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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130885
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ロック装置及び収納装置
(51)【国際特許分類】
   E05C 9/04 20060101AFI20240920BHJP
   E05C 21/00 20060101ALI20240920BHJP
   E05B 83/30 20140101ALI20240920BHJP
   B60R 7/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E05C9/04
E05C21/00 A
E05B83/30 A
B60R7/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040831
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】汐月 隆仁
【テーマコード(参考)】
2E250
3D022
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250LL11
3D022CA08
3D022CC03
3D022CD14
(57)【要約】
【課題】簡素で安価な構成で、限られたスペースに配置できるロック装置及びこれを備えた収納装置を提供する。
【解決手段】ロック装置1は、リンク機構11を備える。リンク機構11は、ロック体12に対して回動可能に連結された対をなす並列リンク22と、並列リンク22のそれぞれに回動可能に連結されるとともに互いに回動可能に連結された対をなす交差リンク23と、を有し、対をなす交差リンク23同士の連結部40のスライド動作と対をなす並列リンク22の回動動作との連動により対をなすロック体12を相反する方向へ移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材に対し第二部材をロック可能であるとともにこのロックを解除可能なロック装置であって、
前記第一部材と前記第二部材との一方に設けられた対をなすロック受け部に対してそれぞれ相反する方向への移動により端部が挿脱される対をなすロック体と、
これらロック体に対して回動可能に連結された対をなす一のリンクと、これら一のリンクのそれぞれに回動可能に連結されるとともに互いに回動可能に連結された対をなす他のリンクと、を有し、対をなす前記他のリンク同士の連結部のスライド動作と対をなす前記一のリンクの回動動作との連動により対をなす前記ロック体を相反する方向へ移動させるリンク機構と、
を備えることを特徴とするロック装置。
【請求項2】
対をなす一のリンクは、それぞれ回動可能に支持されて一端部がロック体にそれぞれ回動可能に連結され、
対をなす他のリンクは、一端部が前記一のリンクの他端部にそれぞれ回動可能に連結され、他端部が前記一のリンク間で互いに回動可能に連結されてガイド部によりスライド方向にガイドされている
ことを特徴とする請求項1記載のロック装置。
【請求項3】
対をなす他のリンクは、それぞれ板状に形成され、互いに連結されている連結部において、一方が他方に対して板厚方向に屈曲されて重ねられている
ことを特徴とする請求項1記載のロック装置。
【請求項4】
開口部を有する第一部材である本体部と、
前記開口部を開閉可能な第二部材である蓋部材と、
前記蓋部材に設けられ、前記開口部を閉じた状態で前記蓋部材を前記本体部にロックする請求項1ないし3いずれか一記載のロック装置と、
を備えることを特徴とする収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材に対し第二部材をロック可能であるとともにこのロックを解除可能なロック装置及びこれを備えた収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載されるグローブボックスなどの開閉装置において、第一部材である本体部に対して第二部材である蓋体を開閉可能にロックするロック装置が用いられる。このようなロック装置は、ロック体である長尺の一対のロッドの先端部がロック受け部に付勢された状態で挿入されて蓋体をロックしており、乗員などの使用者が操作ハンドルをスライドまたは回動させることで、この操作ハンドルの操作に応じてロッドが付勢に抗してロック受け部から長手方向に退避することにより、ロックが解除される。
【0003】
例えば、一対のロッドを操作ハンドルの操作に連動させるために、回動可能な回動体であるロータの回動中心を基準として互いに反対側の位置にロッドを連結したものがある。この構成では、一対のロッドの位置がずれるので、ロッドの位置を調整するためにロッドを屈曲させる必要があり、設計及び強度計算の工数が増加するとともに、ロータの軸受けを設定するために厚みが大きくなる。
【0004】
そこで、例えば四つのリンクを端部同士でヒンジ接続して四角形状に配置したリンク機構を用い、対角に位置するリンクの連結部にロッドを連結することで、リンク機構の変形によってロッドを相反する方向に移動可能としたものが知られている。この構成では、ロッドを互いに略同一直線上に配置可能になり、ロッドを直線状とすることができるとともに、軸受けが不要であるために厚みを抑えることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-151754号公報 (第4-9頁、図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のロック装置では、リンク機構の可動用のスペースを大きく取る必要があるとともに、リンク機構の連結部に囲まれる内方がデッドスペースとなっていることにより収納スペースを確保する必要があるため、レイアウト上の制限を受けやすく、より設計自由度を向上した構成が望まれている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡素で安価な構成で、限られたスペースに配置できるロック装置及びこれを備えた収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のロック装置は、第一部材に対し第二部材をロック可能であるとともにこのロックを解除可能なロック装置であって、前記第一部材と前記第二部材との一方に設けられた対をなすロック受け部に対してそれぞれ相反する方向への移動により端部が挿脱される対をなすロック体と、これらロック体に対して回動可能に連結された対をなす一のリンクと、これら一のリンクのそれぞれに回動可能に連結されるとともに互いに回動可能に連結された対をなす他のリンクと、を有し、対をなす前記他のリンク同士の連結部のスライド動作と対をなす前記一のリンクの回動動作との連動により対をなす前記ロック体を相反する方向へ移動させるリンク機構と、を備えるものである。
【0009】
請求項2記載のロック装置は、請求項1記載のロック装置において、対をなす一のリンクは、それぞれ回動可能に支持されて一端部がロック体にそれぞれ回動可能に連結され、対をなす他のリンクは、一端部が前記一のリンクの他端部にそれぞれ回動可能に連結され、他端部が前記一のリンク間で互いに回動可能に連結されてガイド部によりスライド方向にガイドされているものである。
【0010】
請求項3記載のロック装置は、請求項1記載のロック装置において、対をなす他のリンクは、それぞれ板状に形成され、互いに連結されている連結部において、一方が他方に対して板厚方向に屈曲されて重ねられているものである。
【0011】
請求項4記載の収納装置は、開口部を有する第一部材である本体部と、前記開口部を開閉可能な第二部材である蓋部材と、前記蓋部材に設けられ、前記開口部を閉じた状態で前記蓋部材を前記本体部にロックする請求項1ないし3いずれか一記載のロック装置と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のロック装置によれば、複雑な部品を必要とすることなく、リンク機構とロック体とからなる、部品点数を抑制した簡素で安価な構成で、限られたスペースへの取り付けが可能になる。
【0013】
請求項2記載のロック装置によれば、請求項1記載のロック装置の効果に加えて、対をなすロック体を相反する方向へ移動させるリンク機構を省スペースで簡素に構成できる。
【0014】
請求項3記載のロック装置によれば、請求項1記載のロック装置の効果に加えて、互いに交差する板状の他のリンクを少ない厚みで前後方向に重ねて配置できる。
【0015】
請求項4載の収納装置によれば、ロック装置の配置スペースが小さく、外形を大型化することなく収納容量を増加させ、かつ、物品を出し入れしやすい収納装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態のロック装置を示す正面図であり、(a)はロック状態を示し、(b)はアンロック状態を示す。
図2】同上ロック装置の平面図である。
図3】同上ロック装置のリンク機構の例を示す正面図であり、(a)は一のリンクが中央部で回動可能に支持されている例を示し、(b)は一のリンクが中央部から一端部側に偏った位置で回動可能に支持されている例を示す。
図4】同上ロック装置を備える収納装置を示す分解斜視図である。
図5】同上収納装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図4及び図5において、1はロック装置を示す。ロック装置1は、第一部材に対し第二部材をロック可能であるとともにこのロックを解除可能なものである。例えば、第一部材及び第二部材は任意の開閉装置あるいは収納装置に用いられる。図示される例では、ロック装置1は収納装置2に用いられる。収納装置2は、例えば車両用のグローブボックスである。収納装置2は、開口部3を有する第一部材である本体部4と、この本体部4の開口部3を開閉する第二部材である蓋部材5と、を備える。蓋部材5は、例えばインナ部材5aとアウタ部材5bとの複数の部材を有し、ロック装置1は、蓋部材5においてインナ部材5aとアウタ部材5bとの間の空間部に主として配置される。そして、ロック装置1は、開口部3を閉じた状態で蓋部材5を本体部4にロックするとともに、ロックの解除により蓋部材5が開口部3を開くことが可能となる。
【0019】
ロック装置1は、基体10を備える。基体10は、ボディ部あるいはベースなどとも呼ばれ、第一部材と第二部材とのいずれか一方、本実施の形態では第二部材(蓋部材5のインナ部材5a)に一体的に取り付けられる。図示される例では、基体10は、第一部材と第二部材とのいずれか一方に対し別体として形成されているが、これに限らず、一体に形成されていてもよい。そして、この基体10に対し、リンク機構11、及び、対をなすロック体12が取り付けられる。図示される例では、基体10に対し、車両の乗員などの使用者によりロックの解除時に操作される被操作体13がさらに取り付けられる。
【0020】
なお、以下、使用者側から見た方向を基準として前後方向を規定し、使用者側である図中の矢印FR方向を前側あるいは手前側、その反対方向である矢印RR方向を後側あるいは背後側とする。また、図示される例では、ロック体12は左右方向(矢印L,R方向)に延びて配置されているものとし、これら前後方向及び左右方向に対して直交する方向(矢印U,D方向)を上下方向として説明するが、これに限られず、ロック装置1の設置姿勢によって、左右方向及び上下方向については適宜変更されるものとする。
【0021】
図1(a)、図1(b)及び図4に示す基体10は、例えば平板状に形成されている。本実施の形態では、基体10は、四角形板状となっている。図示される例では、基体10は、左右方向に長手方向を有して配置されている。例えば、基体10は、左右両側に係止部15が形成されており、この係止部15がインナ部材5aに形成された係止受け部16に係止されることで、インナ部材5aに一体的に保持されている。本実施の形態において、係止部15は、例えば爪部であり、係止受け部16は、例えば係止部15が爪嵌合されるスリットである。これに限らず、係止部15及び係止受け部16は、任意の構成としてよく、また、基体10がインナ部材5aに一体に形成されている場合には、これら係止部15及び係止受け部16は不要である。
【0022】
リンク機構11は、基体10に対し前側に位置する。リンク機構11は、複数のリンク20により構成されている。リンク20には、対をなす一のリンクである並列リンク22と、対をなす他のリンクである交差リンク23と、が設定されている。本実施の形態では、並列リンク22と、交差リンク23と、は、ロック体12に対応してそれぞれ一対ずつ設定されている。
【0023】
並列リンク22は、それぞれ直線板状に形成されている。一方及び他方の並列リンク22a,22bは、ロック体12の移動方向である長手方向、本実施の形態では左右方向に離れて並んで配置され、ロック体12の移動方向である長手方向と交差する方向、本実施の形態では上下方向に延びている。本実施の形態において、各並列リンク22は、同一長さ、同一厚みなどを有する略同一形状である。
【0024】
また、各並列リンク22は、基体10に対し、支持部25により回動可能に支持されている。支持部25は、基体10に対し、リンク機構11を回動可能に支持する。支持部25の構成は、自由継手(ボールジョイント)など任意のものを用いてよいが、例えば本実施の形態では、一方が軸部、他方が穴部として形成されている。本実施の形態では、支持部25は、並列リンク22から突出する軸部26と、基体10に形成された穴部27と、からなる。
【0025】
軸部26は、並列リンク22の長手方向の中央部から基体10側である後側に突出している。軸部26の先端部には、軸部26の軸方向に対して交差する方向に突出する抜止部が形成されている。抜止部は、平板状に形成され、この抜止部によって、軸部26が鉤状となっている。
【0026】
穴部27は、基体10の左右両側の位置で基体10を板厚方向に貫通して形成されている。穴部27には、軸部26の抜止部を特定の角度でのみ通過させる切欠部が連なって形成されている。「特定の角度」は、並列リンク22がリンク機構11の通常の動作範囲でなし得る角度範囲外に設定されている。このため、切欠部と抜止部とにより、軸部26が穴部27に対して通常の動作時に前後方向に抜けることが防止される。
【0027】
交差リンク23は、それぞれ直線板状に形成されている。交差リンク23は、並列リンク22に対して前側に位置する。一方及び他方の交差リンク23a,23bは、一方及び他方の並列リンク22a,22bに対して傾斜して配置されている。一方及び他方の交差リンク23a,23bは、下端部が一方及び他方の並列リンク22a,22bの下端部にそれぞれ回動可能に連結され、互いの上端部同士が回動可能に連結されている。そして、これら一方及び他方の交差リンク23a,23bは、一方及び他方の並列リンク22a,22b間に位置する。つまり、並列リンク22と交差リンク23とは、正面から見てW字状をなすように交差して配置される。本実施の形態において、各交差リンク23は、同一長さを有する略同一形状である。
【0028】
そして、並列リンク22に対し、交差リンク23が板厚方向である前後方向に重ねられているとともに、交差リンク23同士が板厚方向である前後方向に重ねられている。本実施の形態では、並列リンク22が後側、交差リンク23が前側に位置する。好ましくは、交差リンク23のいずれか一方の一部に、他方に対して互いに重なる方向である板厚方向に空間部を形成する屈曲部31が形成されている。本実施の形態では、屈曲部31は、他方の交差リンク23bの上端部に形成されており、その屈曲部31の後側の空間部に一方の交差リンク23aの上端部が位置し、他方の交差リンク23bの上端部と前後方向に重ねられている。そのため、一方及び他方の交差リンク23a,23bの下端部を略同一面上に位置させ、リンク機構11の厚みを抑制することが可能となっている。
【0029】
並列リンク22と交差リンク23とを連結する連結部32は、それぞれ回動可能に構成され、リンク機構11の対偶となっている。連結部32の構成は、自由継手(ボールジョイント)など任意のものを用いてよいが、例えば本実施の形態では、一方が軸部、他方が穴部として形成されている。本実施の形態では、連結部32は、並列リンク22から突出する軸部34と、交差リンク23に形成された穴部35と、からなる。
【0030】
軸部34は、並列リンク22の両端部から交差リンク23側である前側に突出している。軸部34の先端部には、軸部34の軸方向に対して交差する方向に突出する抜止部37が形成されている。抜止部37は、平板状に形成され、この抜止部37によって、軸部34が鉤状となっている。
【0031】
穴部35は、交差リンク23の両端部の位置で交差リンク23を板厚方向に貫通して形成されている。穴部35には、抜止部37を特定の角度でのみ通過させる切欠部38が連なって形成されている。「特定の角度」は、並列リンク22と交差リンク23とがリンク機構11の通常の動作範囲でなし得る角度範囲外に設定されている。このため、切欠部38と抜止部37とにより、軸部34が穴部35に対して通常の動作時に前後方向に抜けることが防止される。
【0032】
また、一方の交差リンク23aと他方の交差リンク23bとを連結する連結部40は、回動可能に構成され、リンク機構11の対偶となっている。連結部40は、少なくとも回動ピン42を有する。回動ピン42は、連結部40の回動軸を構成する。回動ピン42は、いずれか一方の交差リンク23の上端部に一体的に形成されていてもよいし、各交差リンク23とは別体でもよい。本実施の形態において、回動ピン42は、一方及び他方の交差リンク23a,23bとそれぞれ別体に形成されている。図2に示すように、回動ピン42は、径大の頭部42aと、頭部42aから軸状に突出する挿通軸部42bと、を有し、挿通軸部42bが、図4に示すように、他方の交差リンク23bの上端部に形成された穴部44と、一方の交差リンク23aの上端部に形成された穴部45と、に亘り前側から挿通されて、一方の交差リンク23aの後側に突出している。本実施の形態において、穴部44,45は、それぞれ丸穴状に形成されている。
【0033】
そして、交差リンク23から後側に突出する回動ピン42の挿通軸部42b(図2)の先端部が、ガイド部47によりロック体12のスライド方向に対し交差する方向、本実施の形態では上下方向にスライド可能にガイドされる。すなわち、ガイド部47は、交差リンク23の連結部40を上下方向、すなわちロック体12の移動方向と交差または直交する方向にスライド可能にガイドする。ガイド部47は、基体10に形成されている。図示される例では、ガイド部47は、上下方向に長穴状のガイド穴部であり、挿通軸部42b(図2)の先端部が前側から挿入されている。
【0034】
図1(a)、図1(b)及び図4に示すロック体12は、ロッド、あるいはピンなどとも呼ばれる長尺状の部材である。ロック体12は、第一方向に移動可能であって、第一部材と第二部材との他方に設けられた穴部などの対をなすロック受け部50に対してそれぞれ移動により一端部側(先端部側)が挿脱されることで、第二部材をロックするスライド部材である。本実施の形態において、ロック体12は、その長手方向に移動可能である。すなわち、本実施の形態では、第一方向とは、ロック体12の長手方向であって、図示される例では左右方向である。
【0035】
本実施の形態において、ロック体12は、基体10に対して左右に対をなし、基体10に対して左右方向に延出されている。これらロック体12は、それぞれ直線長尺状に形成されている。ロック体12は、一端部が基体10に対し突出している、ロック体12の長さについては、収納装置2におけるリンク機構11の配置に応じて設定され、本実施の形態では各ロック体12の長さは互いに略等しい。図示される例では、ロック体12は、一端部側がインナ部材5aに形成された挿通穴部52を介して蓋部材5の側方に突出しており、その挿通穴部52から突出する端部にロック部53が形成されている。ロック部53は、先細に形成され、本体部4に形成されたロック受け部50に対して挿脱されることにより、ロック装置1による本体部4に対する蓋部材5の開閉のロック及びロックの解除が可能となっている。
【0036】
また、ロック体12の他端部側は、リンク機構11のリンク20の並列リンク22の上端部に対して回動可能に連結されている。つまり、一方のロック体12aの右端部が一方の並列リンク22aの上端部と連結され、他方のロック体12bの左端部が他方の並列リンク22bの上端部と連結される。この状態で、ロック体12は、基体10の上方に位置し、左右のロック体12の高さ位置が一致または略一致している。また、本実施の形態において、ロック体12は、並列リンク22の後側に連結される。
【0037】
ロック体12とリンク20とを連結するリンク連結部55の構成は、自由継手(ボールジョイント)など任意のものを用いてよいが、例えば本実施の形態では、一方が軸部、他方が穴部として形成されている。図示される例では、リンク連結部55は、並列リンク22から突出する軸部57と、ロック体12に形成された穴部58と、からなる。
【0038】
軸部57は、並列リンク22から後側に突出している。好ましくは、軸部57は、軸部34と同様に板状の抜止部60が形成されて鉤状となっている。
【0039】
穴部58は、ロック体12を厚み方向に貫通して形成されている。穴部58は、好ましくは穴部35と同様に切欠部が形成されて、軸部57がロック体12及びリンク20の並列リンク22の上端部側の可動範囲で容易に外れないように、軸部57が穴部58に対して抜け止め保持されている。
【0040】
また、穴部58が形成されているロック体12の他端部には、リンク機構11の少なくとも一部を収納する収納空間部を形成する凹部62が形成されている。凹部62は、ロック体12の他端部の前側を切り欠いて形成されている。そのため、凹部62の位置で、ロック体12の他端部は前後方向の厚みが小さくなっている。凹部62の前後方向の深さは、並列リンク22及び交差リンク23の板厚より大きく設定されている。図2に示すように、上下方向から見て、左右の凹部62間にリンク機構11が位置する。
【0041】
そして、図4に示す被操作体13は、操作ハンドル、あるいなノブなどとも呼ばれる。被操作体13は、可動的に設けられて、ロック装置1が取り付けられた第一部材と第二部材とのいずれか一方(本実施の形態では蓋部材5)から露出し、使用者の操作に応じて基体10に対して動作することによりロック体12を移動させてロック装置1によるロックを解除(アンロック)する部材である。使用者による被操作体13の回動操作またはスライド操作が、ロック体12、あるいはリンク機構11に伝達されるように構成されている。つまり、対をなすロック体12とリンク機構11とは、一体的に連動するため、被操作体13は、対をなすロック体12とリンク機構11とのいずれかに対して外力を作用させることにより、ロック体12をロック解除方向に移動させることができる。被操作体13は、その位置または姿勢が変わるように動作すれば、任意の構成としてよい。本実施の形態では、被操作体13は、蓋部材5のアウタ部材5bに形成された開口部64から収納装置2の前方、例えば車室内に露出し、その開口部64に配置されている。図示される例では、被操作体13は、例えば正面から見て四角形状に形成された板状部材である。
【0042】
本実施の形態では、被操作体13は、リンク機構11と接続される。図示される例では、被操作体13は、加圧部を備え、この加圧部が、使用者の操作に伴いリンク機構11の交差リンク23の連結部40の上部に当接することで、交差リンク23の上端部の連結部40がガイド部47に沿って下方へと移動するように構成されている。
【0043】
また、好ましくは、ロック装置1は、ロック状態を付勢保持する付勢手段71を備える。付勢手段71は、ロック体12のロック部53がロック受け部50に挿入された状態を維持する方向へと、ロック体12、リンク機構11、あるいは被操作体13のいずれかを付勢する。本実施の形態では、付勢手段71は、リンク機構11のリンク20、図示される例では、並列リンク22の下端部間に保持されている。付勢手段71は、例えばコイルばね、本実施の形態では引っ張りばねが好適に用いられる。付勢手段71の両端部が、一方及び他方の並列リンク22a,22bの下端部の後側に形成された受け部72に引っ掛け保持される。
【0044】
そして、ロック装置1は、基体10に対し、並列リンク22を前側から支持部25の位置で取り付け、各並列リンク22にロック体12をリンク連結部55の位置で連結しつつ、基体10の係止部15をインナ部材5aの係止受け部16に対し前側から位置合わせして押し込み、爪嵌合させる。次いで、各並列リンク22に連結部32の位置で各交差リンク23を前側から連結する。また、付勢手段71を、各並列リンク22の受け部72間に取り付ける。そして、被操作体13を開口部64に取り付けたアウタ部材5bによりインナ部材5aを前側から覆って、ロック装置1を内蔵した蓋部材5が組み立てられる。このように、ロック装置1は、基本的に前側から部品を順次組み付けて組み立てられる。
【0045】
このように組み立てたロック装置1は、蓋部材5が開口部3を閉じた位置で、付勢手段71の付勢により、図1(a)に示すように、リンク機構11の一方及び他方の並列リンク22a,22bの下端部間が互いに近接する方向に引っ張られることで、一方の並列リンク22aが支持部25を中心として図中の反時計回り方向に付勢され、他方の並列リンク22bが支持部25を中心として図中の時計回り方向に付勢されて、一方及び他方の並列リンク22a,22bの上端部に連結されている一方及び他方のロック体12a,12bが左右に進出した位置で保持される。そこで、一方及び他方のロック体12a,12bのロック部53,53がロック受け部50,50に挿入された状態で保持され、蓋部材5を本体部4にロックする。
【0046】
また、ロック装置1によるロックを解除する際には、使用者が被操作体13(図4)を操作して、リンク機構11の一方及び他方の交差リンク23a,23bの上端部同士の連結部40をガイド部47に沿って矢印に示すように下方にスライドさせると、一方及び他方の交差リンク23a,23bのそれぞれの下端部が、付勢手段71の付勢に抗して互いに離れる方向に移動することで、これら一方及び他方の交差リンク23a,23bの下端部と連結されている一方及び他方の並列リンク22a,22bの下端部が、それぞれ相反する方向へと移動し、一方の並列リンク22aが支持部25を中心として矢印に示すように図中の時計回り方向に回動し、他方の並列リンク22bが支持部25を中心として矢印に示すように図中の反時計回り方向に回動する。つまり、交差リンク23の連結部40のスライド動作が、一方及び他方の並列リンク22a,22bの回動運動に変換される。そして、一方及び他方の並列リンク22a,22bの回動に伴い、図1(b)に示すように、一方の並列リンク22aの上端部と連結部32を介して連結されている一方のロック体12aが右方向にスライドし、他方の並列リンク22bの上端部と連結部32を介して連結されている他方のロック体12bが左方向にスライドすることで、一方及び他方のロック体12a,12b間の距離が短縮される。したがって、各ロック体12のロック部53がロック受け部50から引き抜かれ、ロック装置1によるロックが解除される。
【0047】
上述したように、一実施の形態では、ロック体12の移動方向に対して交差する方向に配置された並列リンク22と、並列リンク22に対して傾斜する方向に配置された交差リンク23と、が連結され、対をなすロック体12を相反する方向へ移動させるリンク機構11において、並列リンク22と交差リンク23とを互いの一部を重ねて互いに回動可能に連結する構成とする。そのため、複雑な部品を必要とすることなく、リンク機構11とロック体12とからなる、部品点数を抑制した簡素で安価な構成で、リンク機構11の並列リンク22と交差リンク23とを互いに一部を重ねて省スペースで配置でき、限られたスペースへの取り付けが可能になる。
【0048】
また、リンク機構11は、対をなす並列リンク22を、それぞれ回動可能に支持して上端部をロック体12にそれぞれ回動可能に連結し、対をなす交差リンク23は、下端部を並列リンク22の下端部にそれぞれ回動可能に連結し、上端部同士を並列リンク22間で互いに回動可能に連結してガイド部47によりスライド方向にガイドすることで、対をなすロック体12を相反する方向へ移動させるリンク機構11を省スペースで簡素に構成できる。
【0049】
さらに、左右のロック体12の上下の位置を略同一とすることができるので、各ロック体12を屈曲させることなく直線状に形成できるため、ロック体12の形状を簡素化でき、ロック体12の設計及び強度計算の工数を抑制できる。
【0050】
しかも、リンク機構11は、並列リンク22の回動トルクに応じて操作荷重が設定されるので、図3(a)及び図3(b)に例を示すように、回動中心である支持部25の中心軸からリンク連結部55までの距離L1と支持部25から連結部32までの距離L2との比率を調整することにより、レイアウトを大きく変えることなく、ロック装置1の操作荷重(操作トルク)を容易に調整できる。例えば、図3(a)に示す例では、L1=L2であるのに対し、図3(b)に示す例では、L1<L2である。そのため、てこの原理により、図3(b)に示す例の方が図3(a)に示す例よりも操作荷重が大きくなる。
【0051】
板状に形成した一対の交差リンク23の一方に、連結部40において、板厚方向である前後方向に空間部を形成する屈曲部31を形成し、交差リンク23の他方を、屈曲部31で互いに重ねて配置することで、互いに上端部が交差する板状の交差リンク23を少ない厚みで前後方向に重ねて配置できる。
【0052】
また、ロック体12が、リンク機構11との連結位置に、リンク機構11の少なくとも一部が配置される凹部62をリンク機構11と重なる方向に有することで、リンク機構11及びロック体12を少ない厚みで重ねて前後方向に配置できる。
【0053】
さらに、連結部32は、軸部34に形成した抜止部37を用いた鉤状の構成により並列リンク22と交差リンク23とを厚み方向に抜け止めしているため、厚みを増加させることのない薄型化に対応した構造でありながら、厚み方向、例えば前後方向の衝撃に伴うリンク機構11の脱落を防止できる。
【0054】
同様に、支持部25は、軸部26に形成した抜止部を用いた鉤状の構成により並列リンク22を基体10に対して厚み方向に抜け止めし、リンク連結部55は、軸部57に形成した抜止部60を用いた鉤状の構成によりロック体12と並列リンク22とを厚み方向に抜け止めしているため、厚みを増加させることのない薄型化に対応した構造でありながら、厚み方向、例えば前後方向の衝撃に伴うロック体12からのリンク機構11の脱落を防止できる。
【0055】
したがって、厚みを最小限に抑制した薄型のロック装置1を提供できる。
【0056】
さらに、ロック装置1は、基本的にロック体12、基体10、並列リンク22、交差リンク23と、前側から順次組み付けて構成できるため、組み立ての作業性が良好である。
【0057】
そして、上記のロック装置1を備えることで、ロック装置1の配置スペースが小さく、外形を大型化することなく収納容量を増加させた収納装置2を構成できる。
【0058】
しかも、ロック装置1は、蓋部材5の入り口付近にあるため、ロック装置1を薄型に構成できることにより、蓋部材5を開いた状態での収納装置2の間口を広く取ることができ、出し入れしやすい収納装置2とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば車両用の収納装置の蓋部材をロックするロック装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
1 ロック装置
2 収納装置
3 開口部
4 第一部材である本体部
5 第二部材である蓋部材
11 リンク機構
12 ロック体
22 一のリンクである並列リンク
23 他のリンクである交差リンク
40 連結部
47 ガイド部
50 ロック受け部
図1
図2
図3
図4
図5