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特開2024-130892タイヤ組立体およびタイヤ力推定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130892
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】タイヤ組立体およびタイヤ力推定システム
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/08 20060101AFI20240920BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20240920BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60C23/08 B
G01M17/02
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040839
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 法行
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA21
(57)【要約】
【課題】外部からのアクセスが容易なセンサを取り付けたタイヤ組立体およびタイヤ力推定システムを提供する。
【解決手段】タイヤ組立体1は、タイヤ本体10と、ホイール20と、センサ3とを備える。ホイール20は、タイヤ本体10に装着され、車両側の車軸に連結される。センサ3は、ホイール20の外表面に配置され、車両の走行によって生じる物理量を計測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ本体と、
前記タイヤ本体に装着され、車両側の車軸に連結されるホイールと、
前記ホイールの外表面に配置され、車両の走行によって生じる物理量を計測するセンサと、
を備えるタイヤ組立体。
【請求項2】
前記センサは、前記ホイールのリムに配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ組立体。
【請求項3】
前記センサは、前記車軸に設けられた機械部品との機械的干渉を避けた位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ組立体。
【請求項4】
前記センサは、前記ホイールのハブに配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ組立体。
【請求項5】
前記センサは、前記ホイールのスポークに配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ組立体。
【請求項6】
前記センサは、タイヤ回転軸からタイヤ半径方向に前記ホイールのリム半径の50%以上外側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ組立体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のタイヤ組立体を有するタイヤ力推定システムであって、
前記センサで計測された物理量を取得するセンサ情報取得部と、
タイヤの物理量に基づいてタイヤ力を算出する演算モデルを有し、前記センサ情報取得部により取得された物理量を前記演算モデルに入力してタイヤ力を推定する推定処理部と、を備えることを特徴とするタイヤ力推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ本体にホイールが取り付けられたタイヤ組立体、およびタイヤ力推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着された空気入りタイヤには、タイヤの摩耗やタイヤ力を推定するために各種のセンサが取り付けられる。
【0003】
特許文献1には、タイヤ力を算出する演算モデル生成システムが記載されている。演算モデル生成システムは、タイヤの加速度を取得するセンサ情報取得部と、加速度に基づいてタイヤ力を算出する演算モデルを有し、センサ情報取得部により取得された加速度を入力して演算モデルによりタイヤ力を算出するタイヤ力算出部と、タイヤで計測されるタイヤ軸力とタイヤ力算出部により算出されたタイヤ力とを比較し、演算モデルを更新する演算モデル更新部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-104790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の演算モデル生成システムでは、加速度センサを空気入りタイヤの内腔部に配置した例が示されている。タイヤ力を精度良く推定するためには、加速度センサはタイヤの内腔部におけるトレッド部に配置することが好ましい。しかし、加速度センサをタイヤの内腔部に配置した場合、加速度センサへの給電のための構成が複雑となり、またセンサ故障に対して交換や修理が困難になるという問題点があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外部からのアクセスが容易なセンサを取り付けたタイヤ組立体およびタイヤ力推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様はタイヤ組立体である。タイヤ組立体は、タイヤ本体と、前記タイヤ本体に装着され、車両側の車軸に連結されるホイールと、前記ホイールの外表面に配置され、車両の走行によって生じる物理量を計測するセンサと、を備える。
【0008】
本発明のある態様はタイヤ力推定システムである。タイヤ力推定システムは、上記のタイヤ組立体を有し、前記センサで計測された物理量を取得するセンサ情報取得部と、タイヤの物理量に基づいてタイヤ力を算出する演算モデルを有し、前記センサ情報取得部により取得された物理量を前記演算モデルに入力してタイヤ力を推定する推定処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タイヤ組立体におけるセンサへの外部からのアクセスが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るタイヤ組立体の外観斜視図である。
図2】タイヤ組立体の側面図である。
図3】タイヤ組立体の縦断面図である。
図4】加速度センサをリムに取り付けたタイヤ組立体の縦断面図である。
図5】加速度センサをハブに取り付けたタイヤ組立体の縦断面図である。
図6】タイヤ力推定システムの機能構成を示すブロック図である。
図7】演算モデルの構成を示す模式図である。
図8】前後方向のタイヤ力Fxの推定精度を示すグラフである。
図9】タイヤ軸方向のタイヤ力Fyの推定精度を示すグラフである。
図10】鉛直方向のタイヤ力Fzの推定精度を示すグラフである。
図11】加速度センサをスポークに配置した別の例を示すタイヤ組立体の縦断面図である。
図12】加速度センサをリム端部に配置したタイヤ組立体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図12を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(実施形態)
図1は実施形態に係るタイヤ組立体1の外観斜視図であり、図2はタイヤ組立体1の側面図である。タイヤ組立体1は、タイヤ本体10、ホイール20およびセンサ3を備える。タイヤ組立体1は、タイヤ本体10にホイール20が取り付けられた空気入りタイヤである。ホイール20は、タイヤ本体10に装着される。ホイール20は、タイヤ本体10のタイヤ半径方向の中央に嵌め込まれている。ホイール20の半径方向の中心部分にはハブ21が形成されている。タイヤ組立体1は、ハブ21によって車両側の車軸に取り付けられる。
【0013】
センサ3は、ホイール20の外表面に接着剤や両面テープなどによって取り付けられる。センサ3は、接着剤等による取付方法に限られず、ねじ等の締結部品を用いて着脱可能にホイール20に取り付けられてもよい。センサ3は、タイヤ組立体1内の配置位置において、車両の走行によって生じる物理量を計測する。センサ3は、例えば加速度センサ30である。センサ3は、加速度センサ30以外にも、例えば歪みセンサなどであってもよい。以下の説明では、センサ3が加速度センサ30である場合を例に説明するが、加速度センサ30以外の他のセンサを用いても同等に構成され、作用効果を得ることができる。
【0014】
加速度センサ30は、タイヤ組立体1の周方向、軸方向および径方向の3軸方向の加速度(物理量)を計測する。図1に示す例では、加速度センサ30はホイール20のスポーク22に取り付けられている。スポーク22は、ホイール20のハブ21から放射状に延び、ハブ21とリム23とを連結している。加速度センサ30は、ホイール20の外表面に取り付けられており、外部からアクセスして着脱や電池交換が可能となっている。
【0015】
タイヤ本体10は、主に炭素含有のゴム材料で形成されている。タイヤ本体10のサイズは、例えばタイヤサイズ表示で195/65R15であり、これはタイヤ幅195mm、偏平率65%、ラジアル構造およびリム直径15インチを示す。ホイール20は、主に金属材料で一体成型されている。加速度センサ30は、圧電型、サーボ型、歪みゲージ式、半導体式等の各種の加速度を計測可能なセンサである。加速度センサ30は、加速度を計測するセンサ部分、無線通信回路および電池(図示略)を1つの筐体内に内蔵して構成されている。無線通信回路および電池の一方または両方は、別体としてホイール20に取り付け、加速度センサ30と信号線で電気的に接続する構成としてもよい。
【0016】
図3は、タイヤ組立体1の縦断面図である。図3では、車両側の車軸やハウジング等の構成についても表されている。タイヤ本体10は、リング状に形成されたトレッド部11によって地面に接触する。トレッド部11のタイヤ軸方向(タイヤ幅方向)の両端に連続してサイド部12が設けられ、サイド部12のホイール20側のリム端部25に対応する位置にビード部13が形成されている。
【0017】
ホイール20は、車軸を連結する円筒状のハブ21を中心にして、スポーク22が放射状に延びるように設けられている。スポーク22は、外周縁に連結された円筒状のリム23を支持している。タイヤ内腔14は、タイヤ本体10およびリム23で囲まれた空間として形成され、空気が充填される。
【0018】
リム23は、胴部24のタイヤ幅方向における両側にリム端部25を有している。リム端部25は、それぞれタイヤ幅方向の外側に向かうにつれて径方向の外側へ向かうように屈曲して延びるように設けられている。リム端部25には、タイヤ本体10のビード部13が嵌め合わされる。
【0019】
リム端部25間における胴部24には、タイヤ幅方向の中央部等において、径方向の中心側へ穿つように凹部26が全周に亘って形成されている。図3に示す例では、凹部26は、タイヤ幅方向のスポーク22寄りの位置に形成されている。ホイール20は、胴部24に凹部26を設けることによって、リム23の高剛性化と軽量化を図ることができる。尚、凹部26は設けられていなくても良く、この場合、胴部24の内周面24aは、タイヤ幅方向において平坦状に形成される。
【0020】
ホイール20において、外部に露出する外表面は、ハブ21、スポーク22およびリム23に現れる。リム23の外部に露出する外表面は、胴部24の内周面24a、リム端部25の外表面25aである。リム23の胴部24の外周面24bは、タイヤ内腔14に臨んでおり、外部に露出する外表面には当たらない。
【0021】
車軸8には、ブレーキローター81およびキャリパー82等の機械部品80が取り付けられている。タイヤ組立体1は、車両側ハウジング9に覆われた状態で車軸8に装着されている。
【0022】
加速度センサ30の取付位置について説明する。加速度センサ30は、ハブ21からリム23までの半径方向の任意の位置に取り付けられる。図2に実線で示す加速度センサ30は、タイヤ周方向に交差するスポーク22の一の側面に設けられている。図2に破線で示すように、加速度センサ30は、スポーク22のタイヤ周方向に交差する他の側面に取り付けてもよい。加速度センサ30は、ブレーキローター81やキャリパー82等の車軸8側の機械部品80との機械的干渉を回避した位置に配置されている。
【0023】
図4は、加速度センサ30をリム23に取り付けたタイヤ組立体1の縦断面図である。図4に示すように、加速度センサ30は、胴部24の内周面24aに取り付けられてもよい。加速度センサ30は、ホイール20のリム23に凹部26が設けられている場合に、凹部26の位置に相当する内周面24aに取り付けられていてもよい。
【0024】
加速度センサ30は、ブレーキローター81やキャリパー82等の車軸8側の機械部品80との機械的干渉を回避した位置に配置されている。内周面24aに取り付けられた加速度センサ30は、車両側ハウジング9側を臨んでおり、タイヤ組立体1の外部側(タイヤ軸方向の外側)への露出が緩和されている。
【0025】
図5は、加速度センサ30をハブ21に取り付けたタイヤ組立体1の縦断面図である。図5では、ハブ21に円形板状の支持部材35を取り付け、支持部材35に加速度センサ30を取り付けている。加速度センサ30をホイール20の外表面に取り付けることには、ホイール20の外表面に支持部材35を設け、支持部材35に加速度センサ30を取り付けることも含まれる。
【0026】
図6は、タイヤ力推定システム100の機能構成を示すブロック図である。タイヤ力推定システム100は、タイヤ組立体1およびタイヤ力推定装置40を備える。加速度センサ30は、上述のようにタイヤ組立体1に取り付けられている。
【0027】
タイヤ力推定装置40は、センサ情報取得部41および推定処理部42を有する。タイヤ力推定装置40は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)等の情報処理装置である。タイヤ力推定装置40における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子による処理回路や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0028】
センサ情報取得部41は、無線通信等により加速度センサ30で計測された加速度(物理量)の情報を取得する。推定処理部42は、演算モデル42aを有し、センサ情報取得部41から入力される加速度の情報を演算モデル42aに入力し、タイヤ力Fを推定する。図6に示すように、タイヤ力Fは、タイヤ組立体1の前後方向のタイヤ力Fx、タイヤ軸方向のタイヤ力Fy、および鉛直方向のタイヤ力Fzの3軸方向成分を有する。推定処理部42は、これら3軸方向成分のすべてを算出してもよいし、少なくともいずれか1成分の算出または任意の組合せによる2成分の算出を行うようにしてもよい。
【0029】
演算モデル42aは、ニューラルネットワーク等の学習型モデルを用いる。図7は、演算モデル42aの構成を示す模式図である。演算モデル42aは、CNN(Convolutional Neural Network)型であり、その原型であるいわゆるLeNetで使用された畳み込み演算およびプーリング演算を備える学習型モデルである。図7では演算モデル42aへの入力データとして3軸方向の加速度データを用い、3軸方向のタイヤ力を出力する例を示している。
【0030】
演算モデル42aは、入力層50、特徴抽出部51、中間層52、全結合部53および出力層54を備える。入力層50には、センサ情報取得部41で取得した3軸方向の加速度の時系列データが入力される。加速度データは加速度センサ30において時系列的に計測されており、一定の時間区間のデータを窓関数によって切り出して入力データとする。
【0031】
タイヤ組立体1で計測される加速度はタイヤ組立体1の1回転ごとに周期性がある。窓関数によって切り出す入力データの時間区間は、例えばタイヤ組立体1の回転周期に相当する時間とし、入力データ自体に周期性を持たせるとよい。尚、窓関数は、タイヤ組立体1の1回転分よりも短い時間区間または長い時間区間における入力データを切り出すようにしてもよく、少なくとも切り出した入力データに周期的な情報が含まれていれば演算モデル42aの学習が可能である。
【0032】
特徴抽出部51は、畳み込み演算およびプーリング演算等を用いて特徴量を抽出し、中間層52の各ノードへ伝達する。特徴抽出部51は、入力されたデータについて複数のフィルタを用いて畳み込み演算を実行する。畳み込み演算は、加速度データの時系列の入力データに対してフィルタを移動させながら、畳み込み演算を実行する。プーリング演算は、畳み込み演算後のデータに対して、例えば時系列的に並んだ2つの値のうち大きい値を選択する最大値プーリング演算を実行する。特徴抽出部51は、畳み込み演算およびプーリング演算等を繰り返し、特徴量を抽出する。
【0033】
全結合部53は、中間層52の各ノードからのデータを1または複数の階層で全結合し、タイヤ力Fx、FyおよびFzを出力層54の各ノードへ出力する。全結合部53は、重みづけを用いた線形演算等を実行する全結合のパスによる演算を実行するが、線形演算に加えて、活性化関数などを用いて非線形演算を実行するようにしてもよい。出力層54の各ノードには、3軸方向のタイヤ力が出力される。
【0034】
演算モデル42aは、実際の車両にその車両に応じた仕様のタイヤ組立体1を装着し、該車両を試験走行させて演算モデル42aの学習を実行することができる。タイヤ組立体1の仕様には、例えばタイヤサイズ、タイヤ幅、扁平率、タイヤ強度、タイヤ外径、ロードインデックス、製造年月日など、タイヤの性能に関する情報が含まれる。
【0035】
次に加速度センサ30の各位置に対するタイヤ力Fの推定精度について説明する。図8は、前後方向のタイヤ力Fxの推定精度を示すグラフである。図9は、タイヤ軸方向のタイヤ力Fyの推定精度を示すグラフである。図10は、鉛直方向のタイヤ力Fzの推定精度を示すグラフである。図8から図10において、横軸は、タイヤ組立体1の中心から加速度センサ30を配置した位置までのタイヤ半径方向の距離を表す。
【0036】
図8から図10において、縦軸は推定精度比を表す。車両が走行している状態においてタイヤ組立体1と路面との間で発生するタイヤ力Fは、トレッド部11のタイヤ内腔14側に加速度センサ30を取り付けた場合に、タイヤ本体10の挙動が反映され易く推定精度が良好になると考えられる。推定精度比は、トレッド部11のタイヤ内腔14側の表面に加速度センサ30を配置した場合の推定精度を、他の位置に加速度センサ30を配置した場合の推定精度で除した値として算出されている。尚、トレッド部11のタイヤ内腔14側の表面に加速度センサ30を配置した場合の推定精度比は1となる。タイヤ力Fは、加速度センサ30の各位置で取得された加速度データのみで学習させた演算モデル42aを用いて推定している。演算モデル42aは、加速度センサ30の位置ごとに学習されて構築される。推定精度の基準となるタイヤ力Fの実測値は、例えば車両を試験走行させて6分力計によって計測することができる。6分力計は、3軸方向のタイヤ力および各軸まわりのモーメントを計測する。
【0037】
推定精度は、推定値と実測値との平均絶対値誤差(MAE)によって求められる。推定精度比が1よりも大きい場合、平均絶対値誤差が小さく推定精度が良いことを示し、推定精度比が1よりも小さい場合、平均絶対値誤差が大きく推定精度が悪いことを示す。
【0038】
図8から図10において、白抜きの四角形の印で表した点は、トレッド部11のタイヤ内腔14側の表面に加速度センサ30を配置したケース(トレッド内腔)を示している。白抜きの三角形の印で表した点は、リム23のタイヤ内腔14側の表面(外周面24b)に加速度センサ30を配置したケース(リム内腔)を示している。白抜きの丸印で表した点は、ハブ21の中心位置に加速度センサ30を配置したケース(図5のケース)を示している。
【0039】
図8から図10において、黒い点は、ホイール20の外表面に加速度センサ30を配置したケースを示している。ホイール20の外表面は、上述のように、ハブ21、スポーク22およびリム23に現れる。近似曲線は、ホイール20の外表面に加速度センサ30を配置した各ケースについて、累乗近似によって求められた曲線である。
【0040】
ハブ21に配置した加速度センサ30に基づくタイヤ力Fx、FyおよびFzの推定精度比は0.7以上となっている。この推定精度比を許容するならば、タイヤ組立体1のハブ21に加速度センサ30を配置してもよいと考えられる。
【0041】
ホイール20の外表面に加速度センサ30を配置した各ケースから求めた近似曲線は、タイヤ力Fx、FyおよびFzについて右肩上がりの曲線となる。近似曲線から、加速度センサ30の取付位置がタイヤ組立体1の中心からタイヤ半径方向に遠ざかるほどタイヤ力Fの推定精度が良くなることがわかる。
【0042】
タイヤ力Fx、FyおよびFzの各近似曲線において、推定精度比の全てが0.95以上となる加速度センサ30の取付位置はホイール20の中心から98mmの位置となっている。本例においてホイール20のリム23の半径は190.5mmである。ホイール20の中心から98mmの位置は、リム23の半径の51.4%の位置に相当している。したがって、タイヤ力Fの推定精度比が0.95付近の良好な値となる範囲として、加速度センサ30をリム23の半径の50%よりもタイヤ半径方向の外側に配置することが好ましいと言える。
【0043】
タイヤ力Fx、FyおよびFzの各近似曲線において、推定精度比の全てが1以上となる加速度センサ30の取付位置はホイール20の中心から124mmの位置となっている。ホイール20の中心から124mmの位置は、リム23の半径の65.1%の位置に相当している。したがって、タイヤ力Fの推定精度比が1付近の良好な値となる範囲として、加速度センサ30をリム23の半径の65%よりもタイヤ半径方向の外側に配置することが更に好ましいと言える。
【0044】
タイヤ組立体1は、ホイール20の外表面に加速度センサ30が配置されており、加速度センサ30への外部からのアクセスが容易となる。加速度センサ30は、外部からアクセスして修理や交換が可能となる。加速度センサ30は、電池を内蔵している場合に、ホイール20から取り外して電池交換の作業が容易となる。加速度センサ30は、外部からアクセスして電池交換が可能な機構を設けておくことで、ホイール20から取り外すことなく電池交換が可能な構成とすることもできる。また、タイヤ組立体1は、加速度センサ30をホイール20の外表面に配置することで、車両または車外等の外部からの非接触給電が容易になる。
【0045】
加速度センサ30は、リム23における胴部24の内周面24aに取り付けられてもよい。内周面24aの周囲には車軸8側に設けられる機械部品80が配置されており、加速度センサ30は、機械部品80との機械的干渉を避けた位置に配置されている。
【0046】
加速度センサ30は、上述のようにタイヤ力Fの推定精度が低くなる可能性はあるが、ハブ21に配置するようにしてもよい。タイヤ組立体1は、ハブ21が回転軸の中心であり、加速度センサ30によるタイヤ組立体1の偏心を抑制することができる。
【0047】
また加速度センサ30は、ホイール20のスポーク22に配置するようにしてもよい。スポーク22は、タイヤ半径方向に延びており、加速度センサ30を配置するスペースが広い。また加速度センサ30をスポーク22に配置することで、ハブ21に配置するよりもタイヤ力Fの推定精度を向上することができる。
【0048】
加速度センサ30をスポーク22に配置する場合、上述のように、加速度センサ30をタイヤ回転軸からタイヤ半径方向にリム23の半径の50%以上外側に配置することによって、タイヤ力Fの推定精度が良好となる。
【0049】
更に加速度センサ30をスポーク22に配置する場合、上述のように、加速度センサ30をタイヤ回転軸からタイヤ半径方向にリム23の半径の65%以上外側に配置することによって、更にタイヤ力Fの推定精度を向上することができる。
【0050】
(変形例)
図11は、加速度センサ30をスポーク22に配置した別の例を示すタイヤ組立体1の縦断面図である。図11において、加速度センサ30は、スポーク22の車両側ハウジング9を臨む表面に配置されている。加速度センサ30は、車両の外側から見たときにタイヤ組立体1のスポーク22によって隠れた位置に配置されている。
【0051】
加速度センサ30は、スポーク22の車両側ハウジング9を臨む表面に配置されていることで、車両の走行中に小石や泥などの異物が衝突することを抑制することができる。この場合も、加速度センサ30は、機械部品80との機械的干渉を避けた位置に配置されている。
【0052】
図12は、加速度センサ30をリム端部25に配置したタイヤ組立体1の縦断面図である。加速度センサ30をリム23に配置することには、加速度センサ30をリム端部25に配置することが含まれる。加速度センサ30は、リム23に配置することで、タイヤ力の推定精度が良好となるが、胴部24に適切に配置できない場合には、リム端部25の外表面25aに配置するようにしてもよい。
【0053】
上述の実施形態および変形例では、センサ3として加速度センサ30を用いた場合を例に説明したが、センサ3として歪みセンサなどを用いてもよい。歪みセンサは、例えば歪みゲージであり、車両の走行によってタイヤ力Fが変動する影響を受けて、計測する歪み量が変化する。歪みセンサによる3軸方向の歪み量の情報を入力データとし、タイヤ力Fを出力する演算モデル42aを構築してもよい。演算モデル42aは、加速度センサ30による場合と同様に、車両を試験走行させて演算モデル42aの学習を実行することができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0055】
1 タイヤ組立体、 10 タイヤ本体、 20 ホイール、 21 ハブ、
22 スポーク、 23 リム、 3 センサ、 30 加速度センサ、
41 センサ情報取得部、 42 推定処理部、 42a 演算モデル、
8 車軸、 80 機械部品、 100 タイヤ力推定システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12