意の数値としたとき、下記の数式で表される
請求項1に記載の評価方法。
【数1】
【請求項3】
前記刺激量Melは、メラノプシン細胞の分光感度に基づいて計算される
請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記刺激量Sは、S錐体の分光感度に基づいて計算される
請求項1または2に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具が照明する照明環境の不快グレアを数値化して評価する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、例えば、照明器具から照射される光の分光分布によっては、不快グレアを的確に評価できない場合があり、評価精度の向上について改善の余地がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、不快グレアの評価精度を向上させる評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る評価方法は、発光部を有する照明器具で照明される照明環境における不快グレアを評価する。評価方法は、照明環境を観測する位置および照明器具に関する情報を受け付ける。評価方法は、受け付けた情報に基づいて、発光部の輝度を示す光源輝度Lと、背景の輝度を示す背景輝度Lbと、発光部の大きさを示す立体角ωと、位置指数Pと、メラノプシン細胞の刺激量Melと、S錐体の刺激量Sとをそれぞれ計算する。評価方法は、計算した光源輝度L、背景輝度Lb、立体角ω、位置指数P、刺激量Melおよび刺激量Sに基づいて、不快グレアの評価値Gを出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る評価方法によれば、不快グレアの評価精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る評価システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、不快グレアの評価に使用した照明条件を示す図である。
【
図3】
図3は、不快グレアの評価に使用した光の分光分布を示す図である。
【
図4】
図4は、被験者実験の結果と評価式との相関を比較する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る評価システムが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施形態に係る評価方法は、発光部41を有する照明器具40で照明される照明環境50における不快グレアを評価する。評価方法は、照明環境50を観測する位置および照明器具40に関する情報を受け付ける。評価方法は、受け付けた情報に基づいて、発光部41の輝度を示す光源輝度Lと、背景の輝度を示す背景輝度Lbと、発光部41の大きさを示す立体角ωと、位置指数Pと、メラノプシン細胞の刺激量Melと、S錐体の刺激量Sとをそれぞれ計算する。評価方法は、計算した光源輝度L、背景輝度Lb、立体角ω、位置指数P、刺激量Melおよび刺激量Sに基づいて、不快グレアの評価値Gを出力する。
【0010】
以下に説明する実施形態に係る評価方法において、評価値Gは、α,β,γを任意の数値としたとき、下記の数式で表される。
【0011】
【0012】
以下に説明する実施形態に係る評価方法において、刺激量Melは、メラノプシン細胞の分光感度に基づいて計算される。
【0013】
以下に説明する実施形態に係る評価方法において、刺激量Sは、S錐体の分光感度に基づいて計算される。
【0014】
以下、図面を参照して、実施形態に係る評価方法を詳細に説明する。なお、以下の実施形態で説明する評価方法は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。
【0015】
[実施形態]
まず、
図1を用いて、実施形態に係る評価方法の適用例を説明する。
図1は、実施形態に係る評価システムの一例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、実施形態に係る評価システム1は、評価装置10と、入力部20と、センサ30とを有する。評価装置10は、照明器具40が照明する照明環境50における不快グレアを評価する。
【0017】
照明器具40は、発光部41を備える。照明器具40は、例えば、天井面に取り付けられる、いわゆるベースライトである。
【0018】
発光部41は、電源(不図示)から供給される電力によって駆動され、下方に向けて光を照射する。発光部41は、少なくとも1種類以上の発光素子を有する。発光部41は、分光分布が異なる2種類以上、例えば4種類以上の発光素子を有する。
【0019】
発光部41は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の半導体発光素子を有する。LEDには、例えば、窒素ガリウム系LEDであるInGaN系LEDが採用可能である。なお、発光素子は、例えば蛍光体を有してもよい。また、発光素子は、レーザ光を放出してもよい。
【0020】
発光部41は、例えば、発光色が赤色の発光素子を有してもよい。発光部41は、例えば、発光色が緑色の発光素子を有してもよい。発光部41は、例えば、発光色が青色の発光素子を有してもよい。さらに、発光部41は、例えば、発光色がシアン色(青緑色)の発光素子を有してもよい。
【0021】
なお、照明器具40は、天井面に限らず、例えば、壁面などの任意の取り付け対象に取り付けられてよい。また、照明器具40は、ベースライトに限定されず、例えばシーリングライト、ダウンライト、スポットライトなど、発光部41を有する任意の形態の照明装置であってもよい。また、照明器具40は、例えばスタンドライトや携帯ライトなど、搬送可能なものであってもよい。
【0022】
照明環境50には、複数の照明器具40が配置されていてもよい。照明器具40は、例えば、オフィスや店舗、施設などの内部を照明する屋内照明であってもよく、店舗や施設などの周囲を照明する屋外照明であってもよい。すなわち、照明環境50は、閉鎖空間に限らず、開放空間であってもよい。実施形態に係る評価システム1は、照明器具40の発光部41から照射される光が届く範囲であれば適用可能である。
【0023】
入力部20は、評価装置10の操作者の操作入力を受け付ける。入力部20は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等の入力装置により実現される。
【0024】
入力部20には、照明環境50を観測する位置および/または照明器具40に関する情報が入力される。入力部20は、例えばタッチパネルの機能を有する端末装置等が有している場合、端末装置の表示画面を介して各種情報が入力される。また、入力部20は、音声認識の機能により各種情報が入力されてもよい。
【0025】
入力部20には、例えば、観測位置の三次元の座標情報が入力される。また、入力部20には、例えば、照明器具40の属性および位置、発光部41の大きさ、発光部41から照射される光の分光分布などに関する情報が入力される。照明器具40の属性に関する情報とは、例えば、配光データ、または配光角(水平角、鉛直角)における輝度などである。また、照明器具40の位置に関する情報とは、例えば、照明器具40が配置される三次元の座標情報である。また、発光部41の大きさに関する情報とは、例えば、照明器具40の発光している部分の面積であってもよく、照明器具40から考えられる任意の面積であってもよい。また、分光分布に関する情報とは、例えば、照明器具40から照射される分光放射輝度および/または分光放射照度に関する情報であってもよく、相対分光放射輝度および/または相対分光放射照度に関する情報であってもよい。
【0026】
センサ30は、発光部41から照射される光に関する情報を検知する。センサ30は、例えば、輝度センサ、画像センサ、分光分布を測定できるセンサ(例えば、分光放射輝度および/または分光放射照度を測定できるセンサ、二次元のスペクトル画像を測定できるセンサなど)であってもよい。なお、センサ30は、複数の情報を測定可能であってもよい。センサ30が検知した情報は、検知方式および/または検知が同じであってもよく、異なってもよい。
【0027】
センサ30が検知した情報は、評価装置10の制御部13に出力される。センサ30が検知可能な情報は、入力部20への操作入力が不要となる。
【0028】
センサ30は、照明器具40に接続または内蔵されていてもよい。かかる場合、センサ30が検知した情報は、照明器具40を介して評価装置10に出力されてもよい。
【0029】
評価装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。通信部11は、インターネットやWiFi(登録商標)等のネットワークを介して各種機器と通信を行う通信モジュールである。通信部11は、例えば、外部サーバやスマートフォン、タブレット端末と通信を行うことが可能である。本実施形態において、通信部11は、有線または無線の少なくとも一方の通信方式を用いることができる。
【0030】
記憶部12は、制御部13の各種制御を実現するためのプログラムを記憶する。記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0031】
記憶部12は、例えば、メラノプシン細胞の分光感度、S錐体の分光感度を記憶してもよい。メラノプシン細胞の分光感度には、例えば、CIE(CIE System for Metrology of Optical Radiation for ipRGC-Influenced Responses to Light, CIE S026/E:2018)に記載されているデータを使用することができる。また、S錐体の分光感度には、例えば、CIE(Fundamental Chromaticity Diagram with Physiologically Significant Axes-Part 1, CIE 170-1:2006またはFundamental Chromaticity Diagram with Physiologically Significant Axes-Part 2, CIE 170-2:2015)に記載されているデータを使用することができる。
【0032】
記憶部12は、例えば、位置指数Pを記憶してもよい。位置指数Pには、例えば、CIE 117-1995(DISCOMFORT GLARE IN INTERIOR LIGHTING)に記載されている表形式のデータを使用することができる。
【0033】
また、記憶部12は、出力データ121を記憶する。出力データ121は、例えば、制御部13で出力される不快グレアの評価値を含む。出力データ121は、不快グレアの評価値を、前提として使用した複数のパラメータと対応付けて出力したログデータであってもよい。
【0034】
制御部13は、各種の情報処理を実行する演算装置である。制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等によって、内部メモリに記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部13は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部13は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部13は、各種のプログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。
【0035】
制御部13は、受付部131と、計算部132と、出力部133とを有する。
【0036】
受付部131は、照明環境を観測する位置および照明器具に関する情報を受け付ける。受付部131は、例えば、入力部20および/またはセンサ30から出力された情報を取得する。
【0037】
計算部132は、受付部131が受け付けた情報に基づき、不快グレアの評価値を出力するに当たり、必要となるパラメータを計算する。具体的には、発光部41の輝度を示す光源輝度L[cd/m2]と、背景の輝度を示す背景輝度Lb[cd/m2]と、発光部41の大きさを示す立体角ω[sr]、発光部41の位置を示す位置指数P、メラノプシン細胞の刺激量MelおよびS錐体の刺激量Sを計算する。
【0038】
光源輝度Lは、例えば、配光データと発光部41の大きさから計算することができる。また、立体角ωは、例えば、発光部41の大きさと、照明器具40の位置と観察位置との距離から計算することができる。位置指数Pは、例えば、観察位置と照明器具40との位置関係から計算することができる。刺激量Melおよび刺激量Sは、例えば、発光部41の分光分布から計算することができる。
【0039】
出力部133は、不快グレアの評価値を出力する。出力部133は、計算部132で計算した光源輝度L、背景輝度Lb、立体角ω、位置指数P、刺激量Melおよび刺激量Sに基づいて、不快グレアの評価値Gを出力する。出力部133は、評価システム1が有する不図示の表示部に不快グレアの評価値を表示させてもよく、紙などの媒体に印字させてもよい。また、出力部133は、出力した不快グレアの評価値を、出力データ121として記憶部12に記憶させてもよい。
【0040】
従来、不快グレアを評価する指標としては、UGR(Unified Glare Rating)が知られている。下記のように、UGRは、光源輝度L、背景輝度Lb、立体角ωおよび位置指数Pの4つのパラメータによって記述される。
【0041】
【0042】
しかしながら、例えば、発光部41から照射される光の分光分布が可変となる照明器具40を有する場合など、照明環境50によっては、UGRを用いて評価された不快グレアの程度と、被験者による実際の評価とが必ずしも対応していない場合があった。例えば、同じ輝度の光であっても、まぶしいと感じたり、感じなかったりする場合があった。
【0043】
そこで、実施形態に係る評価装置10は、従来のUGRと同じパラメータに、刺激量Melおよび刺激量Sをさらに追加した不快グレアの評価値Gを出力する。具体的には、下記の数式(数3)のように表すことができる。
【0044】
【0045】
上記数式(数3)中、α、β、γは係数であり、それぞれ任意の数値とすることができる。また、刺激量Melおよび刺激量Sは、下記の数式(数4、数5)のようにそれぞれ表すことができる。
【0046】
【0047】
上記数式(数4、数5)中、Smel(λ)はメラノプシン細胞の分光感度、S(λ)(Sは正しくはS・バー(オーバーライン))はS錐体の分光感度、P(λ)は分光放射輝度[W/sr/m2]をそれぞれ示す。
【0048】
このように、刺激量Melおよび刺激量Sを考慮して不快グレアの評価値Gを出力することにより、不快グレアの評価精度を向上することができる。
【0049】
次に、
図2~
図4を用いて、不快グレアの評価値Gと、従来のUGRとの相違についてさらに説明する。
【0050】
図2は、不快グレアの評価に使用した照明条件を示す図である。評価する発光部41の条件(照明条件)は、輝度と色度を固定した状態、すなわちL錐体、M錐体、S錐体の作用量を固定した状態でメラノプシン細胞の刺激量のみを制御する手法(Silent-Substitution法)を用いて、(a)「2700K」と「2700K+」のグループ、(b)「5000K-」と「5000K」と「5000K+」のグループ、(c)「8000K-」と「8000K」と「8000K+」のグループの計8条件を設定した。(d)は、上記した8条件におけるxy色度を示したものである。
【0051】
「2700K」は黒体放射から算出したL、M、S錐体、メラノプシン細胞の刺激量に設定し、「5000K」と「8000K」はCIE昼光から算出したL、M、S錐体、メラノプシン細胞の刺激量に設定した条件(基準条件)である。一方、「2700K+」、「5000K+」、「8000K+」は、各L、M、S錐体の刺激量は「2700K」、「5000K」、「8000K」と同等だが、メラノプシン細胞の刺激量は「2700K」、「5000K」、「8000K」の1.574倍~1.995倍となる条件(+変調条件)である。また、「5000K-」、「8000K-」は、各L、M、S錐体の作用量は「5000K」、「8000K」と同等だが、メラノプシン細胞の刺激量は「5000K」、「8000K」の0.644倍~0.712倍となる条件(-変調条件)である。照明条件は、各相関色温度条件での輝度と色度は同じだが、メラノプシン細胞の刺激量が異なる条件となる。
【0052】
図3は、不快グレアの評価に使用した光の分光分布を示す図である。(a)、(b)はそれぞれ、
図2で説明した8つの照明条件に対応しており、発光部41の輝度のみを変更したものである。具体的には、(a-1)、(b-1)では、「2700K」の光を、(a-2)、(b-2)では、「2700K+」の光を、(a-3)、(b-3)では、「5000K-」の光を、(a-4)、(b-4)では、「5000K」の光を、(a-5)、(b-5)では、「5000K+」の光を、(a-6)、(b-6)では、「8000K-」の光を、(a-7)、(b-7)では、「8000K」の光を、(a-8)、(b-8)では、「8000K+」の光を、それぞれ使用した。
【0053】
図4は、被験者実験の結果と評価式との相関を比較する図である。(a)は、UGRとの相関、(b)は、評価値Gとの相関をそれぞれ示している。
図4中、(a-1)~(a-8)、(b-1)~(b-8)は、
図3に示す(a-1)~(a-8)、(b-1)~(b-8)にそれぞれ対応している。
【0054】
図4(a)に示すように、(a-1)~(a-8)の光は、UGRがほぼ同じであるにもかかわらず、被験者の評価結果が相違した。同様に、(b-1)~(b-8)の光は、UGRがほぼ同じであるにもかかわらず、被験者の評価結果が相違した。また、(a)における相関係数は0.60であり、UGRは、必ずしも不快グレアの評価を適切に反映していないことが示唆された。
【0055】
これに対し、
図4(b)における相関係数は0.958であった。この結果より、評価値Gの方がUGRよりも被験者の評価結果に対して高い相関が示された。このことから、上記した数式(数3)を用いて得られる評価値Gは、照明環境での不快グレアを精度よく評価していることが明らかとなった。
【0056】
次に、
図5を用いて、実施形態に係る評価システム1が実行する処理手順の一例について説明する。
図5は、実施形態に係る評価システムが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0057】
図5に示すように、評価システム1は、受付部131が計算部132での計算に必要な情報を受け付けたか否かを判定する(ステップS11)。情報を受け付けていない場合(ステップS11:No)、評価システム1は、処理を終了する。
【0058】
評価システム1は、受付部131が所定の情報を受け付けた場合(ステップS11:Yes)、計算部132は、光源輝度Lと、背景輝度Lbと、立体角ωと、位置指数Pと、メラノプシン細胞の刺激量Melと、S錐体の刺激量Sとを計算する(ステップS12)。そして、出力部133は、計算部132で計算した光源輝度L、背景輝度Lb、立体角ω、位置指数P、刺激量Melおよび刺激量Sを用いて不快グレアの評価値Gを出力する(ステップS13)。
【0059】
<変形例>
なお、上記実施形態では、記憶部12および制御部13は評価装置10が有しているが、記憶部12および制御部13のうち、少なくとも一部は、評価装置10とは異なる1または2以上の部材として構成されてもよい。また、入力部20およびセンサ30のうち、少なくとも1つは、評価システム1が有していなくてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、出力部133は計算部132が計算した結果に基づいて評価値Gを出力するとして説明したが、受付部131が受け付けた情報の一部を利用して出力してもよい。
【0061】
このように、実施形態に係る評価方法によれば、不快グレアの評価精度を向上することができる。また、メラノプシン細胞の刺激量が少ない、つまりまぶしすぎない光を作ることも可能となる。例えば、エネルギー効率がよい光ができたとしても、メラノプシン細胞の刺激量が大きい光の場合、まぶしくなる恐れがあるが、上記した不快グレアの評価値Gを用いることで、これを評価し、不快な光を防ぐことができる。また、例えば輝度や色温度の変化を伴わずに、用途に適した光を作成することも可能となる。
【0062】
以上説明したように、実施形態に係る評価方法は、発光部41を有する照明器具40で照明される照明環境50における不快グレアを評価する。評価方法は、照明環境50を観測する位置および照明器具40に関する情報を受け付ける。評価方法は、受け付けた情報に基づいて、発光部41の輝度を示す光源輝度Lと、背景の輝度を示す背景輝度Lbと、発光部41の大きさを示す立体角ωと、位置指数Pと、メラノプシン細胞の刺激量Melと、S錐体の刺激量Sとをそれぞれ計算する。評価方法は、計算した光源輝度L、背景輝度Lb、立体角ω、位置指数P、刺激量Melおよび刺激量Sに基づいて、不快グレアの評価値Gを出力する。これにより、不快グレアの評価精度を高めることができる。
【0063】
また、実施形態に係る照明方法において、評価値Gは、α,β,γを任意の数値としたとき、下記の数式で表される。これにより、不快グレアの評価精度を高めることができる。
【0064】
【0065】
また、実施形態に係る評価方法において、刺激量Melは、メラノプシン細胞の分光感度に基づいて計算される。これにより、不快グレアの評価精度を高めることができる。
【0066】
また、実施形態に係る評価方法において、刺激量Sは、S錐体の分光感度に基づいて計算される。これにより、不快グレアの評価精度を高めることができる。
【0067】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 評価システム
10 評価装置
13 制御部
132 計算部
133 出力部
20 入力部
30 センサ
40 照明器具
41 発光部
50 照明環境