(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130886
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】連動ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B62L 3/08 20060101AFI20240920BHJP
B62L 3/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B62L3/08
B62L3/02 A
B62L3/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040832
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安原 茉文
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼塚 一宏
(72)【発明者】
【氏名】金井 哲勲
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 翔
(57)【要約】
【課題】輪ブレーキ操作子の大型化を回避すると共に前輪ブレーキ操作子の操作スペースを確保しながら、前輪ブレーキ操作子の周囲部品をコンパクトに配置しやすくすること。
【解決手段】前輪ブレーキ装置(13)には前輪ブレーキケーブル(31)を介してノッカー(51)が接続され、ノッカー(51)は、前輪ブレーキ操作子(11)に押動されて前輪ブレーキ装置(13)を作動可能に回動し、ノッカー(51)には、ジョイント(61)及び連動ブレーキケーブル(32)を介して連動ブレーキ操作子(12)が接続される連動ブレーキ装置(10)において、前輪ブレーキ操作子(11)を回動自在に支持するブレーキホルダ(21)を有し、ノッカー(51)は、前輪ブレーキ操作子(11)の回動軸(22a)の軸方向視で、回動軸(22a)の車体内側を通る。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪ブレーキ装置(13)を作動させる前輪ブレーキ操作子(11)と、前記前輪ブレーキ装置(13)及び後輪ブレーキ装置(14)を作動させる連動ブレーキ操作子(12)と、を備え、前記前輪ブレーキ装置(13)には前輪ブレーキケーブル(31)を介してノッカー(51)が接続され、前記ノッカー(51)は、前記前輪ブレーキ操作子(11)に押動されて前記前輪ブレーキ装置(13)を作動可能に回動し、前記ノッカー(51)には、ジョイント(61)及び連動ブレーキケーブル(32)を介して前記連動ブレーキ操作子(12)が接続される連動ブレーキ装置において、
前記前輪ブレーキ操作子(11)を回動自在に支持するブレーキホルダ(21)を有し、
前記ノッカー(51)は、前記前輪ブレーキ操作子(11)の回動軸(22a)の軸方向視で、前記回動軸(22a)の車体内側を通る、
連動ブレーキ装置。
【請求項2】
前記ノッカー(51)は、前記回動軸(22a)に沿って屈曲する形状を有し、
前記ジョイント(61)は、前記連動ブレーキ操作子(12)によって作動する場合に、前記回動軸(22a)を中心とする円の接線方向に沿って一時的に移動する、
請求項1に記載の連動ブレーキ装置。
【請求項3】
前記ノッカー(51)の車体内側端は、前記ブレーキホルダ(21)の車体内側端よりも車体外側に位置する、
請求項1又は2に記載の連動ブレーキ装置。
【請求項4】
前記ノッカー(51)は、前記前輪ブレーキケーブル(31)が取り付けられるケーブル取付部(51b)と、前記ケーブル取付部(51b)から前記ジョイント(61)と連結される位置まで延出する延出部(51c)と、を有し、
前記ケーブル取付部(51b)は、前記回動軸(22a)の軸方向で、前記延出部(51c)と重なると共に、前記回動軸(22a)の軸方向に直交する方向で、前記ブレーキホルダ(21)と重なる、
請求項2に記載の連動ブレーキ装置。
【請求項5】
前記前輪ブレーキ操作子(11)は、前記ノッカー(51)を回動させるノッカー可動部(11k)を有し、
前記ノッカー可動部(11k)は、前記前輪ブレーキ操作子(11)の車体前方側に突出している、
請求項2又は4に記載の連動ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗り型車両には、前輪ブレーキ装置を作動させる前輪ブレーキ操作子と、前輪ブレーキ装置及び後輪ブレーキ装置を作動させる連動ブレーキ操作子と、を備える連動ブレーキ装置を装備したものがある。
連動ブレーキ装置には、前輪ブレーキ装置に前輪ブレーキケーブルを介してノッカーが接続され、このノッカーが、前輪ブレーキレバーの回動軸の車体外側を通り、前輪ブレーキ操作子に押動されて前輪ブレーキ装置を作動可能に回動すると共に、このノッカーに、ジョイント及び連動ブレーキケーブルを介して連動ブレーキ操作子が接続された構成が知られている(例えば特許文献1参照)。なお、特許文献1中の押動部材がノッカーに相当し、接続部材がジョイントに相当している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成は、ノッカーが前輪ブレーキレバーの回動軸の車体外側を通るので、ノッカーによって前輪ブレーキレバーの操作スペースが狭くなるおそれがある。前輪ブレーキレバーの操作スペースが狭くなる場合、前輪ブレーキレバーを車体外側に大型化する必要が生じ、コスト低減や軽量化に不利となる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、前輪ブレーキ操作子の大型化を回避すると共に前輪ブレーキ操作子の操作スペースを確保しながら、前輪ブレーキ操作子の周囲部品をコンパクトに配置しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前輪ブレーキ装置を作動させる前輪ブレーキ操作子と、前記前輪ブレーキ装置及び後輪ブレーキ装置を作動させる連動ブレーキ操作子とを備え、前記前輪ブレーキ装置には前輪ブレーキケーブルを介してノッカーが接続され、前記ノッカーは、前記前輪ブレーキ操作子に押動されて前記前輪ブレーキ装置を作動可能に回動し、前記ノッカーには、ジョイント及び連動ブレーキケーブルを介して前記連動ブレーキ操作子が接続される連動ブレーキ装置において、前記前輪ブレーキ操作子を回動自在に支持するブレーキホルダを有し、前記ノッカーは、前記前輪ブレーキ操作子の回動軸の軸方向視で、前記回動軸の車体内側を通る、連動ブレーキ装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
前輪ブレーキ操作子の大型化を回避すると共に前輪ブレーキ操作子の操作スペースを確保しながら、前輪ブレーキ操作子の周囲部品をコンパクトに配置しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る連動ブレーキ装置を示す図である。
【
図2】前輪ブレーキレバーをハンドルバー等と共に前方斜めから示す図である。
【
図3】ノッカーを周辺構成と共に車体前方から示す図である。
【
図4】ノッカー51及びジョイント61を周辺構成と共に下方から示す図である。
【
図5】前輪ブレーキレバー及びノッカーの位置を周辺構成と共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右、及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る連動ブレーキ装置を示す図である。
図1には、この連動ブレーキ装置10を有する鞍乗り型車両1の前輪2a、後輪2b、及びハンドルバー3を示している。鞍乗り型車両1は、例えば自動二輪車である。連動ブレーキ装置10は、ハンドルバー3に取り付けられる前輪ブレーキレバー11及び連動ブレーキレバー12と、前輪2aを制動する前輪ブレーキ装置13と、後輪2bを制動する後輪ブレーキ装置14と、を備えている。
【0010】
前輪ブレーキレバー11は、ハンドルバー3の右側部分に、ブレーキホルダ21を介して支持され、鞍乗り型車両の運転者(乗員)が右手で操作する前輪ブレーキ操作子である。前輪ブレーキレバー11は、右ブレーキレバーとも称される。
前輪ブレーキレバー11は、上下方向に沿う回動軸22aを基準にして前後方向に回動自在である。回動軸22aはレバーピボットとも称される。前輪ブレーキレバー11がハンドルバー3側に操作されることによって、前輪ブレーキケーブル31が引かれ、前輪ブレーキ装置13が作動する。前輪ブレーキ装置13は機械式のブレーキ装置であり、例えばドラムブレーキである。
【0011】
連動ブレーキレバー12は、ハンドルバー3の左側部分に支持され、鞍乗り型車両1の運転者が左手で操作する操作子である。連動ブレーキレバー12は、左ブレーキレバーとも称される。連動ブレーキレバー12は、上下方向に沿う回動軸22bを基準にして前後方向に回動自在である。
連動ブレーキレバー12には、CBS(Combined Brake System)モジュール41が接続される。CBSモジュール41は、連動ブレーキレバー12の操作力を、連動ブレーキケーブル32と後輪ブレーキケーブル33とに分配する。後輪ブレーキケーブル33は、後輪ブレーキ装置14に接続されるケーブルであり、連動ブレーキレバー12の操作に応じて後輪ブレーキ装置14を作動させる。また、連動ブレーキケーブル32は、前輪ブレーキレバー11側まで延出し、連動ブレーキレバー12の操作に応じて前輪ブレーキ装置13を作動させるケーブルである。
【0012】
つまり、連動ブレーキレバー12が操作された場合、後輪ブレーキ装置14と前輪ブレーキ装置13とが連動して作動する。この場合の後輪ブレーキ装置14の制動力と、前輪ブレーキ装置13の制動力との比率は、CBSモジュール41によって調整される。後輪ブレーキ装置14は機械式のブレーキ装置であり、例えばドラムブレーキである。
【0013】
図2は、前輪ブレーキレバー11をハンドルバー3等と共に前方斜めから示す図である。
図2には、前輪ブレーキ装置13につながる前輪ブレーキケーブル31、及び、連動ブレーキケーブル32をそれぞれ一点鎖線で示している。
ハンドルバー3の右端部には、運転者が右手で把持するアクセルグリップ部3rが設けられる。アクセルグリップ部3rの前方に、ブレーキホルダ21を介して前輪ブレーキレバー11が支持される。ブレーキホルダ21は、ハンドルバー3に固定されるホルダ基部21aと、ホルダ基部21aからハンドルバー3と反対側の方向(前方)へ延びるホルダ突出部21bと、を一体に備える。
【0014】
ホルダ基部21aは、アクセルグリップ部3rの車幅方向内側(車体内側に相当)に位置し、回動軸22aが挿通される。ホルダ突出部21bは、前輪ブレーキレバー11の可動域に入らないように回動軸22aの車幅方向内側に配置される。ホルダ突出部21bには、前輪ブレーキケーブル31が通る貫通孔21cが設けられている。
なお、アクセルグリップ部3rは、運転者がスロットル操作を行うための操作子である。アクセルグリップ部3rからは、運転者のスロットル操作を伝達するための2本のスロットルケーブル34が外部に延出する。スロットルケーブル34は、ハンドルバー3の下方をハンドルバー3に沿って車体内側に向けて延出する。
【0015】
前輪ブレーキレバー11は、ブレーキホルダ21のホルダ基部21aに回動軸22aを介して回動自在に支持される基部11aと、基部11aからアクセルグリップ部3rの前方を車幅方向外側(車体外側に相当)に延びるレバー本体11bと、を備える。
前輪ブレーキレバー11の基部11aの下方、かつ、ブレーキホルダ21の下方には、前輪ブレーキケーブル31が取り付けられるノッカー51が配置される。ノッカー51は、回動軸22aを基準にして回動自在にホルダ基部21aに支持される。ノッカー51が回動することによって、前輪ブレーキ装置13を作動させることができる。ノッカー51は、前輪ブレーキ装置13によって押動される部材であるので、押動部材とも称される。
【0016】
ハンドルバー3の下方には、連動ブレーキケーブル32が取り付けられるジョイント61が設けられる。ジョイント61は、ノッカー51に連結されることによって、ノッカー51と連動ブレーキケーブル32とを接続させる接続部品として機能する。連動ブレーキレバー12が操作されることによって、CBSモジュール41、連動ブレーキケーブル32、及びジョイント61からなる連動機構を介してノッカー51が回動し、前輪ブレーキ装置13を作動させることができる。ジョイント61は、ノッカー51と連動ブレーキケーブル32とを接続する部材であるので、接続部材とも称される。
【0017】
次に、ノッカー51及びその周辺構成について詳述する。
図3は、ノッカー51を周辺構成と共に車体前方から示す図であり、
図4は、ノッカー51及びジョイント61を周辺構成と共に下方から示す図である。
図3及び
図4のいずれも前輪ブレーキレバー11が非操作状態の場合を示している。
図3に示すように、ノッカー51は、前輪ブレーキレバー11の回動軸22aが挿通される回動軸挿通部51aと、前輪ブレーキケーブル31が取り付けられるケーブル取付部51bと、ケーブル取付部51bからジョイント61と連結される位置まで延出する延出部51cと、を一体に備える。
回動軸挿通部51aは、前輪ブレーキレバー11の基部11aの下方に位置し、回動軸22aを基準にして回動自在に支持される。これによって、ノッカー51は、回動軸22aを基準にして回動自在である。なお、前輪ブレーキレバー11とノッカー51とは、回動軸22aを基準にしてそれぞれ独立して回動自在である。
【0018】
図3及び
図4に示すように、ケーブル取付部51bは、前輪ブレーキレバー11の基部11aの下方に位置する。ケーブル取付部51bは、回動軸挿通部51aから回動軸22aの径方向外側(本実施形態では回動軸22aの前側)にずれた位置に、前輪ブレーキケーブル31の端部が係止するケーブル係止孔51hを有する。これにより、ノッカー51が回動軸22aを基準にして回動した場合に、前輪ブレーキケーブル31を、前輪ブレーキ装置13を作動させる側に移動させることができる。
【0019】
本構成では、
図3に示すように、回動軸挿通部51a、及びケーブル取付部51bは、車幅方向で、ブレーキホルダ21に重なる位置に設けられる。車幅方向は、回動軸22aに直交する方向に相当するので、回動軸挿通部51a、及びケーブル取付部51bは、回動軸22aの軸方向に直交する方向でブレーキホルダ21に重なっている。なお、「車幅方向は、回動軸22aに直交する方向に相当する」とは、車幅方向が、回動軸22aに直交する方向と一致する場合に限定されず、車幅方向が、回動軸22aに直交する方向に近い方向である態様も含んでいる。
また、回動軸挿通部51a、及びケーブル取付部51bの一部又は全部が、回動軸22aの軸方向に直交する方向でブレーキホルダ21と重なる構成であればよい。
【0020】
また、ケーブル取付部51bは、ケーブル係止孔51hから車体外側(車幅方向外側に相当)に突出する押下部51pを有している。押下部51pは、前輪ブレーキレバー11に設けられたノッカー可動部11kによって押下される部分である。
ここで、ノッカー可動部11kは、レバー本体11bと基部11aとの間、かつ、回動軸22aよりも前方かつ車幅方向外側に位置する。ノッカー可動部11kは、レバー本体11bから前方かつ下方に突出する形状を有し、レバー本体11bがアクセルグリップ部3r側に操作された場合に押下部51pをアクセルグリップ部3r側に押下する。これにより、ケーブル取付部51bが前輪ブレーキレバー11と同方向に回動し、前輪ブレーキケーブル31を、前輪ブレーキ装置13を作動させる側に移動させ、前輪ブレーキ装置13を作動させることができる。
【0021】
なお、前輪ブレーキレバー11及びノッカー51は、
図2に示す付勢部材17によってブレーキ作動側と反対側に付勢される。そのため、前輪ブレーキレバー11及び連動ブレーキレバー12が操作されていない場合、前輪ブレーキレバー11及びノッカー51は、前輪ブレーキ装置13を作動させない非操作位置(
図2~
図4に示す位置に相当)に保持される。
本構成では、
図4に示すように、ノッカー可動部11kが、前輪ブレーキレバー11の前方に突出するので、ノッカー可動部11kによって、前輪ブレーキレバー11の操作スペースの範囲を規定できる。これにより、運転者の手が前輪ブレーキレバー11の操作スペース外である基部11a側に移動する事態を回避できる。
【0022】
図3に示すように、ノッカー51の延出部51cは、ノッカー可動部11kから下方に突出した後に、ブレーキホルダ21の下方、かつ前輪ブレーキレバー11の回動軸22aよりも車幅方向内側(車体内側に相当)を通って後方に延出する。
図4に示すように、ノッカー51の延出部51cは、回動軸22aの軸方向視で、回動軸22aの周方向に沿って延出する屈曲形状を有している。これにより、ノッカー51の延出部51cを回動軸22aに寄せて配置できる。この延出部51cの延出端51tは、ハンドルバー3と上下に重なり、この延出端51tにジョイント61が連結される。
【0023】
ジョイント61は、このジョイント61の長手方向に延びる長孔61hを有している。この長孔61hに、延出部51cの延出端51tに設けられた軸部材51vが挿通されることによって、ジョイント61が、軸部材51vを基準にして、スライド自在、かつ回動自在にノッカー51と連結される。
【0024】
ジョイント61には、連動ブレーキケーブル32によって
図4の符号Xで示す方向に引っ張る力が作用する。そのため、ジョイント61はこの引張方向Xに沿った状態に保持される。
図4に示すように、引張方向Xは、ノッカー51の回動支点となる回動軸22aを中心とする円C1の接線方向に沿っている。なお、「引張方向Xが円C1の接線方向に沿っている」とは、引張方向Xが円C1の接線方向と一致する場合に限定されず、引張方向Xが円C1の接線方向に近い方向である態様も含んでいる。
【0025】
連動ブレーキレバー12が操作された場合、連動ブレーキケーブル32によってジョイント61が引張方向Xに引っ張られ、ノッカー51が回動軸22aを基準にして
図4の反時計回りに回動し、前輪ブレーキ装置13を作動させることができる。上述したように、引張方向Xは、ノッカー51の回動支点となる回動軸22aを中心とする円C1の接線方向に沿っているので、ジョイント61が引張方向Xに引っ張られた場合、ジョイント61は、回動軸22aを中心とする円C1の接線方向に沿って一時的に移動する。これにより、ジョイント61によってノッカー51をスムーズに回動させやすくなり、かつ、ノッカー51を回動させるために必要なジョイント61の引張力(連動ブレーキケーブル32の引張力に相当)を低減しやすくなる。
本実施形態では、連動ブレーキレバー12の操作開始時点(連動ブレーキケーブル32によるジョイント61の引張開始時点に相当)に、ジョイント61が円C1の接線方向に沿って一時的に移動するが、これに限定されず、連動ブレーキレバー12の操作範囲のいずれかの位置で、ジョイント61が円C1の接線方向に沿って一時的に移動するように構成してもよい。
【0026】
図5は、前輪ブレーキレバー11及びノッカー51の位置を周辺構成と共に示す図である。
図5には、前輪ブレーキ装置13を作動させない非操作位置の場合の前輪ブレーキレバー11及びノッカー51を実線で示し、前輪ブレーキ装置13を作動させる操作位置の場合の前輪ブレーキレバー11及びノッカー51を二点鎖線で示している。
図5に示すように、ノッカー51は、前輪ブレーキレバー11の回動軸22aの車体内側を通る。これにより、ノッカー51が前輪ブレーキレバー11のレバー本体11bの操作を妨げない。また、ノッカー51は、回動軸22aの軸方向視で、回動軸22aに沿って屈曲する形状となっている。これにより、ノッカー51を回動軸22aに寄せて配置できる。
【0027】
前輪ブレーキレバー11が操作された場合、前輪ブレーキレバー11が回動軸22aを支点にして
図5での反時計回りに回動するので、ノッカー可動部11kによって、ノッカー51が回動軸22aを支点にして反時計回りに回動し、前輪ブレーキ装置13を作動させる。
図5に示すように、ジョイント61は、ノッカー51の延出端51tに連結されるので、
図5に示す回動軸22aの軸方向視で、ジョイント61がブレーキホルダ21、及びハンドルバー3と重なる位置に留まり、前輪ブレーキレバー11のレバー本体11bの操作が妨げられない。
【0028】
本構成では、ノッカー51が前輪ブレーキレバー11のレバー本体11bの操作を妨げないので、前輪ブレーキレバー11の操作スペースがノッカー51によって狭くなる事態が回避される。これにより、レバー本体11bを車幅方向外側に大型化しなくても前輪ブレーキレバー11の操作スペースを確保できる。また、ノッカー51を回動軸22a及びブレーキホルダ21に寄せて配置でき、前輪ブレーキレバー11の周囲に位置するブレーキホルダ21及びノッカー51等をコンパクトに配置しやすくなる。
本構成では、ノッカー51を回動軸22aに寄せて配置し、かつ、ノッカー51を、回動軸22aの軸方向視でブレーキホルダ21に重なるように配置することで、回動軸22a周囲にブレーキホルダ21及びノッカー51をコンパクトに配置している。
【0029】
図5には、回動軸22aの軸方向視で、ノッカー51の車体内側端の位置P1と、ブレーキホルダ21の車体内側端の位置P2(
図5はホルダ突出部21bの車体内側端の位置に相当)を示している。
ノッカー51の車体内側端の位置P1は、ブレーキホルダ21の車体内側端の位置P2よりも車幅方向外側(車体外側に相当)に位置する。これにより、ノッカー51がブレーキホルダ21よりも車幅方向内側に張り出さず、ブレーキホルダ21及びノッカー51の配置に必要なスペースが車体内側に拡がる事態を抑制できる。
【0030】
また、前輪ブレーキレバー11及びノッカー51が、前輪ブレーキ装置13を作動させない非操作位置(実線で示す位置)、及び、前輪ブレーキ装置13を作動させる操作位置(二点鎖線で示す位置)のいずれの場合も、ノッカー51は、回動軸22aの軸方向に相当する車体上下方向で、前輪ブレーキレバー11、及びブレーキホルダ21に重なる位置に留まる。これにより、前輪ブレーキレバー11、ブレーキホルダ21及びノッカー51を車体前後方向等にコンパクトに配置できる。
【0031】
また、ジョイント61は、連動ブレーキレバー12の操作に応じてハンドルバー3に沿った方向Xに相当する車幅方向に可動し、かつ、回動軸22aの軸方向に相当する車体上下方向でブレーキホルダ21及びハンドルバー3と重なる領域に位置する。これにより、ジョイント61、ブレーキホルダ21及びハンドルバー3を、車体前後方向等にコンパクトに配置できる。
また、ジョイント61は、回動軸22aよりも車幅方向内側に位置するので、ジョイント61が前輪ブレーキレバー11の操作を妨げず、前輪ブレーキレバー11の車幅方向への大型化を回避できる。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態では、前輪ブレーキ操作子として機能する前輪ブレーキレバー11を回動自在に支持するブレーキホルダ21を有し、ノッカー51は、前輪ブレーキレバー11の回動軸22aの軸方向視で、回動軸22aの車体内側を通る構成である。この構成によれば、前輪ブレーキレバー11の大型化を回避すると共に前輪ブレーキレバー11の操作スペースを確保しながら、前輪ブレーキレバー11の周囲に位置するブレーキホルダ21及びノッカー51を含む周囲部品をコンパクトに配置しやすくなる。したがって、ハンドル周りのコンパクト化、コスト低減及び軽量化等に有利である。
また、ノッカー51が、前輪ブレーキレバー11の回動軸22aの軸方向視で、ブレーキホルダ21に重なるので、回動軸22a周囲にブレーキホルダ21及びノッカー51をコンパクトに配置できる。
【0033】
また、ノッカー51は、回動軸22aに沿って屈曲する形状を有し、ジョイント61は、連動ブレーキ操作子として機能する連動ブレーキレバー12によって作動する場合に、回動軸22aを中心とする円C1の接線方向に沿って一時的に移動する。この構成によれば、ノッカー51を回動軸22aに寄せてコンパクトに配置できる。また、ジョイント61は、連動ブレーキレバー12によって作動する場合に、回動軸22aを中心とする円C1の接線方向に沿って一時的に移動するので、連動ブレーキレバー12の操作時にノッカー51をスムーズに回動させやすくなり、ノッカー51を回動させるために必要な操作力を低減しやすくなる。
【0034】
また、ノッカー51の車体内側端の位置P1は、ブレーキホルダ21の車体内側端の位置P2よりも車体外側に位置するので、ブレーキホルダ21及びノッカー51の配置に必要なスペースが車体内側に拡がる事態を抑制できる。
【0035】
また、ノッカー51のケーブル取付部51bは、車体上下方向に相当する回動軸22aの軸方向で、ノッカー51の延出部51cと重なると共に、車幅方向(本実施形態では回動軸22aの軸方向に直交する方向に相当)で、ブレーキホルダ21と重なる。この構成によれば、車幅方向において、ノッカー51のケーブル取付部51b、延出部51c、及び、ブレーキホルダ21の配置に必要なスペースを抑えることができ、車幅方向へのコンパクト化を図りやすくなる。
なお、回動軸22aの軸方向は、車体上下方向と一致する方向に限定されず、車体上下方向に対して傾いた方向でもよく、車体上下方向と異なる方向でもよい。また、回動軸22aの軸方向に直交する方向は、車幅方向と一致する方向に限定されず、車幅方向に対して傾いた方向でもよく、車幅方向と異なる方向でもよい。
【0036】
また、ハンドルバー3の車体外側端部にグリップ部として機能するアクセルグリップ部3rを有し、ノッカー51の延出部51cが、回動軸22aに対してアクセルグリップ部3rの反対側に相当する車体内側を通るように屈曲する形状に形成される。これにより、アクセルグリップ部3rのスペースがノッカー51で邪魔されず、アクセルグリップ部3rのスペースを確保しながらノッカー51をコンパクトに配置できる。
【0037】
また、前輪ブレーキレバー11は、ノッカー51を回動させるノッカー可動部11kを有し、ノッカー可動部11kは、前輪ブレーキレバー11の車体前方側に突出している。これにより、ノッカー可動部11kを、前輪ブレーキレバー11の操作範囲を規定する規定部材として機能させることができ、専用の規定部材を設ける場合と比べ、前後方向等へのコンパクト化や構造の簡易化を図りやすくなる。
【0038】
上述の実施形態は本発明の一態様を示すものであり、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、細部等の構成は適宜に変更してもよい。例えば、連動ブレーキ装置10の各部材の形状やレイアウトは適宜に変更してもよい。
また、上記実施形態において、前輪ブレーキ操作子が前輪ブレーキレバー11であり、連動ブレーキ操作子が連動ブレーキレバー12である場合を説明したが、これに限定されず、前輪ブレーキ操作子、及び連動ブレーキ操作子のいずれか、又は両方が、手以外(例えば足)で操作する操作子でもよい。
また、本発明を、自動二輪車の連動ブレーキ装置10に適用する場合を説明したが、これに限定されず、本発明を、任意の鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置に適用してもよい。なお、鞍乗り型車両は、二輪車両に限定されず、三輪車両、及び四輪車両等でもよい。
【0039】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0040】
(構成1)前輪ブレーキ装置を作動させる前輪ブレーキ操作子と、前記前輪ブレーキ装置及び後輪ブレーキ装置を作動させる連動ブレーキ操作子と、を備え、前記前輪ブレーキ装置には前輪ブレーキケーブルを介してノッカーが接続され、前記ノッカーは、前記前輪ブレーキ操作子に押動されて前記前輪ブレーキ装置を作動可能に回動し、前記ノッカーには、ジョイント及び連動ブレーキケーブルを介して前記連動ブレーキ操作子が接続される連動ブレーキ装置において、前記前輪ブレーキ操作子を回動自在に支持するブレーキホルダを有し、前記ノッカーは、前記前輪ブレーキ操作子の回動軸の軸方向視で、前記回動軸の車体内側を通る、連動ブレーキ装置。
この構成によれば、前輪ブレーキ操作子の大型化を回避すると共に前輪ブレーキ操作子の操作スペースを確保しながら、前輪ブレーキ操作子の周囲部品をコンパクトに配置しやすくなる。
【0041】
(構成2)前記ノッカーは、前記回動軸に沿って屈曲する形状を有し、前記ジョイントは、前記連動ブレーキ操作子によって作動する場合に、前記回動軸を中心とする円の接線方向に沿って一時的に移動する、構成1に記載の連動ブレーキ装置。
この構成によれば、ノッカーを回動軸に寄せてコンパクトに配置できる。また、ジョイントは、連動ブレーキ操作子によって作動する場合に、回動軸を中心とする円の接線方向に沿って一時的に移動するので、連動ブレーキ操作子の操作時にノッカーをスムーズに回動させやすくなり、かつ、ノッカーを回動させるために必要なジョイントの引張力を低減しやすくなる。
【0042】
(構成3)前記ノッカーの車体内側端は、前記ブレーキホルダの車体内側端よりも車体外側に位置する、構成1又は2に記載の連動ブレーキ装置。
この構成によれば、ブレーキホルダ及びノッカーの配置に必要なスペースが車体内側に拡がる事態を抑制できる。
【0043】
(構成4)前記ノッカーは、前記前輪ブレーキケーブルが取り付けられるケーブル取付部と、前記ケーブル取付部から前記ジョイントと連結される位置まで延出する延出部と、を有し、前記ケーブル取付部は、前記回動軸の軸方向で、前記延出部と重なると共に、前記回動軸の軸方向に直交する方向で、前記ブレーキホルダと重なる、構成2に記載の連動ブレーキ装置。
この構成によれば、回動軸の軸方向に直交する方向において、ノッカーのケーブル取付部、延出部、及び、ブレーキホルダの配置に必要なスペースを抑えることができる。
【0044】
(構成5)前記前輪ブレーキ操作子は、前記ノッカーを回動させるノッカー可動部を有し、前記ノッカー可動部は、前記前輪ブレーキ操作子の車体前方側に突出している、構成2又は4に記載の連動ブレーキ装置。
この構成によれば、ノッカー可動部を、前輪ブレーキ操作子の操作範囲を規定する規定部材として機能させることができ、専用の規定部材を設ける場合と比べ、前後方向等へのコンパクト化や構造の簡易化を図りやすくなる。
【符号の説明】
【0045】
1 鞍乗り型車両
2a 前輪
2b 後輪
3 ハンドルバー
3r アクセルグリップ部
10 連動ブレーキ装置
11 前輪ブレーキレバー(前輪ブレーキ操作子)
11k ノッカー可動部
12 連動ブレーキレバー(連動ブレーキ操作子)
13 前輪ブレーキ装置
14 後輪ブレーキ装置
21 ブレーキホルダ
22a 前輪ブレーキレバーの回動軸
22b 前輪ブレーキレバーの回動軸
31 前輪ブレーキケーブル
32 連動ブレーキケーブル
41 CBSモジュール
51 ノッカー
51a 回動軸挿通部
51b ケーブル取付部
51c 延出部
51t 延出端
51p 押下部
61 ジョイント