(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130884
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ロック装置及び収納装置
(51)【国際特許分類】
E05C 9/04 20060101AFI20240920BHJP
E05C 21/00 20060101ALI20240920BHJP
E05B 83/30 20140101ALI20240920BHJP
B60R 7/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E05C9/04
E05C21/00 A
E05B83/30 A
B60R7/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040830
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】汐月 隆仁
【テーマコード(参考)】
2E250
3D022
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250LL11
3D022CA08
3D022CC03
3D022CD14
(57)【要約】
【課題】簡素で安価な構成で、限られたスペースに配置できるロック装置及びこれを備えた収納装置を提供する。
【解決手段】ロック装置1は、リンク機構11を備える。リンク機構11は、ロック体12の移動方向に対して交差する方向に配置された並列リンク22と、並列リンク22に対して傾斜する方向に配置された交差リンク23と、が互いに一部が重ねられて連結され、対をなすロック体12を相反する方向へ移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材に対し第二部材をロック可能であるとともにこのロックを解除可能なロック装置であって、
前記第一部材と前記第二部材との一方に設けられた対をなすロック受け部に対してそれぞれ相反する方向への移動により端部が挿脱される対をなすロック体と、
これらロック体の移動方向に対して交差する方向に配置された一のリンクと、この一のリンクに対して傾斜する方向に配置された他のリンクと、が互いに一部が重ねられて連結され、対をなす前記ロック体を相反する方向へ移動させるリンク機構と、
を備えることを特徴とするロック装置。
【請求項2】
リンク機構は、一のリンクがロック体の一方に連結され、他のリンクが前記ロック体の他方に連結されている
ことを特徴とする請求項1記載のロック装置。
【請求項3】
一のリンクは、ロック体毎に設定されて前記ロック体の移動方向に並列され、
他のリンクは、一対設定されて前記一のリンク間をたすき掛け状に連結する
ことを特徴とする請求項2記載のロック装置。
【請求項4】
一対の他のリンクは、それぞれ板状に形成され、
前記他のリンクの一方は、板厚方向に空間部を形成する回避部を備え、
前記他のリンクの他方は、前記回避部に挿通されて配置されている
ことを特徴とする請求項3記載のロック装置。
【請求項5】
一のリンクと他のリンクとのいずれか一方が回動に支持され、他方が連動する
ことを特徴とする請求項1記載のロック装置。
【請求項6】
開口部を有する第一部材である本体部と、
前記開口部を開閉可能な第二部材である蓋部材と、
前記蓋部材に設けられ、前記開口部を閉じた状態で前記蓋部材を前記本体部にロックする請求項1ないし5いずれか一記載のロック装置と、
を備えることを特徴とする収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材に対し第二部材をロック可能であるとともにこのロックを解除可能なロック装置及びこれを備えた収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載されるグローブボックスなどの開閉装置において、第一部材である本体部に対して第二部材である蓋体を開閉可能にロックするロック装置が用いられる。このようなロック装置は、ロック体である長尺の一対のロッドの先端部がロック受け部に付勢された状態で挿入されて蓋体をロックしており、乗員などの使用者が操作ハンドルをスライドまたは回動させることで、この操作ハンドルの操作に応じてロッドが付勢に抗してロック受け部から長手方向に退避することにより、ロックが解除される。
【0003】
例えば、一対のロッドを操作ハンドルの操作に連動させるために、回動可能な回動体であるロータの回動中心を基準として互いに反対側の位置にロッドを連結したものがある。この構成では、一対のロッドの位置がずれるので、ロッドの位置を調整するためにロッドを屈曲させる必要があり、設計及び強度計算の工数が増加するとともに、ロータの軸受けを設定するために厚みが大きくなる。
【0004】
そこで、例えば四つのリンクを端部同士でヒンジ接続して四角形状に配置したリンク機構を用い、対角に位置するリンクの連結部にロッドを連結することで、リンク機構の変形によってロッドを相反する方向に移動可能としたものが知られている。この構成では、ロッドを互いに略同一直線上に配置可能になり、ロッドを直線状とすることができるとともに、軸受けが不要であるために厚みを抑えることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-151754号公報 (第4-9頁、
図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のロック装置では、リンク機構の可動用のスペースを大きく取る必要があるとともに、リンク機構の連結部に囲まれる内方がデッドスペースとなっていることにより収納スペースを確保する必要があるため、レイアウト上の制限を受けやすく、より設計自由度を向上した構成が望まれている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡素で安価な構成で、限られたスペースに配置できるロック装置及びこれを備えた収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のロック装置は、第一部材に対し第二部材をロック可能であるとともにこのロックを解除可能なロック装置であって、前記第一部材と前記第二部材との一方に設けられた対をなすロック受け部に対してそれぞれ相反する方向への移動により端部が挿脱される対をなすロック体と、これらロック体の移動方向に対して交差する方向に配置された一のリンクと、この一のリンクに対して傾斜する方向に配置された他のリンクと、が互いに一部が重ねられて連結され、対をなす前記ロック体を相反する方向へ移動させるリンク機構と、を備えるものである。
【0009】
請求項2記載のロック装置は、請求項1記載のロック装置において、リンク機構は、一のリンクがロック体の一方に連結され、他のリンクが前記ロック体の他方に連結されているものである。
【0010】
請求項3記載のロック装置は、請求項2記載のロック装置において、一のリンクは、ロック体毎に設定されて前記ロック体の移動方向に並列され、他のリンクは、一対設定されて前記一のリンク間をたすき掛け状に連結するものである。
【0011】
請求項4記載のロック装置は、請求項3記載のロック装置において、一対の他のリンクは、それぞれ板状に形成され、前記他のリンクの一方は、板厚方向に空間部を形成する回避部を備え、前記他のリンクの他方は、前記回避部に挿通されて配置されているものである。
【0012】
請求項5記載のロック装置は、請求項1記載のロック装置において、一のリンクと他のリンクとのいずれか一方が回動に支持され、他方が連動するものである。
【0013】
請求項6記載の収納装置は、開口部を有する第一部材である本体部と、前記開口部を開閉可能な第二部材である蓋部材と、前記蓋部材に設けられ、前記開口部を閉じた状態で前記蓋部材を前記本体部にロックする請求項1ないし5いずれか一記載のロック装置と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のロック装置によれば、複雑な部品を必要とすることなく、リンク機構とロック体とからなる、部品点数を抑制した簡素で安価な構成で、リンク機構の一のリンクと他のリンクとを互いに一部を重ねて省スペースで配置でき、限られたスペースへの取り付けが可能になる。
【0015】
請求項2記載のロック装置によれば、請求項1記載のロック装置の効果に加えて、少なくとも一つずつの一のリンクと他のリンクとによって、対をなすロック体を相反する方向へ移動させるリンク機構を簡素に構成できる。
【0016】
請求項3記載のロック装置によれば、請求項2記載のロック装置の効果に加えて、リンク機構を省スペースで配置可能になるだけでなく、一のリンクと他のリンクとを確実に連動させることができるとともに、ねじり剛性を向上でき、かつ、衝撃に起因するリンク機構の一及び他のリンクの脱落を防止でき、信頼性を向上できる。
【0017】
請求項4記載のロック装置によれば、請求項3記載のロック装置の効果に加えて、たすき掛け状に互いに交差する板状の他のリンクを少ない厚みで重ねて配置できる。
【0018】
請求項5記載のロック装置によれば、請求項1記載のロック装置の効果に加えて、ロック装置を安定して稼働させることができる。
【0019】
請求項6載の収納装置によれば、ロック装置の配置スペースが小さく、外形を大型化することなく収納容量を増加させ、かつ、物品を出し入れしやすい収納装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態のロック装置を示す正面図であり、(a)はロック状態を示し、(b)はアンロック状態を示す。
【
図3】同上ロック装置を備える収納装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図3及び
図4において、1はロック装置を示す。ロック装置1は、第一部材に対し第二部材をロック可能であるとともにこのロックを解除可能なものである。例えば、第一部材及び第二部材は任意の開閉装置あるいは収納装置に用いられる。図示される例では、ロック装置1は収納装置2に用いられる。収納装置2は、例えば車両用のグローブボックスである。収納装置2は、開口部3を有する第一部材である本体部4と、この本体部4の開口部3を開閉する第二部材である蓋部材5と、を備える。蓋部材5は、例えばインナ部材5aとアウタ部材5bとの複数の部材を有し、ロック装置1は、蓋部材5においてインナ部材5aとアウタ部材5bとの間の空間部に主として配置される。そして、ロック装置1は、開口部3を閉じた状態で蓋部材5を本体部4にロックするとともに、ロックの解除により蓋部材5が開口部3を開くことが可能となる。
【0023】
ロック装置1は、基体10を備える。基体10は、ボディ部あるいはベースなどとも呼ばれ、第一部材と第二部材とのいずれか一方、本実施の形態では第二部材(蓋部材5のインナ部材5a)に一体的に取り付けられる。図示される例では、基体10は、第一部材と第二部材とのいずれか一方に対し別体として形成されているが、これに限らず、一体に形成されていてもよい。そして、この基体10に対し、リンク機構11、及び、対をなすロック体12が取り付けられる。図示される例では、基体10に対し、車両の乗員などの使用者によりロックの解除時に操作される被操作体13がさらに取り付けられる。
【0024】
なお、以下、使用者側から見た方向を基準として前後方向を規定し、使用者側である図中の矢印FR方向を前側あるいは手前側、その反対方向である矢印RR方向を後側あるいは背後側とする。また、図示される例では、ロック体12は左右方向(矢印L,R方向)に延びて配置されているものとし、これら前後方向及び左右方向に対して直交する方向(矢印U,D方向)を上下方向として説明するが、これに限られず、ロック装置1の設置姿勢によって、左右方向及び上下方向については適宜変更されるものとする。
【0025】
図1(a)、
図1(b)及び
図3に示す基体10は、例えば平板状に形成されている。本実施の形態では、基体10は、四角形板状となっている。図示される例では、基体10は、左右方向に長手方向を有して配置されている。例えば、基体10は、左右両側に係止部15が形成されており、この係止部15がインナ部材5aに形成された係止受け部16に係止されることで、インナ部材5aに一体的に保持されている。本実施の形態において、係止部15は、例えばスリットであり、係止受け部16は、例えば係止部15に爪嵌合される突起である。これに限らず、係止部15及び係止受け部16は、任意の構成としてよく、また、基体10がインナ部材5aに一体に形成されている場合には、これら係止部15及び係止受け部16は不要である。
【0026】
リンク機構11は、基体10に対し前側に位置する。リンク機構11は、複数のリンク20により構成されている。リンク20には、少なくとも一つの一のリンクである並列リンク22と、少なくとも一つの他のリンクである交差リンク23と、が設定されている。本実施の形態では、並列リンク22と、交差リンク23と、は、ロック体12に対応してそれぞれ一対ずつ設定されている。
【0027】
並列リンク22は、それぞれ直線板状に形成されている。一方及び他方の並列リンク22a,22bは、ロック体12の移動方向である長手方向、本実施の形態では左右方向に離れて並んで配置され、ロック体12の移動方向である長手方向と交差する方向、本実施の形態では上下方向に延びている。本実施の形態において、各並列リンク22は、同一長さ、同一厚みなどを有する略同一形状である。
【0028】
交差リンク23は、それぞれ直線板状に形成されている。交差リンク23は、並列リンク22に対して前側に位置する。一方及び他方の交差リンク23a,23bは、一方及び他方の並列リンク22a,22bに対して傾斜して配置されている。一方の交差リンク23aは、上端部が一方の並列リンク22aの上端部に可動的に連結され、下端部が他方の並列リンク22bの下端部に可動的に連結されている。同様に、他方の交差リンク23bは、上端部が他方の並列リンク22bの上端部に可動的に連結され、下端部が一方の並列リンク22aの下端部に可動的に連結されている。つまり、交差リンク23は、並列リンク22間をたすき掛け状に連結しており、正面から見てX字状をなすように交差して配置される。すなわち、一方及び他方の交差リンク23a,23bの交差位置は、一方及び他方の並列リンク22a,22b間にある。本実施の形態では、リンク機構11が、四節交差リンク機構となっている。交差リンク23は、並列リンク22よりも長く形成されている。本実施の形態において、各交差リンク23は、同一長さを有する略同一形状である。
【0029】
そして、並列リンク22に対し、交差リンク23が板厚方向である前後方向に重ねられているとともに、交差リンク23同士が板厚方向である前後方向に重ねられている。本実施の形態では、並列リンク22が後側、交差リンク23が前側に位置する。好ましくは、交差リンク23のいずれか一方の一部に、他方に対して互いに重なる方向である板厚方向に空間部を形成する回避部25が形成されている。本実施の形態では、回避部25は、一方の交差リンク23aの長手方向の中央部付近に形成されており、その回避部25の後側の空間部に他方の交差リンク23bが挿通されて配置されている。そのため、一方及び他方の交差リンク23a,23bの両端部を略同一面上に位置させ、リンク機構11の厚みを抑制することが可能となっている。
【0030】
並列リンク22と交差リンク23とを連結する連結部27は、それぞれ回動可能に構成され、リンク機構11の対偶となっている。連結部27の構成は、自由継手(ボールジョイント)など任意のものを用いてよいが、例えば本実施の形態では、一方が軸部、他方が穴部として形成されている。本実施の形態では、連結部27は、並列リンク22から突出する軸部30と、交差リンク23に形成された穴部31と、からなる。
【0031】
軸部30は、並列リンク22の両端部から交差リンク23側である前側に突出している。軸部30の先端部には、軸部30の軸方向に対して交差する方向に突出する抜止部33が形成されている。抜止部33は、平板状に形成され、この抜止部33によって、軸部30が鉤状となっている。
【0032】
穴部31は、交差リンク23の両端部の位置で交差リンク23を板厚方向に貫通して形成されている。穴部31には、抜止部33を特定の角度でのみ通過させる切欠部34が連なって形成されている。「特定の角度」は、並列リンク22と交差リンク23とがリンク機構11の通常の動作範囲でなし得る角度範囲外に設定されている。このため、切欠部34と抜止部33とにより、軸部30が穴部31に対して通常の動作時に前後方向に抜けることが防止される。
【0033】
そして、連結部27には、ロック体12の移動に応じて回動する原動側の連結部27と、原動側の連結部27の回動に伴い回動される従動側の連結部27と、が設定されている。本実施の形態の場合、リンク機構11において上部の連結部27が原動側であり、下部の連結部27が従動側である。好ましくは、いずれか一方、特に従動側の連結部27の穴部31が長穴状に形成されその穴部31に軸部30がルーズに挿入されていることで、リンク機構11を円滑に稼働させるようになっている。
【0034】
並列リンク22と交差リンク23とは、いずれか一方が両端部間で支持部36により回動可能に支持される。本実施の形態では、並列リンク22が回動可能に支持されている。図示される例では、並列リンク22の両端部間の中央部が、基体10の前部に回動可能に支持されている。支持部36の構成は、自由継手(ボールジョイント)など任意のものを用いてよいが、例えば本実施の形態では、一方が軸部、他方が穴部として形成されている。図示される例では、支持部36は、基体10から突出する軸部38と、並列リンク22に形成された穴部39と、からなる。
【0035】
軸部38は、基体10から並列リンク22側である前側に突出している。軸部38の先端部には、軸部38の軸方向に対して交差する方向に突出する抜止部41が形成されている。抜止部41は、平板状に形成され、この抜止部41によって、軸部38が鉤状となっている。
【0036】
穴部39は、並列リンク22の長手方向の中央部で板厚方向に貫通して形成されている。穴部39には、抜止部41を特定の角度でのみ通過させる切欠部42が連なって形成されている。この切欠部42と抜止部41とにより、軸部38が穴部39に対して特定の角度以外の角度で前後方向に抜けることが防止される。
【0037】
ロック体12は、ロッド、あるいはピンなどとも呼ばれる長尺状の部材である。ロック体12は、第一方向に移動可能であって、第一部材と第二部材との他方に設けられた穴部などの対をなすロック受け部44に対してそれぞれ移動により一端部側(先端部側)が挿脱されることで、第二部材をロックするスライド部材である。本実施の形態において、ロック体12は、その長手方向に移動可能である。すなわち、本実施の形態では、第一方向とは、ロック体12の長手方向であって、図示される例では左右方向である。
【0038】
本実施の形態において、ロック体12は、基体10に対して左右に対をなし、基体10に対して左右方向に延出されている。これらロック体12は、それぞれ直線長尺状に形成されている。ロック体12は、一端部が基体10に対し突出している、ロック体12の長さについては、収納装置2におけるリンク機構11の配置に応じて設定され、本実施の形態では各ロック体12の長さは互いに略等しい。図示される例では、ロック体12は、一端部側がインナ部材5aに形成された挿通穴部45を介して蓋部材5の側方に突出しており、その挿通穴部45から突出する端部にロック部46が形成されている。ロック部46は、先細に形成され、本体部4に形成されたロック受け部44に対して挿脱されることにより、ロック装置1による本体部4に対する蓋部材5の開閉のロック及びロックの解除が可能となっている。さらに、ロック体12の一端部側には、ロック部46の基端部に、ストッパ部47が形成されている。ストッパ部47は、ロック体12のロック部46以外の部分が挿通穴部45から突出しないように規制する部分である。
【0039】
また、ロック体12の他端部側は、リンク機構11のリンク20に対して回動可能に連結されている。ロック体12は、並列リンク22と交差リンク23とのいずれに連結されていてもよいが、本実施の形態では各ロック体12の他端部が各並列リンク22の上端部と連結されている。つまり、一方のロック体12aの右端部が一方の並列リンク22aの上端部と連結され、他方のロック体12bの左端部が他方の並列リンク22bの上端部と連結される。この状態で、ロック体12は、基体10の上方に位置し、左右のロック体12の高さ位置が一致または略一致している。また、本実施の形態において、ロック体12は、並列リンク22の後側に連結される。
【0040】
ロック体12とリンク20とを連結するリンク連結部50の構成は、自由継手(ボールジョイント)など任意のものを用いてよいが、例えば本実施の形態では、一方が軸部、他方が穴部として形成されている。図示される例では、リンク連結部50は、並列リンク22から突出する軸部52と、ロック体12に形成された穴部53と、からなる。
【0041】
軸部52は、並列リンク22から後側に突出している。なお、好ましくは、軸部52は、並列リンク22の上端部に設定された連結部27の軸部30と同軸または略同軸となっている。好ましくは、軸部52は、軸部30と同様に板状の抜止部が形成されて鉤状となっている。
【0042】
穴部53は、ロック体12を厚み方向に貫通して形成されている。穴部53は、好ましくは穴部31と同様に切欠部が形成されて、軸部52がロック体12及びリンク20の並列リンク22の上端部側の可動範囲で容易に外れないように、軸部52が穴部53に対して抜け止め保持されている。
【0043】
また、穴部53が形成されているロック体12の他端部には、リンク機構11の少なくとも一部を収納する収納空間部を形成する凹部54が形成されている。凹部54は、ロック体12の他端部の前側を切り欠いて形成されている。そのため、凹部54の位置で、ロック体12の他端部は前後方向の厚みが小さくなっている。凹部54の前後方向の深さは、並列リンク22及び交差リンク23の板厚より大きく設定されている。
図2に示すように、上下方向から見て、左右の凹部54間にリンク機構11が位置する。
【0044】
そして、
図3に示す被操作体13は、操作ハンドル、あるいなノブなどとも呼ばれる。被操作体13は、可動的に設けられて、ロック装置1が取り付けられた第一部材と第二部材とのいずれか一方(本実施の形態では蓋部材5)から露出し、使用者の操作に応じて基体10に対して動作することによりロック体12を移動させてロック装置1によるロックを解除(アンロック)する部材である。使用者による被操作体13の回動操作が、ロック体12、あるいはリンク機構11に伝達されるように構成されている。つまり、対をなすロック体12とリンク機構11とは、一体的に連動するため、被操作体13は、対をなすロック体12とリンク機構11とのいずれかに対して外力を作用させることにより、ロック体12をロック解除方向に移動させることができる。被操作体13は、その位置または姿勢が変わるように動作すれば、スライド可能な構成などとしてもよいが、本実施の形態では、被操作体13は、蓋部材5のアウタ部材5bに形成された開口部56から収納装置2の前方、例えば車室内に露出し、その開口部56に左右方向に回動可能に支持されている。図示される例では、被操作体13は、例えば正面から見て四角形状に形成された板状部材である。
【0045】
本実施の形態では、被操作体13は、ロック体12のいずれか一方、例えば他方のロック体12bと接続される。図示される例では、被操作体13は、加圧部58を備え、この加圧部58が、使用者の操作に伴い他方のロック体12bに形成された受圧部59と当接することで、ロック体12がロックの解除方向、本実施の形態では他方のロック体12bが左側へと、移動するように構成されている。すなわち、本実施の形態では、他方のロック体12bが、被操作体13から直接外力を受けて動作されるロック体であり、一方のロック体12aが、被操作体13の操作に対してリンク機構11を介して間接的に動作されるロック体である。
【0046】
加圧部58及び受圧部59の形状は任意に構成してよいが、本実施の形態では、加圧部58は、被操作体13の後部に突設された一対の爪部であり、受圧部59は、他方のロック体12bの上下に形成された突出部である。
【0047】
また、好ましくは、ロック装置1は、ロック状態を付勢保持する付勢手段61を備える。付勢手段61は、ロック体12のロック部46がロック受け部44に挿入された状態を維持する方向へと、ロック体12、リンク機構11、あるいは被操作体13のいずれかを付勢する。本実施の形態では、付勢手段61は、インナ部材5aに形成された軸受け部62に保持され、一方のロック体12aとインナ部材5aとの間に設定されている。付勢手段61は、例えばコイルばね、あるいはトーションばねなどが好適に用いられる。付勢手段61の一方の腕部がインナ部材5aの軸受け部62に保持され、他方の腕部が一方のロック体12aに形成された溝状の付勢受け部63に保持される。
【0048】
そして、ロック装置1は、基体10に対し、並列リンク22を前側から支持部36の位置で取り付け、各並列リンク22にロック体12をリンク連結部50の位置で連結しつつ、基体10の係止部15をインナ部材5aの係止受け部16に対し前側から位置合わせして押し込み、爪嵌合させる。次いで、各並列リンク22に連結部27の位置で各交差リンク23を前側から連結する。また、付勢手段61を、インナ部材5aの軸受け部62と他方のロック体12bの付勢受け部63とに亘り、前側から取り付ける。そして、被操作体13を開口部56に取り付けたアウタ部材5bによりインナ部材5aを前側から覆って、ロック装置1を内蔵した蓋部材5が組み立てられる。このように、ロック装置1は、基本的に前側から部品を順次組み付けて組み立てられる。
【0049】
このように組み立てたロック装置1は、蓋部材5が開口部3を閉じた位置で、付勢手段61の付勢により、
図1(a)に示すように、リンク機構11の一方及び他方の並列リンク22a,22bの上端部が相対的に左右に遠い状態で保持されることで、一方及び他方のロック体12a,12bが左右に進出した位置で保持される。そこで、一方及び他方のロック体12a,12bのロック部46,46がロック受け部44,44に挿入された状態で保持され、蓋部材5を本体部4にロックする。
【0050】
また、ロック装置1によるロックを解除する際には、使用者が
図3に示す被操作体13を回動させると、被操作体13の加圧部58が他方のロック体12bの受圧部59に当接して受圧部59を介して他方のロック体12bを付勢手段61の付勢に抗して押圧する。他方のロック体12bがリンク機構11の他方の並列リンク22bの上端部にリンク連結部50で連結されていることにより、この他方の並列リンク22bの上端部側が左側へと押し込まれ、他方の並列リンク22bが支持部36を中心として
図1(a)に矢印で示す反時計回り方向に回動する。つまり、他方のロック体12bのスライド動作が、他方の並列リンク22bの回動運動に変換される。リンク機構11では、他方の並列リンク22bの回動に伴い、他方の並列リンク22bの上端部と連結部27を介して連結されている他方の交差リンク23bに対して左側に押す力を作用させ、他方の並列リンク22bの下端部と連結部27を介して連結されている一方の交差リンク23aに対して右側に引く力を作用させることで、一方の交差リンク23aと他方の交差リンク23bとを介して、他方の並列リンク22bとたすき掛け状に連結されている一方の並列リンク22aに力が伝達されて、他方の並列リンク22bの回動運動が一方の並列リンク22aの回動運動に変換され、一方の並列リンク22aが他方の並列リンク22bとは左右対称に連動して
図1(a)に矢印で示す時計回り方向に回動する。そこで、
図1(b)に示すように、一方の並列リンク22aと連結されている一方のロック体12aが、他方のロック体12bと相反する右側へと引き込まれ、一方及び他方のロック体12a,12b間の距離が短縮される。したがって、各ロック体12のロック部46がロック受け部44から引き抜かれ、ロック装置1によるロックが解除される。
【0051】
上述したように、一実施の形態では、ロック体12の移動方向に対して交差する方向に配置された並列リンク22と、並列リンク22に対して傾斜する方向に配置された交差リンク23と、が連結され、対をなすロック体12を相反する方向へ移動させるリンク機構11において、並列リンク22と交差リンク23とを互いの一部を重ねて互いに回動可能に連結する構成とする。そのため、複雑な部品を必要とすることなく、リンク機構11とロック体12とからなる、部品点数を抑制した簡素で安価な構成で、リンク機構11の並列リンク22と交差リンク23とを互いに一部を重ねて省スペースで配置でき、限られたスペースへの取り付けが可能になる。
【0052】
また、リンク機構11は、並列リンク22をロック体12の一方に回動可能に連結し、交差リンク23をロック体12の他方に回動可能に連結することで、少なくとも一つずつの並列リンク22と交差リンク23とによって、対をなすロック体12を相反する方向へ移動させるリンク機構11を簡素に構成できる。
【0053】
さらに、左右のロック体12の上下の位置を略同一とすることができるので、各ロック体12を屈曲させることなく直線状に形成できるため、ロック体12の形状を簡素化でき、ロック体12の設計及び強度計算の工数を抑制できる。
【0054】
また、並列リンク22と交差リンク23とのいずれか一方を回動可能に支持して他方を連動させる構成とすることで、ロック装置1を安定して稼働させることができる。
【0055】
さらに、リンク機構11は、ロック体12の移動方向に並列した一対の並列リンク22を、一対の交差リンク23によりたすき掛け状に連結することで、リンク機構11をより省スペースで配置可能になるだけでなく、並列リンク22と交差リンク23とを確実に連動させることができるとともに、ねじり剛性を向上でき、かつ、前後方向の衝撃に起因するリンク機構11の並列リンク22及び交差リンク23の脱落を抑制でき、信頼性を向上できる。
【0056】
板状に形成した一対の交差リンク23の一方に、板厚方向である前後方向に空間部を形成する回避部25を形成し、交差リンク23の他方を、回避部25に挿通して配置することで、たすき掛け状に互いに交差する板状の交差リンク23を少ない厚みで前後方向に重ねて配置できる。
【0057】
また、ロック体12が、リンク機構11との連結位置に、リンク機構11の少なくとも一部が配置される凹部54をリンク機構11と重なる方向に有することで、リンク機構11及びロック体12を少ない厚みで重ねて前後方向に配置できる。
【0058】
さらに、連結部27は、軸部30に形成した抜止部33を用いた鉤状の構成により並列リンク22と交差リンク23とを厚み方向に抜け止めしているため、厚みを増加させることのない薄型化に対応した構造でありながら、厚み方向、例えば前後方向の衝撃に伴うリンク機構11の脱落を防止できる。
【0059】
同様に、支持部36は、軸部38に形成した抜止部41を用いた鉤状の構成によりリンク20、本実施の形態では並列リンク22を基体10に対して厚み方向に抜け止めし、リンク連結部50は、軸部52に形成した抜止部を用いた鉤状の構成によりロック体12とリンク20、本実施の形態では並列リンク22とを厚み方向に抜け止めしているため、厚みを増加させることのない薄型化に対応した構造でありながら、厚み方向、例えば前後方向の衝撃に伴うロック体12からのリンク機構11の脱落を防止できる。
【0060】
したがって、厚みを最小限に抑制した薄型のロック装置1を提供できる。
【0061】
さらに、ロック装置1は、基本的にロック体12、基体10、並列リンク22、交差リンク23と、前側から順次組み付けて構成できるため、組み立ての作業性が良好である。
【0062】
そして、上記のロック装置1を備えることで、ロック装置1の配置スペースが小さく、外形を大型化することなく収納容量を増加させた収納装置2を構成できる。
【0063】
しかも、ロック装置1は、蓋部材5の入り口付近にあるため、ロック装置1を薄型に構成できることにより、蓋部材5を開いた状態での収納装置2の間口を広く取ることができ、出し入れしやすい収納装置2とすることができる。
【0064】
なお、一実施の形態において、リンク機構11は、一つの並列リンク22と一つの交差リンク23とがあれば、動作を成立させることができる。この場合には、部品点数をより抑制でき、一層のコスト削減及び軽量化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、例えば車両用の収納装置の蓋部材をロックするロック装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0066】
1 ロック装置
2 収納装置
3 開口部
4 第一部材である本体部
5 第二部材である蓋部材
11 リンク機構
12 ロック体
22 一のリンクである並列リンク
23 他のリンクである交差リンク
25 回避部
44 ロック受け部