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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130871
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】点検装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 57/024 20060101AFI20240920BHJP
   F03D 17/00 20160101ALN20240920BHJP
【FI】
B62D57/024 N
B62D57/024 L
F03D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040816
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 靖弘
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB56
3H178CC23
3H178DD52X
3H178DD54X
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】柱状構造体を効率良く点検すること。
【解決手段】点検装置は、点検対象となる柱状構造体101の中心軸Axを中心とする周方向に沿ってそれぞれ並設され、柱状構造体101の外面にそれぞれ吸着しつつ、外面上を柱状構造体101の延在方向に沿ってそれぞれ移動可能とする複数のロボット車両2A,2Bと、複数のロボット車両2A,2Bとで柱状構造体101の中心軸Axを中心とする周方向に沿って延在するように、隣接するロボット車両2A,2B同士に架け渡されたワイヤ4とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象となる柱状構造体の中心軸を中心とする周方向に沿ってそれぞれ並設され、前記柱状構造体の外面にそれぞれ吸着しつつ、前記外面上を前記柱状構造体の延在方向に沿ってそれぞれ移動可能とする複数のロボット車両と、
前記複数のロボット車両とで前記柱状構造体の中心軸を中心とする周方向に沿って延在するように、隣接する前記ロボット車両同士に架け渡されたワイヤとを備える点検装置。
【請求項2】
前記ワイヤは複数有し、前記複数のロボット車両とで、前記柱状構造体の中心軸を中心とする周方向に沿って延在した環形状を有するように、隣接する前記ロボット車両同士に架け渡される請求項1に記載の点検装置。
【請求項3】
前記複数のロボット車両の少なくともいずれかのロボット車両は、
前記ワイヤを巻き取る巻取機を備える請求項1または2に記載の点検装置。
【請求項4】
前記巻取機は、
前記複数のロボット車両の全てに設けられ、
前記ロボット車両は、
加速度センサと、
前記加速度センサからの出力に基づいて、前記巻取機の動作を制御する制御部とを備える請求項3に記載の点検装置。
【請求項5】
前記複数のロボット車両のうち、前記巻取機を有しない第1のロボット車両は、
第1の加速度センサと、
前記複数のロボット車両のうち、前記巻取機を有する第2のロボット車両との間で通信可能に接続する第1の通信部と、
前記第1の加速度センサからの出力に基づいて、前記第1の通信部を介して前記第2のロボット車両に前記ワイヤの巻取指示を送信させる第1の制御部とを備え、
前記第2のロボット車両は、
第2の加速度センサと、
前記第1の通信部との間で通信可能に接続する第2の通信部と、
前記第2の加速度センサからの出力と、前記第2の通信部を介して受信した前記巻取指示とに基づいて、前記巻取機の動作を制御する第2の制御部とを備える請求項3に記載の点検装置。
【請求項6】
前記ワイヤは、
隣接する前記ロボット車両同士に架け渡されたワイヤ本体と、
前記ワイヤ本体の延在方向に沿って並設され、前記ワイヤ本体よりも径寸法の大きい複数の膨出部とを備える請求項1または2に記載の点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、垂直な壁面を走行する2台のロボット車両を用いて、構造体の点検を行う点検装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の点検装置では、ロボット車両は、真空吸引によって構造体の外面に吸着しつつ、当該外面に沿って移動可能とする。また、2台のロボット車両は、構造体の外面からの不意の脱落に対応するために、当該構造体の上部を通るように引き回されたケーブルによって互いに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-45089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば、風力発電設備の主塔(タワー)を点検対象とすることが考えられる。当該風力発電設備に用いられる風車としては、地上から高いほど風が強くなるため、発電効率を考慮すると、大型にすることが好ましく、今後ますます大型化が予想される。
そして、特許文献1に記載の点検装置では、ケーブルを構造体の上部を通るように引き回す必要があるため、上述したように高さ寸法のかなり大きい主塔(柱状構造体)を点検対象とした場合には、当該ケーブルを引き回す作業によって作業効率が悪くなる。
そこで、柱状構造体を効率良く点検することができる技術が要望されている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、柱状構造体を効率良く点検することができる点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る点検装置は、点検対象となる柱状構造体の中心軸を中心とする周方向に沿ってそれぞれ並設され、前記柱状構造体の外面にそれぞれ吸着しつつ、前記外面上を前記柱状構造体の延在方向に沿ってそれぞれ移動可能とする複数のロボット車両と、前記複数のロボット車両とで前記柱状構造体の中心軸を中心とする周方向に沿って延在するように、隣接する前記ロボット車両同士に架け渡されたワイヤとを備える。
【0007】
また、本発明に係る点検装置では、上記発明において、前記ワイヤは複数有し、前記複数のロボット車両とで、前記柱状構造体の中心軸を中心とする周方向に沿って延在した環形状を有するように、隣接する前記ロボット車両同士に架け渡される。
【0008】
また、本発明に係る点検装置では、上記発明において、前記複数のロボット車両の少なくともいずれかのロボット車両は、前記ワイヤを巻き取る巻取機を備える。
【0009】
また、本発明に係る点検装置では、上記発明において、前記巻取機は、前記複数のロボット車両の全てに設けられ、前記ロボット車両は、加速度センサと、前記加速度センサからの出力に基づいて、前記巻取機の動作を制御する制御部とを備える。
【0010】
また、本発明に係る点検装置では、上記発明において、前記複数のロボット車両のうち、前記巻取機を有しない第1のロボット車両は、第1の加速度センサと、前記複数のロボット車両のうち、前記巻取機を有する第2のロボット車両との間で通信可能に接続する第1の通信部と、前記第1の加速度センサからの出力に基づいて、前記第1の通信部を介して前記第2のロボット車両に前記ワイヤの巻取指示を送信させる第1の制御部とを備え、前記第2のロボット車両は、第2の加速度センサと、前記第1の通信部との間で通信可能に接続する第2の通信部と、前記第2の加速度センサからの出力と、前記第2の通信部を介して受信した前記巻取指示とに基づいて、前記巻取機の動作を制御する第2の制御部とを備える。
【0011】
また、本発明に係る点検装置では、上記発明において、前記ワイヤは、隣接する前記ロボット車両同士に架け渡されたワイヤ本体と、前記ワイヤ本体の延在方向に沿って並設され、前記ワイヤ本体よりも径寸法の大きい複数の膨出部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る点検装置によれば、柱状構造体を効率良く点検することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施の形態に係る点検装置の点検対象を示す図である。
図2図2は、点検装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、ロボット車両本体を示す斜視図である。
図4図4は、点検装置を用いた点検方法を説明する図である。
図5図5は、点検装置を用いた点検方法を説明する図である。
図6図6は、実施の形態の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0015】
〔点検対象〕
図1は、実施の形態に係る点検装置1の点検対象を示す図である。なお、図1では、鉛直軸をZ軸、当該Z軸に直交する2つの軸をそれぞれX軸及びY軸としている。
先ず、点検装置1の構成を説明する前に、点検対象について説明する。
図1には、風力発電設備100が示されている。この風力発電設備100は、主塔(タワー)101と、ナセル102と、ハブ103と、風車ブレード104とを備える。
【0016】
主塔101は、地表から上方に向けて延在する断面略円形状の柱状構造体である。そして、主塔101は、本実施の形態に係る点検装置1の点検対象となる。
ナセル102は、Z軸を中心として回転可能(水平面内を回転可能)に主塔101の上部に取り付けられている。
【0017】
ハブ103は、水平面(XY平面)に沿って延在する主軸(図示略)を介して、ナセル102に軸支されている。
風車ブレード104は、複数設けられ、ハブ103から放射状にそれぞれ延在し、風を受け止める部分である。
【0018】
そして、ナセル102内には、具体的な図示は省略したが、上述した主軸、当該主軸の回転数を発電機に必要な回転数まで増やす増速機、及び当該増速機によって増速された回転力を使って発電する発電機等が格納されている。当該発電機によって発電された電気は、主塔101内の導線を通して送電系統へと伝達される。
【0019】
〔点検装置の構成〕
図2は、点検装置1の構成を示すブロック図である。
点検装置1は、点検対象となる柱状構造体である主塔101を点検する装置である。この点検装置1は、図2に示すように、第1,第2のロボット車両2A,2Bと、操作装置3と、2本のワイヤ4(図5参照)とを備える。
【0020】
本実施の形態では、第1,第2のロボット車両2A,2Bは、同一の構成を有する。このため、以下では、第1のロボット車両2Aの構成についてのみ説明し、第2のロボット車両2Bの構成については、当該第1のロボット車両2Aと同一の構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0021】
第1のロボット車両2Aは、図2に示すように、ロボット車両本体21と、点検ツール22と、加速度センサ23と、巻取機24と、制御装置25とを備える。
【0022】
図3は、ロボット車両本体21の構成を示す斜視図である。なお、図3では、ロボット車両本体21の前方側をFRとし、ロボット車両本体21の後方側をREとしている。
ロボット車両本体21は、モータ等の第1の駆動部211(図2)によって駆動するクローラー212(図3)が車両の左右両側に設けられたロボット車両である。また、ロボット車両本体21の底面には、主塔101の外面に対して磁力によって吸着する磁石213が設けられている。そして、ロボット車両本体21は、磁石213によって主塔101の外面に吸着しつつ、一対のクローラー212の駆動によって当該外面上を当該主塔101の延在方向(Z軸方向)に沿って移動可能とする。なお、ロボット車両本体21は、一対のクローラー212の回転速度を異なるものとすれば、主塔101の外面上において、左旋回や右旋回も可能である。
【0023】
点検ツール22は、ロボット車両本体21に搭載され、主塔101を点検するためのツールである。本実施の形態では、点検ツール22は、主塔101の外面を撮影するカメラである。なお、点検ツール22としては、カメラに限らず、超音波センサ等を採用しても構わない。
【0024】
加速度センサ23は、ロボット車両本体21に搭載され、当該ロボット車両本体21に生じる加速度を検出し、当該加速度に応じた振動データを生成する。そして、加速度センサ23は、生成した振動データを制御装置25に出力する。
【0025】
巻取機24は、ロボット車両本体21に搭載され、2本のワイヤ4の各一端を保持しつつ、制御装置25による制御の下、モータ等の第2の駆動部241(図2)によって駆動し、当該2本のワイヤ4を巻き取る。
【0026】
制御装置25は、ロボット車両本体21に搭載され、第1のロボット車両2A全体の動作を制御する。この制御装置25は、図2に示すように、通信部251と、記憶部252と、プロセッサ253とを備える。
【0027】
通信部251は、プロセッサ253による制御の下、操作装置3との間で通信可能に接続し、当該操作装置3から送信された操作信号を受信する。なお、通信部251と操作装置3との間の通信としては、無線通信でもよく、あるいは、有線通信でもよい。
【0028】
記憶部252は、プロセッサ253が実行する各種のプログラムや、当該プロセッサ253が処理を行うときに必要なデータ等を記憶する。
【0029】
プロセッサ253は、本発明に係る制御部に相当する。このプロセッサ253は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のコントローラによって、記憶部252に記憶された各種のプログラムが実行されることにより実現され、第1のロボット車両2A全体の動作を制御する。なお、プロセッサ253は、CPUやMPUに限らず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって構成されても構わない。
なお、プロセッサ253の機能の詳細については、後述する「点検装置を用いた点検方法」において説明する。
【0030】
操作装置3は、ユーザ操作を受け付け、第1,第2のロボット車両2A,2Bを移動させるための操作デバイスである。この操作装置3は、図2に示すように、第1,第2の操作部31,32と、通信部33と、記憶部34と、プロセッサ35とを備える。
【0031】
第1の操作部31は、ボタンやスイッチ等によって構成され、第1のロボット車両2Aを移動させるためのユーザ操作を受け付ける。そして、第1の操作部31は、当該ユーザ操作に応じた操作信号(以下、第1の操作信号と記載)をプロセッサ35に出力する。
【0032】
第2の操作部32は、ボタンやスイッチ等によって構成され、第2のロボット車両2Bを移動させるためのユーザ操作を受け付ける。そして、第2の操作部32は、当該ユーザ操作に応じた操作信号(以下、第2の操作信号と記載)をプロセッサ35に出力する。
【0033】
通信部33は、プロセッサ35による制御の下、第1,第2のロボット車両2A,2B(通信部251)との間でそれぞれ通信可能に接続し、当該第1のロボット車両2Aに第1の操作信号を送信し、当該第2のロボット車両2Bに第2の操作信号を送信する。
【0034】
記憶部34は、プロセッサ35が実行する各種のプログラムや、当該プロセッサ35が処理を行うときに必要なデータ等を記憶する。
【0035】
プロセッサ35は、CPUやMPU等のコントローラによって、記憶部34に記憶された各種のプログラムが実行されることにより実現される。そして、プロセッサ35は、第1の操作部31へのユーザ操作に応じて、通信部33の動作を制御し、当該第1の操作部31から出力された第1の操作信号を第1のロボット車両2Aの通信部251に送信させる。また、プロセッサ35は、第2の操作部32へのユーザ操作に応じて、通信部33の動作を制御し、当該第2の操作部32から出力された第2の操作信号を第2のロボット車両2Bの通信部251に送信させる。なお、プロセッサ35は、CPUやMPUに限らず、ASICやFPGA等の集積回路によって構成されても構わない。
【0036】
2本のワイヤ4は、樹脂材料または金属材料によって構成され、第1,第2のロボット車両2A,2B間にそれぞれ架け渡される。また、ワイヤ4は、第1,第2のロボット車両2A,2B間に架け渡されるワイヤ本体41(図4図5参照)と、当該ワイヤ本体41の延在方向に沿って並設され、当該ワイヤ本体41よりも径寸法の大きい複数の膨出部42(図4図5参照)とを備える。ここで、ワイヤ4としては、ワイヤ本体41と膨出部42とが一体形成された構成としてもよく、あるいは、互いに別体であるワイヤ本体41及び膨出部42を一体化した構成としてもよい。
なお、第1,第2のロボット車両2A,2Bと2本のワイヤ4との配置状態の詳細については、後述する「点検装置を用いた点検方法」において説明する。
【0037】
〔点検装置を用いた点検方法〕
図4及び図5は、点検装置1を用いた点検方法を説明する図である。具体的に、図4は、点検装置1における点検時の配置状態を主塔101の延在方向(Z軸)に直交する方向から見た図である。図5は、点検装置1における点検時の配置状態を主塔101の延在方向(Z軸)に沿って見た図である。
【0038】
先ず、ユーザは、図4及び図5に示すように、点検装置1を配置する。
具体的に、第1,第2のロボット車両2A,2Bは、図4及び図5に示すように、前方側FRが上方に向いた姿勢で、主塔101の外面上において、当該主塔101の中心軸Axを中心とする180°の回転対称位置にそれぞれ配置される。すなわち、第1,第2のロボット車両2A,2Bは、主塔101の中心軸Axを中心とする周方向に沿ってそれぞれ並設され、当該主塔101の外面にそれぞれ吸着しつつ、当該外面上を当該主塔101の延在方向(Z軸方向)に沿ってそれぞれ移動可能とする。
【0039】
また、2本のワイヤ4は、図5に示すように、主塔101の中心軸Axを中心とする周方向に沿って延在した環形状を有するように、第1,第2のロボット車両2A,2B間に架け渡される。
【0040】
以上のように点検装置1を配置した状態で、ユーザは、操作装置3に対して操作を行い、第1,第2のロボット車両2A,2Bをそれぞれ主塔101の外面上を上方に向けて移動させることにより、当該主塔101の点検が開始される。
【0041】
ここで、第1,第2のロボット車両2A,2Bの各プロセッサ253は、当該第1,第2のロボット車両2A,2Bの各加速度センサ23にて生成された振動データに基づいて、自身が搭載された当該第1,第2のロボット車両2A,2Bが主塔101の外面から脱落したか否かを常時、監視する。
【0042】
そして、プロセッサ253は、脱落したと判定した場合には、巻取機24の動作を制御し、2本のワイヤ4を巻き取らせる。これにより、第1,第2のロボット車両2A,2B間に架け渡されたワイヤ4の長さが短くなる。
【0043】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態に係る点検装置1は、上述した第1,第2のロボット車両2A,2Bとワイヤ4とを備える。このため、第1,第2のロボット車両2A,2Bの一方のロボット車両が主塔101の外面から不意に脱落した場合には、主塔101の外面に吸着した他方のロボット車両とワイヤ4とによって、当該一方のロボット車両の脱落を途中で止めることができる。また、ワイヤ4については、主塔101の上部まで引き回す必要がなく、当該主塔101の中心軸Axを中心とする周方向に沿って延在した環形状を有するように、第1,第2のロボット車両2A,2B間に架け渡せばよい。
したがって、本実施の形態に係る点検装置1によれば、ワイヤ4を引き回す作業によって点検作業の作業効率が悪くなることがなく、主塔101を効率良く点検することができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る点検装置1では、第1,第2のロボット車両2A,2Bは、上述した加速度センサ23、巻取機24、及びプロセッサ253を備える。このため、第1,第2のロボット車両2A,2Bの一方のロボット車両が主塔101の外面から不意に脱落した場合には、巻取機24が動作し、2本のワイヤ4が巻き取られ、その結果、当該第1,第2のロボット車両2A,2B間に架け渡されたワイヤ4の長さが短くなる。したがって、主塔101の外面に吸着した他方のロボット車両とワイヤ4とによって、一方のロボット車両の脱落を途中でより確実に止めることができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る点検装置1では、ワイヤ4は、上述したワイヤ本体41及び複数の膨出部42を備える。このため、膨出部42によってワイヤ4と主塔101の外面との間の摩擦を低減し、第1,第2のロボット車両2A,2Bを移動させる際のワイヤ4による負荷を減らすことができる。
【0046】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
図6は、実施の形態の変形例を説明する図である。具体的に、図6は、図2に対応した図である。
上述した実施の形態では、第1,第2のロボット車両2A,2Bの双方に巻取機24を設けていたが、これに限らず、図6に示した本変形例のように、第2のロボット車両2Bにのみ設けても構わない。このように構成した場合には、第1,第2のロボット車両2A,2Bの双方に、当該第1,第2のロボット車両2A,2B間で通信を行う通信部254をそれぞれ設ける。なお、以下では、通信部251と通信部254とを区別するために、通信部251を第1の通信部251と記載し、通信部254を第2の通信部254と記載する。
【0047】
ここで、第2のロボット車両2Bのプロセッサ253は、当該第2のロボット車両2Bの加速度センサ23にて生成された振動データに基づいて、当該第2のロボット車両2Bが主塔101の外面から脱落したと判定した場合には、上述した実施の形態で説明したように、巻取機24の動作を制御し、2本のワイヤ4を巻き取らせる。これにより、第1,第2のロボット車両2A,2B間に架け渡されたワイヤ4の長さが短くなり、主塔101の外面に吸着した状態の第1のロボット車両2A、及び2本のワイヤ4によって、第2のロボット車両2Bの脱落が途中で止まる。
【0048】
一方、第1のロボット車両2Aのプロセッサ253は、当該第1のロボット車両2Aの加速度センサ23にて生成された振動データに基づいて、当該第1のロボット車両2Aが主塔101の外面から脱落したと判定した場合には、以下の処理を実行する。
【0049】
第1のロボット車両2Aのプロセッサ253は、第2の通信部254を介して、第2のロボット車両2B(第2の通信部254)に2本のワイヤ4を巻き取る巻取指示を送信させる。すなわち、第1のロボット車両2Aのプロセッサ253は、本発明に係る第1の制御部に相当する。
【0050】
そして、第2のロボット車両2Bのプロセッサ253は、当該第2のロボット車両2Bの第2の通信部254を介して第1のロボット車両2Aから受信した巻取指示に基づいて、巻取機24の動作を制御し、2本のワイヤ4を巻き取らせる。これにより、第1,第2のロボット車両2A,2B間に架け渡されたワイヤ4の長さが短くなり、主塔101の外面に吸着した状態の第2のロボット車両2B、及び2本のワイヤ4によって、第1のロボット車両2Aの脱落が途中で止まる。すなわち、第2のロボット車両2Bのプロセッサ253は、本発明に係る第2の制御部に相当する。
【0051】
なお、第1のロボット車両2Aの加速度センサ23は、本発明に係る第1の加速度センサに相当する。また、第2のロボット車両2Bの加速度センサ23は、本発明に係る第2の加速度センサに相当する。
【0052】
以上説明した本変形例の構成を採用した場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【0053】
上述した実施の形態において、本発明に係るロボット車両の数は、2つに限らず、3つ以上としても構わない。また、ワイヤ4の数も2本に限らず、それ以上の数で主塔101の中心軸Axを中心とする周方向に沿って延在して環形状となるようにロボット車両同士を架け渡す構成でもよい。
また、隣接するロボット車両同士にワイヤ4が1本でも架け渡されていれば、一方のロボット車両が主塔101の外面から脱落しても、他方のロボット車両が当該主塔101の外面に吸着されていれば、当該一方のロボット車両の脱落を阻止することができる場合があるため、当該ワイヤ4の数は、特に限定されない。
【0054】
上述した実施の形態において、巻取機24は、必須の構成ではない。すなわち、第1,第2のロボット車両2A,2B間にワイヤ4が架け渡されていれば、当該第1,第2のロボット車両2A,2Bに巻取機24が設けられていない構成を採用しても構わない。
【0055】
上述した実施の形態において、点検装置1の点検対象としては、主塔101に限らず、柱状構造体であれば、その他の構造体を採用しても構わない。
【0056】
上述した実施の形態では、ロボット車両本体21は、磁石213によって主塔101の外面に吸着していたが、これに限らず、特許文献1と同様に、真空吸引によって主塔101の外面に吸着する構成を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0057】
1 点検装置
2A 第1のロボット車両
2B 第2のロボット車両
3 操作装置
4 ワイヤ
21 ロボット車両本体
22 点検ツール
23 加速度センサ
24 巻取機
25 制御装置
31 第1の操作部
32 第2の操作部
33 通信部
34 記憶部
35 プロセッサ
41 ワイヤ本体
42 膨出部
100 風力発電設備
101 主塔
102 ナセル
103 ハブ
104 風車ブレード
211 第1の駆動部
212 クローラー
213 磁石
241 第2の駆動部
251 第1の通信部
252 記憶部
253 プロセッサ
254 第2の通信部
Ax 中心軸
FR 前方側
RE 後方側
図1
図2
図3
図4
図5
図6